長編 
61-天空闘技場

修行するつもりの無いお気楽なゴンに、キルアは盛大にため息を吐いた。
そして、ヒソカとハンゾーの絵を地面に描き、間に線を引く。
「いいか?ヒソカとハンゾーの力量がこのくらいだとすると…」

2人の線の間から、ずるずると線を引っ張っていったキルアは、遥か遠くで声を上げた。

「お前はここ!かなりおまけで!」
「うぐっ!」


Euphorbia milii
ー天空闘技場ー


「じゃぁ、キルアとカインは?」
ぶすくれつつ、ゴンはキルアに問いかけた。
キルアは少し考えたあと、ハンゾーよりも少し遠くに自分の線を置いた。

「俺はここかな。…カインは…ヒソカとハンゾーの間くらい」

俺への目測は、念の存在を考えれば妥当なんだけど。
キルアとハンゾーは、今現在だと良い勝負だと思う。
そう考えると…キルアは自分を低く見積もってる。
やっぱり、頭のあれ…どうにかしてやらないとダメか…。
本来なら、キルア自身が気づいて取るのが理想的なんだけど。

「カイン、金はあるか?」
「え?うーん、まぁ、そこそこ?」
貯金を見る限り、30年前のままだったし。
「カインには悪いけど、俺とゴンは金がない。
 で、小遣い稼ぎと修行を兼ねて、一石二鳥の場所がある!」
「え?どこ?」
ゴンの問いかけに、キルアはニッと笑みを浮かべた。


「天空競技場!」



天空競技場とは。

地上251階。
高さ991m。
建造物の中では世界第4位の高さを誇る。
勝者のみが上の階に行ける格闘技場。
1日平均4000人の腕自慢がより高い階を目指してやってくる。
観客動員数は年間10億を超える。
建物内部にはサービス用の各種施設が完備されており、高い階級の闘士は1フロア全てを所有することが許される。



「凄いなぁー」
空まで伸びる塔と、それと同じくらい長い行列を見つめ、カインは感嘆の息を吐いた。
「カイン、ゴン、早く行こーぜ?」
「あ、うん」
キルアに促され、列に並ぶ。

「いいか、2人とも。
 この天空闘技場は、ハンター試験と違って小難しい条件は一切なし!相手をぶっ飛ばせば良いだけだからな。
 上に行けば行くほどファイトマネーも高くなる。
 簡単に言えば、野蛮人の聖地なのさ」

へぇ。何というか、とても分かりやすい。


そんな事を話している間に自分達の受付が回ってきた。

「あ、ゴンは格闘技経験を10年って書いとけよ。早く上の階に行きたいからさ」
「はーい」

俺はどうしようかな…。
んー、換算するのめんどくさいから、10年でいいか。

参加用紙にさらりと記入し、受付のお姉さんに手渡す。

「それでは、中へどうぞ」
促されるままに会場に入ると、沢山のリングとその中で戦っている選手達が目下に広がった。
そして、それをぐるりと取り囲む観客席。
そこには野次や声援を飛ばす者、カイン達の様に試合の順番を待っている者が疎らに座っていた。

「おー、懐かしい。全然変わらねーな、ここは」
観客席に腰を下ろしながら、キルアはそう呟いた。
「え?キルア、来たことあるの?」
「あぁ、6歳の頃かな。無一文で親父に放り込まれた。
 『200階まで行って帰ってこい 』ってね。
 その時は2年かかった」
少し自慢気に、でも、懐かしそうに、キルアは答えた。

その時の記憶はそこまで悪いものじゃ無かったのか…。
しかし、シルバ。
6歳の子供にそれは過酷じゃないか?
俺達も変わらないことさせられてたけどさ…。

まぁ…リングの上には審判もいるから、多少は命の保証はされるけど。


『1973番・2055番の方、Eのリングへどうぞ』

「あ、俺だ!」
ゴンが立ち上がった瞬間、もう1つのアナウンスが流れた。

『2001番・2056番の方、Cのリングへどうぞ』

おや、2056は俺の番号か。

「カインも呼ばれたな」
「うん。ゴンの試合見れないな、残念」
眉尻を落とした俺に対して、ゴンは純粋に、キルアは意地悪そうに表情を変えた。
「お互い頑張ろーね!」
「バーカ、カインの場合は相手の心配してやらなきゃだろ」
「確かに!」
このチビッ子達は…。

そんな会話に苦笑いを返しつつ階下に降りる。

相手になるであろう胴着を着た大きな選手は、俺の姿を見るなり、盛大に笑い始めた。
「こんなひょろひょろの優男が相手とは!俺は運が良い!」

運が良い、ね。

「…おやおや。本当の格闘家なら、運が悪かったと言うんじゃないかな?」
俺のあからさまな挑発に、相手の選手は笑いを止めて眉を潜めた。
「なんだと?」
「まぁ…ある意味、俺と当たって運が良かったかもね。痛みは少なくて済むから」
「はっ、笑わせてくれる!」

ちらりと審判に視線を移す。
それに気づいた審判は、すぐに腕を上げた。

「ここ1階のリングでは入場者のレベルを判断します。
 制限時間3分以内に自らの力を発揮して下さい。

 それでは、始め!」


3分?
そんなに要らないよ。

それに、こんな輩は、腕一本で充分。






ーあとがきー
戦闘シーンはカットで。
雑魚戦だし。いいよね!←

さて。天空闘技場編突入です!









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あきゅろす。
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