長編 
60-再会の約束

試しの門をから外へ。
俺達は町に向けて歩き出した。
途中、号泣観光車とすれ違ったが、ガイドさんが凄い顔をしてこちらを見ていた。


Euphorbia milii
ー再会の約束ー


「うーん、やっぱり分かんないなぁ…」
「?何が?」
ゴンの呟きにいち早く反応したカインは、首を傾げた。

「ゴトーさん…あ、キルアの家の執事さんがね。
 こう…コインを上に弾いて左手で取ったのを見たんだけど、コインは右手にあったんだ。 何でだろうって」
ゴンはコインを弾くような動作のあと、コインを掴むように両手を交差させる。
そして、また首を捻った。

左手で取ったコインが右手に握られていた?
超人的な動きがあるわけでもないなら、それは何かのトリックか?
実際に見た訳じゃないから、なんか要領得ないな…。

「ああ、それ、オレもだまされた。
 タネあかしされると腹が立つくらい単純なトリックだぜ」
ポケットに手を突っ込んだまま、キルアはにやりと笑う。

単純なトリックねぇ。

「…なるほど。恐らくこういうことだろう」

クラピカは一つ頷いて、コインを一枚取り出した。
コインをまじまじと見るゴン達に分かるよう、ゆっくりと上空にコインを弾き、左手でキャッチした。

「コインはどっちだ?」
「左手、でしょ?」

ゴンの答えにクラピカが手を開くと、コインは左手ではなく右手に収まっていた。

「え?!どうして?!」

「そういうからくりか」
「えぇ?!カイン分かったの?!」
顎に手を当てて微笑む。
まぁ、簡単なトリックだよ。とクラピカに視線を合わす。
「コインは2枚あった。そういうことだろ?」
「ご名答。
 ゴトーは初めからコインを2枚持ってたのさ。
 1枚を右手に隠し持ち、もう1枚のコインを上げて相手に分かるように左手で取る。
 拳を握った状態で、さりげなくコインを袖の中に落とす。
 残るのは右手のコインというわけだ」
クラピカは実演を交えながらゴンに説明した。

「うー……腹立つ…!」
「だろ?」

ゴンとキルアのやり取りを見ながら、微笑ましいとカインは笑う。

ふたりは本当に仲が良い。
友達であり、ライバル。

歩く先を見据えながら、カインは密かに願う。

この先も、ずっと変わらないでいてくれ。
どうか、どうか。


「かくかくしかじかで渡されたこのプレートを、ヒソカに顔面パンチのおまけつきで叩き返す!
 そうしないうちは、絶対にハンター証は使わないって決めたんだ!」

ゴンの決意を孕んだ大声に、意識を戻す。
ライセンスの話と…ゴンの目標。

ヒソカに挑むこと。

あんな変態に会いに行かないといけないなんて、ゴンは不憫だな。

「ふーん。で、ヒソカの居場所は?」
「………。
 ええーっと…?」
キルアの冷静な言葉に、ゴンは少し固まると頭を掻いた。
瞬間、全員がため息を吐く。

すっと、クラピカが手を上げた。
「私が知っているよ、ゴン」
「?…なんで知ってんだ?」
レオリオの疑問は最もで、カインも首を傾げてしまう。

「本人に直接聞いたからだ」
「…あの時か?」

あの時…それは最終試験でヒソカが何かを耳打ちしたあの事を指しているのだろう。
しかし、あの一瞬でそれを言ってどうすると言うのか?

「いや、講習が終わった後だ」
「だが、関係あるんだろ?」
「…まぁな」
「前から聞きたかったことだが、あの時、ヒソカに何を言われた?」
レオリオの心配そうな顔を見て、クラピカは下を向いた。

「……“クモについて、いいことを教えよう”」

クモ…?

「奴に旅団のことを話した覚えはないから、一次試験の時にレオリオとの会話を聞かれたか…。
 それを聞いていた誰かが話したか…」

俺が首を傾げていることに気づいたクラピカが、軽く息を吐く。

「クモは旅団のシンボルだ。故にヤツらに近しいものは旅団のことをクモと呼ぶ。
 そのことを知っていたヒソカの情報に興味があってな。
 それで、講習が終わってすぐヒソカを問いただした」

ゴンの方を見つめ、クラピカは口を開く。

「9月1日、ヨークシンで待っている。そう言っていた」

9月1日?
しかも、ヨークシンで“待っている”なんて…。
ヒソカはクラピカに何を期待しているんだろうか?

「9月1日…。半年以上も先だね」
「ヨークシンシティで何かあんの?」

ゴンに続いてキルアが問うと、レオリオは声を上げてパチンと指を鳴らした。

「世界最大のオークションか!」

オークション?
…なるほど、盗賊が好みそうな場所だが…。
ヒソカとは何の関係が…?

「そういうわけで、ヒソカはヨークシンのどこかに居る。見つけたら、連絡しよう」
「うん、分かった。ありがと!」

あれ?
今の言い回し…もしかして…。

「クラピカは行ってしまうのか?」
「…あぁ。キルアにも再会できたし、私は区切りがついた。
 これからは本格的に、ハンターとして仕事を探す」
クラピカはこれからの事を意思の強い瞳で見据えていた。

「レオリオは?」
「俺は故郷に戻って勉強だな。受験料が免除でも、勉強しないと受からないからな」

クラピカは仕事探し、レオリオは故郷に戻る。
キルアはゴンと一緒に。

俺は…

「カインはどうする?」
クラピカの問いに、薄く微笑む。

「俺は、ゴン達と行こうかな。二人といれば、面白い世界が見れそうだし」
「…そうか」
やはりといったクラピカの表情に、それに、と言葉を続ける。
「子供二人で、っていうのが心配かな」
「はぁ?!」
キルアが吠え、ゴンはよく分かっていないのか首を傾げた。

「ぷ、確かに…」
クラピカが吹き出し、カインも笑う。



そして、空港にて全員が互いの顔を見合わした。


「じゃぁ、9月1日、ヨークシンシティで!!」



再開の約束と共に、俺達は別々の道を歩み始めた。








ーあとがきー
主人公組はバラバラに。

次は天空闘技場かー。
さて。どうやって絡ませるかな。










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