長編 
59-合流

「あ!カイン!!」

前方から歩いてくる見知った4人の姿に、頬が緩む。

「お、みんな勢揃い…って、ゴン?!その顔どうした?!キルアも!」

カインの心配を余所に、ぼろぼろに腫れ上がった顔を互いに見合い、ゴンとキルアは満足げに笑った。


Euphorbia milii
ー合流ー


「カナリアっていう執事見習いがゴンに怪我を負わせたけど、最後は和解したと。
 で、キルアのそれは独房に入って拷問を受けたから…」

まぁ、この程度で済んで良かったんだろうな…。
最悪死んでただろうし。

「無事で良かった」
「見てるこっちはヒヤヒヤもんだったぜ」
レオリオの呟きに軽く笑って、全員の顔をもう一度よく見る。

みんな、少したくましくなったかな。
…そういえば、試しの門をクリアしたんだっけ。

そんなことを考えていれば、おもむろにクラピカが隣に歩み寄ってきた。
「カインは弟に会えたのか?」
「え?…うん。お陰様でゆっくり出来たよ。
 まぁ、家を出てくる時は散々駄々をこねられたけど」

シルバの顔が浮かび、思わず笑みが漏れる。
あれは、多分誰にも見せることのない顔。


「あ、そうだ。なぁ、カインって親父と知り合いなの?」

キルアの唐突な質問に目を見開く。

暗殺稼業のことは前にキルアに話した。
でも、キルアは俺とシルバの関係は知らない。はず。

「……何で?」
「親父がカインのこと話してたから」


…。

Oh…。


「まぁ…稼業が稼業だからね…」
自分でも苦しい言い訳だ。

「…ふーん。親父が初めて見る顔してたから、もっと親しいのかと思ったけど…」

「稼業って?カインもキルアみたいに何かあるの?」
「あれ?知らねーの?」
不思議そうな顔をしたゴンの質問に、キルアが驚いた表情を見せる。
クラピカもレオリオも、ゴンと同じ顔でこちらを見ていた。

まぁ、話してないからな…。

「カインは……って、俺が話したら不味くね?」
「…そうだね。気を使ってくれてありがとう、キルア」

もう一度、みんなの顔を眺める。
さて、いざ話すとなると、それなりに緊張するものだな。

「実は…俺の家はキルアと同じ暗殺稼業なんだ。
 俺も殺し屋だった。
 稼業は弟が継いで、俺は放浪中」

カインの言葉に、一瞬の沈黙が訪れた。

「「…な、なんだと?!」」

狼狽えたのは、クラピカとレオリオ。
それとは正反対に、一人うなずいて納得した様子のゴン。

「あれ?ゴンは驚かないのか?」
「うん。カインは強いから、何か戦闘出来る職業なんだと思ってた。
 ヒソカやイルミとも対等に話してたし…。
 あと、キルアと同じで足音がしなかったから」

その言葉に、今度は俺とキルアが目を見開いた。

「足音か…。まぁ、殺し屋にとって暗歩は必需品だから…」
足音を殺さないと、人に見つかる可能性上がっちゃうし。

「アンパンってのは、何だ?!ていうか、本当に殺し屋なのか?!」
「レオリオ落ち着け。アンパンじゃなくて暗歩だから。あと、殺しは本当」

そんなやり取りを何度か繰り返して、レオリオはようやく落ち着きを取り戻した。

レオリオは一度咳払いをして、俺を見た。
「キルアと同じように廃業したっていうなら、まぁ、許してやらんこともない!」
「おっさん上から目線だなー」
「うるせぇぞ、キルア!」

そんな二人の会話に、カインは数度瞬きをすると、口の端を少し上げた。

「……許してもらえて良かった」

ゴンとレオリオはクリア。
さて、残るは…。

「クラピカ…」

さっきから黙ったままの友人に、カインは眉尻を落として言葉を待った。

「…カインが言葉を選んでいた理由は、それだったのだな」
クラピカは下を向いたまま、そう言葉を紡いだ。

言葉を選んでいた、か。
確かに、口をつぐむ事は何度かあった。
クラピカと俺は正反対の位地に居たから、言えないこともあった…。

「カインは、私を見くびりすぎだ」
「え?」
顔を上げたクラピカは、少し呆れたように微笑んでいた。

「カインが殺し屋であろうと、カインはカインだろう?」
「クラピカの言う通りだぜ。キルアだって同じだしよ、胸張ってて良いっての」

レオリオの後押しが嬉しい反面、罪悪感が胸中をざわめかした。

俺は、みんなにまだ言っていないことがある。
俺は…

「…違う。俺は、キルアとは違う。
 …正直に言えば、俺は殺し屋を天職だと思ってる。
 殺し屋を嫌ってはいないし、寧ろ誇りにさえ感じている。
 弟を残して長く眠ることが無ければ、確実に殺し屋を続けていた…」

受け入れてくれているのに、こんな気持ちを持ったままなんて…。
それを隠すなんて、俺にはできない。


「それでも、カインは殺し屋を辞めた。違うか?」


!!

クラピカの言葉に、目を見開いた。
確かに。俺はもう…

「…うん、俺は、もう殺し屋ではない」

「それなら、カインはカインのままじゃないか」

「そう、かもな…」

俺は俺。か。
クラピカは俺が思っているより、俺を見ててくれたのかな…。


「話は纏まったな。じゃー、とっとと敷地内から出るぞ!
 お袋の気が変わるとめんどくせーからな」

キルアの一言で、再び歩き出した俺達は、途中でゼブロ達に挨拶をしてククルーマンテンを後にした。






Dear シルバ

行ってきます。

これから俺は、シルバとは違う道を歩くけど…。
死ぬまでシルバの隣を歩いているつもりだ。
シルバも…そう思ってくれたら嬉しい。

…あぁ、そうだ。
いつか、シルバにクラピカ達を紹介したいと思う。

そんな、いつかが来ることを俺は願ってる。







ーあとがきー
ゾル家編がこれにて終了になります…(泣)
シルバと離れたくない…。










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