長編 
58-互い思い

俺が家を出る時にツボネから聞いた情報では、ゴン達は既に執事室に向かっているとのことだった。

執事見習いが案内をしているという。


Euphorbia milii
ー互い思いー


その見習いは、執事として失格だ。
もしも友達に扮した刺客だったらどうするつもりなのか。

まぁ、でも。

「今回は許してあげて。
 彼らは俺とキルアの友人。
 彼らを殺してたら、俺が直々にその子を殺してた」

そう言って微笑めば、ツボネは「かしこまりました」と深々と頭を下げた。

ツボネと二人、試しの門の前までやって来た。
みんなはもう執事室にいるはずだが、俺は執事室に足を踏み入れるつもりはない。
他の執事との面識なんて無いに等しいが、俺のことを知っている執事がいるとも限らない。
なんてこと無いことで口からぽろり、なんて事になったら目も当てられない。


「さて、ツボネ。
 俺はまた出掛けるから…」
一度言葉を区切り、ツボネからククルーマウンテンに視線を移す。
あの辺りにシルバがいる。
今はキルアと話でもしているだろうか…?

ツボネはシルバの直属の執事だと聞いた。
シルバの身の回りは保証されたも同然だけど、まぁ、頼んでおくことに越したことはない。

「…シルバを、よろしく頼む」

少しの沈黙の後、ククルーマウンテンからツボネに視線を戻した。
珍しくツボネは目を見開いて驚いていたが、俺の視線に気づくとすぐに笑顔を作った。

「ほほほ。承知いたしました。
 …また何年でもお待ちしております」
「…意地悪だな。すぐ帰ってくるよ」
眉尻を落として、肩をすくめる。

「そうなることを願っております。
 旦那様も、早く帰ってくることを心待ちにしておりますから」
「…うん」

ツボネに別れを告げて、ゆっくりとした速度で執事室へと歩み始める。

歩いていれば、その内にキルアを連れたゴン達と合流できるだろう。



***



親子の会話を楽しんでいたシルバとキルア。
シルバはキルアに、友達を裏切らないという誓いを立てさせた。


“友達”

それには、カインの存在が含まれている。


その意味を、キルアは知らない。


「キル、お前の友達の中に強い奴がいるだろう?」
「え…?…あ、カインのこと?」
シルバの唐突な質問に答えながら、キルアは首をかしげたが、すぐにハッと目を見開いた。
「なんで、親父がカインのこと…?」
「…前に、仕事でな」
「あ…そっか。あいつ、殺し屋だったっけ。でも、カインも廃業してるって言ってたよ?」
言いながら、キルアは何故シルバがカインのことを聞いてきたのかが気になった。

瞬間、出てきた答えにキルアは眉を潜めた。

「もしかして、カインが俺を狙ってるとか考えてるなら、お門違いだよ。
 あいつは友達だし。俺を殺すならもう仕掛けてるはずだ。
 カインは……悔しいけど、俺より強いから」

少し不満げに言うキルアに、シルバは笑った。

「そうだな、あいつがお前を殺すことはない。それは間違いない。
 …カインは強い。
 それに、延び白もまだ底を見せていない。
 キル、あいつから学ぶことは多いだろう。よく見ておくと良い」

「…、…うん」

頷きながら、キルアはただシルバを見ていた。


父親の顔とも、当主の顔とも、殺し屋の顔とも、違う。
今まで見てきたどの顔とも違う。

初めて見るその表情に、キルアは驚きを隠せなかった。


親父でも、そんな優しそうな表情をするのか、と。









ーあとがきー
シルバ、キルアよりカインが心配なのは分かったから。

カインも、シルバが心配なのは分かったから!

もう早く旅立てよ!!ww











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あきゅろす。
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