長編 
54-外出と尾行

「うわ、懐かしい!シルバ、シルバ!この鳥!」
俺が興奮気味に指を指した先を見て、シルバは眉尻を落とした。


Euphorbia milii
ー外出と尾行ー


「…カイン、相変わらず好きだな…その青い鳥…」
「だってハシビロコウにそっくり!」
地獄漫画を見てて、そっくりな鳥がいることに気づいてしまったんだから、仕方ない。

「…ふふ」

さて、と。
カルトはちゃんと着いてきてるな。

うっすらと感じる気配に、にやりと笑う。
あと少しは持つかな。
絶はしてるけど、視線が周りに馴染めてない。
せっかく動物園なんて人気の多い場所に来たんだから、上手く活用してくれよ、カルト。


「…カイン。着いてきている奴は誰だと思う?」

シルバの唐突な言葉に、一瞬息が止まった。

…時、既に遅し…?
でも、まだ誰か分かっていないみたいだし…。
もう少し、粘れるかな?

「…んー…。敵意はあまり感じられないから…。知り合いかな?」
そう首を傾げれば、シルバは少し眉を潜めたが、すぐに何かに気づいたのか一つ頷いた。
「…そうか。何となくだが、誰か分かった」
「え?」
「まぁもう少し様子を見るとしよう」

あれ?
これは…俺が墓穴掘ったかな…?

「さぁ、次に行くぞ」
「あ、うん」

カルト、なんかごめん。



***



「あー、楽しかったー」
俺とシルバは一通り満喫して、動物園外のカフェで休息を取っていた。
テラス席を取ったため、見晴らしが良いのに加え、雲1つ無い青空が解放感を増幅させる。

「カインが楽しそうで何よりだ」
「シルバだってそれなりに楽しんでただろ?」
「…まぁな」
シルバだって負けず劣らず動物が好きだ。
ミケもシルバの部屋にいた犬も、シルバが好きで飼っている動物なのだから。

「カイン」
「んー?」
「カルトを呼んでくれ」

シルバの言葉に一つ、瞬きをする。

「…やっぱり、バレてた?」
「始めは誰か分からなかったが、カインが庇ったからな」

庇った?

「カインが尾行している奴を許すのは、身内の人間だけだ」
…確かに。
尾行されたら、基本的に殺しに行ってた。

仕方ない、とカインは頭を掻いて、カルトのいる場所まで飛び上がった。

「!…カイン?」
「カルト、ごめん。俺のせいでバレちゃった。一緒に来てもらっていい?」
「え……うん」

みるみる青ざめていくカルトに、酷く申し訳ない思いが胸中を占めた。
カルトの頭を撫でてから手を差し出せば、カルトは震える手でカインの手を握った。


「…お待たせ」
シルバを前に完全に畏縮しているカルトの手をしっかりと握り、カインはシルバの言葉を待った。

「カルト、言いたいことは?」
ヒュッ、と息を吸う音が響いた途端に、カルトは頭を下げた。
「ご、ごめんなさい…!」
「…シルバ。これは俺が提案したんです。カルトを怒らないでやってくれませんか…?」

余りに怯えているカルトの様子に、酷い罪悪感を抱えながら、カインはシルバを伺った。
無表情にカルトを見下ろすシルバの姿に、思わず敬語になってしまう。


本当に30年って大きいな…。


シルバはゆっくりとカフェの座席に座り、カルトに前の席を促した。
「カルト、座れ」
「…はい」
「カインも」
「…。…うん」

座れという言葉ですら、カルトは怯えて下を向く。
けれど、それとは反対にシルバの顔を見たカインは、気づいてしまった。

シルバ、笑ってる。

常人には分かりづらいが、口角が微かに上がっているのをカインは見落とさなかった。

「シルバ…」
カインの言葉を遮るように、シルバは手の平をカインに向けた。
「カルト。今回、俺達の後を尾行することが修行だった。間違いはないか?」
「はい…」

あぁ、泣きそうだ。
必死に耐えているが、肩が微かに震えている。

「……良い絶だった。
 カインが一緒に居なければ、カルトだと気づくことは出来なかっただろう。
 …だが、視線をこちらに向けすぎていて、尾行されていることは気づかれる。そこは精進が必要だな」

そう言い終わると、シルバはその大きな手でカルトの頭を優しく撫でた。

「…!…」

思いがけない言葉に目を見開いたカルトは、勢いよく顔を上げて、シルバを真っ直ぐに見上げる。


「カルト、成長したな」



そこには、優しく笑う父親の姿があった。












ーあとがきー
シルバの父親の図って凄く萌えます。(笑)
微笑ましい親子が書けて管理人は幸せです。
ゾルディック編が楽しすぎる!!


そして、久しぶりに他漫画のネタを使ってみる。



作中使用作品↓
鬼灯の冷徹








[*前のお話へ][次のお話へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!