長編 



入学式って暇だ。

―青と灰―
Part3

サタンの奴が帰ってこないから、ここ最近マジで暇。

ため息を吐いて視線を壇上に戻すと、丁度新入生代表挨拶に入ったところだった。

「新入生代表の奥村雪男です」

新入生代表って、成績トップの奴だよな?
勉強出来るってスゲーな。

しかし、身長高そうだなー、あいつ。
まじで俺と同い年かよ?
…んー。
まぁガタイも良さそうだし、眼鏡男子で秀才で、顔も悪くない。
女子生徒に人気出そうだなー。

別段、羨ましくはないけど。
だって、俺の傍にいたらみんな死んじゃうし。
俺は一生一人で良いや。


「以上を持ちまして、始業式を…」

あ、終わった。

さてと。
とっとと教室に向かいますか。

立ち上がって、後ろをちらりと見たら、なんか見知った顔があった。

「(スーパーで見かける子だ)」

あの青い目は、前より暗く輝いているように見える。
やっぱり、なんか変な感じがする。
前より、もっと、ずっと、違う。

彼は俺に気づかずに会場を出て行ってしまった。

…。俺の教室、何組だっけ?


***


自己紹介って最初にやるものだった。忘れてたぜ。
…何言おう…。

教室に着き、早々に突っ伏して寝てたら、いつの間にかHR始まってた。
誰か起こしてくれても良いのに。

「えーと…奥村燐です。よろしく」

ん?
あ。
あの青い瞳の子だ。

同じクラスだったんだ。

…あれ?奥村?
新入生代表も“奥村”だったような…。

よくある苗字じゃないけど、双子っつうには似てないよな…。二卵性か?

とと。
俺の番か。

「えーと、名前は紫煙カイン。座右の銘は“我関せず”
 よろしくはしなくて良いです。むしろ、近寄るな。以上」

クラスの中の温度が氷点下まで下がった気がした。

いち早く我に帰った担任が、咳ばらいをする。
「…紫煙、もう少しフレンドリーにな?」
「嫌です」
近寄ったら、みんな死ぬ。
それなのに、フレンドリーは無いだろう?
「みんなが死ぬから」なんて言っても、馬鹿にされるだけだから、言わないけど。

「紫煙はツンデレだが、仲良くしてやってくれ」

って、おい。
勝手にツンデレ扱いするな。

…。

あー…死人が出ても知らねー。

俺はため息を吐いて、机に突っ伏した。


***


ま。
あれだけやれば、話しかける馬鹿はいないよな。

「ふあ…」

HRの終わりを耳だけで確認し、生徒達が散った後に、むくりと起き上がる。


かばんを片手に、帰路についた。


「(さてと。今日の夕飯何にするかな)」

昨日は二日目のカレー。
食べきったから…今日は八宝菜にでもするか。

「紫煙カイン?」

前方に立っていた知らないおじさんが俺の名を呼ぶものだから、思考が停止した。

「………………誰です?」

…あれか!
新手の詐欺師か!
よし、この人は詐欺師と呼ぼう。

「私は祓魔師のイゴール・ネイガウス。祓魔塾に通うようにと、理事長から達しが出た。一緒に来てもらおう」

えくそしすと?
あ。
サタンが言ってたあれか。

って、は?

「ふつま…塾?何言ってるか、わけ分かめなんだよ。
とりあえず。詐欺師さん、俺に近寄らない方が良いよ。じゃ」

さっさと逃げよう。
悪い予感しかしない。
理事長が絡んでるとか言われたし。

「悪いが、これは強制だ」

強制?
馬鹿なこと言ってんなよ?なぁ?

今更…ふざけんな。

「本当にさ、死ねば良いと思うよ?」

一瞬、詐欺師さんは目を見開き、後ずさった。
酷く顔色が悪い。

…あ、そっか。詐欺師さんは見えるんだ。

悪魔が。

今の俺の言葉で、多分、悪魔が集まったんだ。
だから、後ずさった。
だから、こんなにも冷や汗をかいてる。

「帰る。帰るよ。じゃぁ、ね。詐欺師さん」

俺は詐欺師さんに背を向け、歩き出した。

悪魔達に声をかけたし。
多分この人は死なないだろう。

こういう風に興味がないって示すと、悪魔達はその人を襲わない。

サタンが言うには、俺に構われてる奴らが羨ましいんだとか。
羨ましくて、嫉妬して、その人を殺してしまう。

悪魔は酷く実直だと思う。


あー、暇。
サタン早く帰ってこないかなぁー。



―あとがき―
入学。
でも、ほぼメインキャラと関わってない。
早く関わらせたい…。






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