長編 
50-晩餐

「今日はお兄様のご帰還を祝して、ご馳走を作りましたの。お口に合えば良いのですけど…」
キキョウはそう言って、家族を席に勧めた。


Euphorbia milii
ー晩餐ー


食卓に並んだ華やかな料理を目の前に、カインは呆然としていた。
何故なら、こんな歓迎を受けるとは思わなかったからだ。
「…」
部屋を一回り見渡せば、ゾルディック家勢揃い、と言ったところ。
キルアと、それからもう一人、二人足りないが、それでも、これだけ集まると圧巻だ。

「お祖父様やお父様達のご紹介は大丈夫かしら」
「えぇ」

みんな老けたなぁ、とは思うけど。

「では、改めて。私、キキョウと申します。シルバの妻です」

はい、存じております。

「左端から、長男のイルミ。次男のミルキ、末っ子のカルトです」

銀髪なのはキルアだけなのか。
あともう一人がどうか分からないけど。

「三男のキルアともう一人は、ごめんなさいね、今は出席出来ないの」

キルアがいたら、俺が窮地だけどな。
しかし、次男のミルキ…残念過ぎる。
なぜ、メタボボディ。

「初めまして、キキョウさん、それからシルバの子供達、これからよろしく。
 俺はカイン。シルバの双子の兄だ」

「…え?」

声を発したのは次男のミルキ。
「ちょっと待って。双子って、本当なの?年齢的に俺と同じくらいじゃん」
「ふふ。いろいろ訳があってね。若作りだと思ってくれても良いよ」
念覚えてない子もいるし。
説明するの面倒くさい。

「…マジなの?双子って」
カインの言葉は信じられなかったようで、シルバに目を向けたミルキに、シルバは軽く頷いて肯定の意を示す。
それでも怪訝そうにカインを見つめるミルキに、カインはやれやれと肩を落としたのだった。

あぁ、そうだ。

「忘れないうちに、全員にお願いがあるんだけど…。

 キルアには俺の事を黙っておいてほしい」

俺の一言に、ほぼ全員が目を瞬かせた。
「なんじゃ、会わないつもりか?ハンター試験で一緒だったのじゃろ?」
ゼノの言葉に、カインはふふ、と笑う。
「キルアは、俺がゾルディックだと知らないんだ。俺は、まだ友達でいたいからさ」

「友達ぃ?そんな甘ったるいこと言ってたら、暗殺者には成れないよ!」

……うーむ。
このミルキとかいう子、突っ掛かってくるなぁ。

「そう突っかかるなよ。
 それに、どんな友達がいたって、暗殺者には成れるよ。
 ただ、どう付き合っていくかが問題なだけだ」
カインのハッキリとした口調に、ミルキはうっと悔しそうに口をつぐんだ。

「ごめんなさいね、お兄様。キルが大事な時期だから、少しピリピリしているのよ…」

そう言うキキョウから、肌を刺すような殺気をビシビシと感じて、一番ピリピリしているのはこの人だと、潔く理解してしまった。

「キキョウさんや、そろそろ食事にしようではないか」
「お父様…。…えぇ、そうしましょう」

ゼノの機転によりスムーズに始まった晩餐は、それなりに和やかに行われた。

「この味は、トリカブトかな?
 なぁ、シルバ、こっちの料理の毒って何?」
「あぁ、昨年発見された新種の痺れ薬だな」


料理の内容は、確実に和やかではないが。


「ねぇ、カインおじ様」
「…。君はカルトだっけ?…とりあえず、“おじ様”って、つけないでもらえると嬉しいんだけど…」

さすがにちょっとショックが…。

「じゃぁ、カイン」
「ん、なーに?」
まぁ、呼び捨ての方がまだ良いな。
キルアにも呼び捨てにされてるし。

「カインって、強いの?」
「…まぁ、それなりに、かな」

顔はキルア似かな?
黒髪なのはイルミと一緒かー。
まぁ、カルトは可愛いけど。
…しかし、声が男の子のような気がするんだが…。

「今度、修行相手になってよ」
「んー…まぁ、時間があったらな」

そのうち、ゴン達と合流しなきゃいけないし。
時間あるかな…?

「カルトのその服って、着物っていうやつだろう?」
「うん。母様がくれるの」

…なるほど。キキョウさん、女の子が欲しかったんだろうなぁ…。

あ、そうだ。
「カルト、後でプレゼントあげる。
 もしかしたら持ってるかもしれないけど。それでも良ければ」
「!…欲しい!!」

目をキラキラさせながらこちらを見つめるカルトに、カインは柔らかく微笑んだ。








ーあとがきー
ゾルディックの晩餐って、確実に毒のてんこ盛りですよね(笑)
というわけで、50話です。
…闘技場に行くまでに、あと何話消費するのかしら…?














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