長編 
32

悪魔達が俺を守ろうとする時だけ攻撃的になる。
勝呂の言葉に、俺はただ目を見開いた。


青と灰
Part32


「お前が人間を怖がっとる。それに悪魔が反応しとる。
 そういうことやろ?」

…違う。

「そうじゃない。…動植物、全てが対象だ。
 俺に近づけば生き物全てが悪魔に攻撃される」

全て死滅した植物のように。
燃やされた青い鳥のように。

それら全てを俺が怖がっているというのなら…俺はこの世界で何をしているのだろう?

「今までがそうやったとしても、今は違うやろ」
「…は?」
「合宿の時、お前は悪魔を従えとったが、誰も死んでへんやないか」

確かに、一人も犠牲者がいない。
でも…。

「お前の過去に何があったかなんて知らん。
 せやけど。
 変える努力をせな、何も変わらんわ」

変える努力?
それで、何かが変わるのだろうか?
この体質が変わるとでも?

「俺が…お前の言うように、変えよう努力して…。
 その結果、お前らが死んだら、俺はどうすればいい?」

そうなったら、確定してしまう。
生きる世界に対し、破滅しか与えられない存在だと。

「そうなったら…俺は、もう…人間としてここにいられなくなる」

「…主…」

何も見たくなくて下を向く。
サタンがやけに静かなことが気になった。
…そういえばサタンも同じような状態だと言っていたっけ…。
触れたもの全てが、壊れて崩れ去る。
破滅しか与えられない。

「殺されたら、そりゃ怒るわ。
 せやけど、失敗することを前提にしとったら何もできん。あとはお前次第やろ」

勝呂の答えに、カインは息を吐いた。

怒る、か。
死んだら怒ることすら出来ないのに。

「紫煙、お前は人間や。お前がそう思っている間は、間違いなく」

怯むこともなく真っ直ぐに見てくる勝呂と目が合う。

人間でありたいなら人間であれ。

そんな言葉が頭を掠めた。

そうして、掃除に戻っていく勝呂の背中が、あまりにも自信に満ちていて…。

…あぁ、なんだか、必死に遠ざけてたことが馬鹿らしくなってきた。

そう、だな…。
もしも…俺が破滅しか与えられないと云うなら、この世界とは相容れないと云うなら…サタンのいる世界にでも行こうか。
サタンなら、絶対に死なないから。

「(よし、いざという時はサタンの紐になるわ、俺)」
『紐?!俺が養うのか?!』
「(え?サタンが嫁さん立ち位置?やだよー。こんな可愛くない奥さん)」
『俺にはユリという嫁さんが!』
「(はいはい。ごちそうさまです)」

相変わらずのユリさん贔屓め。

『いや…まぁ、なんだ…。
 カインがこの世界を全部壊しちまったら、しょうがねぇから、俺が虚無界に導いてやるよ』
「…」
その優しさがサタンらしいと、心の中で笑ってしまう。

後ろ楯があると、本当に気が楽になる…。
何かあっても帰る場所があるというのは、これほどに心強いものだったか。

ふと、周りを見渡せば、勝呂以外の全員が俺を見つめていた。
俺の答えを待っている。
どう付き合っていくのか、その答えを。

「…。…まぁ、少しずつ…努力くらいはしてみるよ」


君達が死なないことを、願いながら。




「よし、じゃぁ友達昇格だな!」

「え?…友達?」

今まで傍観を決め込んでいたはずの燐の力強い言葉に、口をポカンと開けてしまう。

「ずるいでー!奥村君!わいも!」
「私も友達になりたい!!」

呆然とするカインを余所に、志摩と杜山が手を上げて主張をし始める。

「よろしくお願いします」
カインの横で頭を下げた三輪。
神木はずかずかとこちらに近寄ってきて、目が合うと視線を反らした。
「足だけは引っ張らないでよね」
「お前はもう少し可愛げが持てんのか?!」
「あんたには言われたくないわよ!」

勝呂と神木の言い争いが始まったところで、パンパンと手を叩く音が教室に響き渡る。
音のする方を見やれば、目が笑っていない笑顔の奥村先生。

「はい。全員友達。以上で話が纏まったことにします」

「…へ?!」

「雪ちゃんありがとうー!!」

「え?えぇ?!」

「片付けたら、授業開始しますよ」

「え、ちょ…」
「何か?」

さぁ、早く片付けろと、奥村先生の目が語っていて、思わず首を横に振っていた。






ーあとがきー
友達昇格!

いやぁ…サタンとカインの現状が同じ過ぎなのに今更気付いたんです。

そして、主人公導入がようやく終了しました。
いや、なげぇよ!(笑)



















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