長編 
49-思い想い

ゆっくりと上げられた手は、俺の頭に優しく乗せられた。


Euphorbia milii
ー思い想いー


「…初めてだな」
「え?」
わしゃわしゃと頭をなで回し、シルバは楽しそうに笑った。
「カインが我が儘を言うのは」
「…そうだったか?」

自分としてはそんなつもりは無かったが、シルバがそう言うならそうなのだろう。

頭から手が離れ、シルバはふっと微笑む。

「行ってくれば良い」

シルバの笑った顔がやけに寂しげで。
思わず、俺を見つめるその瞳から視線を外した。

「カインがそれで幸せになるなら、カインがそう望むなら、行ってこい。
 …もしも、辛くなったなら、戻ってくれば良い」

そう言ったシルバの言葉が、最終試験の時の自分の思いとダブって聞こえた。

“シルバが何かしたいと家を出るなら、俺はそれを見送るだろう。
 幸せになってくれ、そう送り出す。
 もしもダメなら、また戻っておいで、と。”

やっぱり、俺達は双子なんだな…。
別れてる時間が長くても、お互いを想う気持ちは一緒なんだ。

「…ありがとう、シルバ」

やっぱり、俺はシルバと双子で良かった。



「親父までそんなこと言うの?
 キルはどうするつもり?外に行きたいとか言い出すかもしれないのに」

そんな横槍をあえて今入れてくるのが、イルミの良くないところだと思う。
空気読もうよ。

「そうだな。その時はカインに任せる」
「「!!」」
イルミとカインは同時に目を見開いた。
「カインなら、キルアを危険な目にあわせはしないだろう」

まぁ、確かに、変なことには関わらせないつもりではあるけど…。

「何より、キルアにとっての目標になる」
「ふふ…。残念ながら、俺、そこまで強くないんだけど…」
目標としては近すぎじゃないか?

「いや、そんなことはない。
 それに。あいつはまだ、念も覚えていないからな。
 カインが良い見本になれば良いと思っている」

見本か…。
難しいこと言うなぁ、シルバは。

「…まぁ、後はキルア次第かな?」

キルア、出てこいよ。
シルバからはOKをもらった。ゴン達も迎えに来てる。
後は、お前次第だよ。





***





「カインの弟って、どんな子だろうね」
「んー?そうだな。まぁ、カインがあんだけ強いからな。スゲーんじゃねーか?」
唐突なゴンの問いに、レオリオが答えた。
休憩中にそんな話題が出て、三人はカインの弟という見知らぬ人物を想像した。

「髪が長いのは弟とお揃いって言ってたよ」
「溺愛しているとも言っていたな」
「あとは一般人じゃないらしいってことくらいか?」
ゴン、クラピカ、レオリオと順に知っている情報を出すも、全くイメージ像が出来上がらない。
「…カインについて、私達は何も知らないな」
クラピカの言葉に、レオリオもゴンも黙りこむ。
「どこに住んでいて、どんな生活を送ってきたか…」
「まぁ、最終試験でクラピカに言ってた事から考えると、病気か何かで長い眠りについたってことくらいか」
レオリオの言葉に、クラピカは複雑そうな顔をして、一つ頷いた。
「…戻って来るだろうか?カインは…」
「当たり前だろ。約束を破るやつじゃない。と、思うけどな、俺は」
そう言ってニヒルに笑うレオリオに、クラピカも眉尻を落として微笑んだ。

そういえば、とゴンは続ける。
「ヒソカやイルミとは元々知り合いだったのかな?」
「ん?…あんまりそんな感じはしなかったが…。
 カインの実力なら、知っていてもおかしくないな」
試験の終わった後、カインとイルミは何を話していたのだろう?
気にしないようにしていた事柄がクラピカの頭を霞めた。
「私達は本当に、カインを知らないな…」

どこかにいるはず友人は、記憶の隅で笑っていた。







ーあとがきー
クラピカがブルー。
E主、早く帰ってこい。










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あきゅろす。
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