カナヅチ 恐怖と不安 教室に戻ったら茜がこっちに近付いてきた。 「涼稀先輩モテモテだよね!みんな瑞葉のこと羨ましがってたよ!」 「羨ましがるも何もただの部長と部員なんだし……」 「にしても、涼稀先輩はそっち関係には疎そうだよね」 確かにそうだよね、とあたしと茜は笑った。あんなに格好いいのにもったいないとも思った。 今日の部活は茜と2人、はりきって早めにプールに到着した。 涼稀先輩はあたしたちの後からやってきて、なにやらあたしたちのやる気を見て満足そうだった。 「瑞葉、目標は25mだ。大丈夫、俺も一緒に泳いで溺れそうになったら助けるから」 初の25mの挑戦。陸上での25mは何秒かで走れるのに、プールではとても長く感じた。 泳ぐフォームとかタイムとか、今は気にしない。とにかくなんでもいいから目の前のプールの端を目指すだけだ。 正直いって怖い。途中で溺れるかもしれない。 それでも涼稀先輩が助けてくれるって言ってたのを思い出したら、少しだけ恐怖が和らいだ。 [←][→] |