カナヅチ あらぬ誤解 翌日の放課後も涼稀先輩は図書室に来てくれた。ギャラリーも少し増えていたけど、気にしないようにした。 先輩はあたしの横に座ってまた分からない所を教えてくれる。先輩の近くにいたらものすごい視線が気になる。けどそれは仕方ない。 「っ瑞葉!」 いきなり名前を呼ばれたからびくっと身体が浮いた。出入り口の方を見たらやっちがいた。 「はぁー。やっちか…驚かさないでよ」 「って、お前何やってんの?」 やっちは訝しげな目であたし達を見た。机には教科書やノートが散らばってるのに、見えてないのかな。 「見ての通り勉強してるの」 「そうじゃなくて!…そいつ誰だよ」 先輩のことをそいつ呼ばわりするし、的確に質問に答えたはずなのに違うと言われるしで、少しムッとした。からかってやろうと思ったけど、あらぬ誤解をされたら困るからやめた。 「涼稀先輩だよ」 そうやっちに言ったら、石みたいに固まってしまった。言葉が足りなかったみたい。誤解しちゃったかな。 [←][→] |