カナヅチ
先が見えない
「あ…先輩、忙しいかったら本当無理しないでいいですから」
ちら、と手元のプリントを見ながら言った。涼稀先輩もあたしの目線に気付いた。
「あぁ、これは進路希望調査書だよ」
今のあたしとは無縁なモノに思えた。1年でも進路希望調査はしたけど、進学か就職かとかおおまかなことしか聞かれなかった。
だけどあと1年後、あたしもこの用紙に記入しなければならない。
進学か就職かということにも答えられないあたしには、1年が短いような気さえしてきた。
先に待ってるのは漠然とした不安だけ。考えたら怖くなる。
だから何も考えたくなくて、今は勉強に集中した。ごちゃごちゃな人間関係やキツい部活のことも忘れて。
「……あ、先輩、ここって…」
「あー、それは……」
「俺も!俺もわかんないっす!」
「やっち!静かにしてよ」
テストまであと少し。
やれるだけ頑張ろう。
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