カナヅチ 化けの皮 用意が完了してプールサイドに行ったら、もう涼稀先輩はいた。 今日も涼稀先輩に会えて嬉しくて、ついうっとり見惚れてしまった。 「おい!さっさと始めるぞ!早くストレッチしろ!」 一気にして正気に戻り、顔はきょとんとなった。 今聞こえた大きい声は聞き覚えがあったけど、内容は理解しがたいものだった。 ………… え…!?今のって涼稀先輩が言ったの…!? 昨日まではふんわりしたイメージだったのに、今は熱血スポーツマンになっていた。 「涼稀先輩……?」 どうやら茜もふいを突かれたようで、確かめるように先輩に聞く。 「時間がもったいない。早くしろ!」 そう話すのはやっぱり涼稀先輩の声で、昨日までの妄想は全て打ち砕かれた。 とにかく早く準備をしないと更に機嫌を悪くしそうだ。詳しい事情は後回しにすることにする。 あああ……正直このスポ根にはついていけない…涼稀先輩は好きだけど……でもカナヅチってバレたら……? 考えるだけで怖いな…… あたしの心の中はごちゃごちゃに掻き混ぜられたが、とにかくやれるだけやることにした。 [←][→] |