はろー!シンビジューム
9
「どうして協力するって言っちゃったんだろ……」
望は昨日の正憲との会話を思い出し、後悔していた。
恋愛経験ゼロの望がしてあげられることなんてあるのだろうか。
はっきり言って役に立てれる気が微塵もしない。
「お前がため息だなんて似合わねーな」
「……悩み事くらいあるし」
今は体育の後片付けで、ちょうど昼休み。
前回紺野にひどいことを言ってしまったと思っていたが、当の本人は至って普通だった。
時間もあるし、ここはひとつ紺野にでも聞いてみようかと思った。
「ねえ、紺野は友達に好きな人ができたら、どうやって協力する?」
「協力しねーし」
(……こいつに聞いた私が馬鹿だった)
確かに紺野が協力してる姿なんて想像できないし、なんだかおかしい。
「……それに、自分1人の力で頑張んねーと意味ねーだろ。相手にも失礼だし」
「……そ、そうだね」
紺野はたまに確信をついてくる。
友達同士ではしゃいで協力されても、なんだか真剣さが伝わらない気がする。
紺野はやっぱり、優しい人だ。
「でも私ね、ちょっと寂しいんだ。その友達に好きな人ができてさ」
なんだか置いていかれた気がして、紺野に本音をポロリと零してしまった。
「……お前、そいつのこと好きなんじゃねーの」
「……え、」
「それ、好きなんだって。その友達のこと」
望はぽかんと口を開け、1つの疑問が浮かんできた。
紺野は望と目を合わせようとはしなかった。
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