はろー!シンビジューム
7
紺野と親しくなってから、ひと月程が経った。
相変わらずクラスでは話しかけなかったし、話しかけられもしなかった。
それでも体育の授業の前後は今までのように話したし、笑顔も見せていた。
「のん、今日時間ある?」
紺野の後ろに座っている正憲に呼び止められた。
「大丈夫だけど……」
「じゃあ放課後教室で待ってて」
幼なじみのマサが真剣な顔で言う。
きっと大切な話なんだろうと、望も心を構えた。
そして放課後、気づいたら教室には望と紺野だけになっていた。
「紺野と教室で2人きりだなんて珍しーね」
「お前、まだ帰んねーの?」
(ん、あれ……?)
正憲と望が会話をしていた時、紺野は前の席にいたはずだ。
普通に聞こえていたと思ったが、聞いてなかったのかもしれない。
「ああ……。マ、と、友達と約束してるんだ」
望はマサの名前を出すのを止めた。
何か重大な話かもしれないし、名前は伏せた方がいいとなんとなく思った。
「ふーん。お前にも友達いるんだな」
「あんたに言われたくない!」
「可愛くねー奴」
もっと言い返してくるかと思ったが、紺野はすたすたと帰っていってしまった。
まさか友達いないと言ったことに傷ついてしまったのかも、と思っている内に正憲がやってきた。
「待たせてごめんなー」
「全然大丈夫」
正憲はなんだか言い出しにくそうにもぞもぞしていた。
まさか、と思った。
幼なじみで昔から仲が良かったとは言え、望は正憲のことはそれ以上に思っていない。
望は少しだけ身構えた。
「俺さ……実は、
初めて好きな子ができて……どうすればいいか分かんなくてさ……」
望はため息を吐き出し、緊張の糸をほどいた。
そして妙な勘違いをしていた自分が恥ずかしくなった。
それにしても望と同じ様に恋愛に無頓着な正憲が恋をするだなんて、正直驚いた。
そして少し、淋しく感じた。
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