はろー!シンビジューム
5
紺野はもしかしたら誤解されやすいタイプなんじゃないかと思った。
今だって、つい怒ってしまって後悔した顔をしている。
けれどそこを理解した今、望の中では紺野は怖い人ではなくなっていた。
「な、笑うなよ!」
「だって…なんか、可愛い……」
「………か…!」
くすくすと笑いの止まらない望の横で、顔を真っ赤にしてかなり間抜けに口を開けている紺野。
可愛いだなんて初めて言われたであろう紺野は、ただ呆然とするだけだった。
望の中にあったイメージとのギャップが激しくて、想像できなかったことが現に今起きていると思うと、かなり面白かった。
「……お前こそ笑うんだな」
「……な、なにそれ」
「いつも無表情だし」
紺野がみんなに怖い人だとレッテルを貼られている様に、望も冷たい感情のない人だと思われていた。
望はそれでもいいと思っていたが、それを面と向かって言われたら少し苦しい。
「………、」
「ま、そんな滅多に笑わない奴の笑顔が見れたなんて、自慢になるよな」
(ん……?)
これは紺野なりの励ましなのかよく分からないが、紺野は穏やかに笑った。
「私だってあんたの笑顔見たの初めてだし」
「お、お前……可愛くねーな」
柄にもなく望たちは笑い合った。
こんなに素直に笑ったのはいつぶりだろう。
ただ笑ってるだけなのに、なんだか今日はいい日になる気がする、と珍しく清々しい思いで体育を迎えた。
[←][→]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!