はろー!シンビジューム
10
「わ、私、その友達が男子だなんて言ったっけ?」
「………」
「……あ、あのさ、紺野、」
「……なに」
「昨日あの後、すぐに帰った?」
「………」
紺野は何も言わない。
それが望には肯定を意味していることに気がついた。
(やっぱり昨日の私たちの会話、聞いてたんだ……)
今更聞かなかったことにして下さいだなんて言える訳がない。
どうしよう、と望は途方に暮れた。
「……お前らの声がでけーから、嫌でも聞こえてきたんだよ」
紺野はまたあのバツの悪そうな顔をした。
「あ、あの、紺野、」
「分かってるって。……言わねーから」
望はホッと一息ついて安心した。
(……って!)
「今あんた、私がマサのこと好きだとか言わなかった!?」
「どう考えてもそーだろ。鈍感女」
「そ、そんな……」
望は正憲のことは仲のいい幼なじみとしか思ってなかった。
でもそれなら、こんなに寂しいのはなんでなんだろう。
この虚無感は一体なんなんだろう。
「……ご愁傷サマ」
紺野に言われて気づいたけど、これが恋だとしたらもう失恋したのではないだろうか。
「……紺野のバカ」
なんだか急に脱力し、やるせなくなってしまった。
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