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幕間リローデッド第10巻経過報告:01(サンプルあり)(2017/10/18)
古鉄≪というわけで、幕間リローデッド第10巻の経過報告です。
以前もお話した通り、筆が進んで今回でApocrypha編終了。
いろいろ原作をすっ飛ばしてきたこのお話も、いよいよ終了です≫
恭文「アニメ放映前に、小説を元に書き出した話だったからなぁ。できる限り違うところを多くしたかったわけで。
その結果作者は『カルナ、最終決戦まで残しておけばよかった』と反省したのは内緒」
古鉄≪そしてアストルフォさんが全開になるのは、アニメを期待していただければと思います≫
(第二クールも始まったしね!)
恭文「果たしてそのラストはどうなるか。原作バスターが定められたこのお話で、天草四郎はどんな地獄を見るのか」
天草四郎「地獄ですか!?」
古鉄≪原作ではある意味幸せなエンドを迎えましたけど、こちらでは……ではどうぞー≫
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
さて……この場にたどり着くのは誰でしょうなぁ。蒼凪恭文は当然として、ジャンヌ・ダルクも当然くると見ていい。
彼女こそ最大の難敵であり、マスターを打破する可能性のある≪ただ一人のサーヴァント≫。
だからこそ吾輩の宝具に託されたわけでしてな。もちろん殴り合いなどは吾輩、完全に専門外です。
ですが知名度という点ではマスターを上回り、ジャンヌ・ダルクに匹敵するサーヴァントではある。
更に吾輩は言葉を手繰る者。
その点においては、聖人など歯牙にかけぬ力を持つ。本来なら聖杯戦争では不要ですがな。
万の言葉を幾ら尽くしても、剣兵の一太刀には勝てない……だがしかし! その条理を覆すのもまた英霊!
一太刀に敵うはずのない万の言葉で、この宮廷道化師は英霊に立ち向かい、勝利する! なんと痛快なことか!
そう……あの少年と与えられた役割(ロール)は同じ。それをこの世界市場唯一無二の劇作家≪シェイクスピア≫が成そうと言っている!
「さぁて……我が舌がよく回るように祈りますか! 何しろこの舌で聖女を焼却しなければ、吾輩の命がかき消される!
一か八か、伸るか反るか。全くサーヴァント冥利に尽きる……シロウ・コトミネめ、この吾輩を信頼するとは!
仕方あるまい、あの聖女を迎える準備は万端だとも! は、最初の一言を言い終える前に玉砕するか、はたまた吾輩の言葉が上回るか――さて、どちらか」
――だがその瞬間、庭園が大きく揺れる。
一体何事かと首を傾げたところで……熱が走った。
◆◆◆◆◆
「殺して、やる……!」
第一の宝具――『虚栄の空中庭園(ハンギングガーデンズ・オブ・バビロン)』。
幾百年の年月を隔てた巨壁だろうと、どのような魔術的強化を施したとしても、奴には通用しない。
奴が触れる理は神秘に非ず。神秘を持って物質世界の真理を操り、その分子から切り刻む。
第二の宝具――『驕慢王の美酒(シクラ・ウシュム)』。
例え神代の存在であろうと、奴に毒は通用しない。突き詰めれば一種の概念武装であるにも関わらずだ。
仮に隙を突いて、その毒を仕込んだとしよう。奴はその作りをたちまちに理解し、分解する。
神秘に神秘で対抗するのではなく、この世の……物質世界の理からアプローチを仕掛け、打破する。
そんな異能力者が存在していたこと。それがこのセミラミスの天敵たり得るというのは、実に皮肉なことだった。
「殺して、やる……」
もう言うまでもなく完全敗北。奴という術者の前では、我の宝具はただの児戯にすぎない。
だがそれは、現世の理に従えばの話。
だがそれは、宝具に頼った戦い方をすればの話。
その力で我らサーヴァントの肉体が傷つけられるか? いいや、無理だ。
◆◆◆◆◆
拳が弾かれたかと思うと、アキレウスは懐へと飛び込んできた。
またタックル……すかさず右膝蹴りを打ち込むと、彼は抱え込むようにして受け止める。
一瞬速く顔面に蹴りが当たっても、止まることなく……後方へと反り投げ。
宙に浮いた? いいや違う。身体を玩具のように振り回された不快感……次の瞬間、顔面を強烈に打ち付ける。
問題は態勢。アキレウスは立ったまま、間髪入れずに足首を捻って、関節技に移行する。
素早く前進を反転させると、即座に膝を破壊しようとかかとが捻られていく。
普通であれば、捻られた咆哮へと再度回転。飽いている足で蹴って、ロックをすり抜ければいい。
だが私は……両手をぺたりと床に付けて、ただ耐える。
「何ぃ!?」
その上で、右足の極力飲みでアキレウスを持ち上げ……彼は咄嗟に拘束を解除。間合いを取ってくる。
「ふぅ……やれやれ、驚きましたよ」
すっと起き上がると、唇に血が滲んでいることに気づく。それを払いながら、改めてアキレウスと対峙――。
しかし……あぁ、駄目ですね。ここで笑うと怒られそうです。
今のは油断が過ぎた。過小評価が過ぎましたよ。
……彼は全てを出し尽くし、私を圧倒しようとする。ならば私も相応に……そういう勝負を臨んでいたはずだ。
足は動き、腕も動き、思考は冷えている。えぇ、大丈夫……まだこれからですよ。
……それに、ヤスフミの分まで楽しむとも言いましたからね。
だから軽くその場で跳躍……その上で床を蹴り砕いて跳躍。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
古鉄≪この世に在り、物質の理に属するものなら、例え神代の粋だろうと破壊できるのがうちのマスターです。
それゆえにセミラミス様も宝具を封殺され、完全に大ピンチ……もちろんここまで、特に目立っていないキャスターも≫
恭文「キャスターについては原作と違って、ジャンヌを完全に引かせているからね。その時点で……もう」
(バスター、バスター、バスターだ……バスターだ……!)
恭文「そしてその代わりに、守りの要が登場……桜セイバーにとってはここからが試練」
桜セイバー「はい?」(お団子もぐもぐ)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
”ただ”
ドアを蹴破り、とある大部屋に……書物が大量に置かれた部屋に飛び込んだ瞬間。
猛烈に嫌な予感が背中を走り抜ける。
”つい先ほど、サーヴァント反応が増えました!”
慌てて術式変更。後ろから迫る鬼の気配を回避するように、三人で転送する。
それはソニックムーブを吐きだしながらも駆け抜け、僕達がいた場所を切り裂いていく。
虚空に現れながら、そのゾッとするような斬撃に笑ってしまった。
それを成したのは一人の男……日本刀とライフル銃を携えた、三白眼の男。
洋装の軍服に黒衣(マント)を羽織ったその姿からは、鬼が滲んでいた。
こちらを見上げるその視線に、つい笑みが零れてしまう。
放たれるライフルの連射は乞食清光で切り払い、何とか無事に着地する。
「……!」
すると桜セイバーが息を飲み、ゾッとした様子でその男をガン見した。
「お兄ちゃん、コイツ……!」
「……最後の門番ってわけだ」
「ほう……今のを避けるか。それに」
そこで鬼は殺気を増大させる。鬼の覇気を僕にぶつけ、押しつぶそうとする。……あぁ、これは駄目だ。
「俺がガンつけてもビビるどころか、震えてやがる……震えて、喜んでやがる」
戦いたくなる。
今回は手段を選ばず、趣味を差し挟まず、徹底的に奴らを叩き潰すって決めたのに。
なのに、戦いたくなる……この鬼と戦いたくなる。
心が震える……どこまでも震えて、足を踏み出したくなる……!
「その瞳、その人ならざる覇気……誰かさんを思い出させる。
お前が呼び出しに応じただけあって、いいマスターじゃねぇか……総司」
でもその歓喜は、真名を言い当てられたことで一気に停止する。
どうして桜セイバーの真名を……奴らが教えた?
いや、違う。
今の呼び方は、単なる情報に向けたものじゃない。
背中を、命を預け合い、あらゆる戦いを超えてきた信頼……家族に向けるような穏やかさがあった。
だったら、コイツは……!
◆◆◆◆◆
――赤子のような産声を上げながら、大聖杯から両手を突き出し……進化のときをまつ世界へと帰還。
大聖杯との完全接続を果たしたことで、私の霊基も更なる高みへと昇っていた。
髪は長く揺れ……さすがに面倒なのでポニテ状態ですが。
服装も神父服から和装束へと変化。体中にみなぎる力に満足しながら、周囲を見やる。その上で念話を送る。
まずは……いろいろと迷惑をかけた、大事なパートナーに。
”アサシン、ご心配をおかけしました……だが、叶いましたよ。何もかも”
今は機関を温めている状態。間もなくこの大聖杯は天の杯≪ヘヴンズフィール≫に至る。
霊脈から魔力を補充しながら、全人類に不老不死を与えることになる。
半端な不老や不死ではない。腐る肉体という枷を捨てた≪完全な不老不死≫を、全人類で分かち合う。
善悪は関係ない。激情や我欲は薄れ、虚栄は意味のないものとなる。それが生み出すのは、完全無欠の平和だ。
……あぁ、そう言えば……その理想型とも言える存在がユグドミレニアにはいましたね。
彼らが道具として使い捨てているホムンクルス達……あれこそ、人々が至るべき次のステージそのものだ。
我欲に流されず、純粋な有り様だ。人ではそこに至ることはできない……だが、これからは。
『――天草四郎時貞、聞こえる!? これから大聖杯にプロトンサンダーを放射する!』
そこで分かりやすい状況説明が響いた。私達が危機的状況という、とても丁寧な説明……!
『庭園を先日破壊した、原子分解の砲撃だ! 魔術的防御は一切通用しない! さぁ……どうする! 全力で守らないと、大聖杯は粉々だぞ!』
しかも言うことが酷すぎて、唖然とするしかなかった。
ただの人間が、大聖杯を壊す? 本来なら不可能だ。
だが……先日のあの、不可解な損傷を思い出す。セミラミスも首を傾げていた、アーチャーの宝具らしき損傷だ。
庭園には当然魔術的加工がされているし、一般兵器では傷など付くはずがない。それを原子分解?
あり得る……十二分にあり得る。背筋がゾッとするほどの危機感が、啓示とともに舞い降りた。
「冗談では、ない……」
神秘で神秘を打破するならともかく、物理的アプローチから破砕? 無茶苦茶にも程がある。
魔術強化はどうした。セミラミスの宝具はそれほどに脆いのか? そんなはずはない。
もしそれを可能とするのなら、奴は神すら殺せることになる。
神が物質の理に囚われているのであれば、容易く殺せることになる――!
◆◆◆◆◆
「なぜだ……」
奴は混乱していた。
「なぜ人間である貴様が、ここにたどり着く……!」
なぜサーヴァントでも何でもない……異能力者と言えどただの人間に、ここまで追い詰められるのか。
「最大の障害は、ルーラーだった」
最初期から警戒していたルーラーではなく、ただの人間に命を、夢を脅かされるのか。
「彼女であれば……彼女がたどり着くのであれば」
なぜ自分の策略が、六十年もの時間をかけて積み上げた計画が、こうも簡単に切り崩されるのか。
分からない。
分からない。
分からない――。
一体何が駄目だったのか。自分とこの男の差は一体何なのか。
それが分からない……ならば、断言してあげよう。
「愚痴なら地獄で仲間に言ってろ」
「何……」
「さっきはお前の流儀に付き合ってあれこれ言ったけど、ぶっちゃけ興味がないんだわ。
人類救済の是非も、剪定事象のことも……なーんにも」
そう、興味がない。それならなぜ止めるか。なぜ戦うか……奴はその瞳で問いかけてくる。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
恭文「天草四郎が切り捨てたもの……それゆえに、不完全な人間にすら劣ること。
それを語るのであれば、ぶっちゃけ剪定事象のことなんて必要なくて」
古鉄≪ユグドミレニアのホムンクルス達を完全なものとするなら、物語が進むことでみんなは不完全に進んでいたわけです。
アダムとイヴが知恵の身を食べ、楽園から追い出されたように……この戦いで天草さん、それを嫌ってほど突きつけられます≫
(その辺りの対比は、原作主人公でもある”彼”と比べた方が明確だと思います)
桜セイバー「いや、その前に……ちょっとー! FGO前の時系列でいいんですか!」
恭文「細けぇことはいいんだよ!」
桜セイバー「マスターがぶん投げた!」
恭文「ただ、問題が一つ……」
桜セイバー「はい?」
恭文「書いているとFGOじゃなくて、修羅の刻な(ぴー)さんに寄ってしまう……!」
桜セイバー「ちょっと!?」
(または三谷幸喜さんの『(ぴー)』に出てきた方……!)
恭文「確かに(ぴー)は数々の話でいろんな人が描写しているけど、予想していなかった。
そういうのに引っ張られるって……! なんだったら司馬遼太郎先生の『燃えよ剣』もちょっと入ってるかも!」
桜セイバー「FGOのあれこれで再チェックですね」
恭文「でもほら、桜セイバーも、戦ったって言ってたよね。あの最強の陸奥さんと」
桜セイバー「マスター、それは後年付け加えられた逸話です。
というか、それだと私は月詠幾斗君やフェリーニさんボイスになるんですが」
恭文「ですよねー」
桜セイバー「そうですよ! 私は悠木碧さんボイスですよ!? そこは揺るぎません!
……というわけで、私の声を忘れていたマスターにはお仕置きとして……そ、総司がいっぱいささやきかけまごぶぅ!」
恭文「流れるように吐血した!? 総司、しっかりー!」
(夕飯の優作鍋が美味しくて、食べ過ぎたようです。
本日のED:sacra『identity』)
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