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作者でも分かるとまと同人誌情報コーナー
とある魔導師と彼女の鮮烈な日常SS第2巻 経過報告:03(サンプルあり)(2016/5/29)



[TOMATO] とある魔導師と彼女の鮮烈な日常 Second Season02『フェイズ』



恭文「というわけで、ここからは書き下ろし紹介……ただ特別書き下ろしその2は、本編に収録しきれなかったカットシーン集で」

古鉄≪アップするとネタバレになるという悲しさ……こちらではいつも通りなめしばなをご紹介します≫



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


トレーナー四姉妹の麗さんから相談を持ちかけられました。

なので今西部長のオフィスへ――そこには武内さん達も当然いて。


「……先日は、聖が迷惑をかけた。武内くんもすまない」

「いえ。それで、今日は一体」

「聖と彼が、どうして喧嘩(けんか)別れしたのか……原因が分かった。ただ、その」


いつもきびきびとした麗さんが、言いよどんでいた。その様子に重たい事情なのはすぐ理解できたので。


「あの、それは僕達765プロ勢が聞いても」

「だよなぁ。麗、オレ達は部外者だぜ?」

「いや、是非聞いてほしい。蒼凪プロデューサーも、食べ物のことはかなり詳しいとか……まぁヒカリもだが」

「なんだ、食べ物がらみのトラブルか」

「多いですね、私達の周りはこういうの」


何、食生活の問題で破局したの、あの人。でも麗さんはサッパリだから、頭を抱えていると。


「どういうことかね、麗くん」

「まず前提から……麗と彼は家賃を節約しながら、共働きで結婚資金を貯(た)めていたんです。
今時珍しい好青年で……私達姉妹も、両親も快く同居を許しました。それで、彼のアパートへ」


へぇ……結婚資金も自分で、かぁ。聖さんの性格や立ち居振る舞いを考えると、確かに合っている。


「それで、そもそもの原因は」

「……ソースなんです」

『ソース!?』


ソース――それは身近に存在する、食べ物を彩るエッセンス。

その奥深さゆえに、聖さんは幸せを奪われた。ならば……取り戻すのもまた、ソースの力だろう!


◆◆◆◆◆


「あのね……喧嘩(けんか)の原因はこれなんだよ」

「……ちょっと、蒼凪プロデューサー! それって」

「ソースゥ!?」


そう……今回僕が取り出したのは、ブルドックの中濃ソース。だから全員がざわつくわけで。


「……妹が夕飯の際、ソースをコロッケにかけたら……彼が急に文句を付けてきて、それで……らしい」

「……杏、ちゃんと謝ってくる」


あの杏が素直になったぁ!? あ、李衣菜と蘭子も続き始めた!


「それは、彼氏が悪いよね! ていうかやば……私も謝ってくる!」

「理解し難(がた)き、男の本能……!」

「まぁまぁ、おのれらも待って。……残念だけど、そういうことはある」

「いや、でもソースだよ!?」

「結婚ってのはね、小さなことのすり合わせなの。特に食事関係は……想像してみて」


みんなを制止し、目を閉じてもらう。さぁ、想像してみよう――。


「例えばおのれら、目玉焼きには何をかける」

「みくはソースにゃ!」

「え、私はしょう油」


あぁ、李衣菜が反対派だから、視線がバチバチ……でもみくがソースか。うん、みくは参加決定だね。


「じゃあみくの彼氏がしょう油派だったらどうする。許せる?」

「まぁ、好みはそれぞれだから」

「毎日だよ」


なので一時ではなく、時折ではなく、毎日……そうみくに、みんなに念押しする。


「毎日、毎日……朝昼晩、毎日。目玉焼き以外でも同じだよ。カレーにはマヨネーズ」

「そ、それはあり得ないにゃ! みくはカレーにもソース!」

「サラダにはドレッシングじゃなくて塩……塩のみ」

「サラダソルトじゃなくて!? 幾らなんでも渋すぎるにゃ!」

「でも相手は決して譲らない。ううん、ソースなんてあり得ないとか、上から目線で言ってくるかも」

「それは許せないにゃあ! みくはソースが一番なの!」

「さぁ、どんどんいら立ちが募ってくるよね……全てが完璧でも……ほら、もう拳を握ってる」


それでみくがハッとする。両拳を振り上げ、握り締めている自分自身に――。


「こ、これは……!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「麗さん、具体的にはそういうお話……なんですか? コロッケにしょう油派だったとか」

「又は塩かなー。きらりのパパがやってたけど」

「いや……これが理不尽な話なんだが」


美波、きらりの問いかけに首を振り、麗さんは困惑した表情。


「食卓に並べた、二人分のコロッケにソースをかけたとき、彼が『なぜこのソースなのか』と聞いたそうだ。
それで聖は『コロッケにかけるソースなんて、どれでも同じだろう』と答えたら、会話がそのまま終わって」

「それだけ、ですか?」

「はい……その翌日、彼が突然『一緒にやっていく自信がなくなった』と言いだして。
そこから喧嘩(けんか)に……妹も気が強いものですから、売り言葉に買い言葉で」


……そのとき、場の空気は真っ二つに分かたれた。


「聖はそういうことにこだわらない方だが、彼は逆に強いタイプだったようだ。
水と油で合うかと思っていたが……だが几帳面(きちょうめん)すぎるとも思えて」

「確かに、ソース一つでそれは」

「ちょっとヒドくない!? 莉嘉、サイテーだって思うな!」

「きらりもー。コロッケが美味(おい)しくなかったーとかならともかく」

「むしろそれ、別れて正解だったんじゃ……ね、卯月」


凛は卯月に問いかけ、今西部長達とようやく気づく。
そう、空気は二つに分かたれた――。

凛、きらり、智絵里、杏、莉嘉ちゃん、みりあちゃん、アーニャ、ちひろさん、麗さん以外の全員は――。


『あり得ないわ』と頭を抱え、首を振っていたから。


「……麗さんと聖さんには申し訳ありませんが、いささか無神経かと」

『え!?』

「これは聖くんが悪いよ。というか君達も……ちょっと、マズいよ? 結婚とかしたら同じ轍を踏む」

『部長!?』


しかも武内さんが直球を投げたから、九人は余計に戸惑うわけで。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


りん(アイマス)「……分かる! すっごい分かる! あたしもアンタとめしばなできて、ホント楽しいし!」


(小悪魔アイドル、突如登場)


恭文「作者もこの話を書くまで知らなかった、ソースの奥深さ……駄目だ、とりあえずじゃあ済まない!」

古鉄≪ちなみにりんさんは≫

りん「カゴメや有機野菜シリーズやら、ちょっとお高めなのを巡って……一周回っての、あえてのブルドック中濃!」

恭文「この勢いだよねー」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「それで聖さん」

「すまん。君までこんなことに巻き込んでしまって」

「構いませんよ。……それでソースは何をかけたんですか」

「普通に、スーパーとかでよくあるものだが。白い、四角いキャップの」

「ブルドックの中濃ソースですね」


そう言いながら、野菜が描かれたソースを置く。


「これだ」

「彼の出身地は」

「親は転勤族だったらしい。生まれは名古屋(なごや)で」

「……む」


ヒカリも気づいたらしく、コロッケの一つを貪りながら唸(うな)る。


「そこから大阪(おおさか)・兵庫(ひょうご)・広島(ひろしま)を転々としたそうだ」


「名古屋(なごや)、大阪(おおさか)……じゃあ東京(とうきょう)には」

「元々は大阪(おおさか)で知り合ったんだ。そこから、遠距離恋愛で」

「あぁ……だから聖さんのアパートに入ったんですね。上京するから」

「その通りだ」

「でもこれで、ニュアンスが分かってきましたよ。武内さんはどうです」

「……私も、朧気(おぼろげ)ですが」


では……武内さんに、左手で『どうぞ』と解説役を譲る。その間に僕は、コロッケとご飯の配膳を済ませよう。


◆◆◆◆◆


「実はソースというのは、地域ごとのギャップを丸抱えしたまま発展しているのよ」

「……最大のギャップは、目玉焼きやフライ、天ぷらを巡る【しょう油・ソース文化圏問題】ですね」

「あれ、それって……私とみくがさっきぶつかった」

「えぇ。関東(かんとう)出身の多田さん、関西(かんさい)出身の前川さんの好みが分かれていたのは、ある意味必然です。
前々から西日本(にしにほん)はソース文化圏とも言われていますから」

「……我が生まれし、漆黒の山脈も同じく」


神崎さんは熊本(くまもと)出身ですが、一応の西日本(にしにほん)。やはりソース文化は根強いようで、力強く頷(うなず)かれた。


「そして粉もの文化の関西(かんさい)を筆頭に、家庭辺りのソース消費量も多いのも特徴。
基本にウスターを押さえた上で、そこから【とんかつ・お好み焼き】など、好みに合わせて追加する傾向がある」

「対して我々が暮らす東日本(ひがしにほん)は、しょう油ゾーンです。ソース需要の全てを賄っているのが、中濃なんです」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「ブルドックもまた関東(かんとう)出身の我々にとっては、別格のソウルソースです。
むしろ創業百年を超える老舗だけに、マニア向けの奥行きもトップレベルかと」

「マ、マニア向け? Pくん、それって」

「簡単に言えば種類です。おなじみ通常版の上位グレードとして【贅沢(ぜいたく)ブレンド・有機シリーズ・特級シリーズ】がありますから。
更に中濃オンリーの最高峰――スーパープレミアムソース極、有機野菜使用のソース。
塩分50%カット、有機野菜使用糖類カロリーハーフソース、うまソースシリーズ。
更に更にチューブ容器のお好み焼きソースなどなど、凄(すさ)まじい数のラインナップが」

「……数が多すぎ!」

「き、きらり……目が回りそう。そんなに見たことないよー」


諸星さんはまだ若いので、仕方ないと思います。なのでその、落ち着いていただけると……深呼吸をしましょう。


「アンタも詳しすぎ……」

「最初は中濃だったんですが、ある時期から飽きまして……それから他のを試すうちに。あとは公式HPなどの情報網もありますので」

「それでか。じゃあさ、それだけあるなら味も当然違うよね。一番好きなのは」

「いろいろ試した結果、ブルドックの個性的な味に落ち着きました。
現在は積極的選択として、中濃メインになっています」

「とりあえずじゃなくて、自分から選んでの中濃……!」

「……ふ、プロデューサー」


多田さんもこだわりがあるようで、眼光を鋭くし始めた。


「ここにロックなカゴメ派もいるよ」

「え、李衣菜ちゃんもですか! 私もパパとママ共々カゴメ派です!」

「私、最近は色薄めなソースが好きなの」

「いやいや、ソースはカラメル色素で真っ黒なのが美味(おい)しいにゃ!」

「みなさん、やはりこだわりがあるんですね。……聖さん」


多田さん、島村さん、新田さん、前川さんのこだわりを見て、聖さんも驚いた様子。

同時に恐怖もしていた。あのとき……一体何を放り出してしまったのかと。


◆◆◆◆◆


「まぁいろいろあるけど、いきなり個性派の地元系ソースに行くのもどうかと思うので」

「よく手に取られる、無意識下のソースを再確認ですね」


武内さんが見やるのは、何度も話に出ているブルドックの中濃ソース。でもこれだけじゃあ足りない。


「卯月、李衣菜、おのれらはカゴメが好きなんだっけ」

「はい」

「ロックだよねぇ、カゴメ」

「なら……武内さんにもお聞きします。二つの味、その違いを具体的に説明できます?」

「「……!」」


あ、言葉に詰まった。武内さんも同じくで、冷や汗がだらだら出始めてる。


「そ、それは……ちょっと、難しいです」

「えー! プロデューサー、しまむーも好きって言っててそれは」

「ロ、ロックってのは、感性だから……言葉じゃないんだよ! うん!」

「李衣菜ちゃんもおかしいにゃ!」

「ならおのれらは説明できるの?」


なので未央とみくにツッコむと、急に愛想笑いを始める。いやいや、そんな怯(おび)えなくてもいいのよ?


「ごめん、無理……!」

「みくも、さっき言った通りだから」

「だからこその無意識下だよ」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


恭文「というわけで、以前ほか弁話でもやった『しょう油・ソース文化圏』にもまた踏み込みつつ、ソースのお話をガッツリします」

古鉄≪そして今回大活躍なのが、関西圏のみくさん≫

りん(アイマス)「そっか……ソース文化圏の中心地だしね、大阪は」

恭文「ある意味本編より活躍しているので、お楽しみにー」


(というわけで、鮮烈な日常SS第二巻、なにとぞよろしくお願いします。
本日のED:蒼穹『渋谷凛(福原綾香)』)







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