作者でも分かるとまと同人誌情報コーナー
幕間第39巻経過報告:03(サンプルあり)(2015/11/29)
古鉄(A's・Remix)≪というわけで、ここからはISクロスとなります。前回までで白式をぶっ壊したわけですが≫
恭文(A's・Remix)「当然それ絡みでゴタゴタが……知らないよ、僕は」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
そして翌日。やってきました一年四組――朝礼も始まる前、学内のうわさ話や流行(はや)りの番組やアーティストについてかしましく喋(しゃべ)る。
いろいろ特殊な学校だけど、朝の一時がちょっとした社交の場なのは変わらない。でも、そんな中に僕が入ったことで、ざわつきの色が変わる。
「え……八神恭文君!? 一年一組の!」
「うそ、どうして! クラスを間違えた……なわけないかー」
「二組ならともかく、四組だしね。えっと」
「実は更識簪さんにちょっと用事があって」
「あ、更識さんなら……更識さーん、一組の八神くんだよー!」
窓際、教室の後部――透き通るような水色の髪を肩まで伸ばし、空間コンソールを叩(たた)く子がいた。
差し込む太陽が髪や眼鏡を輝かせ、無駄に神秘的な姿となる。モニターを見つめ、集中しているせいもあるだろうか。
でもクラスの子が声をかけると、手を止めてこちらに視線を向けてくれる。それで少し驚いた顔をした。
「ありがとう」
声かけしてくれた子にお礼を言って、そのまま席へ近づきお辞儀。
「初めまして。更識簪さんだよね、僕は」
「何の用?」
その子はコンソールを消し、警戒心丸出しでこちらを見やる。
「自己紹介ならいらない。この学園であなたを知らない人間なんていない」
「そう、それなら話が早い」
「それで本音に頼まれて私を説得……なら、今すぐ帰って」
どうやら無駄な会話は嫌いなタイプらしい。それで僕の目的もお見通しか。
「……何で見抜かれてんだよ、おい」
「本音の行動パターンは分かってる。ううん、お姉ちゃんかな」
「うい!?」
「あなた、私達が見えているのですか」
「しゅごキャラは……昔から」
そっか、楯無や本音も見えていたし、その関係かな。まぁしゅごキャラについても知っているなら話は早い。
◆◆◆◆◆
シャルルは先にアリーナへ向かっているし、オレも……やや早足で廊下を歩いていると。
「やぁ」
ノースリーブのニットを羽織った、二年生の先輩が立ちはだかる。髪はショートの水色で、瞳はルビーのように深い赤。
青いメカっぽいセンスを広げると、なぜかそこに漢字二文字が浮かぶ。今の浮かび方、ディスプレイか何かか?
――遭遇――
「えっと、あなたは」
「織斑一夏くん――一年一組の専用機持ちで、機体は白式。姉である織斑千冬先生が使っていた、暮桜のコピーとも言える性能」
いきなり機体解説を始めた!? よく分からないが脇を抜こうとするが……できない。
足を踏み出す前に、自然と予定コースを遮られる。何度か動こうとするも、その全てが僅かな揺らぎであっさり潰された。
「零落白夜の攻撃力は圧倒的なれど、SEを対価とするため単独戦闘では本領発揮できず。
むしろチーム戦による純アタッカーとして配置・運用する機体と言える。でも何より不足しているのは、君の技量。君は弱い」
「……先輩と言えど、初対面でそんなことを言われる筋合いはないと思いますけど」
これもISにより生まれつつある、女尊男卑の影響だろうか。こういう不しつけな態度には、不しつけに答えるのが常だ。
なので押し通ろうとすると、喉元に扇子を突き立てられる。それも鋭く……もう少し押し込めば、喉を抉(えぐ)られると思うほどに。
その上扇子は閉じられていた。いつそうして、扇子が武器のようになったのか。それすらも分からなかった。
「い……!?」
「ひどいなー、初対面じゃないよ? 入学式のとき、挨拶したよね」
「入学式……だ、だから何の話ですか! オレはそのとき、先輩と話してなんて!」
「私が君に……君達に話した。壇上で」
壇上? 挨拶……そこで一気に記憶がリピート。そういえば入学式のとき、在校生の祝辞があった。
それを読んだのは生徒会長で、しかも今年二年生という人。……あぁぁぁぁぁぁぁぁ!
「思い出してくれた?」
「さ、更識楯無生徒会長!」
「せいかーい♪ でも忘れるなんてひどいなー、お姉さんはちょっと傷ついたよ?」
「すみま……せん。いろいろあったもので」
「そう。さて織斑一夏くん、もう一度はっきり言ってあげる……君は弱い。
心も、技も、体も――その全てが。ううん、異常と言えるほどイビツ、かな」
◆◆◆◆◆
ここには専用機持ちもよくお世話になる。部品製造資材や機材が置いてあるのは、専用機の独自規格に対応するため。
なので日頃からのメンテも、専用機持ちにとっては大事なお仕事。フリーメンテナンスに頼りきりではいけない。
その辺りからも、リンがキレた原因は察してほしい。一応僕もちょくちょく寄ってたよ?
……更識さんに連れられ、ドッグの一つへ。更識さんはその中央に立ち、右手を軽く突き出す。中指にはめられたクリスタルの指輪が輝き。
「……変身」
髪と同じ、透き通るような光が展開。それは白とダークブルーに彩られた、直線的な装甲に変化。
簪もその中でISスーツに早着替えし、装甲を瞬間装着。そのまま着地して、右手をスナップ。
「わぁ……! これが更識さんのIS!? かっこいいー!」
「だろー! 打鉄弐式――打鉄のこーけーき(後継機)、だったよなー。かんざしー」
「うん……打鉄は装甲重視のバランス型だけど、これは機動性重視」
「打鉄……なるほど、確かに」
打鉄は日本(にほん)甲ちゅうっぽいデザインで、非接続式ユニットもそれに準ずる。でも弐式の肩部ユニットは、大型のウイングスラスターが一つ。
更に小型の補佐ジェットブースターが前後で二基搭載されていて、そのラインは白式を連想させる。
スカートアーマーも、独立式ウイングスカートに換装されてて、腕部装甲も含めスマートな印象だった。
でも打鉄を思わせるラインがあんまりない。あるとしたら、頭部のハイパーセンサーくらいだし。
何よりグレー気味な白とダークブルーのラインが、とても清廉な印象を与え、更識さんに合っていると思った。
「だが……変身?」
そこでヒメラモンが小首を傾(かし)げた。変身……あ、そういえば。つい展開プロセスに集中していたけど。だからショウタロス達も訝(いぶか)しげに見る。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
恭文(A's・Remix)「本編やHP版より早く、更識姉妹が登場。まぁ先日発売した正式版では、サブキャラ的に登場しておりますが」
古鉄(A's・Remix)≪パイロット版ではそういう描写もあまりなかったので、一応本格登場です。でも……変身≫
恭文(A's・Remix)「話数的には、ちょうど二号ライダーが登場していい時期だしね」
(『つ、追撃……撲滅。いずれも……マッハ?』)
恭文(A's・Remix)「簪用の名乗りも考えないとねぇ」
古鉄(A's・Remix)≪あなたはもう決まってますしね≫
(恭文(A's・Remix同人版)の名乗り:前屈みになり、左腕を曲げた左膝上に置き、右手をスナップさせてから『ひとっ跳び付き合えよ――!』。
ドライブが元ですが、あどべんちゃーに登場するあるキャラの名乗りを受け継いだ形となります。その話もいずれ)
恭文(A's・Remix)「大丈夫だよ。あどべんちゃーをこっそり修正すれば」
古鉄(A's・Remix)≪こっそりじゃ駄目でしょ。修正版って出しましょうよ。それも一言二言追加なのに≫
(が、頑張ります)
恭文(A's・Remix)「そして同時進行で……ある事実が突きつけられるわけで」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
会長に連れられやってきたのは道場……なんだが、誰もいない中、会長が床を強めに踏む。
するといきなり床が幾つかのパーツに分かれ回転し、畳のゾーンができ上がった。広さはピッタリ十六畳。
「な……なにぃ!」
「何を驚いてるの? ほらほら、道着に着替えて」
「いや、その前に床! 床が回転して!」
「あれ、知らないの? IS学園はその特性ゆえに、様々な試験技術が投入されている。
空間モニターやコンソールなどもその一つ。……ここだけ技術力が三十年ほど先とも言われているんだから」
「はぁ、そういうものなんですか。何か凄(すご)いですね」
「これは凰さんもサジを投げるわけだ。君、それが異常だとも気づいてないでしょ」
この人はいちいち人を挑発する。だが相手にせず、いら立ちながら更衣室へ向かう。
「あ、道着は用意してるから」
「ありがとうございます!」
何なんだ、オレが異常って。やっぱりわけが分からない。不勉強が異常っておかしいだろ。
くさくさしながらも道着をきっちり着替え……箒との訓練がなかったら、まず着方が分からなかったと思う。
なお道着は柔道着などではなく、合気道でよく見られる袴(はかま)タイプだった。
妙な情けなさを感じながらも道場内へ戻り、同じように着替えた更識会長と対じ。
「デュノアさんを待たせてもアレだし、制限時間は五分ってところかな。目つきなどは禁止で、拳・蹴りはアリ。
その間、一度でも私を床に倒せたら君の勝ち。それができなきゃ私の勝ちってことで」
「……随分、ナメられたものですね」
「うん、普通なら君が正しい」
怒りを通り越し、呆(あき)れてしまった。だがそうしたら、会長はそんな感情をあっさり認める。
「でもオルコットさんや八神くんとの試合……もちろんそれ以後の練習で、君は突きつけられたはずだよ。
君の実力は現在……そっか、もう一つ説明が必要だった。IS実習には今後、実際の武道訓練も入るんだ」
「武道訓練?」
「本来は体育とかにやることだけど、ISによる戦闘実習の一つとしてね。……意味、分かるよね」
「あー、思い出しました。先輩達は全員、武道経験者なんですよね。初日に八神が暴れた絡みで、織斑先生が説明してくれて」
するとなぜだろう。会長は急に顔を真っ赤にして、オレから目を背けた。
「……会長?」
「ごめん、ちょっと……その大暴れ、処理がいろいろ大変だったから、思い出すと辛(つら)くて」
「な、何かすみません」
「君が謝ることじゃないよ。……だからね、普通なら君が正しい。幾ら数年サボっていたとはいえ、剣道経験者だもの。
その上男で、力も強い。体格で押さえ込まれたら、確かに私達女じゃあどうしようもない……きゃー! 変態ー!」
「誰が変態ですか!」
◆◆◆◆◆
「ISで身を立てたいんだよね。なのにどうして参考書を捨てたの?」
激痛の発生源は踏み込んだ右足。更識会長の左親指で、右足親指と中指の付け根が踏み抜かれていた。
たったそれだけなのに、手が動かせない。心が、戦う力が壊されていく。
「それは身を立てる最初の一歩――足がかりなのに」
そして胸元に右親指が突き立てられる。たったそれだけの刺突でオレの体は、二メートルほど飛んで倒されてしまう。
足による刺突は解除されていた。そうでなければ、足首が捻(ねじ)れて壊れていたかもしれない。
「電話帳と、間違え……て」
「嘘(うそ)をついちゃ駄目だよ。……自分から捨てたんじゃないの、君」
そこで胸が嫌な動悸(どうき)で満たされる。怖い……この怖さは、何だ。オレの心が、心のうちが見抜かれているような。
「私がさっき言ったこと、ネットでちょっと調べればすぐ分かることだよ。ISの絶対数も、代表候補生のことも」
それが嫌で、黙らせるために飛び込む。勝つためではなく、黙らせる――逃避のため。
どれだけ後ろ向きかは察してほしい。伸ばした手はあっさりとかわされ、今度は首元にラリアット。
会長の細い右腕は、あっさりと体のバランスを崩してくれる。そのまま回転し、頭から畳に叩(たた)きつけられた。
視界が、揺れる。意識が消える……必死に繋(つな)ぎとめようと、みっともないうめき声を出し、畳の上で蠢(うごめ)く。
「それが異常なんだよ。君はISという力を求めながら、その力や取り巻く環境を何一つ知ろうとしなかった」
「何が……おか、しい」
「とってもおかしい。だって君、ISについてはさっぱりなんでしょ? いきなりこんなことになったら、普通不安に思うよ。
だから知ろうとする。入る学校がどういうところか。一体そこで何を学ぶのか……君は目を伏せている。ううん、ちょっと違うかな」
それでも起き上がろうとする。寝返りを打って、両手に力を込め……必死にふんばろうとあがく。
「織斑先生が君をISから遠ざけようとしていたから」
だがその言葉で力が抜け、また倒れる。この人は、何を言っている。一体、何を……!
◆◆◆◆◆
「先生」
「倉持技研からだ」
山田先生にはそう答え、通話ボタンを押して電話に出る。
「もしもし、織斑です」
『お忙しい中失礼します。私、倉持技研・研究員の佐倉と申します。先日お預かりした、白式の件で急ぎ御報告が』
「……申し訳ありませんでした。我々の監督不行き届きで御迷惑を」
こういうときでも礼儀作法は整えてしまう、たとえ表面上でも……少し、自分の冷徹さが嫌になった瞬間だった。
『いえ、大丈夫です。その件ですが、大会までに白式の修復……というか改修の目処(めど)が立ちました!』
「……なんですって。ですが、昨日の段階では」
『はい。えっと、パーツの再生産から何まで足りないとお伝えしましたよね』
「えぇ」
そう言っていたのに。一日で状況が改善して、軽く面食らってしまう。
というか今、改修と言ったぞ。修復ではなく、また更に手を加えるというのか。
『政府にも相談したのですが、やはり今回のトーナメントでは是非専用機を使ってほしいと言われまして。
なので他から予算を回し、現状の稼働データを元に何とか……ギリギリではありますが、仕上げてみせます!』
「あの、待ってください。他に予算というと」
『こちらのことはお任せください! 織斑くんにもそうお伝えしていただければ……では詳しいことは後日改めてということで! 失礼しました!』
「あの、もしもし」
……そして電話は切られる。相当嬉(うれ)しいらしく、最後はテンションMAXだったぞ。一体どういうことだ、これは。
同時に嫌な寒気が、背筋を突き抜ける。八神ではないが、確かに政府のやっていることが信用できない、そう言いたくなる気分だった。
「織斑先生」
「……白式は修復ではなく、改修するらしい。それもトーナメントに間に合わせられるよう」
「はぁ!? いや、無理ですよね! パーツはどうするんですか!」
「他から予算を回し、何とかするそうだ」
「他ってどこからですか! 今年度は始まったばかりなのに!
他の研究機関から持ってくるにしても、一日で決定するはずが!」
そう、今年度は始まったばかり。年度開始前に、割当予算というものも決定している。
それを今更変更か? 確かに一夏が特異点なのは事実だが、それは他の研究機関が黙っていないだろう。
ならば政府が新規予算を組み立てるのか? いや、それもまずいだろ。何しろ壊した経緯が経緯だ。
そこがバレれば、間違いなく問題になる。しかも修復ではなく、回収……より金がかかるからな。なら、こういうのはどうだろうか。
「金の出所が倉持技研内ならどうだ。ようは予定されていた予算配分を変更し、白式に回した」
「あぁ、それならまだ……え、待ってください。確かあそこは白式にかかりっきりで、他に進めているプロジェクトなんて」
「例えば稼動状態にないISの開発費用」
「え……!」
「それも個人制作にシフトしていて、現状では全く進んでいないもの」
「それ、まずいじゃないですか!」
◆◆◆◆◆
「ヤスフミよぉ、修復じゃなくて改良、だよな。つまり昨日話していた整備体制とかは」
「全部改修後に合わせ、仕切り直しに決まってるじゃない。それで今後こういうことが起きないよう、より万全な体制を作る」
「改修するのは、ドイツの最新鋭機にボロ負けしたから。大会でリベンジすべしという意地と、打算ですね」
「簪の予算はそれができるまで、白式と一夏に奪われ続けるってことか」
「できた後も奪われ続けるよ」
「はぁ!?」
「また、あの馬鹿が白式を壊したらどうなるか……だな」
ヒメラモンが腕を組み、呆れ気味にため息。うん、呆(あき)れているよ。だってこれは、国が認めたも同然だから。
アレのしわ寄せを、更識簪が食らって当然。どう認めて、打鉄弐式を完全に放り出した。
「また壊せば、より強く……もちろんそのためには金が必要だ。倉持技研は白式専用のドッグベースになりかねない」
「当人達もそれを望んでいるしね。あの馬鹿がきっちり使えない限りは……男という理由だけで、手厚く保護されるわけだよ」
「じゃあ打鉄弐式はどうなんだよ!」
「このままにさせるわけ、ないでしょうが」
取りあえず徹底的に抗議して、大騒ぎしてやる。もう織斑一夏の心情とか知ったこっちゃないわ。
さすがにこれはあり得ない。だって急ごしらえの専用機を、更に改修して……だもの。一か月や二か月の話にならない。
下手をすれば今年度は……ううん、織斑一夏がこのまま下手な運用を続けるかぎり、更識簪は卒業までずっと。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
恭文(A's・Remix)「というわけで、拍手などの感想も鑑みて……大人がとことんアウトだ」
古鉄(A's・Remix)≪いつものことですよ。この辺りをどうするかは、また本編で。
さて、ここからはこの先――現在かけている貯蓄分になります。若干のネタバレが入りますので、気になるかたはブラウザバックを推奨します≫
(推奨します!)
古鉄(A's・Remix)≪では、どうぞー≫
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
コードネーム『紅』は、まだ基礎フレームの段階。完成までにはまだ時間が必要。
だから『紅』に合わせた、新しい白式で……と思っていたのに、秘密ラボに担当のおじさんが走って駆け込んできた。
私の脇でぷかぷか浮かぶ『べーちゃん』も起きて……いや、起きないな。
でもそうなるかもって思うほど、凄い勢いだった。それで何の話かと思えば。
「はぁ? いっくんが白式に乗りたくない? なんで、どうして」
「その……予算を引き上げた打鉄弐式と、操縦者のことを知りまして。我々が信用できないと」
「でも契約したんだよねー」
「そう言ったのですが、我々は今まで顔を見せることもなく、信頼関係を結べていないと言われて……IS学園にいるので、干渉もできず」
そこからはかくかくしかじか……また面倒なことになっているなぁ。まぁ、だからこそいっくんもキレたと言うべきか。
「いっくんはそのこと」
「説明しました! ですが、関係ないの一点張りで! 我々もどうしてこうなるのか、さっぱりなんです!」
つまり倉持技研自体が嫌いで、そこの機体は……と。ふむふむ、納得したよ。
だったら……白式もこのままは可哀想だし、ちょっと無茶するしかないなぁ。
「あの、博士……よろしければ織斑一夏を説得して」
「やだ」
「はぁ!? いや、しかしこのままでは!」
「……へぇ、この私に命令するんだ」
それが面白くて笑っちゃうと、おじさんは。
「め、滅相もありません! ただお願いをしているだけでして!」
いきなりおどおどする。まぁそうだよねー、今私に逆らうのはとーっても……マズいよね。
現状のスタッフだけでは、白式を大会までに修復なんてできない。私はまさしく救いの神なのだよ、えっへん。
「あのね、いっくんは基本優しい穏やかな子だけど、間違っている事にはすっごく厳しいの。
私やちーちゃん、箒ちゃんが何を言っても、多分曲げないと思うなー。なので」
「はい」
「白式、私にちょうだい♪」
笑顔で提案すると、担当のおじさん――倉持技研の所長は、頬を引きつらせる。うん……いいよね。
だって世界は既に私の庭。この私――篠ノ之束のものなんだから。
◆◆◆◆◆
「所長、篠ノ之博士は」
「あの女……白式をよこせと言ってきた! 織斑一夏の説得も無理だと!」
「そんな! それでは、この研究所は」
「我々が一体何をしたと言うんだ!」
腹立たしくて、唇を噛みそうになる。……ただ優先順位を作っただけだ。金は有限、ならばより実りの大きいものへ投資する。
ビジネスの基本だ。それをとやかく言われるなど、予想外にもほどがある。ガキの分際で、大人をナメくさって……!
「元はと言えばあの役立たずが、専用機を壊したのが原因だろ! 同じ男だと言うのに……あれでは八神恭文の代わりにもならん、ただのゴミだ!」
「……同感です。所長、それならもう『保護』の必要はないのでは」
「そう、だな」
織斑一夏を捨てるのも、もはや不可能。あれがどうしようもないゴミなのは確かだが、ISを動かせるだけでも価値はある。
もちろん白式を渡すのも……実質、織斑一夏との縁が切れるも同然。ここまでの開発費以前の問題だ。
……白式改修型の開発は、コンセプトも決まっている。後は我々で引き継げば問題ないだろう。
ここで政府に恩を売っておけば……!
◆◆◆◆◆
ラボ入り口付近に、二十人ほどか。慌てず騒がず、寝返りを打ちながら、形態を取りだし軽く操作。
ラボの監視カメラ映像は、録画したものに切り替え。センサーも記録データにすり替える。
その上でひょいっと起き上がり、更に携帯操作。この近辺にだけジャミングしておいて、他との通信を遮断。
それから更にぽちぽち……すると入り口のロックが解除され、ドアがオープン。そこから通路に出ると、右側には黒尽くめの襲撃者達。
ふむふむ……P90にグレネード、暗視ゴーグルと防弾スーツか。どう見てもまともじゃないね。
いきなりドアが開き、この私……束さんが堂々と現れたので、全員が面食らう。……なので全力ダッシュ。
奴らが銃口を向けるより速く、先頭二人にドロップキック。顔面をゴーグルごと蹴り砕き、数人巻き添えにしながら吹き飛んでもらう。
そのまま奴らの中央に着地し、二時方向へ左ストレート。一人目の顔面をやっぱり砕いて、続けて七時方向に右ハイキック。
二人目が壁にめり込んでから、更に身を翻しながら跳躍。五時方向へ右回し蹴り――三人目の頭頂部を潰し、イビツに変形してもらう。
着地してから十一時方向へ、左エルボー。四人目の胸元へたたき込み、心臓を粉砕。
三時方向と九時方向の二人がナイフを取り出したところで、左右交互に右掌底。喉元を、そして首を潰し、こちらも壁にめり込んでもらう。
……最初に蹴り殺した二人をどかし、警戒する残りのメンバー。通信をかけて……無駄なのにー。
『篠ノ之束を発見! おい、どうなっている……眠っていたんじゃないのか!』
「仮眠してただけだってー。というか、それなら睡眠薬入りの夕飯なんて出さなきゃいいのにー」
笑って前に進むと、二時方向にいた奴が……束さんの足を掴もうとする。なので右足を上げ、改めて首を踏んでへし折る。
そんな虫けらには構わず、また一歩近づくと、奴らはP90を構える。
『畜生、なんでだ……ただの女だぞ、アイツは!』
「私、どうも細胞レベルから天才みたいでさー。本気の私を押さえ込めるのって、ちーちゃんくらいなんだ」
『怯えるな! 相手は一人だ……! 殺さなければいい! 撃てぇ!』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
恭文(A's・Remix)「というわけで……束ぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
古鉄(A's・Remix)≪やらかしてますねぇ。さすが大人、大人汚い≫
(『違うよ! だってアイツらまともじゃないよ!? どう見ても普通じゃないよ!』)
恭文(A's・Remix)「そんな裏の話もやりつつ、次くらいから学年別トーナメント本戦へ。
こちらは幕間のバトルトーナメントと違い、トラブルによりサクッと中止が決定しているから……安心だね!」
古鉄(A's・Remix)≪原作をリスペクトした手早い展開で進めたいと思います。あのキャラとかも前倒しで出るかもしれません≫
(というわけで幕間第39巻、なにとぞよろしくお願いします。あと、みくにゃんは天使だと思う。
本日のED:『なのはがティアナの頭を冷やしたときのBGM』)
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