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頂き物の小説
第4話『Wの世界〜ハーフボイルドに僕、参上?/ハードボイルドな出会い〜』


























≪Engine!!Maximum Drive≫

『ぎゃあぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!』


・・・・・・赤い輝きを纏った刃が『A』の軌道を描き、ゲルニュート達を斬り裂いていく。

そして、その右手に持つ武器から薬莢のようにメモリが飛び出すと同時に、ゲルニュート達は炎に包まれた。


「て、てんめぇぇぇっっっっ!!!!」


リーダー格のゲルニュートは刀を振り上げるとアクセルに向かって走りだすが、アクセルはゲルニュートに動じずバックルの左側にあるクラッチレバーを引く。


≪Axel!!Maximum Drive≫


響き渡るのは、激しいエンジン音・・・・・・それが俺には、死刑宣告のようにも聞こえた。


「はぁっ!!」


バックルの右側にあるスロットルを捻る事で、エンジン音はより甲高い音を響かせる。そして、アクセルは跳び上がるとゲルニュートに向かって後ろ回し蹴りを放つ。

タイヤ跡のような光と共に放たれたキックは的確にゲルニュートの胸部を捉えて吹き飛ばす。


「・・・絶望が、お前のゴールだ。」


ゆっくりとアクセルが呟くと共に、吹き飛ばされたゲルニュートが爆発する。

炎をバックに佇むアクセルの姿は・・・・・・どこか、物悲しくもみえた。


≪マスター、なぜカッコつけようとしている?≫

≪正直、カッコ悪いよ?≫


んなのは俺が一番良く知ってるわっ!?というか、なんかアクセルが一人であいつら全部倒しちゃうしっ!!俺のあの苦労はなんだったんだよっ!?


「さて、邪魔者も居なくなった事だ・・・そろそろ、貴様について話てもらおう。その武器はなんだ?そして、奴らは何者だ。」


すると、アクセルは変身を解いて・・・真っ赤な革ジャンを着けた男性、『照井竜』がこっちを睨んでくる。




・・・はぁ、どこまで話したもんかね・・・












◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆












「・・・兄ちゃん。どうやらこの時間にも電王みたいな奴らが居るみたいだぜ?」

「そのようだな。あの赤い奴・・・なかなか侮れん。だが、我々には心強い味方がいる・・・そうですな、牙王殿?」



・・・俺は肉を食いながら、雇い主達を横目で眺める。

死者の世界をさまよっていたのはいいが・・・・・・再び、俺は蘇った。


理由?そんなの俺が知りたいくらいだ。


詳しい事は省くが、同じように死者の世界から戻ってきたこの『オニ』達と今は一緒に行動している。

こいつらの力は、俺にとっても必要だからな・・・・・・









「・・・あぁ、心配するな。邪魔をする奴らは全部食ってやるよ。」














とある魔導師達と仮面の英雄達の物語アフターストーリー





とある栄光の流星と14番目の機人の物語



第4話『Wの世界〜ハーフボイルドに僕、参上?/ハードボイルドな出会い〜』



















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



まぁ、とにもかくにも事情説明だ。もちろん、歌唄とエルとイル、りまとクスクスに対して。俺達は場所をゼロライナーに移して、説明した。なお、どういうわけか電車が普通に走ってる。





俺と咲耶、ビルトの事とか、電王の事とか、唯世が消えたのが時間の異変関係の可能性が高いってことも一緒に話した。





で、当然のように・・・・・・もう頭を抱えられるわけだ。










「・・・・・・ありえないのですっ! いくらなんでもフリーダム過ぎなのですっ!! こらー! お前らー!! この愛の天使・エルを騙そうとしたってそうはいかないのですよっ!?」

「やかましいっ! お前は黙ってろっ!!」



ゲシっ!!



「あぁぁぁぁぁれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」



とりあえず、イルに蹴られて壁に叩きつけられた空気を読まない真性・フリーダムは放置することにする。てか、付き合うつもりもない。



「・・・・・・まぁ、ありえないって言えばありえねぇけどな。でも、実際に目の前に居るもん否定するのもあれだろ。
それ言ったら、アタシらだって十分ありえないぞ? てか、外の景色もありえないし」

「ドアを潜ったら、いきなり砂の世界だものね。私、びっくりした」

「クスクスもー」



そう言っているイルとりま、クスクスが目を向けるのは、ゼロライナーの外。

ゼロライナーは現在どこかへ向かっているのか、すごいスピードで虹色の空と砂と岩だけの世界を走っている。それにどうにも呆気に取られているというかなんというか。



「確かにな。俺もデネブも、お前らみたいなのは見たことねぇし」



あははは、侑斗さんハッキリ言うなぁ。ハッキリ過ぎてビックリだよ。

・・・・・・なお、幸ちゃんは俺の幼馴染。なので当然、しゅごキャラのことも知ってる。もちろん、テディもだ。



「てゆうか恭太郎、お前・・・・・・恭文の孫、なんだよな」

「あぁ。まぁ、今じゃなくて未来の時間のだけど」

「ようするに、おじいさんになった恭文が暮らしてる時間ってことよね。・・・・・・でも、なんだか私は納得した」



抱えていた頭を上げて、どこか嬉しそうにそう言ってきたのは歌唄だった。その理由が分からなくて、俺達は顔をしかめてしまう。

それが分かったのか、歌唄はそのまま言葉を続けた。



「だってアンタ、恭文の面影があるもの。今までは親戚だからってことで納得してたけど、孫か・・・・・・」



歌唄がもう一度俺をジッと見る。見て・・・・・・納得したかのように頷いた。



「そうね、そっちの方が納得出来るかも。それで、私は恭文の第三夫人になっているの?」

「話の文脈おかしくないかっ!? あと、未来で誰と誰が結婚してるとか、どうなるかとか、そういう情報は一切教えられないからあしからずっ!!」

「そうなんだ、残念。・・・・・・まぁいいわ。今大事なのは、唯世のことだもの」

「そうね。とりあえず話を纏めると」



りまが、エプロン姿のデネブさんが淹れてくれたお茶を飲みつつ、話を進める。

幸ちゃん達が来てくれたおかげで、こっちでも色々と分かったから、そのおさらいだ。



「まず、私達・・・・・・というより、未だに眠ったままのあの子しゅごキャラを狙って来たのは、モウリョウ団と言う時間の中の犯罪者集団」



どうやら俺とティアナさんが相手をしたのは、そいつらの一味らしい。幸ちゃん達の話だと、以前やりあった鬼みたいなものに近い連中で構成されているとか。



「だけど、何のために狙っているのかとかは一切不明。そして、そいつらの行動が原因で唯世が消えた可能性も高い・・・・・・と。簡潔に言えば、そういうことよね?」



ティアナさんが、車両に備え付けられたソファーに座っている、侑斗さんと幸ちゃん達を見る。で、二人は頷いた。



「それで、なんで侑斗さんや幸ちゃん達が俺達のとこに?」

「あー、それなんだけどよ・・・・・・。とりあえず恭太郎、お前これが片付いたら一度未来に連れて帰るから。
つーか、未来の時間の恭文じいちゃん達から説教だな。覚悟だけは今のうちからしとけ。そうとうカンカンだぞ?」



・・・・・・はぁっ!?



「恭太郎、まぁ・・・・・・あれだ。お前もチビを見習え。もうちょっと身辺整理する必要あるだろ」

「そうだよ、恭太郎。その辺り、恭文君はちゃーんとしてたよ? なのに、孫が出来ないのはダメだって」



え、どういうことよそれっ! つーか、お願いだからちゃんと説明してくれー!!



「バカ、お前が原因でもう一つとんでもないことが起こってんだよ」

「だからなにっ!? 俺、何もしてねーんだけどっ!!」

「そうです、恭さまは何もしていませんっ!! ・・・・・・私の心を奪ったこと以外は・・・・・・・もう、恭さまのハート泥棒」

「はい、お前黙れっ!? つーか、普通に俺はそんなことはしてねぇっ! そして顔を赤らめるんじゃねぇよっ!!
ね、幸ちゃんも侑斗さんも、どういうことっ!? 頼むからちゃんと話してくれよっ! じゃなきゃ、俺わけがわかんねぇしっ!!」



なぜだろう、そう言うと俺をとても悲しい目で見始めた。

・・・・・・ね、怒っていい? 俺は怒っていいのかな。つーか怒っていいよな。だって、マジでワケわかんねぇし。



「・・・・・・そっか、マジでコイツは自覚がないのか。チビだってもうちょいまともだってのに」

「悪い、侑斗さん。こいつはこう・・・・・・ちょっとアレなんですよ。外見に精神が引っ張られているというか」

「誰がウルトラスーパーアルティメット米粒野郎だってっ!?」

「誰もそこまで言ってないだろっ! つーか、普通にビルトビルガーセットアップしようとすんなよっ!!
あぁもう分かったっ! お前はマジで分かってないらしいから1から話してやるっ!! 実はな・・・・・・」










とにかく、俺は事情を聞いた。簡潔に言えば、ヒカリとリィルが何をして、今現在どうなっているのかを。










「・・・・・・幸ちゃん、それマジ?」

「マジだ。そのせいで、向こうはすごい騒ぎになってんだよ。はやてさんなんてもうこの世の終わりかってくらいに狼狽しまくってる。
恭文じいちゃんもかなり大変な目に遭ってるぞ? てゆうか、関係各所に凄まじい勢いで謝り倒してる・・・ティファやタイチも本当なら一緒に来たがってたけど、ユーキさんの命令でしぶしぶ残ってるくらいだしな。」

「そっか。それで話は変わるけど、今日ってエイプリルフールだっけ」

「残念だけど違うぞ。こっちもそうだし、向こうも同じくだ」










で・・・・・・当然のように崩れ落ちて、隅っこで頭を抱えて『ごめんなさい』状態になった。





どうやら俺には、ここで『ヒカリの自業自得だ』なんて言い切る神経はなかったらしい。てゆうか・・・・・・あぁ、みんなの視線が痛い。すっごく痛い。






















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆













「・・・時の列車に、別の世界か・・・想像以上に大事のようだな。」


・・・って、信じてくれるんですか?


「にわかには信じられん。だが、実際に俺は奴らと戦い・・・そのデバイスとやらが喋るのも見てるからな。」

≪つまり、我々のおかげという事だなマスター!!≫

≪お兄ちゃん、あんまりはしゃぎすぎるのもどうかと思うよ?≫

≪・・・お・・・兄ちゃん・・・だと・・・?≫

≪だって、私造られたばかりだもん。だったら、バルゴラはお兄ちゃんになるでしょ?・・・もし嫌だったら呼び方変えるけど。≫

≪いや、変えなくていいぞっ!!・・・なんだこの気持ちは・・・非常に、シュロウガの事を愛でたくなるっ!!これが、シスコンというものなのかっ!?≫


・・・・・・バルゴラ、お前はバカか?ほら、竜さんも頭抑えているし。


「・・・ともかくだ。現状ではその『オニ一族』が蘇った原因は分からないんだな?」

「はい・・・すいません。」


というか、俺は自分がなんでここにいるのかすらも分からんしな。

・・・マジで、なんでここに居るんだろう?


「・・・こういう時に役に立つ奴が居る。フレイホークと言ったな、俺についてこい。」


そういうと、竜さんは廃工場の外に出ていく。


・・・・・・まさか、あの3人か?










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








「・・・どうやら、うまく接触出来たようだな。」


思わず、私は安堵の溜息をついてしまう・・・だが、安心するのはまだ早い。

まさか、電王の世界とWの世界が融合してしまった上に両方のライダーも過去に飛んでしまうとは・・・



「おのれディケイド、これもお前のせいだ。」



このままでは、蘇ってしまった奴らによって世界がさらに歪んでしまう。

すると、突然人の気配がする。私が後ろを振り向くと・・・そこには包帯で顔を隠し、さらにサングラスをかけたトレンチコートの女性がいた。


「来たかシュラウド。頼んでいたものは?」


私の問い掛けに彼女は頷きを返す。

・・・これでいい。おもわず、笑みが浮かんでしまう。


「・・・新たなライダーが生まれるのは不本意だが致し方あるまい。ディケイド、ここがお前の旅の終点だ。」











◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
















「はぁぁぁっっっっ!!」



・・・・・・なぜ、このような事態になったのかは分からない。

ドクターに頼まれて調査に向かった先で、俺は謎のオーロラをくぐり抜けてしまった。

すると、先程まで森林のようだった場所から、突如として広い路地裏のような場所に出てしまい、さらには奇妙な奴に出くわした。


その姿は、ドクターが時折鑑賞していた『仮面ライダー』の作品・・・しかも最近見ていた『超・電王』というのに登場したゲルニュートという怪人そのもの。

そいつらは俺の姿を見ると突如襲いかかってきたため、俺はとっさに変身して戦う。


いったい、何が起きているというんだっ!?


≪主、生体反応接近中。後方、距離50≫

「なにっ!?」


俺がとっさに振り向くと、そこには白いスーツとソフト帽をつけた男がこちらへ向かって歩いてくる。


「こっちへ来るなっ!!さっさと逃げろっ!!」

「おい、やっちまえっ!!」

「げひゃひゃひゃひゃひゃっ!!」


俺は男の下に向かおうとするが、それよりもはやくゲルニュート達が男性に襲い掛かる。







「・・・ふんっ!!」

「ぐべらっ!?」




・・・だが、驚いたのはそこからだった。

男はその歩みを止めず、だが流れるような動きでゲルニュート達を蹴散らしていく。




「・・・心配するな。俺は、お前の手助けにきたんだ。」

「なんだと?」

「最近、こいつらがこの街ではびこっている・・・これ以上、好きにさせる訳にはいかないんでな。」

≪Skull≫


俺に近づいてきた男は左手で帽子を外すと、懐から取り出した黒いUSBメモリのボタンを、右手の人差し指で押す。


「変・・・身・・・」


そして、いつの間にかその腰に巻かれていた赤いバックルのベルトに、そのメモリを装填する。


≪Skull≫


生まれたのは、光。紫色の球体が男の身体を包み込む。

その中で、下から上へと姿が変わる。黒い身体に、ところどころ走る銀色のライン。

骸骨を模した頭部に、風になびく白いマフラー。

・・・I/Oのデータに該当したが・・・まさか・・・
















「・・・・・・さぁ、お前達の罪を数えろ。」



左手に持っていたソフト帽を再び被りなおすと、男は・・・『仮面ライダースカル』は、ゆっくりとゲルニュート達に右手を指差した。
















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








「・・・え、えっと・・・・・・ギン、ガ?」

「な、なにかななぎ・・・恭文君?」

「い、いや・・・なんでもないよ・・・」

「そ、そうなんだ・・・」














「・・・・・・いい加減にしろお前らっ!!どこの中学生日記だっ!!」


そんなに名前の呼び方を変えるのが恥ずかしいなら、元の呼び方に戻せばいいだろうがっ!!お前らが作り出している空気が甘ったるく感じるんだよっ!!



「駄目だぞ士。ここは、あたたか〜い目で見てあげないと。」


・・・ユウスケ、お前はなに青いチビダヌキみたいな発言をしている。後々被害をうけるのは俺達なんだぞ?


「誰が青いネコ型ロボットみたいな豆粒ミジンコドチビだっ!!もやしのくせにふざけんなっ!?」

「お前の話じゃねぇよっ!!そして、その言い方は止めろって言っただろうがっ!!」

≪・・・まぁ、私は士さんの意見に賛成ですけどね。いったいどこの君に届けですか?あなたにそんな展開は似合いませんって。≫

≪申し訳ありませんSir。少し自重してくれると助かります。≫

「まぁまぁ、皆落ち着いて。美味しいコーヒーを淹れたからさぁ飲んで飲んで。」


・・・じいさん、気が利くな。


「よい・・・しょっとっ!!」

「夏海ちゃん、お疲れ〜♪」


すると、夏みかんが二つのアタッシュケースを持って部屋に入ってくる・・・なんだ、それは?


「分からないんです。ドアの横に置かれていて・・・一緒に添えられていた手紙には恭文君の名前が書かれているんですけど・・・」

「へ、僕?」

「はい、これです。」


恭文は夏みかんから手紙を受け取ると、封を切って中の手紙に目を通す・・・・・・すると、目の色を変えてアタッシュケースを開ける。

ってお前いきなり開けるんじゃねぇっ!?爆弾とかだったらどうするんだっ!?


「大丈夫。中身は分かっているから・・・」

≪・・・あの、なんでこれがここにあるんですか?おかしいですよね?≫

「そんなの、僕にも分からないよ。」


そういいつつ恭文が取り出すのは赤と銀の配色が目立つバックル。

左右対称のそのバックルには、金とプラチナのラインが入ったスロットが二つ備えられている。


・・・ちょっと待て。それは・・・Wのベルトか?



「さすがもやし、ライダーマニアなだけあるね。」

「・・・誰がライダーマニアだ、誰が。」



俺のつぶやきを気にせず、恭文はアタッシュケースの中身をテーブルの上に置いていく。

バックルの他に入っていたのは、4本の少し大きめなUSBメモリ・・・みたいなもの。


空を流れる星の軌道で『M』の文字が書かれた、白いメモリ。

氷の結晶のような形で『S』の文字が書かれた、淡い水色のメモリ。

拳をかたどった『F』の文字が書かれた、群青色のメモリ。

そして、赤いメモリ。だが、その表面には・・・・・・




「・・・・・・なんで、電王なんだ?」



モモタロスが憑依した姿である、電王の姿が描かれていた。


「・・・多分、あれが関係してるんじゃない?」


そういいつつ、恭文は後ろの背景ロールに視線を向け、俺達もそれを眺める。







背景ロールに描かれているのは、緑の風を起こす白い風車に、荒野を走るデンライナー。

そして、刃に雷と雪の結晶をを携えたアルトアイゼンと、オレンジ色の光を纏わせた白いライフル。

これが、この世界を示す絵だ。最初は風車の絵だけだったんだが、いつの間にか絵が追加されていやがる。



「けど、改めて見ると不思議な絵ですよね・・・デンライナーが電王だとして、残りはなんなんでしょう?」

「アルトアイゼンが描かれてるのも不思議だよなぁ・・・」


夏みかんとユウスケは頭をひねっているが、俺と恭文、そしてギンガは視線を交わす。


"・・・恭文君、ひょっとして・・・"

"・・・多分、ギンガの考えている通りだと思う・・・あぁ、またもう一人の僕に会わなくちゃいけないのかなぁ・・・"


頭の中に響いてくるのは、恭文とギンガの会話・・・いや、念話だ。

なぜかは知らないが、俺もこいつら魔導師の念話を聴いたり話に参加する事ができる・・・まぁ、便利ではあるがな。


"士もだいたいは想像ついているんでしょう?"

"・・・まぁな。"


恭文の声に頷きつつ、俺は再び背景ロールの絵を眺める。



この絵は恐らく、デンライナーが電王を、風車がWを、アルトアイゼンが魔導師を表している。

つまり、以前オニ一族という奴らと戦った時に出会ったもう一人の恭文達のように、複数の世界が融合している世界なんだろう。




"・・・はぁ。ギンガさんと久しぶりにデートに行けると思ってお店に入ったらもやし達が居るし、そしたらまた別の世界に来ちゃうし・・・どこまで僕は運がないのさ?"

"お、落ち着いて恭文君・・・"

"・・・だが、あのライフルが分からん。お前らが使っているデバイスって奴と同じようなものってのは分かるが・・・"

"あぁ、あれなら僕の友達のデバイスだよ。でも、なんで一緒に描かれてるのかなぁ・・・"



「・・・それじゃ、こっちにも似たような物が入ってるって事?」

「でも、こっちのケースに添えられていた手紙には知らない人の名前が書かれているんです。ジン・フレイホークって・・・恭文君、ギンガさん、知ってます?」




夏みかんとユウスケの会話が耳に入り、夏みかんは恭文に問いかける。


「・・・ねぇ、アルト。これって・・・偶然じゃないよね?」

≪まさかこう繋がるとは思いませんでしたよ・・・夏海さん、その人はこの人の友人です。私達と同じ、魔導師をしています。≫







「・・・・・・ここは、探偵事務所のはずだが?」




その時ドアが開き、赤い革ジャケットを着けた男と、黒革のジャケットにジーパンの男が入ってくる。




そいつらを見た時・・・なぜか、なにかが動き出したような感じがした。










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




廃工場を出た俺達は、バイクに乗ってある場所へと移動する(なぜか、俺のバイクも一緒に停められていた。)。


辿り着いたのは古びたビリヤード場。竜さんはバイクから降りると、ビリヤード場の二階へと上がる。

・・・竜さんは気がつかなかったようだが、階段の横にある看板が『鳴海探偵事務所』ではなく『光写真館』ってなってるのが・・・妙に気になる。



"・・・バルゴラ、どう思う?"

"多分、マスターの予感は当たっている気がするぞ?"

"マスター、お兄ちゃん、何の話?"


・・・・・・そっか、シュロウガはまだ生まれたばっかりだから知らないんだよな。

よしバルゴラ、説明よろしく。


"フハハハハハッ!!任せておけっ!!"


そして、バルゴラとシュロウガは別のチャンネルで念話を始める・・・バルゴラの奴、シスコンだったのか?でも、レムレースには普通だったし・・・あ、妹属性持ちなのか。



「ここだ。」


ふと気がつくと、竜さんはドアを開けて中に入っていく。

するとそこには・・・・・・









TVで見たような探偵事務所ではなく、光写真館の内装が広がっていた。

しかも、なぜかヤスフミとギンガさんが居るし・・・どういう事だいったい?

ヤスフミは今、地球にはいるけど小学生をやっているんじゃなかったのかよおい。





「・・・・・・ここは、探偵事務所のはずだが?」

「いいえ?家は、写真館ですよ?」

「ヤスフミ、なんでお前も居るんだよ?しかも、ギンガさんまで連れて。」

「いやいや、それは僕のセリフだから。なんでジンが地球にいるのさ?」

「それに・・・どうして私の事を知っているんですか?私達、初対面ですよね?」



・・・・・・何を言ってるんだギンガさんは?

ギンガさんの言葉に、俺は首を傾げる。


「いやいや、何言ってるんですかギンガさん。ついこの間電話で話をしたばっかりでしょう?」

「・・・何の話ですか?」


おかしい、なんかおかしい。

ギンガさんの対応は、マジで初対面の人にする奴だ。

・・・・・・その時、ふと写真館の背景ロールが目に入る。


アルトアイゼンにバルゴラ、風車にデンライナー?






「・・・へぇ、こっちのジンはギンガと知り合いなんだ。」

≪これなら、他にも違いがありそうですね・・・それと我が下僕、久しいな。≫

≪だから、私がいつ古鉄殿の下僕になったっ!?≫

≪・・・お兄ちゃん、下僕なの?≫




・・・アルトアイゼンとバルゴラのやりとりは置いといて、今のヤスフミの発言は気になる部分があった。

『こっち』の俺?




「・・・フレイホークとか言ったか?そこにいる二人は、お前とは違う『世界』の恭文とギンガだ。話が噛みあわないのも当然だ。」




・・・・・・なんともまぁ、スゲェ展開だよなぁおいっ!?


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








・・・・・・ある日突然に、不可思議な事が起こる事もある。





そう、それも全ては風が運んできた事。この街ではよくある話だ。










「ふむ・・・・・・。おい、そこの娘。お茶を持って来い。濃い目で熱いのを頼むぞ」





そう、この街では風が全てを運んでくる。喜びも、幸せも、悲しみも、涙も。そして・・・・・・事件も。



言うなれば、うちの事務所のど真ん中でなんか居座ってる白いのは風だ。そう、風だ。てゆうか、きっと幻覚だ。





「うっさいバカっ!!」




なんか、いきなり頭を叩かれて、ソファーに優雅な感じで座っていた白い鳥っぽいのがずっこける。まぁ、ここはいい。



とにかく、俺は指を動かす。とりあえず、あれだ。お前ら、頼むから俺のハードボイルドを乱さないでくれ。





「な、何をするか娘っ! 主に向かって無礼であるぞっ!!」

「うるさいわよっ! てゆうか、アンタほんとに一体なんなのっ!? あたし、こんなの聞いてないしっ!!」

「全く、物覚えの悪い・・・・・・。いいか、よく聞け。我が名はジーク。お前達の主だ」

「だからなんでそうなるっ!? もうワケわかんないしっ!!」





奇遇だな、亜樹子。俺も聞いてない。・・・・・・とにかく、いきなり『俺の』事務所に飛び込んできた白い鳥を模したと思われる人外の存在は、平然と羽を撒き散らしながらここに居座っている。おかしい、真面目におかしい。



あぁもう、こうしている間にもまたぎゃーぎゃーぎゃーぎゃー騒ぐし・・・・・・!!





「うるさいんだよお前らっ! ちったぁ静かにしろっ!! つーか、喧嘩するなら出てけっ!!」

「はぁっ!? 何言ってんのよっ! こんなの連れて出れるわけないでしょっ!! てゆうか、さっきまで黙ってたくせに、なにいきなり口出ししてんのよっ! てか、これなんとかしなさいよっ!!」




そう言って、亜樹子は外を指差す。・・・・・・おかしいのは、残念な事に中だけじゃなかった。外もおかしい。非常におかしい。

なんつうか・・・・・・警官がサーベル(西洋刀)を腰に差してたりする。牛鍋(現代のすき焼き)屋なんてのがあったりする。文字が右から読みだったりする。

なお、色々手管を使った上でちょっと調べたところ皆さんご丁寧にもここは東京で、今は明治11年だと教えてくれた。あ、つい最近、『当時』の明治政府のトップである大久保卿が暗殺されて大騒ぎになったとか。



あははは、マジでこれどうなってんだ? つーか、いきなり過ぎてワケが分からない。





「出来たらやってんだよっ! 俺だってなんでいきなりこれなのかワケわかんないんだよっ!!」

「とりあえず・・・・・アレよっ! コイツ退治すればいいんじゃないのっ!? ほら、Wでドカーンとさっ!!」



なんて言って、アイツは白い鳥野郎の首根っこをとっ捕まえて、俺の前に突き出してくるが、鳥野郎はその手を払いのける。



「無礼なっ! というより、これは私のせいではないっ!!」

「なに言ってんのよっ! アンタが来た早々外がこんなことになってんだから間違いなくアンタのせいでしょっ!? ほら、早く焼き鳥になんなさいよっ!!」

「・・・・・・残念だけど、そんなことをしても、僕達は元の時代には戻れないよ」



なんて言いながら、俺が使うハットをいくつもかけてある事務所のドアから出てきたのは・・・・・・あぁ、なんか分かったのか。いや、待ちくたびれたぜ。



「ごめんね。ちょっと重要なキーワードが見つかって」

「重要なキーワード?」

「翔太郎、君は知っているかな? ・・・・・・すき焼きというものをっ!!」





なんか自信満々に俺を指差してそう言い放った。で、当然のように俺は前のめりでずっこける。



すき焼きって・・・・・・はぁっ!?





「いや、実に興味深かった。・・・・・・いいかい? すき焼きはこの時代で言うところの牛鍋。その味付けには関西風と関東風の二つがあり、起源は」

「待て待てっ! なんでまずすき焼きからっ!? 俺はこっち最優先って言ったよなっ!!」

「そうだよっ! なんでまずそこから行っちゃうのかなっ!!」

「何を言ってるんだい。亜樹ちゃんが昨日の昼食に作ってくれたじゃないか。関西風のそれを」





フィリップが亜樹子に視線を向けてそう言う。で、当然のように俺も視線が向く。



若干睨み気味になっているのは気のせいだ。・・・・・・訂正。思いっきり睨んでる。





「い、いや・・・・・・なんというか、あたしが食べたくなっちゃって、それでその・・・・・・。ほら、ここで猫探しとかしたおかげで依頼料も入ったじゃない?
だけど牛鍋屋はちょっと高いし、だったら自分で作ってみようかなーと。で、一人はあれだから、フィリップ君と一緒に食べたの。あはははは」



そう言って、目の前の女は笑う。なので、立ち上がってどしどしと詰め寄っていく。後ずさりするけど、間合いはどんどん詰めていく。



「あはは・・・・・・じゃねぇよっ! てーか、またお前のせいかぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
お前、コイツに余計な事教えんなって何度も言ってんだろっ!? てーか、なんで俺はすき焼き食ってないんだよっ!!」

「仕方ないでしょっ!? アンタは調査とか言って、外に出てたんだからっ!!」

「・・・・・・なるほど、確かにそうだな。お昼だから仕方ないよな。で、なんでその事を俺に黙ってたんだよ。夕飯だったら俺もここに居たし問題ないだろうが」

「ま・・・・・・まぁ、そこは気にしないで?」



気にするに決まってんだろうがっ! そして置いていけるかー!!

あぁ、崩れていくっ! 俺のハードボイルドがどんどん崩れていくー!! 誰かこいつらなんとかしてくんないかっ!?



「とにかく、彼を退治しても意味がない。僕達がここに居るのは、時間の歪みに巻き込まれたせいなんだからね」

「「・・・・・・時間の歪み?」」



てゆうか、聞いたことが無いぞ。そんなの。



「何者かが、過去で大きく歴史を変えようとする。すると、当然のように現在で生きている人間や物にも影響が出る。それを時間の歪みと言うらしい」

「タイムパラドックスとかなんとかってやつか。・・・・・・じゃあ、俺達が事務所ごとここに飛ばされたのも」

「正解。なんの偶然か、僕達はそれに巻き込まれてしまったんだよ。そして彼・・・・・・ジークも、その歪みで僕達のところに飛ばされてきただけのようだね。
しかし、イマジン・・・・・・電王・・・・・・時の列車。以前大ショッカーとの戦いの時に検索したが、さらに情報が増えていて実にゾクゾクするよ。」



・・・・・・いや、フィリップ。お前なんかスッゲー楽しそうだけど、また余計なものまで検索してないか? 電王って・・・あぁ、俺達以外の『仮面ライダー』か。

つーか、もしかしてやたらと時間かかってたのはそのせいかっ! だからまず今の状況優先でって言ったのになんでそうなんだよっ!!



「え、それじゃあ、本当にコイツのせいじゃないの?」



で、アイツは鳥野郎を指差す。指差すと、目の前の男・・・・・・フィリップが、右手で本を持ったまま頷いた。鳥野郎も頷く。



「そうだよ。僕達が元の時代に、そして風都に戻るなら、今起きている時間の歪みをなんとかしないといけない。そして、その原因は彼じゃない。
彼一人では、今起きている規模の歪みは出せないと結果が出ている。というより、彼を倒しても、ハッキリ言って無駄で無意味で僕達の自己満足なだけだ」

「うんうん、その通りだ。娘、分かったか? 分かったら、早く茶を持って来い」



鳥野郎が両手を後ろに持っていき、腕を組みながらアイツの顔を覗き込む。それに悔しそうに両拳を握り締める。



「・・・・・・うぅ、納得出来ないー! あたしそんなの聞いてないしー!!
てゆうか、二人とも絶対なんか隠してるでしょっ! 電王とかってなにっ!?」



なんて言いながら、鳥野郎の首をギューギューと・・・・・・。



「く、苦しい・・・・・・! こら娘、離せっ!! お前は一体どこのなのはさんだっ!?」

「あ、なんか情報出したっ! フィリップ君検索っ!! キーワードは・・・・・・『なのはさん』っ!!」

「・・・以前調べた気がするけど、了解。では早速」

「だからやめろっ! 無駄なことで時間使ってたら、マジで帰れなくなるだろうがっ!!」










とにかく、なんかまた暴れ始めたバカを止めるために動く。あと、また勝手に関係ないと思われることを検索しようとしてるのもだ。





そして、そんなことをしている間にドアがノックされた。それに全員の視線がドアに向く。





で、俺が頭にかぶっている黒のハットを正していると、ドアが開いた。それも勢い良く。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「やぁ、鳴海探偵事務所へようこそ。ここへ来たということは、何か」

「あ、ほんとに居たですよっ!!」

「ぬ、そこに居るのは・・・・・・いつも少年に寄り添っている小さき娘っ! こんなところで会うとはなんという偶然っ!!」



『鳴海探偵事務所』と書かれた、やけにカラフルな看板がかけてある建物の二階。私達がそこのドアを開けて一番に見つけたのは、もうすっかりおなじみな白鳥王子。

アイツも、私達を見て自分の首の掴んでいた女の子の手を払って、こっちへゆっくりと歩いてくる。



「それに、幸太郎にツンデレの娘まで・・・・・・そうか、主を迎えに来たのだな。ふむ、大儀であった。誉めてつかわそう」

「・・・・・・あの、ちょっと?」



な、なんか無茶苦茶自己完結してるし。そして一つとして的を外してないってどういうことよ。確かに迎えに来たのは事実だから、何も言えない。

とりあえず代表として迎えに来た私と幸太郎、それにリインさんは、顔を見合わせて頷いた。三人とも、話が早くて助かるという方向性で納得する事にしたのは、言うまでもないと思う。



「まぁ、迎えに来たってとこだけは正解よ。あと、私はツンデレじゃないから。それ、誰から教わったのよ」

「当然、少年からだ」

「あのバカ・・・・・・! 会ったら絶対ぶん殴ってやるっ!!」



なんでこんなくだらない事教えてるわけっ!? つーか、アイツマジでなにやってんのよっ!!

よし、殴る。バカなことしなくなるように殴る。今決めた。そして有言実行よ。今のうちから右拳を握り締めているのはそれが理由よ。



「ふむ、やはりフラグとやらが立っているのか」

「違うわよっ!!」

「いや、ちょっとっ!? 頼むから俺を無視するなっ! てーかおたくらなにっ!!」





まぁいいわ。話が早くて助かる。てゆうか、明治11年に来てくれてて助かったわ。

普通にこのまま京都に向かえば、すぐにみんなと合流出来る。とにかく、急がないと。

・・・・・・ターミナルで見せてもらったあの新聞記事。あの火事が起こるまで、今日を入れるとあと二日しかない。



みんなと合流して、とっとと時間の歪みを直して、唯世も取り戻さないと。というわけで・・・・・・。





「そうよっ! アンタ達、いきなりなにっ!! てゆうか、コイツの仲間っ!?」

「あー、そんなとこだ。てゆうか、迷惑かけて悪かったな。話してる時間ないから、すぐに連れ帰るわ」

「ごめんなさいね、お礼はまた今度させてもらうから。・・・・・・さ、行くわよ」



とにかく私は、ジークの首根っこを片手でがっしりと掴む。



「こ、こらっ! 娘・・・・・・離さぬかっ!! というより、主はもっと敬」

「いいからっ! こっちは時間ないのよっ!? とっとと来るっ!!」



掴んで、そのまま外に引きずり出す。



「ちょ、こら待てー! なによ、アンタ達も時間の歪みがどうとかってのと関係してるわけっ!?
ちゃんと話しなさいよっ! これがなんとかならないと、あたし達帰れないんだからっ!!」

「だから、その歪みも俺達が直すからいいんだよ。それじゃあ、邪魔したな」

「失礼しましたですー♪」










そのまま、ドアを開けて、飛び込む。そのまま一気にドアを閉じた。だって、普通にあの小さな歌唄やりまと同年代くらいの女の子が飛び込んで来そうだったから。





一瞬、何か衝撃を感じたけど、きっと気のせい。・・・・・・とにかく、これでジークはとっ捕まえたから、増援部隊は完成。





ま、これだけのメンツが居れば、相手がゆりかごとか持ってない限りはなんとかなるでしょ。





・・・・・・一瞬、『ゆりかご持ってたらどうしよう』とか考えてしまったけど、気にしないことにする。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・痛ぁ。もう、なんなのよ」





うちの自称所長が、ドアに顔面をマトモにぶつけたせいで、痛そうに鼻を抑えてる。



それに怒ったようで、瞳を鬼のように険しくして、ドアを開けてあの乱入者を追いかけようとする。だけど、やめた。



どうやら、諦めたらしい。もう姿が見えなかったんだろ。





「アイツら・・・・・・! 所長のあたしを無視してコレってどういうことっ!? マジありえないしっ!!」



・・・まぁ、亜樹子は置いておこう。とにかく時間の歪みってやつだ、フィリップに早速検索を・・・・・・



俺はフィリップに視線を向けて、気づいた。なんかまずいことになっていると。





「・・・・・・フィリップ君? おーい、フィリップくーん。どうしたのかなー?」





その声に、アイツは答えない。てゆうか、普通にマジックペンを走らせて、壁に文字を書き始めてた。





「・・・・・・少年、フラグ、いつも寄り添う小さき娘。蒼凪・・・・・・恭文。これはすごい、67万もある」





ま、まさか・・・・・・検索モードに入ったのかっ!?





「魔導師・・・・・・ミッドチルダ・・・あぁ、高町ヴィヴィオとも関係しているのか・・・・・・フラグメイカー。いいね、ゾクゾクする。今までにないくらいにゾクゾクする。
20人近く恋愛対象が居る・・・・・それだけの人間の興味を引く・・・・・・あぁ、すごい。実に興味深い」

「ちょ・・・・・・フィリップ君、なんかスイッチオンになってない?」

「『なってない』じゃなくてなってんだよっ! あぁもう・・・・・・どうすんだよこれっ!? これじゃあしばらく動けないだろうがっ!!」










アイツら・・・・・・邪魔なの引き取ってくれたのはいいが、余計なキーワード残していきやがってっ!!





つーか、蒼凪恭文って誰っ!? そして67万って多すぎだろっ! いつまでこのモードなのか、俺にも予想出来ないぞっ!!





・・・・・・照井。俺達が戻るまで、風都は任せたぜ。なんせ、お前も『仮面ライダー』なんだからな。






「ちょっと、なにカッコつけてんのよっ!?いいからフィリップ君を止めるの手伝ってっ!!」




・・・・・・やれやれ、仕方ねぇな。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







「・・・とまぁ、相違点があるとしたらこれぐらいかな?」

「なんだか、フレイホークさんの世界もいろいろあったんですねぇ・・・」

「まさか、もう一人俺が居るなんてな・・・」




・・・・・・とりあえず、僕達は外に出て情報収集を行いながら、こっちの世界のジンからいろいろ話を聞いていた。


一応、僕達の世界との違いをまとめてみると、


・こっちの世界の僕はフェイトと付き合っていてラブラブらしい(『前』に出会った僕と同じような展開みたい・・・話を聞いているとき、ギンガがちょっと怖かった。)

・一応良太郎さん達とも出会っているけど、それからすぐ後に『大ショッカー』との戦いがあって、何人かがライダーに変身したり、予想外の人が仲間になったみたい(あのン・ガミオ・ゼダがユーノさんの使い魔になったり、シスター・シオンが実在しているとか。僕にとっては悪夢だね。)

・僕達が行動を共にしていた士達とは違う士達と出会っている。(証拠としてバルゴラの中に入っていたはやての結婚式の写真を見せてもらったけど、当然士達は驚いていた。)

なのはがユーノ先生と婚約している(これが僕にとって一番の驚き。)

・スカリエッティが脱獄しているけどなんかドロンジョ一味的なポジションにいる。

・『仮面ライダー』のような存在が現れた(ジンは、スカリエッティが作ったと睨んでいる。)



・・・けっこう、違いがあるなぁ。





「・・・だが、それではフレイホークやお前達がこの街に来た理由や、左達が事務所ごと消えた訳が分からん。」

「でもさ、オニ一族って奴が蘇ってるんだろ?だったらそいつらを倒せば早いんじゃ・・・」











「・・・へぇ・・・俺達を、倒す?」

「・・・なかなか、面白いことを言うな・・・」

「!?皆、避けろっ!!」





・・・・・・すると、頭上から光弾が降り注ぐ。

僕達がとっさに回避すると、そこには・・・・・・ゲルニュートの群れを引き連れた、金ピカの衣装を身につけて長い槍のような杖を持った男と、銀ピカの衣装に身を包み金棒を持った白髪の男。


「・・・お前らは・・・」

「おや?我々の事を知っているとな・・・あぁ、そうか。貴様には見覚えがあるぞ?いきなり現れたあの目が痛くなる色の仮面ライダーだな?」

「そこのチビも、前に俺達と戦った時にいたなぁ・・・」



・・・・・・誰が、誰が視界に入らなくらいの豆粒ドチビだあぁぁぁっっっっ!?!?



「恭文君落ち着いてっ!?そこまで言ってないからっ!!」

「まったく・・・ユウスケ、いけるな?夏みかん、お前は下がってろっ!!」

「あぁっ!!」

「わ、分かりましたっ!!」

「・・・あれが、オニ一族か・・・」

≪Axel≫


・・・気がつくと、士は白いバックルを腰に当ててディケイドが描かれたカードを、ユウスケは腰に銀色のベルトを巻き、照井さんは赤いメモリを取り出し、バイクのハンドルのようなバックルを腰に当てる。


「「「変身っ!!」」」

「変・・・身っ!!」


≪KAMENRIDE DECADE≫

≪Axel!!≫



・・・・・・その掛け声と共に、皆の姿が変わる。



士がバックルにカードを装填すると、9つの影が重なると共に頭部に7枚のカードが突き刺さり、マゼンダと白、黒のカラーリングに身を包む『仮面ライダーディケイド』に。



ユウスケが右腕を左腰に当てて両腕を広げると、黒い体に赤い鎧、金色の角に真紅の瞳を持つ『仮面ライダークウガ・マイティフォーム』に。



照井さんがベルトにメモリを装填すると、バイクのマフラーのような物体が周囲に浮かぶと共に赤い球体が照井さんを包み、全身が赤い装甲に包まれて青いゴーグルの『仮面ライダーアクセル』に変わる。




「とりあえず、俺達のやるべき事は鬼退治って所だな。」

「そうだな、さっさと終わらせるぞ。」

「・・・いくぞっ!!」

「兄ちゃん、俺達もやろうぜ。」

「そうだな、ミミヒコ・・・」


士達が変身するのを見ると、男達・・・クチヒコとミミヒコは、それぞれの武器を掲げる。

すると、何も無いはずの空間が割れて、クチヒコとミミヒコの体に光が降り注ぐ。


「「変身っ!!」」



そして、クチヒコは金色の飛蝗を模した姿『ゴルドラ』に、ミミヒコは銀色の飛蝗に似た姿『シルバラ』に姿を変える。


「お前ら、やっちまえっ!!」

『アイアイサー!!』



・・・・・・ギンガ、僕達もいくよっ!!


「え、えぇっ!?」

≪あなた、本気ですか?まぁ、面白いからいいんですけどね。≫

≪Sir・・・諦めてください。≫


慌てふためくギンガを尻目に、僕は懐から取り出したダブルドライバーを腰に当てる。

すると、ギンガの腰にもダブルドライバーが現れた・・・・・・よし、説明書通りだっ!!


「ジン、僕の体と夏海さんの護衛よろしくっ!!」

「なにぃっ!?」


僕は白いメモリを取り出すと、そのボタンを押すっ!!

≪Meteor≫


ほら、ギンガも同じようにっ!!ただし、僕とは向きを逆にしてっ!!


「え、えぇっと・・・こうっ!?」

≪Fist≫


よし、それじゃあ声を揃えてっ!!せ〜のっ!!


「変身っ!!」

「へ、変身っ!?」




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「変身っ!!」

「へ、変身っ!?」



その声と共に、まずヤスフミが白いメモリをダブルドライバーの右側に挿す。ギンガさん側のダブルドライバーにメモリが転送される。


「え、えっと恭文君っ!?この後どうすればいいのっ!?」

「ギンガもメモリを挿して、その後ドライバーを横に広げるのっ!!」


・・・・・・ちなみに、変身を邪魔されてないのは士さん達がゲルニュートを食い止めているからだ。

ユウスケさんと竜さんからは感じないが、士さんはちょくちょく視線を向けていて『さっさとしろ』と言外に告げている。



「こ、こうっ!?」


ギンガさんが両手をバックルにかける。かけて、バックルを開いた。

バックルのメモリが入った部分が、開いてWを形取ったような形状になる。





≪Meteor・・・・・・Fist!!≫


生まれたのは、光。ギンガさんは両手を広げながら、青色と銀色で構築された球体に包まれた。

その中で、下から上へと姿が変わっていく。右がまばゆい白銀で、左が群青色の姿に。

瞳は赤く、額から銀色の二本の角。首の左側から、金色のマフラー。さらに左腕には、ギンガさんが使用するリボルバーナックル。

それと同時に、ヤスフミは瞳を閉じて倒れこむ。俺はその体を支えると、脇に担いで夏海さんと一緒に戦闘から離れる。


そして変身を終えると、ギンガさんの周囲に光が溢れる・・・・・・そのまぶしさに、俺達は目を細めてしまう。



「・・・ほ、本当に変身しちゃった。」

≪Sir、私も驚きです≫

「ってブリッツキャリバーもっ!?というか、リボルバーナックルから声がするしっ!?」

【まぁまぁ、とりあえず落ち着こうよ。それと、決め台詞も忘れちゃ駄目だよ?】

「・・・・・・お前ら、いつまでしゃべってやがるっ!?さっさと手伝えっ!!」

【・・・まったく、もやしは空気読めてないね・・・ギンガ、今回は僕がお手本を見せるから、今度変身するときは一緒にやろうね。】

「う、うん・・・」



そう言いつつ、ギンガさん・・・いや、Wは右半身をオニ一族に向けて、その右手を指差す。


【・・・・・・さぁ、お前の罪を数えろ。それじゃ、いくよギンガ!!】

「うんっ!!はああぁぁぁぁっっっっ!!」



そして、Wはゲルニュートの群れに飛び込んでいき、その拳を振るう。ギンガさんがベースになっているからかパンチを主体とした攻撃で、時折右側でキックを入れる。

・・・・・・あれはヤスフミだな。あの野郎、動きを再現しようとしてやがる。


【ちょっとギンガ!?ここは蹴り技主体で戦ってっ!!】

「そんな事言われても、こっちの方がやりやすいのっ!!」

≪あなた、バカじゃないですか?ギンガさんが主体なんですから、ギンガさんのやりやすい方に合わせてくださいよ。≫

【って、アルトはどこからしゃべってるっ!?・・・しょうがないなぁ、ここはギンガに任せるよ。】



すると、明らかに戦い方が変わり、さっきよりもなめらかな動きで群青と白銀の閃光は舞い踊る。

・・・・・・俺達の世界のギンガさんより戦い慣れしてないか、アレ?




≪ところでマスター、妙だと思わないか?奴ら、さっきから動いてないぞ。≫

「・・・そういえば、そうだな。」



ゲルニュート達はゴルドラとシルバラを守るように布陣しており、4人は奥にいる2人へと向かうようにどんどん進んでいく。なにか、策があるのか?







































・・・・・・その時、不意に殺気を感じ、俺はとっさにシュロウガを展開してその攻撃を受け止める。



「・・・よくわかったな。」



そして、目の前に現れた敵に対し・・・目を疑ってしまう。


それは、金色の巨大な生物の口を思わせるような牙を模した装飾の数々が見受けられる鎧と仮面。

そして、のこぎりのような赤い刃。



・・・・・・なんで、牙王コイツまでいるんだよっ!!


「・・・だが、受け止めるだけじゃ無意味だ。」

「がはっ!?」

「フレイホークさんっ!?」


腹部を蹴られた俺は、近くの壁に叩きつけられる・・・・・・なんとかバリアジャケットを纏うことが出来たけど、衝撃で全身が痛ぇ・・・・・・

夏海さんが駆け寄ってくるけど、俺の頭に最悪のシナリオが思い浮かぶ。


「・・・悪いな。お前らには・・・消えてもらう。」

≪Full Charge≫


そういいつつ、牙王はベルトにパスをかざす。


・・・ヤバイ、避けられない・・・!?



「じゃあな」

「くっ!?」


そして、無常にもその剣は振り下ろされた。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「【はああぁぁぁぁっっっっっっ!!】」


Wに変身した僕とギンガは、ゲルニュートをばったばったとなぎ倒す。

いやぁ、本当に楽しいねっ!!これで音楽でも流せたらもっと最高だよっ!!


「それは、いいアイディアだねっ!!」

【やっぱり、ギンガもそう思う?】

「・・・お前ら、少しは緊張感を持てよ。」


まぁまぁ、気にしないでよ。





ともかく、僕達は奥に陣取っていたゴルドラとシルバラへと向かう。すると、僕達とゴルドラ達の間に四体のゲルニュート達が割り込んできた。その体は、他のとは違い黒と金に染まっている。

・・・・・・なんか、嫌な感じがするね。


「フフフ・・・ちょうどいい。お前達、アレをやれっ!!」

「「「はっ!!」」」



そう言って黒ゲルニュート達が取り出すのは・・・・・・ガイアメモリっ!?


≪Maguma≫

≪Anomarocaris≫

≪T-Rex≫

≪Arms≫


それぞれがガイアメモリを腕に突き刺し、ゲルニュート達がメモリに対応したドーパントに姿を変える。


うわぁ、すごい事をやるなぁ。というか、コネクタをどうやって埋め込んだのさ?

・・・・・・でも、僕達をナメすぎじゃない?


【士、ユウスケさん、照井さん、マグマドーパントは僕達がやるよ。ちょうどいいメモリがある。それと、あの武器をたくさん持っている奴はユウスケさんが相手した方がいいよ。ユウスケさんなら、あの武器を逆に利用できる。】

「そ、そうなの?・・・よし、わかったっ!!」

「なら、俺は恐竜の頭をした奴だな。あの気持ち悪いのは任せたぜ。」

「・・・いいだろう。」




そんな会話を交わしつつ、僕達はそれぞれのドーパントと相対する。さぁって、やるとしますか。


「でも恭文君、いったいどうやって・・・」

【これを使うの。】


ギンガさんの問い掛けに、僕はギンガさんの右手を動かして水色のメモリを取り出す。なお、どこからメモリを取り出したのかは秘密。

それでギンガさんもわかったのか、マグマドーパントの攻撃を避けながらドライバーを操作してメテオのメモリを取り外すと、水色のメモリを装填してドライバーを開く。


≪Snow・・・・・・Fist!!≫


すると、右側の装甲が水色に変わり、手首のリングや肩アーマーの一部がメタリックブルーに染まる。

マグマドーパントは一瞬それに驚きを見せるが、気にせずに襲いかかってくる。

けど・・・それは僕にとって好都合。


【はぁっ!!】


右手を開いて地面に触れる。すると、触れた側からマグマドーパントに向かって地面が凍りついていき、徐々にその体を凍りつかせていく。


これが、『スノウ』の力。水分を操り、自在に冷気を放つ事ができる。


炎系統とならどちらが高出力かで勝敗が決まるけど・・・・・・急激に冷やせば、いくらなんでも耐え切れるはずがない。

まぁ、あっちが動きを止めて氷を溶かすのに集中すればどうかわからないけど・・・その隙は、与えない。


【ギンガ・・・トドメ、行くよ。】

「わかった。」


ドライバーを閉じて僕がフィストのメモリを引き抜くと、リボルバーナックルの肘部分に備えられたスロットにメモリを装填する。


≪Fist!!≫


すると、凍りついていたマグマドーパントがだんだん上へとあがっていき、巨大な氷柱が出来上がる。さらに、その周囲を取り囲むように氷の道が出来上がる。


≪Maximum Drive≫


逆に、リボルバーナックルには紫色の輝き・・・・・・ギンガの魔力光と同じ輝きが集まりだす。


・・・・・・あ、いい名前思いついた。

ギンガはちょっと苦笑すると、そのまま走り出して氷の道を滑り出す。目指すは、氷柱のてっぺんで凍り付いているマグマドーパントめがけて。


【「フィスト」】


加速した僕達は、大空へと舞い上がる。見下ろす先にはマグマドーパントが自身の熱で周囲の氷を溶かしたようだけど・・・もう、遅いっ!!



【「グラキエスインパクトッ!!」】


振り下ろされた拳がマグマドーパントへと突き刺さり、氷柱を砕きつつマグマドーパントを地面に叩きつける。


そして、僕達が地面に降り立つと・・・砕け散った氷が雪のように降り注ぐ中、マグマドーパントは爆発を起こした。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





・・・・・・あいつら、なんて派手な技をやりやがる。


俺は頭だけの恐竜が噛み付いてくるのを避けながら、そんな事を考えていた。




・・・そういや、新しいカードがあったな。あれを試してみるか。



俺はライドブッカーからカードを取り出すと、バックルに装填する。


≪KAMENRIDE W≫


すると、俺の姿は緑と黒の半分になった姿・・・・・・Wへと変わる。

襲いかかってくる恐竜を蹴り飛ばし、つづけてもう一枚カードを装填。


≪FORMRIDE W HEAT≫


その声と共に、右側が赤色の姿へと変わる。あいかわらず、恐竜は口を大きく開けて俺へと走りよって・・・・・・


「いい加減にしろっ!!」


うっとおしいので、炎を纏わせた右拳で殴りつける。さて、恐竜は焼いても食えなかったよな・・・なら、ウェルダンで真っ黒焦げに焼いてやるか。



≪FORMRIDE W METAL≫


今度は左側が銀色に染まり、背中に棍棒のようなものが現れる。俺はそれを手にとると、最後のカードを装填した。


≪FINALATTACKRIDE D-D-D-W≫


「さぁ・・・お前の罪を数えろ、ってな?」


≪Metal!!Maximum Drive≫


棍棒のスロット部分に現れたメモリを押し込み、棍棒に炎を纏わせる。そして、俺は頭でっかちの恐竜めがけて棍棒を振り抜く。


吹っ飛ばされた恐竜は、空中で爆発を起こす。


・・・・・・さて、ユウスケとあいつはどうなってる?







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




・・・・・・あれ・・・まだ生きてる?


生きてるどころか、さっきの蹴りによる以外の痛みを感じなかった俺は、不思議に思って瞑っていた目をゆっくりと開く。



するとそこには、黒い鎧に身を包み、両肩に盾を背負ったライダー・・・リュウガが、牙王の攻撃を防いでいた。



「はあああぁぁぁっっっっ!!」

「くっ!!」


そして、牙王に襲いかかる紫の影。とっさに牙王が後方にジャンプしてその攻撃を避けると、襲いかかった影・・・仮面ライダー王蛇が、ゆっくりと立ち上がった。


「・・・イライラするんだよ。もっと俺を楽しませてみろ・・・」

「・・・・・・はあっ!!」


そして、王蛇とリュウガは牙王へと襲いかかる・・・いったい、何が起きているんだ?





「・・・やれやれ、なんとか間に合ったか。」


すると、そんな声が聞こえてくる。そこに立っていたのは、眼鏡にフェルト帽を被った中年の男性。


「な、鳴滝さんっ!?」

「・・・・・・アンタが、あいつらを呼び寄せたのか?」

「もちろんだ。君に死んでもらっては困るからね・・・さぁ、立ち上がりたまえ。君には、ライダーとして戦う力があるはずだ。」


・・・ライダーとして、戦う力?


鳴滝の言葉に、俺は思い当たるものを考える。そして、懐からあるものを取り出した。


それは、ヤスフミ達が持つダブルドライバーに似ているが、メモリを装填するスロットが片方しかないバックル。

ロストドライバー。光写真館を訪れた時に、夏海さんから渡されたものだ。

けれど・・・・・・



「・・・アンタがこれを送りつけたのか?だけど、コイツだけじゃライダーにはなれない。」


ダブルに関係するドライバーである以上、変身する為にはガイアメモリが必要だ。

だが、コイツが入っていたケースにはメモリらしきものは一つも入っていなかった。

それでいったい、何に変身しろっていうんだっ!!


「・・・・・・いや、メモリならある。君のすぐ近くに。」

「はぁっ!?いったい何処に・・・・・・」



その時、電子音声のような鳴き声が響き、俺の肩になにかが乗る。

それは、白い恐竜の姿をしたロボット。そいつが、鳴き声をあげながら俺を見る。


・・・・・・ちょっと待て。コイツはフィリップの護衛用のメモリだろっ!?それに、ロストドライバーでコイツをつかったら・・・・・・


「今回だけ、それは君に力を貸してくれる。さぁ、そのメモリで変身するんだ。リュウガや王蛇でも、あの牙王相手には長くは持たない。」




・・・・・・くそ、やるしかないってのか。


≪マ、マスター!?≫


俺は覚悟を決めると、肩に乗っていたファングメモリを手にとりメモリモードに変形させると、ロストドライバーを腰に装着する。



≪Fang≫

「・・・・・・変身っ!!」

≪Fang!!≫



メモリをベルトに装填したとき、鳴滝の頬がわずかに緩んだ気がして・・・俺の意識は、闇の中へと消えた。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・変身っ!!」

≪Fang!!≫



その音声と共に、フレイホークさんの周囲を青白い光が包み込む。


そして、光がやむと・・・そこに立っていたのは、白い体に黒いラインを持つライダー。

恭文君とギンガさんが変身したライダーに似た姿をしているけど、全体的にトゲトゲしい。


「・・・・・・ウオオオォォォォォォッッッッッッッッ!!」


そして、白いライダーが叫び声を上げると・・・両肩、手首、足首から鋭い刃が生え・・・夢で見た、黒いクウガを彷彿させる姿になる。

そのまま姿勢をかがめた白いライダーは、とてつもないスピードで金色のライダー・・・牙王と呼ばれていたライダーに襲いかかる。


「!?ちぃっ!!」

「ガアアァァァァッッッッ!!」


その荒々しい攻撃は、先程まで二体のライダーを相手に優勢だった牙王を圧倒していく。

すごいパワー・・・・・・でも、フレイホークさんはどうして変身するのをためらっていたんでしょう?

そんな事を考えていると、白いライダーは腕の刃で牙王を切り裂き、牙王が吹き飛ばされて地面に膝をつく。



「・・・・・・ちっ、次は必ず潰す。」


そして、牙王は銀色のオーロラの中に消えていく・・・・・・よかったぁ、これで一安心です。



「ウオォォォォッッッッッ!!」



・・・・・・けれど、おかしいと思ったのはその時だった。

敵を退けたはずなのにフレイホークさんは変身を解かず、雄叫びを上げてどこかへと走り出す。


「フ、フレイホークさんっ!?・・・鳴滝さん、いったいどうなっているんですか・・・って、あれ?」


気がつけば、鳴滝さんは居なくなっている。


「・・・まさか・・・」


嫌な予感がした私は、恭文君を背負うと士君達の所へ向かう。


どうか・・・嫌な予感が、当たりませんように。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




≪Electric!!≫

「そこのお前、しゃがめっ!!」

「おわぁっ!?」


俺がとっさにしゃがみ込むと、頭上をかすめて雷が降り注ぎ、俺が相手にしていた奴と照井さん・・・だっけ?とにかく、赤いライダーが相手をしていた奴の動きを止める。

危ないことするなぁ・・・でも、おかげで隙が出来たっ!!

俺は地面に転がっていた刃が折れた剣を手にとると、頭の中にふさわしい姿を思い浮かべる。


すると、赤かった鎧が銀色で紫の縁取りをされた姿に変わり、持っていた剣もクウガのものに変わる。

武器だらけの敵が右腕を銃に変えて俺めがけて撃ってくるけど、紫のクウガになった俺には通じない。


・・・・・・ホントに、恭文の言ってた事当たるなぁ。こいつの右腕の変化スピードには、多分士のカードは間に合わない。


そんな事を考えつつ、俺は前に進む。弾丸が雨あられのように降り注ぐけど、俺の歩みを止める事はできない。


「はあああぁぁぁぁぁぁっっっっ!!」


そして、俺は剣を構えて相手の腹部に突き刺す。そして、そのまま相手を持ち上げて空中へ投げ飛ばした。

投げ飛ばされた敵は、空中で爆発を起こす・・・・・・よしっ!!



≪Engine!!Maximum Drive≫



そんな音声が響くと、もう一体も赤いライダーがAの字を描くように切り裂き、爆発を起こした。

そして俺達は集まると、あの金と銀の二体に視線を向ける。



「さぁって、これでお前の部下共は居なくなった。」

「後は、お前らだけだっ!!」



「・・・・・・ちぃっ。思った以上に使えん・・・・・・まぁ、今日はこれくらいにしておこう。」

「えぇっ!?もう帰っちまうのかよ兄ちゃんっ!!」

「ミミヒコ、言う事を聞け。」

「仕方ねぇなぁ・・・お前ら、次に会った時はぶっ潰してやるからよっ!!」




・・・すると、金ピカ達は銀色のオーロラの中に姿を消す・・・


「けっきょく、何がしたかったんだあいつら?」

「さぁな・・・」
















「ガアアァァァァッッッッッッ!!」

「何ぃっ!?」

「士っ!?」







そんな風に考えていると、突然白い影が士を吹き飛ばす。


そこに立っていたのは、ギンガちゃんと恭文が変身したライダーに似た、白いライダー。

そいつは全身から生えている刃を武器に、士へと襲いかかる。


・・・なんだよあのライダーはっ!?



「・・・なぜ、フィリップが変身したWがここにいるっ!?」

【違うよ照井さんっ!!あのW、ファングジョーカーじゃないっ!!】


赤いライダーと恭文は、なんか知ってるのかっ!?俺、訳がわからないんだけどっ!!




「みんなっ!!」




・・・その時、恭文の体を背負った夏海ちゃんが息を切らして走ってきた。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「・・・士っ!!しばらく耐えていてっ!!」

「お、おいっ!?くっ!!なんて速さだっ!!」



・・・ともかく、あの白いWは士に任せて僕達は夏海さんへ駆け寄る。

きっと夏海さんなら、なにか知っている気がするから。



「夏海ちゃん、あの白いライダーはなんなんだっ!?」

「あれは・・・フレイホークさんです・・・牙王ってライダーに襲われたら、鳴滝さんが助けてくれて・・・フレイホークさんに話しかけたと思ったらフレイホークさんが変身して・・・」




息を整えながら、夏海さんは状況を説明してくれる・・・・・・だいたいわかった。あの眼鏡のせいか。


"ヤスフミ、聞こえるかっ!?"


・・・すると、バルゴラから念話が繋がる・・・ジンは、大丈夫なのっ!?


"駄目だ、完全にファングメモリに飲み込まれているっ!!"



・・・・・・まったく、最悪な状況だね。でも、夏海さんの話を聞くかぎりじゃ裏で糸を引いてるのはあの眼鏡だ。

あいつ、そこまでしてディケイドを葬り去りたいんかい・・・なら、こっちだって考えがある。



【ギンガ、ちょっと体を借りるよ】

「・・・えっ!?」



ギンガの驚きをよそに僕はダブルドライバーを操作してメモリを引き抜くと、赤いメモリを取り出す。



≪DEN-O≫


スイッチを押すと、迷うこと無くそのメモリを装填し、ドライバーを展開する。



≪DEN-O・・・・・・Fist!!≫



鳴り響くのは、電王が変身する時に・・・ソードフォームの時に流れる音楽。

さらに、Wのスーツの上から銀と黒で構成されたスーツが包む。さらにその周りを、虹色のレールが囲む。レールの上には・・・赤いアーマー。

それがWの上から纏うスーツに装着されていく。赤いプレストアーマーのようにも見える物が。



そして最後に・・・頭の銀色のレールのような部分を走るようにして、赤い桃が現れる。



それは顔の正面に来ると、パカッと真ん中から割れ、その動きを止めた。



「・・・・・・もう、ついて行けません・・・・・・」

「な、夏海ちゃんっ!?」

「・・・なん、だと!?」

「おいっ!?いくらなんでも、それは無いだろっ!?」




「・・・俺っ!」





周りの声を気にせず、僕は自分を右の親指で差す。



そして、歌舞伎役者が見栄を張るように、左手を前にだし、右手を後ろに下げてポーズを決めると、他のメンバーもそれに習う。



そして、叫ぶ。





「参上っ!!」



とにかくポーズを決めると、左手を前に掲げる。

すると、そこに現れたのはデンガッシャー。けれど、既にソードフォームで使う状態に組み上げられており、なぜかパーツの各部に青い宝石が埋め込まれている。

さらに言えば、刃は赤じゃなくて青・・・って事は。


≪どうも、私です。≫


やっぱりアルトだった。


【あ、あの恭文君っ!?私、なにがなんだか分からないんだけどっ!?】

「心配しなくていいよギンガ・・・電王と同じだから。」

【それ、まったく安心する材料にならないんだけどっ!?】




・・・・・・まぁ、ぐだぐだ言ってる場合じゃない。こんなやりとりをしている間でも、ジンが変身したWは士を襲っているんだから。



「・・・さぁて、ここからは徹底的にクライマックスだっ!!」

≪とりあえず、別世界とはいえマスターの友人の中でも貴重な、常識を知る親友を助けにいくとしますか。≫


・・・貴重な友人って何っ!?まぁ、今はいいや。



「いくぜいくぜいくぜぇぇぇぇっっっっ!!」



僕はアルトを肩に担ぐと、親友を救う為に走り出した。











(第5話へ続く)



あとがき


バルゴラ≪と言う訳で、本格的に超・電王編に入ったがいかがだっただろうか?お相手は私、バルゴラと・・・≫

シュロウガ≪私、シュロウガでお送りしますっ!!≫


(なお、栄光の流星がいないのは、本編でぜっさん暴走中だからです。)


バルゴラ≪とりあえず、若干本家の内容を変更しつつ出来た今回のお話。非常に中身が詰まっているな。≫

シュロウガ≪Wと電王が居ない状況でどうやってライダーとのクロスを成り立たせるかを考えると、ディケイドって都合いいよね。≫

バルゴラ≪こらこら、そんなメタな発言はいけないぞ?・・・・・・だが、まさかIFルートとクロスする事になるとは思わなかったがな。≫

シュロウガ≪しかも、やっちゃんとギンガさんもWに変身するし、マスターまで変身しちゃうからね〜≫

バルゴラ≪まぁ、今回の話にはコルタタ殿の意見が大いに参考になっているからな、本当に感謝する。≫


(そういって頭を下げる蜃気楼とニルヴァーシュspec-V・・・本当に、ありがとうございました。)


バルゴラ≪ちなみに、デンオウメモリは実際に商品化されているからな。もっとも、商品版はボディメモリだが。≫

シュロウガ≪作者さん、ネタがないからっていろいろサイトを見ていたらふと思いついたらしいしね〜♪≫

バルゴラ≪それを言ってはいけないぞ我が妹よ・・・しかし、次回からはどうなるのだろうな?カトラス側もスカルが登場したことだし・・・≫

シュロウガ≪とりあえず、予定より長くなりそうなのは確かだよ。それじゃ皆さん、また次回でね〜♪≫




(そしてフェードアウト。本日のED:『超Climax Jump』)





















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