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頂き物の小説
第3話『序章〜正義の味方、仮面ライダー〜』



















「・・・・・・カートリッジ、ロード。」

≪了承、魔力弾倉装填。魔力増幅開始。≫




・・・IOの声と共に右腰の装甲から空薬莢が排出されると、首元のマフラーから青白い魔力が放出されて右足へと収束する。





「テンペスト・・・・・・」



防衛装置であるガジェットが放つレーザーをかいくぐりながら、俺は空中へと舞い上がる。


すると、右足に収束していた魔力が文様を描きつつ螺旋の渦となってガジェットへと突き刺さり、その巨体を空中に固定する・・・・・・











「・・・・・・インパクトッ!!」








マフラーから放出され続ける魔力によって加速し右脚を突き出した俺は、螺旋の渦を突き進む一筋の槍と化し・・・・・・ガジェットを貫いた。



その勢いのまま、俺は破壊対象である研究所の壁を突き破り・・・・・・内部へと侵入する。




『緊急事態発生、緊急事態発生っ!!研究員は記録を消去して直ちに退避せよっ!!繰り返すっ!!緊急事態発生、緊急事態発生っ!!』




・・・・・・さすがに、目立ちすぎたか・・・・・・




≪主、微弱生体反応確認。数、8・・・否、9。≫

「・・・・・・何?」


俺が顔をあげると、そこには表情を驚きに染めている白衣をまとった女性と、その女性に連れられた・・・・・・光を失った目をみせる少年少女達が、その部屋にはいた。





「・・・・・・あ、あなたは・・・・・・管理局の方、ですか?」


・・・恐る恐るといった様子で、女性は俺に問いかけてくる・・・・・・俺がそれに首を振ると、女性の表情はさらに驚愕へと染まった。



「おいっ!!いったいいつまで・・・・・・そうか、なぜ嗅ぎつけられたのか不思議だったが・・・・・・貴様が裏切り者だったのかっ!?」



すると、俺達がいる部屋に慌てた様子で入ってきた研究員が状況を見てわめき出す・・・・・・どうやら、俺には気がついてないようだ。




しかし・・・・・・おかげで状況が把握出来た。






「・・・・・・少し、寝てろ。」

「ぐぶぅっっ!?」



研究員の頭をつかんで地面に叩きつけると、俺は怯えている子供達に視線を向ける。


・・・・・・この気持ちは、なんなのだろうな?



「・・・・・・はやく逃げろ。」

「え?」

「俺が囮になる・・・・・・その隙に、その子達を連れて逃げろ。外の防衛装置は破壊してあるから、そこの穴から外へ出るといい・・・」


≪衝撃緩和防御魔法展開≫



IOの言葉と共に、壁に開けた穴の下に魔法陣が現れ、網状の結界を構成する・・・・・・これで、ある程度衝撃を殺せるだろう。



「・・・は、はいっ!!皆、急いでっ!!」



女性の言葉と共に、子供達は穴から飛び降りていく・・・・・・結界をクッションのように利用し、誰も怪我一つないようだ。



「・・・お兄ちゃん・・・誰、なの?」



すると、最後に残っていた小さな女の子が俺に近づいてくる。その右手や左目には包帯が巻かれており、痛々しさを感じさせる。








「・・・・・・仮面、ライダー・・・・・・俺は、仮面ライダーだ。」








俺はかがみ込んで少女の頭を撫でながら、そう答える。




・・・本来なら、その名前は俺が名乗っていいものではない・・・


・・・だが、この子達が希望を持てるのなら・・・・・・今は、この名前を借りておこう。




「そっか・・・・・・ありがとう、仮面ライダーさん!!」



少女は俺に笑顔を見せると、踵を返して外へと飛び出していく・・・・・・最後の子供が外へ出るのを確認した女性は、俺へ頭を下げて自分も脱出した。
















「・・・・・・IO、ブレイズフォーム発動。」

≪了承。近接形態起動。≫






IOの声が響くと、バックルのクリスタルが赤から青へと変わり、全身をワインレッドに染め上げられた、鋭角な装甲が包む。



そして、背中に装着された2本の剣をゆっくりと握り締めると、その刃には炎が灯る。







「・・・・・・燃えろ。」







俺が部屋の外に出て刃を振り抜くと、炎の斬撃が施設を切り裂き、紅蓮の炎に染め上げる。




・・・・・・あぁ、これが・・・・・・『怒り』という感情なのか。





「な、なんだアイツはっ!?」

「・・・鬼・・・いや、悪魔かっ!?」





剣を振るいつつ廊下を進んでいくと、逃げ惑う研究員からそんな声が聞こえてくる。




・・・・・・確かに、この姿では頭部に2本の角が伸びているからな・・・・・・そう見えるのも仕方がないか。







「・・・破壊する・・・」





炎を引き連れて、俺は施設の奥へと進んでいく・・・・・・邪魔をしてきた研究員はなぎ払ったが・・・一応非殺傷設定だ、死にはしないだろう。





・・・脳裏に浮かぶのは先程の子供達。あの子達は、無事に逃げ出せただろうか?






「・・・・・・この俺が、破壊するっ!!」






込めるのは、胸に宿った決意。



刃に灯すは、怒りの炎。




この力は・・・・・・理不尽な現実ものを破壊するために。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









「・・・・・・こ、これは・・・・・・」

「・・・マジ・・・かよ?」












・・・・・・・・・向かった先で俺達を待っていたのは、炎に包まれた研究施設。


傍らに視線を向けてみれば、そこには防衛装置代わりと見受けられるガジェットもどきの残骸が転がっている・・・・・・その破壊痕は、明らかに人為的なもの。



・・・・・・でも、いったい誰が?







≪・・・!?マスター、上だっ!!≫



バルゴラの驚いたような声に、俺はとっさに研究施設の上・・・屋上付近を見る。




月明かりに照らされた影は・・・・・・2本の角を持ち、首元にマフラーをなびかせた異形の姿。




「・・・・・・・・・・・・え?」






・・・・・・いや、異形と表現するのはおかしいのかもしれない。

なぜなら、俺はその存在とよく似た存在を知っているのだから。


そして、その影は俺達に気がついたのか・・・ゆっくりと振り向き、俺達を見下ろす。










「・・・・・・・仮面、ライダー?」







そして、炎に照らされて輝きを増しているその赤い瞳はなぜか・・・・・・泣いているように見えた。





・・・その仮面ライダーもどきは俺らから視線を外すと、いつの間にか空中に浮遊していた赤いバイクのようなものにまたがりどこかへと消えてしまった。






・・・・・・なんだったんだアイツは?





「・・・フレイホーク君、私は中へと突入します。あなたは周囲を調査して生存者が居ないかを確認してくださいっ!!」

「って、エリスさんっ!?」



俺にそう告げると、エリスさんは炎に包まれた施設の中へと突入していく・・・・・・とりあえず、言われたとおりにしますか。



「・・・・・・バルゴラ、どうだ?」

≪・・・ふむ、森林地帯に反応がいくつかあるな・・・≫

「・・・じゃあ、そこに行ってみるか。」






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






「・・・・・・参りましたねこれは。」



炎に包まれた研究室の中へ入ったのはいいのですが・・・・・・既に研究資料は灰と化しており、研究員達もかろうじて生きてはいるものの・・・おそらく再起は不可能。


≪・・・マスター、残されたデータへのハッキングに成功しました。これでなんとか物的証拠が確保できましたね。≫

「ご苦労様ですカペル。」

≪いえ・・・≫


『・・・エリスさん、こっちは研究員と被験者と思われる子供達を保護しました。どうやらエリスさんが言っていた協力者のようです。』

「分かりました。では、フレイホーク君は引き続き彼らの護衛を行ってください。」

『うぃっす。』


・・・フレイホーク君からの通信が途切れると私は研究員達を外に運び出して現地の管理局員の到着を待つ。











・・・・・・そして思い返すのは、先程出会ったあの異形の戦士。


ミッドチルダに最近広まっている『仮面ライダー』の特徴に合致してはいるが・・・・・・まさか、本物?



・・・いえ、本物か偽物かは関係ないですね・・・・・・彼の行動で、救われた人もいる。




彼のような存在を・・・・・・正義の味方と呼ぶのですかね?


























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第3話『序章〜正義の味方、仮面ライダー〜』

















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








「・・・どうだいカトラス?なるべくシンプルになるようにしてみたんだが・・・」

「あぁ、問題ない。ドクター、感謝する。」



・・・現在アジトにしているラボで、俺はドクターに預けていたIOを受け取った。


あの研究施設を破壊した後、ブレイズフォームにかかった負荷をチェックする為に一時的に預けていたのだ。

ついでに調整の終わったガイアフォームの搭載と、待機形態が追加されていた。


俺の右手首には少々無骨だがシンプルな銀色のブレスレットが巻かれている・・・・・・これが、IOの待機形態だ。


≪博士、感謝。我、歓喜。≫

「ふむ、IOのAIも徐々に成長しているようだね・・・・・・そうだカトラス、お使いを頼まれてくれないか?」

「?それは構わないが・・・・・・ウーノ姉さんやトーレ姉さんでは駄目なのか?」


・・・・・・珍しいな、ドクターが頼みごとなど。


「・・・あぁ、ウーノやトーレだと人目についた時に大事になりそうだからね・・・」



そういってドクターが取り出すのは、包装紙に包まれた箱が9個。


・・・・・・ドクター、これはなんだ?






「・・・・・・何ってもちろん、自分達の未来を掴もうとする娘達へのプレゼントだよ。これを私の代わりに届けてきてくれ。もちろん、ウーノやトーレ、君にも準備してあるがね。」







・・・・・・ドクター、意外に親バカだったんだな。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






・・・・・・あの後、俺とエリスさんは事件の後処理をしながら話を纏めていた。


「・・・それで、これがその報告書ですか。」

「えぇ、フレイホーク君には申し訳有りませんね。ここまで長引かせてしまって。」

「いえいえ。あの子達が無事に社会復帰できるのなら、このくらいどうって事ないですよ。」

≪報酬は変わらないがな。≫


・・・・・・バルゴラ、そこを言うなよ。ほら、エリスさんも苦笑しているじゃないか。


「・・・とりあえず、問題は謎の人物です。恐らく、非合法施設を潰しまわってるのはコイツの仕業でしょう。」

「そうですね。しかも、伊達や酔狂であんな格好をしている訳ではないって所がまたなんとも・・・・・・」



・・・少なくとも、あの仮面ライダーもどきが子供達を助けたのは間違いない。


だって、あの研究施設から助かった子供達は少なからず・・・・・・『仮面ライダー』の名を、とてもキラキラした瞳で語っていたのだから。



「・・・ですが、どうも姿が一致しません。」



そして映し出されるのは、研究施設の監視カメラに残っていた映像。



そこには・・・・・・2振りの剣を握り締め、炎の中を歩く・・・赤い悪鬼の姿があった。


・・・・・・いや、クワガタがモチーフなのか?どことなくガタックに似ているし。


「私達や協力者が目撃したのは、蒼い鎧をベースにしています。可能性としては、私達が見たのが囮で映像の人物が実行犯。もう一つは・・・・・・」

「複数の姿を使い分けている・・・でしょ?それと、複数犯の線は薄いですよ。」

「・・・なぜ、そう言い切れるのですか?」

「アレを作った奴は間違いなく趣味に走っていますよ。じゃなきゃ、伊達や酔狂であの姿を真似しませんって。」




・・・・・・だってなぁ?いくら都市伝説にもなってるからって、仮面ライダーの姿が実用性に優れているかと言われたら疑問だもんなぁ。

あの姿を持ち出すなら、ヒロさん達みたいに劇中スペックをどこまで再現出来るか試すとか、『自分だけの仮面ライダー』とかいう感じでロマンを詰め込むんだろうし。

フォームチェンジの機能くらい搭載しててもおかしくないって。ただでさえデバイスでも似たような事できるし。



「・・・・・・まぁ、残りはこちらで調べておきましょう。それより、用事があったのでは?」



・・・・・・あ、忘れてた。




≪マスター、遅刻するとまた食事を奢らされるぞ?しかも今回は遠慮しなさそうなのがたくさんだ。≫

「じゃあ、これで失礼しますっ!!」



ぬおおおおおっっっっ!!これ以上俺の金を削られる訳にはいかねぇぇぇぇぇっっっっ!!



≪なんとも世知辛い世の中だな。≫






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







・・・僕とフェイトは、久々にミッドの方に戻って来ていた。ただ、残念ながら今回は寄り道無しだったりする。





状況が状況だけに、ここは仕方ないのだ。なので、目的を果たしてパパっと戻ることにしよう。









『・・・なぎ君、仕事はどう?』

「うーん、苦戦しまくってるね。これが中々大変でさ」

『そっか。私も・・・結構大変。というか、ごめんね。そっちに行けなくて。うぅ、緊急で事件が無ければ』

「仕事だもの、仕方ないでしょ」





なんて会話をギンガさんとしてたりもする。でも、なんだか嬉しいな。



まぁ、色々ありましたので。





『あの、フェイトさん』

「・・・うん」

『なぎ君のこと、お願いします。・・・まだ、ちょっとだけ恋しているので、やっぱり心配は心配なんです』



・・・・・・はいっ!? なんでそうなるっ!!



『なぎ君分かってないなぁ。新しい恋愛に向かうまでは、それまでの人の事は好きなままなんだから。なぎ君は失恋した事ないからわからないのは無理ないけど』

「うぅ・・・」

『・・・ごめん、いじめすぎちゃったね。とにかく、フェイトさん。なぎ君もそうですけど、ディードのこともお願いします』

「うん。私の四人目の補佐官になるし、そこは任せて欲しいな。あ、ギンガも事件捜査頑張ってね」

『はい。それじゃあなぎ君、またね』





なんて言って、通信を終える。



なんだろう、心にグサっと来た。それはもうグサっと。





「大丈夫だよ。ギンガ、気にしてないんだから」

「そう・・・なのかなぁ」

「スバルやナカジマ三佐の話だとそうだよ? ・・・でも」



・・・でも?



「ギンガと付き合っても、ヤスフミはきっと幸せになれるとは思うんだ。・・・ほら、去年に」





うん、会ったね。向こうは凄まじく頭抱えてたけど。考えてみれば当然だよね。

だって、向こうからしたら僕は悲願を達成したルートなわけだし。

・・・・・・あぁ、そう言えば向こうのギンガさんの視線が異常に怖かったのと、それをとても気にしていたのをよく覚えているよ。



向こうの僕、生きてるかな? あれは明らかに死亡フラグだと思うんだけど。





≪話を聞く限り、一応付き合ってはいたようですが、それだって向こうのフェイトさんにちゃんとノーと答えをもらってからではありませんし・・・。
告白が結局通じなかった事で残っていると思われるフェイトさんへの未練を吹っ切れなければ、ドボンですね≫

「・・・やっぱり?」

≪はい。別世界にしろ、ギンガさんがそのままの状態に耐えられるとは思えません。意外と独占欲が強い方ですし≫

「そうだよね、間違いなくそうだよね。『悲しみの向こうへ』が流れちゃうよね」

≪流れますね。どう考えても、その可能性は非常に高いです。あなた、無駄に一途ですし≫





そうだよねぇ。吹っ切れる自信、ゼロなんだよね。まぁ、結局いつも通りに全部抱えて突っ走るしかないんだろうけどさ。





「・・・そうなの? 私は見ていて幸せそうだなって思ったんだけど」

「フェイト、それは一度眼科に行った方がいいよ。あのギリギリなバランスを見てそう思うのは絶対何かの病気だって」

「そこまでなのっ!?」

≪そこまででしたよ。私はあの後どうなったか非常に気になるところなんですから≫





まぁ、そこはともかく・・・うん、ともかくなんだよ。



向こうの僕がつや消し瞳のギンガさんに泣かれていないことを祈るしか出来ないんだし、そこはもういい。大事な事は、もっと別にある。





「僕は・・・ほら、ここではフェイトを選んでるから。ギンガさんとの可能性はいいよ。というより、可能性があった方がフェイトはいいの?」

「お姉さんだったら、いいと思ってた。でも・・・今は恋人だから、無い方がありがたいかな」

「なら、よろしい」










現在居るのは、皆様お馴染み海上隔離施設。そして、そこで僕とフェイトが会うのは・・・一人の女の子。





関係者用の出入り口でしばらく待つと、その子は・・・出てきた。ジーンズ生地のジャケットとスカート。黒のインナーを着て、頭に白いヘッドバンドをつけている女の子が。










「・・・恭文さん、フェイトお嬢様。お待たせしました」

「ううん。・・・ディード、おめでと」

「ありがとう・・・ございます」





その子は、嬉しさと恥ずかしさが混じった微笑む。・・・そう、ディードだ。

ナンバーズの一人としてJS事件で大暴れしたディードは、本日晴れて更正プログラムを終了。

外の世界で生きることになったんだけど、誰が身元引受人になるかで色々揉めて・・・ディードは、僕が保護責任者として預かることに・・・やばい、なんかすっごい不安になってきた。



てゆうか、本当に僕でいいのかな。その、あの・・・いいの?





「以前お話した通りですよ。私は、恭文さんの元で色々なことを学んでみたいです。
チンク姉様達やオットーにも納得してもらいました。あと・・・保護責任者や、親とか、そういうのであまり気構え無いで欲しいです」



微笑が深くなる。ちょっとだけドキっとするのは、こう・・・どこか通じ合うものがあったせいだと思う。



「私は、現地妻5号として、恭文さんのお世話を出来ればいいと思っていますから。朝から晩まで、ご奉仕させていただきます」

「ディード・・・」



・・・とりあえず、ディードのホッペに両手を伸ばし・・・むにーと引っ張った。



「だから・・・その現地妻ってのはやめろって言ってるでしょっ!? お願いだからシャマルさんの影響を受けないでっ!!」

「ひゃ・・・ひゃひほふうんへふ。ひょうはんへふ、ひょうはんへふはは」

「全然冗談に聞こえなかったよっ! てゆうか、すっごく怖かったしっ!! いや、怖いっ! フェイトの目が現在進行形で怖いっ!!」

≪よく言っている事がわかりますね・・・≫



お願いだからそのつや消しの目で僕達を見るのはやめてー! 何も無いからっ!! 全然何も無いからねっ!?



「フェイトお嬢様、安心してください。あくまでも、私が恭文さんをお慕いしているのは兄としてですから」

「ごめん、全然安心できないよ」

「なぜですかっ!?」



こう言えばきっと納得してくれると思っていたのか、ディードが驚きの声を上げる。というより、きっと本心からの声だったので、それが否定されるとは思っていなかったらしい。

ちなみに、ディードは僕に対して兄として好きというのは結構よく言っている。それはもう盛大に。



「だって・・・実の妹でも、お兄ちゃんを好きになるんだよ? 押し倒して、みんなの前でディープキスしたりするんだよ?」

「・・・・・・それはご自身の経験でしょうか。もっと言うとクロノ提督と」

「違うよっ! 実際にそういうの見たのっ!! それもつい最近っ!!」



あぁ、ほしな歌唄と月詠幾斗か。そうだね、あれも衝撃的・・・。しかし、気になるな。

歌唄がおかしいって、どういう意味なんだろ。あのディープキスな奇行の事ではないらしいし。



「とにかく・・・フェイトお嬢様という恋人が居る以上、私はそれを邪魔するつもりはありません。恭文さんが幸せであってくれることが私の願いですから」

「それだけ、好き・・・なんだよね」

「はい」



や、やばい。満面の笑みで言い切ったディードを見ていると、なんかここから逃げろと危険信号が・・・。

でもでも、逃げたらさらにやばいという声もする。これ、どうすればいいの?



「・・・ヤスフミ」

「な、なんでしょうか」

「もしも『ヤスフミ×私+リイン+ディード』になっても、ヤスフミが本気だったら私は大丈夫だよ。私はヤスフミが好き。その気持ち、変わらないから。
でも、その場合は覚悟が必要だよ? 三人の女の子を幸せにするって、本当に大変で」

「なんの勘違いしてるっ!? そんなことしないからっ! 絶対しないからー!!」










・・・とにかく、色々先行き不安になりつつも、ディードを引き取って・・・僕達は地球に戻ることになった。





どうしよう。真面目に四人体制になったら・・・いやいや、意思を持て。意思を強く持て。

そんなことにはならない。なるはずないから。僕はフェイト一筋・・・なのかなぁ。

よく考えたらリインがプラスされる時点で一筋じゃないのかも。なんか三人体制に慣れてきてるし。





・・・あぁ、ダメだダメだ。それはそれ、コレはコレなんだから。

なによりそんなことのためにディードを引き取るって決めたわけじゃないし。

うん、絶対違う。僕は・・・手伝いをしたいんだ。





あの時ディードに言った言葉を、ディードは信じて、通そうとしてくれている。だから、約束した。

僕もその言葉を投げかけた人間としての責任を通す。

一緒に自分なりの幸せの形を探して・・・過去を理由に、何も諦めたりしないで、手を伸ばしてそれを掴んでいこうねって、そう約束したんだから。





・・・・・・あぁ、でもどうしよー! やっぱり先行き不安なんですけどー!!







「・・・そういえばディード、その箱は何?」

「はぁ・・・なんでも、私宛に届いていたそうなんですが・・・」

「うわぁ・・・綺麗な洋服だね。大事にしなきゃだめだよ?」

「・・・・・・はい。」




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






「スバルお姉様、ジンさんから連絡が来まして仕事が長引いたので少々遅れるそうです。」

「う〜ん、仕事じゃしょうがないか。じゃあ、レディーを待たせた罰として夕飯はしっかり奢ってもらわないとねっ!!」


・・・・・・スバル、それはまずいのではないのか?ただでさえフレイホーク君には無理を言ってるのはこちらの方なのだし・・・・・・姉は、少々気後れしてしまうぞ。


「なぁ〜に言ってるんスかチンク姉っ!!私はスバルに賛成っスよ!!!」

「・・・少しは自重しろよウェンディ。だいたい、なんでアイツが私らの荷物買ったりするの手伝うんだ?」

「・・・・・・多分、巻き込まれたんだと思うよ?シオンさんがアイディアだしたみたいだし。」

「・・・ギン姉がティアナに謝ってたのはそれが原因かよ。」

「あ〜ノーヴェっ!!どうしてギン姉の事は『姉』ってつけるのに、私にはつけないのっ!?」

「お前が『姉』ってポジションかよっ!?」


「何言ってるんですかっ!!スバルお姉様は立派なお姉様ですっ!!いくら妹さんでも言って良い事と悪い事がありますよっ!?」




「・・・・・・お前よくアイツと一緒にやれるな?」

「ハハハ・・・もう慣れたよ。」



・・・・・・あぁ、スバルがやけにたそがれて・・・・・・姉は、姉はどうすればいいのだっ!?














「・・・ずいぶんと賑やかな連中だな。」








「は、はわっ!?」



唐突に聞こえたその声に振り向くと、そこには1人の男性が呆れたような顔をしていた。



服装は革製のジャケットとジーンズを着こなし、どことなくラフな印象。

目元をサングラスで隠し、紫色の髪がいいアクセントとなっている。

・・・その出で立ちにどことなく既視感を覚えたのは疑問だったが、とりあえず姉はその男性に話しかけることにした。



「も、申し訳ない・・・迷惑だっただろうか?」

「・・・いや、今は人通りも少ないからそこまで迷惑ではないと思うが・・・あんたも苦労してるんだな。」

「えぇ・・・まったく、年長者として恥ずかしい・・・」

「・・・・・・それでは、俺はこれで失礼する。用事があるんでな。」

「あ、そうなのですか・・・愚痴に付き合ってもらってすいません。」

「なに、『姉』の愚痴に付き合うのも『弟』の仕事だ。縁があったらまた会おう・・・『姉さん』」




そう言いつつ、男性はその場を後にする。


おもわず手を振って見送ったが、男性の姿が見えなくなった所で、先程の会話でおかしかった部分に気がつく。





・・・・・・『姉さん』?




彼は、姉の事を『姉』と呼んだのか?





「チンク姉、なにしてるんスか?というか、さっきの男は誰っスかっ!?」

「・・・あんにゃろう・・・チンク姉に手を出しやがったらただじゃすまねぇぞっ!!」

「ってノーヴェっ!?追っかけて殴ろうとしないっ!!」

「おっねえさま〜♪」

「だ、誰か助けて・・・・・・」



「お・・・お前達・・・いい加減にしろぉぉぉぉっっっっ!!」



さらに大騒ぎをする妹達を止めるため、私は手を振り上げて大声をあげる。









・・・・・・そういえば、さっきの男性・・・・・・







妙に既視感があると思ったら・・・・・・ドクターに似ていたのか。




雰囲気は真逆だったが・・・・・・







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





ふぅ、ちょっと買いすぎちゃったわね。




夕飯の買出しを終えて、私は家路へとついていた。


今日は肉じゃがという料理に挑戦してみよう。なんでも、『家庭の味』を体現している代表的な料理らしいし。


・・・・・・でも、こんな生活が楽しくて・・・ときおり、不安になる。


あの人から聞いた話では、そろそろ妹達が社会復帰するらしい。


まぁ、クアットロは相変わらず機動拘置所にいるらしいんだけど。

なんでも、脱獄したドクター達に愛想をつかしたとか・・・・・・あの子からしたら、ドクターの変化は認められないのね。まぁ、それはそれでいいけど。



そんな事を考えていながら家に戻ると、左脇に少し大きな箱を抱えた一人の青年が立っていた。



「・・・・・・あの、家になにか御用でしょうか?」

「あぁ、ドクターからのお届け物だ・・・ドゥーエ姉さん。」


・・・その青年が発した言葉に、思わず空気が鋭くなる。



「・・・私に、弟は居ないわよ?」

「姉さんが知らないのも当然だ。俺はまだ稼働して1年ぐらいだしな・・・・・・戦闘機人ナンバー14、カトラスだ。」

「・・・・・・それで、その『弟』君がなんのようかしら?私を連れ戻しにでも来たの?」






もしそうだったら、盛大に抵抗するけど。

だって・・・・・・今の生活は、とても気に入っているもの。





「・・・・・・いや、ドクターから姉さん宛のプレゼントを頼まれただけだ。ところで、その荷物重いんじゃないか?手伝うぞ。」


そういうと、カトラスは右手を差し出す・・・・・・ウソは言ってないようね。


「それじゃ、手伝ってもらおうかしら。」






それからしばらく、カトラスには家事を手伝ってもらった。

・・・ドクターの遺伝子を使っているにしてはやけに真面目でいい子ね。

ドクターを反面教師にしたのと、ウーノ姉様とトーレの教育がよかったのかしら?




ちなみに、ドクターからのプレゼントは上質な赤ワインだった。


マッドサイエンティストにしてはなかなか気がきいてるじゃない。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









で、結局遅刻した俺はそいつらに飯をおごらされて危うく金欠になる所だった。


・・・いや、マジで遠慮しろよあいつら。


スバルとノーヴェとウェンディはむちゃくちゃ食べるし、セレナはニコニコしてプレッシャーかけてくるし・・・

チンクさんとディエチがかけてくる慰めの言葉がなけりゃ俺は灰になってた所だぜ・・・




「なんというか、相変わらずだねジン君は。」

「・・・なんか、引っかかる言い方だなおい?」

「気にしなくていいよ。姉さんから聞いてる感じの通りそのままって感じだから。けど・・・やっぱここのパフェは美味しいね。」



・・・・・・レリスさんが俺の事をどう言ってるのかが気になるな。








仕事も一段落終えてしばらく休みとなったある日、俺はある人物と喫茶店で会っていた。


向かいの席で美味しそうにパフェを食べているコイツの名前はライ・ストライフ。レリスさんの弟で、フリーのデバイスマイスターをしている。ちなみに歳は俺と同じだ。

ライはマイスターとしての腕はいいんだが、あまり宣伝をしてないから知る人ぞ知る名店みたいな扱いになっている。



「しっかし・・・相変わらずちっさいなお前。」

「失礼な、これでも身長が150を超えたんだよ?でも、相変わらず道を歩いていると女の人に声をかけられるんだよなぁ・・・そんなに子供っぽいかな僕?」



ため息をつきながらパフェを食べているライは、その子どもっぽい顔と綺麗な黒髪をポニーテールにしていることも相まって、ほんわかした空気を醸し出している。


可愛いは正義って奴か?レリスさんもオフの時はベタベタしてるらしいし。

・・・・・ティアに見られたら、浮気と勘違いされてひぐらしモード発動だな。うん、気をつけよう。



「・・・で、お前の方はなんかあったのか?」

「特には・・・・・・あ、そういえばとても綺麗な人に会ったなぁ・・・」


・・・珍しいな、こいつがこんな事言うなんて。


「デバイス作成の依頼で会ったお客さんなんだけど、なんか前向きに人生を歩もうとしている人特有の温かさっていうのかな?それが全身から溢れていたんだ。」

「・・・・・・なんだ、惚れたのか?」

「そ、そんなんじゃないよっ!!ただ、素敵な人だなぁって・・・何さその『俺はわかってる』みたいな温かい眼差しはっ!?」

「気にするな、俺は気にしない・・・ところで、頼んでおいた『情報』についてなんだが・・・どうだ?」

「・・・あぁ、最近噂になっている『仮面ライダーもどき』について、だっけ?一応調べてみたよ。」



俺が話を切り出すとライの顔が引き締まり、ライが取り出した端末のモニターに情報が浮かぶ。


これが、ライのもう一つの顔。


フリーのデバイスマイスターであるがゆえか、ライの人脈は表裏問わず幅広い。


その点を活かし、ライは情報屋みたいな仕事も行っている。


「姉さんに頼まれた仕事の事も加味して調べた結果・・・その仮面ライダーもどきが初めて確認されたのは『大ショッカー事件』の後。ちょうど、スカリエッティが新型ガジェットを裏に流し始めた時期と一致している。」


・・・・・・スカリエッティ、だと?


「それに、その仮面ライダーもどきとスカリエッティの戦闘機人が一緒にいる所も確認されている。スカリエッティとは何らかのつながりがあるとみて間違いないね。」



・・・まったく、そんな情報どっから仕入れてくるんだか・・・



「でも、気になるのはその目的なんだ。仮面ライダーもどきが潰した組織や施設の中には、スカリエッティの作品を購入した奴らもいる。これがなんらかの実験だとして、わざわざ金づるを潰してまで実験をする理由が・・・「・・・いや、これは実験なんかじゃねぇよ。」・・・どういう事?」



ライからの情報、あの子供達の笑顔、俺が仮面ライダーもどきと遭遇したあの施設の惨状・・・それらが一つに繋がる。



これは実験じゃない・・・・・・挑戦だ。


自分の創造した存在さくひんが、どれだけ本物仮面ライダーに近づけるのか




まさか・・・・・・ヤスフミ以外にも『正義の味方』を目指すバカがいたとはな。


いや、スカリエッティはポジション的に悪の科学者か。






だが・・・そういう奴は嫌いじゃない、かもな。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





まぁ、それからいろんな事があったわけだ。


帰ってきた家の妹達とナカジマさん家のナンバーズがラトゥーアに行きたいといったから引率をしたり。

シオンに呼び出されたらなぜか俺のおごりでデートをさせられたり(しかも、それを自分で写真にとってティアに送りつけやがった・・・・・・あの後不機嫌になったティアを宥めるのには苦労したんだぞ?)。


そして・・・・・








「・・・・・・いや、本当に済まなかった。」

≪私からも謝罪します。≫

「でも、アレは封印しますからねっ!!危険すぎますっ!!」

「私も同感ですよっ!!なんであそこまで再現できているんですかっ!?」



土下座しているサリさんとその脇に浮かんでいる金剛を、マリーさんとなのはさんが腰に手を当てて叱っていた。

俺?修復魔法の真っ最中。ただでさえ疲れてるってのに・・・・・はぁ。



・・・・・・きっかけは、ヤスフミが使っているデバイスの一つであるジガンが壊れた事から始まるらしい。

なんでも、戦闘になって相手の攻撃に耐え切れなかったんだとか・・・・・いくらレアスキル持ちだからって、小学生がそこまで出来るとなぁ・・・・・

それで、今後もそういった相手と戦う可能性の高いヤスフミを心配したサリさんが、ジガンを改修する事にしたんだそうだ。


だからって、なぜゼロシステムを作って搭載しようという話になるのかはさっぱりわかんないけど。

事実、サリさんがその試運転を行ったら暴走しかけて、たまたま居合わせた俺となのはさんで止める羽目になった。

・・・・・・改めて考えると、よく勝てたなぁ俺達。




とまぁ、なのはさんとマリーさんの怒鳴り声をBGMに、俺は作業を進めていた。

しかし、ここでなのはさん達の話を聞き流していた事を俺は若干後悔することになる。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



後日、またまたサリさんに呼び出された。

なんでも、ジガンの改修案に意見がほしいらしい。あと、新ジガンにはレオーのデータも使っているので、その調整も兼ねてってところだな。

前回呼ばれたのは、そのデータを渡す為でもある。

だけど・・・この問題は予想外だった。





「・・・なんで、なのはさんの人格を元にしたAIになってるんですか?ユーノさん泣きますよ絶対。」

「それは俺も考えたんだが・・・この組み合わせがやっさんやアルトとのシンパレートが一番高いんだよ。」


そして、サリさんはデータを開く・・・そこには、他のAIも組み合わせてみたパターンとのヤスフミ達とのシンパレートが表示されていた。

・・・・・・マジで一番高いし。なんなんだあの人?いい加減ユーノ先生一筋になってくれないかなぁ・・・

ユーノ先生、『僕は全部ひっくるめてなのはの事が好きなんだ』ってのろけてる場合じゃないですよ。



「・・・そうだジン坊、お前にこれ渡しとく。」


そういうと、サリさんは俺に長方形のケースを渡してくる。

それを受け取って開けると、中には紺色に紫のラインが入った八角形の腕時計が入っていた。


・・・・・・これって、まさか?


「ジガンを作っている間に没になった機能を入れてみたくてな・・・ついでで作ったんだ。」

「へぇ・・・・・・それで、コイツの名前は?」

「あぁ、いろいろ考えたんだが・・・・・・シュロウガ、だ。」


・・・なんか気になる名前だけど・・・まぁいいか。それじゃ、行きますか。


「シュロウガ、セットアップ。」

≪Standby Ready Set UP≫



そして、俺の左腕を包み込むのは、鋭角的な部分の多い装甲。手首の部分はシンプルなリングで覆われており、どことなく昔の手錠のようにも見える。

鈍く輝くガンメタリックの光は、その鋭さもあいまって悪魔の腕のようにも見える。




これがシュロウガ・・・・・・俺の新しい力、か。



≪それじゃ、よろしくねマスター。≫

「あぁ、よろしくな。」

≪ふむ、つまり私にとっては妹分にあたるわけだな・・・・・・だが、妙に親近感の湧く声なのは気のせいか?≫


・・・・・・バルゴラ、そんなメタなネタを言うなって。


「それじゃ、軽く機能説明をするぞ。まず、シュロウガもレオー同様にAMFによる完全魔法キャンセル下状態でも使用できる。」

「まぁ、それがないときついですね。」

「そして、それが基本形態のガントレットフォルム。そして、戦闘補助形態のロッドフォルムだ。」

「・・・ロッドフォルム?」

「まぁ、ものはためしで使ってみろ。シュロウガ、ロッドフォルムだ。」

≪分かったよマイスター≫


サリさんの言葉にシュロウガが反応すると、装甲部分が展開して若干小さめの楯のようになり、手首付近から全体的に刃が連結したような鞭が出てくる。

・・・・・・どっかで見たことあるような・・・・・・あ。



「・・・ひょっとして、ロッドってヒートロッドですか?」

「正解。先端部はクローにもなるし電撃を流す事も出来るから、立体移動に敵の拘束、目くらましに攻撃なんでもござれだ。」



まぁ、それくらいならどうにかなるか。ようはワイヤーアンカーと鞭が両方使えるような感じだし・・・シグナムさんとの模擬戦が活かせるな。




しかし、もう一つ気になる事が・・・・・・






「まさか、ゼロシステムまで仕込んでないですよね?」

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハ・・・・・・・・・・・・・・・なんで分かった?」

「おいぃぃぃぃっっっっっっっっ!?!?」



何してんのこの人っ!?趣味に走るのにもほどがあるだろっ!?というか、あんだけ封印しろって言われてたのにっ!?



「まぁまぁ、落ち着けジン坊・・・・・・声を抑えろ、あんまり騒ぐとばれるだろうが。そっちのシステムは試運転前に搭載してるから、マリーちゃんには気づかれてないんだよ。」


しかも、無許可かよっ!?


「だから落ち着けって。その為にシュロウガにはAIを搭載してるんだよ。」


・・・・・・どういうことだ?


「簡単に言えばリミッターだな。シュロウガを通してゼロシステムを使う事で、使用者にかかる負荷と暴走の危険性を減らすんだ。そして、万が一暴走しそうになったら強制的に終了させる。これなら、ゼロシステムを安全に使用する事が出来るはずだ。」


サリさん、『はず』ってついたら説得力ないです。


「一応、30秒しか連続で使用できないようにしてあるがな・・・・・・まぁ、なるべく使うな。」

「だったら搭載すんなって言いたいんですけど・・・」

「それを言われるとな・・・・・・まぁ、保険ぐらいに考えといてくれ。」





・・・・・・不安だ、非常に不安だ。

なんか、リスクが大きい追加ユニットが多いなぁ俺・・・・・・




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・ヒロリスさん達は、あの後本当にすぐに帰っちゃった。なんか、マジであの子ジガンを渡しに来ただけみたい。恭文はお礼を言いまくりだった。





で、今あたしは唯世くんと恭文と一緒に、ちょっと寄り道をした帰り。ガーディアンの備品関係の補充。





もうちょっとで夕方な時間。・・・・・・少し前まではこれくらいの時間になると暗くなりかけてたのに。










「もう、夏なんだね」

「そうだね。・・・・・・ブラックダイヤモンド事件から、もうちょっとで1ヶ月だし、時間が経つのは早いよ」

「そうだね」



歌唄も退院したし、なぎひこももうすぐこっちに来るって言うし、いいんちょがミッドでの旅行が終ったら山口に帰っちゃうのは寂しい。

けど・・・・・・夏休み、楽しみだな。なんだか、今年の夏は忘れられない夏になりそう。



「蒼凪君は、この調子だと本当に初等部を卒業しちゃいそうだね」



唯世くんがそう言うと、恭文は歩きながら、両手をお手上げのポーズにした。表情は、苦笑い。

まぁ、色々と問題ではあるよね。恭文は普通にお仕事としてここで暮らしているわけだから。それがずっと続くと言う事は、事件が解決していないということなんだし。



「そうなんだよね。普通にイースターもなにも動きないし」

「いいことではあるんだろうけど、やっぱり複雑だね。まだエンブリオを諦めたわけじゃないと思うから」

「確かにね」



そう言えば・・・・・・イクト、どうしてるんだろ。歌唄や恭文の話だと、あれから自宅にも帰ってなくて、行方不明だって言うし。

帰り道、いつも通る川原を歩きながら、少し考えた。やっぱり、心配だな。てゆうか、歌唄はそうとう心配してたし。



「・・・・・・月詠幾斗、今度出てきたら、決着をつけなきゃいけないね」



唯世くんが苦い顔でそう言った。・・・・・・やっぱり、唯世くんはイクトの事になるとちょっとおかしくなる。

普段は温厚で、怒ったりとかも滅多にしないのに、イクトのことになると今みたいな険しい顔をして、嫌悪感を隠さない。



「・・・・・・唯世、もうちょい冷静になりなよ。そんなんじゃ足元すくわれるよ?」

「あの、ごめん。でもやっぱり」

「やっぱりじゃない。・・・・・・その月詠幾斗が嫌いな病気は治しなよ。それも早急に。
てゆうか、そんな状態でアレとやり合おうとするなら、僕は唯世をぶっ潰してでも止めるよ?」

「ちょっと恭文っ!? なんでそうなるのかなっ!!」



さすがにそれを聞き逃せなくてそう言うと・・・・・・恭文の表情が少し変わった。



「そうなるのよ」



何かを思い出している顔。だけど、どこか悔しそうな顔に。

歩きながら、あたしや唯世くんじゃなくて、どこか遠い物を見ながら、ポツリポツリと話し出した。



「フェイトがね、丁度今の唯世と同じ状態だった時があるんだよ」

「フェイトさんが?」

「うん。・・・・・・JS事件の時にね」



JS事件。前に恭文から聞いた、2年弱くらい前にミッドで起きた大規模テロ事件。恭文だけじゃなくて、フェイトさんやティアナさん、春に会ったなのはさんやはやてさん達も巻き込まれたって言う大きな事件。

確か、機動六課・・・・・・だっけ? 1年限定の部隊だから今はもうないけど、そこの部隊に入ってたみんなが頑張って解決したとか。



「その主犯がまた三流のイカレドクターでさ。やってることが生体関係のイカレた研究だったのよ。いわゆる人体をモルモットにする感じ?」



その言葉に、あたしと唯世くんは頭を捻って考える。こう・・・・・・アニメとか特撮とかに出てくる『マッドサイエンティスト』って言うのかな。

こう、生体改造で変な兵器とか沢山作っちゃう感じ。



「フェイト、そういうのに対してちょっと過敏になりやすいところがあってさ。そいつを捕まえる時にそれ絡みで挑発されて、激昂して・・・・・・危うく捕縛されかけたのよ。
まぁ、なんとかなったから今も元気なんだけど。ただ、単独で突っ込んでたから、下手すればそのまま人体実験コースに行って、殺された方がマシって目に遭うところだった」

「・・・・・・それ、マジ? なんか、フェイトさんがそういうの想像出来ないんだけど」



激昂って言うイメージないんだけど。あたしの知ってるフェイトさんは、温厚で、優しくて、落ち着いて、冷静で・・・・・・素敵な大人の女性。

あと、すごく優しい人。・・・・・・あ、でもそれだけじゃないか。歌唄がエルを『いらない』『役立たず』って言った時には、見た事がないくらいに怒ってたから。



「マジ。フェイトは普段こそ冷静だけど、基本的に激情家だよ? 自分の感情の癪に触る部分に関しては抑えが利かない部分があるの。あむだって見た事あるでしょ?」

「うん、ある。丁度思い出してた。あんな感じで捕まりそうになったの?」

「そうだよ。フェイトは優しい。だから、余計にそういうのに弱い所がある。・・・・・・今の唯世見てるとさ、その時のフェイトを思い出す。てゆうか、瓜二つだよ」



あたしはもう一度唯世くんを見る。唯世くん、恭文を苦い顔で見てる。

てゆうか、あたしもきっと同じ顔だ。



「唯世、熱くなるのには、悪いなり方といいなり方があるのよ? 唯世の猫男に対してのなり方は、ブッチギリで悪い方だよ。てゆうか、ヒステリーに近い」





ヒステリー・・・・・・確かに、そうかも。唯世くんの嫌悪は、私怨というかそういうのに近いのかも知れない。



なんというか、あたし達が立ち入る空気を出していないというか、許されていないというか、そういう風に感じる。だから、あたし達は今まで触れられなかった。





「この調子がこの先何度も続くようなら、猫男戦では唯世は前に出せないね。なお、僕だけじゃなくてフェイトもその辺りかなり心配してる。自分の例があるから余計に」

「蒼凪君、それは・・・・・・どういう意味で言ってるのかな?」

「忠告だよ。戦う人間として・・・・・・命のやり取りを何度もしている人間として、そして・・・・・・実際にそれを奪ったことのある人間としての忠告。
猫男と何が有ったなんて分からないけど、これだけは分かる。普段はともかくそういう状態の唯世、弱過ぎるよ。僕なら、殺そうと思えば200回は殺せてる」

「・・・・・・そっか」





それから、唯世くんは黙ってしまった。あたしも・・・・・・なにも言えない。恭文が、別に意地悪とか嫌味で言ってるわけじゃないのは分かったから。

きっと、唯世くんの事を心配してる。フェイトさんが、自分の大事な人がそうだったから、余計に。・・・・・・まぁ、言い過ぎな部分はあるかなとはちょっと思うけど。

でも、もしかしたらこの話は恭文の後悔になってるのかも知れないと、ちょっと思った。だって、話だとフェイトさん一人の時にそれだったから。下手をすれば、そのままずっと居なくなってた可能性だってある。



・・・・・・あたしだって、もし唯世くんがそんなことになったら、後悔する。絶対、嫌だもの。唯世くんのイクトへの感情がそんな未来に繋がるなら、絶対に・・・・・・治さなきゃ、いけないよね。





「・・・・・・じゃあ、僕こっちだから」

「うん、唯世くん。また明日ね」

「うん。あ、それと蒼凪君」

「なに?」



唯世くんはジッと恭文を見て、少し黙った。

そして、口を開いた。



「あの、ありがと」

「・・・・・・余計なお世話じゃなくて?」

「そんなことないよ。ちょっとね、我が身を振り返って突き刺さったから」

「そっか」





とにかく、そのまま唯世くんは歩き出す。少し歩き出して・・・・・・振り返って、笑顔で手を振る。



あたしも手を振り返す。右手を上げて・・・・・・気づいた。



唯世くんの手が、半透明になっていることに。





「・・・・・・え?」










次の瞬間、唯世くんの存在は、消えた。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






・・・・・・世の中、不思議な事や科学で説明できない事はたくさんある。


ロストロギアなんて不思議の塊と言ってもいいくらいだし、俺達は本物のデンライナーや仮面ライダーに出会った事もある。


だから、並大抵の事では驚かないつもりだったんだが・・・・・・これは、流石にびっくりだろ?


≪マスター、現実逃避は止めろ。今は、目の前の敵をどうにかする方が先だ。≫

「そんなの、分かってるんだよっ!!」

『ヒャッハァァァァッッッッ!!』



俺は今、廃工場のような場所でなぜかゲルニュートの群れと戦っている。理由は分からない。

・・・というか、普通に歩いていたら突然あの銀色のオーロラで知らない場所に出たってどういう事だよおいっ!?



「つうか、わんさか出てきやがってこの野郎っ!!シュロウガッ!!」

≪おーけー≫


シュロウガをロッドモードに切り替えると、俺は左腕を振りぬく。


「のわぁぁっっ!?」


変則的な軌道でうねるその鋼の鞭は、ゲルニュート達を吹き飛ばした。

しかし、ゲルニュート達は周りを取り囲み嫌な笑い声をもらす。


「へっへっへ・・・なかなかやるようだが、そろそろ疲れてきた頃じゃねぇか?」


・・・・・・流石に、どこぞの戦闘員並にわんさか出てこられるとなぁ・・・・・・


「つか、お前らどうしてここに居るんだ?オニ一族は滅んだはずだろ。」

「フッフッフ、地獄から蘇ってきたのよっ!!そして、今度こそ我々の手にこの世界を・・・・・・」





どごぉぉんっ!!


『ギャアアァァァァッッッッ!!』

「な、なんだっ!?」


リーダー格の奴が得意げに語っていたその時、背後にいた奴らが吹き飛ばされる。











「・・・ドーパントではないようだが・・・貴様らを、見過ごす訳にはいかないな・・・」





逆光と共にゆっくりと現れるのは・・・燃えるような真紅の装甲に、バイクのハンドルのようなバックルをつけたベルト。

『A』を模した銀色の角が備えられた青いゴーグルの奥で、モノアイのように輝く瞳。

そして、左手には銀色に輝くガンブレードのような武器。




おいおい、マジかよ。





「さぁっ!!振り切るぜ!!」



エンジン音を激しく響かせて・・・・・・その戦士、『仮面ライダーアクセル』はゲルニュートの群れ達に刃を突きつけた。







(第4話へ続く)























あとがき



ジン「はい、という訳でかなり時間を飛ばしつつ超・電王編に入りましたがいかがでしょうか?今回のお相手であるジン・フレイホークと・・・」

シュロウガ≪皆さん始めまして。今回から新しくマスターのデバイスになったシュロウガでお送りします。≫

ジン「そういや、そろそろ新年度だな。」

シュロウガ≪そうだね。作者さんも無事進級できたらしいね・・・・・・就職活動とかあるらしいけど。≫

ジン「まぁ、そりゃしょうがないだろ。今までより趣味に時間を割く余裕はないかもしれないけど、ちゃんと話を進めてくれたら・・・」

シュロウガ≪そうもいかないんだよね。作者さんの場合、なにかと切羽詰っているときの方が話を書くスピード上がるらしいし・・・どんどん進むかも。≫

ジン「作者、頼むから優先順位を決めてくれよ?」

シュロウガ≪それじゃ、今回の話で登場したライさんと私の紹介にいきたいとおもいま〜すっ!!≫




名前:ライ・ストライフ

年齢:19歳(DCDアフター時点)

性別:男

身長:150.1cm

体重:身長に見合う程度・・・というか、かなり軽い

体型:幼児体型。ぶっちゃけ恭文より小学生に見えるような感じ。

髪の色:透き通るような黒髪

髪型:長めのポニーテール

瞳の色:紫

顔立ち:男の娘って言ったほうがいいくらいの子供っぽさ。

職業:フリーのデバイスマイスター

魔導師ランク:総合Cランクほど。

声のイメージ:米○円さん(けい○ん!の憂ちゃん)

性格:普通にいい人。ただし、ユーノ先生や通常時のエリオと似たタイプの『いい人』なので今後影が薄くなる可能性大。





AI搭載式ガントレット型アームドデバイス・シュロウガ

武器としての基本形状:全体的に鋭い印象を持つガントレット。ジンは始めてみたとき『悪魔の腕』のようだと例えた。


待機状態:紺色に紫のラインが入った八角形の腕時計。

形状変換によるモードチェンジ:通常状態の「ガントレットフォルム」、戦闘補助形態の「ロッドフォルム」が存在。

通常モード:行動を妨げない程度に防御力を高めたガントレットフォルム。

特殊機能:擬似的に再現されたゼロシステムを搭載。ただし、装着者に負担を与えずに使用できる時間は30秒ほど。また、リミッターもかかっている。


性格:女性人格のAI。若干軽い印象を受けるが真面目なほう。新生ジガンとは姉妹機にあたる。

声のせいか、ひょっとしたらバルゴラがシスコン全開になる・・・・・・かも?


AIの声のイメージ:kaori naduka





ジン「はい、メタメタな理由ですね。」

シュロウガ≪かっこいい名前なのに、声は可愛い系とかこれいかに?≫

ジン「それは・・・まぁ、元ネタから引っ張ってきたんだろうなぁ・・・・・・ちなみに、本編でライが語っていた人はシャナさんという無駄な裏設定があります。」

シュロウガ≪伏線になるのかどうかも分からない伏線だね。ところでマスター、次回からはさらに展開がカオスになるらしいよ?カトラスさんもどっかに飛ばされるらしいし。≫

ジン「・・・どういう意味だ?」

シュロウガ≪ヒントは3つ。1.マスターは風都に飛ばされました。2.この話は外典DCDクロスアフターかつしゅごキャラクロスです。3.Wの3人組はどこにいるでしょうか?≫

ジン「うん、それは分かる。というかヒントになってない。」

シュロウガ≪しょうがないなぁ。これが最後のヒントだよ?4.本家とまとでは、『超・電王』が起きた事になってます。5.DCDクロスの『彼ら』は必ずしもTV版の『彼ら』とは限りません。≫

ジン「・・・・・・まさか、だよなぁ?だって、作者は以前おやっさんも出したいって言ってたよな?」

シュロウガ≪予定は未定なのです。それでは、次回をお楽しみに〜♪≫




(気になる話をしつつフェードアウト。
本日のED:上木彩矢 W TAKUYA『W-B-X 〜W-Boiled Extreme〜』)
























???「・・・ここが、次の世界か。」

???「でも、今度の世界はどのライダーの世界なんでしょうか?」

???「本当だよな、なんかでっかい風車の絵しか書かれてないし・・・」

???「なぎ・・・恭文君は、どの世界だか分かる?」

???「一応、なんとなく分からなくもないけど・・・ギンガさん、無理しなくてもいいよ?」

???「うぅん。今度こそ、ちゃんと呼べるようになるから・・・」

???「・・・うんうん、いい雰囲気だね〜♪ほらほら二人とも、写真を撮ろうか。」

???「栄ちゃんさっすが〜♪」

???「・・・まったく、あの純情バカップル供は・・・そういや、海東の奴は何処にいった?」






(おしまい)






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あきゅろす。
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