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頂き物の小説
第2話『本気と全力は似ているよう・・・って一緒じゃないの?』



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



警備部の打ち合わせがようやく終わった。あぁ、なんか憂鬱だよ。





せっかくヤスフミが六課に来た最初の一日なのに・・・どうせなら最初から居たかった。

はやてから昼間に来たメールだと、朝からやらかしたらしいし、落ち込んでたりしてないといいけど。

でも、そこまで考えて、心配ないと気付く。





ヤスフミはああいう性格だし、多少のことでどうこうは・・・ならないよね。

それに、パートナーデバイスのアルトアイゼンや、みんなも居るわけだし、うん、きっと大丈夫だ。

アルトアイゼンは・・・ちょっとアレだけど。





とにかく、今は早く戻ろう。うん。








魔法少女リリカルなのはStrikers 外伝


とある魔道師と軌道六課の日常 〜古き鉄と物忘れの鏡〜


第2話『本気と全力は似ているよう・・・って一緒じゃないの?』



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「いくよ僕の剣ッ!」

「ケリュケイオンッ!」

「「セットアップッ!!」」


僕とキャロの声が響いてそれぞれの身体をバリアジャケットが装着されていく

バリアジャケットっていうのは魔導師たちが自身の身体を守るための魔力の鎧


・・・ちなみに余談だけどベルカ式のバリアジャケットは騎士甲冑っていうんだって






そして互いにバリアジャケットの装着が終わる



僕のジャケットは簡単にぶっちゃけると長ズボン履いて色が黒いリインさん

昔ジャケット作るときにネコちゃん先生に資料をもらってその時に気に入ったのを作った

それがたまたまリインさんのバリアジャケットだったみたい

もちろんそのまま使ってるわけじゃなくて細部とかのデザインは適度に変えてある



でもって武装はかなり特殊になってる


まず背中に鉄で構成された2対の翼が現れる

これはAI搭載式のアームドデバイス、アマテラス。基本的には移動に使うけどそれでなくたって攻撃にだって防御にだって使うことはできる。


そして手には僕の身長より少し小さいくらいのバスターソードが現れる

これは非人格式アームドデバイス、ノーザンイクス

片刃のバスターソードでさすがに両手持ちしないと完全には扱いこなせない

ちなみに二つほど穴があってそこからカートリッジが出てくる(・・・形状はF○7のザッ○スとか○ラウドの剣を思い出してくれるといいかも。あれとほとんど一緒だから。)




さあ、僕の準備は整った



これが僕の戦闘の基本体制

ちなみに僕も剣を使うし、使用魔法術式も古代ベルカだけどヤスフミと同じで騎士じゃない。

僕は騎士には向いてないから・・・守るものも分からないから



「早速こんなことで起こしちゃってごめんねアマテラス」

≪大丈夫ですよ、マスター≫



今しゃべったのは先ほど紹介したアマテラス

結構乱暴に扱ってしまうアームドデバイスに何でAIが搭載されてるかと考えたこともあるけど気にしない



だって・・・僕のたった一人の理解者で、あの人との最後のつながりだから・・・



≪・・・あのですねマスター≫

「何か問題でもあった?」

≪何をどうしたらこうなるんですか?絶対にあり得ないですよね、初日から模擬戦だなんて≫

「・・・そうかな、ヤスフミがいてヤスフミの知り合いがいて、楽しそうなんだよ?」

≪・・・まあ、それについては今更覆すこともできませんよね。あなたの性格はともかくあの子が一緒では仕方ありませんね・・・≫


僕の性格はアマテラス基準で修正可能でヤスフミは修正不可なんだ・・・ま、ヤスフミだしいいや


≪まあ、気にしたところでどうしようもありませんよね。私はどのみちあなたのストッパーでいっぱいいっぱいですから≫


だよね、いつも僕のフォローしてくれてるもんね。感謝してるよアマテラス


≪では早速言わせていただきます。彼女は放っておいていいのでしょうか?≫


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?


僕が前に向き直るととっくの昔にセットアップしましたと言わんばかりに構えてるキャロがいた・・・やっぱり怒ってる・・・よね?その顔も可愛いけれどやっぱり笑っていてほしいな








≪あなたっ! 何をやってるんですかっ!? 初登場から5分も経ってないのに面白キャラ認識が広まっちゃったじゃないですかっ!!≫

「お前のせいじゃボケッ! つーか、自業自得だからねっ!?」








あ、ヤスフミとアルトアイゼンも似たようなことやってる。・・・あれって羞恥プレイってやつかな?


そろそろいいや、思考を切り替えなきゃね。ってわけでキャロを観察

キャロのバリアジャケットはマントとか付いていて色さえ違えば魔法少女のイメージが一番会うんじゃないのかな?確か昔見てた資料の中に似たようなデザインがあった気がする。


キャロの武器はどうやらグローブ・・・あれ?支援型なのにタイマンで模擬戦するんだ・・・すごいなぁ。

まあ、きっとあの小さな竜もいるからキャロはきっと召喚師なんだろうなぁ


「ツヴァイさん・・・もしかしてやる気ないんですか?」


キャロは心配そうにこちらをうかがっている・・・あれはさすがに怒りも含まれている目だね。

駄目だな僕、あんなかわいい子をまた放って置いたままにするなんて


「ごめんキャロ、僕さっきからさすがにデリカシーがなかったね・・・でも大丈夫。ここからの僕は真剣だから。」

僕は軽い口調をしながらデバイスを構えなおして空に上がる


「じゃあ、いくよキャロ!僕の全力で」


そして声をかけたところで止まり剣を構える

キャロはこっちを見据えて小さい竜と待機している


やっぱりこっちから動くしかないかな?


「だあああぁぁぁぁっっっっ!!

「え?・・・フリード!」


イクスを思い切り振りおろしたけどフリードって呼ばれてた小さい竜が横からぶつかってきて僕は攻撃を外した

でもまだいける。僕は別にベルカだからといって近距離しかできないわけじゃない。レアスキルもあるけどそうでなくたって遠距離魔法はある


「シュート!」


キャロと僕の距離はそんなに離れてなかったから確実にあたると思って漆黒のフォトンを放つ

そのフォトンはキャロに直撃した・・・はずだったんだけど。


「アルケミックチェーン!」


その爆撃の中から声がしたかと思ったら次の瞬間足元から数本のチェーンが飛び出してきた


うっわ・・・とっさにアマテラスを羽ばたかせてまた空に上がったけどそれができなかったらあれだけで危なかったかも。


けど、それだけじゃなかった


「いってフリード、ブラストレイ!」


フリードが火炎弾を吐いてきた。まあ、竜だって考えたら普通のことなんだけどね!


「アマテラス!」

≪分かっています。Shield≫


さすがに危ないからシールドを展開して自分の身を守る。そしてあたりを煙が覆い何も見えなくなる。


「アマテラス!生体サーチを」


≪残念ですがマスター。あなたの適正で計測できる範囲には存在しません≫


ありゃ・・・もう逃げられちゃった。


フルバックだと思ってたのに案外移動力あるんだなぁ・・・面白くなってきた


≪マスター、何かよからぬことを考えていませんか?≫


さてと、どうせ少しすれば向こうから仕掛けてくるだろうけど一応探そうかな?そうした方がし止めやすいしね。


僕は握ったバスターソードを振り、あたりを飛び回りながら魔法を使う準備をする。さてとキャロ、僕相手に安全な方法なんて少ない事を教えてあげるよ。











◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・ツヴァイさん、すごいです・・・



フリードと一緒に近くの建物の中に隠れている中で魔法の用意をしていた。


デバイスの形は剣と・・・翼?だよね。だからフロントアタッカーだって分かってかなり相性が悪い事に気がついた。

でも私にだっていくらだって手はあるんだもんね。なのはさんやフェイトさんに教えてもらった戦い方がある。

今はツヴァイさんもここは見つけられてないみたいだし、やみくもに動いている今に・・・


≪・・・え!・・・急に反応が消えました!!≫


えっ!そんな魔法は・・・まさか幻術!?でも・・・それだってかなり時間がかかるはずなのに・・・



ガシャァァァンッッッッ!!



そんな時建物が崩れる音がした。でもそのあとは何の音も聞こえない。


そう思っていたら急に後ろから気配を感じて振り向く。



「み〜つけた。かくれんぼはここまでだね、キャロ」



そこには大きな剣を構えたツヴァイさんの姿が急に姿を現した。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




さて、無駄に飛び回ってるわけじゃない。飛び回っている間にキャロの位置は確認した。


いつやったかなんて簡単。僕が適当に飛び回っている間きっとキャロは攻撃をしようとは考えず、魔法を準備して機会をうかがってるだろうと考える


≪マスター、どうやって攻撃しますか?≫


どうやって?そんなの決まってるじゃんか。僕のフルドライブで・・・


≪あれは師匠たちに禁じられていて現在は私は2ndでイクスは1stフォームまでしか使えませんよ≫


あー、そうだったなぁ・・・どうしようかな?


それだったら・・・マスターのあの魔法は今なら使えるかな?


≪あれというと・・・まあ、今のあなたなら使えないこともないですけど1分だけですよ≫


それだけあればだーいじょうぶ。なら行ってみようか。


僕は一つの魔法の詠唱を始める。


そして同時にイクスに魔力を流して強化する。


これでいけばキャロの意表をつけるはず。


だからこそ少しだけ近づいてこの魔法を発動する。


「さあ、行こうかアマテラス!ロードカートリッジ」


≪Cartridge≫


「それじゃあ行こうか。ハイパージャマー!!」


カートリッジ二つがアマテラスから出てきて僕の体を周りの景色と同化させる。


さあ、これで詰みだよキャロ!


僕はキャロのいる建物の階層で最も外からキャロに近い位置を目指してイクスを叩きつける


きっと相手からしたら急に僕の反応が消えてその瞬間に音がしたんだ、必ずその向きを見るはず。


僕はそう信じてキャロの後ろに回り込み剣を向ける。


こちらを見たキャロはとっても驚いてる。あはは、作戦は成功みたいだね。


「み〜つけた。かくれんぼはここまでだね、キャロ」


「いってフリード!」


僕の言葉に反応するようにこちらを見たかと思ったらフリードに攻撃命令を下した


ははは!さすが機動六課のフォワード。奇跡の部隊に所属しているだけの事はあるんだね。


でも、僕の方が早い!!


「イクス、モード1st!」


持っていたバスターソード形態のイクスを細身の双剣にする


そしてフリードの攻撃をが届く前にそこからキャロに向かって走る。

一気に接近してカートリッジを使って双剣を思いっきり振りぬく。


≪Cartridge≫


「蓮牙、双閃!!」


キャロは一応防御したみたいだけど僕の力の衝撃で瓦礫と共に上へと吹き飛ばした。


「きゃあぁぁぁっっ!!!」



悲鳴をあげて上に飛んでいくキャロを追いかける。

キャロは二つ上の階で壁にぶつかって止まり、何とか起き上がろうとしている。

そのキャロにバスターソードに戻したイクスを突き付ける


「さあ、これで僕の勝ち・・・だよね?」


僕はキャロにそう尋ねる。これなら僕の勝ちになったはず。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




・・・・・・すごい・・・・・・こんな手段を使えるなんて。


やみくもに動いているかと思ったのにいつの間にか私の居場所を突き止めていた・・・姿を消したかと思ったら急に私の後ろに居て・・・

フリードに攻撃を頼んだけどそれより早く攻撃された・・・そして今は剣を突き付けられている。



「さあ、これで僕の勝ち・・・だよね?」


ツヴァイさんが私にその言葉を告げる。私は精一杯時間を稼ぐ事を考える

時間があればまだできることがあるかもしれないから。


「・・・私だって、なにもしなかったわけじゃないんですよ?」


「え?もしかして何かしてたの?」


「・・・もちろんです。私は召喚師ですよ、フリード以外にも召喚獣はいるんです」


「それだとちょっとまずい・・・のかな?」


ツヴァイさんの思考が少しだけ私からそれた。その瞬間だった下の階層からフリードがツヴァイさんに突撃した。


「うわぁっ!?」


そのおかげで一瞬だったけど隙ができてフリードに命令を送るができた。


「フリード、ブラストレイ!!」


それでフリードがツヴァイさんに攻撃してくれる。


おそらく直撃はしなかったとしても回避はできないはず。

だからここで魔法を使えば・・・


そう考えて詠唱を始めたらフリードの攻撃がツヴァイさんに回避された。


驚いたけれどもすぐに追撃しようとした。その瞬間、急に浮遊感に襲われた。



「きゃあぁぁぁぁぁぁ!?」



自分がどういう状況になっているかを理解したときには私は崩れてしまった足場のせいで下に落ちていたようだった。


私には飛行魔法もないし、今からだとフリードの竜魂召喚も使えない。


死にはしないだろうけどさすがに落ちることの恐怖を感じる。


これは一瞬の出来事だったのかもしれないけど、私には長い長い時間に思えた。


私はとっさに目をつむった





・・・・・・・・・あれ?痛く、ない?




「えっと、大丈夫?」



え?ツ・・・ヴァイ、さん?




「僕との戦いでこの建物の構造が甘くなっちゃったんだね。とにかく無事そうで良かった。」



えと、私は・・・



「ちょっとまってて。このままだと危ないし安全な場所に移動しよう。」


私はツヴァイさんに助けられたんですよね・・・ってこの体勢は///!!??


「つつつつつ、ツヴァイさん///。こ、こここここの格好は///」


「えっと、ゴメンね。僕にはこんな風にしてもらうの嫌かもしれないけど少しだけ我慢しててね」


ツヴァイさんが・・・その、私にしてくれたのはいわゆる・・・その・・・お姫様抱っこというものでした///


私は赤くなっている顔を隠している、そんな私をツヴァイさんは特に気にした様子もなく運んでいく


そして今いる建物の屋上までツヴァイさんは飛んでいきそこで私を降ろす。



私はお礼を言おうと思ってツヴァイさんを見たら急に倒れてしまった。


「つ、ツヴァイさん!?どうしたんですか?」


急に倒れたツヴァイさんを抱きかかえてあわてて様子を見る


もし私のことを助けた拍子に何かが起こってツヴァイさんがどうにかなってしまったのだったら、私が何とかしなければならない。


でも、それはどうやら私の思い過ごしだったみたいで・・・


「もう・・・つか、れた・・・よ。ゴメン、ちょっと眠らせて・・・」


そう言って私の方に倒れてきたそれがちょうど私の膝に倒れてきて眠ってしまった。


ツヴァイさん・・・何で急に眠って?


≪すみませんキャロ嬢、マスターを少しの間でいいのでそのままにしてあげてもらえませんか?≫


えっと、アマテラスさん?どういうことなんですか?


≪マスターも大概馬鹿なんですよ。何かをしようと思ったらどんなことだって一直線なんです。自分を顧みずに≫


えっと、私を助けるときに何かしたんですか?


≪マスターが私の移動をする際身体にかかる負荷を軽減する魔法が魔力が少ないせいで使えないんですよ≫


それとこれがどう関係してくるんですか?


≪今回あなたを助ける際にマスターはその魔法をあなたに使いながら防御魔法と同時展開したんです。結果魔力エンプティで倒れてしまったんです≫


えぇっ!?じゃあ、ツヴァイさんが倒れたのって・・・


≪そこは気にしないでください。マスターはあなたの事を思って助けたのですから。謝るのではなく感謝してあげてください≫


・・・はい。わかりました。


そうして一通りアマテラスさんとの会話が終わったころに私の前にモニターが現れる。





『キャロ大丈夫か、なんかお前のいるところが・・・何やってるんだ二人して?』




そこにはヴィータ副隊長の姿が映る・・・あれ?どうして後ろで八神部隊長はニヤニヤしているんですか?


『ホホゥ?キャロ、エリオがおるのにヴェルクス君と・・・面白そうなことになっとるなぁ・・・後でいろいろと聞かせてもらうから、あっちの模擬戦が終わるまでそのまま待っててな』


そう八神部隊長が言うとモニターが消える・・・スバルさんたちは一体いつになったら終わるんでしょう?・・・それになんで八神部隊長はニヤニヤして・・・


≪ところでキャロ嬢≫


どうしたんですか、アマテラスさん?


≪いまさらなので聞くのもどうかと思ったんですが、その格好は人に見られて恥ずかしくないんですか?≫


今の格好・・・私は正座していてそのひざの上にツヴァイさんがいて・・・ってこれって///


≪ええ、先ほどからずっと貴女はマスターを膝枕しているんですよ≫


えぇぇぇぇッッッ!?も、もももしかして私ずっとこのままでしたか!?


≪はい。それはもうお似合いというほどに≫


で、でもでも私にはエリオ君がいて、フェイトさんがいて、えっと、えっと・・・


≪あ〜これは何か葛藤してますね・・・でもマスターにも脈があるようなのでこれから楽しくなりそうですね≫



うぅぅ〜わかんないよ〜///



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





「・・・鉄輝」










青い翼が、再びその羽を広げる。先ほどよりも強く、大きく。





そして辺りに羽を散らせたかと思うと・・・飛び出したっ!!





全ては一瞬の事だった。





飛び出した僕はスバルに接近。





拳を僕にたいして打ち込もうとしている彼女に対して、アルトを左から打ち込み・・・そのまま斬り抜けるっ!!










「一閃っ!!」










夜空に生まれた一筋の青い閃光が、その闇を・・・そしてスバルを、横一文字に斬り裂いた。





スバルは、その直後にバランスを崩して乗っていたウィングロードから落下。

結構なスピードで地上に・・・・って、マズイマズイっ!!





僕は、すぐにアルトを待機モードに戻して、アクセル・フィンを羽ばたかせて一気にスバルに接近。抱きとめる。

ただ、タイミング的にギリギリだったので、こう・・・お姫様抱っことかじゃなくて、ホントにハグする感じで。





スバルを抱いてから、空中で急停止。僕の周囲に、魔力光が、羽の形で夜空に舞い散る。

でも・・・その光景に感歎とは出来なかった。





こう・・・なんというか・・・初対面の女の子にハグしちゃったのでちょっと・・・心臓の鼓動が・・・。

身長が同じくらいだから、顔がすっごい近い。つか、意外とボリュームがこう・・・。










『随分と楽しそうだな』










その時、聞こえたのは僕のよく知る声。





戦いの場に現れた空間モニターに映るのは、ヴィータ師匠の顔。それを見て、思わず動揺する。










「し、師匠っ! これは違うんですっ!!
ちょぉぉぉっとやりすぎたみたいであのままだと墜落させちゃってたかもわかんないですからそれでそのですねあれなんですよっ!!」

『・・・とりあえず、落ち着け。大丈夫、ちゃんと分かってるから』

「・・・それならいいんですけど」

『大丈夫だ。セクハラは重罪だけど、罪が軽くなるようにいい弁護士紹介してやるから。
あ、差し入れももっていってやるよ。お前の好きなあそこの芋ようかんをな』

「師匠っ!? なに一つ理解してないじゃないですかっ!!」

『冗談だ。・・・それより、スバルはどうだ?』



そこで、ようやく抱きとめているスバルの様子に気付く。・・・うん、気を失ってる。



『なら、これで勝負ありだな』

「・・・僕の勝ちって事で大丈夫ですか?」

『あぁ、問題ねぇよ。・・・また腕上げたな。見ててハラハラしたけど中々だったぞ』



ははは、いつもは手厳しい師匠からそう言ってもらえると嬉しいですよ。

でも・・・。



「戒め、外しちゃいました。やっぱまだまだです」



ここしばらく、頑張ってたんだけどなぁ。うん、まだまだか。



『・・・ま、しゃあねぇだろ。なかなかあのじーさんみたいには行かないってことだ。
つか、それで勝たれると、ここまでスバルを鍛えてきたアタシやなのはの立場が無いだろうが』



あー、そうですね。それを完全に忘れてましたわ。



『忘れてんじゃねぇバカ弟子がっ!!』



きゃー! やっぱり怒られたー!!



『あ、それとスバルとティアナ達には戒めの事、ちゃんと説明しとけよ? そうじゃないと後でうるさいからな。
つーか、口先で相手惑わすのはやめとけ。いや、本当に。お前らがそれやるとシャレ効いてねぇから』

「うぃ、了解です。・・・やっぱだめですか?」

『味方内でケンカしたくなきゃな。敵ならいいけど』





うにゅぅ・・・、それもそうか。とにかく、今はやることやろうっと。



とりあえず、恋人同士でも無いのに空中でハグはアウトである。相手が気を失っているなら余計にアウト。

なので、近くのビルの屋上までその状態で降りていって、スバルを一端そこで下ろす。



なんというか、さっきも少し思ったけど、こんな細いんだね。それであの力が出せるんだから恐ろしいというかなんというか・・・・よっと。



僕は、スバルを背中におぶって、そこからゆっくりと立ち上がる。

これなら、ギリギリ・・・かな?





「あー、師匠。シャマルさんいますよね? 今からそっち連れてくんで、少し診てもらえるかどうか聞いてください。
加減せずにぶった斬ったんで、ちょっと心配なんですよ」



非殺傷設定で斬ったから大丈夫だとは思うけど、思いっきりやったからなぁ。

威力設定はアルトが責任もってちゃんとやってくれてたけど、お嫁にいけないとか、責任取ってとか言い出さないことを願うばかりである。



うん、あと今の行動とかさ・・・。





≪おめでとうございます≫

「アルト、お願いだから黙ってくれないかなっ!? つーか本当にそうなったら色々とアウトだよっ!!」

『ホントだよ。・・・で、シャマルには今伝えた。それなら、医務室に直接そのまま運んでくれるとありがたいそうだ。
あと、お前も診ておきたいって言ってる。』

「了解です。すぐに向かいます」

『んじゃ、頼むぞ。アタシらはキャロ達の方に向かうから・・・』



そこまで言うと空間モニターが消える・・・そうか、ツヴァイの方も模擬戦終わったんだ・・・しかし、師匠達が向かうって何やったんだろうツヴァイ?



スバル背負いながら辺りを見回すと、もう真っ暗。遠くの方に、首都のネオンが見える。



・・・長い一日だったなぁ。まぁ、なんとか終わってよかったよかった。





「さて、アルト」

≪はい≫

「戻りながら反省会、しようか」

≪今やらないと、暇が無さそうですしね。≫










そうして、僕達はゆっくりと・・・いや、スバル乗せてるし、慎重にね。





とにかく、スバルを背負いながら安全確実に、演習スペースを後にした。





これが、今日と言う日に起きた一大イベントの終わり。





あとは、シャマル先生の診療が怖いなぁ。何にも言われなきゃいいんだけど。





・・・まさか、ツヴァイが初対面の人相手に無茶するなんて・・・ツヴァイは・・・ここが居場所にできるのかな?





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




・・・目の前に広がるのは、誰かがいる・・・これはいつのこと・・・なの?



・・・これは、いつのことなんだろう・・・




・・・多分マスターに助ける前の僕の記憶。それが今夢になって現れている・・・



・・・何をいっているのか分からない人たち。それ以外にもたくさんの機械が部屋を埋め尽くしている・・・


・・・なにがあったのかは覚えてない。けど、苦しかったのは覚えてる。



それ終わらせたのはマスター。


僕が僕でいられるようにいろいろと施してくれた人



僕に名前と生きることをくれた人


初めて抱きしめてくれた人



・・・苦しかったよね。辛かったよね。・・・大丈夫だから。もう大丈夫だから・・・



・・・・・・その人が僕にそういっているのを聞いて安心して僕は意識を落としていった





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





・・・目が覚めたらそこは真っ白い部屋、医務室だった。・・・なんでここにいるんだっけ?



≪マスター、ツヴァイが目を覚ましましたよ。≫


「あ、やっと起きたんだツヴァイ」


その声の主のいる方へ眼を向けると、椅子に座ってるヤスフミがいた・・・何やってるの?


「スバルが目を覚ますのを待ってるの・・・模擬戦で思いっきりぶった切っちゃたし。」


その話を聞いて隣のベットを見てみるとスバルさんが寝てた・・・それはいいけど何で僕はここに寝てたの?




「覚えてないの?模擬戦やってるときに急に寝ちゃったんでしょ?・・・キャロの膝枕で」

≪そうでしたね。アレはマスターにも勝るとも劣らないほどのラッキーだったんじゃないですか?≫



そっか、キャロが僕を見ててくれたんだ。後でお礼言わなきゃね。


「ああ、うん。そうだね。ツヴァイはその程度の事じゃ動揺したりしないよね・・・反対にキャロはかなり動揺してたみたいなのに・・・」

≪そうですね。まあ、マスターに比べればそのあたりは些細なことなのですが≫

「アルトは黙ってて」


何でだろう?もしかして僕が迷惑だったのかな・・・


「あー、気にしない方がいいと思うよ。ツヴァイの事が嫌だったりしたわけじゃなさそうだから」


そっか、良かった・・・・・・あ、そういえば何で僕は急に倒れちゃったんだろう?


「なんかキャロを助けた時に魔力を使いすぎたせいらしいよ。魔力エンプティで倒れたらしいから」


・・・そういえばキャロをあの負荷から守るために普段使わない魔法使ったっけ?あれのせいだったら仕方ないかな・・・


≪それですが、シャマルさんからの連絡です。マスターもですがあなたも疲労が抜けるまで、魔力がしっかり回復するまで、念のため模擬戦や魔法の使用は原則禁止だそうです。≫


あ〜あ、まあ、仕方ないよね。・・・そういえばアマテラスとイクスは?


「それなら確かキャロが持ってたはずだよ。後で取りに行ったら?シャマルさんが目を覚ましたら戻っていいって言ってたから。」


まあ、アマテラスならキャロの邪魔とかはしてないよね・・・それでヤスフミはスバルさんが起きるまでずっとここに居るの?


「・・・そのつもりだけど?」


そっか、じゃあ僕は行くね。はやてさんとかに聞かなきゃいけないことあるし


「そうなの?じゃあまたあとでね」


うん。それじゃまたねー





そうして僕は医務室を出て、キャロを探しに出かけた・・・




・・・そういえばここって隊舎のどこなんだろう?そう考えて歩いていると通路の先にちょうど探していた人物・・・キャロがいた。ラッキー!





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







・・・えっと、何でツヴァイさんと一緒に夕食をとっているんでしょう?










書類仕事が終わってツヴァイさんにデバイスを返しに行こうとしました。


そしたらその途中で運よくツヴァイさんに出会いました。


それでツヴァイさんにデバイスを返したらツヴァイさんのおなかが鳴って・・・


「あはは・・・えっと、食堂ってどこにある?」


それで食堂までの道を案内して・・・そしたらお勧めのものをきかれてそれにこたえて・・・


えっと、そうしたら私の分まで食事が来て・・・



「キャロも一緒に食べよ、ね?」


「え、はい?」






・・・そんな感じでいつの間にか決まってしまいました。


私もこの後夕食のつもりだったから良かったんですけど、でも・・・///


ツヴァイさんは恥ずかしくないんでしょうか?私は・・・その・・・///



・・・だめです、すごく意識しちゃいます・・・


そんな空気に耐えられなくて何とか話題を作ろうとツヴァイさんに話しかける



「そういえばすごいですねツヴァイさん。二つのデバイスを使って戦うなんて」

「そうかな?昔からずっとこのスタイルだから問題ないよね。アマテラス」

≪ええ、魔導師を始めたころからずっとこのスタイルでしたからね≫


ツヴァイさんは私との模擬戦の時に初めから剣と翼のデバイスの二つを使っていた。

私の保護者のフェイトさんのお兄さんでもあるクロノ提督もS2Uとデュランダルの二つを使っている。

でもそれは二つ同時というわけではなく交互に使ったりすることばかりだと教えてもらったことがある。


「どうして二つもデバイスを使っているんですか?」

「・・・えっと」


何で二つも使っているか疑問に思って聞いてみると、ツヴァイさんは答えにくそうにしていた

どう、したのかな・・・もしかして言いにくいことだったりするのかな?






≪はぁ・・・しかたありませんね。ここは私がお答えいたしますよキャロ嬢≫






ツヴァイさんが答えにくそうにしているのを見かねてアマテラスさんが話しかけてきた。


私のアマテラスさんへの印象は優しいお姉さん。といった印象だった。

・・・でも、からかうのはやめて欲しいです///

アマテラスさんとノーザンイクスさんの二つのデバイスを預かっている間、私はアマテラスさんにずっとからかわれていました・・・

つ、ツヴァイさんが意識してないのに私ばっかり意識してるみたいですごく恥ずかしかったです///


・・・と、とにかくお願いします。



≪まあ、アレは単なるスキンシップの一環ということでお願いします・・・さて、私アマテラスとイクスことノーザンイクスですけど、私たちはもともとマスターのデバイスではないんですよ≫


えっと・・・それってどういうことですか?


「アマテラスとイクスってね、もともと僕の事を助けてくれた人のデバイスだったんだ。」

≪私のファーストマスターは時空管理局の執務官だったんですよ≫


その言葉でツヴァイさんにもやっぱり話したくないような過去があるんだって思った。

でも、それ以外にも何か話しにくい理由がありそうなんだけど・・・


「それで、その人からデバイスを受け継いだんですか?」

「・・・うん。そういうことになるね」

≪・・・話してもよろしいですか?≫

「そうだね。僕からじゃなくてアマテラスが話してくれるかな?」


話しにくい理由はここからなのだろうか?


≪私のファーストマスターは助けた子供にツヴァイという名前を付けて1年ほど仕事を休んでまで育てたんですよ≫

「執務官が休めるような仕事じゃなくて後でかなり苦労してたのを知った時は少し反省したかな」

≪ファーストマスターは1年たった後、さすがに仕事に子供を連れていくのは無理だと考えてとある人物にマスターを預けたんですよ。ファーストマスターが見てあげられない間、面倒を見てもらうために≫


そんなことがあったんだ・・・私もフェイトさんに助けられてから色々と迷惑をかけていたと思う。

それでもフェイトさんは私にそんな苦労は見せずに頑張ってくれていた。


≪まあ、それからも何度かファーストマスターはマスターの様子を見たりしながらも仕事を続けていたんです。≫

「そうだよね。あの人は僕の事をかなり気にかけてくれていたんだもん・・・」

≪ですがファーストマスターは今から大体5年ほど前に・・・なくなりました≫

「・・・すみません。嫌なことを思い出させてしまったみたいで」

「大丈夫だって。もう5年もたってるから大体割りきってるよ。・・・だから、別にいいよ」




そうして私達の周りに重々しい空気が流れる・・・こんなときにスバルさんやエリオ君がいてくれれば・・・




「あれ〜?キャロ、ツヴァイ君と何やってるの?」



・・・すると、願いがかなったかのようにスバルさんが来てくれた。その後ろに恭文さんと・・・フェイトさん!?



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・あぁ、でも美味しいー!」



そんな歓喜の声を上げるのは、一人の男の子。本当に嬉しさと幸せに満ちた表情を私に見せてくれる。



「昼間も思ったけど、六課のご飯ってレベル高いなぁ。しあわせー!!」

「でしょ? 私が六課に来て、本当によかったって思ってることの一つなんだ〜♪」

「ヤスフミ、スバルも、そんなに慌てて食べたらダメだよ。身体に悪いよ?
・・・ほら、特にスバルは起きたばっかりなんだから」

「・・・はい」



私とヤスフミとスバルは、食堂に移動して夕食を美味しくいただいていた。食堂に行くと、ヤスフミと一緒に出向してくれたヴェルクス君と、キャロが一緒に食事をしていた。せっかくなので、一緒にご飯を食べることにする。

そして、ご飯を食べながら、今日の話を聞いている。私がリクエストしたんだ。でも、ヤスフミすごいね。



「ん〜、なにが?」

「だって、移動の最中にみんなにいっぱい話し掛けられてた。
たった一日なのに、もう六課に馴染んでるみたい」

「そーかなぁ? 初日に色々とやらかした問題児だから、すぐ覚えられただけだと思うけど・・・。
というか、メンバーの大半顔見知りだよ?」

「そうなの?」



スバルが、サラダを食べながらそう聞いてきた。・・・そういえばそうだったね。



「そうだよ。・・・ロングアーチだと、グリフィスさんはシャーリーと同じタイミングで知り合ってる。
ルキノさんはアースラでの仕事の時に仲良くなったし・・・・他の人も、フリーの仕事の時に顔合わせてる人が多いみたいだから」

≪初対面なのは、スバルさん達フォワード陣と、アルトさんとヴァイスさんに整備員の方々くらいではないでしょうか?≫

「・・・なるほど」





こんな会話をしつつも、ヤスフミは色んな事を話してくれた。



朝礼で壇上から転げ落ちたこと。



・・・そんなことしたんだね。なんていうか、うん、変わってないよ。



そうして、その後やってきたシャマルさんにザフィーラ、リインと挨拶して、リイン先導で隊舎の見学+挨拶回りツアーに出た事。



そうして挨拶回りをしていって、ロングアーチやバックヤード。それに、スバル達前線メンバーと話して、六課の雰囲気がとてもいいものだと思ってくれたこと。



そして、スバルと『教導官のちゃんとした許可さえ取れれば、別に今日、これから模擬戦してもかまわない』と言ったら、ほんとにやるハメになってしまった事。

それをアルトアイゼンに『迂闊すぎる』と、怒られた事を話してくれた・・・。





「確かに・・・ちょっと迂闊だったかもね。スバルは、こうと決めたら一直線ですごく押しが強いから」



みんなも、ヤスフミがどれくらい強くなっているか気になっていたから、余計にマズかったね。



「ご迷惑おかけしました・・・」

≪先ほどの発言を聞くに、本心から思っているかどうかは疑わしいですが≫

「そうね、スバルのことだからすぐ忘れてそうだし・・・」

「わ、わかってるからそんなこと言わないでよー!!」

「まぁ、押しが強いのは戦ってみてよく分かった。なんというか、スバルは間違いなくフロントアタッカー向きだわ」

「で、どうだった? スバルと戦ってみて。・・・というか、今日一日六課を回ってみて」





正直に言うと、ヤスフミがもし六課を気に入ってくれなかったら・・・というのがヤスフミが来ることが決まってから、ずっと気になっていた。

私の言葉に、ヤスフミが少しだけ考える様子を見せる。そして、口を開いた。





「そうだな〜。まず、六課自体は気に入ったかな?
さっきも言ったけど、居心地良さそうだし、スタッフもみんないい人達だしね」

≪それは、私も同じです。
フェイトさんやはやてさんもいらっしゃいますし、しばらくは安心して過ごせそうです≫

「そっか、そう言ってくれると嬉しいよ・・・ヴェルクス君はどうかな?」

「僕もヤスフミとおんなじですよー。うまくは言えないけど、なんだろ・・・優しい感じがするから」

≪私もマスターと同じ意見です。このような機会を与えていただいて逆に感謝しています。≫


これなら、大丈夫かな? やっぱり、不安は大きかったから。私は、ヤスフミとヴェルクス君の言葉に、安心していた。



「あと、スバルと戦ってみて、なのはや師匠達がすっごく気持ちを込めてフォワード陣を育てているってのはよく分かった。
・・・真面目に話すと、戒め外さなきゃ勝てるかどうか解んなかったしね。やっぱまだまだだわ」



・・・あの人は色んな意味で別格だから、比べちゃだめだよ。



「まぁ、鬼か修羅の類なんじゃないかって疑問に思う時あるしね」

≪未だ目指すべき高みは遠くにあるということです。・・・頑張っていきましょう≫

「そうだね」

「・・・ねぇ恭文」



私達がそう話していると、スバルが少しだけ真剣な表情で話し掛けてきた。・・・どうしたのかな?



「戒めって・・・なに? ひょっとしてカートリッジ使わなかったことと関係が有るの?」

「ヤスフミ、ひょっとしてスバルには・・・」

「うん、眠ってたからまだ話してない。・・・うんとねスバル、僕には、戦い方を教えてくれた先生が二人いてね。一人は・・・もう知ってるよね」

「うん、ヴィータ副隊長だよね」

「そうだよ。それでね・・・」










・・・そう、ヤスフミには二人の師匠が居る。一人は、私たちの友だちのヴィータ。そして、恭文が先生と言ったあの人だ。





ヴィータは、ベルカ式魔法を用いての魔法戦の技術全般を。

あの人は、刀での高度な近接戦闘技術と、今やヤスフミのベストパートナーとなったアームドデバイス・アルトアイゼンをヤスフミに託した。

二人とも、ヤスフミに想いを込めて、自身が培ってきた戦闘技術を叩き込んでくれた。





そうして出来上がったのが・・・一撃必殺を具現化した今の戦い方。





あと、ヤスフミとアルトアイゼンが・・・こう、相手に対して口先で精神攻撃をしながら戦うのは、あの人の影響。

正直、アレはやめた方がいいと思う。そんなことしなくても、ヤスフミもアルトアイゼンも強いのに。





そして、戒めというのは、あの人がヴィータとの話し合いの末に、ヤスフミに貸した一つの修行方法になる。





アルトアイゼンには、一応私のバルディッシュやなのはのレイジングハートのように形状変換の機能が備わっている。

そして、カートリッジに関しても、ジガンスクードがある。

でも、あの人は恭文とアルトアイゼンに、それらを安易に使う事を禁じた。





確かに、それらの機能は強力ではある。でも・・・。










「『強力な力に安易に頼れば、それは自身を強くする伸びしろを殺す可能性がある。だが、安易でなければ問題ないので、その時を見極める目と感覚を養うべし』
それが、師匠達・・・というより、僕の剣の先生からの教えなんだ」

「それが戒め? ねぇ、恭文、その教え少し無茶苦茶じゃないの」

「どうして?」

「だって、そんなことして、もしどうにもならなくなったら・・・」



うん、まず普通はそこを心配する。でも・・・。



「その時は・・・というか、そうなる前に遠慮なくカートリッジなり形状変換なり使う。スバルにやったみたいにね」

「でも、カートリッジや形状変換って、局で言うと、エース級の魔導師クラスだと普通のことだよ。
それに対しても基本的には使わないようにするって・・・やっぱり危ないよ。実戦でもそうなの?」

「うん」

≪そうしなければ修行になりませんので≫





・・・うん、実戦でもそうなんだよね。

もちろん、ヤスフミもアルトアイゼンも、それに拘り過ぎてどうにもならなくなるまではやらない。

二人とも息はピッタリだし、状況判断も私やなのは以上にしっかりしてるから、どっちかが無理だと判断したら、すぐに外して戦える。



私もみんなも、なんというか・・・二人のしたたかというかちゃっかりしているというか、そういう所を信用して、スバルが『危ない』と言った修行法を公認している。



それに、『絶対に泣かせるようなことはしない』って約束してくれているから。

ヤスフミ、自分からした約束は絶対に守るし、アルトアイゼンも、そのために自分のありったけの力を貸してくれている。

まぁ・・・泣かせないというだけであって、今日みたいに二人してやりすぎちゃうことはあるけど。





「というか、その人はそれで戦えるの?」

「スバル・・・その人はヤスフミと同じ戒めをつけた状態でもすっごく強いの。
少なくとも、全力全開の私となのはの相手を同時に出来るくらいに」










私がそう言うと、スバルとキャロとヴェルクス君の表情が、驚きに満ちたものに変わる。





・・・うん、信じられないよね。





実際に模擬戦をするまで私も同じだったから、気持ちはすごく分かるよ。でも、本当のことなんだ。





ヤスフミのもう一人の師匠は、私達もよく知っている人物。

元教導隊出身で、今は局の仕事を引退して、あちらこちらの世界を放浪しての武者修行の旅に出ている。

性格は、飄々としたつかみ所のない人なんだけど・・・戦闘となるとそれを感じさせないくらいの強さを見せる。

そしてあの人は、ヤスフミと同じ戒めを自らに課している。





術者自身と信頼できるデバイスの基本戦闘能力がちゃんとしていれば、それだけでどんな相手でも渡り合える。

そんな自分の教えが口先ではないことを、戦いの中で証明するために。





『言ったことの責任は通す。場合によっては命を賭けてでもやる』





・・・あの人が、ヤスフミに対して幾度となく言った言葉。そして、あの人はそれを実際の行動として通そうとしている。

なんというか、ヤスフミはあの人の影響を強く受けている。いい所も悪い所も含めて。剣士としてだけではなく・・・人生の師と言っていいのかもしれない。





すこし話が剃れたけど、スバル達に言った通り、形状変換やカートリッジの力、場合によっては魔法を使わなくてもとても強い。





私やなのはも、全力を出しても勝てるかどうか分からないくらいに。





・・・ごめんなさい、嘘つきました。勝てません、はい。





二人がかりでも・・・勝てません。





カートリッジと形状変換無しなのに、なのははエクシード、私は真・ソニックフォームの状態なのに・・・・・・勝てません。





完全に動きを見切られるんです。こっちが攻撃しても、全部受け止められるんです。





というか、当たらないんです。





それだけじゃなくて、ライオットザンバーであの人の斬撃を受けると、受けたところから刀身が真っ二つにされてそのまま墜とされるんです。





・・・・もう、泣きたい。










「なんか・・・信じられない。
あ、ひょっとして、恭文が模擬戦の途中で言ってた『スターライトブレイカーを一刀両断する人』って・・・・」

「うん、ヤスフミの先生のことだね。私となのはがタッグで挑んだときに、それをやられてね・・・」

「そんな人、いるんですね・・・」



あの光景は、今でも忘れられない。本当に・・・凄かったから。



「あの時は僕もびびったよ。まさかそんな真似が出来るとは思ってなかったから」

≪と言いますか・・・その場に居た人間全員がドン引きでした。いやぁ、その時のギャラリーの様子を録画出来ていれば、是非お見せしたかったです。
試合の様子は録画していたのですが、ギャラリーまでは無理だったんですよね・・・≫

「・・・アルトアイゼン、それは趣味が悪いと思うよ?」





私やなのはは・・・すっごく必死だったのに。





「信じられない・・・」

「なんでそう思うのさ? 教導隊でもトップクラスのレベルだったら、普通のデバイスでそれくらいは出来るよ。
現に、フェイトとなのはも昔、先生と教導隊で同期だったファーン先生って人にボロ負けしたって言うし」



・・・はい、負けました。本当に派手に。



「学長にっ!?」

「・・・あの人なら、納得できるかも・・・」

「なんだ、ファーン先生のことは知ってるんだ」

「だって、私とティアの出身校の学長だよ?」

「あー、なるほど。納得したわ」



・・・うん。思いっきり・・・負けたね。能力的なことで言えば私達の方が上なのに・・・完敗だった。

そして、ファーン先生があの人と同期で、仲がよかったというのを知ったのは大分後だった。

もちろん、あの人ほど無茶じゃないけど。



≪あの方も負けず劣らず経験豊富で強いですからね。
マスター、勝てたことありましたっけ?≫

「・・・ない。つか、分かってるんだから聞かないで」





私も・・・実はなかったりする。うぅ、ヤスフミじゃないけど、修行が足りないんだ。





「まぁ、スバルの言うことも分かるよ?
今や敵方も含めて、カートリッジや形状変換は主流となっている機能だし、強力なのは間違いない」



そう、今やそう言った機能は、エース級と呼ばれている人達の間では、普通になっている。

だから、それをあえて封印して戦うなんていうのは、このご時世では古臭くてまともじゃないと思われても仕方ないのかも知れない。



「だけど・・・。
それでも、そこまでしてでも追いかける価値のある人だって思うんだ」





そこまで言うと、恭文はホットミルクを取って一口すする。・・・あ、幸せそうな顔になった。

そんな表情をすぐに真剣なものに切り替えて、スバルへ話を続ける。




「その持論を口先だけじゃなくて、自分でもしっかりとした形で実践している。デバイスの特殊な機能や、強大な魔力やレアスキルなんてなくても、ここまで強くなれるってことを。
そのレベルだって半端じゃないんだし、僕から見たら、どこに文句をつける要素があるのか分かんないよ」





ヤスフミが、楽しそうに瞳を輝かせながらそう口にする。・・・変わってないね。あの人に対しての憧れは。





「そう・・・なんだ。恭文にとっては、その人の戦い方と強さは目標なんだね。
だから、戒めを背負ってるんだ」

「うん。昼間のエリオの話じゃないけど、先生みたいに強くなるのが目標かな?
もちろん、ヴィータ師匠もおなじくだね。でもさ・・・二人にはまだ一回も勝てないんだよねぇ〜」

「あの人に関して私もだよ。でも、いつか勝てるように頑張らないとね」

「・・・だね」



すごく楽しそうに、だけど、少しだけ悔しそうな顔をしつつ、ヤスフミがウィンナーをパクリ・・・今度はご飯が美味しくて幸せそうな顔になってる。

こうやって見てると、子どもみたい。



「誰が子どもだって?」

「えっ? ・・・あ、ごめん」





今度はむすっとした顔になりながら、サラダをパクリと食べてる。

でも、一口進むごとにまた幸せで楽しそうな顔を見せてくれる。



ほんとに表情が変わる。私は、それなんだか嬉しい気持ちで見つめていた。





「ったく・・・。あ、フェイト、トマト好きでしょ? あげるね」

「ダメだよ。好き嫌いしちゃ」

「・・・スバル〜♪ 疲れてる時にはトマトがいいそうなんだよ」

「ちゃんと自分で食べるっ。
というか、疲れてるのは恭文でしょ? 私やフェイトさんに押し付けないの」

「う〜・・・ツヴァイ・・・キャロ・・・」

「「自分で食べなきゃね(食べてください)」」


満面の笑みで、私とスバルは、サラダに入っていたミニトマトをあげようとするヤスフミを静止する。ヤスフミはキャロとヴェルクス君に視線を向けるけど、二人は声をそろえてヤスフミを突き放した。

表情は変わっても、昔から生のトマトを食べられないところは変わらないんだよね。



「・・・食べなきゃだめ?」

「ダメだよ。そんなんじゃ、エリオやキャロ達に笑われちゃうよ?」

「そうだよ恭文、食べられないと、その先生みたいに強くなれないよ?」



『うぬぅ』と唸りながら、意を決してトマトをパクリと食べる。



「丸呑みしないで、よく噛まないとね」

「・・・ほへん。ほへあえははんへんひえ」



涙目になりながら、トマトを飲み込むヤスフミ。すぐにホットミルクを飲んで口直ししてる。

知ってはいたけど、まだダメなんだね。トマト。



「当たり前だよー。あの、生のトマトの水っぽい風味がなんとも言えず・・・。うぅ、思い出すのも嫌だ」

「そんな落ち込まなくても・・・、ほら、私のポテト少しあげるから元気だして?」

「え? いいの!? フェイトありがとうー!!」



・・・そんなに辛かったんだ。



「じゃあ、私のウィンナーも一本あげるね」

「あぁ、なんでだろう? スバルが女神に見える・・・」

「大げさだよ・・・」

「大丈夫。きっと幻覚だから」

「ちょっとっ!? ウィンナー返してっ!!」

「あーん♪ 美味しい〜!!」

「あーもう、あげて損したっ!」





私からポテトを、そして、スバルからウィンナーを受け取ると、幸せそうにそれをかみ締める。



これから・・・どうなるんだろう?



きっと、楽しくなるよね。そうに決まっている。





「ヤスフミ」

「ん、どしたのフェイト?」





ウィンナーを食べ終えて、今はポテトを堪能中のヤスフミに話し掛ける。



きっと、私、笑顔だ。自分でも分かる。



大事な・・・すっごく大事な、弟みたいな男の子が来てくれたことが嬉しいんだ。





「これから色々大変かもしれないけど・・・」

「うん?」

「一緒にがんばろうね。ヤスフミ」

「・・・もちろん。一緒にがんばろう。フェイト」



私達は、そうして微笑み会う。

これから、一緒に力を合わせてがんばることを誓い合いながら。



「でも、またシャマルさんのお世話にならないように、適度に息抜きしながらね」

「・・・・はい」










食事はこんな感じで楽しく終わったんだけど・・・・後でお兄ちゃんに連絡取らないと。





ヤスフミやアルトアイゼンから、二人に、この二週間の間に振った仕事の内容や量を聞いた。

けど、いくらなんでも多すぎるよ。出向だってわかってたはずなのに・・・




クロノ、少し・・・頭冷やそうか?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





しっかし、色々と振り返るとホントに色んな事があったよね。なんかちかれた・・・・。





≪確かに、濃い初出勤ではありましたね。
でも、明日からも六課での日々は続きます。しっかり休んで、明日からも頑張りましょう≫

「へいほーい、頑張るとしましょー」

≪そうですね。あなたは天然なところがあるのでしっかりしてほしいものです≫

「わかってるよーだ」



僕とアルトは、フェイト達の夕飯を終えると、すぐに帰路についた。

なお、僕達はフェイト達と違って自宅からの通勤組です。



食事が終わった頃には、既に夜の八時を越えていたけど、疲れた身体に鞭を打って、こうして歩いているわけだ。



しかしさ、『人生は666ページの本』って言葉があるけど、今日の体験をページに書き綴ると何ページくらいになるんだろうね?

30はいきそうな感じがするんだけど。





≪多すぎでしょうそれは・・・。せいぜい、4ページ程度ではないのですか?
いや、ひょっとしたら1ページ未満かもしれませんね≫



マジですか。・・・だとしたら、人生ってのは果てしなく長いね。これで埋まらないのはおかしいって。



「・・・でも、ほんとに色んな事があったよね。恭文が居たら、毎日こんな感じなのかな?」

≪さすがに毎日ではありません。ただ、結構な頻度でこんな感じではあります≫

「そうなんだ。じゃあ、これからすっごく楽しくなるね」

「・・・スバルさん、私はすごく大変そうに感じるんですけど・・・」



本当に楽しそうな表情でそう口にするのは、僕と同じ背丈のショートカットの女の子。そう、スバル・ナカジマだ。そして、ピンク色の髪を下している女の子、キャロ・ル・ルシエもいる。



ここは、隊舎の敷地内の歩道。

スバルが、僕達のことを敷地の入り口まで見送ると言って、ついてきたのだ。別に大丈夫って言ったんだけどなぁ。ちなみに、キャロはスバルに引きずられて一緒に来た。





「何言ってるの? 過労の状態で模擬戦するような無茶な人を、放っておいたりなんで出来るわけないよ」

「本当に気をつけなきゃだめですよ。ツヴァイさんもそうですよ?」

「・・・それに関してはもう言わないでください。お願いします」

「・・・うん、ごめんなさい・・・」



もうシャマルさんだけで充分なんです。・・・はやて達は苦笑して『大丈夫だから』って言ってくれたけど、ほんとに勘弁して。



疲れた表情でそう口にする僕達を見て、スバルがニコニコと笑う。

なんだろう、今日初めて会ったのに、すごく話しやすい。やっぱあの姉さんの妹だってのが大きいのかな?





≪かもしれませんね≫

「そういえば、私一つ気になってたんだけど」

「なに?」

「アルトアイゼンって、すっごい喋るよね? なんで模擬戦の時まで黙ってたの?」

≪・・・それには事情があります≫



うん、なんか楽したかったらしい。・・・ふざけてるよね。



「なに?」

≪先ほども話しましたが、六課にはマスターの事を以前から知っている人間も多いです。
なので、私が対人関係にアレコレ口出ししなくても大丈夫と思っていたんです。
・・・スバルさん達との会話を聞くまでは≫



・・・待て待てっ! 言ってること違くないっ!?



「あぁ、なるほど。つまり・・・」

≪そうです。この人がひねくれているのは知ってましたが、初対面であそこまでやるとは思わなかったんです。
それで、仕方なく私も口出しすることに・・・≫

「なんていうかさ、大変だよね、アルトアイゼン」

≪解ってくれますか?≫



いや、なにがっ!?



「・・・恭文、本当にダメだよ? こんな献身的なパートナーに心配かけちゃ」

≪本当です≫



自分で言うな自分でっ! といいますか、スバル、模擬戦の時とか今までの会話聞いてたでしょっ!? こやつだって人のこと言えないくらいに性悪なんだよっ!!



「それは、パートナーである恭文の影響でしょ?
フェイトさんも言ってたけど、恭文がしっかりしてれば、アルトアイゼンだってあんなことしなくてすむんだから。ね〜♪」

≪ね〜♪≫

「なにそこシンパシー感じあってるっ!? 僕一人悪者ってどういうことさっ!!」





僕がそう言っても・・・スルーしやがったこいつらっ!!



「・・・本当にそうなんでしょうか?」

「う〜・・・多分、楽したかったってのが本音だと思うよ・・・あとは、ヤスフミが右往左往しているのを面白おかしく見ていたいだけじゃないかな」

≪まあ、彼はとても面白い性格をしていますからね・・・≫

「それでね―――」

「そうなんですか?」

≪これが実は―――≫



・・・キャロとツヴァイはなんか楽しそうに話している・・・ツヴァイ、一体なにをしてるの・・・


≪・・・そうだ。スバルさん、これから末永くよろしくお願いします≫

「うん、よろしく。アルトアイゼン」



なぜだろう、普通の挨拶のはずなのに、すごくひっかかるものを感じる。末永くってなんだ?



≪さぁ、マスターもしっかり挨拶してください。これから彼女となってくださる方にたいして、挨拶抜きは失礼ですよ?≫

「「はいっ!?」」

≪・・・なんで二人そろって驚いているのですか?≫

「「いや、彼女ってなにっ!!」」

≪なにを言っているのですか。スバルさん、確か約束してくださいましたよね? 本気を出したら、彼女になってくださると。
なんなら、その時の会話を録音していますから、お聞かせしましょうか?≫





アルト・・・、頼むからそれはもう忘れてあげようよ。あの三段活用はサギだから。



そして、あの状況で録音なんてするなよっ! フェイトに怒られたのまったく懲りてないのっ!?





「あ、あのねアルトアイゼン。さすがに恭文とは今日、初めて会ったばかりだし、いきなりそういうのは・・・ちょっと・・・・」

≪では、どれだけの時間をかければ、そう思っていただけますか?≫

「アルト、そろそろやめてあげようか。スバルが本気で困ってるから。またフェイトに怒られるの嫌だし・・・」



それに、別に彼女とか興味ないし。



「そうなの? やっぱり、フェイトさんがいるから?」

「違う違うっ!!」

「でも、さっきはあんな感じだったよね」

≪まぁ、なんといいましょうか・・・そこは触れないであげてください。
難攻不落の城を墜とせなかったんです。言うなれば、マスターは敗残兵です≫



・・・スバル、そんな悲しい瞳で僕を見ないで。そしてアルト、敗残兵って言うな。



「あのね、フェイトさん以外にも、素敵な女の人はいっぱい居るよ?」

「慰めるなっ! 肩に手をかけるなっ!! 悲しくなってくるでしょうがぁぁぁぁぁぁっ!!
・・・泣いていい? というか、もう自宅警備員に・・・」

「だ、ダメっ! ごめん、私が悪かったからそれはやめてー!!」



「・・・いつもこんな感じなんですか?」

「・・・少なくとも、フェイトさんの話をしているときは今みたいになってるよ」



スバルがなんか必死に謝っているので、テンションを上げていくことにする。

ようするに、今は恋愛事に興味を持てないだけのだ。フェイトは・・・うん、関係ない。



・・・すみません、強がらせてください。今だけ・・・今だけは。



ただ、互いにどうしても仕事や、魔導師としての修行が中心になってしまったりする。



だって、僕の仕事の主な依頼主となっているクロノさんもチビタヌキも人使い荒いし。フェイトもあっちこっちの世界を飛び回ってて、忙しくしてるし。


というかツヴァイ、君いつの間にキャロと仲良くなったの?なんか二人の距離が近いんだけど。




「うーん、でもさ、やっぱりそういうことにも興味持ったほうがいいと思うよ? 絶対楽しいと思うし」

「・・・そうだね」

「だったら・・・」

「ただ、その三倍くらいの比率で辛いことが待ってるけど」





姉弟って言われる。

子ども扱いされる。

はやて辺りと出かけたりすると『はやてのこと好きなの?』とか真剣な顔で言われる。

ホワイトデーに気合入れてお菓子作ってお返ししたら『好きな子にはあげないの?』とか真面目に言われる。



・・・その他色々と。





「もういやだ。僕は貝になりたい。もしくは木になりたい。そして人からデクノボウと呼ばれたい・・・・」

「や、恭文っ!? ごめん、また悪かったような気がするからおちこまないでー!」

≪・・・まぁ、あのお方は全く悪気が無いので、なにも言えずにトラウマばかりが増えていまして・・・この調子なんです。
告白もチャンスも、見事にその全てが潰されていまして、今に至ります≫




「そうなんだ。でも、それだったら余計に他の人に興味持った方がいいのに・・・」

≪私だけでなく、はやてさんも常日頃そう言っているんです。
ですが、やはりあのお方の存在はマスターにとっては大きいですから、どうしても乗り気になれないらしくて≫



当然だ。小さかったら、8年も片思いしてないし。



≪それでつい、あんな事を言ってしまいたくなるんです。
いっそ、無理にでも誰かと付き合ってしまうか、やっちゃえば、この悲しい現状も変わるのではないかと・・・断腸の・・・思いで・・・グスッ≫

「そっか。アルトアイゼンもやっぱり大変なんだね」



やっぱりってなにさ? ・・・落ち込んでいてもツッコんでしまう自分が悲しい。

そして、アルト、わざとらしく棒読み気味に泣くなっ! やっちゃえばとか言うなっ!! 完全にアウトでしょうがそれはさっ!?



≪えぇ。そういうわけなので、彼女はともかく、マスターと仲良くしていただけると非常にありがたいです。
やっちゃわなくてもいいのでそれだけはお願いしたいです≫



そういうわけって、どういうわけですか。そしてまたアウトだよっ!!



「うん、いいよ。友達ってとこまでなら・・・約束守りたいな」

「・・・いいの?」

「なにが?」



スバルとアルトの会話を黙って聞いてたけど、つい口を出してしまった。

それって、つまり・・・僕と友達になるってことだよね? いいのかなと思って・・・。



「別にいいよ? ・・・恭文は、私と友達になるの、嫌なの?」

「いや、そうじゃなくてさ。
アルトの軽口が原因だし、それに・・・カートリッジ使わなかったこととか怒ってるみたいだったから」





戒めのことを聞いた時、ちょっとだけそんな感じを受けた。

なんというか・・・少しだけ、棘を感じた。だから、僕に対してもいい感情は持ってないのかなと・・・。



僕がそう言うと、スバルは驚いたような表情を見せたあとに、こう言った。





「アルトアイゼンの事は気にしてないよ? マスターがいけないっていうのは分かったし」

≪本当ですよ≫



・・・・こいつら。



「でね、カートリッジを最初から使わなかったことは・・・・うん。少しだけ怒ってた。というよりも、悔しかった。
私は、すっごく本気でやってたのに、恭文はそうじゃなかったのかなって」

「なら、どうして?」

「だって、さっき話してくれたでしょ?
恭文がそういう戒めを背負うのは、本気出したくないからとか、相手がどうこうじゃない。・・・でしょ?」



その言葉に、僕は頷いた。うん、相手がどうこうじゃない。先生どうこうじゃない。

自分が、背負いたいからだ。



「ヴィータ副隊長や、その剣術を教えてくれた先生に対する憧れからだって。少しでも、そんな人たちに近づきたいからだって。
私もね、そういうの分かるから・・・」





そして、スバルは話してくれた。自分も同じだと。



4年前、新暦71年・4月29日。ミッドチルダ北部にある臨海第8空港が火災に遭い、まるごとダメになったことがある。

たまたま遊びに来ていたスバルと、姉であるギンガさんは姉妹共々その空港火災に巻き込まれてしまい、危うく命を落とす所だった。



しかし、そこを救助活動に参加していたなのはに助けられたこと。(ギンガさんは、フェイトに助けられた)



その時のなのはの姿に憧れて、スバルは一念発起して、局の魔導師としての道を決めたこと。



そして、今年の春に、その憧れていたなのはと再開。

そのなのはも参加する、ここ、機動六課にスカウトされた時、すごくうれしかったこと・・・。あぁ、あの時のか。





「知ってるの? ・・・って、当然か。空港一つダメになっちゃったし、あっちこっちでニュースやってたもんね」

「いやいや。ギンガさんから話を聞いてたから」

「あ、そっか。ギン姉と友達だもんね」



・・・ま、それだけじゃないけど。



「あの、それで話が剃れちゃったけど、そういうわけだから私、恭文の気持ちすっごい分かるし・・・その、ごめん」

「なんで謝るの?」

「だって、さっきの話だと、嫌な思いさせちゃったのかなって思って」

「してないからいいよ。つか、謝らなきゃいけないのは僕だよ」



・・・スバルに嫌な思いさせてたんだから。うん、なんにしても・・・だよね。



「あの、私も大丈夫だよ? 全然嫌な思いとかじゃなくて、悔しかっただけだからっ!!
・・・今度やる時は、私ももっと強くなって、恭文の本気、何にも言わなくても最初から出してもらう」

「・・・結構後になるかもしんないよ?」

「でも、同じ部隊なんだから、機会はあるよ。その時は・・・また相手してくれる?」



不安そうな表情でスバルが聞いてきた。こんな顔を見たら、答えなんて決まっている。



「いいよ」



歩きながら、スバルの顔から、進行方向へと視線を変えて、スバルに目を合わせることなく、僕はそう告げる。



「僕なんかでいいなら、いいよ。スバルとやりあうの、楽しいしね」

「・・・うんっ!!」

「まぁ、そう簡単に手札は切らないけどね」



僕が目指すのは、カートリッジや形状変換なんかの強化機能に頼らずにオーバーSランク以上に勝つこと。それだけの戦闘技量を身につけることだもの。

簡単にそれらに頼るようじゃ、ダメだしね。



「切らせてみせるよ。絶対に」

「なら、僕は切らずに勝つことにしようかな?」

「いいよ。そう言ったことを後悔させてあげるから」



そう言って、二人で顔を見合わせて笑う。なんというか、楽しくなりそうだしね。

・・・こんな会話をしている間に、隊舎敷地の玄関へと到着。僕は、ここから徒歩でのんびり歩いて帰るのである。



「それじゃあ恭文、気をつけて帰ってね」

「うん、見送りありがとうねスバル。それと・・・」



スバルがきょとんとした顔でこちらを見る。・・・よろしくね。



「え?」

「よろしくねって言ったんだよ。まだ言ってなかったしね」





ほんとは目をそらしたいけど、少しだけ恥ずかしい気持ちを我慢して、ニッコリと笑ってみる。


少しだけ、スバルの反応が怖かった。でもスバルは・・・。





「うんっ! 恭文、これからよろしくねっ!!」





満面の笑みで、そう答えてくれた。



でも、お願いだから、そんなむちゃくちゃいい笑顔浮かべながらこっちをじっと見ないで欲しい。



・・・なんか顔が熱い。





「あ、それと、私のトレーニングウェア、そのままつかってくれてもかまわないから。また模擬戦とかするときに必要でしょ?」



いやだ。



「えー! どうしてっ!! だって私と恭文って身長ほぼおなじだし、サイズだってピッタリだから問題はないでしょっ!?」

「まて、豆柴」

「・・・えっとスバルさん、少しはその…考えて発言してください///」



スバルがなにやら『また犬扱いするー』とか言ってるけど気にしない。そしてキャロ、恥ずかしがりながらも的確な突っ込みありがとう。

模擬戦が始まる前に、スバルから借りたトレーニングウェアは、今僕の手の中にある(袋に入れて梱包済み)。



いちおうしっかり洗濯して帰そうと思ったのだ。



でもこの子、なんていうか、恥じらいとか男に自分が着てたもの着られるのが嫌とかっていうのは無いの? 僕はともかく、ギンガ姉さんが泣くよ。



そういう思いも込めて、スバルに一つ質問。





「スバル、分かってるとは思うけど、僕・・・男だよ?」

「え? あぁ、そういうことか」



そうそう、そういうことなんですよ。分かっていただけて嬉しいです。



「恭文のエッチ」

「はいっ!?」

「私の服着て、変な事考えてたんでしょ? ・・・えっち」





スバルがからかうようにそう口にする。ニヤニヤと笑みを浮かべながら・・・。

いやいやいやいや! そんな事考えてないからっ!!



・・・そりゃあ胸のあたりがブカブカだなぁとは思ったけど。





「ほら、考えてるし。・・・ま、仕方ないかー。さっきは『彼女とか興味ない』って言ってたけど、それでも恭文だって男の子だもんね。
そういうこと考えるのは普通だと思うし、元気でいいことだよ〜♪」

「いや、まってスバル。ちゃんと話を・・・」

「それじゃあ恭文、また明日ね〜♪」

「ちょ、ちょっとスバルさんっ!?・・・それじゃ、私もここで・・・また明日。」



そう言ってスバルが僕に手を振りながら、隊舎へと戻っていく。キャロも、スバルの後を追いかけていく。

・・・本当に姉と同じで人の話を聞かない子だなおい。



残された僕は呆然とする。なんで? なんでたった一日でこんなよくわかんない状況になってるの?



というか、全部が全部スバル絡みってどういうこと?





≪・・強く生きてください。私はいつでもあなたの味方ですから≫

「・・・ヤスフミ、僕も協力するからね」

≪・・・マスターもそういうなら・・・私も微力ながらお力をお貸ししたいと思います・・・≫



ありがとね。嬉しすぎて涙がでるわ。





と言うか始めからこんな調子で大丈夫か僕っ!?





なぜだろう? 帰りに、なんとなしに見上げた街のネオンの光が滲んで見える、そんな10月末の夜だった。





(第3話へ続く)







おまけ:Side スバル&キャロ




「そういえばさ、キャロはツヴァイ君とやけに仲がよく見えたんだけど、何かあったの?」



・・・仲がいい、かぁ。私はツヴァイさんに迷惑しかかけてない気がするのに


・・・今までの行動を思い返してみて、頭から煙が出た。・・・は、恥ずかしいことばっかりです///


「ねぇねぇキャロ〜、教えてよ〜!!」


・・・だ、だめですっ!!話せません!?ほ、ほら、早く戻りましょう!!


「あ、キャロ置いていかないでよ〜!!」



今日は良かったけど・・・明日またツヴァイさんと会うことを考える・・・しっかり顔を見て話せるかな?









おまけ:Side 恭文&ツヴァイ


あーそうだ。僕はここの寮に泊めてもらうつもりだったんだ。

「え、そうだったの?」

うん、ちょっとこれから行かなきゃいけないや・・・はやてさんはまだいるよね?

「あの狸ならまだ仕事してるんじゃないかな。聞いてみたらいいんじゃない?」

そうだね、じゃあとりあえず聞いてみるよ、ありがとうねヤスフミ。

「そういえばさツヴァイ。どうやってキャロと仲良くなったの?アレはもうびっくりするくらいだったけど」

・・・そう?普通だと思うけど。それにキャロは好きな子がいそうだったし・・・まあ、いいやまた明日ねヤスフミ

「うん、また明日」





≪・・・ひょっとして、ツヴァイももフラグを立てたのですか?≫

≪分かりませんがもしかしたら・・・。まあ、どちらにせよ面白い事になるのは確実です。≫



(本当に続く)







あとがき



ツヴァイ「こんな感じで2話目に突入!!2話目も主役のツヴァイです、よろしく!!」

アマテラス≪何故そこまでテンションが高いのか知りませんが・・・初登場のアマテラスです。よろしくお願いいたします≫

ツヴァイ「なんでそんなにテンション低いの?せっかくだし楽しもうよ」

アマテラス≪マスターが高すぎるだけで私もこれで十分高い方ですよ≫

ツヴァイ「そう?ならいいや。って今回は戦闘あんまり上手く行かなかったよね」

アマテラス≪まあそれは追々頑張っていきましょう。ところでキャロ嬢のフラグが立ったんじゃないですか?≫

ツヴァイ「フラグ?よくわからないけど仲良くなったとは思うよ。」

アマテラス≪まあ、いいです。自覚させるのはもっと後でも問題ないので≫

ツヴァイ「まあ、アマテラスがいいなら色々と紹介しようか」



AI搭載式翼型アームドデバイス アマテラス

武器としての基本形状:機械により作られた銀色の翼。イメージはシグナムのアギトとのユニゾン時の羽が機械でできた感じ


待機状態:銀色の指輪で鎖に通して首からかけている

形状変換によるモードチェンジ:通常モード。その他4種

通常モード:銀色の2枚1対の翼

性格:女性人格のAI。基本的に物事を楽観視するツヴァイを抑えるのがお仕事。けれどツヴァイがおとなしいときは自分がめちゃくちゃはっちゃける


AIの声のイメージ:田中理恵






非人格搭載型アームドデバイス ノーザンイクス

武器としての基本形状:バスターソード イメージはFFZのクラウドかザックスの持っている剣



待機状態:黒色の指輪で鎖に通して首からかけている

形状変換によるモードチェンジ:通常モード。その他3種

通常モード:バスターソード

1stモード:細身の双剣







オリジナル魔法解説


ハイパージャマー

ツヴァイのマスターが使っていた幻術魔法の一種

姿を完全に消すことができ、センサーや感知魔法なども騙すことができる(ドゥーエのISと同じ)

消費魔力量が多いため現在のツヴァイでは最大でも3分しか使うことができない



蓮牙双閃

イクスの1stフォルムで使用

技的には属性をまとっていない紫電一閃を2本の剣で同時に行うようなもの







ツヴァイ「・・・なんかアマテラスって改めてみるとフォームが多すぎるよね」

アマテラス≪大丈夫です。どうせ今のマスターでは二つのデバイスのフォームを合わせると3つしか使えませんから他のデバイスと変わりません≫

ツヴァイ「それっていつごろ使えるかな?」

アマテラス≪さあ?少なくとも師匠たちが認めてくれるまでは使えないので・・・本家の魔導師ランク試験位までは使えないかと≫

ツヴァイ「・・・ちょっと悲しいかも。まあいいよ。これから頑張るから」

アマテラス≪まあ、ほどほどに頑張ってください。今回はこの辺りまでで・・・お相手はアマテラスと・・・≫

ツヴァイ「ツヴァイ・ヴェルクスでした。ではではまた今度!」












(カメラに二人で手を振り、フェードアウト。
本日のED:田中理恵『水の証』)





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