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頂き物の小説
ケース03〜烈火の将・シグナムの場合 そのさん〜




















ヤスフミが無期限休養に入ってから約2週間。






なぜか六課に来たヒロさんとサリさん(しかも、やけにヒロさんは怯えているし、俺には妹キャラが出来た。)や、なのはさんのお姉さんを招いての特別訓練などのイベントが目白押しだった。






・・・ヤスフミの心配はしてるけど、ここで考えたってヤスフミの病気が治るわけじゃない。




だから、アイツがいつ戻ってきてもいいようにいつも通り過ごす事にした。








・・・・・・っていうか、ヤスフミのランク昇格試験は取りやめになったけど俺はそのまま受けるので正直自分の事で精一杯って感じだ。














「どうしたフレイホーク!!私との戦闘中は、私だけを見ろっ!!」










そしてなにより、現在シグナムさんと模擬戦の真っ最中だからなっ!!








「というかシグナムさんっ!!なんかとんでもないことを口走ってますけど気のせいですかっ!?」




「気のせいではないぞっ!!・・・お前との戦いは、実に心が躍るっ!!」




「そうですかっ!!実は、俺もですよっ!!」










・・・・・・あれ、なんだか俺もバトルマニア化してきてる?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆












「そうですかっ!!実は、俺もですよっ!!」










その言葉を聞いたとき、わずかだが私の胸が熱くなる。












・・・・・・なんだ、この感情は?・・・いや、今はただ・・・フレイホークとの戦いに心を踊らせる時っ!!












そして、私とフレイホークはその刃をぶつけ合う。












・・・楽しい、実に楽しいぞフレイホークッ!!














◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆














「む〜・・・お兄ちゃん、とても楽しそう。」




「あ〜、そうだね・・・・・・サリ、どう思う?」




「・・・というか、ジン坊は何があったんだ?」




≪そうですね・・・明らかに昔とは戦い方が違います。どちらかというと・・・斬撃を中心にした戦い方になっていますね。≫




≪姐御、あれサイズフォルムのデータ渡した意味あるのか?なんかもうフィーネの姐御とは別方向に進化してるんだが。≫




「そうだよねぇ・・・・・・こりゃ、ジン坊のパワーアッププランを変更する必要があるかな?」












・・・・・・ヒロの呟きに、俺も思わず頷いてしまう。








せっかくジン坊の戦い方に合わせて調整したってのに、肝心のジン坊の戦い方が変化してきている・・・・・・これじゃ、今までのデータは役に立たない。












「・・・イチから作り直してたら時間ないし・・・かといって、今あるやつじゃジン坊が使いにくそうだし・・・」




「だよなぁ・・・」








そして、俺とヒロは相談を始める。・・・そういや、「アレ」があったなぁ・・・今のジン坊になら、あっちの方があっているか?








「・・・ヒロ、お前が即興で作った奴あっただろ。「アレ」を改良するのはどうだ?」




「・・・?・・・あぁ、「アレ」っ!!今のジン坊だったら、そっちのほうがいいか。」
















・・・・・・こうして、栄光の流星はさらなる進化を遂げることになる。
















その本来の姿とは違う、あらたな刃と共に。




















魔法少女リリカルなのはStrikers 外伝




とある魔道師と彼女のありえる繋がりとその先のこと・外典






ケース03〜烈火の将・シグナムの場合 そのさん〜










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








そして、それから約1ヵ月後。・・・・・・うん、飛ぶのよ。すっごい勢いで飛ぶのよ。










僕は、ティアと通信やデートでお話したり、たまにその・・・・・・そういうコミュニケーションをしてみようかとティアに誘われて、それにストップをかけたりして、非常にごめんなさいな生活を送っていた。










送っていたんだけど・・・・・・どうやら、そのツケが来たらしい。










現在、六課隊舎の医務室のベッドとお友達になっています。




















「やっぱりさ、釣りかけてるのに中途半端なことしてるのが悪いんだって。だからそうなっちゃうの。因果応報ってやつだね」




「そうやな。男としてもうちょいはっきりせんとあかんやろ」




「あぁ、ごめんなさい。真面目にごめんなさい。テレビの中のヒーローから言われると非常に反省したくなるのが不思議です」








先日、電王が来ました。で、ティアの記憶が取られたりネガタロスとガチでやりあったりして、なんとか勝ちました。なお、療養中なのでじっとしてるようにと言われたけど、結局いつも通りに飛び込みました。






結果、僕は二週間の安静です。あははは、神速使っちゃったしなぁ。そして本編以上に包帯だらけだしなぁ。










「でも恭文、真面目な話これからどうするの? 六課は居辛いんじゃないかな」






「そうやな。なんやかんやで今回のことかて、巻き込まれたも同然やろ。お前は動けるようになったら自宅に戻った方がえぇかも知れんなぁ」






・・・・・・ウラタロスさんとキンタロスさん、すごい相談に乗ってくれている。会ったばかりだけど、先生から僕の事をあれこれ聞いてて、その上六課に来てはやてや師匠から今の僕の状態を聞いて、親身になってくれているのだ。






そう言えば、今まではこう・・・・・・ほぼノリ全開で行動してたから気になってなかったけど、これからどうしよう。なんか、そう考えたらうちに帰りたく・・・・・・あぁ、やばい。これは普通に引きこもりの思考だ。








「うーん、でもなぁ・・・・・・」




「せっかくやから、このまま居たいとか考えとるんか?」




「はい」








一応は平気だし、辛い感じもないから、そうしたいなと。








「せやけど、心の病気っちゅうんは治った思うてる時が1番危ないって、シャマル先生やサリエルさんも言うてたやろ」




「金ちゃんの言う通りだよ。あ、それとも・・・・・・ティアナちゃんと離れるのが辛いとか?」




「それもあります」




「それも?」






まぁ、ティアの事はある。ティアは力になってくれたのに、僕はなれなかった・・・・・・とかさ。




ただ、それだけじゃない。僕が今の六課に居たい理由・・・・・・良太郎さんやウラタロスさん達、侑斗さんにデネブさんだ。








「なんて言うか、良太郎さんや二人もそうだし、リュウタや他のみんなとももっと話したいなと。・・・・・・僕のなりたい形の一つではありますから」




「・・・・・・そっか。まぁ、そうしてくれると僕や金ちゃんは助かるかな。リュウタもちょっと気にしてたしね」




「やっぱりですか?」



「やっぱりだよ。恭文が元々六課に復帰したのは、イマジン関係に強いって言うのがあったしね」







あぁ、そう言えばそうだった。そっか、事件が解決したから、僕がもう居なくなるとか思ってんだ。



別に問題ないのに。だって、六課に居なくても僕とリュウタが友達なのは変わらないし。チケットだってあるんだから、いつでも会いに・・・・・・あ、そっか。









「そっか。そうなん・・・・・・だよね」



「恭文?」





・・・・・・そうだ、それなら少しだけ、本当に少しだけ・・・・・・色んな事をちゃんと整理したうえで、やってみてもいいかもしれない。



僕がずっと思ってた夢の一つ。そのための切符は、もうあるんだから。今までちゃんと考えてなかったけど、もしかしたら本当に後は踏み出すだけなのかも知れない。








「それなら」



「それなら?」



「これからしばらくの間、僕もデンライナーに乗り込んでいいですか? ほら、無期限チケットはありますし」












・・・・・・あれ、ウラタロスさんもキンタロスさんもなんで黙るんですか?














「えぇぇぇぇぇぇぇっ!?」



「なんやてぇぇぇぇぇぇぇっ!?」



「ちょ、大きな声出さないでくださいよっ! 痛い・・・・・・耳痛いからっ!!」




































◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









「・・・・・・恭文がデンライナー乗ってしばらく旅に出る言うてるんですかっ!?」



「そうなんですよ。あんまりに前振りなしな発言だったんで、もう僕も金ちゃんもビックリしちゃって」



「で、でも・・・・・・あの、事件は解決したし、ヤスフミが今ここでそうする理由はないと思うんですけど。それなら、自宅休養とか」







もし、出来るようなら六課に復帰して欲しい。解散まで目前になってはしまったけど、みんなヤスフミに戻ってきて欲しいと思ってくれてるから。



ちゃんとここに居場所がある。局の中にだってヤスフミを否定せずにちゃんと認めてくれてる人達は居るんだって、知って欲しいのに。







「俺らも最初はそう言うたんや。でもな、なんや『旅の中で自分のなりたい形にどうすれば近づけるのか、考えてみたい』言うてるんや。
まぁ、俺らはえぇんや。リュウタも喜ぶやろうし、オーナー的にもチケットあるからな。乗車拒否言うことにはならん。ただ、嬢ちゃん的にはそうやないやろ」








一連の事件が解決した翌朝、ウラタロスさんとキンタロスさんが部隊長室にやってきて、そんな話をした。私もはやても、あとその場に居たなのはにシグナムにヴィータもあっけに取られるばかりだった。



た、たしかにチケットあるし、そうしても問題はないんだろうけど、えっと・・・・・・あの、でも待って。いくらなんでもいきなり過ぎるよ。ヤスフミ、一時的にだけど復帰して、いつも通りな感じになってたのに。







「アイツはまた・・・・・・」



「まぁ、理由は大体察しがつくがな」



「だな」



「あの、ヴィータちゃんにシグナムさんもどうしてそんな分かったような顔してるんですかっ!?」








そ、そうだ。そこが分からない。私達はかなり混乱してるのに。







「いいか、アイツのなりたい形は、多分良太郎さんや桜井侑斗さん、あとモモ達に割り合い近いんだよ。正確じゃねぇけどすごく分かりやすい言い方をすると、正義の味方ってやつか?」








正義の・・・・・・味方。








「じいちゃんや良太郎さん達みたいに、自分が守りたいものを守るために、助けるために真っ直ぐに進める。それが、アイツのなりたい自分なんだとアタシは思う。
ここ数ヶ月のこともそうだし、今までのことを見てても分かるだろ。アイツが局員になりたがらないのは、局の中では無意味な柵のためにその意思を貫けないから・・・・・・ようするに局は真っ直ぐじゃないからだよ」



「だからこそ、ここ数日アイツはとても楽しそうだった。ヘイハチ殿以外で、自分のこうありたい、こうなりたいという形が目の前に現れたわけだからな。
なによりテスタロッサ、アイツの元々の精神状態を考えてみろ。アイツは周りに存在する大半のものに否定され、それらに失望し、疑いを持っている状態だったんだ」



「だから、今居る場所にこだわる理由が無い。だから、このままデンライナーに・・・・・・。でも、それは」



「まぁ、逃げ言われたらそれまでやな」







はやての言うように、目の前の現実から逃げてる部分もあるんじゃないかって、私は思う。



というより、そうとしか思えないよ。いくらなんでもこれは・・・・・・。







「でもな、フェイトちゃんになのはちゃん。アイツから見て、その『なりたい形』を貫ける道が局や六課の中に無いんもまた事実やろ。もしあるんやったら、アイツは休職なんてする必要ないで?
アイツは疑っとるんよ。ここでは、自分の想いや理想は貫けないってな。そして、それは悲しいかな事実や。例えば局は『局員』を求めとる。今ヴィータが言うたような形は必要ない。二人かて知っとるやろ」







なのはと私は顔を見合わせて、苦い顔をする。うん、知ってる。はやての言うヤスフミのなりたい形に1番近いであろうヘイハチさんが英雄と称えられる一方で、組織人として失格と酷評もされていることを。



だからこそ、今の母さんやアルフ、そして以前の私はヤスフミに局員になって欲しい。ヘイハチさんと同じにはならなくていいと思ってた。家族がそんなことになるのは嫌だったから。








「でも、アイツはそれになれんし、その立場になりたいとも思わん。組織や世界の都合で動くんは、そのなりたい形とは程遠いからや」



「それは、そうだけど・・・・・・。でも、これは納得出来ないよ。これだと恭文君、本当にそのままデンライナーに乗ってもう戻ってこないかも知れないし」



「それなんよなぁ、アイツ前に言うてたもん。いつかヘイハチさんみたいに、色んな所を旅してみたいって。
もうそのための切符とチャンスがあるし、ティアの事除いたらまじで他にはここにこだわる理由がないもん」








そう、なんだよね。これはヤスフミにとってずっと持っていた夢を、自分の望んだ最高の形で叶えられる本当に最初で最後のチャンスかも知れない。



でも、だめ。やっぱり納得出来ない。そうして一人になって、それで本当にいいのかどうか、疑問に思う。だって、ここにだってちゃんとヤスフミの居場所があるのに。みんな、居て欲しいと思ってるのに。








「だがテスタロッサ、そうやって蒼凪の本当の気持ちを縛り付けるのも問題だ。そんなことをしても、アイツは元の状態になど一生かかってもなれない」



「んなことして今度なにかあったら、マジで何も言わずに失踪して、そのまま一生会えない可能性だってあるぞ? それもどうなんだよ」



「そう、だよね。ヤスフミ、本当に局や局員が嫌いになったみたいだから」








今までとは違う、決定的な決別というのかな。そういうのが見える時がある。ヤスフミはもう、管理局や局員に対して、組織やそんな立場に対して、何も期待してない。



私の補佐官をやってくれるという約束は反故にしてないみたいだけど、それだって私が友達で、仲間で、家族だからなんだ。そうじゃなかったら、きっと・・・・・・。








「・・・・・・どうしましょ。正直、僕達も止めた方がいいんじゃないかとか良太郎やボクちゃんも交えていろいろ協議してまして」



「あー、すみませんね。うちのチビスケが色々と問題起こしてもうて」



「いや、それは問題ない。アイツはリュウタの友達やからな」



「えぇ、問題ないですよ。ただ、問題ある人も居ますから。一人はティアナちゃん。そしてあと・・・・・・」










ウラタロスさんが私を見る。いや、みんなも。



うん、あとは私・・・・・・というより、ハラオウン家のことだ。







「私、少しヤスフミと話してみる。さすがに家族としては話さないわけにはいかないよ」



「そやなぁ、一度話した方がえぇかも知れんな。ただし、わかってるとは思うけどアイツの病気は治ったわけやない。
下手な否定や衝突は症状もそうやけど、事態を悪化させるだけ言うのは、忘れんようにな」



「・・・・・・うん」






















どうすれば、いいんだろ。











どうすれば私はお姉さんとして、ヤスフミの中の疑いを晴らしていけるんだろ。











どうすれば、私がヤスフミにしてもらったように、ヤスフミがかけられた言葉を嘘にしていけるんだろう。











世界や今居るこの場所は、ヤスフミが思ってるよりもずっと優しくて、明るいもののはずなのに。ヤスフミの中にある夢や希望は、ここに居たとしても、私達の側に居たとしても、持っていて許されるものなのに。









































◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








「・・・・・・え、そこまでもめてるんですか? 何気なく言ったのに」



「うん。デンライナー組だけじゃなくて、なのはちゃん達も大騒ぎだよ」



「つーか、当たり前だ。お前の状態でそれやると洒落効いてないんだよ」








医務室で本を読んでると、サリさんとヒロさんと来て、いきなりこんな話になった。



原因は一つ。僕が何気なく言ったリアル『デンライナーの車窓から』発言。うー、確かに言った後の反応があれだったから気にはしてたけど、やっぱそうなるのか。








「で、真面目な話本気なのか?」



「・・・・・・結構」



「お前なぁ」



「ただ、条件がつきますけど」







ティアとのことやうちの『家族』のこと、どうしていくか決めてからだ。



そうじゃなきゃ、ただ逃げてるだけだもの。それを決めて、その上で行きたかったら・・・・・・かな。







「あ、ちゃんとしていこうって気持ちはあるんだね」



「ならいいが、具体的にはどうするんだ?」



「・・・・・・とりあえず、告白とか」







今回の事で、その・・・・・・ティアのこと好きになってるのははっきり自覚したし。



うん、まずティアのことでちゃんとしなきゃいけないのはそこかな。今までが中途半場だったんだし。







「で、うちの家族に関しては・・・・・・もう縁切っていいですかね」







結構真面目に言うとヒロさん達が苦い顔をした。うーん、やっぱまずいか。



確かに僕もこれはなぁ。切り捨ててどうこうなんて、僕の主義に反するし。







「いや、さすがにそれは・・・・・・」



「まぁ、これは最悪中の最悪の手段ってことでいいだろ。とりあえず、普通に旅に出るのを話して、それで揉めるようなら・・・・・・もうやっちまえ。
リンディ提督やフェイトちゃんの使い魔が家族って免罪符でそこまで言うんなら、その札自体無効にしたっていいだろ。いくらなんでもお前の意思を無視し過ぎだ」








ただ、それはあくまでも最終手段。理想は普通に話して、納得・・・・・・してくれないだろうな。きっとここに居ろって言われるに決まってる。もう分かってる。



なりたい形は六課の中で、局の仕事の中で探せばいいって言われるに決まってる。もう分かってる。







「でも、旅に出るってどれくらい行くつもり?」



「とりあえず、今からなら2ヶ月とかそれくらいですか? フェイトとの約束もありますし」








あー、そうするとフェイトとも話さないと。やることたくさんだけど、それでもなんだろう。



こうやって話して具体的なものを固めていくと、行ってみたい気持ちが強くなってくる。







「あ、そんなに長くないんだね。とりあえず、今ある環境から離れて考えてみたいってわけ?」



「はい」



「でも、きっとみんな寂しがるぞ? フェイトちゃん達やスバルちゃんは言わずもがなだが、他の部隊員だってお前が戻ってきてくれてそうとう嬉しがってたからな。
お前が居たのは実質1ヶ月ちょいだが、それでもみんなの中にちゃんと居場所があるんだよ。そして、全員そのままのお前でいいと思ってくれている」











そう、なのかな。それでもここはやっぱり管理局の1部隊で、今回のは本当に特殊で、みんなはそこの局員で・・・・・・うーん。だめ、やっぱりここ自体にはあんまりこだわりが持てない。



元々そういうのが嫌いってのが大きいけど、フェイトやみんなみたいに六課ここに思い入れが持てない。あくまでも、ただの仕事場。仕事のために来ていただけの場。それが僕にとっての六課。



その中に居場所があって、居てもいいって言われても、ずーっと居る理由が見つからない。それに手を伸ばす意味がわからない。もちろん、別に嫌いとかじゃない。







ただ・・・・・・特別、好きでもない。なら、僕の居場所は、僕はどこに居れば、いいんだろ。







あぁもう、イライラする。色々決着つけられそうな感じがしたのに、ゴールが遠くなったように思うもの。









「デンライナーや良太郎さん、桜井侑斗って言うお前が憧れてた形が現実のものとして、目の前に現れたせいだろうな。
遠かったものが、世界は違うけど一つの現実としてある。それを知って、今までのものとどちらがいいか悩んでるんだよ」



「・・・・・・それだと僕、最低ですよね」









みんなは必死に助けてくれようとしてたのに。ティアやリイン、シャマルさんに至っては、自分の全部で僕を受け入れて、認めて、傷を癒してくれようとしたのに。



僕、簡単にそれから別のものに乗り換えようとか考えてる。やっぱり、最低だ。・・・・・・そう思って、俯く。







「でも、それでいいんじゃないのか?」


「え?」







俯きかけていた顔を上げると、サリさんが僕を見ていた。いや、ヒロさんもだ。







「元々、リンディさん達ハラオウン家の言うように、局の事だけにこだわるのが間違いなんだよ。お前の今やってみたいことがここにないと思うなら、それがある別の場所へ行ったっていいだろ。
なりたい形がお前の今見えている世界に無いのなら、今まで知らなかった別の世界へ足を伸ばして、時間がかかってもいいから探しに行けばいいだろ。旅ってのは、そういうもんだ」





「そうだね。それが結局無駄足でさ、やっぱりフェイトちゃんの補佐官やることになったとしても、そうじゃなくても管理局の中にあったとしてもそれでいいじゃん。
アンタがそうやって自分の足で歩いて探していった時間は、絶対に無駄になんてならないよ。きっと、それからのアンタを支えてくれる力になる」







別の場所へ行って、別の世界へ足を伸ばして探す・・・・・・。







「行ってみたいんだろ? 自分の知らなかった世界へ」



「・・・・・・迷ってます。それも、かなり」







なんだろう、逃げかも知れない。だめなことかも知れない。



だけど、やっぱり胸が高鳴る。六課に居る時には全く感じてなかったドキドキが、心と身体を支配する。







「だけど、行ってみたいんです。それでもいいから、行きたいんです」



「なら、考えるだけ考えなきゃ。このままフェイトちゃん達の意見を尊重しても後悔するだけだし。たださ、マジは話ずっとはだめだよ? 今の状態だとそのままズルズルな感じになるだろうし、どっちにしろ六課解散直前までには一度帰って来た方がいい。
あと、今アンタが自分で言ったようにティアナちゃんとの事や家族の事、どんな形でもいいから決着をつけてからだよ。その二つが出来るんなら、私らはなにも言わないよ」



「ヒロさん、サリさん・・・・・・」







それで、いいのかな。本当にそれで・・・・・・。







「いいの。アンタ、今まで自分以外の誰かの時間を守るために必死だったもの。リインちゃんしかり、フェイトちゃんやなのはちゃん達しかり、ギンガちゃんしかり。JS事件の時はなんだかんだで世界までなんとかしようとした。
そろそろさ、自分の時間を守るために、それを先に繋ぐために、必死になったっていいんじゃないの? きっとアンタが先生から貰ったチケットは、そのために必要なものなんだよ」







貰ったと言うべきか、買わされたと言うべきか。でも、このチケットは大事なもの。僕を知らない世界に誘うもの。きっと、とても大事なもの。



だから、手放せない。このチケットに触れていると、幸せな感情が襲ってくる。未来への希望・・・・・・言葉にするとそんな陳腐な言葉に出来る気持ちで、胸の中がいっぱいになる。







「大丈夫、私らが誰にも文句なんて言わせないよ。だから、本当に気持ちが固まったなら、行っておいで。アンタの帰る場所は、しっかり守っておく」



≪姉御、たまにはいいこと言うな≫



「でしょ? ・・・・・・って、たまにはってなにっ!!」







・・・・・・まだ、迷いはある。だけど、決めた。それは行くことじゃない。真剣に考えてみること。知らなかった世界へ、行った事の無い時間へ、踏み出してみたいというのは、本心だから。



いろんなものを見て、探してみたい。自分の本当に今やりたいことと、なりたい形を。そうだ、それだって本心なんだ。嘘なんて、つけない。







「ヒロさん、サリさん」



「決まったか?」



「はい。とりあえず真剣に考えてみることだけ」



「うん、いいことだ。でさ、それを記念して、私からプレゼントがあるのよ」









・・・・・・え?









≪姉御、ボーイの症状を悪化させたのを気に病みすぎて、とんでもないもん作ったんだよ≫



「いや、あの・・・・・・えっと」



「まぁ、原因の一旦を担っちゃったからね。・・・・・・これ」







そう言ってヒロさんが取り出して僕に渡して来たのは・・・・・・え、これってゼロノスのベルトっ!? というか、カードまであるしっ!!



ま、まさか・・・・・・Den-oジャケットのゼロノス版っ!!







「ううん。元はそうだったけど、もう違う」



「え?」



「やっさん、カードホルダーのカードを見てみろ」







そう言われて、カードを抜き出す。・・・・・・あれ、色が違う。ゼロノスのカードは緑・錆びた色合いの赤・黄色なのに、これはオレンジと蒼になってる。というか、全部それで統一されてる。



あと、ベルトも同じくだ。本物のゼロノスのベルトはラインが緑と黄色なのに、このベルトのラインは今目の前にあるカードと同じ色合いに統一されてる。







「元々作ってたもんを改良して、やっさん用に調整したのよ。ようするに、新しいバリアジャケットだね」







・・・・・・え、どういうことですか。僕やっぱりまだダメなのかね。こう、頭の動きが鈍いのですよ。よく分からないのですよ。







「いいか、そのカードは魔力バッテリーだ。そして、そのベルトはそれを使用して起動するジャケット構築用デバイス。カードを挿入するとそのデータを読み込んで、ジャケットが装着される。もちろん、カードは一枚使ったらなくなる仕様だ。
けど、その分高出力なもんが出来上がるようになってる。魔力消費も増えたが、カード自体にかなりの量の魔力が込められてあって、それも併用してジャケットは維持する。あ、AMFの完全キャンセル化でも使えるんだぞ? もちろんそのための装備込みだ。このあたり、ヒロが相当頑張った」



「オレンジの面は通常ジャケット。で、蒼の面はリインちゃんとのユニゾン用ジャケットなんだ。使い方は言わなくても分かるよね? 蒼のユニゾン用ジャケットの方は、前々から八神家のみんなに相談の上で調整したの」



「それ、マジでまんまゼロノスじゃないですか。侑斗さん達に怒られますよ?」



「大丈夫、話して許可は取ってある。というか、取った。ちなみにオデブはすっごい嬉しそうだった」







どんだけ力押しっ!? てゆうか、もう僕が使う事決定かいっ!!



でも、ゼロノス・・・・・・なんかいいかも。これ、使ってみたい。







「お、表情が明るくなったね。やる気満々?」



「かなり。でも、これどんな性能なんですか?」



「まぁ、そんな装着して10分で魔力が切れるとか、Den-oジャケットみたいにそこまで突飛な感じじゃないよ。あくまでも普通のジャケットとして構築した。ただし」







・・・・・・で、詳しく話を聞いてぶったまげた。というか、普通にすごいってこれ。ヒロさんスカリエッティより天才なんじゃ。







「いや、まぁ・・・・・・そんなことあるかな? にゃはははははは」



「あの、ありがとうございます。大事に使います」



「うん、ならいい。で、ジャケットの名前どうする? デザインとかは私で勝手に決めちゃったんだけどさ」



「そんなの、決まってるじゃないですか」







そうだ、そんなの決まってる。これは、形を模しただけかも知れないけどあの人達のベルトなんだ。



だったら、その名前は決まってる。







「・・・・・・消えていくその一瞬に刻み込むのは、揺ぎ無い強さ。そして、このベルトはそれを貫き通す覚悟の証。なら、そこから生まれる姿の名前は当然」













<







僕が言った名前に、二人は納得してくれた。というより、やっぱりかと言う顔をしていた。











・・・・・・あぁ、これ早く試したいなぁ。すっごく試したいなぁ。









































◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
















「・・・・・・え、なんでそんな事になっているんですか?」



「・・・私に聞くな。私だって驚いているのだからな。」









・・・ヒロさんに頼まれて、メイルと一緒に遊園地に行っていた俺が隊舎に戻ってくると、たまたま通りかかったシグナムさんからヤスフミの事を説明された。









・・・・・・いきなりデンライナーで旅に出るってまた無茶苦茶な。









でも・・・・・・・・・・・・









「・・・そこまで大騒ぎすることですか?気分転換も兼ねていていい機会だと思うんですが。」



「・・・つまり、お前はアイツが旅をすることには賛成ということか。」



「・・・いや、話を聞いていてなのはさんやスバル達の気持ちもわかるんですけど・・・このまま六課・・・いや、管理局にこだわったってアイツの病状が好転するとは限らないじゃないですか。だったら、まったく違うものに触れて、それで・・・アイツが進みたい道を見つめ直した方がいいと思います。」



≪それには同感だな・・・心の問題というものは、下手に周りが手を出すと逆効果になる場合もある・・・そっとしておいた方が無難だとは思うが・・・・・・≫
















・・・・・・まぁ、現実から逃げてると言われたらその通りなんだろう・・・・・・でも、逃げたら駄目なのか?









誰もが皆、自分の問題に正面から立ち向かえるほどの強さを持っている訳ではない。









それに、心がボロボロの状態で立ち向かったって・・・いつかはヤスフミの『何か』が壊れるのが目に見えている。









だったら・・・・・・少しだけ回り道をして、立ち向かえるほどの強さを手に入れて、そこから再び向きあえばいい。









まだ俺もヤスフミも二十歳にもなってない・・・・・・少しくらい、回り道をしても大丈夫だろ。









「・・・そうよねぇ・・・ジン君の言うとおりだわ・・・」

























そんな声がしたので後ろを振り向くと・・・・・・

















「・・・・・・・・・・・・・・・・・・シャ、シャマル?」





「・・・・・・・・・・・・ど、どうか・・・したんですか?」













・・・・・・怒りのオーラを撒き散らす鬼シャマルさんがいた。









・・・ものすごく怖いんだけどっ!?











「・・・ちょっと、皆が問題起こしたみたいだから・・・・・・これからお説教よ。まったく、余計な事をしてくれちゃって・・・・・・」







「・・・・・・そ、そうか。」



「が、頑張ってください・・・・・・」









・・・とりあえず、俺とシグナムさんは冷汗を流しつつシャマルさんを見送る。













・・・・・・誰が、何をしたんだいったい?















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆










夜、ヒロと八神部隊長に呼び出され・・・・・・てゆうか、飲みに出た。













それで話を色々聞いたが、またとんでもないことになってるな。結局あのバカとそのバカを止めようとする使い魔二人で決闘と。









また派手にやらかすなぁ。さすがは我が弟弟子。



















「いやいや、感心してる場合ちゃうでしょ。うちはシャマルが若干キレかかってるのがもう恐ろしくて恐ろしくて」



「あぁ、もしかしてシャマルさんが凄まじく機嫌悪そうだったのはそれが原因?」



「正解です。話聞いてると、恭文からそうなるように喧嘩売ったのは明白やから、アルフさんのせいやないと思うんですけど、シャマル的には対応そのものが不服らしくて」







お通しの枝豆をパクリと食べつつ、苦い顔で部隊長がそう言う。まぁ、なぁ。



てゆうか、ハラオウン家・・・・・・フェイトちゃんの使い魔ってなんか話聞いてるとフェイトちゃんバンザイ主義に聞こえるんだが、いいのかそれは。







≪使い魔的にはオーケーだろうけど、家族的にはアウトだよな。で、姉御、サリ、どうする?≫



「んなもん、やっさんに任せるしかないでしょうが。てゆうか、私らが口出しする道理がない」



「とりあえず、俺は医務室の準備しておくわ。・・・・・・あぁ、使い魔用の治療キットや魔力枯渇用の緊急補給剤もそろえておくか。傷の回復なら魔力供給の増加が1番いいだろうけど、フェイトちゃんに負担かかっちゃうだろうし」











明日とかじゃなくてよかった。明後日ならシャマル先生とも相談の上で準備出来るし。



しかし、今のやっさんとやり合おうなんざ自殺行為としか思えない。ヒロみたいな脳筋ならともかく、俺は絶対嫌だ。



もちろん理由はある。アイツがこういう喧嘩の売り方をする時は、大抵の場合、今の状況がもうめんどくさくなって全部ぶっ飛ばしたくなった時だけだ。









そんな状況で喧嘩を売った場合、相手にとっては死亡フラグも同然。・・・・・・フェイトちゃんの使い魔、下手すると消滅するぞ?











「やっぱそこまでですか? うちもヴィータもシグナムも、あとなのはちゃんもそこをめっちゃ心配しとるんですよ。でも、アルフさんもめっちゃキレててうちらじゃ止められんし」



≪そこまでですね、蒼凪氏は基本戦う時に躊躇いを持ちませんし。下手をすれば血の戦いと書いて血戦です≫



「あぁ、やっぱりそうなるんかぁ。始末書は嫌やなぁ。てゆうか、身内同士で殺し合いとかマジで勘弁やて」








頭を抱えて本気でうなるのは六課の部隊長。だけど、その威厳や凛々しさは今は微塵も感じない。てゆうか、フェイトちゃんはどうしてんだ?



フェイトちゃんが主なんだから、不服なら魔力供給を主の権限で消滅しない程度に抑えて言う事聞かせればいいのに。いや、それが無理ならせめて無力化とか。









「フェイトちゃんがそないなこと、身内に出来ると思います?」



「あの子は間違いなく出来ないね。そんなやっさんじゃあるまいし」



≪姉御、その発言はかなり問題だぜ?≫



≪思いっきり悪人扱いではないですか≫





















いや、アイツを悪人かそうでないかと聞かれたら間違いなく100人中90人くらいは『悪人です』と答えると思うぞ。













しかし、どうなんだこれ? 俺達も鍛えているし、つい最近あんだけ暴れて錆び落としもしたからまさか遅れを取るとは思わないが・・・・・・。











下手すると、さっそくアレを使う事になるかも知れないな。













◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆










「このぉ・・・・・・ゼロノスの真似っ子に負けるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」













雪は変わらずに降り続ける。そんな世界の中、イマジンは走ってくる。



だから、僕は剣の形態に組み立てたゼロガッシャーを両手に持ち、突っ込む。



そのまま、勢いよく袈裟から刃を叩き付ける。そこで互いに足を踏ん張り、刃をぶつけ合う。







というか、鍔迫り合い。刃が叩きつけられたその瞬間、衝撃が走り、僕達の周囲の雪が吹き飛ぶ。周囲へと破裂するような白い色を含んだ風が、吹き荒ぶ。



イマジンも刃を押し込む。だけど、負けない。身長の差を含めても、僕は正面から立ち向かえる。



・・・・・・うし、大剣形態だけあって、重さもあるから押し負けしない。で、長さもそこそこだから取り回しも一応○。こりゃ想像以上に使い勝手いいぞ。













「真似っ子じゃねぇよっ!!」







そう、これは真似っ子じゃない。そして決してパクリでもない。違う、断じて違う。



そんな意思を乗せて、僕はゼロガッシャーを更に押し込む。押し込んで・・・・・・僕より身長が30センチ近く高いイマジンを威圧する。









「アッチが本家本元で、こっちが元祖だっ!!」



「はぁっ!?」







左手は、そんな事を言いながらももう動いている。



左手の親指でベルトの上部、ボタン式のスイッチを押す。









≪Full Charge≫









それから、ベルトに挿入したカードを取り出す。カードの模様から同じ色の光が溢れるように輝く。そのままゼロガッシャーの持ち手にあるスロットにそれを挿入する。



接触部からオレンジ色のエネルギーが雷撃のように弾け、それがゼロガッシャーの銀色の刃に届き、包む。そうしてこの子ゼロガッシャーに更なる力を与える。



そう、だから・・・・・・カードをベルトに戻した上で、遠慮なく刃を打ち込む。







刃は、立ちはだかる脅威を斬り裂くために、込められた力を解き放った。











「うおりゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」











強引に、力押しに、僕は刃を袈裟に振るう。僕の刃を受け止めていたイマジンの剣を、オレンジ色の斬撃が襲う。



それは剣を粉々に砕き、その衝撃でイマジンの身体を吹き飛ばした。刃と刃が接触した箇所には、『A』をモチーフにしたオレンジ色のエネルギーエンブレムが浮かぶ。



・・・・・・ここまでこだわってるんかい。ヒロさん、やり過ぎです。









なお、どうやってこうなってるとか、理屈どうとか、そういうことはもう考えない。そう、考えても意味がない。というより、僕にはきっと理解出来ない。











「壊れたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」



≪ついでに言っておきます。もうめんどくさいので、さっさと終わらせますね。そうして家に・・・・・・あぁ、そうでしたね。≫













そう、壊れた。だから、こうする。











「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」











そのまま、数度乱暴に前へと踏み込みながらゼロガッシャーを打ち込む。刃は鎧に叩き付けられ、火花を上げる。









上げた火花の数だけ、イマジンが後ろへと踏鞴を踏む。だけど、問題ない。僕はさっき言ったように前へ踏み込んでる。











「これがテーブルの恨み」











斬撃は止まらない。











「これが椅子の恨み」











刃を振るう。ただただ振るい続ける。











「これがPS2(BBユニット内蔵型)の恨み」



≪なお、現在では生産していないために入手困難です≫











袈裟、真一文字、逆袈裟、唐竹割り、下からの斬り上げ、斬撃の嵐は止む気配を見せない。











「これがテレビの恨み」











勢い任せの乱舞。斬撃は徐々にスピードを増していき、今や火花は息つく暇も無く立ち上っている。







イマジンの鎧には、嫌というほど傷が刻まれていく。











「これが」











苛立ちの全てを叩き付けながら、僕は袈裟に振るった刃を返し、振りかぶる。









そのまま、両手でしっかりとゼロガッシャーを持って、力いっぱいに左から真一文字に刃を打ち込む。











「六課出向前に自分へのご褒美として買って、まだそんなに遊んでないWiiの恨みだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」











斬撃は今までで一番大きい火花を散らし、イマジンを後方数メートルへと吹き飛ばした。イマジンがその衝撃で、雪の中を滑るように転がる。







・・・・・・ゼロガッシャーの持ち手を右手で、刀身の真ん中の部分を左手で持って、外す。剣は、元の小さな二つのパーツに戻った。



それから外した持ち手部分をクルリと回転させて、今まで柄尻だった部分をはめ込む。



すると、両刃の刀身は傘のように開いて、その形をボウガンに変える。









そのまま、またベルトのボタンを押す。











≪Full Charge≫



「・・・・・・く、終わらせられてたまるかっ!!」











それを見て、イマジンが雪の中に潜った。当然、僕はボウガンを構えた。









構えて、よく狙う。イマジンは、雪・・・・・・地面の中を走る。









走っているその先を狙って・・・・・・。











「行けっ!!」











僕は、引き金を引いた。放たれたのは、先ほどの斬撃と同じ色の射撃・・・・・・いや、射撃というにはあまりにも大きい光の矢。









その発射の衝撃に僕は耐える。そうして放たれたそれが、雪を、地面を貫き、その奥に居る敵意を貫く。











「ギ、ギャァァァァァァァァァァァァァッ!!」











声が上がった次の瞬間、地面から土を、雪を吹き飛ばすほど、爆発が起きる。起きた爆発は、まるで柱のように僕の目の前に姿を現す。







・・・・・・普通に高威力だし。なんですかこれ。











≪というより、私出番がないじゃないですか≫



「そんなことないよ。もう一体残ってるし」



「・・・・・・・・・・・・必殺っ!」











え?










「俺の必殺技・・・・・・パートT!!」











・・・・・・そちらを見ると、走り抜けながら刃を左から横薙ぎに叩き込んで、イマジンを一刀両断にしているモモタロスさんが居た。









そのまま、イマジンは爆発。そして、終わった。









というわけで、アルトを見る。











「ごめん、もう終わったみたい」



≪・・・・・・アフター、期待してますからね?≫



「うん、そっか。やっぱりそっち行くんだ」



≪当然でしょう≫





















ある地点を見る。倒れたキャロに、それをかばうように倒れているフェイトがそこには居た。











それから、空を見る。戦いの最中も変わらずに、辺りを白い世界に染め上げる雪を降らせる空を。











・・・・・・あぁ、そっか。











どうやって二人エリオとキャロとぶつかればいいのか、やっと分かった。あと、ついでにスバルも。











白い世界の中で分かったのは・・・・・・僕はどこぞの横馬とは違うということ。僕はお話も『お話』も出来るほど、真っ直ぐな心根は持ってない。













だからかな、雪の冷たさが、少し心地よくて・・・・・・ちょっと、悲しい。











悪いね、行くのを許してもらうつもりはないわ。だから、置いてく。















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
















・・・・・・いやぁ、ヤスフミが旅に出ると言い出してから実にたくさんのことが起きた。









ヤスフミがフェイトさんの使い魔であるアルフさんを公開処刑(まぁアルフさんの命に別状はない)したり、キャロがイマジンと契約してしまったり、その後ヤスフミとスバル達がもめたり・・・・・・











そして今、空気を読めずに模擬戦なんてやらかしたスバルとエリオを一撃・・・じゃないな。少なくとも以前見た事のある瞬(またたき)よりも速い斬撃で二人を倒した。









・・・・・・表情から察すると、今はじめて出来た技みたいだな・・・・・・











しばらくして、部隊長から開放されたリインさんと共に・・・・・・あいつはデンライナーに乗って時間の中へ消えた。













まぁ、いつか今回の事を笑い話にできるくらいにはなるだろ。















≪・・・どうかしたのか、マスター?≫



「・・・お兄ちゃん?」



≪・・・・・・なにやら笑顔を浮かべていますけど、どうかしましたか?≫



「・・・・・・なんでもないさ。」



















・・・『旅に出る』って事は・・・いつか、『帰るべき場所』があるって事だと俺は思ってる。







・・・・・・それが機動六課ここなのか、それとも別のどこかなのかは分からない・・・・・・





でも、アイツはきっと答えを出して・・・自分の選んだ道を進むのだろう。





・・・俺に出来る事は、アイツがその道を迷う事無く進めるように・・・ほんのちょっとだけ、手助けをする事だけだ。

































またな、親友ヤスフミ

















































とりあえず、お前が旅に出る事のフォローは可能な限りやっておくから・・・おみやげよろしく。





























◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆












そして、それから1年が経った。











いや、いきなりでアレだけど、飛ぶのよ。私も正直ちょっとびっくりしてる。









まぁ、いろいろと解散前にはあったわね。













シグナム副隊長とジンの距離が前より近くなったように感じたし、ジンの現身元引受人である人が訪ねてきたり、新しい妹分が増えたとか・・・・・・まぁ、恭文が居なくてもいろいろとハプニングは起きた。













恭文はというと、約束どおりに六課解散直前・・・・・・つーか、解散日に戻ってきた。そして、その場のノリで最後の模擬戦に参加。



というより、隊長陣+ライラVSフォワード陣+ジンVSヘイハチ一門+メイルというわけの分からないバトルロワイヤルに発展したために、桜の木は根こそぎ『消滅』した。



そのために、終わったあとは全員で桜の木に謝り倒すことになったのは、言うまでもないと思う。











旅から戻ってきた私の恋人は、どこかスッキリした顔で、シャマルさんの話ではもう病気も完治に近い状態。やっぱり、環境でそういうのは変わるもんなんだなと、胸の中で一人思った。



ただ、カウンセリングは今でも定期的に受けている。この辺りは私も恭文も、シャマルさんからまた同じことにならないようにと勧められて、納得した上でお願いしてる。



あと、エリオやキャロ、スバルとは・・・・・・まぁまぁうまくやってる。三人とも、なんだかんだで納得はしてたから。










それから、約束通りフェイトさんの補佐官として私と一緒に仕事するようになって、リイン曹長もそこに混じって・・・・・・日々は忙しくも、楽しく過ぎる事になった。



ただ、アイツはずっと気にしていた。アイツのたまごが・・・・・・なりたい自分が、かえらないことを。焦ると余計にかえらないと思っても、それでも。



だけど、転機が訪れた。それは、アイツにとってとても大きな転機。いや、ちょっと違うか。あと・・・・・・私にとってもだ。










あの子達と出会う事で、私も色々振り返って、考える事になったから。自分の夢を、なりたい自分を。そして、未来への可能性を。







































◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆










「・・・・・・それでさぁジン。いつになったらシグナムに告白するんだよ。」



「ブフゥゥッッ!?」



「それはアタシも気になってたな・・・はやてもやきもきしていたし。」



≪2人とも、そこは察してくれ・・・・・・マスターは下手に恋愛経験が無いおかげで、こういった事にはヘタレなのだ。≫



「「あぁ、なるほど。」」



「いや、納得しないでくださいっ!?」



「「≪いや、それは無理だろ(だな)≫」」








・・・・・・仕事も空いていたある日。突然ヴィータさんとアギトに飯に誘われたと思ったら・・・・・・いきなりとんでもない事を言われた。











な、なんでシグナムさんに告白っ!?





いや、シグナムさんが嫌いって訳じゃないけどっ!!あの人と俺の関係は多分友達・・・というより模擬戦仲間というか・・・・・・









「・・・・・・はぁ・・・・・・こりゃ、前途多難だな。」



「そうみたいだな姉御・・・見てるこっちからすりゃ、いつになったら付き合うんだって話なんだけど。」



「・・・・・・え、そういう風に見られてるんですか?」









そう問いかける俺に、ヴィータさんとアギトは思いっきり頷く・・・・・・なぜだ?









六課が解散してから、俺とシグナムさんの接点といえば模擬戦だったり模擬戦だったり模擬戦だったり模擬戦だったり模擬戦だったり・・・・・・あれ、模擬戦ばっかしかしてない気がする。









「・・・・・・なに言ってんだ?その後よく一緒に食事行ったりとかしてるじゃねぇか。」



「それにさ・・・お前が都合悪くて断った時のシグナムはものすごく落ち込んでて、仕事にも影響でてるんだぜ?まぁ、模擬戦ができる時は逆に仕事もはかどってるんだけど。」































・・・・・・・・・・・・マジですか?





















「ただ、問題はシグナムが自分の気持ちに気づいてないって所だな。」



「だよなぁ・・・前にその事聞いたら『そんな訳ないだろう?奴との戦いは実に楽しいから気持ちが高ぶっているだけだ』とか言うし・・・・・・それで、お前はどうなんだよ?シグナムの事好きなのか?」





























・・・・・・そう聞かれると、俺は答えに詰まった。

















・・・俺は、シグナムさんの事が・・・・・・好きなんだろうか?













































(第4話に続く)









あとがき









ジン「・・・・・・という訳で、予定とは大幅に変更になりましたが、今回の話はいかがだったでしょうか?お相手はジン・フレイホークと・・・・・・」



ユーノ「どうも、ユーノ・スクライアでお送りします・・・・・・って、僕はなんでここに呼ばれているの?」



ジン「あぁ、次回以降でユーノさんも関わるからですよ。」



ユーノ「そうなんだ・・・なのはにも会えるかな?」



ジン「いや、どうですかねぇ・・・」



ユーノ「その反応は何っ!?・・・・・・ところで、今回の話ではジンは周りの動きにあまり関わってなかったね。」



ジン「そうですね。多分描写されてない所ではイマジンの捜索とか手伝ってたんですけど・・・基本、ヤスフミとスバル達の問題とかには関わってないですね。」



ユーノ「というか、恭文君が旅に出る時の反応が皆と違うよね。そこまで深刻に考えていないというか・・・」



ジン「そりゃそうですよ。」



ユーノ「はっきりと言い切ったっ!?」



ジン「まぁ、シグナムさんとの会話でも言ってるように気分転換も兼ねさせた方がいいと思ったからです。それと・・・」



ユーノ「・・・・・・それと?」



ジン「・・・なんだかんだで、アイツのこと信頼しているからですかね?」



ユーノ「・・・そっか。」



ジン「・・・・・・というか、自分の事で手がいっぱいです。・・・・・・次が大変だなぁ・・・・・・」



ユーノ「・・・うわ、本当だ・・・というか、僕となのはの絡みが全然ないじゃないかっ!?」



ジン「普通に考えて、今の状況からどうやったらユーノさんとなのはさんの絡むような場面が思いつくんですかっ!?」



ユーノ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うがあああああああああああああああああぁぁぁぁぁっっっっっっ!!」



ジン「ユーノさんが壊れたっ!?というか、なんでアルティメットフォームに変身してるんですかっ!?こっちでのアンタはクウガじゃないでしょっ!?」









(ユーノ、暴走。これ以上は危険なのでカメラ・急速にフェードアウト。
本日のED:タイカナサチ『きらめく涙は星に』)



































≪・・・そういえば、スクライア殿から護衛の依頼が入っているのだが・・・シグナム殿にも休暇を兼ねて来てもらったらどうだろうか?≫




「おぉ、それいいアイディアだなっ!!ちょうどシグナムも休暇が溜まっていた頃だし・・・アタシも行くぜっ!!」




「・・・ちょうどいいな。それでバルゴラ・・・情報は逐一報告しろよ。アタシははやてに連絡して八神家全員でシグナムを説得してみるから。」




≪任せろ。≫




「・・・・・・え、なに勝手に決めてんですかっ!?」




「・・・フレイホーク・・・はやての前でそんな事言ってみろ。説教だぞ説教。」




「そうだよなぁ・・・八神二佐、『シグナムは美人なのに、浮ついた話ないなぁ・・・嫁に行けるか心配や』なんて度々ぼやいてるから。むしろノリノリでオーケー出すと思うぜ?」




「そうですよね、あの人自分が面白かったら何でもやるタイプですもんねっ!!」




「テメェ、はやてをバカにしてんのかっ!?アイゼンの錆にしてやるから動くなぁっ!!」




「なんでそこでキレるんですかっ!?」




「お、落ち着け姉御っ!!」




≪・・・・・・あぁ、スクライア殿か?実は相談があるのだが・・・シグナム殿が休暇をとるらしくてな、一緒に連れていきたいのだが・・・・・・わかっている。高町教導官と触れ合う機会を作ればよいのだな?≫




「で、お前は何ユーノさんと交渉してやがるっ!?そしてユーノさんもなんでOKを・・・え、シグナムさんもいれば鬼に金棒?そりゃそうですけどっ!!」














(おしまい)










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