[携帯モード] [URL送信]

頂き物の小説
第3話 『The people with no name?/暴走の流星』









「・・・・・・話を纏めましょうか」

「そうだね」



エリキャロには、私達の部屋に来てもらって、話を聞き終わった。

恭文は、床に座って腕を組んで、うーんと唸ってる。

フレイホークさんは、壁に寄りかかって腕を組んでいた。



≪フェイトさんとの空気が微妙だと≫

「うん」



でも、どうしてそんなことに? 今日だって、すごくいい連携してたし・・・・・・。



≪二人はお仕事や訓練や任務、フェイトさんに頼らない形で頑張ろうとしているのに、なぜか今日フェイトさんは寂しそうだったと≫

「そうなの」



・・・・・・あの、これは私達にとって弱いジャンルではないと思うんだけど。

私もティアも、お母さん早くに亡くしてるし。



”というか、あのですね”



・・・・・・キャロ、どうしたの?



”エリオ君とフェイトさんが少しやりあっちゃって、エリオ君が折れないんです。
それで、どうしてこうなったのかって考えて、なんかエリオ君の中ではこういう話になってるらしくて”

”はぁ? なんでそんなことになんのよ。てーか、まためんどくさいわね”

”・・・・・・ね、キャロ。エリオに超電磁砲レールガンを”

”ダメに決まってんでしょっ! てーか、アンタマジであのぶっちぎりでアウトな攻撃、撃つのやめないっ!?”



と、とにかく分かった。それで、エリオは泣いてて、キャロはどうしていいか分からなくて泣いてたと。

じゃあ・・・・・・どうすればいいの? この場合、エリオの思考に合わせないといけないだろうし。



”事実を話しても、今のエリオじゃ通用しないよね。・・・・・・ね、恭文ならどうする?”

”フェイトとやりあったのは事実みたいだし、まずそこの解決でしょ。
僕達はどうあれ、エリオ自身がそういう風になってるなら、そこに合わせる”

”で、やれるようなら連鎖的に、この子のバカな妄想もぶち壊すと”

”そういうこと。・・・・・・誰か上条当麻と知り合いじゃないかね。
幻想殺しイマジンブレイカー使って、なんとかして欲しいよ”



なんて、四人で念話をしつつ、キャロと実際に会話していく。

・・・・・・エリオだけ完全に蚊帳の外なのが、少し悲しい。



「・・・・・・・・・・・・あなたのせいですよ」





ずっと黙っていたエリオが口を開いた。そして、厳しい視線をぶつける。その先には、恭文。

恭文は、エリオの視線を受け止めてる。怯える事もなく、驚く事もなく、平然と。

それでも普通にしているのが嫌なのか、エリオの視線が更に厳しくなる。



ジッと、本当に憎らしそうに、恭文を見る。





「あなたのせいで、フェイトさんまで僕の話を聞いてくれなくなった。どうしてくれるんですか」

「問題ない。フェイト達ともスバル達とも話したもの」



エリオが視線を向ける。で、私とティアは頷いた。

それに、エリオはまるで勝ち誇ったかのように、表情を緩めた。



「じゃあ、認めたんですね。あの力の使い方は間違ってるって。
正しかったのは僕達だって。だったら、もういいです」



なんだろう、その言葉や笑顔にすごい違和感を感じた。・・・・・・エリオ、勘違いしてる。

ティアも気づいたのか、眉間に皺がよる。というか、キャロも疑問を顔に浮かべた。



「・・・・・・でも、もうあんな事はしないでください。魔法は、守り、助けるための力なんですから。
僕達は、そのために戦うんです。管理局の一員として、一緒に正しい道を進み続けていきましょう」

「嫌だね」

「はぁっ!?」



あ、あれ・・・・・・なんか変な空気になってきたような。



「僕、局なんて嫌いだし。・・・・・・殺す事は間違いだ。それが正しいことであっていい訳がない。
何時だって、必要があっていい訳が無い。それは変えようのない、変えたらいけない事実だ」



そう、変えられない。恭文の目を見て気づいた。恭文は、そう思ってる。



「そしてそれと同じように、僕にとっての力の意味も変えられない。この力は、壊し、傷つけ、そして殺す力。
どんな綺麗事を、お題目をつけても、それが僕にとっての真実。・・・・・・変えられない。あぁそうだ、変えられないね」



思って、受け止めて、その上で何かを守りたいんだってことに、ぶつかってようやく気づいた。

うん、ちゃんと『初めまして』は出来てるね。・・・・・・って、そうじゃないか。



「僕が気づいて、僕が通すと決めた道理だ。横からごちゃごちゃ抜かすな」

「いいえ、言います。・・・・・・変えてください。そして、一緒になるべきなんです。
僕達の言っている事が普通で、当たり前。なのに、どうしてあなたはそれを守れないんですか」

「嫌だね。てーか、なんでお前の言葉で僕が考え方を変えなきゃいけないの」

「フェイトさんが、ハラオウン家のみんなが、悲しむからです。
それになにより、変わりさえすれば、僕達は仲間になれるし、あなたは認められる」



・・・・・・はいっ!? え、あの・・・・・・ちょっと待ってっ!!

私達は、顔を見合わせてエリオを見る。さすがに今の一言は信じられなかったから。



「アルフから聞きました。あなた、そうやっていつもみんなを傷つけているそうですね。
なぜ、管理局を、僕達の居場所を信じられないんですか。あなた、おかしいですよ」

「・・・・・・うし、エリオに一つ質問。僕のことが嫌いだとは思うけど、ちゃんと答えて。
なぜ、自分の言っている事、考えている事が正しいと、普通だと思うの?」



少しだけ寒気がした。恭文の声に、鋭い冷たさを感じたから。

これは・・・・・・あぁ、そうだ。あの地下水路で感じたのと全く同じなんだ。



「なぜ? そんな事も分からないんですか。僕達局員の考えと行動そのものが、世界の正義だからです」



そして、エリオの瞳も同じだ。今のエリオの瞳の中に、あの人の色を見つけた。



「アルフは僕が迷っていた時、そう言って励ましてくれました。僕達の想いは、管理局の理念・・・・・・世界の正義に沿っていると。
それを貫く事は、世界を、人を、大切なものを守る道だと。だから、曲げちゃいけない。僕達は、誰からも認められるべきなんです」



思い出すのは闇。瞳の中にあったどす黒い『なにか』。

・・・・・いや、違う。あれよりもずっと怖い。今のエリオは、きっと『エリオ』じゃない。



「そして、そのために戦う。そうだ、僕達は理想を現実にして、みんなから認められなくちゃいけない。
だから足を、引っ張らないでください。あなただけが、みんなの足を引っ張って、邪魔しているんです」

「それも、アルフさんが?」

「そうです。・・・・・・あなたは認められない。間違っているから、認められるわけがないんです」

「誰が認めて欲しいっつった。てーか、別に認められなくていいし」

「まだそんなことを言うんですかっ!!」



声を上げる。エリオだけど、エリオじゃないみたいに、とても大きな声を。



「あなたは、子どもですっ! そうやって、現実から逃げてるっ!!
アルフも言ってましたっ! ただの魔導師で居ればいいのに、バカな先生を追いかけてるってっ!!」

≪・・・・・・ほう、そこのところを詳しく聞きたいですね≫

「ヘイハチ・トウゴウですよね。ルール違反ばかりを繰り返す最悪な社会不適合者。フェイトさん達の足元にも及ばないダメな人。
あなたがそれですから、きっとずいぶんとおかしい人なんでしょうね。アルフの話しぶりだと、相当らしいですし」





さすがにこれは聞き逃せなくて、私は止めに入ろうとする。

当たり前なことが出来ないから仲間になれないなんて、おかしいから。

なにより、今のエリオは私達まで一緒にして言ってる。それは絶対違うのに。



あと、あと・・・・・・恭文とアルトアイゼンが怖い。抑えてるみたいだけど、多分怒ってる。





≪ほう、それはそれは・・・・・・中々に楽しい発言をしてくれますね。
あのクソ犬、解体して鍋にしてやりましょうか≫

「アルト、やめときなよ。あんなクソ犬の肉なんて解体したら、刃が腐る。
てーか、食べてもきっとまずいだろうし、意味ないって。・・・・・・レールガンで木っ端微塵にしてやる。」




キャー! 多分じゃなくて、本当に怒ってたー!! や、やばい・・・・・・真面目に怖いんですけどっ!?

とにかく・・・・・・そのヘイハチ・トウゴウという人のこと、私はよく知らない。本当に知らない。

でも、その人が恭文の先生で、大事な人なら、今の発言は許しちゃいけない。絶対に、だめ。



だけど、ティアが私の肩を掴む。掴んで・・・・・・首を横に振る。そして、口を開いた。





「エリオ、アンタ・・・・・・恭文と戦いなさい」



そして、こう言い放った。それを全員、ビックリした顔で見る。



「勝ってコイツに言う事聞かせなさい。ただし、恭文が勝ったら、アンタは自分のそんな考えを捨てる。
・・・・・・いいえ、もう一度だけ、本当にそれでいいのか考える。それだけでいいわ」

「ティアさんっ!?」

「ティア、いきなり何言い出すのっ!!」

「アンタ達は黙ってて」



視線で制されて、私とキャロは口を塞ぐ。そして恭文は、変わらぬ瞳でティアを見る。



「てゆうかエリオ」

「はい」

「アンタ、自分のそういう感情がチームの和を乱す要因になってるってこと、気づいてないでしょ。
私達は確かに局員だけど、別に正義の味方でもなんでもない。むしろ、正しくなんてないのよ」

「ティアさん、なんでそんなこと言うんですか?」



エリオが、本当に疑問があるという顔でティアを見る。



「正しくなかったら、局が認められるわけがない。そうだ、正しいから、僕達はここに居られるんです」



ティアが頭を抱える。あまりにエリオが強情過ぎて、戸惑ってるんだと思う。でも、ちゃんと話を続ける。



「だけど、コイツの事を、隊長達もそうだし、私も認めてる。もちろんスバルも」

「エリオ君、私も同じだよ」

「キャロまで」

「・・・・・・庇ってるわけでも、なんでもない。私は、ちゃんと認める事にしたの。
あの時の自分が、なにもしなかったことを。あと・・・・・・恭文さんのことも、全部」



エリオが固まった。私とティア、恭文は、真剣な顔でエリオを見ながら話すキャロの言葉を聞く。



「私も、恭文さんも、エリオ君もティアさんもスバルさんも、みんな・・・・・・みんな、同じように間違ってたんだよ?」



今まで私が聞いたことのないくらいに強くて、厳しくて、そして・・・・・・悲しい響きを含んだ言葉を。



「私達は、現実から逃げた。隊長達に全て押し付けて、自分の手で変えなくちゃいけない『今』から逃げた。
あそこで絶対に止めなくちゃ、あの人に私達の大切なものは全て、壊されるだけなのに、信頼という理想の中に逃げ込んだ」



視線が恭文に映る。そして、恭文はそれを真っ直ぐに受け止める。

逃げも、言い訳もせずに、真っ直ぐに。



「恭文さんは、『今』から逃げなかった。だけど、私達を振り切った。きっと、恭文さんは早くに結論が出ていた。
なのに、私達と一緒に考える選択を、真っ先に捨てた。全部、自分とリイン曹長と、アルトアイゼンだけで決めた」

「・・・・・・そうだね。うん、その通りだ」

「まぁ、私達が『今』から逃げてたから、ここは当然だと思う。捨てられて、当然だとも思う。
余り言えないけど、それでも一応は合ってはいると思うから。・・・・・・あのね、エリオ君」



キャロは、エリオに言葉をぶつけ続ける。きっと、心の奥底で願ってる。

この言葉で、止まる事を。エリオの妙なフィルターを、砕けることを。



「恭文さんだけが、絶対的に悪いわけじゃないの。自己擁護するようだけど、私達だけが悪いわけじゃない。
あの場に居た私達みんな、悪いの。本当に殺すしかなかったのか、私達はみんなで、きっと抗い尽くしてない」





・・・・・・だから、私は納得出来なかったんだ。多分、ティアもだ。

私達は、その答えを出す事から逃げた。だけど、逃げていたのは恭文も同じ・・・・・・なのかな。

キャロの今言った通りなら、恭文は『私達と答えを出す事』から逃げた。『今』からは逃げてないけど、それでも。



・・・・・・まぁ、私達の状態が状態だったから、ここはあんまり言えないのは、私も同感かな。





「色々考えて、ようやく分かった。私達は、あの時にやらなくちゃいけなかったことがある。
それは・・・・・・『隊長達に任せれば大丈夫』なんて逃げる事でも、振り切ることでもない」





そう、私達はきっと、それから逃げた。ただ押し付けあって、振り切って・・・・・・抗う事から逃げた。

私達は全員、自分の道理を押し付けるだけで、違う事を受け止めなかった。

その場に居るみんなで、違うものを寄せ合って、一緒に考える事をしなかった。



そうして、みんなで今に抗って、そこから初めて出る答えを捨てた。





「取り返しが付かないからこそ、時間がないからこそ、みんなと一緒に考えて、どんな形でもいい。一つの答えを出すことだった。
私達は『今』からも、一緒に居る人達からも逃げずに、必死に向き合って、答えを選ばなくちゃいけなかった」



キャロは、少し俯いて『だけど・・・・・・』と呟く。そう、だけどなんだ。

だけど、私達はそれが出来なかった。その前のあれこれを含めても、それはダメだったんだ。



「それが出来なかった。だから私、それをちゃんと認めることにした。私はあの時、逃げた。フェイトさん達に、全部押し付けた。
だけど、もう逃げたくない。『今』からも逃げないし、どんなに辛くても、答えを出す事からも、絶対に逃げない。もう、振り切られたくないから」



そして、キャロは恭文を見る。見て・・・・・・少し笑いかける。

それから、真剣な表情に戻して、エリオをもう一度見る。



「例えそれで殺すしかなかったとしても、きっとそれなら背負える。
だから、エリオ君の言うことには頷けない。お願い、エリオ君も逃げないで」

「僕は逃げてなんてないよ」

「逃げてるよ。私達から、フェイトさんから、なにより・・・・・・エリオ君自身から逃げてる。
アルフやリンディさんの言葉と、管理局の正義を理由に、エリオ君は、自分で考えることから逃げてる」



そして、私とティア、そしてキャロを信じられないような目で見出した。恭文は、言わずもがな。

キャロの言葉は・・・・・・通じなかった。エリオはまだ、凝り固まっている。



「・・・・・・キャロ、もういいわよ。マジで通用しないらしいから。あのさ、エリオ」

「なんでしょうか」

「これは、アンタがコイツに吹っかけた喧嘩よ。だから、私達は一切関与しない。
そして、結果がどうなろうと、フェイトさん達にも、提督やアルフさんにも手助けさせない」



つまり、自己責任。例えコレでエリオ自身に不利益がかかっても、何もしないと言ってる。

そして、それには私達も含まれている。だから、ティアは暗に言ってる。『手出しはするな』と。



「どうなろうが同情もしない。泣きついてこようが、一切無視するしさせる。・・・・・・いいわね?」

「問題ありません。というより、僕は喧嘩なんて吹っかけてません」









「喧嘩を吹っかけてない?そりゃまたふざけた事ぬかしてるなクソガキ。」

≪・・・怒りを通り越して呆れしかでないな。あぁ、見ていて虫唾が走る。≫







・・・・・・すると、今まで傍観者に徹していたフレイホークさんと、その相棒であるバルゴラが口を開く。



その静かな口調から感じられるのは・・・・・・怒り。




≪・・・古鉄殿、このクソガキの相手は我々に任せてもらえないだろうか?お前達は、元凶を断ち切る事に集中しておけばいい。≫

「・・・これは、あなた達には関係のない事です。大体、あなた達は誰なんですか?」
















「俺か?俺はヤスフミの友達だ。そして、お前はヤスフミだけじゃなく俺達にも喧嘩を売った・・・・・・理由なんて、それだけで十分だ。」














◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・バカな喧嘩の舞台は、演習場。なお、ヤスフミのリクエストで演習場は森林地帯に姿を変えている。





夜の風が吹き抜ける。闇は深く、木々の合間に僅かに月の光が差し込む。

・・・・・・とりあえず右に飛んで、襲い来る槍を避ける。

それはクソガキの攻撃。ブーストで突撃と空中機動も可能とするむちゃくちゃな設計の突撃槍ランス






で、クソガキは木々の合間を飛んで・・・・・・訂正。高速で『跳んで』、俺の視覚外へと回る。





上から飛び込んでくる攻撃を、俺は軽く後ろに飛んで避ける。

クソガキは地面をその槍で貫く。貫いて、すぐにそこから離れる・・・カウンターを恐れたか。

また夜の闇の中に、木々を蹴って飛ぶ音が聞こえる。そして、徐々にその感覚が短くなる。





・・・・・・10時方向。俺は、右に飛ぶ。再び襲い掛かって来たのは、突撃槍ランスの切っ先。

それを避けると・・・・・・いや、まだ本当の意味で避けてなかった。

クソガキはブーストを切る。切って、地面に足をつける。というか、蹴った。





地面を蹴って、俺に振り向きざまに槍を叩き込む。










「はぁっ!!」





俺は、それをバルゴラの砲身で受け止めつつ跳躍し。そして、クソガキの後ろに回りこむようにして、その背中を取る。

取って・・・・・・何もしない。突撃槍ランスの右の補助ブースターに火が点いた。その勢いのまま、クソガキは身体を回転。

そして、左側から槍が襲ってくるのを、後ろに下がって避ける。数度突き出された槍を、身体の捻りだけで全て避ける。



勢い良く突き出されたそれを、左に動いて回避。続いて薙ぎ払いが来るけど、それも後ろに下がって回避。





「・・・・・・あれだけ大口を叩いておいて、それですか。」



不満そうに目の前の敵が言う。だから、嘲るようにして答える。



「・・・あぁ、なんだ終わりか。あまりにも攻撃が遅すぎて欠伸がでるんだが?それに、お前に本気を出すのが勿体無いんだよクソガキ。」

「またそうやってバカにして・・・・・・!!」



気配の中に怒りの色が混ざる・・・・・・だめだなコイツ、簡単に挑発に乗りやがる。




「やっぱガキだな。」

≪そうだな。≫





クソガキはその言葉に答えずにまた後ろに飛び、夜の闇に姿を消した。木々を蹴り、その合間を跳躍する音だけが聞こえる。

・・・・・・動きはほぼランダムに近い。パターンに陥らないように動き回ってる。



・・・やはり、才能はあるらしい。

あの年であれだけの動きが出来るなんて、驚きには値する。

・・・ただ、残念ながらそれだけだ。経験が、そして覚悟が決定的に足りない。





「・・・退屈だな、バルゴラ。」

≪確かに、あれで格上に渡り合えるなどと考えている・・・甘すぎるな。≫






バルゴラを肩に担いでそう考えていると、気配が変わった。鋭く、突き刺すようなそれに変わる。

木々の合間から聞こえる跳躍の音が、さらに激しくなる。

後ろから、横から、俺を貫くために槍が襲う。それを避けていく。



徐々にジャケットを掠めていく。攻撃の精度と鋭さが、増していってる証拠。





「・・・・・・ついて来れないですよね」



襲い来る閃光は、僕を嘲笑うかのように声を上げる。



「だから、さっきから虚勢を張ってる。・・・・・・これが、僕達の力だ」



それは、自分の優位を確信した声。闇の中で、雷光と一緒に僕に襲いかる。



「・・・・・・負けるわけがない。あなたなんかに、負けるわけがない。そして、あの人にも負けるわけがない」



どうやら、斬り合うことはしないらしい。確実にヒットアンドアウェイで、俺を仕留めようとしている。






どうも、速さなら自信があるようだな。だから、これだけの事が出来る。

雷光は木々の間を跳ねるように跳び、俺を惑わせようとする。



「アルフも言ってました。僕達の方が強いと。組織から、世界から、ちゃんとここに居る事を認められているから。
だから、あの人の味方をしているあなたは負ける。そうだ、僕達の方が魔導師として正しい事をして・・・「言いたいことはそれだけか?」・・・なっ!!」



そろそろウザくなってきたので、俺はバルゴラをエッジフォルムに変形させてジャック・カーバーを放つ。

その拡散した魔力は、確実にクソガキの身体を捉え、近くの木に叩きつけた。



「そんな、僕の速さに・・・・・・ついてこれるなんて!?」



で、また槍が飛ぶ。当然のようにそれを避ける。そして、間合いを取る。

夜の闇の中で、時計回りに歩きながら、踏み込むタイミングを計る。


・・・・・・だが、





「遅い。」

「ぐぅっ!?」





突っ込んできたクソガキに、俺はカウンターの要領でバルゴラのストックを叩き込む。続けざまに、魔力弾をしこたまぶち込む。


・・・今まで攻撃を仕掛けていなかったのは、このクソガキの力を試していただけ。

確かに、年齢の割には威力も動き方も一般の局員を超えている・・・だが、それだけだ。

速さも、攻撃の重さも、戦術も、すべてに置いてアリス姉の方が上。そんな人と模擬戦を延々とやらされた俺にとって・・・このクソガキは、脅威にならない。






「・・・・・・あぁ、クソガキ。お前、人の信念やらなんやら否定しまくってたんだ・・・・・・なら、同じことされても・・・・・・文句は言えないよな?」






・・・俺は、お前みたいな自分の価値観を押し付ける奴が・・・・・・死ぬほど嫌いなんだよ。















魔法少女リリカルなのはStrikerS Remix


とある魔導師と古き鉄と機動六課のもしもの日常


第3話 『The people with no name?/暴走の流星』










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





『てゆうか、お前ら止めろよっ! なんでこんな馬鹿げた模擬戦認めてるんだっ!?
フェイト、アンタはエリオの保護責任者だろっ! だったら、分かってるはずだろっ!!』

「分かってるよ。だから、止めないの。エリオ・・・・・・本当にどうかしちゃってるから」

『あぁもう、どうしてそうなるのさっ! 悪いのはアイツで、どうかしちゃってるのもアイツじゃないかっ!!』



立ち上がった通信画面の中から、アルフさんが声を上げる。だけど、私達は聞かない。

だって、言ってる事は分かるし、やる意味もちゃんとあるんだから。

なお、恭文君は別の場所で模擬戦を見てもらっている・・・流石に、今のアルフさんに会わせるととんでもないことになりそうだったから。



『そうだよ、アイツが全部悪いのは明白だろうがっ! とっととエリオに謝らせればいい話だろっ!?
『好き勝手してすみませんでした。僕は間違っていて、正しいのはみなさんです』って言わせろよっ!!』

「アルフ、いい加減にして。どうしてそんな風に思うの? 今のエリオを見て、おかしいとどうして感じられないのかな」

『だから、おかしいのはフェイトの方だよっ! どうして、自分の使い魔であるアタシの言ってることが分からないのさっ!!』



・・・・・・流すつもりだった。うん、そのつもりだった。でも、許せない。今の言葉は、許せない。

エリオ・・・・・・ううん、自分にだって非があるのに、それを認めようとしていない。





『お母さんもなんか言ってやってよっ! そうだ、後見人として止めてくれよっ!!
エリオが絶対に正しいだろっ!? 間違ってるのはアイツの方じゃないかっ!!』

『いいえ、何も言わないわ。だって、私達もみんな、やり方を間違えたから、言う権利が無い。
もし、その中で本当にだめな人間をあえて決めるとするなら、それはエリオの方よ。そして、私達だわ』

『お母さんっ!!』

『というより、アルフ・・・・・・あなた、本当にあの子に何をしたの?』



リンディさんが、とても厳しい視線でアルフさんを見る。

それに、思わず画面の中のアルフさんがたじろぐ。



『さっきはフェイトとの話の最中だったから、言わなかったけど・・・・・・あなた、エリオに色々と吹き込んでいたそうね。
それどころか恭文君を無理矢理にでも局に入れる事が、家長の私の意志でもあると、私やフェイト達の知らないところで、勝手に話を作った』










・・・・・・え?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「うおぉぉぉぉぉっっっっっっ!!」

「だから・・・遅いんだよ」

「がはっ!?」



・・・さっきと同じように突っ込んできたクソガキの槍をバルゴラで跳ね上げ、がら空きになった腹部にレオーのアンカージャッキを叩き込む。

蹴りと共に放たれたその衝撃は、叩きつけられたクソガキごと木々をなぎ倒していく。



「ぐ、うぅぅぅ・・・ぐっ!?」



動きが止まったクソガキに俺は小刻みに跳躍しながら近づくと、その頭をつかんで地面に叩きつける。



「・・・どうした。もう終わりか?」

≪拍子抜けだな。この程度の実力でヤスフミに挑もうとしていたのか・・・・・・よかったな私達が相手で。ヤスフミが相手なら、お前は今よりももっとひどい事になっていたぞ?≫

「・・・はああぁぁっっ!!」

「!?ちっ!!」



地面に頭を叩きつけたままそう呟くと、クソガキの身体から電撃が放たれる・・・・・・とっさに距離をとると、クソガキは突撃槍を構えたまま、狂気に彩られた瞳を見せる。







「・・・・・・僕達は間違ってないんだ。僕達の方が強いんだ。魔法は「守るための力」なんだ。それをあんな風につかうあの人や、それを庇おうとするあなたなんかに・・・負けるもんかぁぁぁっっっ!!」





そして、クソガキの持つランスのブースターが火を吹き・・・・・・俺へと突撃してくる。





・・・「守るための力」、だと?ふざけんな。





「・・・その「守るための力」で守れてない奴がいるくせに・・・」




俺はバルゴラを待機状態に戻すと地面を蹴り、紙一重でその突撃を避ける。そして、自分の拳にありったけの魔力を集める。





「偉そうなこと言ってんじゃねぇぇぇぇっっっっ!!!!」




紺色の光に包まれたその拳は、がら空きになっているクソガキの頬に突き刺さった。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「え、ちょっと待ってくださいっ! あの、母さんがアルフと一緒に、エリオに入れ知恵したんじゃっ!!」

「そうですよっ! 一体なんですか、それっ!!」

『・・・・・・やっぱり勘違いしてたのね。あのね、いい?
私はそんなこと、一切してないわ。アルフと一緒に、エリオと話してもいない』



・・・・・・えぇっ!? で、でもキャロとか、以前連絡した時の話っぷりだと、そういう感じでっ!!



『確かにあの子から相談はされたわ。・・・・・・あのね』





説明してくれたのは、母さんはあくまでも、エリオの自由意志に全てを任せたと言う事。あと、今回の一連の動きについて。

クロノや騎士カリムが、自分に何の相談も無しでヤスフミとリインを肯定したために、否定側に回る必要があった事。

そして、例え現実味が無くても、完全に否定するレベルの物でなければ、外から見て説得力が無かった事。



総括すると、どうやら本当に、アルフと一緒に話した事も無いし、扇動するようなこともしていないらしい。

母さん個人としては、あの状況ではもうどうしようもないというのが、考え。

むしろ、個人的な考えだけで言えば、ヤスフミに対しての想いは私達側だと、教えてくれた。



・・・・・・ちょっと待って? それって、なんかおかしくないかな。





「あの、母さん。その見解が出たのって、いつですか?」

『あなた達が騎士カリムやクロノと話した時よ。その時に二人は、恭文君を認めると返事しているわよね。部隊長であるはやてさんも居たでしょ?』



・・・・・・そうだ、している。そして、お兄ちゃんも騎士カリムも、ヤスフミとリインへのフォローも、しっかりすると確約してくれた。

つまり、あの段階では母さんは、まだちゃんと見解を出してなかったっ!?



『納得、してくれたかしら?』

「し、しました。私達が色々とこんがらがってたのは、かなり」





・・・・・・そういう部分でフィルターがかかっていたのは、今のエリオだけじゃなかった。

そうだ、少し考えれば分かる事だったのに、さっぱりだった。私達全員、冷静さを無くしてた。

相手の言葉や行動を曲解して受け取っていたのは、エリオだけじゃない。私達も同じだったんだ。



な、なんかだめだ。六課の裏事情とかの話があったから、最初から疑ってかかってたんだ。

というか、そんな状態でエリオに言葉が通じるわけがないよ。同じ穴のムジナなのに。

うぅ、保護責任者どうこうの前に、私個人が色々ダメだったんだ。というか、私達も罪が重いよ。



隊長である私達がこれだから、スバルやティア、キャロに他の隊員にも影響を与えてたのは、間違いないもの。





『それで、エリオには、さっきあなた達に話したような感じ・・・・・・のはずだったんだけど』



画面の中の母さんが、演習場の二人をそう言いながら見る。

・・・・・・それがどうしてこれになるのか、さっぱり分からない。



『あの、嘘じゃないのよ? そこは本当。だけど私、まずいこと言ったかしら』

「いや、私が聞く分には特に。なのはもそうだよね」

「うん。というより、それだと私達が言っている事と同じだよ?
ね、キャロ。キャロはエリオから何か聞いてないの? あと、スバルとティアもだね」



なのはが、隣で話を聞いていたキャロに声をかける。

キャロも、戸惑ったような表情をしている。あと、近くに居るスバルとティアも。



「私も知らないんです。その場に居たわけでも、話を直接聞いてたわけでもないので。
だから私も、ビックリしてるんです。エリオ君の話振りだと、そうとしか思えなかったのに」

「でも、それってどういうことですか? 私もキャロからそういう風に聞いて、失礼ですけど提督の影響かと思ってたんです。アルフさんは引退組ですから、影響力なさそうですし」

「そ、そうですよっ! だけどリンディ提督は、全部エリオが決めていいって言ったんですよねっ!?
だったら、エリオはどうしてアレなんですかっ!? おかしいですよっ!!」

『・・・・・・ねぇ、アルフ』



この件で残っているのは、ただ一人。そう、アルフだ。アルフがエリオと話したことは間違いないんだから。

なら、その原因は、アルフに聞けば全部分かるはず。母さんの話を聞いても、納得し切れない部分も含めて、全部だ。



『みんなと同じように、私も非常に疑問なの。説明してくれないかしら。というか、話しなさい』

「アルフ、ちゃんと説明してくれるかな。私も本当に聞きたい。
エリオに・・・・・・私の保護児童に、一体なにをしたの?」

『あの、えっと・・・・・・』

「アルフさん、私も一応六課のフォワードリーダーなんで、介入させてもらいますね?」



私も、母さんも、そう言った女の子の方を、ビックリしながら見る。

そう、ティアだった。ティアは・・・・・・物凄く怒っているようだった。殺気が身体中から溢れてる。



「・・・・・・てーかアンタ、うちのガードウィングに、一体何吹き込んだのよっ! ほら、早く答えなさいよっ!!
フェイトさんやリンディ提督の家の使い魔だからって、何でも許されると思ったら大間違いよっ! 勘違いしてんじゃないわよっ!!」

『なんだとっ!? お前、アタシの方が先輩なのに、なんだよその口の利き方はっ! 失礼だろうがっ!!』

「うっさいっ! そもそもアンタ、先輩は先輩でも、ただの引退組でしょっ!? 現役でもなんでもないじゃないのよっ!!」



そう言いながら、画面に詰め寄り睨みを利かせる。それも、相当厳しく。

それに、思わずアルフが後ずさりする。だけど、逃げられない。母さんが後ろにいるから。



「大体アンタのやり方、卑怯なのよっ! 結局は、リンディ提督やフェイトさんの権力に頼って、物申してるだけっ!!
アンタ個人の権力も、発言権も、全部空っぽもいいところっ! それで私達のやる事に、口出しすんじゃないわよっ!! 大体、なにっ!?」

『あ、あの・・・・・・ティアナさん? 少し落ち着いてもらえるかしら。それだと、ちゃんとお話が』

「さっきから聞いてれば、ずいぶんアイツの事を好き勝手に言ってくれるじゃないっ!!
アンタ、私の友達になんか恨みでもあるわけっ!? ふざけんじゃないわよっ!!」

『・・・・・・あの、もしもし? 聞いて・・・・・・ないわよね。えぇ、分かってたわ』










ティ、ティア落ち着いてっ!? さすがにそれは怒りすぎ・・・・・・あぁ、そのつや消しの目もやめてー! 寒気がしてくるよっ!!




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





・・・・・・吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた僕はゆっくりと起き上がると、目の前の敵を見る・・・・・・




握力はすでに弱くなっていて、身体も思うように動かない・・・・・・



・・・・・・でも、なぜか一番衝撃を受けているのは・・・さっきの言葉だった。




「・・・僕達の魔法で・・・守れてないって・・・どういう・・・意味ですか・・・」

「気づいてなかったのか?それは実に最悪だな」



目の前の敵は僕の言葉を聞いて、呆れたように首を振る・・・・・・僕はストラーダを構えつつも、次の言葉を待った。



「・・・さて、偉そうに魔法を「守るための力」と称したお前に一つ質問しようか。
 ある誘拐事件で人質となっていた少女を局員が救出しました。しかし、その少女は命こそ助かったものの犯人の暴力行為で心に傷を負っていました。
 ・・・・・・さて、お前の定義でいうなら・・・この少女は魔法で・・・「守るための力」で救えた事になるのか?」

「・・・そ、それは・・・」

「あぁ、わかりにくかったか?じゃあ質問を変えよう。「守るための力」・・・それでお前が「守るもの」はなんなんだ?










・・・・・・答えられない・・・・・・なぜ?


答えはすでに喉から出かかっているのに、うまく言葉にできない・・・・・・なぜ?


僕達の魔法は、誰かを守るためのもの・・・・・・そう言えばいい。


でも、それだと最初の質問は?その被害者の少女は、本当に魔法で・・・「守るための力」で救えたと言える?







・・・・・・落ち着け。落ち着くんだエリオ・モンディアル・・・・・・




そして、僕はゆっくりと言葉を紡ぐ。





「・・・・・・僕達の魔法は・・・誰かを守るためのものです・・・そして、最初の質問への答えは・・・その後、心の傷を癒すように誰かが助けてあげればっ!!」



・・・・・・そう、僕がフェイトさんに救われたように・・・・・・誰かがその子を救ってあげればっ!!






「残念、お前の答えはハズレだ。というか気づいてないのか?その答えじゃ、魔法では・・・「守るための力」では、救えなかったって言ってるのと一緒だ。」














・・・・・・コノヒトハ、イッタイナニヲイッテイル?











「・・・アフターケアが必要な時点で、それは守りきれていないのと一緒なんだよ。そして、お前の答えは矛盾しているぜ?ヤスフミに対しては、傷を癒すどころかさらにえぐってんだからな。」









・・・・・・ナゼ、ソコデアノヒトノナマエガデテクル?










「・・・ここまで来ると、怒りを通り越して呆れてしまうな・・・お前らが知ってるヤスフミは、平気で人を殺せるような奴なのか?そして・・・人を殺した事で、アイツが傷ついてないとでも思ってるのか?」









・・・・・・アタマノナカデ、ナニカガサケンデイル・・・・・・ミミヲフサゲ・・・・・・キケバ、ナニカタイセツナモノガコワレル










「はっきり言ってやるよ・・・・・・お前は直接的に力を振るってないにしろ・・・・・・「守るための力」で人を傷つけてるんだよ。」


























































































「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・う・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!」

≪Sir!?≫

















ズシャッッッ






















その何かを貫くような音で、止まっていた思考がゆっくりと動き出す。


目の前を見ると、フレイホークさんの左肩から・・・・・・何かが生えている。






・・・・・・いや、生えているんじゃない。







肩に突き刺さっていたのは、金色の魔力で刃を包んだストラーダ。


そしてそのストラーダを握っているのは・・・・・・僕、だった。






肩から吹き出る赤い色の液体が、僕の頭を急速に冷やしていく。






「あ・・・・・・あ・・・・・・」




・・・・・・ぼ、僕は・・・・・・いったい何を・・・・・・




「逃げるな」




思わず、ストラーダを抜き取ろうとする。けれど、その行為は他ならぬフレイホークさんがストラーダを掴む事によって止められた。


そして、フレイホークさんはいつの間にか右手に出現させていたライフルを、僕へと向ける。


その銃口には・・・・・・紺色の光が集まっていた。




「・・・自分のやった事を自覚しろ。力に恐怖しろ。そして・・・・・・自分が戦う意味をもう一度考えろ。」










そして、紺色の光が僕の視界を埋め尽くした。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





・・・・・・終わった、な。




バルゴラを支えにしながら、俺は左肩を抑えつつ地面に座り込む・・・・・・いくら突撃のスピードが速かったとはいえ、あんな錯乱状態の攻撃を馬鹿正直に受ける俺もまだまだか・・・・・・



・・・とりあえず、神経は傷つけてないと・・・思いたい。



≪・・・しかし、最後の最後を砲撃魔法で締めるとはな・・・マスターもなかなか成長したようだ。≫

「・・・かもな。でも、魔力はスッカラカンだ。」


最後に放った砲撃魔法「ストレイト・ターレット」は、俺の保有魔力が少ないため通常時でも一発撃つのが精一杯というなんとも燃費の悪い魔法だ。

しかもバルゴラ曰く、俺の魔力だけでは先生が使っていた時の10%ほどしか威力がないとか・・・・・・先生、どんだけ魔力使ってたんだよ。



・・・・・・やっぱ、カートリッジシステムぐらいは使えるようになりたい。俺の魔力が少ないのはなんとか改善しようとしているけどいっこうに魔力量が増える気配はないし、効率を上げるだけじゃそろそろ限界かも・・・・・・





「・・・・・・というか、何和んでるのさ。」

≪あなた達、本当に危機感ないですよね。さっさと止血しないとやばいですよ?≫




・・・・・・すると、ヤスフミとアルトアイゼンが呆れたような声をかける・・・お前ら、いつ来たんだよ?



「ジンがエリオを吹っ飛ばしてすぐ。まったく、ジンがてこずるようなら僕が直々にぶちのめしてやろうと思っていたのに台無しだよ。」

「・・・・・・うぉい、そんな言い方はないだろうが。」


・・・軽く回復魔法をかけつつ、ヤスフミはそんな事を呟く。

・・・・・・この野郎・・・・・・



「・・・さて、エリオも運ばないとね。」

≪私が言うのもなんですが、容赦ないですよねホント。いや、そうなるような理由はわかるんですが。≫




・・・そういや、こいつらと出会った依頼も・・・似たような奴が相手だったな・・・



「・・・とりあえず、医務室に早く行かないとね・・・シャマルさんが鬼のような表情で待ってるから。」

「ちょっと待て。なんか怖いんだけど、気のせいか?」








・・・・・・・・・そんな風にふざけあってる俺らだけど、問題は解決した訳じゃない。


俺はただ、あのクソガキが気に入らなかったから売られた喧嘩を買っただけ。




わざと挑発したり、もっともらしい事を喋って動揺を誘ったけど・・・正直な話、あれがクソガキに対する答えになるとは思ってない。


本当なら・・・ヤスフミが解決すべき事だったのかもしれない。事実、あのツンデレっぽいオレンジツインテールはそうしようとしていた。


・・・今回の事が、余計に事態をややこしくしないといいんだけどなぁ・・・










(第4話へ続く)




















あとがき



ジン「・・・結局、前回のあとがきはあまり意味を成さなかったと思うジン・フレイホークと」

エリオ「本家新訳Stsでもこっちでもなんだかんだで影が濃くなってうれしいエリオ・モンディアルで今回のあとがきはお送りしますっ!!」




(・・・そのぶっちゃけっぷりに、ちょっと引いている栄光の流星)




ジン「・・・・・・エリオ、マジで少し頭冷やせ。な?今はあれだけど、外典SSではきっとお前を中心にしたラブコメ展開があるから。」

エリオ「って、なんでラブコメなんですかっ!?それに、僕にはそんな展開になる人はいないですよっ!!」




(突如ブース内に広がる冷たい空気・・・その発生源は、桃髪の召喚士と妹キャラその1)




ジン「・・・・・・お前、なんだかんだでやっぱフェイトさんに似ているよ。あぁ、胃が痛い・・・・・・」

エリオ「・・・大丈夫ですか?」

ジン「誰のせいだと思ってるんだ誰の・・・・・・さて、今回の話なんだが・・・・・・」

エリオ「本家新訳Stsと同様に、僕との模擬戦ですね。こっちではジンさんが相手ですが。」

ジン「そうだな・・・・・・でもまぁ、正直作者の書きたいことは今回の話に集約されているんだよな。」

エリオ「そうなんですか?」

ジン「あぁ。『守るための力で守るもの』・・・これが、作者の書きたかった事なんだ。」

エリオ「『守るための力で守るもの』・・・・・・ですか。」

ジン「そ。フォン・レイメイ戦以後お前は魔法の事を「守るための力」と称していた・・・・・・でも、あの状況に関して言えば、ヤスフミはもちろん・・・お前達もその言葉通りに力を使えてない。」

エリオ「・・・それが、模擬戦での質問、につながるんですね?」

ジン「あぁ・・・あそこで人を殺す事に対して嫌悪感を募らせるのも、お前達側から考えればわかる。でも、お前達はその行為にばかり目がいっていて、それを行ったヤスフミの心情までは考えきれなかった。それが、少なからずアイツの心の傷を深くする。」

エリオ「・・・それが、僕達の魔法で守れなかったもの・・・」

ジン「・・・そして、お前やアルフさんは自分達のようになる事を、お前達の持つ「守るための力」をヤスフミが振るう事を望んだ・・・それは、「守るための力」でヤスフミを傷つける事と同じなんじゃないか?」

エリオ「・・・それは・・・」

ジン「・・・・・・・まぁ、あくまでこれは俺の考えだ。何が正しくて間違ってるのかなんて、誰にも分からない。俺の行動だって、違う視点から見りゃ・・・部外者が状況も知らずに口を出してるのと一緒だ。」

エリオ「・・・確かに、ジンさんはこのIFでは六課の隊員ではなく本当に部外者ですしね。」

ジン「八つ当たりな部分も結構あるし、あの質問の答えも正しいとは言えないしな・・・・・・ともかく、後はお前が今回の事でどういう答えを見つけるかだ。」

エリオ「・・・・・・僕に、見つけきれるでしょうか?」

ジン「断言はできないけど・・・・・・きっと、見つけきれるさ。」

エリオ「・・・・・・はいっ!!」




(なんだか愚痴っぽくなったけど、ここで終了。
本日のED 布施明『少年よ』)








[*前へ][次へ#]

3/4ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!