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頂き物の小説
第2話 『混迷の六課/栄光の流星、参戦?』

















「・・・・・・まずは昨日の一件についてだが、戦闘機人が現れたそうだな」

「うん。とりあえず確認されているのは、四人だね」





フェイトが画面を立ち上げる。そこに映るのは、髪を二つに分けたメガネっ子と、長い髪をお下げにした子。

そして、それを高速移動で助けたらしいのが一人と、地面を潜行することのできる奴が一人。地上でフェイト達とやりあったのがコイツらだ。

なんでも、僕達が地下でどんぱちしてる時、まずメガネっ子とお下げがヘリを襲撃したらしい。



方法は、高エネルギーの砲撃による狙撃。それもエネルギー量はSランク。

それはたまたま廃棄都市部を調査していたジンが事前に阻止し、なのはとフェイト、そしてはやての三人で波状攻撃をかまして、追い詰めた。

追い詰めたのを、高速移動系の技能を使ったと思われる最後の一人が、救出したのである。

狙撃を行おうとしていたお下げの子は、ジンが確保寸前までいったのを、はやての広域空間攻撃に気を取られた隙に地面から現れた仲間によって逃げられたそうだ。



・・・・・・だから、ヘリはやばいって言ったのに。人の話を聞かないからそうなるのよ。

とにかく、歯車を模したテンプレートが、相手方の能力使用時に確認されてる。映像も残ってる。

そして、そのテンプレートはある特定の存在が能力を使うと発生するものだ。



それが、戦闘機人。恐らくだけど、ジェイル・スカリエッティの手駒。


「昨日の大量の幻影を出したアレも、ISインヒューレント・スキルでしょうか」

「この三人の内の一人が使った言う風に仮定して考えると、多分そうやろうな」



相手の能力の全容はまだ掴めていない。下手に確定するのは危険なので、はやてはこういう言い方をした。

砲撃がお下げ、高速移動ので一人。ギンガさんの話だと、戦闘機人のISは基本一人一つずつらしいから・・・・・・このメガネっ子か。



「・・・・・・中々厄介なのが出てきたわ。こりゃ一筋縄でいかんかもなぁ」

「厄介なのはそれだけじゃないよ。・・・・・・多分、召喚師を逃がしたのも戦闘機人だ」

「うん、多分そうやろうな。もうまるでどこぞのドンブラ粉みたいな感じで逃げたんやろ?」



あー、それそれ。まさしくそれなのよ。もう見ててビックリしたもの。

とにかく、あの場で現場に現れた戦闘機人はその四人。また能力に幅があることあること。



「その子が使ってるのは、物質透過能力の一種かな。魔法でもそういうのはあるけど・・・・・・」

「なんにしても、油断は禁物だな。それで・・・・・・恭文、リイン。
お前が交戦したというアンノウンについては、報告書通りか?」

「そうですね」

「その通りなのです」





話は、当然カリムさんとクロノさんにも伝わってるのだろう。だから、僕を少し苦い顔で見る。



僕も、きっと同じ顔をしてる。・・・・・・なんだかんだで、休日になってなかったと、場違いにも思ってしまった。





「フォン・レイメイ・・・・・・局の一級捜索指定を受けている、指名手配犯の一人。
恐らくだが、彼はスカリエッティの協力者だったのだろうな。だから、あの場に現れた。」

「でしょうね」



そうじゃなかったら、アレが突然なんの脈絡もなく、スカリエッティの一味と思われる召喚師を助ける形で出てくる理由が分からないもの。


・・・それに、ジンが廃棄都市部にいたのもアレの調査の為だったらしい・・・万が一ジンが遭遇する事になってたら・・・・・・だめだ、考えるのをやめよう。


「はやて、その辺りのことについての調べはどうなってる?」

「調べっちゅうても、手がかりが死体だけやからなぁ。残留物も、武装として使ってたデバイスだけやったし。
分かったのなんて、アイツがチート紛いのことしてたっちゅうことだけや」



ここに来る途中ではやてから聞いた。アイツ、生体改造を身体に施していたらしい。

で、その結果があの再生能力と尋常じゃない魔力量だ。



「しかもそのデバイスには、それらしい情報が一切残ってなかった」



僕が鋼糸で千切った右腕に握られた大剣、あれがそれだ。

はやての話によると、残ってたのは普通に入力されていた魔法のプログラムだけだったらしい。



「なんだかんだで、局の捜査人員との接触回数は多かったみたいだから、そのせいじゃないかな」

「なんていうか、用心深かったんだね。物的証拠を落として、逮捕の決め手になるのを防いでいた」

「恐らくそうだろうな。すると、そこからスカリエッティの情報を掴むのは無理か」





なのはとフェイト、クロノさんの会話を聞いて、少しだけ、俯く。



・・・・・・殺さなければ、情報が掴めていたかも知れないから。



それに気づいたカリムさんが、声をかけてくれた。





「恭文君、リインさんも大丈夫よ。ここに居る人間は、誰もあなた達を責めたりなんてしていない。
・・・・・・大丈夫だから、そんな顔はしないで?」

「「・・・・・・はい、ありがとうございます」」

「とにかくだ、フォン・レイメイに関しては正当防衛が成り立つ。というより、絶対に成り立たせる。
だから君達は安心してくれ。それで・・・・・・」



クロノさんが僕とリインに視線を向ける。



「お前達は、少々思うところがあるとは思う。だが」



だから、僕は・・・・・・頷いて答えた。



「大丈夫です」



・・・・・・うん、分かってる。

そういうのが必要な時もあるって、分かってますから。



「クロノさん、すみませんけど、よろしくお願いします」

「大丈夫だ、問題はない。リインも大丈夫か?」

「はい、大丈夫です。・・・・・・よろしく、お願いします」

「あぁ、任せてくれ。とにかく・・・・・・次だ」





そうして画面が立ち上がる。現れた空間モニターに映るのは、例の召喚師。

あとは、赤い髪のツインテールで、小悪魔っぽい・・・・・・・というか、某魔神っぽい服装の女の子。

ただし、この子は体長が違う。身長は30センチ。今のリインと同サイズなのだ。



あの時、あの男と一緒に現れて、とっとと『ルールー』と呼ばれた召喚師と一緒に撤退した。



・・・・・・次はこの子の話ってことか。





「はやて、師匠達の見解は・・・・・・やっぱり?」

「やっぱり・・・・・・やな。恐らくやけどユニゾンデバイスやな。アンタも同じやろ?」

「外見的特徴と、アルトのサーチの結果だけで判断するなら、多分間違いない」

「というか、まじめにリインくらいの大きさだったのです。・・・・・・まさかユニゾンデバイスまで居るなんて」





ユニゾンデバイス。魔導師or騎士ロード融合ユニゾンすることで能力を発揮するデバイス。

ま、リインがこれだし、僕もリインとユニゾン出来るんだけど。

でも、確かユニゾンデバイスって、適合するロードを探す手間とかもあって、どこも開発とかはしてないんじゃ。



ということは、この子・・・・・・どこから生まれてきたの?





「これも恐らくやけど、本当にオリジナルの融合騎かも知れん。ま、確証は無いんやけど」

「それでヤスフミ、スバル達からも一応聞いてはいるんだけど、もう一度確認。
この子が召喚師の子とユニゾンする様子、なかったんだよね」

「うん」





ユニゾンせずにあの場を離脱した理由。推測できる答えは、少なくとも二つある。

だからこそ、フェイトも僕に確認をしてる。

一つは、召喚獣が傷を負ったため。次は、あの子とこの子はユニゾン出来ない。



・・・・・・この場では姿を見せていないだけで、居る可能性がある。ちびっ子の融合相手ロードが。





「万が一この子に融合相手が居た場合、やっぱり恭文君が相手をするのが一番いいと言うのが、八神家の結論?」

「そうやな。もちろん、ヴィータやシグナムも居るけど、リインのユニゾンで一番能力出せるのは、やっぱり恭文やから。
・・・・・・つか、おかしいわっ! なんでアンタがうちら差し置いて一番リインのロードっぽく見えるんやっ!?」



いや、どうしてと言われましても。

僕だって、この能力はもらったものな訳でしてね?



「当然なのです。だってだって、リインは恭文さんの元祖ヒロインで、古き鉄なのですから」

「リイン、そういうことじゃないから。・・・・・・あぁ、はやてちゃん泣かないでー。
あの、これはもうどうしようもないから。仕方ないんだから」



・・・・・・あ、原因が分かった。



「誰も基本的には氷結魔法を普段使わないからじゃない? だけど、僕は使えるもの」

「そういう問題かっ!?」

≪Jack Pot!!≫

「大当たりちゃうわボケっ! マジでヤキモチ妬いとるんや、うちはぁぁぁぁぁぁっ!!」



・・・・・・うん、知ってる。それでちょっと申し訳なく思ってる。

だって、リインの勢いがすごいんだもん。リインもそれでいいって感じ出まくってるんだもん。



「とにかく、この辺りも108部隊と協力して、しっかり調査するよ。
色々と分かったことがあるから、きっと何か掴めると思う」

「そうか。なら、よろしく頼む」










・・・・・・とにかく、こんな話をした後で話は本題へと入った。





内容は・・・・・・六課設立の裏事情。














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とある魔導師と古き鉄と機動六課のもしもの日常・外典


第2話 『混迷の六課/栄光の流星、参戦?』























◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
















「・・・という訳で、君の機動六課への出向は拒否されました。」

「・・・・・・それって、わざわざ呼び出してまで言う事ですか?」



・・・あれから二日後、俺はレリスさんの部屋でそんな報告を聞かされていた・・・


俺が六課に出向できないのは、お偉いさん方が難色を示したから、らしい。

・・・・・・それはそれで問題ある気がするが・・・どうなんだ?



「・・・まぁ、あくまで君が六課に出向することを拒否されただけで捜査自体はこちらで勝手にやらせてもらうつもりですし、その過程で・・・六課と協力をすることにもなるでしょうね。」

「・・・・・・つまりこの展開は予想通りって事ですか?」


俺の問い掛けに、レリスさんは笑顔を見せる・・・うわ、あくどい顔だなぁ。


≪・・・だが、それでいいのか?その場合だと、マスターが何かやらかした時に責任をとるのは君なのだが・・・≫

「別に構わないですよ?・・・・・・さすがにプライベートまでは責任を取れないですけどね。」



・・・・・・あぁ、なんとなく言いたい事がわかったわ。



「・・・あぁ、調査報告は口頭、または通信で結構ですから。それでは、これが依頼書です。」

「・・・確かに承りました。」





・・・・・・さて、どうしたものかね?俺には大暴れしろと言ってるようにしか聞こえないんだが・・・・・・むちゃくちゃだよなぁ・・・・・・





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




『・・・という訳でさ、レオーのデータが欲しいんだよ。』




・・・あれこれ考えていると、ちょうどうまいタイミングで当事者からの連絡が入った。



≪・・・対高濃度AMF対策か・・・確かにレオーなら、その穴を抜けることが出来るか。≫

「・・・分かった。こっちでデータを纏めて六課に持ってくるわ。」

『・・・え?普通に通信でもいいのに・・・・・・というか、やけにあっさりOKしたね。』

『本当ですよ。もう少しごねると思ったんですが・・・・・・』


・・・・・・ヤスフミとアルトアイゼンが驚きの声を上げるが、俺にだって理由がある。


「・・・いや、これでデータが流出なんて事になったら大変だしなぁ・・・あと、対価はもらうぜ?六課そっちの技術スタッフと設備をちょっと貸りたい。」

≪・・・マスター、何する気だ?≫

「いや、お前についてだ。なんでランチャーとエッジしか使えないんだよ?」



・・・・・・そう、俺の相棒であるバルゴラには、先生の手によってロックが掛けられている。それは、俺が使いこなせるようになったらバルゴラによって解除される仕組みのはずなのだが・・・・・・エッジフォルムが解禁されてからここ2年、うんともすんともいわない。

・・・さすがに、カートリッジシステムも使えないってのはどういうことだ?あれは、魔力量が少ない俺にはぜひとも必要なんだが。



≪・・・確かに。ロックは外しているのに作動しないからおかしいとは思っていたが・・・≫

『・・・・・・なるほどね。なら、部隊長には説明しておくよ。』

「あともう1つ。データは渡すけど、それを無条件で使っていいのはお前だけだ。まぁ技術スタッフにはデータを見られるのはしょうがないとして・・・バックアップとかとらせるなよ?」



・・・・・・六課に知り合いなんてヤスフミ以外にはいない・・・・・・見ず知らずの他人にそこまでやる義理はないしな。



『・・・それも説明はしておくよ・・・でも、取り入れようとする人は少ないと思うよ?下手に機能を入れても上手くいかない可能性もあるし。』

「・・・まぁ、念のためだと思ってくれ・・・それじゃあな。」



・・・・・・さて、ちょうど六課に行く口実もできたし・・・・・・データをいろいろ纏めますか。










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







廃棄都市部での現場検証にヘリで向かう途中、私はエリオとキャロと少しお話。

用件は、例の予言絡み。ただし、予言の事は伏せた上で。

この辺りは、余計な混乱を引き起こさないための処置なんだけど・・・・・・正直、心苦しい。





というか、はやてのことは責められないね。普通に私達も巻き込んでるもの。

エリオとキャロを除隊という形には出来ない。代わりのメンバーを探すのが無理だから。

なにより、スターズの二人とのコンビネーションの練度の問題もある。





もう、引けない。知っていても知っていなくても、誰も六課と言う一つの舞台から降りる事は出来ない。

あの舞台に立った役者である私達は、フィナーレまで踊り続けるしか道が無い。例え、どんな結果になっても。

あと、なのはと一緒に母さんと話したけど、謝られるばかりでさっぱりだった。あぁもう、イライラする。





私、今度という今度はカチンと来てるよ。局に母さん、クロノのやり方もそうだけど、それだけじゃない。

こんな状況に大事な子達を巻き込んでしまった自分自身にも、イライラしてる。

私は、こんな事がしたくて局に入ったわけでも、執務官になったわけでもなんでもないのに。





私、本当に何してるんだろ。なんだか、分からなくなってきたよ。










「・・・・・・地上本部に、テロの可能性?」

「スカリエッティが・・・・・・ですか?」

「そうだよ。うーん、この辺りの事はヤスフミが居てくれると、説明とかはとても助かるんだけど」



エリオが一瞬、本当に嫌そうな顔をしてしまったのを、私は見逃さなかった。キャロも、少し戸惑い気味。

だけど、それでもエリオのフォローのために、変わらない様子で話してくれる。それはありがたかった。



「フェイトさん、どうしてそこで恭文さんなんですか?」

「ヤスフミ、地球にある警備部隊で戦闘訓練を定期的に受けてたの。特に魔法とは関係のない組織でね。
・・・・・・その関係で、テロとか犯罪関係のやり口、かなり詳しいんだ。下手をすれば私よりも」

「フェイトさんよりも? でも、フェイトさんは執務官で捜査関係強いのに。
あの人は、局員にすらなれないただの嘱託じゃないですか。ありえませんよ」





確かに、普通に見れば今のエリオの言う通り。

その上ヤスフミはこう・・・・・・捜査スキルというものが極端に低い。

だって、事件があったら普通に巻き込まれて元凶と戦って解決というパターンが主だもの。



つまり、捜査をせずに事件を解決出来る。ヤスフミが仕事を手伝ってくれると、私も捜査活動が全く無い。



まぁ、書類の処理やらなんやらは助かるんだけど・・・・・・アレ、いいのかな? 色々とおかしいとは思う。





「ヤスフミが強いのは、捜査スキルとかそういうのじゃないんだ。
ガジェットや銃器のような、機械・質量兵器関係。あとは、運用技術だね」

≪その組織は地球にある関係で、その辺りについては管理局よりも対処が徹底しています。当然、彼もそこは教わっている。
そのために、魔法を使わない技術を犯罪・・・・・・いいえ、戦闘に用いる場合の理論は、Sirよりも精通しているかも知れません≫

「そうなんですか・・・・・・」



・・・・・・やっぱり、距離感が微妙だよ。本当は仲良くして欲しいのに。うぅ、はやて恨むよ?

ヤスフミに面倒な仕事押し付けたりするから、余計に話がややこしくなってるんだもの。



「とにかく、地上本部の守りは鉄壁。ちゃんとした防衛バリアが備わってるから。
だけど、それは絶対じゃない。バリアはあくまでも、魔力で構築されたものだから」

「フェイトさん、ならそれは・・・・・・消せますよね? ガジェットには、AMFがあるから」

「そうだよ」



魔法至上主義。ヤスフミが何回か言っている言葉。その弊害が、ここにも出ている。

重要拠点のバリアそのものすら魔力で構築しているから、AMFが絶対的な優位を保ち続ける。



「現在の管理局法では、AMFを使われると攻め込まれた時に脆い」



設備もそうだし、人も同じ。まさしくAMFは、魔導師殺しもいいところ。

それは私達も同じかな。完全キャンセル化状態にされたら、対抗策が無い。



「だけど、魔法以外の力で戦力は、導入出来ない。
魔法以外の技術を使うのは、質量兵器禁止法に触れる危険があるから」

「質量兵器・・・・・・僕、聞いた事あります。ボタン一つで、子どもでも使えて、そのせいでいくつも世界が滅びたとか」

「ええと、私は詳しくないんですけど、フェイトさんが話しているのは、魔法に頼らないで広範囲に攻撃出来る武装・・・・・・と考えればいいんですか?」

「うん、それで大体合ってるよ」





やっぱり、ヤスフミが居てくれると助かるかな。私、自分の説明に自信が持てない。

この辺りについては、きっと私よりもしっかりとした話をしてくれるだろうし。

とにかく、簡潔に説明することにした。まず、エリオが言うようなことが、管理局設立前にあったこと。



そのために、管理局が設立して、暦が新暦になってから、質量兵器を全面的に禁止したこと。





「ただ、厳しい審査を受けて、通った場合のみ所有が許されてはいるんだ」

「あ、僕も訓練校で教わりました。でも、それって今話に上がっているようなレベルのものじゃないですよね?
えっと・・・・・・そうだな、前に一緒に映画を見に行った時に出てた、ガンマンが使ってるような拳銃」

「そうだよ。だから、アクション映画に出てくるようなロケットやマシンガン、バズーカなんてもっての他」





だけど、理由はどうあれ警備組織にとって戦力は絶対に必要なもの。そのために、管理局は一つの手を取った。

クリーンで安全で、非殺傷設定という有効な使い方が出来る魔法エネルギーを推奨した。

それがきっかけで、次元世界に魔法文化が一気に根付いたこと。質量兵器根絶が、局の理想になったこと。



本当に簡単になんだけど、二人に説明していく。二人は、真剣にそれを聞いてくれている。





「・・・・・・まぁ、社会と歴史の勉強は、とりあえず置いといて」

「「あ、すみません」」

「とにかく、地上本部を標的に、そんなテロが発生する可能性は、実はかなり高いの。
もしかしたら六課もレリック絡みじゃなくても、出動するかも知れないということ。分かった?」

「「はい」」





二人は、素直に頷いてくれた。それが嬉しくて、少し微笑む。



・・・・・・本当は、ヤスフミにもこんな顔をして欲しいのに。





≪もし、質量兵器やその運用に関してより詳しく、実地的な話が聞きたいなら、彼を頼るといいでしょう≫

「あ、そうだね。さっきも言ったけど、恭文はその辺りに本当に詳しいから」

「・・・・・・でも、フェイトさんやなのはさん達だって居るし、必要ないですよ」



やっぱり、エリオは恭文を相当嫌ってる。言葉の端々からそれが感じられる。

どうしたらいいのか、困ってしまう。ヤスフミはきっと・・・・・・言い訳なんてしないし。



≪それでも、彼です。戦闘者としての完成度で言えば、Sirや高町教導官、八神部隊長よりも上ですから。あなた達も、得られる部分は大きいと思います≫

「・・・・・・ありえないよ、それ。だって、あの人はランクだってフェイトさんやなのはさんより下だし」

「エリオ、それは違うよ。ヤスフミのランクは、本人が『めんどくさい』と言って昇格試験を全く受けてないからあのままなんだ」



エリオが目を見開く。キャロも、同じ。・・・・・・そう言えば、この話してなかったかも。

というか、もしかしてヤスフミもしてなかった? だから驚いてるんだ。



「そして、ランクは8年前から変わってない。というより、実力的なことで言えば、魔導師になった直後から今のエリオ達と同じくらいだった」




私がそう言うと、二人がビックリした顔になる。疑問と驚きの色に満ちた目で私とバルディッシュを見る。



「とにかく、ヤスフミは私とかよりも色々知っていることが多いんだよ?
機会を見て、話してみたらどうかな。そうしたら、今までとは違う一面が見られると思う」





二人は、苦い顔で頷いてくれた。うん、エリオは本当に苦い顔をしていた。



いや、それだけじゃない。・・・・・・念話が届いたから。





”フェイトさん、一ついいでしょうか”

”うん、なにかな”

”もっとあの人に厳しくするべきなんじゃないですか?
またあんな勝手な真似をされたら、みんなに迷惑じゃないですか”



・・・・・・本当に、エリオはヤスフミが嫌いらしい。

声から嫌悪感がありありと感じられた。そして、それを隠そうともしていない。



”僕達は局員で、部隊員。常に正しくあるべきです。でも、あの人はそれが出来ていない。あの人も、それを庇うフェイトさん達も、間違っています。
・・・・・・殺すことは、ただ傷つけるためだけに大事な力を使う事は、ダメなんです。リンディさんやアルフも、僕と同じ意見でした”



母さんとアルフに、いつの間にか相談してたんだ。あぁ、そうか。だからこれなんだ。

エリオの中のヤスフミを否定する感情が強くなったのは、二人のせいなんだ。



”エリオ、ヴァイス陸曹の話を聞いてなかったの? 私達みんな、何も言う権利はないよ。
私もそうだし、エリオやスバル達だって何もしなかった。違う?”

”分かってます”

”だったら”

”みんなが昔馴染みだから、あの人を庇いたいのは分かります。
でも、アルフもリンディさんも言ってました。それは違う、間違った優しさの使い方です”



何だろう、頭痛がしてきた。というより、気分が悪い。

今のエリオに何を話しても、無駄だと思ってしまう。私は、保護責任者だけど、それでも。



”フェイトさん、ダメですよ。僕達は、正しい行いが出来てる。そうだ、僕達は正しい。だったら、あの人もそうするべきなんです。
フェイトさんも、本当はそう思うでしょ? だって、あの人は間違ってて、正しいのは局。そして、局員である僕達なんですから”










私は、そのエリオの言葉に答えられなかった。念話が続けて来るけど、シャットアウトした。

頭が痛い。なんだろう、正直今のエリオの考えている事が良く分からない。何か怖いものを感じる。

ティアから、エリオの事はなんとかした方がいいとは言われてたけど、ここまでなんて・・・・・・。





これは・・・・・・前途は、多難だな。今の微妙な空気を越えなくちゃ、私が守りたいものは守れないもの。

エリオとキャロが安心して過ごせる場所、次元世界に住む人達の平和と安全。

部隊員達の将来。なのはの夢が詰まっている空。ヤスフミが守りたいと思っている今という時間。





全部を守るの、きっと凄く大変。それでも・・・・・・やらなくちゃ。

そこまで考えて思い出すのは、あの子の顔。とても強くて、優しい男の子の顔。

思い出すだけで胸が高鳴り、さっきまで感じていた寒いものが消えていく。





・・・・・・ヤスフミ、あの時何もしない言い訳なんて出来ないって言ってたよね。でも、私だって、同じなんだよ?

あの時も言ったけど、ヤスフミと同じ。ここで何もしない言い訳なんて、一つも出来ない。

バルディッシュ、お願い。力を、貸して。未来を消さないために、今を・・・・・・覆すために。





どうもこれは、私だけでどうこうって言うのは無理そうなんだ。協力してくれる?










”Yes Sir。・・・・・・しかし、Sir”





なにかな?





”彼からの影響が、日に日に強くなっていますね”






・・・・・・そうだね。自分でも不思議なんだけど、ヤスフミの存在がどんどん大きくなっていくの。



なんだか、おかしいね。特に何が変わったとかでは、絶対にないのに。





”いえ、色々変わって来ているんでしょう。それも確実に”



















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








「・・・・・・ドクター・スカリエッティ。私は別に、アンタ協力するのは構わないわ」

「そうか、それは嬉しいね。君は、娘達とも仲良く出来るし、ありがたいよ」

「ただし、条件があるの」

「・・・・・・ほう、なんだい?」

「私のお腹の中には、保険としてお父様のクローンが居る。アンタと同じようにね」



私の娘達の中には、一ヶ月ほどで生まれ、三ヶ月ほどで今の私くらいに大きくなるクローンを仕込んでいる。

古代ベルカの権力者の間ではよく使われた、自己保全のための手法だ。あの男もやっていたか。



「条件は、その堕胎か?」

「そうよ。お父様は話してなかったけど、自分の身体だもの。それくらいは分かる。
私の事をバカにしてるから、恐怖で抵抗も出来ずに自分を『産む』と思ってる」



そう、彼にはそういう部分があった。自身より下の存在を見下し、優越する。

なんというか、アレはいただけない。命の素晴らしさを全く理解していないよ。



「もうすぐ私を食い破ってくるこの『害虫』を、私の中から今すぐ取り出して、殺させて。
そして、他に『害虫』がないかどうか、アンタの力で調べて。あったら、それも全部殺して」

「それで、本当の意味で『父親』を殺す気かい?」

「そうよ。・・・・・・これが、私の復讐。まぁ、あのおチビちゃんに乗っかる形なのがアレだけどね。
てゆうか、ダメだと思わない? 自分のコピーを仕込んでおくなんてさ、タマなしのすることよ」



彼女は、中々に面白い事を言い出した。隣に居たウーノが何か言いたげだが、私はそのまま続けさせる事にした。



「戦いってのは、たった一つしかない命を賭けてやるから意味があるし、楽しいのよ。
あの男は、その前提すら侮辱した。ハッキリ言って、そんな奴には存在する意味すら与えられない」

「あなた、言葉が過ぎます。ドクターに対して失礼な」

「いやいやウーノ、彼女の言う通りだ。そうだな、今の私や彼は自分自身すらも賭けていない。
そんな今の私達にはきっと、存在する意味が無いのだろう。もっと言えば、タマなしだ」

「ドクターッ!?」





・・・・・・目からうろこが落ちる想いだよ。確かにそちらの方がこの祭りは楽しくなる。

というより、不公平だな。私もある程度のものを賭けなければ、ゲームのルールを変えた意味が無い。

そう、これはゲームであり祭り。管理局と私達による宴だ。長い歴史の中で、これは一度あるかないか。



だったら、徹底的に楽しまなくてはいけない。そして、この手を取れば更に楽しめると、私に刻み込まれた欲望が告げている。





「堕胎手術は、私が責任を持って行おう。もちろん、それ以外の事は一切しない。
そして、『害虫』駆除も任せてくれ。私が調査し、手の空いた娘達でしっかりとやる」

「あら、意外ね。てっきり洗脳処置でもするかと思ったのに」

「なに、利害の一致だよ。私も彼の存在は少々邪魔だと思っていたからね。
それに、君の考えは実に興味深い。洗脳などして押さえ込む理由が分からないよ」

「なるほど。・・・・・・納得したわ。まぁ、それじゃあお願いね。
そこさえちゃんとしてくれれば、契約通りにしっかり働くから」










・・・・・・そして、すぐに彼女の堕胎手術を行った。あの男のコピーは、彼女の手でしっかりと『処分』された。

なお、他の『害虫』は存在していなかった。念のために彼のアジトは全て壊したので、心配はいらない。

もうこれで、あの歪んだ欲望が日の目を見る事はない。だが、それだけではない。





娘達に仕込んだ私のコピー。その全てを私は・・・・・・処分した。

2番のドゥーエには手が届かなかったが、暗号は送っておいたので、自分でなんとかするだろう。

ウーノとクアットロは不満そうだったが、これはこの祭りを最大限に楽しむための処置として納得してもらった。





なにより、勝てばいい。今までの私からは考えられない、一見愚かとも思える手を取ることで、勝利の喜びは一際強くなるだろう。

現に今、私はとても充実している。そう、今まで感じたことのない感覚が、身体に溢れている。

命を賭ける・・・・・・こんなありふれた言葉がこれほどの高揚感を与えるとは思わなかった。





もしかしたら私は今、本当の意味での生の喜びを初めて感じているのかも知れない。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆












「・・・あ、ディエチ。ようやく新しい武器ができたっスね?」

「・・・・・・あぁ。前のよりも性能が若干上がっている・・・・・・今度は、負けない。」



・・・そして脳裏に浮かぶのは、あの赤みがかった茶髪の男・・・



次に会った時は・・・私が、必ず倒す。

















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








「・・・・・・・・・・・・飛天御剣流」





僕の居合いを寸前で足を止めて避けたスバルは、そのまま僕に突っ込む。だって、今なら攻撃の直後で隙だらけだから。



だから、僕は前へと踏み込み、スバルの右わき腹に向かって、徹も込みな一撃を、逆手に持った鞘で叩き込んだ。





「双龍閃、もどき」





森林をイメージした演習場のど真ん中。そこから衝撃と、ドンという音が伝わる。それに、スバルが口から透明な体液を吐く。

飛んできた拳は、僕の左頬と髪を僅かに掠めるだけに終わった。それにより、頬が少し切れる。

それに構わず、そのまま鞘を振り抜いた。それにより、スバルの身体は後方へと吹き飛び、木に叩きつけられる。



木が衝撃でスバルの体の形にヘコむ。スバルは、そのまま地面へと蹲るようにして崩れ落ちた。





「・・・・・・漫画にあった技で倒される気分はどう?」





スバルが苦しそうに息を吐きながら、僕を見る。





「ま、漫画って・・・・・・恭文、ふざけないでよ。
私、言ったよね。全力でやろうって」

「バカじゃないの?」





鼻で笑ってやる。いや、嘲笑ってやる。



あんまりに言ってる事がズレてるから、ついやってしまう。





「全力を出して欲しかったら、出させてみろよ。
僕はお前に、自分の技を出してまで倒す価値は見出せない」



スバルが睨み気味に僕を見る。だけど、構わずに言葉を続ける。



「てゆうか、甘いんだよ。僕が自分の技の利点欠点を知らないとでも思った?
それを補填するための技を、僕が何一つ保持していないとでも?」



確かに、狙いは良かった。速度も十分、威力も恐らく十分。

でも、それだけ。そう、スバルの拳はたったそれだけだった。



「いい加減分かれ。・・・・・・これが、守るために力を使うと言ったお前と、壊すために力を使うと言った僕との差だ」





抜き・・・・・・抜刀術が、一撃外せば大きな隙を作るもんだってことは、僕が一番良く分かってる。

それを防ぐための瞬(またたき)の極(きわみ)までの連撃であり、超零距離抜刀術である断(たち)であり、これだ。

てか、先生に覚えておくようにと言われたもん。先生、るろうに剣心好きだから。・・・・・・そうだ、僕も九頭龍閃とか練習しようかな。



とにかく、さっきも言った通り中々にいい感じだったけど・・・・・・それだけだ。



スバルの拳じゃ、僕と『お話』なんて10年早い。





≪開始から五分。まぁ、予想よりもった方じゃないでしょうか≫

「だね。・・・・・・んじゃ、納得してもらおうか。もうこれは仕方ないよね。
だって、今のお前じゃ、僕と『お話』なんて逆立ちしたって無理なんだから」

「そんなこと・・・・・・ない」





スバルが立ち上がる。ふらふらと、立ち上がりながら左手で自分の口元を拭う。



足がふらつく。ふらつきながらも、真っ直ぐに僕を見据える。見据えて、構える。





「まだ、やれる」

「そんなに、自分と同じじゃなきゃ不満なわけ?
また傲慢だね。傲慢過ぎて吐き気すら覚えるわ」





僕は別に違ってていい。同じである事も嬉しいけど、違うこともまた別の喜びをくれるから。

違うから、触れ合ったり仲良くなったり、知っていくのが楽しいって、フェイトに教えてもらった。

フェイトとは、喧嘩ばっかりで、相性悪くて、だけど・・・・・・それでも通じ合えると嬉しかった。



だから僕は、人と自分が同じじゃなきゃいけないなんて思わない。バラバラでいい。





「違う。違うよ・・・・・・」



スバルは首を振りつつ、僕を真っ直ぐに見る。見ながら、口を動かす。



「違わないでしょ。エリオがいつも視線で言ってるみたいに、おかしいからとか思ってればいいよ。
別に僕はそれをどうこう言わないし、気にしない。だって、他人事なんだから」

「違うよっ!!」



少し挑発気味に言った言葉に、スバルは叫びでそれを止めた。

荒く、息を吐きながらも真っ直ぐに僕を見る。瞳には、先ほどよりも強い意志。



「・・・・・・それは違う。エリオはあんな感じだけど、私にはそう思えない。ギン姉、言ってた。恭文は、すごく強いんだって」



ギンガさん、またどうしてそんな・・・・・・別に僕、強くなんてないのに。てか、ギンガさんの方が強いでしょうが。

それに、スバルもだ。僕には、力を守るために使いたいなんて、真っ直ぐには言えない。



「私、ホントバカだからさ。正直、それがよく分からなかった。だから、ずっと迷ってた。私、きっと恭文のこと傷つけた。
謝ろうかとか、普通にしてようかとか、色々考えて考えて・・・・・・それでもやっぱり答えは出ない。今も、出ない」



スバルの右手のリボルバーナックルから、カートリッジがロードされる。



「だから、ぶつかる。・・・・・・どうして、そんなに強いのか、もっとちゃんと知りたいから。
終わってない。まだ、何にも終わってない。だから、まだ倒れたりなんて、私には出来ない」

「・・・・・・分かった」



順手に持っていたアルトをクルリと回して、逆手に持ち変える。

それで、もう一度鞘に納める。



「スバル」

「うん」

超電磁砲レールガン使っていい?」



どうやら本気らしいし、僕もちょっと本気で応えたいのよ。



「それはやめてっ!? あんなの見切れないし防げないからっ!!」



そう、本気だ。だから、言いながらも納めて、構える。使うのは当然、抜き。

・・・・・・うん、使うのは『抜き』だ。僕が先生から教わった、正真正銘の僕の技。



「ま、そこは冗談だよ」

「冗談になってないよっ!! ・・・・・・じゃあ、なに?」

「・・・・・・僕は、お前やエリオ達に殺してどう思ったとか、そんな話をするつもりは一切ない。そして、お前らと同じになるつもりもない」



足に力を溜めていく。ゆっくりとすり足で、スバルとの距離を詰める。



「僕には、僕の決めた道がある。お前らが、力を『守るため』に使うと決めたのと、同じように。
その道を突っ走る邪魔をするなら・・・・・・叩き伏せる。間違ってようがなんだろうが、そんなの関係ない」

「分かってる。・・・・・・ううん、分かった」



今の僕達に必要なのは、言葉でも、想いでも、理屈でも、道理でもなかった。



「僕は傲慢なんでね。人に『自分を信じろ』なんて、軽々しく言えないのよ。
だから、僕を信じるかどうかは、そっちの勝手だ」

「信じるよ」



その子はアッサリと言い切った。言い切りながらも、足元にベルカ式の魔法陣が発生。

徹を打ち込まれた身体が痛むのを堪えつつ、僕にニッコリと笑った。



「私だって恭文と同じ。別に私達は、違っててもいい。同じじゃなくていいって思ってる。
なのに、納得出来なかった。どうしてかって考えて・・・・・・分かったんだ」



目の前に居るのは、戦う意思を示した一人の女の子。この子は強い。だから、笑う。

この一撃は、先に繋がるものを作るためのものだと、信じているから。



「私、まだ恭文のこと、ちゃんと知らない。なにも分からないことが、嫌なだけだった。
それが見られるなら、それが本当の恭文なら、私は信じるよ」



だから、言い切れる。笑顔のまま、言い切った。

僕は、この子より弱い。だから・・・・・・一言だけしか、返せない。



「・・・・・・そう」

「うん。だから、自己紹介。言葉じゃなくて、積み重ねたもので、今から二人で、『初めまして』をするの。
私達は、まずそこから。そこから始めて、認めて・・・・・・繋がっていきたい」

「スバル、やっぱバカだわ」



バカ過ぎてバカ過ぎて・・・・・・面白いとか感じちゃうのがアレだね。



「バカでいいよ。今目の前に居る恭文を信じられないで、何も見せられないが利口で、正しいことだって言うなら、私はバカでいい。間違っていていい」





言いながら、目の前の女の子は拳を固く握り締める。

握り締めて、力を、想いを込める。それを表すように、スバルの足元に変化が現れる。

足元に広がるのは、空色をした、三角形に剣十字のマーク。それは、ベルカ式の魔法陣。



マッハキャリバーのマフラーから、白い煙が出続ける。・・・・・・それを見て、楽しくなってきた。





「・・・・・・そうだ、それでいい。だから、恭文も少しでいいから、見せて。
私は見せる。バカで、間違ってる私の全部、そのまま見せるから」

「だが断る」

「断らないでよっ!!」










そう言いながら、僕達は笑っていた。・・・・・・風が、演習場に吹き抜ける。





そして、木々の枝から生えている緑色の葉が、それに触れ、飛んだ。





そのうちの一枚が、僕達の目の前へ飛ぶ。そしてさっきまで見えていた相手の顔を隠す。










「「・・・・・・はぁっ!!」」










スバルのローラーブレードの駆動音が響く。僕は、一気に右足を踏み込む。





そして、その葉・・・・・・いや、相手の得物目掛けて、互いの存在をぶつけ合った。





葉は、拳と刃に挟まれ、木っ端微塵に粉砕された。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








さて、レオーのデータも纏め終わり、ヤスフミに届けるために六課に来た俺だが・・・当の本人は、盛大に模擬戦をしている最中だった。


・・・さすがに、飛天御剣流もどきまでやるとは思わなかったが。



「ところでフレイホーク君。それは・・・?」



すると、たまたま案内をしてくれた高町教導官が俺の右手に持つアタッシュケースを指さしながら首を傾げる。




「・・・あぁ、気にしないでください。ちょっとヤスフミに見せたくて持ってきただけですから。」

「・・・そうなんだ。ちょっと、そのロゴに見覚えがあるから気になって・・・」



・・・・・・しまった、高町教導官は第97管理外世界の出身だったか。


アタッシュケースの表面には、英字で『SMART BRAIN』とロゴ調で書かれている。


昨日、ヒロさんの知り合いが俺を訪ねてきて、その際に渡されたんだけど・・・・・・説明書を読んで、そのとんでもなさに軽くパニくった。




・・・・・・正直、使うような事態にはしたくないなぁ・・・・・・




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・さて、突然だが超電磁砲レールガンについて、前々回のおまけよりも詳しい解説をしたいと思う。

超電磁砲レールガンとは、フレミングの左手の法則を活用した攻撃である。

えっと、磁場(B)・・・磁場の働く方向。電流(e)・・・電流が流れる方向。力(f)・・・運動の方向の関係性だね。





二本のレールに電力を流して、この法則にあるそれぞれの力の流れの方向を決める。

なお、流れの関係性はググってください。図形とかここだと出せないんで。

とにかく、(f)・・・・・・運動の方向が、レールガンにおける弾丸の飛ぶ方向だと、覚えてもらえればいい。





僕やヒロさんが魔法でレールガンを撃っているのは、魔法のプログラムを活用して、この力場を再現しているのが理由。

そして、レールガンは一発発射する際の消費電力が多ければ多いほど、威力と飛距離を増す。

まぁ、このためには力場を構成するレールも、それ相応のサイズが必要なんだけど。これも、長ければ長いほどいい。





ただ、長くなければ撃てないというわけでもない。重要なのは、この力関係がちゃんと構築されていること。

だからこそ、ヒロさんみたいにアメイジアの形状変換を使ったりとかしなくても、僕は撃つ事が出来るのだ。

ただし、威力と速度は向こうに負けてる。なので・・・・・・こっちは、連射性と燃費性で勝負ですよ。





そして、レールガンには利点と欠点がある。まず利点を一つ上げると、それは初速スピード。

例えば、車やバイクに乗っている人は分かるだろうけど、運動する物体というのは、いきなり最高速に到達はしない。

だけど、レールガンはその限りじゃない。マッハ3出ると言えば、最初からマッハ3で発射される。





この初速は、回避を困難にするし、なにより威力にも関係してくる。

直撃を食らえば、その分の衝撃はもちろん、衝突時に発生する熱量までもがダメージに加わる。

戦車の装甲もそれで溶かしたって言う逸話もあるくらいだし、そこはバカには出来ない。





そして、欠点。まぁ、レールの破損の危険や、電力が必要ってとこは話したと思うので、別のを上げる。

それは、使用する弾頭に制限が出てしまうこと。レールガンの弾頭には、少し手を入れる必要がある。

電気抵抗がもたらす熱エネルギーによって、電気をそのまま通してしまう金属などは、溶けるのだ。





溶けた場合、弾丸は撃ち出されずに気化。場合によってはプラズマと化して吐き出されるだけとか。

そのためにヒロさんの場合だと、ゴム製・・・・・・絶縁体で作った弾丸を使っている。

で、それを伝導体の膜で覆うのだ。これなら、弾は溶けないし、外側が金属だから力場はしっかり形成される。





それだけではなく、気化した金属が生み出す圧力が、弾丸を撃ち出す手助けもしてくれる。

これは、普通の銃弾で言うところの弾薬の役割を果たす事になっている。

なお、僕は出力を調整することで、その辺りを防いでいる。





まぁ、色々お話したけど、僕のレールガンには、改善すべき点があるのだ。そこで・・・・・・。










「ちょっと待ったっ!!」





スバルとのバトルが終わって、僕は自分の訓練に入った。

それは、とールガンを完璧に使いこなせるようにすること。

なお、スバルとなのは、そしてレオーのデータを届けに来たジンまで居る。



で、スバルは・・・・・・。





「ぐー」





寝るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!





「スバルには、坊主の話は難し過ぎたみたいだな」

「・・・・・・ね、ティア。この子、座学は優秀だって聞いてたんだけど」

「一応ね。てーか、さっきので疲れてたんでしょ」

「納得した」



とりあえず、アレだ。スバルは気にしない方向で行く。



「で、なによ。ティア」

「いや、それはアンタだから。普通に『それで・・・・・・』って言う事は、あるってことよね。改善策が」

「うん」



あっさりそう言いきると、ティアが頭を掻き毟り始めた。・・・・・・なんでだろうか。



「アンタ、マジでこんなガチな質量兵器、使うつもり?」

「もちろん。大体、レールガンの利点はかなり多いのよ?
まぁ、少し真面目な話をさせてもらうとだよ」

「なによ」

「スカリエッティ一味が何もって来るかは分からない。
こっちも、多少アウト気味でも手札は欲しいのよ」



・・・・・・で、レールガンの利点の一つは、消費する電力量を調整することで、瞬時に威力の調整が可能。

さっきも言ったけど、電力が多ければ多いほど、威力と速度を増す。



「逆を言えば、消費電力が低ければ威力は低いってこと?
死なない程度の加減をしたりとか、そういうものが出来る」

「まぁね。ただ、今の僕はその辺りが一切出来ないけど」

「あぁ、だから練習が必要と」

「そういうこと」



あと、極端な話をすると、撃つのに必要なのは力場と電力と弾丸だけ。

だから、アルトの力を借りなくても、それさえあれば撃てるってのもあるよね。



「恭文君、出来ればレールガンはやめて欲しいんだけど」



不満そうなのが居た。そう、なのはだ。

局員として、教導官として、色々考えるところがあるらしい。



「てゆうか、はやてちゃんに怒られてたよね。レールガンを撃つ時に発生した電磁波のせいで、六課の電子機器に異常が出かけたって」

「大丈夫、アルトは無事だったから」

「それは、予めシャーリーに頼んでその辺りの対策立ててもらってたからだよねっ!? みんなのデバイスもちょっと危なかったんだからっ!!」



説明しよう、レールガンを撃つ時の力場が発生すると、強力な磁場が発生する。

それにより、電子機器が影響を受ける場合もあるのだ。



「何を言うか。相手が『ミッド電子レンジ大作戦』とか言って、地中に電磁波発生装置を大量に仕掛けてくるかも知れないでしょ?」

「一体なんの話してるのかなっ! てゆうか、普通にそれだとスカリエッティ達は悪の組織だよねっ!!」

「まー、いいじゃないですか、なのはさん」



なお、ヴァイスさんも居る。なぜかついて来た。



「レールガンってのは、男のロマンなんですから。俺も昔、考えましたぜ」

「そうなのっ!?」

「そうですよ。男は生まれた時から、自分だけの超電磁砲レールガンを既に持ってるんですよ。
そして、その超電磁砲レールガンでいつかでっかい花火を打ち上げてやりたいって、野望を持ってるんですよ」

「そ、そうなんだ。・・・・・・すごいね。私、ちょっと感動しちゃったかも」



・・・・・・ヴァイスさん、それはシモネタじゃないですか。

てゆうか、なのはが普通に感心してるの、どうするんですか?

これで他の人に触れ回ったら、あなたまたアルトさんに蹴り飛ばされますって。



とりあえず、顔を赤くしてにらんでいるティアと頭を抱えているジンは正解だと思う。で、スバルは・・・・・・寝てる。





「まぁ、俺はアウトレンジショット専門だったから、さすがにこんなのはダメって結論が出ましたが」

「確かに・・・・・・あんなのスナイプじゃないですよね。人質が取られてたら、巻き込んじゃいますよ」



ティアがそう呆れたように僕を見ながら言う。・・・・・・僕はみんなの向かい合わせに立ってるから気づいた。



「・・・・・・あぁ、そうだな」



そして、ティアはヴァイスさんから少し離れてるから、気づかなかった。ヴァイスさんが今、とても苦い顔をしていたのを。



「とにかくよ、レールガンの威力を上げるための解決策の一つで、今の僕がすぐ出来る事がある」

≪超伝導物質を使うんですね? 砲身・・・・・・はありませんから、弾丸用のコインを使う≫

「そうだよ」

「「超伝導物質?」」

「・・・・・・!?ちょっと待て。たしか超電導物質って・・・・・・」





超伝導物質とは、金属をある一定以下の温度まで、急激に冷やす。なお、もちろんマイナス何度ってレベル。

そうすると金属は、その性質を変える。電気抵抗(電気の流れにくさ)が、限りなく0に近くなるのだ。

ちなみに、高温だと電気抵抗が多くなり、低温だと少なくなる。



あと、流れた電気量が下降することもない。実際に、レールガンの改良点にはこういうのもあるのだ。

ただ、本来ならアルトの言うように砲身を超電導物質にするんだけど、今回は弾丸でそれをやる。

普通にどうなるのかかなりドキドキである。拍手で『とールガン』の名称と一緒に来てたけど、それでもドキドキだ。



というわけで、早速やってみよー!!なお、ジンの顔がひきつってるのは気にしないっ!!





「なのは、結界お願いね。多分、相当火力出るから」

「い、いや・・・・・・あの、お願いねってなにっ!? そしてアレ以上火力出るってどういうことかなっ!!」

「さぁ、やってみよー」

「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

「つか、マジで止めろっ!!ただでさえ威力高いってのに、超伝導物質なんか使ったら洒落にならんからっ!?」



・・・・・・なお、結局撃たなかった。威力がどれだけ出るのかという話になって、吐いた。

黙ってようかと思ったんだけど、吐く事にした。だって、ティアが怖かったし。



≪超伝導レールガンならば、準光速攻撃になって、コイン一つで数十万から数百万トンの衝撃ですね。
多分、連射すれば現在の最新型の次元航行艦くらいは、すぐに落とせますよ≫

「「・・・・・・数十万から数百万トンっ!?」」

「・・・・・・坊主、こりゃあさすがに俺らも許可出来ねぇって。普通に対艦船・要塞用の攻撃じゃねぇか」



もともと、レールガン自体が対人戦の枠飛び越えてるしなぁ。

ヴァイスさんがすっごい呆れた顔で言うのも、分かるのよ。



「これ、魔導師の魔法障壁でも防げ・・・・・・ないよなぁ」

「アンタ、防げると思ってんのっ!? 数十万から数百万トンなんて・・・・・・普通に無理よっ!!」

「しかも、準光速攻撃だから、基本回避も無理だよねっ!? というか、こんな衝撃が直撃したら、普通に人なんて消し飛んじゃうよっ!!」

「・・・なぁ、マジで超電導物質は止めろ。そもそも、それだけの威力を持っていて発射台お前に影響が出ない訳がないって。確実に大怪我以上の被害が出るぞ?」

「だよね、うん分かってた」




ぶっちゃけていい? さすがに腰を抜かしかけた。

そんなの、普通に対人兵器の枠を飛び越えてる。対要塞・艦隊戦用の武器だ。

というか、やっぱりコインを冷やすのは色々問題が出て来るかも知れない。



そして、僕は思った。この破壊力を見て、考えた。

世界の色々な流れとか都合を。考えて、思った。

だから、僕はティアやなのは、ヴァイスさんにこう言うのである。





「・・・・・・これは封印するわ。てーか、危な過ぎるしチート過ぎる」



なんか、どうして管理局が質量兵器を禁止したのか、ようやく理解出来たわ。

確かにこれは危険だ。魔法文化推奨したくなるって。うん、魔法至上主義万歳だわ。



「そ、そうだね。そうした方がいいよ」

「てーか、撃つ前に確認してマジでよかったわ。そんなの、チート過ぎるし」

「まぁアレだ・・・・・・坊主、お前のレールガンは、そのまんまでいいって。そのまんまがきっと素敵だと思うぞ?」

「ぐー」

『そしてなぜこの状況で寝れるっ!?』


















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・今日、恭文と模擬戦しました。それで、ようやく友達になれたかなと思います。






あと、ガジェットが出てきました。だけど、ちょうど近くに居たエリキャロとフェイトさんが、ずばばーんと倒して、解決しちゃいました。

最近、特にレリック反応も出てないのにガジェットが出てくる事が多いです。

なのはさん達は、何かのテストかも知れないって言ってたけど・・・・・・まぁ、大丈夫か。きっとみんな居るし、なんとかなるって。うんうん。





それでそれで、さっきティアと恭文とフレイホークさんと四人でご飯を食べて、今までで一番楽しいお食事が出来ました。ギン姉にも報告したいと思います。





・・・・・・・・・・・・まるっと。










「・・・・・・スバル、それは一体どこの作文?」

「そうよ。てゆうか、その作文思考やめなさい。前に報告書を作文調で書いて、怒られたの忘れたの?」

「え、この犬っ子そんなことやったのっ!?」

「えぇ」



あぁ、あったあった。あれだよ、若気の至り・・・・・・犬っ子ってなにっ!? 恭文、私をそんな風に思ってたんだっ!!



「まぁ、訓練校での事務訓練の時になんだけどね。
教官から『他の人が読んでも分かりやすく、簡潔に』って指示されて、それなの」

「・・・確かにわかりやすくて簡潔だけど・・・報告書では駄目だろ。」




・・・・・・空はもう真っ暗。ガジェットが夕方に出てきた事以外は、実に平穏無事な一日だった。

というか、そこは持ち出さないで欲しい。私もなんであんなことしたのか、今振り返るととっても疑問なんだから。

あ、でも教官から『文面はだめだが・・・・・・ただ、趣旨を一番的確に捉えてはいる』って誉められたのはうれしかったなー。



私達は三人で色々お話をして、隊員寮に戻る途中。



・・・・・・月は、昨日よりも優しい輝きで、世界を照らしている。それが、なんだか嬉しい。





「でも、リイン曹長居ないのは違和感あるね。最近、ずっと一緒だったし」

「そうよね。てゆうか、なんでアンタ専属みたいになってんのよ。あの人、部隊長補佐のはずなのに」

「やっぱりあれかな、元祖ヒロインだから側に居ないのは寂しいとか」

「違うから。てーかあの元祖ヒロインってのやめさせたいんだけど、どうすりゃいいの?」



その少し疲れた表情の恭文の言葉に私とティアは顔を見合わせて・・・・・・こう口にした。



「「無理じゃないかな」」

「即答っ!? てゆうか、ハモりがまた半端ないねっ!!」

≪当然でしょ。あなた、リインさんをさて置いて幸せになれるとでも?
てゆうか、もうリインさんと付き合えばいいんですよ。ラブラブすればいいんですよ≫

「・・・ヤスフミ、お前マジか?どんだけ本命以外にフラグ立てれば気が済むんだよ?」



リイン曹長は、恭文が来てから一番変化したように感じる。というか、完全プライベートモード?

いっつも恭文にラブラブ光線送ってて、大好きだって言ってて・・・・・・あまあまだよねー。



「付き合えるかボケっ! つーか年齢っ!!
あの子まだ8歳よっ!? 倫理的にも八神家的にも問題でしょうがっ!!」

「・・・・・・あぁ、それは確かに。それやったら、アンタマジでロリコンだもんね」

「ただ、恭文はともかくリイン曹長は」



あー、うんうん・・・・・・。うし、喉の調子はオーケー。

それじゃあ、いってみよー。



「『それでも大丈夫ですよ? リインは、恭文さん大好きですから♪』って言いそうだけどね」

「「あ、今の似てた似てた。というか、クリソツ」」

「ホントに? いや、ありがとー。
実は、前々から可愛いから練習してたんだ。好評でよかったよ」

≪・・・・・・あなた、なにしてるんですか≫



アルトアイゼンの言う事は気にしない。だって、仕事の合間の息抜きだもの。問題ないよ。



「で、マジな話・・・・・・ずっと一緒なのって、ユニゾン出来るのが原因?」

「うん。はやてや師匠達もユニゾン出来るけど、僕との方が相性も能力も高くなるの」

「へぇ、だからなんだ・・・・・・って、あの恭文? 恭文って部隊長達の家族だっけ」

「違う。・・・・・・お願いだから、そこは触れないで? 特にはやてが気にしてるのよ。
なんで自分や師匠達より僕の方がロードっぽく見えるのかーってさ」



とにかく、私達は隊員寮の近くまで来た。

部隊長にそこは触れないようにしておこうと考えつつも・・・・・・気づいた。



「ね、レールガンってどういうのなの?」

「「「え、今更そこっ!?」」」



・・・・・・こんな風に三人にツッコまれながらも、私はもう一つ気づく。

前方で海を見ながら、身体を震わせている二人が居る事に。



「・・・・・・ね、あれエリオとキャロじゃない?」

「あ、ホントだ」

「スバル、ティア、行こうか」



そう言って、恭文が二人を気にせずに・・・・・・って、ダメ。

私は恭文の右手を掴んで、それを引き止める。



「恭文、だめだよ。ちゃんと話さないと」

「そうよ。てゆうか、無視されかけたからって自分までやるってどういうことよ。アンタ、器量狭すぎ」

「うっさい、器量が狭いのは元からだ」



なんか平然と認めたっ!?



「・・・・・・てゆうか、二人とも勘違いしてるって」



私とティアは、その言葉に顔を見合わせる。というか、どういうことかと視線で恭文に言う。

恭文は、呆れたような顔で言葉を続けた。



「いい? 二人とも空気を読みなよ。子どもとは言え、二人は同年代の男の子と女の子。
それが二人っきりで海見てるのよ? 僕達が話しかけるのは、完全にKYじゃないのさ」

「・・・・・・あ、なるほど。ようするに、二人がいい雰囲気だったら邪魔する事になると」

「そうそう」





その言葉に納得しつつ、私達はもう一度エリオ達を見る。



見て・・・・・・違和感を感じた。





「ね、あれ雰囲気いいの? なんていうか、普通に悲しみのオーラが滲み出てるんだけど」

「あぁ、それならあれだよ。きっと別れ話なんだよ。
・・・・・・いやいやっ! 一体いつの間に二人付き合ってたっ!?」

「一人でボケて一人でツッコむのやめてくんないっ!? なんか見てて寂しいからっ!!
・・・・・・てゆうかさ、マジで声かけましょうよ。あれ放置はまずいって」

「・・・確かになぁ・・・」



私達は、声を潜めつつそんな話をする。そして、また二人を見る。・・・・・・やっぱり、泣いてる。

私の目、普通より色んなものが見えるから、注意深く見ると分かる。二人とも、泣いてる。



≪・・・・・・ほら、あなたがモタモタしてるから強制イベントが発生しちゃったじゃないですか。
難易度きっと高いですよ? これがだめだと、フェイトさんルートも消失ですよ≫

「うわ、それは嫌だなぁ。しゃあない、介入行動に移りますか。
そして破壊だ破壊。ソレスタルなんちゃら張りにそんな消失フラグを破壊だ」

「アンタマジで何するつもりっ!? そしてソレスタルなんちゃらってなにっ!!」





とにかく、エリオとキャロを四人で引っ張って(エリオは嫌がったけど、私とティアが納得させた)、話を聞いた。



それは、フェイトさんとのこと。恭文が苦い顔をしたのは、気のせいじゃない。





「・・・・・・そう言えば、今回全くフェイトと絡んでないっ! てゆうか、前回もそうじゃんっ!!」

「アンタ、どんだけフェイトさん好きっ!? 普通にもっと他に可愛い子居るでしょっ!!」

「居ないっ! 僕はフェイト一筋なのっ!!」

「アンタ、マジでムカつくわねっ! 一回殴っていいかしらっ!? えぇ、いいわよねっ!!」

「・・・ランスターだっけ?コイツがハラオウン執務官意外に目を向けるなんて、それこそ驚天動地な出来事だ。そうじゃなかったら、コイツは「恋の敗残兵」と呼ばれていないから」

≪確かにな。≫

≪・・・・・・あなた居たんですか?≫

≪ずっとマスターの首元にぶら下がっていたが!?≫

≪気にするな、我が下僕≫

≪そして、いつ私が古鉄殿の下僕になったっ!?≫




どうやら、ティアと恭文はすっごく仲良しみたいです。いいことだと、思いました。

フレイホークさんも、なんだかんだで面白い人みたいです。




・・・・・・まるっと。



















(第3話に続く)




あとがき


ジン「・・・・・・え〜、新訳Stsにアレが出てきたからって安直に同じような展開を持ってくる作者はバカだと思います。」

バルゴラ≪いきなりとんでもない事をいいだすなマスターは。≫


(栄光の流星、いきなりとんでもない発言をする・・・・・・そんなにあれか、ラブコメ展開にもっていきたいのか。)


ジン「何をどうしたらそんな考えに行き着くっ!?というか、なんで俺までスマー○ブレインロゴの入ったアタッシュケースを持っているっ!?」


(それはあれですあれ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ノリで。)


ジン「ふぅざぁけんなぁぁぁぁっっっっ!?!?」

バルゴラ≪・・・落ち着けマスター。なにも次回の展開までそうと決まった訳ではないだろう?≫

ジン「・・・ハァッ、ハァッ・・・いや、そりゃそうだけどさ・・・」

バルゴラ≪・・・それに、素でマスターとエリオが模擬戦を行う事になったら・・・少々まずくないか?≫

ジン「なにが?」

バルゴラ≪マスター、レオーを対人で使用するのか?≫

ジン「・・・・・・あ。」

バルゴラ≪・・・・・・さすがに最大出力では放たないとしても、それでもかなりの威力を発揮するぞあれは・・・・・・≫


(それもあります。現に、第3話は書きかけですけど書き直そうと思っていたり・・・・・・)


ジン「って、もう書き始めてるの!?」

バルゴラ≪なるほど。展開に詰まってディケイドクロスアフターに走った訳だな。≫

ジン「・・・俺はこれからどうなるんだ?」



(栄光の流星の疑問には答えずに終了。
本日のED 平野綾『God knows...』)


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