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頂き物の小説
第1話 『イレギュラー発生/栄光の流星、登場』


















・・・・・・それは、たまたま引き受けた依頼だった。



以前も仕事をもらったある執務官から、ヤバイ犯罪者がミッドチルダに姿を見せたという情報が入ったが、自分は他の件でミッドにいないので代わりに調査してほしいという依頼を受けた。



・・・・・・まぁ、あくまで調査だけなので戦闘はないはず・・・・・・実際に戦闘になったら俺じゃ太刀打ちできん。どんだけチートなんだよ。



と言う訳で、最後に姿を見せたという廃棄都市部を調査していたら・・・・・・とんでもない事態に巻き込まれた。











・・・・・・・・・・・・ひょっとして、ヤスフミの不運体質が俺にまでうつったか?

















魔法少女リリカルなのはStrikerS Remix


とある魔導師と古き鉄と機動六課のもしもの日常・外典


第1話 『イレギュラー発生/栄光の流星、登場』








◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





「インヒューレントスキル・・・ヘビィバレル、発動。」





・・・・・・ヘリの護衛に向かっている魔導師がスピードを上げているけど・・・これなら、私の方が速い。



「あと12秒・・・11・・・10・・・」

「フフフ・・・・・・!?ディエチちゃん、チャージを止めなさいっ!!」

「?クアットロ、何を言って・・・・・・えっ!?」



突然クアットロが叫ぶと、空中から紺色の魔力弾がこちらへと向かってくる。



「くっ!!」



とっさにイノーメスカノンを捨てて隣のビルに退避すると、イノーメスカノンは魔力弾によって破壊されて爆発を起こす・・・・・・けっこう気に入ってたのにな、あれ。



「・・・今の魔力光は・・・六課に所属する魔導師の誰でもない・・・」

「クアットロ、状況から考えても六課の魔導師には無理だ。」



・・・隊長陣はヘリの近くにいる2人とガジェットの迎撃に出ていて、フォワード陣はルーお嬢様の所・・・・・・こっちの攻撃に気付けた奴はいないはず・・・・・・








「・・・・・・あ〜、出会ってそうそうなんだが・・・・・・あんたら、そんな格好で恥ずかしくないのか?」

≪確かに、普通の感性ならそれで屋外を動き回るなど考えられんが・・・・・・露出癖でもあるのか?≫






・・・・・・とっさに後ろを振り向くと、そこには紺色のコートをつけた、赤みがかった茶髪の男が立っていた。


何より特徴を見せているのは、右手に持つライフルと両足のブーツに備え付けられている奇妙な機械・・・・・・いつの間に!?



「まさか・・・幻術魔法!?」

「いや、そんなの使えないし・・・ただ、ビルの壁を蹴って登ってきた・・・それだけだ。」

「・・・冗談にしては笑えないね。」

「・・・ま、そりゃそうか・・・とにかく、市街地での危険魔法使用と殺人未遂?で身柄を拘束させてもらうぞ。」



・・・この男も、管理局っ!?



「もぅっ!!イレギュラーなんて聞いてないわよっ!?」

「そんな事、言ってる場合じゃないっ!!」



私とクアットロはとっさにその場を離脱する・・・・・・これ以上は危険だっ!!



「逃がす訳ねぇだろっ!!」



そう叫ぶと、男はビルの床を蹴って・・・・・・!?なんだ、あのデバイスッ!?


男がビルの床を蹴るたびに、ブーツに備え付けられていた機械が動いて、爆発的な瞬発力を見せる・・・・・・なるほど、確かにあれならビルを蹴って登れる・・・・・・非常識だけど。


そして、ビルの上を跳躍することでしか移動できない私は当然追いつかれ・・・・・・


「・・・おらぁっ!!」

「うわぁぁっっ!?」

「ディエチちゃんっ!?」


・・・・・・衝撃を感じたかと思うと、私はビルの中へ叩きつけられる・・・・・・そして、男がバインドで私の身体を縛る。


「・・・くっ・・・」


・・・・・・クアットロは・・・そのまま逃げた?


「・・・・・・ったく。こっちは別件だってのに余計な事させるんじゃないっての。もう一方は・・・・・・あれって、ハラオウン執務官か?」

≪そのようだな・・・となると、あのヘリは『機動六課』所属なのか・・・ヤスフミと古鉄殿も確か出向していたな。≫


・・・・・・こいつ・・・本当のイレギュラーなのか・・・・・・そして、さっきから名前が出ている「ヤスフミ」って・・・・・・



「よし、ヤスフミに連絡してコイツ引き取ってもらおう。そして、俺は元の仕事に戻ると・・・・・・ちょっと待て。なんだあれ?」


突然影が出来たので穴の開いた天井を見上げると、そこには放電する黒い塊が・・・・・・あれってまさか・・・・・・


「高域・・・空間攻撃っ!?」

「はぁっ!?」

≪・・・多分、マスターもアンノウンとして認識されているなあれ。でなければあんなもの使わないだろ。≫

「冗談じゃねぇっ!!・・・・・・おい、いくぞっ!!」



そして、男はデバイスを待機状態に戻すと私を抱きかかえて・・・・・・え?


「お、お前なにするんだっ!?」

「うるせぇっ!!バインドを解除する訳にはいかねぇし、そのまま追いてくのも後味悪いんだよっ!!」


・・・・・・男はビルの窓を突き破って地面に降り、ひたすらに走るけど・・・・・・黒い塊の方が、広がるのが速かった。



≪マスターッ!!≫

「わかっているってのっ!!バルゴラ、レオーに全魔力収束っ!!」

≪了解っ!!≫



・・・・・・そして、男が地面を蹴ると・・・トーレ並の加速力が生まれる。



「うおぉぉぉぉぉっっっっっっ!!」



・・・・・・そして、男は黒い塊の範囲からギリギリで逃れ、私を抱えたまま地面を転がる・・・・・・た、助かった・・・・・・




≪・・・ところでマスター、いつまで彼女を抱いているつもりだ?≫

「お、おぉぉぉぉっっっっ!?わ、わりぃっ!!」



・・・・・・なんか慌てだした男は、慌てて私から離れる・・・・・・本当に、変な奴だ。



“ディエチ〜、そのままじっとしててねっ!!”

「なぁっ!?」



・・・・・・すると、地面から現れたセインが私を抱きかかえる。


「・・・ごめん、セイン。」

「いやいや、妹を助けるのは姉の役目ってチンク姉も言ってるでしょ?あ、ディエチを助けてくれてありがとね〜♪それじゃっ!!」

「・・・・・・助けてくれた事には、感謝するよ。」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




・・・・・・バインドで動けなくしていたあの女の子は、地面をすり抜けて現れた水色の髪の女の子によって連れて行かれた・・・・・・逃がした、か。




「・・・バルゴラ、あれ・・・なんだと思う?」

≪・・・・・・レアスキルの類か・・・それにしては、魔力反応がなかったのが気になるが・・・・・・しかし、ついにマスターも恋愛フラグを立てたようだな。これはバトル物の王道パターンだぞ?≫

「・・・・・・お前はなんでそういう方向に持っていこうとする?」

≪何を言う。彼女を抱きかかえて走ったではないか・・・このラッキースケベ。≫

「あれは違うだろっ!?だいたい・・・・・・」




「・・・こちら、時空管理局機動六課所属、フェイト・T・ハラオウンです。大人しく投降してくださいっ!!」





・・・・・・俺が上を向くと、そこには怖い顔をしているお姉さんハラオウン執務官がこちらにデバイスを向けている・・・・・・あぁ、やっぱりあいつらの味方と思われてた訳ね。



「・・・ハラオウン執務官。勘違いする理由は分かるんですけど、善意の協力者に対してそれはないんじゃないですかね?」

「・・・・・・何?」


俺はバリアジャケットを解除すると、ライセンスを取り出して降りてきたハラオウン執務官に見せる・・・というか、もう魔力が空っぽだ。


「・・・嘱託魔導師のジン・フレイホークです。ここにはレリス・ストライフ執務官の依頼で調査に来てました・・・・・・なんなら、確認とってもらっても構いませんよ?」



・・・・・・あ、なんかどっと疲れがでたわ。ホントになんなんだよ今日は。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・・・・・・・人が死ぬのを見るのは、別に初めてじゃない。

スバルと一緒に災害担当の部署に入ったのが、その理由。

だから、分かってる。人は死ぬんだと。兄さんもそうだった。





だけど・・・・・・人が死ぬのは見た事があっても、『殺される』のを見たのは初めてだった。

命が、奪われた。それも目の前で。それを成したのは、私達の顔見知りと上司。

刃が肉体を両断して、命を壊した。時間を、未来を奪った。





もしかしたら、これから先・・・・・・万が一にもあの男は更生したりしたかも知れない。

だけど、そんな可能性も消えた。アイツが、リイン曹長が、奪ったから。

拳を、強く握る。握り締めて、歯を食いしばる。感じているのは、怒り。





そう、怒りだ。多分それは、私達みんなが感じていること。

まぁ、私は少し違う色合いだ。・・・・・・悔しさと苛立ちが交じり合う。

全部を振り切った。アイツは、リイン曹長とアルトアイゼン以外の全部を振り切った。





・・・・・・なに、やってんのよ。










「なに・・・・・・やってんのよっ! アンタも、リイン曹長もっ!!
どうして、どうして私達のこと振り切ってこんな真似したのよっ!!」










返事は、返ってこない。アイツもリイン曹長も、アルトアイゼンもただ・・・・・・自分達が壊したものの残骸を見つめていた。








◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・・・・・・・・・・とりあえず、バカ弟子の以外フォワード陣は全員連れて、今からそっちに戻る。
リイン、シャマルはバカ弟子とちょっと話すから』

「そっか。・・・・・・で、そのバカ弟子とリインはどないな様子や?」

『平気にしてる』










ロングアーチのオフィス。自分の席で画面に映るスターズ分隊・副隊長の報告を聞く。

とりあえず、事後のそれとかこれは別として、長くて最悪な休日は一応やけど、終わった。

召喚師は逃がしてもうた。せやけど、レリックは無事確保。隊員達も全員軽症程度で済んだ。





・・・・・・平気な『ふり』をしとるあのチビスケとリイン以外は。そう、あの二人は・・・・・・深い傷を負った。

ヴィータが到着した時、アイツが襲ってきた相手がもう見分けつかんくらいの力で一刀両断にした直後やった。

恭文のジャケットは返り血と肉片塗れで、思わず息を飲んだそうや。てーか、普通に今日は肉が食えん。





そう、アイツは殺した。犯罪者と言えど、人を。また・・・・・・そう、また殺した。

スバルにエリオとティアナは叫んでアイツを糾弾するわ、キャロは崩れ落ちて呆然とするわで大騒ぎやったとか。

なお、ギンガは・・・・・・必死に耐えてる様子やったそうや。泣く事も、崩れ落ちる事も、糾弾する事もせんかったとか。





そして、アイツは・・・・・・ただ、自分の殺した相手の姿をじっと見とったそうや。目を逸らさずに、じっと。

自分のやったこと、取った選択、その結果を目に焼き付けようとしてたとヴィータが言っとった。

なので、その場から無理矢理引き剥がして、全員そこから脱出して、今に至るわけや。










『二人揃って平気な顔をしながら、シャマルの治療受けてる』





現場リーダーの指示を無視。味方内に遠慮なく攻撃・・・・・・こりゃ、またお給料カット期間が増えるな。

でも恭文、アンタがそこまでするなんて、うちちょっと信じられんのよ。特にスバルに本気で攻撃や。

なんだかんだでスバル達とも上手くやれとる感じやったし、なんでそこまで・・・・・・あぁ、そういうことなんか。



アンタがそこまでして危機感を持ったちゅうことか。それほど相手はイカレてたんやな。

そうせんかったら、誰か死ぬと思った。そやから、リインも覚悟決めて付き合った。

ちゅうか、付き合わん道理ないわな。あの子、アンタのこと大好きやもん。



・・・・・・家族としては色々ある。せやけど、うちは何も言わん。そもそも、うちは言う権利そのものがないわ。





『それを見てスバル達がまた火が付きそうだったからよ、無理矢理引き剥がした。・・・・・・部隊長、なのは隊長達には』

「もう連絡しとる」



さすがに話さんわけにはいかん。どうせすぐに分かることや。



「二人して呆然としとったわ」



そりゃそうやろ。知り合いがリアルタイムで殺しやったとか言われたら、そりゃあびっくりする。うちかて同じや。

それに・・・今回協力してくれた、フレイホーク君もやな。なんでも、恭文と友人やったらしいし。


・・・襲撃者からヘリを守ってくれたのに、うちは確認せんとディアボリックエミッションかましたしなぁ・・・しかも、それが原因で確保されていた襲撃者に逃げられてしまったらしいし・・・・・・あかんやんうちら。申し訳なさすぎるわ。


とにかく・・・・・・やることやろうか。うちもあのチビスケやリインと同じで、まだ止まれん。



「とにかく、お疲れ様。悪いんやけど、シャマルにはしばらくの間、リインと恭文のことお願いって伝えてもらえんかな」



やることの一つ。まずは部隊員のメンタルケアや。



「あのバカ二人、自分達だけで抱え込もうとしとる。仕事はなんとかしとくから、そこだけ頼むわ」

『・・・・・・分かった』





隊員のメンタルケアも一応の仕事。ここはしっかりやらなあかん。

もちろん、スバル達のフォローも必要やけど、まずは恭文や。

恭文はシャマルやリインに任す。スバル達は、うちらでやればいい。



アイツは、過去に同じことをやった。そして、それを最悪手で、間違いやったと思っとる。



今回は、リインを付き合わせた。今、アイツがどんな思いしとるか、正直想像出来ん。





『それではやて、バカ弟子達がやりあったチート野郎のデータはもう送ってるから、調べておいてくれよ。スバル達だって、バカじゃねぇ。
あの場で、自分達がやりあってたのがどんだけ危険な奴なのかとかが分かれば、問題はない・・・・・・はずだからよ』



言い訳やな。アイツは、多分そういうの嫌う。でもな、それが必要な場合も、やっぱあるんよ。

場合によっては、救いになったりなぁ。・・・・・・アンタだけの話やない。みんなにとってやで?



「分かった。そっちは任せておいてな。というか、もう調べてもらっとるから」

『なら、よかった。んじゃ、すぐ戻るから』





通信はそこで終わる。うちは背中を椅子に預けて、天井を見る。

・・・・・・あのバカ、平気なふりなんてする必要ないやろ。そんなん、うちらには無意味やで?

アンタがどんな奴か、ここに至るまでどんだけその手を取るまいと頑張ったか、一応分かってるつもりや。



恭文・・・・・・ごめんな、嫌な役回りばっかさせてもうて。うち、あかんなぁ。



ホンマどないしようか、これ。





「八神部隊長」





かかる声は、左隣に直立してたグリフィス君。我らが六課の縁の下の力持ち。

なお、さっきまでうちの代わりに現場指示を頑張ってくれた。

グリフィス君も、恭文とは友達。色々振り回されて大変やったと、笑顔で言うとった。



そやから表情にはやっぱ、動揺の色は見える。





「あぁ、大丈夫よ」




姿勢を正す。さすがにずっとグデーっとしとるわけにはいかん。

ここはお仕事場。しかも部下の前。部隊長モードはまだ継続せなあかん。



「・・・・・・なぁ、グリフィス君」

「分かっています」



うちが少しだけプライベートなお願いをしようとした時、グリフィス君はそう返した。

それにビックリして、うちは普通にグリフィス君を見る。グリフィス君・・・・・・少し、笑っとる。



「大丈夫です。僕もシャーリーも、ルキノも・・・・・・彼がどういう人間かは、よく知っていますから。もちろん、リイン曹長もです」





今、一人顔を青くしとるのを抜かした上で、そう確信を持った顔で言ってくれた。

そして、下のシャーリーとルキノも同じ顔でうちを見て、頷いてた。

身内贔屓と言われたらそれまでやけど、ここは勘弁して欲しいなぁ。



どっちにしろ揉めそうなんやし、本格介入のために味方は欲しいんよ。





「・・・・・・ありがとな」










そう、ここには味方が居る。アイツのことをちゃんと認めてくれとる味方が。

まぁ、権力持ちやから、あんまりに肩持つのはあれやけど。そないなことしたら、なのはちゃんとティアの問題の二の舞や。

でも、友達としては・・・・・・味方に決まっとる。恭文は、うちの大切な荷物のひとつなんやから。





でも、もうあかんかも知れんなぁ。うち、いくらなんでもアイツに面倒かけ過ぎやもん。





あはは・・・・・・さすがに見限られるわな。てーか、見限られん理由が分からんわ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・腕はもう大丈夫よ」

「背中も同じくです。というか、久々に傷だらけですね」

「そうね、それも二人揃って。おかげで治療のし甲斐があったわ。
・・・・・・出来ればなかった方がよかったけど」



廃棄都市部の一角に腰を下ろして、貫かれた腕の治療をようやく終える。

・・・・・・今のあの子は、完全な私服。ジャケットに付いた血も、完全に落とせてる。



「ただ、1週間程度は動かしちゃだめよ? それくらいは、三角巾で固定して、傷ついた筋肉を休ませる。
あとは変なものが身体に注入されていないかどうかも、すぐに調べてみるけど・・・・・・」





この場合、毒とか体調に変化を来たすナノマシンとかね。そういう手段は、ないわけじゃないから。

恭文くんもそうだし、そこまで深い傷を負っていないリインちゃんも、精密検査が必要。

というか、恭文くんはフォワードのみんなの中で一番の重症。すぐに聖王教会の医療施設に搬送ね。



・・・・・・ううん、本局の方がいいかしら。ヒロリスさん達が居るようなら、少し話してもらおう。





「多分大丈夫。クラールヴィントのサーチの結果では、なんともないから。
というより、もしあっても必ずなんとかするから、安心して。リインちゃんも同じくよ」

「はい、ありがとうございます」



そうして、あの子はいつも通りに笑う。笑おうと・・・・・・する。

どこか歪な笑みになるのが、悲しくて・・・・・・すごく、悲しくて・・・・・・。



「・・・・・・恭文くん」

「なに?」

「ここには、リインちゃんと私しかいない。だから、大丈夫」





私は恭文くんをまっすぐに見る。まっすぐに見て、手を伸ばす。



恭文くんが少し逃げようとする。それを私は、両腕を掴んで止める。



そのまま、強く抱きしめる。絶対に逃がさないように、強く。





「リインちゃんも、来て」

「え?」

「いいから」





リインちゃんは、恭文くんの頭の上に乗って、そのまま小さな手を動かして、優しく・・・・・・本当に優しく、撫でる。



自分じゃなくて、恭文くんを優先に考えているところに、少し苦笑する。やっぱり、絆は変わらないらしい。





「平気な顔、しないで。ちゃんと二人とも自分の気持ち、吐き出して。
もう、いいの。ギンガも、スバル達も居ないから」

「・・・・・・あの、大丈夫ですよ? 覚悟は決めてたんだし」

「ですです。リインが自分達で選んだ選択です。だから」

≪そんなの関係ありませんよ≫



その声は、今まで黙っていたあの子の相棒。胸元から優しく、だけど厳しく声を出す。



≪いいから、ちゃんと吐き出してください。・・・・・・重いんでしょ? 奪ったことが、そんな選択しか取れなかったことが。
いいじゃないですか、それで。それで、いいんです。お願いですから、私達の前でまで嘘をつかないでください≫

「アルト・・・・・・」

「アルトアイゼン・・・・・・だめ、ですよ。
そんなこと言われたら、リイン・・・・・・リイン・・・・・・!!」










恭文くんが私を見る。なので、私も優しく頷く。そこまでして初めて、あの子達から零れるものがあった。

二人は、そのまま泣き始めた。リインちゃんは声を押し殺すように、必死に耐えるように。

恭文くんは泣かない。でも、顔はちょうど私の胸に埋まり、ギュッと、私を抱きしめてくれる。





リインちゃんは私の服の生地を掴んで、顔を埋める。・・・・・・ようやく吐き出してくれた。





二人の想いを受け止めるように、私は優しく・・・・・・二人をまた強く、抱きしめた。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





「・・・・・・と言う訳で、報告は以上です。」



・・・・・・とりあえず、事の顛末を六課の隊長陣に確認を取った上で俺は依頼主に連絡する事にした。

目の前の通信モニターでは、俺の依頼主である黒髪の女性・・・レリス・ストライフ執務官が苦い表情をしている・・・


・・・本当なら直接会って報告をするべきなのだが、あいにくストライフ執務官がまだ任務から帰ってきてないので通信という形で報告をする・・・何の為に本局まで来たんだって感じだが。



『そうですか・・・まさか、機動六課のフォワード陣が遭遇するとは・・・・・・その蒼凪君には感謝ですね。手段としては最悪手ですが、彼の行動はとてもまねできるものではありません・・・本当に、強い人だ。』




・・・確認させてもらった限りじゃ、俺達が追っていた犯罪者は・・・死んだ。アルトアイゼンの映像記録から、ヤスフミ達と遭遇した事が確認できた。

なんでも、ロストロギアの確保に向かった際に遭遇し、戦闘になったらしい。



・・・・・・そして、アイツのヤバさを察知したヤスフミは・・・・・・最悪手をとる事しかできなかった。しかも、護りたいといっていた人リインさんを巻き込んで。



『・・・・・・ですが、蒼凪君の行動を受け入れられない人物もいるでしょうね。特に、管理局に配属されて間もない六課のフォワード陣ルーキー等は特に・・・管理局の「正義」では守れないものなど数多くあるというのにね・・・』



・・・確かに、フォワード陣の中にはヤスフミを糾弾した奴もいたらしいが・・・もしソイツに会ったら、俺はソイツを殴るかもしれない。



あくまで俺の意見だが・・・・・・アイツは管理局の法では裁けない。正しくは、たとえ法で裁けたとしても・・・いずれそれ以上の災厄をもたらす。

それに、状況から判断して奴はフォワード陣の誰かを捕らえる事を優先していたようだ・・・・・・なら、逃がせばそいつはまた狙われる。

・・・・・・だからこそ、ヤスフミはあの手段をとることしかできなかった。



そしてなにより・・・・・・ヤスフミは、人を殺す手段をとってしまった自分を責めている。


なんで・・・なんでそんな奴をさらに追い詰めるんだよ?好き好んで殺した訳じゃないのは、同じ現場にいたのなら分かるはずだろ?



『・・・フレイホーク君、君達が落ち込んでいても仕方ない・・・とりあえず、私が頼んだ依頼はここで終了という形にいきたいのですが・・・・・・』


・・・・・・なにか問題でも?


『・・・君が遭遇したという奇妙な2人組、それが気になります。君達の報告から判断すると「戦闘機人」のようですが・・・・・・どうもきな臭い。』




・・・確かに。俺達が遭遇したあの2人に・・・ヤスフミ達が遭遇したアイツと幼い召喚師に融合騎。これは・・・偶然なのか?




『奴はスカリエッティと繋がっていた。そう考えるのが自然ですがそうするとスカリエッティの動きが気になる・・・・・・フレイホーク君、追加の依頼です。六課と協力してスカリエッティを追ってください。必要な書類はこちらで準備します。』

「わかりました。」

『それでは、私はここで失礼します・・・頼んでおいてなんなのですが、あまり無茶はしないでください。君に何かあったらフィーネ先輩に顔向けできませんからね・・・』



そして、通信は途切れる・・・・・・まったく、あの人もお人よしだな。




・・・さて、とりあえずヤスフミのお見舞いにでも行くか。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





「・・・・・・やっさんっ!!」

「アンタ、怪我したって聞いたけど大丈夫なのっ!?」


・・・・・・本局の医療施設で怪我の治療をしていると、ヒロさんとサリさんが大慌てで中に入ってくる・・・・・・


「な、なんとか。・・・・・・ちょっとやらかしましたけど」

「そこはいいさ。シャマル先生から状況は簡潔に聞いた。てか、無事に戻ってこれただけで御の字だよ」


・・・・・・そっか。

2人の言葉に、おもわず胸が温かくなる・・・・・・ほんの少しだけ、さっきまでの気分が薄れた気がした。


「すみません、心配かけちゃって。・・・・・・あ、それとこれ」


・・・・・・だから湿っぽい空気を明るくしようと、ズイっと右手で袋を二つサリさんに差し出す。

「・・・・・・なんですか、これは?」

「サリさんが頼んだ同人誌です。あ、領収書は中に入れてますんで」

「あ、そ・・・・・・そっか。うん、分かってた。俺すっげー分かってたよ。でも、これは後にしないか? ほら、色々と今は問題が」

「えっと・・・・・・恭文さん、もしかしてこの人の同人誌のためにりゅうのあなに出入り禁止を食らったですか?」


・・・・・・そして、リインの発言がさらに状況をカオスにする。


「はぁっ!? 出入り禁止ってなんだよっ!!」

「サリエルさん、少し失礼します」



・・・・・・あ、シャマルさんが袋をふんだくった。そして、、中身を確認している。


「・・・・・・・・・・・・なにこれっ! サリエルさん、あなた恭文くんに一体何を買わせているんですかっ!!」

「・・・・・・・・・・・・きゃーなのですっ! これは一体どういうことですかっ!? あなたとは初対面ですけど、リインにキッチリシッカリ説明してくださいっ!!」

「い、いや・・・・・・あの、これはいや、色々と事情があってだなっ! あぁ、お願いだからその殺し屋の目はやめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


・・・・・・2人の般若が、サリさんに詰め寄る・・・・・・ふっ、計算通りっ!!


「・・・・・・でさ、やっさん。一体何があったのよ。その出入り禁止の話とかも含めて、今日あった事を詳しく聞かせな?」

「頼むからお前も助けろっ! 普通に二人の目が怖いんだよっ!!」

≪・・・・・・なんというか、カオスですね≫

≪ねーちゃん、これはいつものことだぜ≫

≪確かにそうだな≫




「ヤスフミ、大丈・・・・・・なんでヒロさんとサリさんまでいるのさ?」

≪・・・これはさすがの私もびっくりだぞ?≫

「・・・え、ジン坊っ!?」

「お前なんでここにっ!?って、ちょうどよかったっ!!俺を助けてくれっ!!」





・・・・・・あれ、ジンとヒロさんサリさんって・・・・・・知り合い?





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・さてと、必要な書類はこんなものでいいかな・・・」


・・・私は大急ぎで本局に戻ると、フレイホーク君への依頼に関する書類を纏めていた。



・・・・・・フレイホーク君を六課に向かわせようと思ったのには、いくつかの理由がある。


1つはやはり、スカリエッティと私が追っていた犯罪者のつながりを探るため・・・・・・確か、奴にはパートナーのような女性がいたはずだ。彼女が表に出てきていない以上・・・まだ油断は出来ない。


もう1つは・・・・・・機動六課そのものに関する疑問があるため。


隊長陣は裏技リミッターを使ってまでトップクラスの人材を集めているというのに、フォワード陣はある程度の力量を持ったルーキーというアンバランスさ。

さらに、後見人のハラオウン提督が隊長陣と親しい関係にあったり、ミッドに拠点をおいているのに本局所属など・・・・・・あまりにも不可解な部分が多い。



「・・・・・・六課には、本来の設立理由とは別の理由が存在する・・・戦力が明らかに以上なのはそのため。そして・・・それにスカリエッティが関わっているのか?」



・・・駄目だな、まだ想像の域をでない・・・とりあえず、フレイホーク君を六課に向かわせる・・・まずはそれからだ。







「・・・・・・しかし、このフォワード陣もルーキーとは言ったが・・・よくもまぁここまでの面子を集めきれるものだ。」


・・・そして私が眺めるのは、六課のフォワード陣に関する資料・・・それを読めば、奴と遭遇したときの対応に納得はいく。




・・・・・・君達は知らないだろうね。世の中には、魔法だけでは・・・「守る力」だけでは、守りきれないものもあるという事に・・・・・・






(第2話へ続く)





あとがき




ジン「・・・・・・ちょっと待て。作者の奴なにやってるんだ?」

バルゴラ≪いきなりどうした?≫

ジン「いや、なんで新訳StsのIFルートがスタートしてるんだよっ!?しかも、あとがきを書いている段階で元となった第6話が公開されて2日しか立ってないぞっ!?」


(マジな事実です。作者もびっくり。)


バルゴラ≪いや、それは確かにおどろきなのだが・・・作者がこれを書いた理由としては、やはり新訳Sts第6話を読んでいてフォワード陣の対応がどうも許せなかったというのがあるな。≫

ジン「・・・だから、そこだよ。そんなの、今からコルタタさんが書くんじゃねぇか。なんでIFルートって手段になってるかってのを聞いてるんだよ。」

バルゴラ≪それはそうだな。事実、作者も続きを楽しみにしているようだし・・・・・・だが、それでもこのIFを書きたいというのがあるんだそうだ。≫

ジン「・・・で、なんでだ?」

バルゴラ≪1つは、拍手返事107であったマスターとナンバーズor六課のサブキャラ陣ルートを作者が面白いと思ったこと。≫

ジン「ってまてぇっ!?ただでさえシグナムさんのIFルートもあるのにかっ!?っていうか雰囲気的にそっちと被りそうなんだけどっ!?」

バルゴラ≪まぁまぁ落ち着け・・・・・・もう1つはやはり、エリオ達の行動だな。≫

ジン「・・・・・・やっぱそこか。コルタタさんも7話のあとがきでまだまだゴタゴタするって言っていたしな。」

バルゴラ≪・・・ここからは作者の意見なのだが、作者はヤスフミの6話での行動、それに対するフォワード陣の対応自体に文句はないらしい。≫

ジン「そうなのか?」

バルゴラ≪そこは『奴』が出てきた時点である程度予想していたようだ・・・・・・だが、このシーンを読んで少々「ん?」と思ったらしい。≫




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


”まさか、自分達の手にあるもんが何も傷つけないで、純粋に誰かを守るためだけに使えるもんだって、本気で思ってるわけじゃないよね?”





そう言えば、実行は出来なくても納得はしてくれると思ってた。

いや、そうであってくれると楽だなと思ってた。

だけど、現実は悲しいことにいつだって思い通りにはいかない。



だから、エリオとキャロが口を開く。





”恭文さん、何を言ってるんですか? ・・・・・・この力は、守るためのものです”



そこから感じられたのは、明確な怒りと嫌悪感。それを聞いて思った。



”絶対に、殺すためのものじゃない。僕は、反対です。そんなこと、する必要がない”



これは、ダメだと。



”いいえ、僕達は絶対にそんな事をしてはいけないんです。
僕達は、管理局の局員は、常に正しくなくちゃいけない”

”私も同じくです。恭文さん、お願いですからそんなこと言わないでください。殺しても、本当の意味で守ることにはなりません。
皆居ます。だから、絶対になんとかなります。例えここで逃がしても、隊長達が居ればきっと大丈夫です。みんな強いんですから”

”二人の言う通りよっ! マジでふざけんじゃないわよっ!! ありえない・・・・・・殺すなんてありえないでしょうがっ!!
アンタ、なに考えてるっ!? そんなこと、私は絶対に認めないっ! 人殺しなんて、そんな行為をする奴なんて、絶対認めないからっ!!”





・・・・・・・・・・・・少しだけ、その言葉が突き刺さった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




ジン「あ〜、6話の『奴』に対する対応のところか。」

バルゴラ≪まぁ、いいたいことをすべて述べるとこの話を書く意味が少々うすれるのだが・・・エリオの「守る力」という言葉、これが今回のIFルートで作者がテーマにしたいものらしいな。≫

ジン「・・・・・・なるほど、「守る力」ね・・・・・・」

バルゴラ≪そう、「守る力」。そして、それを信じる彼らの気持ち・・・実に素晴らしいものだ。だが・・・その「守る力」で、「何」を守るのだろうか?≫

ジン「「正しくなくちゃいけない」って所ではなく・・・「何」を守るのか・・・難しいところをテーマに選ぶな作者も・・・なら、俺も作者の想いを背負って大暴れしますかね。」

バルゴラ≪私も、付き合うぞ。≫








(栄光の流星、覚悟完了。
本日のED:相川七瀬『UNLIMITED』)








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