頂き物の小説
ケース01〜烈火の将・シグナムの場合 そのいち〜
「ふぅむ・・・・・・こりゃまた、おもしろい事になりそうやなぁ・・・・・・」
・・・・・・主はやて、どうかなされたのですか?
「あぁ、恭文が今度六課に出向してくるやん?そこにもう一人出向してくれる魔導師がいるらしいんよ。これがその書類な。」
・・・そういって主はやてが私に手渡すのは、出向する嘱託魔導師のリスト・・・蒼凪の分はいいとして・・・もう一枚には、赤みがかった茶髪の奥に、青い瞳を輝かせる少年の顔・・・・・・その名前を見て、私はあることを思い出す・・・・・
「・・・主はやて、私の記憶が正しければ・・・この少年、あの『フィーネ・スノウレイド』の弟子ではないですか?」
「ん?シグナムはその人の事知ってるん?うちは名前だけは聞いた事あるんやけど・・・」
「・・・えぇ・・・一度は手合わせをしてみたいと思っていましたから・・・しかし、その機会は訪れませんでしたが・・・」
私は書類に再び視線を落とすと、思わず笑みを浮かべる・・・・・・まさか、こういった形でチャンスが訪れるとは・・・・・・想像をしただけで心が躍る・・・・・・
「・・・フ・・・フフフフフフフフフフ・・・・・・」
「はやて〜、一緒に飯でも・・・・・・なぁ、なんでシグナムの奴笑ってんだ?なんか怖いんだけど。」
「あ〜、なんかスイッチが入ったみたいやなぁ・・・・・・来てもらうフレイホーク君には悪いけど、初日から大荒れしそうやなぁ・・・・・・」
魔法少女リリカルなのはStrikers 外伝
とある魔道師と彼女のありえる繋がりとその先のこと・外典
ケース01〜烈火の将・シグナムの場合 そのいち〜
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
・・・今更ながら、なんでここに俺がいるのか、非常に悩むところだ。
「ホント今更だよね〜♪なんだかんだで僕の書類も手伝ってくれたし!!いや〜、持つべきものは友達だね!!」
≪そうですよ。既に依頼を受けているんですから、諦めてください。≫
・・・とまぁそんなことをいいながら目の前を歩いているこいつ・・・蒼凪恭文(俺はヤスフミって呼んでる。)と、その相棒であるアルトアイゼンに、俺は怒りを覚えた。
・・・いや・・・久々にヤスフミに連絡したら次の日に本局に呼ばれて、今まで会ったこともないリンディ・ハラオウン提督直々に依頼されるとか(推薦したのはヤスフミらしい・・・しかも用意周到に逃げ道をつぶされていた・・・)、
文句を言いにいこうとしたら書類を手伝わされるとか(あと、なぜか書類がどんどん追加されてくし・・・なんなんだよあれは。)・・・考えるだけでイヤになった。
「・・・しかも、出向先はあの「機動六課」か・・・はてさて、どんなことが起きるのやら・・・」
「ジン、何ぶつくさいってんの?」
「あ、わりぃわりぃ・・・それじゃ、行くとしますか。」
そういうと、俺はヤスフミと共に「機動六課」へと足を踏み入れた。
そういや、自己紹介がまだだったな。俺の名前はジン・フレイホーク。ヤスフミと同じフリーの嘱託魔導師で、魔道師ランクは陸戦のA-。年はヤスフミと同じ18だ。
・・・そこ、同い年に見えないって言うなよ?こいつ結構身長の事気ににしてるから・・・今のとこ彼女はいないな。
ヤスフミと知り合ったのは、ある依頼でこいつと一緒になったから・・・あの時はマジでこいつに驚いたね。
それからなんやかんやで意気投合して、時々連絡を取ったりしている。
まだ家には行ったことないな・・・よし、今回の依頼、拠点はこいつの家にしよう・・・せめてもの仕返しだ。
さて、どんなことが俺を待っているのやら・・・モモたちの最後を見にいけなかった分面白いことがなけりゃ、承知しねぇぞヤスフミ?
・・・・・・しかし、さっきから感じるこの悪寒はなんなんだろうな・・・・・・
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
・・・やっと朝礼が終わった・・・空気が痛々しすぎるぜ・・・
で、その空気を作り出した本人はというと・・・全力で逃げ出そうとしていた。
・・・なんで止めなかったのかって?アレを見れば分かるさ。
「・・・どこへ行くつもりだ。蒼凪」
ヤスフミの後ろに立っていたのは、隊長用の制服をつけた女性。
ピンク色の髪をポニーテールにしており、凛々しい顔立ちをしている。クール&ビューティーってのはあの人をさす言葉だなきっと。
「いや、その・・・ちょっとトイレに」
「・・・ここにもトイレはあるぞ?」
「嫌だなぁシグナムさん、まるで僕が逃げようとしてるみたいな言い方しないでくださいよ」
・・・どうやら、女性はシグナムというようだ。・・・たしか、この部隊ってヤスフミの知り合いが多かったっけ・・・
あとヤスフミ、俺にはお前がその後に言いそうな言葉が想像できるぞ。
「残念ながら、君の行動は予測済みですよ」
「そうそう。きっとなぎ君のことだから・・・」
「『自宅のですが』・・・とか、考えてたでしょ?」
うん、知らない人がさらに増えた・・・いや、部隊の人員は確認したんだよ?ただ、まだ覚え切れてないんだよ・・・
「・・・とにかく、帰ることは許さん」
「いや、だから僕はただトイレに行きたいだけで」
「グリフィス、シャーリー、ルキノ。すまないが蒼凪を部隊長室まで連行してくれ」
『はいっ!!』
「無視ってわりとヒドくないですかっ!? そして連行ってなんですかっ!!」
「シャーリー、ルキノ」
・・・気が付いたら、ヤスフミは女性二人に腕を組まれて捕獲されていた。・・・二人とも結構美人なんだが、うらやましくないのはなぜだろうな?
「・・・これで大丈夫かと思われます」
「上出来だ。蒼凪、両手に花で楽しいだろう。そのまま部隊長に挨拶してこい」
「え? ・・・あの、二人ともそんなにガンガン進まないでっ! お願いだから助けてー!!」
「シャーリーっ!!」
「なに?」
「・・・ガンダ○VSガ○ダムの新型PS○同梱版で手を打たない?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・打たない」
「シャーリーさんっ!? なんで揺らいでるんですかっ!!」
「ルキノさん、元々シャーリーはこういう子だから。仕方ない、そこに年末に発売されるF○の・・・」
「なぎ君も買収しようとしないっ! シャーリーさんも本気で考えて込まないでくださいよっ!!」
・・・そうこうしているうちに、ヤスフミは連行されていく・・・シャーリーさんはヤスフミと同じオタクの匂いがするなぁ・・・俺も片足突っ込んでるけど。
すると、男の人がこっちに近づいてきた。たしか・・・グリフィスさん、だったな。
「フレイホークさん、あなたも一緒に来てもらえますか?八神部隊長がお呼びなので。」
やれやれ、いきなりのご対面か。どんな人物なんだかなぁ、八神部隊長・・・さっきのじゃ想像がつかねぇ・・・
その時、ふと視線を感じたので後ろを振り向くと、シグナムさんが俺を見ていた・・・・・・俺と視線が合うと、シグナムさんはきびすを返して歩いていく・・・・・・なんか用事でもあったのか?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
・・・・・・シャーリー達に引きずられていく蒼凪を見送ると、私はグリフィスと共に部隊長室に向かう彼・・・フレイホークを見る。
ふむ、なかなか鍛えてはいるようだな・・・しかし、まだ判断はつかんか・・・やはり、ここは手合わせをしてみるべきだな。
しかし、いきなりそんな事をいえば主はやてやヴィータ達に止められそうだしな・・・・・・なにか方法を考えねば・・・・・・
そう考えているとフレイホークが後ろを振り向き、私と視線が交わる・・・・・・その青い瞳の奥には一瞬だが、戦士としての光が宿っていた。
・・・・・・やはり、私の目に狂いはなかったようだな・・・・・・
振り返って歩き出す私は、おもわず笑みを浮かべる・・・・・・さて、いろいろ準備をせねばな・・・・・・あの瞳を見て戦わないなど・・・ありえん。
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「うんと・・・恭文って、私のこと知らない?」
「・・・はい?」
・・・俺の耳がおかしくなったのか?なにやら電波な発言が飛び出したんだが・・・ヤスフミも驚いたのか、リインさんと会話している。
ちなみに今は、オリエンテーションでリインさんに六課を案内してもらっている最中、フォワード陣と知り合ったので交流も兼ねて食堂で飯を食っている最中だ・・・・・・うん、目の前で起きたことには突っ込まないぞ。
「違うからっ! いや、だから、私のこと・・・ギン姉から聞いてない?」
「あぁ、思い出した思い出したっ!! ・・・そっか、ギンガさんの妹なんだね」
「そうだよ、私はスバル・ナカジマ。さっき自己紹介したのに、気付いてくれないんだもん。ひどいよ〜」
どうやら、ヤスフミには心当たりがあるようだ。しかし、ナカジマでお姉さん・・・ときどきヤスフミの話に出てくる、「ギンガさん」かな?
・・・ヤスフミの話で一番多い異性の話はハラオウン執務官だがな・・・
「うん、今まで忘れてたけど思い出した。ギンガさんからスバルのことは聞いてるよ」
「恭文、それって結構最近の話だよね? なんで忘れるの・・・・」
「だって、朝からトラブル続きだったし」
・・・そりゃ忘れるよな・・・黒歴史にしたい出来事が起きたし・・・
「スバル、なぎ君はこういう子だから気にしないほうがいいよ?」
「です。悪い子ではないんですけど、いい子でもないんです・・・・」
・・・なんか言いたそうな顔してるが・・・ヤスフミ、それは俺も同感だ。かといって、俺がいい子って訳でもないけどな。
「でも、ギンガさんの妹か・・・。色々と納得した」
「大食いなとことか?」
「あと、妙に距離感が近いというか、強引というか・・・・そんな感じがひしひしと」
ティアナ・ランスターさんの言葉にヤスフミが同意する。・・・そういった発言が出てくるって事は、ランスターさん振り回されているんだな・・・
「それでね、一つ質問があるんだけど・・・」
「なに?」
すると、目をキラキラさせながらスバルさんは身を乗り出してヤスフミに詰め寄ると一気にまくし立てる。
「うんとね、恭文は魔法はどんなの使ってるの? 具体的な戦闘スタイルは? デバイスは?」
「だから、顔近いからっ! 離して離してっ!!というかさ、ギンガさんから聞いてないの?」
「ギン姉は、細かいことは教えてくれなかったの。フロントアタッカーということだけしか・・・・」
「なるほど・・・・・・秘密」
スバルさんの質問に、ヤスフミは左手の人差し指を縦にして唇につけ、そう言い切った。他の皆はずっこけるが、俺は苦笑するしかなかった。
「えー、なんで? いいじゃん教えてよ〜」
「と言われましても、そんなに一度に聞かれても答えられません」
「じゃあじゃあ、一つずつでいいからさ。ね?」
「・・・上から75」
「へ?」
「55」
「え?」
「76だよ」
「それスリーサイズだよね!? 誰もそんなこと聞いてないしっ! というか、私より細っ!!」
「そなの? ちなみにスバルはいくつかな」
「えっと、上からはちじゅ・・・って、なに言わせるのっ!!」
「だって、僕が答えたんだからスバルだって答えなくちゃ不公平でしょ?」
いや、お前はスバルさんでからかうのが楽しいだけだろ?まぁ、戦闘スタイルなんかを答えないのは他にも理由あるんだろうけど・・・
「あ、なるほど・・・・って、なんでそうなるのー! てか、なんでそんなに細いのっ!?」
「知りたい?」
「うんっ!!」
ヤスフミの問いかけに、頭をブンブン振って頷くスバルさん・・・いや、それはヤスフミが自爆するんじゃね?
「ヒミツ」
「どうしてっ!?」
「男は秘密というヴェールを纏う事で素敵になるのですよスバルさん。・・・というか、そこは察して。いや、本当にお願いしますから」
「・・・あ・・・うん、その・・・ごめん」
・・・まぁ、そろそろヤスフミの奴もからかうのをやめるだろ・・・そう思っていると、ヤスフミがスバルさんに質問をした。
「スバル、なんでそこまで僕の戦い方に興味があるのよ?」
「ギン姉から色々話を聞いてね。それに、恭文フロントアタッカーなんだよね? 私もそうだし」
「・・・スバル、フロントアタッカーなの?」
ヤスフミの問いかけに頷くスバルさん。それなら納得するな。同じポジションの人の戦い方を見るのは勉強にもなるしな。
自分の戦い方と違う部分で生かせる部分なんかを見つけられると、非常に楽しい部分があるのは認める。
「でしょ? だから、どんな風なのかなって思ってたんだけど・・・・」
「そんな面白いとこはないよ? 使ってる魔法も近代ベルカ式の比較的単純な物だし。・・・そういや、スバルも近代ベルカだよね」
「そうだよ、シューティングアーツ」
「ギンガさんから教わってたんだよね」
「うんっ!!」
『ベルカ式』っていうのは魔導師が使う術式の一つで、近接戦闘に特化した魔法形態のことだ。
これ以外にも、魔力を操作して様々な事象を起こす『ミッド式』ってのがある。
「・・・で、戦闘スタイルも剣術ベースの近接戦だけど、シグナムさんみたいに使えるわけじゃないし。あ、そういうわけだからパートナーデバイスも剣だね」
「でも、さっきのシャーリーさんの話だと・・・」
「そんなの大半はホラだから。つか、みんなの方が凄いでしょ。
だって、ナンバーズやらガジェットやらとやりあってなんだかんだで勝ってるんだし。なの○タなんて比喩とは違うでしょ」
そういうと、ヤスフミはパスタを口に入れる。おっと、俺もはやく食べなきゃな。
「あの、剣術ということは、蒼凪さんは騎士なんですか?」
次にヤスフミに食いついてきたのは、エリオ・モンディアル君。その目にはなんか燃えるものが見える。
「いや、僕はベルカ式使うけど、師匠達と違って騎士の称号は取ってないのよ」
「そうなの?」
「うん。なんというか、ガラじゃないしね」
・・・まぁ、ヤスフミは騎士ってガラじゃないな・・・信念は持っているけど、ほかはあまり気にしないもんな・・・
「でも、剣を使うのは変わりないですよね? ・・・なら、今度模擬戦してもらえませんか」
「それは、教導官の許可さえあれば僕の方は問題ないけど。・・・エリオも剣使うの?」
「いえ、僕は槍ですけど」
「恭文、エリオは騎士なんだよ?」
スバルさんの言葉に頷くエリオ君。・・・・・・なるほど、そういうことか。
「はいっ! まだまだ見習いですけど」
「ひょっとして、シグナムさんやら師匠やらな騎士の先輩に憧れてたりする?」
「はいっ!」
「で、目標に近づくために、もっともっと色んな経験しなきゃいけないし、強くならなきゃいけないとか思ってたりする?」
「はいっ!!」
「・・・うん、なら納得だわ。もちろん教導官達の都合さえよければだけど・・・相手になるよ」
そういってヤスフミが笑顔で返事をすると、エリオ君はまたうれしそうな顔をした・・・そこまでうれしいのか?
「はい、ありがとうございますっ!」
「よかったね。エリオ君っ!!」
「うん」
・・・すげぇな。ヤスフミ、これは真剣に相手してやれよ?
「あ。それなら私も模擬戦やりたいんだけど!」
「スバルと? いいよ〜」
スバルさんの言葉に、ヤスフミは軽い感じで答えた。・・・さっきはぐらかしていたのはどこのどいつだよ。
「いいの?」
「待って、なぜ確認するの?」
「だって、なんか急に素直に答えたし。さっきは『秘密』ってはぐらかしたのに」
「・・・あぁ、そっか。いやだなぁスバル。いじめて欲しかったならそうだっていってくれ」
「怒るよ?」
「・・・ごめんなさい。ちょっと調子乗りすぎました。
なのでその拳と単色の目は引っ込めてもらえるとありがたいです、はい。特に拳が痛そうだし。」
「恭文さんが普通に相手すれば、スバルさんはそんな事しませんよ?」
「そうだよ〜。・・・で、なんで急に素直になったの?」
「別に〜。エリオはOKしといて、スバルだけダメってのはいくらなんでも意地が悪すぎでしょ。
僕も腕がなまるのは嫌だし、定期的な模擬戦はむしろ歓迎だよ」
それは俺も同感だな。なにより、俺はまだあの人に追いついていない・・・こんなところで腕がなまるなんて、絶対に嫌だ。
「ホントに?」
「ホントだよ」
「そっか。恭文、ありがとっ!!」
・・・なんか、スバルさんって犬みたいだな・・・尻尾をブンブン振っているのが目に浮かぶんだが・・・
「まぁ・・・あれよ。諦めなさい。スバルに興味持たれた時点でこうなるのは決定事項だから」
諦めろと言わんばかりの表情を浮かべているのは、ティアナ・ランスターさん。・・・・ヤスフミ、何考えてる?分かりやすいぞ。
「飲まないわよ。・・・あと、私もティアナでいいわよ」
「思考を読むのはやめない?」
「あ、私もキャロで大丈夫ですから」
「うん、そんなに僕の考えてることは分かりやすいのかな? ・・・いや、答えなくていい。もう分かったから」
「・・・それと、フレイホークだっけ?あんたも私達のこと呼び捨てでいいわよ?私も呼び捨てにするから。」
・・・そりゃあいい。同年代に敬語って、どうも肩こるんだよな・・・いや〜、楽になったぜ。
「・・・あんた、素はそんな感じなのね・・・」
「あぁ・・・それじゃ、改めてよろしくな。」
そういうと、俺とティアナは握手を交わす。・・・なんか好感が持てるな。
「しかし・・・スバルもシグナムさんと同じ人種だったのか。うん、仲良く出来そう。」
そんな時、ヤスフミがポツリと呟く。それに、スバルが反応する。
「どういうこと?」
「だから、戦うのが大好きなバトルマニア」
「違うよー! 私は、戦う事自体は好きでもなんでもないよっ?!」
「嘘だッ! そういうことを本気で思ってる人間はね、初対面の人間と模擬戦やることになったってそこまで嬉しそうな顔はしないんだよっ!!」
・・・これはヤスフミに同感だな。いくらなんでも、あの嬉しそうな表情は普通できないし・・・
「別に・・・そういう訳じゃないんだけどなぁ」
「じゃあ、どういうわけなの?」
「うんとね、さっきも言ったけど、ギン姉から色々と聞いてて、どんな感じがすっごく気になって、それで・・・・」
・・・ヤスフミは納得したらしいが、俺はそうは思わないな・・・あれはバトルマニアの言動だ、間違いない・・・無自覚って怖いな。
「ね、それでいつする? 私は今日この後すぐでも大丈夫っ!!」
「まてまて、身を乗り出すなっ! ・・・いくらなんでも教導官の許可無しでいきなりやるわけにはいかないでしょ」
・・・ほらな。やっぱバトルマニアだよ。
「まずは教導担当のなのはなり、ヴィータ師匠の許可をちゃんと取ってくる事。
許可さえあれば、教導官権限で仕事の方は何とかなると思うし、僕は身体さえ温めれば今日でも動けるから」
「わかった。じゃあ、絶対に許可取ってくるから、そうしたら必ず相手してね」
「いいよ〜。約束するからいつでも来なさい。むしろ待ってるから」
「うんっ!」
「・・・あぁ、それと。」
「なに?」
「もし、師匠達が許可をくれない雰囲気だったら、僕に話してくれるかな?
僕からもスバルと模擬戦やってみたいって言えば、多少はなにか変わるかもしれないから。エリオも同じだよ。
・・・まぁ、やると言った以上は少しは協力しないとね」
それを聞いたスバルは、一瞬キョトンとした表情を浮かべるが、意味が分かるとすぐに笑顔になった。
それはもう、眩しくて純情ボーイだったら恋に落ちるんじゃないかというくらいの素晴らしい笑顔に。
・・・あぶねぇ、あと少しで惚れるところだったぜ・・・
「うん、ありがと恭文っ!! ・・・秘密とか言わずに、いつもそういう風に優しくしてればいいと思うよ」
「気にしないで」
そうして、ヤスフミとスバルは握手を交わした。・・・やっぱスバルは犬っぽいな・・・
「私は犬じゃないよっ!!」
・・・どうやら、ヤスフミも同じようなことを考えていたらしい・・・
食事が終了したので後片付けをすると、デスクワークに向かう4人を見送って隊舎見学兼挨拶回りツアーを再開した。
・・・気になるのは、スバルのこと。なんか嫌な予感がするんだけど、気のせいかな・・・
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「・・・という訳でヴィータ副隊長!!模擬戦の許可をください!!」
・・・・・・なんだってアタシは、検査帰りにこんな事に巻き込まれてんだ・・・?
目の前では、スバルがあのバカ弟子と模擬戦をやる許可を得ようと、必死に頭を下げている・・・なんでも、アタシやなのはの許可を得れば今日でも模擬戦をやってやると言い出したらしい・・・
・・・・・・まったく、余計な事言いやがって・・・・・・
「・・・・・・これは一体何の騒ぎだ?」
すると、シグナムが書類を抱えてこっちにやってくる・・・・・・あれ、今日のシグナムって・・・そんなに書類を抱える仕事あったっけ?
「あ、シグナム副隊長・・・・・・実は、スバルが例のあの2人と模擬戦をやりたいって聞かないんですよ・・・・・・副隊長からも何か言って下さい。」
「・・・・・・なるほど・・・・・・ヴィータ、許可ぐらい出してやれ。どうせ、蒼凪が許可さえ取れば今日でも構わないとでも言ったのだろう?演習場などの使用許可なら私が引き受ける。」
状況説明をティアナが行い、シグナムは納得したかのように頷くと・・・・・・とんでもない事を言い出しやがった。
「本当ですか!?」
「あぁ。ちょうどここに許可証があるからな・・・・・・」
そういうとシグナムは、抱えた書類の中から演習場の使用許可証を取り出す・・・・・・ちょっと待てシグナム・・・・・・今日は特に何もなかったよな・・・なんで許可証を持っているんだ?しかもそれ、既に認可されているよな?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・たまたまだ。」
「嘘つけぇぇぇぇぇっっっっっっっっ!!さてはテメェ、自分があいつらとやりたいからいろいろ申請してやがったな!?」
「さて、なんの事だか・・・・・・それよりヴィータ、さっさと許可をくれてやれ。あれを見てみろ。」
シグナムが指差した方を向くと、そこには目をきらきらさせながら笑顔を浮かべるスバルが居た・・・・・・なぁ、なんで犬耳とブンブン動いている尻尾が見えるんだ・・・・・・?
・・・・・・結局、アタシはスバル達に許可を出す事になった・・・・・・ところでシグナム、頼むから演習場の破壊だけは止めてくれよ?
「・・・・・・・・・・・・善処する。」
・・・・・・おい。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
時刻は夕方。海上に面している六課所有の陸上演習スペースに、俺とヤスフミは立っている。
なんでかって?・・・原因は目の前のあいつだ。
「恭文、約束通りヴィータ副隊長の許可を取り付けたよっ! 私は全力で行くから、恭文も全力で来てっ!!」
白のシャツに厚手のズボン。訓練用の服装だ。そんな格好をして気合充分なスバルを見て、ヤスフミは頭を抱えていた。
まぁ、俺とヤスフミも同じ格好なんだけどな。
あの後、六課の駐機場に案内されて、そこにいた人たちに挨拶をしたところまではよかったんだ・・・
けど、突然ヤスフミと俺がここに呼び出されると、そこには既に着替えていたスバルからヤスフミは予備のトレーニング服を渡された。
俺はというと、ヤスフミの家に泊まる予定でいろいろ持っていていたから、その中にあった訓練服を着ている。
そしてウォーミングアップを済ませてここに移動すると、平面状のスペースが一瞬で廃墟の市街地に姿を変え、模擬戦を始めるといわれたのだ。
・・・嫌な予感的中かよ・・・
「・・・悪いスバル。ちょぉぉぉぉっと待ってもらえるかな?」
「なんで?」
「いや、これなに?」
「え? 模擬戦」
・・・さも当然って言わんばかりの顔で言ってきたなぁスバルの奴・・・、
「・・・なんでいきなり模擬戦?」
「だって、恭文は『教導官の許可さえ得られればいつでも相手になる』って約束したよね。・・・嘘だったの?」
・・・・・・駄目だ、ヤスフミに相手を任せよう・・・・・・そして、俺は隊舎の方を眺める・・・・・・そこには結構な人数が集まっていた。しかも、大型モニターまで立ち上げて・・・
あれか、新歓レクみたいな感じになってんのか?・・・なんてこった・・・これじゃ、止める人いねぇじゃねぇか・・・
『うし、それじゃあそろそろ始めるぞ。四人とも準備しろ』
「はいっ!」
「師匠・・・」
すると、空間モニターがいきなり発動する。・・・どうやら、あの人がヤスフミの師匠みたいだな・・・
ヤスフミ、なんか言ってるみたいだが多分無駄だと思うぞ?
『バカ弟子、いきなりで悪いが諦めろ。つーかお前が悪い』
やっぱりな・・・
「つか、なんでそうなります!? か弱い子羊いじめて、なにが楽しいんですかっ!!」
『うっせぇバカタレっ! つか、お前らはか弱くもなければ子羊でもねーだろっ!!
どーしてもこうなる理由が分からないなら、教えてやるよ。・・・スバルに、アタシやなのはの許可さえあれば、別に今日でも構わないって言ったそうだな?』
「えぇ、言いましたがそれがなにか?」
『アイツ、普段はちっとばかし気が弱いクセして、こうと決めたら異常に押しが強いんだよ。
アタシが何言っても今すぐやりたいって聞きやしなかったぞ?』
「・・・本当ですか?」
はっはっは、つまりなにか?ヤスフミの一言が原因でスバルはここまで準備を整えたって訳?
・・・ヤスフミ、これは完璧にお前のミスだな。いや、ここまでやるっていうのを想像しろっているのも無理だけど。
『そうだ。・・・ったく、こっちは検査帰りだってのに、アイツの相手でむちゃくちゃ疲れたぞ?』
それは大変そうだな・・・ヤスフミ、やっぱお前のせいだ。
「・・・と言いますか、師匠。この話聞かされた時から気になってたんですけど。」
『なんだ?』
「・・・どうしてそんな『してやったり』って言わんばかりの悪い顔してるんですか」
『気のせいだ』
「いや、気のせいじゃないでしょっ!? 今、頬が明らかに緩んだしっ!!」
『・・・ま、正直に言うとだ。アタシとしてもお前とスバル達をやらせたかったからな。それに、お前が連れてきた奴の強さも分からんしな・・・ちょうどいいだろ?』
・・・なるほど。今回の話は渡りに船って訳ね・・・ヤスフミも、納得したようだ。
『そういうこった。それに、お前だってこないだまでがしがしやってたろ。
師匠としてはそういうの抜きにしても、その中でどれだけ腕上げたか気になるんだよ
つーわけだから見せてくれよ。期待してるからな?』
「・・・まぁ、師匠の期待に応えられるかどうかは分かりませんけど、スバルとは約束しましたから。それはきっちりとやらせてもらいます。
あ、それと一つ確認です」
『なんだ?』
「いつものノリでいいんですよね?」
そのヤスフミの言葉に、俺は笑みを浮かべる・・・ようやくエンジンがかかったみたいだな。
『かまわねーぞ。ま、簡単にはいかねーとは思うがな』
「それだけ聞ければ充分です。んじゃま・・・行って来ます師匠」
『おう、キバっていけよ』
「・・・あれ、ちょっと待ってください。それだと、俺はなんでここにいるんですか?それに、確か4人って言ってましたよね・・・1人足りないですけど。」
『・・・・・・あぁ・・・・・・それはな・・・・・・』
「・・・待たせたな。」
・・・・・・その言葉と共に現れたのは・・・・・・さっきまでとは違う、ところどころ鎧に包まれた服を纏い、左手に鞘に収められた剣を持った・・・・・・シグナムさんだった。
『フレイホークだっけ。お前の相手はアイツだから頑張れよ。』
「・・・・・・・・・・・・ちょっと待ってください・・・・・・・・・・・・たしかシグナムさんって・・・・・・副隊長ですよね?なんでいきなりそんな人と模擬戦しなくちゃならないんですか!?」
「何、単純に私の興味だ。」
・・・・・・俺の疑問に答えてくれたのは、他ならぬシグナムさんだった・・・・・・・・・・・・なんか・・・・・・すっごいアホな事をはっきり言い切った!?
「・・・・・・シグナムさん、何アホな事言い切ってるんですか。」
「アホとはなんだアホとは!?強者を見たら戦いたいと思うのが騎士としての常だろうっ!!・・・それに、あの『栄光の流星』と呼ばれた魔導師・・・フィーネ・スノウレイドのデバイスを受け継ぎ、色々な戦場を渡り歩く嘱託が居るとは聞いていたが、それがまさか、蒼凪と友人だったとは思わなかったのでな・・・・・・この機会はちょうどいいと思ったのだ。」
・・・・・・つまり、俺の能力に興味を持ったと・・・・・・つか、おれの先生の事知っているんですね。
「当然だ。健在であれば『局の関係者で是非とも刃を交えてみたい魔導師リスト』に入れたいと思っているからな。もちろん、ベスト5入りは確定だ」
「そんなアホなリストは今すぐ捨てて!?一体なに考えてるのっ!?」
「だが、お前とて作ってるだろう?」
「はぁ? なに言ってるんですか。僕はそんなアホなリストは作ってませんよ。僕のは、『ガチにやりあって楽しい人ランキング』です。」
・・・・・・シグナムさんの言葉に、ヤスフミは胸を張って答える・・・・・・それは意味合い的にはまったく一緒だあぁぁぁぁっっっっ!?何考えてんだこのバトルマニア!!
『・・・・・・まぁとにかく、そういう訳だから・・・頑張れよ。』
そして無情にも、空間モニターはその姿を消す・・・・・・そして後には、3人のバトルマニアと俺だけが残された。
「ちょっとジンさん、私はバトルマニアじゃないよ!?」
「・・・出向初日の奴にいきなり模擬戦をふっかけるような奴のどこがバトルマニアじゃないと言うんじゃ己は!?」
「・・・・・・御託はいい・・・・・・フレイホーク、さっさとデバイスを構えろ。」
俺とスバルの言い合いをよそに、シグナムさんは左腰から剣を抜き放つと、俺に向かってその切っ先を向けた・・・・・・仕方ねぇ。
「・・・バルゴラ、セットアップ。」
俺は懐から黒い十字架を取り出すとそう呟く。すると俺の身体が光に包まれて、その光がバリアジャケットへと変わる。詳しい描写は外典第2話を見てくれ・・・
・・・ともかく、俺はバリアジャケットを装着してバルゴラを構えると、姿勢を低くする。隣を見ると、ヤスフミとスバルもバリアジャケットを装着して既に戦闘を開始している。
「・・・ようやくやる気になったか・・・・・・それでは、いくぞ!!」
その言葉と共に、シグナムさんは地面を蹴ると・・・・・・俺に向かってその刃を振り下ろした。
(その2につづく)
あとがき
バルゴラ≪・・・さぁ、と言う訳で始まった「とまと外典」のifルート第1話。お相手は私、バルゴラと・・・・・・≫
ジン「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
バルゴラ≪どうしたマスター?元気がないな。≫
ジン「・・・当たり前だ・・・なんで俺のifルートが始まってんだよ!?ディケイドクロスはどうしたディケイドクロスは!?」
(大声で吼える2代目栄光の流星・・・・・・そんなマスターに、蜃気楼のぬいぐるみをつけた乙女座が首を振る。)
バルゴラ≪何を言うかと思えば・・・・・・作者の奴、ディケイドクロスに少々詰まったから息抜きに書き始めたらしいぞ?なんせ、これを書いているのは夏休み中だからな・・・ちなみに、外典本編のほうでも、シグナムフラグは立っていたのだぞ?≫
ジン「な、なんだってぇぇぇぇっっっっ!?!?」
バルゴラ≪説明をするとだな、外典8話でそれっぽい事は匂わせていたのだが、その頃には既にマスターはティアナルート一直線だった為、それに気付かなかったという訳だ。その為、作者が『もしシグナムフラグが立つのが早ければ?』と考えて作り出したのがこれだ。≫
ジン「な、なんだよそれ・・・・・・別にそんな事しなくてもいいじゃないかぁっ!?」
シグナム(ifルートバージョン)「・・・・・・ジン。そんなに・・・・・・私と一緒になるのはイヤか?」
ジン「・・・え?」
シグナム「いや、それならばいいのだ。お前にも選ぶ権利はあるしな・・・・・・だが・・・やはり少し・・・悲しいな。」
ジン「いや、ちょっと待ってくださいよ。別にシグナムさんとそうなるのがイヤとかそういう訳じゃなくて、その・・・・・・」
バルゴラ≪・・・・・・なんだか固有結界が発動しそうなので、今回はここまでだ。それでは皆、また会おう!!ちなみに、話の中ではどうなるか分からないが、あとがき内では三角関係による修羅場が発生するので、楽しみにしていてくれ!!≫
ジン「・・・って、何いってやがるお前!?」
(とまぁ、新たな波乱をかもし出しつつお別れ。
本日のED:EARTH『Your song』)
ティアナ(外典本編バージョン+ひぐらしモード)「・・・・・・どうして、ジンとシグナム副隊長はくっついているのかなぁ、かなぁ?」
シグナム(ifルートバージョン)「・・・・・・フッ。私はようやく・・・初めて運命を共にしたいと思える男と出会ったのだ・・・・・・その邪魔をするというのなら・・・・・・ここで倒す!!」
ティアナ「・・・・・・アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!ジンは私のものなんだよ、だよ?・・・・・・ドロボウネコは、追い払わなくっちゃねぇぇぇぇぇぇっっ!!」
恭文「・・・・・・ねぇ、ティアナとシグナムさん・・・・・・ガチでぶつかり合ってんだけど。どうすんの?」
ジン「・・・・・・・・・・・・なんで俺までこんな事になってんだよ・・・・・・・・・・・・」
恭文「・・・僕には、頑張れとしか言いようがないんだけど。」
ジン「いや、しかも小学生やしゅごキャラにまでフラグ立てるようなお前には一番言われたくないわ。」
バルゴラ≪ちなみに、このifルートでヤスフミはギンガルートになる予定らしいぞ?あくまで予定だが。≫
恭文「・・・・・・え?」
アルトアイゼン≪・・・つまり、ティアナさんのルートになる可能性もあるんですか?≫
バルゴラ≪その通りだ古鉄殿。ただ、100%言えるのは・・・・・・ハラオウン嬢ルートは無いとの事だ。ifだしな。≫
恭文「・・・・・・なんだろう、僕も胃が痛くなってきそう・・・・・・」
シスターシオン「あらあら、ずいぶん大変な事になるんですね。」
恭文&ジン「「って、お前はどっから出てきた!?」」
シスターシオン「いいじゃないですか・・・それでは皆さん、ごきげんよう♪」
(おしまい)
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