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頂き物の小説
第四話  襲い繰る悪夢 ―エンカウント ナイトメア―(前編)













霧の漂う船内に、激突する閃光。

最早、残骸と化したショッピングモール内に響き渡る戦いの音。


しかし音は聞こえるが、その姿は只人の目に映る事は無い。
超高速の乱打戦。

「つぇええええあああアアアアッ!!」
「――ッ!」
クラークの両手から高速で繰り出される拳が、連音を襲う。
忍装束が裂かれ、欠片が宙に舞う。

「ハッ!!」
「ぬぅッ!?」
身を翻して斬撃を放つが、リンドブルムで防がれる。
鉄さえ簡単に寸断する連音の斬撃を受け止めながら、僅かに表面が削れる程度に抑えられる。

ギシギシと、互いの力が拮抗するが、限界を超え、お互いに弾かれる。

すぐさま連音は壁を蹴り、追撃を掛ける。
対するクラークも、フローターフィールドを形成し、すぐさま突撃を掛けた。

幾度目かのぶつかり合いに、幾つもの火花が散る。

「おぉおおおおおッ!!」
着地した連音の背後から、クラークの拳が襲い掛かる。
「ふっ!!」
両手を着き、逆立ちから回転する。クラークの拳が目標を見失って床に突き刺さった。

そのまま両手に力を込め、高速で回転し蹴りを打つ。
「ぬぅううッ!!」
空いた腕でブロックされるが、構わず足を振り抜いて、クラークを吹っ飛ばした。

クラークはショーウィンドウであった所に吹っ飛ばされ、残骸を弾き飛ばした。


「………」
連音はスッと足を伸ばし、静かに立ち上がり、肩に掛かったマフラーをつい、と後ろに戻す。
琥光を眼前に構え、そこからゆっくりと後ろに引く。
全身を弓に例え、腕と刃を矢に準え、必殺の一撃を構える。

「――瞬矢」

連音の姿がぶれたと思った瞬間、クラークのいるだろう場所が爆散した。
更に二度、爆発が起きる。

「――――三連」

そこに在るもの、その全てを粉砕する連撃。瞬矢の三連射。

バラバラと破片が降り注ぎ、粉塵が吹き荒れる。連音の顔にもそれが当たるが、微動だにしない。

「――ッ!」

粉塵を撃ち抜いて、真紅の閃光が襲い掛かる。
連音は琥光を振るい、それを後ろに弾く。次いで、弾丸の如く襲い掛かる双竜の牙。

逸らされた魔力弾が後方の壁を粉砕すると同時に、クラークの拳が連音に打ち込まれた。
「ッ…!!」
刀身で受け止め、それを受け流す。
同時にクラークと体を入れ替え、掌打を打ち込む。
「ぬっ…!!」
腕を弾いて掌打を逸らし、強引に踏み込んで体を捻り込む。まるで鎌で刈り取るかのようなフックを打ち込む。

身を反らして躱すが、返す刀が襲い繰る。

真下からえぐる様なアッパーカット。連音は更に一歩下がり、それを横から弾き、同時に前に踏み込む。
がら空きになったボディに、膝蹴りを打つ。
「…ッ!?」
当たったと思われた一撃は、しかし真紅の盾によって防がれていた。
連音はそのままクラークの後ろに跳び、間合いを離す。一瞬遅れて、クラークの肘が振り下ろされていた。

クラークが乱れた髪を整え、連音は琥光を鞘に納める。


「流石にやるな……」
「そちらこそ。お若いのに、中々どうして……」

連音の手に、長柄の武器が出現した。
嵐牙と名付けられている金属の棍を構え、連音は静かにクラークを見据える。

対するクラークのデバイス――リンドブルムも、その外郭を変えていく。
腕部の装甲がスライドし、そこから角の様な物が生える。

「レガシィ・ハウンド……お前達は何を狙っている?この船に、それだけの物があるというのか……?」
「さて、どうなのでしょうね……?知りたければ、私を倒す事です……そうすれば、お教えしても良いですよ?」
「………元より、そのつもりだ」

クラークが拳を固め直し、連音は嵐牙を∞の軌道を描くように回し始める。

ジリジリと間合いを測り、そして同時に駆け出す。
繰り出される互いの一撃が、再びぶつかり合い、火花を散らした。









   とある魔導師と古き鉄の物語 異伝


 ――― とある魔導師と竜魔の忍の共闘 ―――


  第四話  襲い繰る悪夢 ―エンカウント ナイトメア―(前編)









一等客室内。
アリシアは、泣きじゃくるキャロを胸に抱きながら、その頭をそっと撫でてやる。
「ヒック……えぐ……」
その甲斐もあって、キャロは少しずつ落ち着きを取り戻していった。

しかし、そんな状況に疑問を持つ者がいた。彼女は隣に立つ相棒に耳打ちする。
「ちょっとスバル……!」
「…?何、ティア……?」
「何じゃないわよ!一体誰なの、あのフェイト隊長そっくりな人は……!」
最初はティアナも、フェイト本人かと思った。
だが、よく考えればそんな筈はない。
BJのデザインも全く違うし、バルディッシュも持っていない。
浮かべる表情も、フェイトのそれよりも大人びているし、時折幼くも見える。

何より、彼女は自分達を逃がす為に、なのはと共にあの場所に残ったのだから。

「あの人はアリシアさん。フェイト隊長のお姉さんなんだって」
「はぁっ!?」
「うわっ!?」
ティアナはつい、スバルの耳元で大きな声を出してしまった。

その声に、アリシアも何事かとそっちを向いた。ティアナと視線が重なる。
「どうしたの……?」
「い、いえ……何でも……」
ティアナは慌てて首を振った。そして改めて、事実を確認しようとした。

「……あの………アリシア…さん?」
「何?」
「アリシアさんは、その……フェイト隊長のお姉さん……なんですか?」
「えぇ、そうだけど……それがどうかした?」
アリシアが答えると、胸の中でキャロの頭が動いた。
視線を下ろせば、キャロの困惑の色に満ちた大きな瞳が、アリシアを見上げていた。

「フェイトさんじゃ……ないんですか……?」
「……えぇ、私はアリシア。ゴメンね、フェイトじゃなくて……もう、大丈夫かな?」
「えっ……あ、はい。大丈夫です」
少し困ったような、申し訳無さそうに笑みを浮かべるアリシアに、キャロはハッとしてしまった。

彼女が悪い訳ではない。彼女がフェイトだと、勝手に勘違いしたのは自分なのだ。謝るのは自分。
だから、キャロは謝ろうとした。
「あれ、エリオは何処ッ!?」
しかし、それを遮ってスバルが声を上げた。
「キャロ、エリオとリイン曹長は?」
ティアナもその事に気が付き、キャロに尋ねる。
「あ、あそこのクローゼットの中に……」
「っ…!」
ティアナはキャロの指差したクローゼットに向かった。








薄暗いクローゼットの中、エリオは朦朧とした意識の中でストラーダを握っていた。
振るうどころか、立つ事さえも出来ない状態にあっても、エリオは戦う意思を捨ててはいなかった。
「はぁ……はぁ………っ」
耳鳴りが酷く、表の音も聞こえない。集中出来ないせいで念話も出来ず、ストラーダの声も届かない。
それでも、その腕の中にいる小さな存在を守る意思。それだけがエリオを支えていた。

何かが近付いてくる気配。エリオは自然と槍を前方に向ける。

「ッ……!?」
そして、クローゼットが開かれた。光が差し込み、エリオが顔を顰めた。

「ちゃんと生きてるわよね!?良かった……!」
「ティアナ…さん……?」
「エリオ、大丈夫!?リイン曹長は?」
その後ろからスバルも顔を見せる。
「あ……っ」
それを見て、エリオを支えていたものが解けてしまった。
グラリと倒れる体を、ティアナが抱き止める。
「ほら、しっかりしなさい!!」



スバルはリインを、ティアナはエリオを抱き上げ、そのままソファーに運ぶ。
体を横たえさせ、汗に濡れて額に張り付いた前髪を掻き上げてやる。
「熱も酷くなってきてる……このままじゃ不味いわね……」
エリオが心配だとばかりに、フリードも周囲を飛んでいる。

この場にシャマルがいれば、何かしらの処置をしてもらえただろうか。
いや、エリオは毒に犯されている。毒に対する処置はそれなりの準備が必要となる。
回復魔法でどうこう、という訳には行かないのだ。

「ちょっと、見せてもらえるかしら?」
「アリシアさん…?」
ティアナの隣にアリシアが進み出る。
脈を計り、熱を測り、閉じられた瞼を開いたりしながら、色々と探り始める。

その手際の良さに、三人は驚きを隠せないでいた。
「うん。毒性そのものは弱いけど、免疫機能が過剰反応を起こしているみたいね。高熱と発汗はそのせい。このままじゃ行けないわね……」
アリシアはバッグから様々な物を出し始めた。
ボトルに入った蒸留水。幾つかの粉末の入った小瓶。固形燃料、五徳に小さな鍋。
蒸留水を鍋に入れ、火を点ける。
その間に小瓶から粉末を取り出し、それらを手際良く混ぜていく。

そうしている内に、水から蒸気が上り始める。
火を外し、粉末をそれに溶かしていくと、部屋の中に、薬の臭いが広がっていった。

やがて深緑色に染まったそれを、静かにコップに注いでいく。
「アリシアさん、それは……?」
「薬湯よ。とりあえず、熱をある程度下げて、水分を取らせないと……」
アリシアはエリオの上半身を抱き起こす。
その口元にコップを近づける。
「さぁ、口を開けて…これを飲んで」
「うっ……ぅう………っ」
ゆっくりとコップを傾けるが、薬湯は固く閉じられたエリオの唇を伝い、零れてしまう。

「エリオ君……!」
「くっ…!ダメだわ、歯を食い縛っちゃってる。これじゃ、飲まないわ……」
ティアナが何とか口を開けさせようとするが、どうにもならないようだ。
「仕方ないわね…………んくっ」
そう言うや、アリシアはグイ、と薬湯を口に含んだ。
「「「え……っ?」」」
そして、エリオの頭を抱きかかえると―――
「「「え…?え……?」」」
「ん……」
「「「えぇええええええええっ!?!?」」」
躊躇無く、唇を合わせた。
全員が驚愕し、顔を真っ赤にする中、アリシアは零さないように幾度かに分けて、エリオの口の中に薬湯を流し込んでいく。
エリオの口の端から、僅かに緑色の液体が伝い落ちる。

長いような短いような時間の中、ようやく全てをエリオの中に納め終え、アリシアも唇を静かに離した。
その細い指でエリオの口元を拭ってやる。
「とりあえず、これで少しはマシになると思うけど……早く、ちゃんとした手当てを受けさせないと……」
「あ、アリシアさん………?」
「何…? どうかした??」
「い、今……キ、キキ………!」
キャロが何か複雑な表情でいるので、アリシアは首を傾げた。
そして「あぁ、そういう事か」と、察した。

「今のは、口移しで薬湯を飲ませただけよ。キスじゃないわ、安心して?」
「そ、それのどこがキスじゃないんですか……ッ!!」
こんな状況にあっても、女の子だけあって、かなり気にする所の様だ。

「確かに行為そのものは同じだけど……キスには相手への想い、愛が込められているのよ?
だから、これはキスじゃないの。分かったかしら?」
唇に指を当てて、アリシアはクスリと笑った。
その仕草は不思議な色気に満ちていて、何故かスバルとティアナも顔を真っ赤にしてしまった。

「とりあえずこの子はこれで良いとして、次はリインちゃんね」
すぐさま真剣な表情に戻り、クッションに寝かされているリインの元に向かう。
その小さな体を細かく診ていくと、コクリと頷いた。
「どうやらこっちは、強いショックで意識を失っているだけみたいね……」
アリシアはリインの上に手をかざし、静かに瞳を閉じた。

「我は”願う”……この者に”癒しの光、在れ”と……」
すると、淡いブルーの光がリインの体を包み込んだ。

「うわぁ……っ、綺麗………!」
スバルが感嘆の声を上げる。ティアナもただ頷くしか出来なかった。

やがて光が治まると、アリシアは手をリインの上から外した。
全員がジッと様子を見守っていると―――

「――う、ぅうん……?」

小さく呻き声が聞こえた。
そして、リインの瞼がゆっくりと開かれていく。
「リイン曹長!?」
「目を…覚ましたッ!?」
「クキューッ!!」

全員が驚く中、リインはノロノロと体を起こした。
「うう……頭がクラクラするです……わきゃッ!?」
リインが短い悲鳴を上げた。
「リイン曹長〜!良かったぁ〜ッ!!」
「ちょ、苦しいですスバル!!放してです〜〜〜〜〜ッ!!!」
感極まったスバルが、リインをギュ〜〜〜ッと抱きしめたのだ。

「ちょ、潰れる!潰れるです〜〜〜〜〜ッ!!」
「シュート」

バコーン!

スバルの後頭部にオレンジの弾丸がぶち当たった。
「いったぁ〜〜ッ!?」
「このバカスバル!あんたの馬鹿力で、リイン曹長を潰す気!?」
「うぅ〜、助かりましたぁ〜……」
スバルから解放され、リインはふらふらと浮き上がった。
グシャグシャになった髪を直しつつ、辺りを見回す。

「一体、何がどうなってるですか……?」
「どうやら、大丈夫そうね?」
「ふえ……?」
声に振り返ったリイン。アリシアの顔を見て、目をパチパチとする。

「リインちゃん、久しぶり。元気だった?」
「あ、アリシアさん!?どうして此処にいるですかッ!?」
「色々あってね、はやてちゃんに依頼されたのよ……皆を助けて欲しいって」
「はやてちゃんが?そうだったですか……じゃあ、もしかして連音さんも……?」
「えぇ。今は別行動中だけど、すぐに会えるわ……ヤッちゃんともね」
アリシアがウインクすると、リインが驚きの表情を浮かべた。
「恭文さんも来ているですか!?」
恭文の名前を聞き、リインがこれでもかという程に瞳を見開いた。

「スバルちゃん、恭文は何処にいるの?」
「下のフロアで戦ってます。かなり強敵みたいですけど……一人で大丈夫かな?」
「恭文さんが一人で!?こうしてはいられないですッ!!」
リインが拳をギュッと握り締め、ドアの方に飛んで行く。
「こらっ」
「はぎゅッ!?」
すぐさまアリシアが髪を摘まみ、引き止める。勢いが付いていた為、リインの首がゴキッ、と嫌な音を鳴らした。

「何処に行こうというのかしら、この病み上がりは?」
「ふ、古き鉄は……三位一体なのです……こ、ここはティアナに任せて、リインは恭文さんの所に……」
涙目で首を摩りながら、リインが答えた。アリシアは困った風な顔をしている。

「現場を丸投げにしちゃだめでしょっ!それに、戦えるまでには時間が要るわよ?」
「うぅ、そうでした……恭文さん、ごめんなさいです……」
「いや、そこはティアナちゃんに、でしょう……?」
ともあれ、リインも納得したようで、シュンとしながらも頷いた。

「あの、アリシアさん。一つ、聞いても良いですか?」
スバルが手を上げつつ尋ねてきた。
「何……?」
「いや、エリオの事も治療出来ないのかなぁ〜って……こう、今みたいに」
「あぁ、それは無理ね……」
「どうしてですか?」
「私の治癒……魔法はちょっと特殊でね、イメージがちゃんと出来ないと発動でキないのよ。
だから解毒とか、イメージが難しいものは上手くいかないの……ごめんね?」
「ちょっとは頭を使いなさい。解毒できるなら、最初から薬なんて飲ませないでしょう?」
「あ、そっか……此方こそ、良く考えなくてすみませんっ!」
ティアナにも言われ、スバルが勢い良く頭を下げた。
(素直で良い子なんだろうなぁ〜……良くも、悪くも……)
そんなスバルに、アリシアは苦笑いを浮かべてしまった。

一通りの手当てを終え、全員がとりあえずの落ち着きを取り戻した時、ドアが開き、飄々とした声が届いた。
「やほ〜、皆生きてる?」
全員がそのほうを振り返れば、ボロボロとなり、晒された肌からは血が伝っている。
「ヤスフミッ!?」
「その怪我、どうしたんですか!?」
キャロとリインが驚きの声を上げた。
「大丈夫、ヤスフミ?」
「まあね。これぐらい、大した事ないよ」
恭文は言いながら、懐から一枚のカードを取り出した。

マジックカード。
魔力の低い恭文がそれを補う為に持つ、カートリッジシステムに似た機能を持つアイテムである。
違いとして、様々な魔法『そのもの』を封じておく点。恭文はその中から魔力、体力回復のカードを使ったのだった。

淡い光に包まれ、体の傷が塞がっていく。ついでに切り裂かれたBJも修復されていく。

「おかえり〜。早かったわね?」
《まぁ、向こうで事態が動いたようで、勝手に退いたんですよ?》
アリシアの問いに、アルトアイゼンが代わって答えた。














響き合う、刃のぶつかり合う音。
「どるぁあああああっ!!」
力技で打ち込んでくる斧の一撃は、否応無く、恭文の腕にダメージを重ねていく。
「ったく……女の子がそんな掛け声を、出すんじゃないよ!!」
アルトを一閃、打ち返す。僅かに退いた所を狙って、刀を返す。
「っ!うっさいわね!!アタシがどう言おうと、勝手でしょうがッ!!」
ローラはその一撃を、サイドに跳んで躱す。すぐさま二丁の斧をを構え直した。

《Lady,良い感じだ!熱くなってきたぜ!!》
《AIがオーバーヒートしてるんじゃないですか?》
《人の心配より、自分を心配した方が懸命だぞ?乗ってきたLadyは止められないからな》
「そういう事よ!アム、切り札を使うわよ!!」
言うや否や、ローラは斧を一丁に戻し、それを大きく振り上げた。
《ちょっと待てLady!あれをやるのか!?》
「当然っ!派手に決めるわよ!!」
「――なッ!?」
ローラの体が強い光に包まれる。太陽にも似た輝きに直視出来ず、恭文が顔を歪める。
その光の中で、ローラの姿が変わっていく。

そして、ついに光が砕け、ローラが新たな姿となって現れた。
額部分に角の付いた、金色のライン入りの黒いヘッドギア。ファーの付いた、袖無しの黒いジャケット。その下には、金と黒からなるライトアーマー。
皮に似た感じの黒のロングパンツ。その上に、やはり金のラインが入っているプレート。
腕にも同様のデザインのアームガード。

そして、BJの変形を終えたローラが、声高らかに宣言した。

「変身、ゴルド・アックスフォーム!!こうなったアタシの強さは……泣けるわよ?」





《………あれ?私のセンサーがおかしくなったんでしょうか?凄く似た人を見た事がある様な気が……》
「うん、大丈夫。僕もその人を見た事があるから」

アルトと恭文はローラの姿を見て、同時に言った。
《「キンタロス(さん)のコスプレッ!?」》


「コスプレって言うな!!それとキンタロス様の名前を軽々しく言うな!!」
《「キンタロス様ぁッ!?」》
「そうよ、何か悪い!?」
二人のリアクションに、ローラがことさら不機嫌になる。

「キンタロス様はねぇ……アタシの理想なのよ!!あぁ、もう……どうして、アタシの所に出来てきて下さらないのよ……!」
《出て来たら、どうするつもりなんですか……?》
「勿論、これにサインしてもらうのよ!!」
勢い良く、懐から取り出したのは一枚の紙。

「……アルト、僕の目がおかしいのかな?婚姻届って読めるんだけど……?」
《大丈夫です。私にもそう見えますから》
アルトの言葉に、恭文は顔を伏せた。

キンタロスのファンの中には、そういう事を言う人間は多い。
しかしその中で、本気でそんな物を用意している人間がいるというのは中々にキツイ。

《しかも、思考が何処かヒロリスさんと似ているというのは……救い難いですね?》
「他にもいるんだね、ああいう人……」

「……なんか、莫迦にされているのかしら?」
《いえいえ、そんな事は……しかし、そんなに電王が好きなんですか?》
「――嫌いよ」
「えっ…?」
あっさりと答えるローラに、恭文が戸惑う。
「デンライナーの連中には、うちの顧客を潰されたからね……」

《顧客………………まさか?》
デンライナー組が倒した中で、顧客と呼ばれるのは一人しか浮かばなかった。
「もしかして……牙王?」
恭文は呟いた。ローラの言が、彼女がデンライナーの実在を知っている事を匂わせていたからだ。
ローラは答えず、しかしニヤッと笑った。

《まさか、牙王まで……いや、電王が本当にいた時点で今更ですが》
「だね。まぁ、そこは良いとしよう……今は」
恭文はアルトを握り直す。格好はともかく、強敵である事は変わりないのだ。

互いに減らず口を叩きつつも、隙あらば、容赦無く攻め込む姿勢は崩してはいない。

何より、恭文自信が感じていた。
装いが変わったことで、身に纏っていた雰囲気が変わっている。
まるで、本当にキンタロスがそこに立ち、気を発しているかのようなプレッシャー。思わず鳥肌が立ってしまう。

「さて、行くよアルト……!」
《本家を知っていますからね……負けられませんよ》
「上等………涙は、これで拭いておきなさい!!」
ローラが腕を振り上げると、ペーパークロスが紙吹雪の様に舞い散った。

「「ハァッ!!」」
瞬間、同時に踏み込む。真っ向からぶつかり合う刃が火花を散らし、衝撃が紙吹雪を吹き飛ばす。
恭文はすぐさま体を返し、徹を込めた斬撃を打ち込む。

純粋に力比べは自身に分が悪いと恭文は悟っていた。
だが、態々相手の得意な部分に付き合ってやる必要など無い。
元より、歪な自信の資質ゆえに、正面から才能の塊と戦えるなど思ってはいない。

だからこその手札。
その一枚を、恭文は切った。


「―――ッ!?」
再びぶつかり合う刃。ローラの表情が驚きと苦痛に歪む。
手から腕に走る衝撃が、今までとは違う。
腕の筋組織を蹂躙するかのような痛烈な振動。それが腕全体に伝わり、力を奪い取ろうとする。

しかし恭文もギリ、と歯軋りしていた。
“まずった……!徹を通しきれない!!”
“インパクトが強烈過ぎて、ポイントをずらされました。とんでもないですね”
徹とは、打ち込んだ瞬間にその威力を相手の内部に走らせ、ダメージを送り込む技だ。

しかし今回、相手の力が強過ぎた事で打点をずらされてしまった。どれだけの打撃でも、打点をずらされれば威力はガタ落ちになる。

恭文はすぐさま刃を返し、徹を込めた斬撃を打ち込む。
通し切れなかったとはいえ、僅かでも通った事は事実。今なら力負けをする可能性は低い。
「はぁああああああッ!!」
裂帛の気合を吐き、正眼からアルトアイゼンを振り下ろす。
「つぇりゃぁアアアアアアッ!!!」
ローラが咆哮し、アムピスバイナを振り上げる。

ぶつかり合う斬撃は火花を散らし、拮抗する力がガチガチと刃を揺らした。

「ッ!!ダァアアアアアアアッ!!」
打ち勝ったのは―――――――――――――――――――――ローラ。

アムピスバイナを振り切って、恭文の体を勢い良く吹っ飛ばした。
「ガ―――ッ!!」
恭文はそのまま脆くなった壁に叩きつけられ、それを壊して隣の部屋に飛び込んだ。

破片だらけの床を転がりつつも、すぐさま立ち上がる。
「痛ぅ……何つー馬鹿力……!」
ビリビリと痺れる手を何度か振り、握る。
《それに、向こうのデバイスも恐ろしい強度ですね……頑丈さには自信があったのですが……》
恭文がアルトを持ち上げれば、僅かに刃が欠け落ちている。
戦闘には支障も無く、自己修復も効く程度だが、恭文のショックは大きい。
「……ごめんアルト、行ける?」
《問題ありません。それに、やられっぱなしという訳でもありませんから》
「だね。さて……どうしようか?真正直に行ってやる必要は……無いよね?」
《マスター、口元が歪んでますよ》
「うん。ちょっと楽しくなってきたかも。こういう状況じゃなかったら、存分に楽しめるんだけど……」
釣り上がりかけた口元を正し、魔力を集中する。光が刀身を包み、刃が急速に修復された。








《Lady,腕は大丈夫か?》
「平気……とは言い難いかも。右腕が痺れて、力が入らない……」
ローラは腕を振って苦笑いする。
《無理も無い……かなり強力な衝撃が内部に走っていた。魔力を感知しなかった点から、純粋な技……》
「面白いわね……流石は古き鉄、て所かしら……?」
恭文を吹っ飛ばした先を見てニヤリと笑うと、アムピスバイナを左手に持ち替えた。

「……アム、アンタの破損は?」
《刃が僅かに欠けた程度。戦闘に支障は全く無し》
「オッケー。んじゃ、第2ラウンドを開始しましょうか……!」
ブンブンとデバイスを振るい、闘争心を更に奮い立たせる。
その時、アムピスバイナの瞳部分が激しく点滅した。
《――ッ!Lady,コール3を受信した》
「コール3……!?」
それを聞き、ローラの表情が一変した。戦いに喜びを見出す獣のそれから、レガシィ・ハウンドの小隊長ローラの顔へと。

そしてそこに、恭文も姿を現した。
ダメージを受けつつも、その身より立ち上る気配は鮮烈さを増している。

ローラは内心で舌打ちした。
任務さえなければ、この後どれだけのご馳走が在った事か。
頂く寸前でお預けをくらう程、むかつく事は無い。

だが、任務は任務。
プロとして、私情は二の次だ。


ローラは感情を押し殺し、恭文と対峙する。
「……?」
その変化に、恭文もすぐに気が付いた。
「残念だけど……もう時間切れ。この続きは……」
ローラが、やおら左腕を持ち上げる。斧刃に光が集中していく。

「ッ!?不味い!!」
「―――また、今度よッ!!」

恭文が飛び退くと同時に、デバイスを床に思い切り叩きつけた。
瞬間、蜘蛛の巣の様な亀裂が走り、そして、床が砕けた。
粉塵と破片の舞う中、ローラはそれと共に下のフロアへと落ちていった。

「くそっ、なんて無茶すんのさ!!」
粉塵に咳き込みながら、恭文が言う。
《部屋一つ、丸々潰しましたね……センサーも効かない状態では、追うのは無理ですね》
床がそっくりと抜けた部屋を見ながら、恭文はアルトを鞘に納めた。
「とにかく、スバル達と合流しよう。色々考えるのはその後だ……」
《そうですね。一刻も早く合流しましょう》

恭文はその場を後にし、スバルの後を追ったのだった。

















「―――とまぁ、こんな感じで…………何、この空気は?」
恭文が説明を終える。と、何故か微妙な空気が流れていた。

「―――おかしいです」
そんな空気の中、キャロが口を開いた。全員の視線がキャロに注がれる。
「こんな……こんなカッコ良く主人公しているなんて、ヤスフミさんじゃありませんっ!!
なぎさんはもっとヘタレで、いじられキャラで、人の事を二代目魔王とか読んだりするドSで、
そのくせ、歩く度にフラグの種を撒き散らして、「おいおい、本気で大奥でも作る気かよ!?」とか思ったり、
現地妻とか、本編よりもずっと多くなってるのはどういう事だとか……そんなんじゃなきゃだめなんです!!
こんな風に……バトル物の主人公みたいな行動や発言は、全然なぎさんじゃありません!!」
キャロが恭文のキャラクターに対し、熱弁を振るう。
それに皆が、うんうんと頷く。全員の思いは一つらしい。
「と、いう事でやり直して下さい。全般的に」
「やかましいわぁあああああああああああああッ!!」
《ちょっと、場を弁えて下さいマスター。今、凄く真面目な話をしているんですよ?》
「どこが!?つーか、僕以外に言うべき言葉だよね、それ!?」
「そんな事無いもん!!」
「黙れ、二代目魔王!!」
「魔王じゃないもん!魔王は一人だけだからッ!!」

「あ〜、ヤッちゃん、キャロちゃんもそこまで。今は優先する事があるでしょう?」
流石にカオスな内容に入りつつあったので、アリシアが止めに入った。
仲裁に頭が冷えたのか、少しの溜め息と共に言い合いを止めた。

「やっぱり問題は……なんでいきなり退いたのかって事よね……?」
ティアナは顎に指を添えて思考する。
しつこく追って来たという事は、自分達が邪魔だったからだろう。

別に話の限り、恭文と互角に戦っていたのだから、不利になって逃げた、という訳でもない。

「もしかして……”あれ”を見つけたのかな……?」
スバルが、ポツリと零す。
《”あれ”とは、何の事ですか?》
「うん……もしかしたら、って感じだけど……」
スバルは不安そうな表情をしたまま、話をし出した。
「皆はあれ……覚えてるよね?ここの機関室で見たヤツ……」
「「「――ッ!!」」」
全員の顔が一様に強張る。その心を占めるのは――――――恐怖の記憶。

「あそこを脱出する時……あたし、見たんだ」
「一体何を見たの、スバル……?」
「…………『あいつ』が、なのはさん達を”実”みたいな物に……閉じ込めるのを」
「なっ……!?」
スバルの言葉に、ティアナが目を見開く。
そして同時に浮かんだ一つの言葉。

「――――魔樹の、果実」
ティアナの呟いた声は、異様な程に良く響いた。

「魔樹の果実……?」
初めて聞いた言葉に、恭文とアリシアは首を傾げる。
それもその筈。恭文達は音信普通となった六課メンバーを救出に来たのだ。
しかし、彼女達の身に何が起きたのか、それを一切把握していないのだ。

とりあえず連音の合流を待ちながら、話を聞く必要があった。
「―――どうやら、詳しく状況を聞く必要があるみたいね……話して貰えるかしら?」
アリシアに促され、ティアナが語り始めた。













――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



Side ティアナ




「この先から、異様な魔力反応が感知されてるですね」
リイン曹長の言葉になのは隊長が頷く。
「――じゃあ、スターズ、ライトニングそれぞれで、フォーメーションを組んで進んでいくよ。
スターズはスバルとヴィータちゃんを先頭に」
「ライトニングは、シグナム。エリオはその後ろに付いて?」
なのは隊長とフェイト隊長の指示に皆が頷き、スバルが目の前のドアを静かに開ける。
重厚な音を響かせて開かれた先は、今までの豪華さとは対極の世界。

剥き出しになったパイプ。薄暗い通路。
この先にあるのはこの豪華客船を支える、屋台骨。

「――行くよ」
流石に広い。これだけの人数で動いているのに、余裕すらある。
どうして、これだけの物が何十年もの間行方不明になっていたのか。あたしはそんなことを考えてしまう。


オレンジ色の照明が、緊張の表情を浮かび上がらせる中、しばらく進んでいると、道が二手に分かれていた。
「さて、どっちに行くべきか……お前ならどうする?」
シグナム副隊長があたしの顔をチラリと見る。
それに釣られてか、皆の視線が集中する。うぅ、何でこっちに振るんですか!!

そりゃあ、執務官になったら、こういった場面で指示を出す事も多いだろうし、経験をするに越した事はないけど……。

あたしはブリーフィングで見た、船内の見取り図を思い出す。
地図はクロスミラージュの中にも入っているが、そんな物を一々、見ている訳にも行かない。
即断する場面だって、必ず在るのだから。

「―――確かどちらのルートも、先の機関室前で合流していました。それぞれの分隊で分かれて動くべきと思います」
ここまで、通信にノイズが入る以外に異常らしい異常は無い。むしろ無さ過ぎる。
この先には、突然の事態があるかもしれない。

だからこそ、隊を二つに分けて動くべき。
余裕があるといっても、もし通路で固まって動いていたら、戦闘があった際、此方が動きを制限される可能性が高い。

隊を分ければ、戦闘でも撤退も、やり易くなる。
それに二つは大きく離れている訳ではない。救援もすぐに行える。

あたしの出した答えに、フェイト隊長は満足そうに頷いた。
「周囲の状況、此方の人数、突然の事態に対する対処も考えた……良い答えだよ」
正解となったようだ。内心で安堵の溜め息を吐く。



ライトニングは右手側の道を。スターズは左に、それぞれ進んでいく。
ちなみにリイン曹長はライトニング側に行っている。
戦力的に、フルバックのキャロは攻撃力が低い。ここではフリードもヴォルテールも召喚出来ない。

フリードは通路に突っかかるだろうし、ヴォルテールなんて呼んだ日には、あたし達は仲良くミッド沖で魚の餌だ。


そういう事で向こうは五人。此方は四人となった訳だが……。

「なんも起きねぇな……つーか、何もねえな……」
ヴィータ副隊長がポツリと零す。

そう、何も無いのだ。今まで、何も。そして今も。

「……? 何も起きないなら、その方が良いじゃないですか。さっさとロストロギアを封印、回収出来るんですから」
スバルは首をかしげて言った。あぁ、こいつはもう!!

「スバル……この船が行方不明になった時の資料、ちゃんと読んだ?」
「はい、ちゃんと目を通しました」
なのは隊長の言葉に、スバルはハッキリと答えた。


あ、なのは隊長が苦笑いしてる。

「あのなぁ、スバル?この船が行方不明になったのは、いつだ?」
「えっと……二十年以上前、ですよね?処女航海に出て、そのまま……」
呆れたといった風に、質問するヴィータ副隊長。そして少し考えながら答えるスバル。
「その時……どれだけの乗客、クルーが乗ってた?」
「えっと………結構乗ってた?」
流石に人数まで行かなかったか。仕方ないと、助け舟を出してやる。

「乗客はVIPを含めて、477人。クルーも、200人近く居たらしいわ」
「「えぇッ!?そんなに!?」」
「―――何で、なのはさんまで驚いてるんですか?」
「え?あぁ、うん……それ位だったよね……うん、そうそう……」


…………忘れてたな、絶対。口にしないけど。

ヴィータ副隊長も、呆れたとばかりの視線を向けている。

「ゴホン。ともかくだ、それを頭ん中に入れた上で、考えてみろ。」
「えっと……」
「この船、埃が溜まってたり、汚れてたりしたか?」
「外壁は……でも、中は凄く綺麗でした。シャンデリアとかも、もう……ピカピカで」
「じゃあ、ここまでで……死体はあったか?」
「……え?」

そう、この中は本当に何も無い。
埃も、汚れも、死体さえも。
二十年以上ずっと人知れず彷徨っていた船。生存者がいるとは到底思えない。
そんな船を、隅々まで掃除する物好きだっていないだろう。


だから、この船はおかしいのだ。
“本来、在る筈のものが何も無い”のだ。

スバルも気が付いたらしく、顔に不安の色が出てきていた。
「ティ、ティア……もしかして、ここって………?」
な、何よ、その顔は!!アンタ、何を言う気なのよ!!


「ゆ、幽霊船………なのかな?」






しん……と、静まる。


幽霊船。
訓練校時代。同期の一人が地球製のホラー映画を持っていた。
その一つに、船を題材にした物があった。


行方不明になった船。それを何とか発見するものの、乗客乗員は皆、姿を消していた。

だが、その部屋にはまるでついさっきまで人が居たかのような痕跡が残されていた。

掛けられたばかりのレコード。
温かなコーヒー。
煌々と照る、オイルランプ。


そして、温もりを宿したままのベッド。




ア〜ッ!!嫌な事思い出したッ!!

スバルが「これ見たら、涼しくなるって〜!一緒に見よ〜♪」とか言って借りてきたのよ!!

えぇ、涼しくなったわよ!!
その代わり、呪われたみたいに一週間、悪夢にうなされて寝不足になったけどね!!


くそう、何であんな……怖いのよ。
















「――――どうした、そっちで何かあったのか?」
バカスバルのせいで、ライトニングと合流した後も、スターズの士気は駄々下がりだった。

向こうは一様に首をかしげているが、話したくない。
さっさと頭の中から追い出したい。それがスターズの共通見解だ。


ともかく、何事も無いままにあたし達は辿り着いた。
「――ここから強い魔力を感じるね」
フェイト隊長の言葉に、全員がそれを見上げた。

一際大きな、重厚な扉。ここが、機関室だ。
「ここまで何も無かったが、油断はするな。むしろここが、最も危険な場所だ」
シグナム副隊長の言葉に、あたし達は頷き、それぞれデバイスを構える。

「―――じゃあ、開けるですよ?」
リイン曹長がドアの脇にあるコンソールを操作し、ドアが低く音を響かせて開かれていく。

機関室には明かりは無く、部屋の奥を入り口から見知る事は出来ない。
ただ、暗闇から動力が動いている音だけが届く。

ゆっくりと、慎重に中に足を踏み入れる。

《Master 室内に魔力が充満しています。濃度72.19%》
「70%を越えてるか……息苦しいのはそのせいだね……」
大気中の魔力は±15%までが理想とされている。それ以上でも以下でも、リンカーコアが魔力を吸収出来ないのだ。

濃度70%越え。つまり今、体内にある魔力と、カートリッジ分だけしか使えないという事だ。
ある意味、AMFよりも厄介だ。


「なのはさん、やっぱりここに……?」
「だと思う。皆、注意して」

ここに入った瞬間から、異常ともいえる気配を感じた。
センサー系は魔力しか感知しないけど。でも気配察知とか、ヤスフミみたいなことの出来ないあたしにさえ、それを感じる事が出来た。

「――ん?」
何か、床が凸凹しているような……?
「なんか、動き難い。マッハキャリバー?」
《床が原因不明の凹凸になっていて、ホイールが上手く接地出来ません》


なのは隊長が、灯り代わりにスフィアを幾つか浮かべる。
空間が広すぎて光量が足りないが、その内の一つを床に送る。

「何これ……植物?」
せり上がった床板の下に見えるのは、木の根っこに見える。

あたし達がそれに気が付いた瞬間、突如として闇が晴れた。
一瞬、視界が眩む。


「――な、何だありゃっ!?」
ヴィータ副隊長が声を上げる。あたし達がその視線の先に向いた時、目を見開いた。


船の全ての動力である巨大なエンジン。それを取り込んでそびえる巨大な木。
その根は、床一面に走り………いや、壁も天井もだ。

そしてそれは、ドクンドクン、と脈打っている。


幹は太く、葉も青々とし、天井に沿って枝を広げている。

まるで、樹齢千年を越える大樹。



「―――ようこそ、僕の城へ」
突然、声が響いた。あたし達の緊張が一気に高まる。

「誰!?何処にいるの!?」
フェイト隊長の声が響く。しかし、反応は無い。


「何処にいやがる!さっさと出て来いッ!!」
ヴィータ副隊長の苛立った声が次に響いた。


「――やれやれ、乱暴な物言いだね?」
呆れたような声が聞こえ、そいつは現れた。



―――――――幹の中から。



ごぼん。と、音がしたかと思うと、幹が口を開き、そこから姿を現したのだ。


出て来たのは黒髪の男。年の頃はヴァイス陸曹と同じくらい。
異様に肌が白く、前髪で目が隠れている。

身長は、それなりにある。シグナム副隊長より少し低いぐらいか?

そいつは黒のタキシードを着ていて、木の幹に寄り掛かっている。



この船で初めて出会った生存者。しかし、こんな異常ともいえる世界で二十年以上も生きていられるだろうか?


答えは――――――恐らくNo。
ある一つの可能性以外は。





その事に隊長達も、もちろん気付いている。
「こちらは時空管理局 遺失物管理部、機動第六課です。あなたは、この船の乗客の方ですか?」
なのは隊長は警戒を緩める事無く、しかし言葉の上では、それを思わせないように声を掛けた。

「乗客ね…………まぁ、前はそうだったかな?でも、今は違うな。さっきも言ったけど、ここは僕の城だ」
「―――他の乗客やクルーはどうなったか、知っていますか?」
「知っているよ、もちろん。でもそれを君達に言った所で……何の意味も無いよ?」
男は肩を竦めて答えた。まるでこっちをバカにしている様な……いや、実際そうなんだろう。


「でもまぁ……それが君達の仕事というのなら…………協力する事も吝かではないよ?」
そう言って、男は右手を静かに上げた。

「――フェイトさん、あれ!!」
エリオが枝葉の所を指差した。皆の視線が集まる。


そこにあったのは……違う!葉の中から出て来ているっ!!

赤い……血の様に赤い、鬼灯の様な何かが……一杯に生っていた。


あたしの頭の中でガンガンと警鐘が鳴り響く。恐らく皆一緒だろう。嫌な予感しかしない。

あいつは何て言った?
協力する?これがあいつの言う、協力なの?

その前に、何の意味も無いとまで言った。それはどういう意味?




あぁ……分かっているんだ。最悪の答えだと。
そしてそれは、皆が同じだろう事も。


皆、渋い顔をしている。
リイン曹長とキャロにいたっては、顔がこれでもかと青ざめている。




やがて、赤いそれが口を開いた。
ネッチョリとした糸が断面を渡る中、パラパラと降って来る白い雨。

床に落ちると音を立てて軽く弾んだり、もしくは割れたりしている。

その内の一つがバウンドして、此方の足元に転がってきた。


そして、あたしはもろに『それ』と視線を交わしてしまった。


窪んだ黒い瞳。剥き出しの白い肌。笑っている様にも見える口。
頭髪は僅かに頭皮と共に残り、恐らくは美しかったであろうブロンドヘアーも、今は見る影も無い。



生まれて初めて見た、本物の頭蓋骨。
白骨化した、本物の死骸。


「――――ッ!!」

誰かが息を呑んだ。いや、それはあたしだったのかも知れない。



「―――これが、君達の探している他の乗客やクルーだよ?良かったね……見つかって」
骨の雨が降り続ける中、男は何事も無げに言う。
こいつ……ヤバイ。本気でヤバイ。


「あなたが……これをやったの?」
フェイト隊長が、吐き出すように問い掛ける。

「そうだよ。この……ロストロギアの餌にしたんだ」
「「「――――ッ!!」」」

一瞬で変わった空気に、隊長達が動く。

「ハァッ!!」
「オラァッ!!」
シグナム副隊長の斬撃が、床から伸びた根を両断し、ヴィータ副隊長の一撃が、上から襲ってきた枝を砕き、

「シュートッ!!」
なのは隊長が抜き撃ちで、男に向かって砲撃を撃ち放った。

「―――おっと」
「な……っ!?」
ショートバスターが当たると思った瞬間、いきなり霧が渦巻き、砲撃を呑み込んだ!!


あたし達は動揺を隠せなかった。
幾らリミッターが掛かっているといっても、あの不意撃ちを……簡単に防ぐとか、ありえない!!



男がニヤリと笑う。
そう……まるで最上の料理を目の前にしたかの様な、そんな顔だ。


「素晴らしい魔力……これならば十二分に……」

その言葉を皮切りに、戦いは始まった。


「武装解除の意思無し……!あなたを大量殺人、ロストロギア不法所持、並びに局員への敵対行動の罪で逮捕します!!」
「各自、周囲に警戒!」
「ヴィータちゃん、攻撃来ます!迎撃を!!」
「よっしゃあ、そのままアイツをぶっ飛ばす!!行くぜシグナム、リイン!!」
「応ッ!」
「ハイです!!」

「キャロ!フリードであれを焼き払って!!あたし達はキャロとフリードをガード!!」
「「「了解!!」」」
































そして、あたし達は――――――――――――負けた。




















後書き。という名の三次創作








アリシア「はい。という事で第四話をお届けいたしましたが、如何でしたでしょうか?アリシア・テスタロッサです」

古鉄《えらく普通に入りましたね?古き鉄、アルトアイゼンです》

連音「今回は色々と補足していく事もあるからな。辰守連音だ」


アリシア「さて、とうとうアクションにサスペンス、ついにはホラー的展開になり始めちゃったわね」

連音「今更だが、これを五話で納めるのは不可能だったな」


(竜魔の忍、やれやれと首を振る。全くその通りです)


古鉄《今回、ついに何があったのか、明らかになってきましたね》

アリシア「この話は、後半にするかどうか迷ったけど、結局、今やっておけば後がスムーズに行くと考えたみたいね」

連音「ともかく、ここからが本番だな」

古鉄《その前に、あなたは戦闘中ですよね?》

連音「………早く終わらせるさ」

アリシア「とりあえず、今回のゲストを呼びましょうか。どうぞ〜♪」



(金色の女神が手を振ると、スポットライトが二人を照らした。出て来たのはツンデレガンナーと、KYわんこ)


ティアナ「ちょっ!ここでもそんな呼び名なの!?えっと、ティアナ・ランスターです」

スバル「こんにちは、スバル・ナカジマです!!KYじゃないもん!!」


(ゲストの二人、思いの丈を叫び、そして頭を下げる)



アリシア「ゲストも紹介した所で早速、作中の補足を入れたいと思います」

連音「一応、話の中でも出て来る予定だが……ま、予習のようなものか」










*レガシィ・ハウンドってどんな組織?





アリシア「このお話のオリジナルの組織、レガシィ・ハウンド。ツラネ、説明よろしく〜っ!」


(そう言って、金色の女神は竜魔の忍に紙を手渡す。完全に丸投げだ)


連音「やれやれ……レガシィ・ハウンドは、表向きはクラナガンに本社を置く大企業、グルータス・コーポレーション。
ここは貿易を中心に、管理世界はもちろん、管理外世界への買い付けも独自に行っている。

貿易で扱う品物は衣料雑貨に始まり、果ては美術品まで幅広く。ミッドチルダの流通を支えているといっても過言ではなく、
ミッドに地球の文化品を輸入しているのも、ここ…………らしい」


(あくまでも、この話の中の設定です)


アリシア「ところが、それだけではないのよね?」

連音「あぁ。この会社の裏……つまり違法に、古美術品を持ち込んだりとかしている。それを行っているのが」

古鉄《それがレガシィ・ハウンド、という事ですね?》

連音「厄介な事に、こいつらの扱っている商品には、ロストロギアも含まれているんだ」

スバル「そんな!?ロストロギアって凄く危険なのに!!」

ティアナ「ロストロギア密売……軽くない犯罪ですよね。どうして、それだけの事をしている組織を放置しているんですか?」

アリシア「うん。そこの所は……ちょっと複雑なのよね〜」

ティアナ「???」

連音「ロストロギアを含めた密売。管理局としては摘発する対象だ……だが、そうも行かない事情があるのさ」

スバル「えっと、どういう事ですか?」

連音「彼らは必ずしも…………管理局と、敵対してはいないからだ」

スバル ティアナ「「ッ!?!?」」







*レガシィ・ハウンドと管理局の関係





ティアナ「さっきの発言……まるで管理局とレガシィ・ハウンドが、裏で繋がっているみたいに聞こえましたけど?」

連音「概ね、間違ってはいないな。そもそも、グルータス・コープは管理局設立の際、多額の資金援助をしていた。そのため上層部……最高評議会とも繋がりが深い」

スバル「でも、最高評議会はもう存在しないんですよね……だったら」

アリシア「ところがどっこい、そうも行かないのよ」

スバル「えっ?」

アリシア「長い間の繋がりは、資金の事だけじゃないの。彼らの顧客には、本局上層部の名前も入っているのよ」

ティアナ「それって、癒着しているって事ですか!?」

アリシア「ま、そういう事ね」


(ツンデレガンナー改め、幻影の銃士、驚きに目を見開く)


スバル「で、でも!これから色々変わっていくだろうし……そういうのも、一掃されますよね!?」


(KYわんこ改め、鋼の疾走者、必死に言う。しかし竜魔の忍は首を振った)


連音「そいつは難しいだろうな」

スバル「ど、どうしてですか!?」

連音「先に上げた理由以外に、もっと重要な事がある」

スバル「それって、何ですか?」

連音「管理局はロストロギアの封印、保管を行っているだろう?その何割かはレガシィ・ハウンドから買い取った物だ」

ティアナ「えぇっ!?」


(竜魔の忍、とんでもない事をさらりと言ってのける。あくまでも、この話の中だけですので)


連音「レガシィ・ハウンドは純粋なビジネスとして活動をしている。管理外世界の遺跡とかを発掘したりもするのだが、

その中で、危険度の高いロストロギアを発見、もしくは裏のルートに出る事もある。それを、向こうは管理局に売りつけているんだ。

それ以外にも、管理局が危険度の高いロストロギアを管理外世界で発見したとしよう、
管理局には『管理外世界には基本、干渉してはならない』というお題目がある以上、手は出せない。じゃあ、どうするか……?」

ティアナ「…………もしかして、そういう事なんですか?」

スバル「えっ!?ティア、分かったの!?すごい、さすがティア!!」


(鋼の疾走者、幻影の銃士に抱きつく。銃士、それを適当にあしらう辺り、手馴れたものである)


ティアナ「はいはい。説明したげるから、落ち着きなさい」

スバル「は〜い」

ティアナ「つまり、レガシィ・ハウンドにその危険なロストロギアを奪わせて、管理局が買い取る。
もしくは、それによって管理局が介入できる条件を意図的に作り出す。そういう事なのよ」

スバル「なるほど〜…………ん?でも、それって結構アウトだよね?」

ティアナ「結構どころか、ぶっちぎってアウトよ。でも、そんな方法を少なからず取っていた、なんて知られたら……管理局は今度こそお仕舞いね?」


(突如としてファンファーレ。大当たりという事らしい)


ティアナ「嬉しくないわね……全然」

アリシア「まぁ、それは裏の理由。それ以外にも、表の理由があるのよ?」

古鉄《と、いうと?》

アリシア「表の顔……グルータス・コープはかなりの大企業よ。レガシィ・ハウンドを壊滅させる事は、イコールこの会社を潰す事になる。そうなったら……」

連音「ミッドチルダを中心とした管理世界は、経済、流通面で大打撃を受ける事になる。下手をすれば、大不況の引き金にさえなりかねない。
何せ、相手はシェアトップ企業だからな。他の会社が打撃を受けない訳が無い」

アリシア「そうなったら、管理局も今までのような運営は出来なくなる。悪循環に陥るでしょうね……」

ティアナ「つまり、根本を叩きたくても叩けない……そういう事ですか?」

連音「というより、『清濁 合い合わせて一つ』という事だ。澄み切った水に、魚は住めない。これもまた、一つのバランスなのさ」


(ゲストの二人、理解は出来るが、納得は出来ないといた顔をしている。世の中、割り切れない事の方が多いものだ)



アリシア「――さて、補足の方はここまでにしましょう!」


(金色の女神がパン、と手を叩く。不思議と、シリアスな空気が消えていく)


アリシア「ここからは、何時ものノリで進めて行きましょ〜ッ!!」

古鉄《ここからが、我々のクライマックスですよ?》


(青いウサギ、解き放たれたかのように飛び回る、撃ちまくる。スタジオの修繕費はクロフォード財団に行きます)


ティアナ「あ……あの人は本当に、フェイトさんと姉妹なんですか?」

連音「恐ろしい話だが、事実だ」


(竜魔の忍、深々と溜め息。色々とあるものだ)


アリシア「そういえば……ドキたまの方で、ヤッちゃんが産卵してたじゃない?」

連音「産卵言うな。で、それがどうした?」

アリシア「いや〜、あれからどんなしゅごキャラが生まれるのか、ちょっと考えてみたのよ」

古鉄《それはもう、シスターシオンしかないでしょう?》

ティアナ「あたし、あんなのが生まれたら即刻否定するわね……ていうか、しゅごキャラってなりたい自分とか、そういうのの具現化でしょう?」

スバル「て事は、ヤスフミのなりたい自分って……えぇ〜ッ!?」

アリシア「アニマとかって話なら……まぁね。でも、私は違うと思うわ」

連音「なら、どんなだと思うんだ?」


(竜魔の忍、金色の女神に問い掛ける。金色の女神、その豊かな胸を張る)


アリシア「ヤッちゃんが成りたいもの。それは『守りたいものを守って、壊したいものを壊す』。そういう存在よね?
そんなヤッちゃんの理想を地で行っている人……ヘイハチお爺ちゃんでしょ。
そして、ヤッちゃんにユニゾンの力を与えたっていうあの人……それらを加味して考えた結果!!」


(金色の女神、パチーン!と指を鳴らす。すると後ろに巨大モニターが出現した。映し出されるのは……見た事のある人物に似ている)


連音「何だ、この……侍みたいな着物を着た初代リインフォースが刀差して、流星柄の襟付きマントを纏った様な奴は?」


(そう。正しくそんな感じ)


アリシア「これが、ヤッちゃんのしゅごキャラ(アリシアさんの勝手な予想です)よ!名前は『シュテルン』。ドイツ語で『星 星辰(星座)』の意味ね。

連音「ほう?」

アリシア「性格は見た目に反して、結構いいかげん。無表情のまま、他のしゅごキャラにセクハラも働くの。あ、女の子よ?」

ティアナ「……最低ですね」

アリシア「その辺はあれよ……ヘイハチお爺ちゃんって、隙を見せるとすぐ、お尻触ってくるから」

連音「古き鉄……その体現。とはいえ、セクハラを体現するというのは……」

アリシア「で、お爺ちゃんみたいに何物にも縛られず、自由なの。自分の中の筋を通すためなら、ヤッちゃんにも縛られない。
でも、自分が納得する事なら、何の躊躇も無く力を貸すの」

スバル「……結構、細かいんですね……アリシアさんって」

連音「豪快な所は豪快なんだが……変な所に拘るんだ」

アリシア「じゃあ、次は私が作った【アンロック!蒼凪恭文、キャラチェンジ!!】を見て頂きましょ〜ッ!!」

連音「……ほらな」

ティアナ「…………なるほど」


(スタジオが暗くなり、映像が変わる。あくまでもネタですので)



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



恭文「シュテルン、来い!!」

シュテルン「古き鉄と、星の光の名に於いて……!」


(青き古き鉄と流星の剣姫、刀を抜き放ち、高々と掲げる)


シュテルン「我が力、今こそ!!」

恭文「僕の心……!」


(蒼い風が、光が、二人を中心に吹き荒れ、その中でたまごに包まれた流星の剣姫が古き鉄と一つになる)


「「―――アンロックッ!!」」


(それを裂いて現れるのは、新生した古き鉄の剣士。リーゼフォームのマントが、流星柄に変わり、ジガンもその色を白銀に変化させる)


【「キャラなりっ! エヴォルスターライトっ!!」】


(青き古き鉄、青白いオーラを纏ったアルトアイゼンを振るう。飛び散る光は、星のように煌いて散った)


「見せてあげるよ、生まれ変わった……ううん、新しく生まれた【旧き星鉄の剣士】の力を!!」




                              ロケ地 海鳴市

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


(上映終了。照明が点く)





アリシア「――――どうだった?私としては結構良い感じに出来たんじゃないかな〜って、思うんだけど?」


(金色の女神、やや興奮気味に反応を求める。三人は色々と言いたい事があって、何処からにすれば良いか分からない)


ティアナ「え、え〜っと……イインジャカイデスカ?」

スバル「そ、そうだよね……!うん、良いと思います………?」

アリシア「何か引っ掛かるけど……まぁ、概ね好評という事で」


(金色の女神、とりあえず満足したらしい。しかし、ここに異を唱える者が)


古鉄《ダメですね。全っ然、ダメです!》

連音「なんで戦人(バ○ラ)風!?」

アリシア「なんで!?あれ作るの、結構苦労したのに!!」

古鉄《まず、マスターがカッコ良過ぎます。それと私が全然目立ってません。そして、マスターがカッコ良過ぎます!》

ティアナ「同じ事言ってる!?」

アリシア「―――そっか。それじゃあ仕方ないか……」

スバル ティアナ「「納得しちゃったっ!?」」













(ED曲が流れ始める。今回は無駄に長かったような気が、しなくも無い)


アリシア「さて、スターズの二人はどうだった?」

ティアナ「―――何か、どっと疲れました」

スバル「あたしも、頭痛くなっちゃって……」

アリシア「前半は真面目な話だったしねぇ〜。次に呼ぶ時には、後半みたいなノリだけで行きたいわね?」

スバル「そうですね」

ティアナ「………………その時は、謹んで辞退させてもらいます」

???「ちょ〜っと待つです〜ッ!!」


(さて、締めようかという時、何処からか声が響いた。スタジオのドアをふっとばし、入って来たのは)


リイン「アリシアさん!さっきのあれは、どういう事ですか!?」

アリシア「リインちゃん!?え?さっきって……あぁ、ヤッちゃんのキャラの事?」

リイン「そうです!良いですか、古き鉄は三人で一つなんです!!そしてリインと恭文さんはラブラブなんです!!
なのにどうして、あんなリインの偽者みたいな新参者に、恭文さんを寝取られなきゃならないんですかーーーーッ!!」


(蒼い妖精、天に向かって吼える。つーか、色々とアウト)


アリシア「まぁまぁ、落ち着いて……ね?」


(金色の女神、そう言いながらジリジリと下がる。しかし、それを見逃す妖精ではない)


リイン「アリシアさん……向こうでちょっとお話しするです……もちろん、【高町式】ですよ?」

アリシア「いや〜、そういうの……医者に止められてるから……」

リイン「大丈夫です。リインは全然気にしませんから♪」


(蒼い妖精がニッコリと笑う。金色の女神、いきなりダッシュッ!)


リイン「あっ!!待つですーーーーーーーッ!!」


(妖精、女神を追ってスタジオを飛び出して行った)






古鉄《……あれ、本気で怒っていましたね?》

連音「やれやれ……じゃあ、締めるか。お相手は辰守連音と」

古鉄《古き鉄、アルトアイゼンと》

ティアナ「ティアナ・ランスターと」

スバル「スバル・ナカジマでした!!」


連音「では、また次に会うまで……どうか息災で」


三人《「「ばいば〜い!!」」》


























リイン「止まるです!そして、大人しく喰らうです!!えい、えいッ!!」

アリシア「よっ、ハッ!誰が止まるものですかぁあああああああああああっ!!!」









おしまい。


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