[携帯モード] [URL送信]

頂き物の小説
『とある部隊長と槍騎士のお婿さん』



「はい。今日の訓練始めるよ」

「「「「はい!」」」」

いつも通りなのはの掛け声でスバル達の訓練が始まる。僕は遠巻きで自主訓練、相変わらずの魔王っぷりでスバル達をしごいている。

「魔王じゃないよ!」

僕の心の声に突っ込んで来る魔王は無視の方向で……

「う〜……」

ジーッと恨みこもってますって目で僕を見ながらもスバル達の指導しているのは流石魔王である。

「だから魔王じゃないもん!」

「うるせー!!いいから集中しろよ!」

あっ、師匠が怒って注意してるわ。そんな微笑ましい光景を眺めつつ自分の鍛錬に集中しょうと気合いを入れようとした時

――っ!?これは!!

「魔力反応!?」

「皆!気をつけて!!」

異変に気付いた皆はなのはの掛け声にスバル達や師匠も身構える。僕もアルトを使えるように警戒していると僕達の目の前に魔法陣が現れ、一層警戒心が強まる

そして――

「到着!」

「は?」

魔法陣から現れたのは赤い髪の5、6歳ぐらいの小さい女の子が両手を上げて喜んだ姿だった。

「何?あの子は?」

「さあ?」

「えっと……」

現れた女の子にどうしていいかわからずに考えているのを構わずに僕達を見回して何かを探していて

「あっ、“父様”見〜つけた!」

女の子の発言に僕達の空気が凍りついた

―そして

「ヤ〜ス〜フ〜ミ」

「な〜ぎ〜さ〜ん」

皆がギギと言う音が聞こえるくらい僕の方に首を向けて冷ややかな視線をぶつけてきた。

「ちょっ、ちょっと!僕知らないからね!?」

皆の冷ややかな視線に僕は慌てて否定するが後の祭り

「バインド!?」

あっという間拘束されてしまいましたとさ……。

「どういう事だよヤスフミ!父様って!?」

「僕だって知らないよ!!」

「あの子が“父様”って言ってるでしょう!男って言ったらエリオを除いてアンタしかいないじゃない!」

「だから信じて!僕は無実だから!」

皆が女の子の父様発言に僕を完全に父親だと思われてしまった。おのれ!あの時の悪夢の再来か

「言い訳は見苦しいぞ。とっとと白状しろ」

「だから……」

師匠の言葉に僕が弁解しょうした時

「わぁ〜。小さい父様だ〜」

「えっ?僕なの……」

とてとてと女の子がやって来たのは僕ではなくエリオだった

「へっ?」

「はっ?」

『ええ――――っ!!!!?』

《まさかエリオさんとは……》

僕達の叫びの後にアルトの呟きが……っていうかやっとアルト出て来たね……

《ですね。もっと早く出番があると思っていたのですが……》

まあ、まだ始まりだからこれからでしょう

《そうですね……》

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

取りあえず僕達は訓練を中断し、女の子を連れて六課の食堂にやって来た。

「あむあむ」

自称エリオの娘は只今パフェを夢中で頬張っていてその隣にはどうしていいかわからない感じで困惑しているエリオが座っていて。僕達はあの2人から離れて様子を伺っている状況

「ねえ、ヤスフミ。あの子って本当にエリオの子供なのかな?」

「さあ……。フェイトは知らないの?………あれ?」

《マスター、後ろです》

「えっ?」

隣にいたフェイトにエリオの事を訪ねようと声を掛けたが姿が居なくて探していたらアルトの言葉に後ろを振り向くと

「どうしょう……エリオにあんな大きな子供がいたなんて……まさか私の知らない所で女たらしになっていたなんて……私どうすればいいの……」

フェイトは頭を抱え込んでしゃがみ込みブツブツと呟き暗いオーラを出してた

「ダメだこりゃ……」

「フェイトちゃん。相当ショックだったんだね……」

なのはの言葉に若干の諦めムードが入っているのは仕方ない。まさかエリオにこんな大きな子供が居たらショックだろうね

《所でエリオさんが父親ならば母親は一体誰なんでしょうか?》

「そう言われれば誰だろうね」

アルトの言葉に皆がう〜ん考えだした

「まさかキャロ?」

「いくら何でも無理ですスバルさん」

「じゃあティアナかスバルって事は」

「「ないよ(わよ)」」

《とりあえずあの子に聞いてみましょう》

「そうだね。エリオちょっと来て」

僕はエリオにこっちに来るように手招きした

「何でしょうか?」

「えっとあの子に聞いて来て欲しい事があるんだ。いい?」

「はい」

手招きにやって来たエリオは僕の頼みに頷いた

《それではあの子の母親は誰なのかを聞いて来てくれませんか?》

「母親ですか?」

《ええ、そうです。それから名前を聞いてませんから名前もお願いします》

「あっ、あの子の名前はわかりました」

《それで名前は?》

「“イリス”だそうです」

「じゃあ後は母親だね」

「はい。イリスちょっと来てくれる」

「何〜?」

エリオの呼び掛けにイリスはとてとてとやって来た

《あなたの母親は誰なんですか?》

エリオの呼び掛けに僕達のもとにやって来たイリスに訪ねるアルト

「母様はね。皆が知ってる人だよ」

アルトの質問に笑顔でそう答えるイリスなんだけど答えになってないし、でもこの子の身に着けてる髪飾りは何処かで見たような………

「ん?何や皆集まって何してるん?」

食堂の入り口から僕達を見つけた。狸ことはやてがやって来た

「あっ。“母様〜”」

はやての姿を見かけてイリスはとてとてと向かっていった

「はっ?何や一体?この子は何なん?」

困惑するはやてに母親と呼び甘えるように抱き付くイリスを見て僕達は嫌な予感と鳥肌が全身にたちそうな寒気が……

「は〜や〜て〜」

黒いオーラと心臓を鷲掴みされたような声を出しながら怒り心頭のフェイトはデバイスを起動させてはやてに向かった

「な、何やフェイトちゃん……何で怒ってるん……?」

フェイトの怒りの威圧感に恐怖を感じて後ずさるはやて、僕達も怖くて2人から距離を取って隠れた

《近寄らない方が無難ですね……》

アルトもフェイトから放たれる恐怖を感じていた

「何で?そんなのはやての胸に手を当てて考えればいいじゃない」

「い、いや……。だから言ってる意味がわからへんって……」

「そう……。じゃあ一度頭と胴体切り離そうか?」

「だ、誰か助けて――!!フェイトちゃんがご乱心や――!!!」

フェイトの死刑宣告に命の危機を察し慌てて僕達に助けを求めるはやて

―が僕達は助けない。だって命は大事だもん

「う、裏切り者――!!いやぁぁぁぁあ!!?」

食堂に狸の断末魔の悲鳴が響いた

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

今日はとんでもない日になった。僕の事を父親と呼んでくる女の子がやって来るし、まさかその子が僕とはやてさんの子供だなんて思わなかった………。

肝心のはやてさんはというと

「だ、だから私は知らんて!!信じてフェイトちゃん!!」

バインドでぐるぐる巻きにされて、フェイトさんから尋問中だった。

「そう。認知しないんだ…」

「あのね、早く認めた方がいいよはやてちゃん。私じゃ今のフェイトちゃんを止める事出来ないからね」

「ってなのはちゃんは私の事弁護してや!!」

《そう言われましてもあの子があなたの事を母親と呼んでますし、そう理解せざるを得ません》

「はやて、エリオに手を出すなんて最低だよ。しかも子供までいるなんて……」

「違うわ!私にはロッサがいるし!いくら何でもありえへんって!!」

必死にフェイトさん達に無実を訴えるはやてさんなんだけどフェイトさん達は納得していないって顔は僕の目から見てもわかった

「ねえ、イリス。本当に母親ははやてさんなの?」

「うん。八神はやてが私の母様だよ」

僕の疑問にイリスは笑顔で答えた。やっぱり事実のようだ。

「とりあえずいっぺん死んでみようか」

「ちょっ!落ち着いてやフェイトちゃん!!」

「私はもの凄く落ち着いているよ。目の前のショタコンに裁きの制裁を!!!」

「だから私は無実やって!誰か助けて――――っ!!!」

ザンバーを振り上げたフェイトさんに必死に無実を訴えるはやてさんに僕はどうすればいいか悩んでいると……

「また魔力反応!?」

「反応が近い!!注意して!!」

また魔力反応が現れ皆がとっさに警戒し出すがふとはやてさんを見ると命拾いしたのかホッとした顔になっていた。魔法陣が現れ、僕達はより一層警戒した。いつでもストラーダを起動出来るように準備は万端だ。

そして魔法陣から現れたのは

「イリス!」

「父様」

父親らしき男の人が現れてイリスは嬉しそうにその人に抱き付いた。

「ダメじゃないか勝手に出掛けちゃ!皆が心配してたんだんだよ!」

「あう〜、ごめんなさい……」

男の人に注意されてシュンとなるイリス。よく見ると僕のバリアジャケットに似ていてあの容姿にこの声って――ま、まさか!!?

「え、エリオなの……?」

「はい。そうです」

恐る恐る訪ねるフェイトさんに男の人はそう答えた。

『ええ―――っ!!?』

その男の人は未来の僕だとわかり、本日2度目の叫びが食堂に響いた。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「イリスがご迷惑をお掛けして本当にすみませんでした」

深々と頭を下げて僕達に謝る未来エリオ

「時間転移魔法を覚えたのが嬉しくて誰にも言わずに出掛けてしまい。居なくなって慌てて捜してたんです」

「だって父様と母様の過去の姿を見たかったんだもん」

未来エリオの説明に頬を膨らませて言い訳するイリス

よく見ると未来エリオは……うん、あれだ

《身長はやっぱり追い越されてしまいましたね》

「言わないでくれるかなアルト!」

僕の気にしている事をアルトに先を越されて言われた。

「ああ、そういえばまだ自己紹介って言うのは変かな?初めましてエリオ・M・八神です。新設部隊の部隊長を勤めてます」

「ぶ、部隊長!?」

「凄い昇進だね!」

凄っ!はやてと同じくらいにまで昇進するなんて

《マスターとはえらい違いですね……》

溜め息混じりに呟くアルトにカチンと来た。余計なお世話だよ!

「凄いねエリオ。立派になって……」

フェイトは未来エリオの昇進をジーンと涙ぐみながら感動していた。これがいわゆる親バカなのかな……。

《そうでしょうね。フェイトさんにとって最高の親孝行でしょう》

アルトも僕の考えに賛同してくれた。

「エリオ君……」

フェイトの隣には複雑な表情でエリオとはやてと未来エリオを見ているキャロ

これってもしかして………

「ねえねえエリオ。イリスって本当にエリオとはやてさんの子供なの?」

「「っ!?」」

スバルの質問に狸の顔はみるみる青ざめていくのと再びフェイトに黒いオーラが吹き出していく

「はい、そうです。姉さ…じゃないスバルさん」

「へえ〜」

「そうなのね」

未来エリオの言葉に感心するスバルとティアナだけど……今、引っかかる言葉があった。

姉さ?どういう事?

「そう……今ここではやてを消せばエリオは間違った道を歩まないよね」

「だ、だからって私にザンバーを振り下ろそうとするのは止めてや―――!!!!」

今にもザンバーを振り下ろそうとしているフェイトにはやては必死に制止の声をあげていた。

「俺達は六課解散してから3年で結婚したんです。ちなみに告白は俺でプロポーズははやてさんからでした」

『ええぇぇぇぇぇぇっ!!』

フェイトとはやてのやり取りを気にせずに未来エリオは更に爆弾を投下した。さ、3年で結婚!?プロポーズははやてからってどんだけよ!

「う、嘘やぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

未来エリオの言葉に頭を抱えて叫ぶ狸でした









◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

はあ……こんな事ってあるのね……。未来のエリオは立派になって部隊長を勤めてるし、まさかはやてさんと結婚ね……

どうやってオトしたのかしら?もしくははやてさんがどうやってエリオにフラグを立てたのかよね

そのはやてさんはと言うと……

「嘘や……これは夢なんや……私がエリオに手を出すなんてありえへん……絶対ありえへん……」

隅の方で膝を抱えて座り込んでブツブツ呟きながら現実逃避中だった。

「はやてかなりショックだったんだ……」

「私の方がショックだよヤスフミ!はやてにお母さんって呼ばれなきゃいけないんだよ!」

確かにそうよね。フェイトさんはエリオの保護者だし、当然母親になるんだから結婚すればはやてさんからお母さんって呼ばれなきゃいけない訳だし複雑よね……

「落ち着けテスタロッサ。まだそうとは決まっていないはずだ」

慌てふためくフェイトさんにシグナム副隊長が落ち着かせようと声を掛けていた

「そうだ。これからエリオとはやての距離を考え直さないと……」

「ダメだな……落ち着く所か話を聞いていない……」

完全に暴走するフェイトさんを見てため息を吐くシグナム副隊長

「所でエリオ、ああ未来の方だ」

「……何でしょうか?」

「何故身構えるんだ?」

呼ばれた途端に真剣な眼差しになり、身構える未来エリオに思わず驚いた表情のシグナム副隊長……っていきなり何してるのよ!?

「ああ、すみません。はやてさんと結婚してから月1に嫌がらせで俺に襲撃して来るので危機察知能力が上がってしまって条件反射で身構えるようになってしまったんです」

「何をしてるんだ未来の私は……」

未来エリオの言葉に額に手を当てて困った顔のシグナム副隊長に私は未来エリオに少し同情してしまったのは内緒しよう。

だってあんな人に襲撃されたら嫌でも警戒心は強まるわよ!

「まあいい、所で主とヴェロッサとの仲はどうなったんだ?」

「っ!?」

気を取り直して未来エリオに訪ねるシグナム副隊長、確かはやてさんはアコース査察官と恋人だし何でエリオと結婚するなんて事はわからないわよね……。

「ええ、実は……お2人は別れたんです……」

『ええっ!?』

「ど、どういう事やエリオ!?」

あっ、はやてさんが復活した。結婚して子供がいた事実よりも未来エリオの話の方が気になるみたい

「原因はヴェロッサさんの浮気です」

「はあ!?」

「う、浮気!?」

「そうです。査察の仕事で一緒に仕事をした女性と意気投合してそのまま一緒に飲みにいった挙げ句に既成事実にまで発展してしまいその女性に子供が出来てしまったんです」

「う、嘘やろ……」

未来エリオの言葉にはやてさんの表情はみるみる青ざめていく。私も同じようになったら絶対にショックを受けるわよ。…っていうか何やってんのよ!!あの人は!!

「その女性は管理局でのお偉方の娘さんだったのでヴェロッサさんは否応なく責任を取る事になってしまってはやてさんは捨てられてしまったんです…」

「そ、そんな……」

「あの男なんて事を……」

「許さねえ……」

更に絶望感に落ち込むはやてさんと衝撃の事実に怒りをあらわにするシグナム副隊長とヴィータ副隊長

「その事実を知った六課メンバーと聖王教会の人達で制裁という名のお仕置きフルコースをヴェロッサさんは味わいましたけどね……」

まあ、それぐらい当然でしょう。私だって皆と同じで絶対に許さない

「それで落ち込んだはやてさんを俺達が励ましてそれで皆さんではやてを監視していたんです。そのまま自殺するくらい絶望感に落ち込んでいましたしね……」

「そう…なんだ……」

「確かにそれぐらいになってもおかしくないよね」

《まったくですね。女性の敵です》

はやてさんがそうなると知り、フェイトさんはどのような表情をすればわからないって感じだし、ヤスフミもアルトもフェイトさんと同じように困惑していた。

「父様〜、嘘はダメだよ」

『はあっ!?』

イリスが未来エリオへの注意に皆が思わず唖然となった。

はあっ!?嘘ってどういう事よ!?

「あちゃー、イリスにはバレちゃったか」

「わかるよ。だって父様と母様の子供だもん」

「えっ?エリオこれって嘘なの?」

「すみません、これ作り話なんです」

『だあぁぁぁぁぁぁぁ!!』

悪戯な笑みで頭を下げて謝るエリオに私達は思わずズッコケた。

全く!たちの悪い冗談は止めなさいよ!!

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

いやはや僕達がこんなに騙されるとは思わなかった……

《まったくです。私まで騙されてしまうとは……》

流石のアルトもショックを隠せないようだ。まさか未来エリオがこんな嘘をつくとはね……。

「ダメだよエリオ。人を騙すような嘘をついちゃ」

流石にフェイトも少し怒った顔で未来エリオに注意をしている

「すみません。はやてさんと結婚してからこういうのも覚えて出来るようになったんです」

『あ〜っ』

未来エリオの言葉に皆、同意して頷いた。あ〜。なるほどね狸の事だもんよくやるからエリオも影響を受けちゃった訳ね。

「何で納得するねん!?」

だって狸だもんしょうがないじゃない

「む、ムカつく…」

プルプルと震えながら怒っているはやては無視しておこう。

「ねえねえ大人エリオ」

「何ですか姉さ……スバルさん」

「あんたもう少しネーミングセンスを……ってちょっと待ちなさいエリオ。今、スバルの事を“姉さん”って呼ばなかった?」

ティアナの指摘にようやく僕は確信を得た。

確かに未来エリオはスバルの事を姉さんと呼んでいる

「あっ、確かにそうですね。スバルさんの事を姉さんって呼んでいたしどういう事なの?」

「そうですね……」

キャロの疑問に未来エリオはう〜んと腕を組んで悩み

「エリオ、教えてくれないかな?」

「……わかりました。教えます」

フェイトの頼みに渋々折れた未来エリオ

《それで理由は何でしょうか?》

「実はスバルさんとギンガさんと俺は姉弟になったんです」

『ええ―――っ!!!?』

「ど、どういう事エリオ?!私、何かした?!もしかしてキャロに不満があったの?!それともヤスフミが何か嫌がらせとかした?!もしくはクロノ達が嫌いになったの?!」

「お、落ち着いてフェイトちゃん」

「だって!だって!エリオがナカジマ家に養子に行くなんて信じられないよ!!」

告げられた事実に思わず未来エリオの両肩を掴んで揺さぶり問い詰めるフェイトはかなり動揺していた。っていうか僕はそんな事しないよ!!

《全くです。いくら身長が追い越されたくらいで嫌がらせをするほど器が小さい男ではないですよ》

「変な事言わないでくれるかな!」

《一応誤解されないようにと思ったんですが余計でしたね》

アルトの言葉にカチンと来たが黙る事にした。ここでやったら堂々巡りになるのはわかってる

「フェイトさん違いますよ。いくら姉弟って言ってもナカジマ家の養子になっていません」

「で、でも姉弟って…」

「姉弟は姉弟でも義姉弟です。安心して下さい」

「そ、そうなんだ……」

未来エリオの説明にフェイトはとりあえず安堵の息をはいた

「何でギンガさんとスバルと姉弟になったの?」

「ああ、それはティアさんとキャロに原因があるんです」

「「はい?」」

《どういう事ですか?》

「それはティアさんとキャロが姉妹になった事がきっかけなんです」

「姉妹!?」

「ティアナさんと私が!?」

「そうだよキャロ。それから後でルーテシアとも姉妹になるから」

「ルーちゃんも!?」

へえ〜、ティアナとキャロが姉妹ね〜。悪くないんじゃないかな

「2人は本当の姉妹のように仲よくて周りも快く受け入れてくれたおかげで全くティアさんから相手にしてくれなかったスバルさんが寂しさの余りに俺に泣きついて来て渋々姉弟になったんです」

「何やってのよアンタは……」

「何で呆れた目で見るのティア!?」

「当たり前でしょうが!いくらなんでもティアナが相手してくれなくて寂しいからってエリオに泣きついて姉弟になるのは変だよ!」

《全くです。ギンガさんが聞いたら悲しみますよ……》

「ヒドい!ヒドいよ!!いくら何でも私そんな強引な事しないよ!」

皆の非難の声と視線に思わずスバルはそう叫んだが僕は知っている。スバルの強引な所はあの魔王にひけをとらない事を……

「「何で!!?」」

何故か僕の心にツッコミをいれた魔王と豆柴はほっといておこう

「まあきっかけは最悪でしたが今となってはいい姉弟に深まった事は確かですね」

「そうなんだ……」

まあスバルはともかくギンガさんならエリオの事をちゃんと見守っていくだろうし、いい姉弟になるんだろうね

「って、あれ?」

そういえばさっきから狸が会話に参加していない……

《本当ですね。いつもなら喰い気味に参加してくるのに》

はやての姿がいないのであたりを探していると……居た

こっそりと食堂から逃げようとしているはやてを発見して声を掛けようとしたらふと僕と目があって驚いていた

〈お願い見逃してや!〉

両手を合わせながら必死の表情と念話で僕にそう訴えるはやてなんだけど……

「何処に逃げるのはやて?」

「い、いつの間に背後に回ったんや!?」

背後からフェイトに逃げ道を抑えられてビックリしているはやて。当たり前だよフェイトのスピードは速いんだから……

「逃がさないよ。これからはやてを処刑するんだから」

「私、有罪!?まだ何もしてへんのに処刑なんか!?」

はやてをバインドにかけて逃がさないようにして連行するフェイト。エリオは可愛い我が子だからやっぱりそこはこだわる訳ね

「まあまあフェイトさん落ち着いて下さい」

「止めないでエリオ」

流石に見かねて未来エリオがフェイトを宥めにかかった

「これが確実な未来って訳じゃないんですよ」

「どういう事?」

「これも1つの未来なので正確な出来事ではないんです。こうなるかどうかは皆さん次第なんです」

あ〜。なるほどね、あの時のように完全な訳じゃないもんね。

あの時はマジでヘコんだもん。再起不能になるくらいに誤解されたしね………何だろ、急に涙が出て来たよ。

「これからはエリオとはやてに距離について考えないと」

「だから私はエリオに手を出さへんてフェイトちゃん……」

真剣な表情でそう言うフェイトにげんなりしたはやてはそう言い返した。

「ただ不安な事があるんです……」

『えっ?』

未来エリオの表情が暗くなり切り出した話に皆が緊張しだした

「不安な事ってどういう事?」

「ええ……。実はなのはさんの事なんです」

「わ、私!?」

いきなりの名指しに思わず驚いたなのは。不安な事ってまさか魔王が世界征服に乗り出したのか!?

《そうなったら私達は大変ですね……》

そうだね、色んな手を使って魔王を倒す手段を考えないと色々とマズいの確かだ!!

「違うからぁぁぁぁぁあ!!って言うかどうして私が世界征服なんてしなきゃいけないのぉぉぉぉぉ!!」

魔王は涙目になりながらも必死に否定していたが僕はそれを受け入れない。

何故なら魔王は絶対にやり遂げてしまう事は皆の常識となって認識しているからだ!

「ヒドい!ヒドいよ!私はそんな事は絶対しないよ!!って言うか私の認識ってそんなに悪いのぉぉぉぉぉ!!」

《当然でしょう。あなたの行動を見れば誰だってそう思いますよ!》

「そんな訳ないから!私は魔王じゃないのにぃぃぃぃ!!」

頭を抱えながら必死に否定している魔王なんだけど周りは苦笑い気味に納得しているのは言わないでおこう

《ですね。後で弄りネタにしましょう》

よしよし、そうしょう

「えっと、もういいでしょうか?」

「あっ、ゴメンねエリオ。話が脱線しちゃって」

僕達の楽しいやり取りを見終えて話を切り出そうとする未来エリオ

「それでなのはさんの事なんですけど」

「うん」

「実はなのはさんだけ結婚してないんです……」

「ええぇぇぇぇぇっ!?」

未来エリオの告げられた事実を聞いて信じられずに叫ぶなのは

「元六課の皆さんは結婚して子供も産まれて幸せな生活なんですけど何故かなのはさんだけが結婚出来てないんです」

「うわ……」

「そ、それは凄いな……」

余りの衝撃の事実に思わず引いてしまう師匠とシグナムさん

本当になのはは行き遅れになっちゃった訳ね……。
桃子さん達の予感的中にだわ……

「それでヴィヴィオに婚約者が居るんですが母親であるなのはさんが結婚してしていない上に相手もいないので流石に結婚していいかどうか悩んでしまって結婚に踏み切れないんです。それを俺達に相談されてしまって困ってるんです………」

「ガ――――ン!!」

やや困った顔でそう話す未来エリオの衝撃の事実にショックを受けるなのは

ショックを受けるのもわかるけどヴィヴィオに気を使われるって言うのもなんかイヤだよね………。

「だから早い内に相手を探した方がいいですよ……ってなのはさん?」

未来エリオはなのはにそう忠告しようとしたが姿がいないので探すと

「ヴィヴィオに負けた……ヴィヴィオに負けた……ヴィヴィオに負けた……」

完全にショックを受けたなのはは隅に膝を抱えて座り込みブツブツと呟いていた

「うん。ほっといておこう」

「そうだね。流石にフォロー出来ないよ……」

「私も無理です……」

僕の言葉に反論する声はなく、流石に皆もこの事についてのフォローは出来ない事はわかっていた

そっとしておくのも優しさだよね……うん

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「じゃあ皆さんご迷惑をおかけしました」

「おかけしました〜」

深々と頭を下げて帰り支度を始める未来エリオ

「気をつけてねエリオ」

「はい。皆さんもお元気で」

未来エリオとイリスの足元に時間転移魔法が構築されて魔法陣が現れる

「あっ、そうだ。はやてさん」

「何やエリオ?ってふえっ!?」

転移するのに少しの時間があるらしく、未来エリオははやてに近づていきそっと抱き締めた

「な、何や!?いきなり?」

「すいません。一度でいいから昔のはやてさんをこうしたかったんです」

突然抱き締められた事に動揺するはやてを気にせずに嬉しげに語る未来エリオ

「だ、だからって…」

「これからもはやてさんと一緒に幸せになる事を再び誓うだけです」

はやての耳元に顔を近付けて誓いを囁く未来エリオに思わず皆は固まってしまう

「あ、あのな……」

「これからは俺の事を見てて下さい」

「えっ?」

「今も昔も変わらずに俺ははやてさんの事を愛してます。だからはやてさんも俺の事を好きになってください」

「は、はい……」

真剣な眼差しで更にはやての顔を見詰めて囁く未来エリオ

「愛してますはやて……」

「えっ?」

そう言い未来エリオははやての頬にキスをした!?

ってええぇぇぇぇぇっ!?

「えええええエリオ?」

未来エリオにキスされて耳まで真っ赤になって動揺しているはやてに周りもこの光景を見て顔を赤くして固まってしまった

「それじゃあ皆さんお元気で」

「ばいば〜い」

皆の顔が赤くなって固まっているのを気にせず嬉しげにイリスと一緒に手を振って未来エリオは転移し帰っていった

「帰ったみたいだね……」

《ですね、反応がなくなりました》

未来エリオ達が帰ったのを確認して僕とアルトは元に戻ったけど周りはまだ固まったままだ。
特に狸は完全にポーッと放心状態になってしまっていたし、未来エリオは大胆だね。

《頬にキスしたのは相手がいるのでせめてもののアピールでしょう》

うんうん。僕もああいう風になれば苦労しないんだけどね……

「なあ、フェイトちゃん……」

「何?はやて」

「ゴメンな。変な事言ってもうて私が悪かったわ」

「ううん、いいよ。あのエリオがはやての事をちゃんと愛してるんだってわかったし、怒ってないよ」

「ありがとうフェイトちゃん」

頬を赤くしたまま謝るはやてにフェイトは笑顔で許していた

「私は喜んでええんかな?」

「喜んでいいと思うよ」

《もちろんです。喜んで下さい》

「私も同意です。あのエリオならばヴェロッサより将来性があります」

「あのエリオならアタシも納得だ」

次々にエリオの事を容認し始めてきて

「私もはやてさんならエリオ君の事諦められます」

「えっと、僕は攻略されるんですか?」

「うん。そうなった時は私は喜んではやてにあげるよ」

「フェイト、エリオは物じゃないんだから」

フェイトがエリオにそう論したのを見て思わず突っ込みをいれた

「わかってるよ。でもねいつまでも相手がいないっていうのは大変だし保護者として心配だよ」

「だね。いい例がいるし僕達も頑張らないとね」

そう言いある人物に向かって視線が一点に集中して皆が納得して頷いた

「うわーん!ヒドいよ――!私をそんな目で見ないでよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」

将来の事で哀れみと同情の目で見ていた僕達に泣き出してしまい悲鳴をあげる魔王でした

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

あのエリオ格好良かったな〜本気で惚れてしまいそうや……

いやいや私にはロッサがいるんやし、迷ったらアカン……

けどな〜ロッサはエリオと違ってサボる所あるからな〜………ってエリオと比較したらアカンな……でもでも私としてはエリオは将来性もあるし、いい男になるのは確かやし、今からでも乗り換えるのは悪くないな〜………いやいやカリムやシャッハに何て言い訳すればいいんや……って何やってねん自分!?

「はやてちゃん気持ち悪いです……」

「さらりと言わんといてんかリイン!?かなり傷つくわ!」

冷めた目でツッコミをいれたリインに思わず思考を止めて言い返した。

気持ち悪いとは何やねん!?

「だってさっきからはやてちゃんは顔に両手を当てて悶えてる姿を見ていたらそう思うしかないです」

「もう少し言い方があってもええやんか!」

失礼な!私かて立派な乙女や!そないな言い方はないやろ!!

「あのね、はやてちゃんユーノ君から通信入ってるんだけど……」

「そろそろ通信に出たらいいんじゃないかな」

「へっ?」

なのはちゃんと恭文の声に周りを見ると苦笑い気味に見ているユーノ君の映像があった

《相変わらずだねはやて……》

「そないな目で見んといてくれへんか!?」

《いいけど……この前頼んでた資料を送るよ》

そうやったなこの前に頼んでたの思い出したわ。私はユーノ君から送られてくるデータをチェックし

「うん。問題ないわありがとな」

《どういたしまして、もう少し資料要求を減らしてくれると助かるんだけどね……》

うわ……。あっさりと釘を刺されてもうた。せやけどクロノ君に比べたらまだまだ私はマシな方やで

「忙しいからってユーノ君無理しちゃダメだよ」

「そうやで倒れたらアカンで」

心配げにユーノ君見つめるなのはちゃんに私は同意した。いつも助けられてる訳やし気遣ってあげんとな

《ああ、大丈夫。最近はメリハリがついて来たし問題ないよ》

「そうなんだ」

笑顔でそう答えるユーノ君になのはちゃんはホッとしとる。このまま2人がくっ付いたらええんやけどな……。

「そう言えばユーノさん顔色がいいね」

《確かにいつもの不健康な感じがしませんし健康そのものです》

恭文とアルトはユーノ君から何かを感じて呟いていた。
確かにユーノ君の顔の血色が良くなってる気がするわ……

「ユーノ君一体どないしたん?」

《ああ、実はね。婚約者出来たんだ》

「「「「ええぇぇぇぇぇぇっ!!?」」」」

こ、婚約者やて!?いつの間に出来たんや!てっきりユーノ君はなのはちゃん一筋やと思ってたわ!

《お見合いを進められて断りきれずに仕方なく受けたんだ。最初は断るつもりだったんだけどお見合いした相手の人は僕の事を公私共にしっかり面倒を見てくれて。それでこの人がいいかなって付き合う事にしたんだ》

「そ、そうなんだ……」

《い、いい人に出会えたんですね……》

《そうなんだ。僕にはもったいないくらいだよ》

私しの相槌にユーノ君は照れくさそうに答えた

アカン!完璧にアカン!!ユーノ君の片思いが昇華して高嶺の花より身近な花を選んでもうた。

「……」

ああっ!なのはちゃんが放心しとる……。
完全にあり得ない出来事に思考がフリーズしてるわ

《近い内に皆に紹介するよ。それじゃ》

ちょっ、ちょお待ってやユーノ君!なのはちゃんは無視!?無視なんか!?

―って通信切れてもうた

「どないしよう……」

「どうしようか……」

「どうしましよう……」

《どうしましょうか……》

私と恭文とリインとアルトは放心状態のなのはちゃんをどうするかを相談した

ユーノ君はなのはちゃんの希望の光やったのにその光がなくなってもうただけにフォロー出来へん……。

と、とりあえず……

「つ、強く生きるんや!なのはちゃん」

「そ、そうだね大変かと思うけど頑張って相手探してよ」

《あなたならすぐに出来ますよ》

「そうです。ユーノさん以外にもいい人がいますです」

もうなのはちゃんを励ますしかなかった……

「そんな慰めなんていらないよぉぉぉ!!かえって惨めだよ!!」

私らの励ましになのはちゃんはだだこねて暴れてもうた……。

どないせいっちゅうねん!

「どうせ私は魔王だもん!一生独り者だもん!!」

はあ……、拗ねてもうた……。

なのはちゃんの将来について皆と話し合う事になってしまうのはそう遠くないやろな……

何せよ六課は今日も平和やな……





1/1ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!