頂き物の小説
その15.仮面ノリ子ー/第0話 恐怖!ミラッコ女
「仮面ノリ子ーぶっとばすぞーのテーマ」
金のクラウザー 輝くしるし
プロレス愛するノリ子ーが 悪いジオッカーぶっとばすぞー
レッツゴーゴー ギャンプラつーよいー
ノリ子ーパンチ(パンチ!)
ノリ子ードロップ(ドロップ!)
プローレスつよーいぞー 仮面ノリ子ー
ノリ子ードライバー(ドライバー!)
ノリ子ーボンバイェ(ボンバイェ!)
今日の相手は何女ー(何女だー?)仮面ノリ子ー
『仮面ノリ子ー』福田のり子は改造ダイバーである!
彼女を改造したジオッカーは人類滅亡をもくろむ悪の秘密結社である!
RGBNの平和を守るため、『仮面ノリ子ー』は今日も戦うのだ!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
とあるガンプラビルダーと彼女たちの星輝く日々の記録
「その15.RGBN開設記念特別企画 パイロット版・仮面ノリ子ー/第0話 恐怖!ミラッコ女」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「きゃああああああああああああああ!」
みんな大好きRGBN。今日もみんなの笑顔が浮かぶはずのこの世界で、突如悲鳴が沸き起こった。
「ラッコラッコー!」
それはベアッガイフェスに訪れた皆のベアッガイの頭が、ホタテ貝っぽい武器でカチ割られると言う悲劇によって引き起こされたものだった。
主犯は茶色い着ぐるみパーカーを着た謎のガンプラ「ラッコザク」を操る着ぐるみダイバー「ミラッコ女(演:春日未来)」
彼女は悪の秘密結社ジオッカーによって改造された、違法改造ダイバーなのだ!
「みんなーこんにちはー。突然だけど、みんなの石頭でこのホタテを割ってもらえませんかー?」
にこやかに笑いかけながら、みんなの頭をホタテでメタメタに叩いて砕くミラッコ女の姿は意味不明だった。
こんなサイコパスな姿、地上波では絶対に流せなかったことだろう。
「ふざけるなー!」
何人ものガンプラとダイバーがラッコザクとミラッコ女に立ち向かった。
だがその攻撃はことごとくかわされ、みんな頭を砕かれてしまった。
動きは素人臭いのに何故か反応が良いその秘密は、ガンプラのコックピットにあった。
改造手術を受けたミラッコ女のコックピットは標準規格の操縦桿を握るタイプではなく、Gガンダムのモビルファイターのものに準拠していた。
このため通常のダイバーよりもずっとフレキシブルで阿頼耶識システム並みの反応速度が出せるのだ。
「こ、こんなの勝てっこない。逃げろぉぉぉ!」
一人がパニックを起こして逃げ出すと、全員にその恐怖が伝わった。
ガンプラに乗ったまま取るものも取らず逃げだし、フェス会場内の屋台もいくつか踏まれたり蹴り飛ばされたりしてしまった。
「きゃああああ」
ドーナツ屋さんを開いていた歌織お姉さん(演:桜守歌織)も、屋台と一緒に吹き飛ばされそうになった。
「危ないっ!」
そのとき一人の少女が歌織お姉さんを抱き寄せ、倒壊する屋台から連れ出した。
「はやくここから逃げてっ!」
「は、はい。でもあなたはっ?」
「アタシなら大丈夫。アタシのクラウザー号は速いから」
歌織お姉さんが無事に逃げたことを確認して、少女は物陰に隠れる。少女の名前は、『福田のり子』。
「変…身っ!仮面ノリ子ぉぉぉ!」
またの名を『仮面ノリ子ー』。
金のスーツとヘルメットをまとい、大きな福耳で助けを呼ぶ声を逃さない、正義の戦士。
彼女もまたジオッカーに改造された違法改造された改造ダイバーだったのだ。
だが彼女は心を改造される寸前で逃げ出し、ジオッカーと戦う道を選んだのだ!
「待てぃ!そこを動くな、ラッコ女!」
仮面ノリ子ーは暴れるラッコザクの前に立ちふさがった。
「違います、私はミラッコ女ですっ!」
だが名前が間違ってると叱られてしまった!
「ミラッコ?」
「はい、ミラッコ女です!このホタテを割ってもらうために、部活を休んできました!
だから――あなたの頭もホタテを割るのに貸してください!」
ラッコザクはダイバーであるノリ子ーに向かって直にホタテを叩きつけてきた。
「やばっ。来てクラウザー!」
ノリ子が右手を掲げて指パッチンすると彼女のスクーター「クラウザー号」がガンプラ「AGE1タイタス・クラウザー」に変身した。
その姿はボディの胸と背中が青から黄色に変わったタイタスだ。ジオッカーの改造によりスクーター形態に変身できるのだ。
ガンプラ形態に変身したクラウザー号はシュワッチと言わんばかりに巨大化。
蛙飛びアッパーっぽくホタテを殴ってラッコザクをよろけさせた。
「おわっと!?」
「ミラッコ女!アンタはアタシがぶっ飛ばすぞー!」
バランスを崩したミラッコ女に、ノリ子ーは連続パンチで畳みかける。
「ノリ子ーパンチっ!パンチっ!パンチっ!」
「わっ!うっ!きゃっ!この人、はやい!?」
なんとか全部ホタテで防いでいるが、ノリ子ーの攻撃が速くてミラッコ女は手が出せずにいた。
それもその筈ノリ子ーはミラッコ女と同じジオッカーの改造ダイバーである。
よってノリ子ーのコックピットもミラッコ女と同じモビルファイター仕様。
速さと言う点でミラッコの強みはなく、むしろ体を動かしなれているノリ子ーが圧倒的に有利なのだ!
「ノリ子ーチョッピングライト!
「なんのっ!」
「からのノリ子ーリバーブロー」
「ぐはっ」
防御を上に引き付けボディをがら空きにするのは近接戦の定石なのだ。
「ノリ子ーブロー!ブロー!」
「あぁ、ホタテがっ」
連続攻撃を受けて何度もコックピットを揺らされたミラッコ女は大事なホタテを落としてしまった。
「トドメいくよっ!ノリ子ービームタックル!」
タイタスクラウザーの右肩にビームスパイクが発動した。これで突撃されたらラッコザクは粉々だ!
「あわわわ!?」
ミラッコ女は大ピンチだ!だがしかし、ピンチの時こそ普段積み重ねているものが現れる。
「このー!」
ミラッコ女とラッコザクはとっさに両手を胸の前で組んで振り上げた。
そのとき拳が当たったビームスパイクはカチあげられながら消滅し、タイタスはバランスを崩してしまった。
「おわっ!?」
「てりゃー!」
そのまま振り下ろされたラッコザクの拳はタイタスの右肩にクリーンヒット!
その衝撃でビーム発生装置は壊れてしまった。
「てりゃ!てりゃ!てりゃ!」
「あっ!たっ!痛っ!」
続けて何度も何度もタイタスの頭部に拳を打ち下ろす。タイタスのアンテナは折れて頭部はへしゃげた。
ダメージを共有するノリ子ーのヘルメットも同じくへしゃげてしまった。
「オル!テガ!ハンマー!」
「たーっ!?」
これこそはミラッコ女がホタテをカチ割るために毎日毎日練習していた伝説技、オルテガハンマー。
黒い三連星の一人・オルテガが搭乗機のドムの両手を組んで頭上から打ち下ろし、マチルダ・アジャンの乗ったミデアを叩き潰した技だ。
ドラゴンボール等でもよく使われる、とってもカッコいい技である。
ただし普通の人間がこれをやると指や手首を骨折するリスクが非常に高い。
良い子は絶対に真似しちゃ駄目だぞ!
「よーし!このまま!倒しちゃうよー!ラッコラッコ―!」
勢いづくミラッコ女は勝利を確信し、勝鬨の声を上げた。
だが彼女は気づいていなかった。仮面ノリ子ーが、怒りに震えていたことに。
「……許せない!その技の名前はっ、ダブルスレッジハンマーだっ!」
そう、オルテガハンマーとはガンダム界隈でだけ通じる愛称なのだ。
プロレス技としての正式名はダブルスレッジハンマーなのである。
プロレス好きの彼女の前で正確ではない名前を呼んだことが、ミラッコ女の運命を大きく変えた。
「何だかわからないけど、これでトドメだよっ」
勝利を確信したミラッコ女は思い切りオルテガハンマーを打ち下ろした。
「させないっ!ノリ子ーサマーソルト!」
だが仮面ノリ子ーはバク転でかわしながらラッコザクの顎を蹴り上げ、逆に相手を転ばせたっ。
「え?え?なにコレ?」
視界の外から食らった攻撃に倒れ、ミラッコ女は状況を把握できていない。
この混乱の隙に仮面ノリ子ーはラッコザクの頭部側に回り込み、その首に足4の字固めを仕掛けた。
「うぐっ!?」
モビルファイター仕様のコックピットはガンプラのダメージをダイバーにフィードバックしてしまう。
構造上首を締めることは出来ないが、タイタスの足に頭部を圧迫されてミラッコ女は苦しんだ。
「ノリ子ービームタイヤ!」
タイタスは足4の字を掛けたまま、両肩を水平に広げて両腕のビームリングを発動した。
スクーターに変形できるタイタスクラウザー号は、このビームリングをタイヤにして走ることが出来るのだ。。
「ノリ子ーGBN引き回し!」
「あばばばばばっ!背中痛いっ!あと熱いいっ!?」
ノリ子ーGBN引き回しとは、引きずられる痛みと摩擦熱と足4の字による絞首という3重苦を与える技である。
「あばばばばばばっ!―――ぐはっ!ごほっ!げほっ」
もう少しで意識の落ちるところだったミラッコ女は、仮面ノリ子ーに気の済むまで引きずられて解放された。
「こ、ここは?」
見上げれば青い空。見下ろせば青い海。
ラッコザクが立っていたのは、サスペンスドラマのクライマックスに出そうな断崖絶壁だった
「って背中燃えてるぅぅぅ!」
解放されて直立姿勢になったラッコザクの背中は摩擦熱で燃えて、まるでカチカチ山のタヌキだった。
「誰か水っ!水くださいぃぃぃ!」
「水が欲しい?」
「欲しいです!」
「じゃあ、たっぷりあげるよ―――とうっ!」
言質を取った仮面ノリ子ーは思いっ切り高くジャンプした。
「ノリ子ードロップキーック!」
「あーーーーーれーーーーーー!?」
仮面ノリ子ーの猛烈な両脚飛び蹴りを受けてぶっ飛ばされたラッコザクは。水がたっぷりある海に落ちていった。
≪ドッカァァァァァァン!!≫
そして着水と同時に大爆発を起こした。
みんなの楽しいフェスを台無しにしたラッコザクとミラッコ女は、ここに倒されたのだ。
「みんなぁ…自粛自粛でイライラしても……人を傷つけちゃ、いけないよぉ。ガク」
◆◆◆◆◆◆◆◆
その後、変身を解いたのり子は、スクーターに戻ったクラウザー号と共にフェス会場に戻った。
会場のデータは無事に復元され、フェスも再開したようだ。
「良かったぁ、フェスが中止にならなくて。一瞬で復元できちゃうのがRGBNの良いところだよね」
「そうね、みんな本当にこのフェスを楽しみにしていたから」
歌織お姉さんも無事にドーナツ屋さん再開できて、みんなに笑顔が戻って良かった。でも。
「ノリ子ーパンチパンチー♪」
「らっこらっこー♪」
中にはさっきまでこのフェス会場で戦っていたタイタスとラッコザクの真似っこして遊ぶ子供たちもいた。
「子供たちにとっては会場を壊した悪い人も、助けてくれたヒーローも、全部みんな楽しいガンプラなのね」
「うん、そうだね。それは良いことだと思うんだけど。でもあれだけは止めなきゃ駄目だよねー」
のり子の視線の先にはラッコの真似をして指を組んでダブルスレッジハンマーをするちびっ子の姿があった。
「おーい、よい子の皆ー」
「お姉ちゃん、なに?」
「通りすがりのプロレス大好きなお姉さんだよー。あのね、ラッコの真似をするときは、
指を組んで打つのはダメだよ。骨折しちゃってすごく痛いことになるから」
「「そうなの?」」
「うん。だから握りこぶしをもう片方の手で包むか、両手とも握りこぶしにして
くっつけて打ち下ろすようにしよう。お姉さんとの約束、守れるかな?」
「「はーい」」
「みんな良い子だねー。これからも良い子でいたら、仮面ノリ子ーが悪い奴らをぶっ飛ばしてくれるからね♪」
◆◆◆◆◆◆
RGBNのどこかにある、フォースネスト「ジオッカー秘密基地」
そこでは「みずき」と書かれたスクール水着を着た女の子ダイバーが、カーテンの向こうにいる誰かに跪いていた。
「なぁにぃぃぃ?もう一度言ってみろぉぉ、スクール水着女ぁ!」
「はい、繰り返しご報告します。先日脱走した実験体・仮面ノリ子ーによって、ミラッコ女が倒されました」
幹部のスクール水着女(演:真壁瑞希)は、カーテンの向こうでシルエットだけが見えているジオッカー首領(声:ジオウ・R・アマサキ)に今回の事件について報告していたのだ。
「それで、ミラッコ女とラッコザクはどうなった」
「ラッコザクは大破、ミラッコ女は回収し今は医務室です」
空中にモニターが浮かび上がる。そこには何故か「みらい」と書かれたスクール水着に着替えさせられ、お腹がポッコリしたミラッコ女が映っていた。
「ちなみにこのポコっとしたお腹は水を大量に飲んだ為です。
首領の赤ちゃんを身ごもっているわけではありません」
「当たり前だっ!」
いつもクールなスクール水着女は首領を笑わせるため、日夜ジョークの練習をしていた。
「笑ねーよ。そもそもどうしてミラッコ女にまで水着を着せた」
「私の能力です」
「いらんわっ」
スクール水着女は誰にでもスクール水着を着せることが出来るのだ。
「しかし仮面ノリ子ーか、まさかそれほどまでに成長していたとはな」
首領は変な笑みを浮かべて喜んだ。すべての改造ダイバーを手術したジオッカー首領にとって、彼女たちは子供同然でありその成長は嬉しいことなのだ。
「だがっ!我が手塩にかけたミラッコ女を手にかけたことは許しがたいっ!
仮面ノリ子ーを倒し、このジオッカー秘密基地に連れ戻すのだ!」
「わかりました。では私が彼女を倒し、スクール水着を着せて連れ帰ってきます」
スクール水着女はクールな顔でガッツポーズした。
「待てお前は行くな。あとノリ子ーにスク水を着せるな」
ジオッカー首領はダイナマイトボディのノリ子ーにスクール水着を着せるのは色々問題だと判断した。
「ちびっ子も見てる番組でそんなことしてみろ。PTAとか色んなところの皆さんから大炎上貰うわっ」
人類を滅ぼしたい悪の組織の首領は、世のお母さんたちが怖かった。
「では誰を派遣しますか?」
「ノリ子ーを倒す為の人材だ。それには同じノリ子ータイプの改造ダイバーこそがふさわしい」
「承知しました。ではマンモスうれ(ぴー)仮面ノリ子ーを派遣します」
「待て待てちょっと待て。それは色々マズいって言うか、うちにいないだろっ!?」
しかもあまり隠せていなかった。
「では世界に(ぴー)だけの仮面ノリ公ーを」
「それもマズイわ!てかノリはノリでもノリ子ーじゃないじゃん!
他にもいっぱいノリ子ーいるのに何故そこを選ぼうとしたっ!?」
いますね、下屋さんとか日高さんとか。
「むっ。ならば誰がいいのですか?」
「なんでお前がちょっと怒ってるみたいになってんだよ!」
水着女は首領のためにこれでも一生懸命選んでいたのだ。
彼女はそれを否定されてイラっとしていた。
「もういい、私が決める。次回、仮面ノリ子ー『恐怖!ドーナツ大好きチビノリ子ー』っ」
「制作は、未定です」
ノリ子ーの戦いの続きが気になるちびっ子と大きなお友達は、番組まで応援メッセージを送って欲しい。
◆◆◆◆◆◆◆
「はい、カーット。これで撮影全部終了でーす」
『お疲れさまでしたー』
いやーお疲れお疲れー。特別ドラマ、ていうかコント?の撮影は無事終了したよ。
改めまして、ミリオンシアター所属アイドル・福田のり子だよー。。
今回のお仕事はガンダムビルドダイバーズでおなじみのGBN(ガンプラバトル・ネクサス・オンライン)をイースター社が再現したVRネットゲーム『RGBN(リアル・ガンプラバトル・ネクサス・オンライン)』開設記念の特別企画なんだ。
それも【仮面ノリダー】って言う昔人気だったバラエティ企画とのコラボ。
『とんねるず』さんが持ち番組でやってた人気コーナーで、仮面ライダーのパロディコント。
木梨さんが変身する仮面ノリダーと、石橋さんが着ぐるみを着た怪人とが毎回戦ってたんだって。
私が生まれる前のことだし、なんか色々あって映像ソフト化もしてないから今回のお仕事まで全然知らなかったんだけど、当時は本家の仮面ライダーより人気だったんだって。
まぁ色々あったけど、その今回の企画はRGBN開設の特別企画ってことで全編RGBNの中で撮影したんだ。
まぁ撮影って言ってもカメラは使わなかったんだけどね。
ログを解析すればあとからどんなアングルの映像でも編集できるんだってさ。
フェス会場とか断崖なんかのセットも全部クリエイトミッションの応用で作っちゃうし。
いやーこんなに簡単にドラマが取れるなんて凄い時代になったよねー
「簡単に言わないでくれ。これフルCGで外注してたら衣装とか含めて百万じゃ足りない案件なんだぞ」
そんなことを言うのはついさっきまで急遽撮影の決まった秘密基地シーンで首領役を頑張ってたジオウ主任。
今回のセットも全部主任が作ったんだって。アタシはただただ素直に凄いなーって思ってたんだけど。
「予算がないから全セット作れとかいきなり言われたかと思ったら役者までやれって、どうなってんだホント」
どうやら主任はお気に召してないっぽい。
「特別企画のサプライズゲストだからじゃない?それか社長と専務がティンときたからとか」
「ふざけんなよ、あのBLACK経営陣っ」
おーおーなんか荒ぶってるなぁ。撮影が終わって緊張の糸が切れたのかなー。
「ゲストなら声優実績も人気もあるアオナギにオーダー出せばいいじゃないか」
「いやぁ声優はともかく恭文に役者は無理だと思うよ?」
だって恭文ってキレイなだなって思ったらすぐに目がピカピカ光るんだもん。
GBNのアバターでも、サングラスしてても眩しいくらい目が光るなんて筋金入りだよねー。
ノリ子ーの衣装も結構ボディライン出るんで、試着したときも恭文の目からビームがアタシのバストにくぎ付けで眩しかったし。
「キレイって言えばさ、主任的には瑞希と未来のスクール水着はどうだったん?」
「……ちびっ子たちの保護者からクレーム付かないか恐いよね」
あ、目をそらした。
「そうかそうか、ドキドキはしてるんだ」
「してねーし。つーかパレオや飾りのついた水着より余分のない競泳水着の方が目のやり場に困るわ!」
おーおー照れちゃって。なんのかんの言って主任も恭文のこと言えないよねー。
「主任さーん。スペシャルドリンク作ってきたんで一杯どうですかー」
そんな荒ぶってる主任の下に、未来がドリンクを持ってきた。
「スペシャルって?」
「GBNの色んなジュースをブレンドしたすっごく元気の出るドリンクです!
主任さんなんか疲れてたみたいだから色々混ぜ合わせて作ってきました」
「炭酸は入ってないか?」
「ないですよー」
「じゃ、貰う」
そう言って主任はコップを受け取って一口飲んだ。
「あれ、主任って炭酸飲めなかったっけ?」
「飲めない。だから正直『とりあえずビール』とか『二十四時間働けます』って言えなきゃダメなニッポンの社会人になるなんて将来設計に入ってなかったよ」
「いつの時代の話してんのさ」
「昭和末期から平成初期?」
どっちにしたって今はそんなの関係ないってば。
呆れながらアタシも未来から一杯もらう。あ、結構おいしい。
「今回のお仕事凄いですよねー。本当ならポイント使わないと買えないドリンクや
お菓子が撮影の間全部タダだなんて。恵美ちゃんも羨ましいって言ってましたー」
未来は本当に楽しいんだろうね。いい笑顔だよ、うんうん。
「お前は早速楽しんでる訳か、RGBNを」
「はいー!あ、でも一つ残念だなーってことがあって。ザク太郎くんも一緒に連れて来れたら良かったなーって」
そう言って未来は笑っていた顔が一転、ちょっと寂しそうな顔をした。
「あれ、撮影で使ったザクって、ザク太郎じゃないの?」
ラッコの尻尾とフード付きのパーカーはともかく普通にザク太郎を連れてきたと思ってたのに。
「ザク太郎だよ、形だけはな」
主任はコンソールを操作、アタシたちのすぐ後ろに1/1の大きさのザク太郎が膝をついた姿で現れた。
「RGBNのスキャンはガンプラの形や完成度を読み込んで電脳空間にコピーを作ることはできる。
でもプラフスキー粒子との相互作用でプラスチックに宿った心まではそのボディに反映出来ない。
ここにいるのは自分で考えることも動くこともできない、普通のガンプラなんだ」
普通のガンプラ、そう言われたザク太郎はひとりでに立ち上がったり手を振ってくれたりはしなかった。
誰かが乗り込んでくれるまで、ずっと動かないガンプラだった。
「ELダイバーみたいにガンプラのボディと意識を宿すアバターを別々にログインさせるとか、モビルスーツサイズのアバターを作るなら将来的にできるかもしれない。
けど今のデバイスじゃガンプラの心とRGBN内の情報を相互に交換することは出来ないし、意志を持って自立するガンプラに他のダイバーを乗せて共同で操作って言うのはもっとハードルが高い」
だから一緒に遊ぶのは無理なんだって。
「そっかー。便利って言っても色々あるんだねぇ」
「そりゃあいきなり何でもかんでも出来るようになったりはしないだろうよ。
そもそもザク太郎たちみたいのが使うこと考えてVR開発なんてしてないだろうし
「えー、じゃあいつ頃ザク太郎くんやグフ彦くんたちはRGBNに来れるんですかー」
「わかんねえよ、フルダイブVRのデバイスなんて俺も専門外だし。たぶん、ザク太郎みたいな自立型の
ガンプラの数がもっと増えて、人権とか需要とかの話がもっと進んでからじゃないと無理なんじゃないか?」
あーそっかー。開発もタダじゃないから利用する人がいないことにお金はかけられないと。
この場合は人じゃなくてガンプラだけど。
「じゃあみんながRGBNに来るには、主任や未来がザク太郎たちの弟や妹をいっぱい子作りしないといけないってことだね」
「ひょえっ?」
「おい、RGBNの中で変なこと言うなよ。全部ログに残るんだぞ」
「でも間違ってないんでしょ?」
うん、私は思ったことを素直に言っただけだし。未来が思ったより顔真っ赤にしたのは意外だったけど。
「だからってなぁ…おい、どうしたカスガ、顔真っ赤だぞ」
「わ、私、まだ中学生で赤ちゃんとかそう言うことは考えたことなくて」
「落ち着けっ、子作りってそういう意味じゃ無いから」
「でも主任さんと私との赤ちゃんがいたら可愛いかなぁとか一緒にGBNで遊べたら楽しいかなーと思います!」
「へ?」
「すいません、瑞希ちゃんにもドリンク渡してきますっ」
そう言って未来は走って去って行って……へー。へーへーへー。
「ほーほー。ほーほーほー。そんなことになってたんだ。アタシ知らなかったなー」
未来のカップリングはザク太郎かと思ってたのに…へー。
「おい待て、ただの世間話で何言ってんだ?」
「いや別に何でもないよ?ログに残っても困るし」
まぁ本当に何もないのかもしれないけど、先のことなんて分かんないよね。
今回の企画だって、20年以上経ってからノリダーがガンプラとコラボするなんて誰も考えてなかっただろうし。
「あ、でもスキャンダルは起こさないでね。
今回のお仕事のシリーズ化にも影響するかもしれないし」
「お前なぁ!」
まぁ横から見てる分には何かあった方が面白いから、期待はさせてもらうね主任。
(おしまい…………日本中が大変な中、突然の復活&応援メッセージをくれた仮面ノリダーに、感謝を込めて)
<ガンプラ紹介>
●AGE1タイタス・クラウザー
福田のり子のAGE1タイタス。
ボディや手足を赤から黄色に変更した他、各関節も改造して可動範囲を広げている。
今回の企画にあたりスクーター【クラウザー号】に変形すると言う設定が追加された。
それに伴い、ビームリングやスパイクもノリダーらしく色々柔軟な使い方が出来るようになった
・ノリ子ーバスター
未使用の必殺技。キン肉バスターのバリエーションで、ビームリングを「手錠」状にして
相手の足首を固定し、相手の肩をビームスパイクで串刺しにして逃げられない様にして放つ
・ノリ子ーコンドルキック
未使用の必殺技。両ひざを揃えて飛び蹴りするテキサス・コンドルキックとビームスパイクの重ね技。
なおスクーターへの変形は設定上のもので、おもちゃとしてはバイクに変形するギミックはない。
●AGE1タイタス・クルーラー
設定のみ存在する未登場の「ちびノリ子ー」用のガンプラで、SDのAGE1タイタスがベース。
ビームリングがドーナツ、肩とひざのビームスパイクがドーナツポップになっている。
●ラッコザク
ザク太郎のボディをRGBN内で使えるようにコピーしたもの。体だけで心はコピーしていない。
作中で着こんでいたラッコの尻尾&耳付きフードのパーカーはGBN内で未来の衣装データを元にして
作ったデータ上にのみ存在するもの。のちにリアルでも作成し、MS-06ザク用の衣服として販売された
●ダイバーフィギュア 仮面ノリ子ー
仮面ノリダーをオマージュし福田のり子が演じた「仮面ノリ子ー」のプラモデル。
ガネーシャ神のような大きな福耳、複眼と触覚を持つヘルメットなど仮面ノリダーの特徴を取り入れているが
胸を強調するスーツやベースカラーが金色で「すーぱーNORIダー」に近い配色だったり等の違いがある。
シリーズ化した際には本来のノリ子ーに近い、緑と黒のパワーアップ形態を用意し、
搭乗機もジーエンアルトロトロンがベースになる予定。
●ダイバーフィギュア ミラッコ女
ラッコ男のオマージュで春日未来が演じた「ミラッコ女」のプラモデル。
石橋氏の着込んでいたぬいぐるみと違い、ラッコをモデルにした「もこもこパジャマ」イメージの軽装。
繊維で作った衣服としての販売だったラッコザク用のパーカーと違い、ラッコアーマーもプラスチック製。
着脱すると「スクール水着姿の春日未来」の姿になる。残念ながらこのパーツはザクには装備出来ない。
また、シリーズ化の際は毎回違うアイドルが交代で怪人を演じる予定で、それに合わせた商品展開も計画されている。
(カルガモ伊吹翼(仮)、プードル箱崎星梨花(仮)等)
●プチッガイ きゃらっがい ミラッコ女
別途制作「きゃらっがい」のバリエーション
顔が春日未来仕様になっている他、頭部の耳と尻尾のパーツがラッコ仕様になっている。
(おしまい)
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