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頂き物の小説
その14.永吉昴の超次元ガンプラ野球



とあるガンプラビルダーと彼女たちの星輝く日々の記録



「その14.永吉昴の超次元ガンプラ野球」





みんなー、元気かー?永吉昴だ。

みんなはガンプラ野球って知ってるか?
ガンプラバトルで野球をやろうってことなんだけど、これが意外と難しいんだ。

何が一番難しいって、まず人数を揃えるのが難しい。ガンプラ野球のチームとかないからな。

それに9対9で試合するにはバトルの筐体1個じゃ操縦席が足りないから、いっぱいくっつけなきゃいけない。
少なくともオレの学校のガンプラ部はそれができない。筐体が1個しかないみたいだしな。


だからまぁやるとしても前の世界大会でルワン・ダラーラがやったみたいに、ピッチャーとバッターの一騎打ちみたいな感じだな。

ヒットを打ったらバッターの勝ち、抑えきったらピッチャーの勝ちってね。


『しょーぶだぞスバル!』


てなわけでシアターでもソレやってみようって思ってさ。
それも今日はプロジェクト・ビルド用の特別ルールで、環とバッティング勝負だ。


「おっしゃー!来い、環!」


オレの『アストレイ・グリーンフレーム』もツインソードライフルの銃身を掴んで構える。
グリップの斧は刃を潰してるから、ちゃんとバット代わりに使えるんだぜ。


『たまきの【しるばば・れっど・だぶるさぷれっさー】のヒッサツワザだぞー!』


環はビームマグナムの銃口にボールをセットして、シルヴァ・バレトの真っ赤な『両手』でしっかり構える。


≪ラビット!≫≪バイク!≫


その両手が赤く光って、システム音声がオレのところにも届く。
ビームマグナムにすごいパワーが集まってるのも分かる。


『いっくぞー!ついせきボクメツいつでもマッハーマグナム!』


引き金が惹かれてバーンって物凄い勢いで球が打ち出された。
でも勢いが強すぎて、ストライクゾーンなんかかすりもしない凄い上に飛んでった。

文句なしの大暴投だから1球目はボールだなって思ったら、ガクって急降下な軌道を描いてボールが落ちた。

気を抜いたつもりはなかったけど、オレはまるで反応できなかった。


≪ストラーイク!≫


それできっちりストライクゾーンを通って行った。
『バイク』のビルドアームは自動追尾の機能があるって聞いてたけど、あんな無茶な軌道で飛ぶのかよ。


『うわっ!』


だけどその代償はやっぱり大きいって言うのかな。
両手ともビルド仕様にした環のダブル・サプレッサーは、マグナム一発撃ったらバチバチさせながら両手を壊した。


『すばる、ちょっとマッテテね。今うでをコーカンするから』


そう言って環は腰のクレーンを動かして両腕の交換を始めた。

環のシルヴァ・バレト・ダブルサプレッサーはプロジェクトビルド用に右腕だけじゃなく左腕も交換できる仕様に改造したガンプラだ。

腰のクレーンも可動範囲を広げて両手の交換だけじゃなく、外した腕を回収できるようにもなってる。
今みたいにマグナムを撃っちゃうとすぐ壊れるから意味ないけど、ビームサーベルとか使って戦う分には腕の再交換は便利だからな。

それで今のサプレッサーは出撃時に着けてる分も含めて左右3本ずつの腕を持ち歩いてるんだ。
しかも全部赤い奴だから、外から見てる分にはどれが何の腕か分からないんだよな。


『おまたせー。2球目いっくぞー!』

『おっしゃ来ーい!』


ラビットとバイクはもう使った。さぁ次は何が来る――?


≪ローズ!≫≪消防車!≫

「かだんにマイニチおみずをあげなきゃーマグナム!」


マグナムから出た粒子は『水』だった。ホースの先をつまんで勢いを増したみたいな怒涛の水に押されてボールが飛んできた。
勢いが凄い。水圧で重くなってるとも思う。だけどさっきの無茶苦茶な変化球に比べたらまだ軌道が分かりやすい。


このボール、貰った――そう確信して振ったオレのソードライフルは、見事に空振りした。


「んなっ!?」


飛んでくるボールが空中で一瞬止まって、勢いをなくしたんだ。

マグナムから発射されたそのボールには『バラ』の蔓が繋がってた。
まるで電源コードが伸びきってこれ以上動けなくなった掃除機みたいに動きが一瞬止まって、オレはそのせいでタイミングを外した。

イバラはすぐに千切れて消えて、水も止まって勢いをなくしたボールはチェンジアップみたいにゆっくりストライクゾーンを通り過ぎた。


≪ストラーイク!ツーストライクノーボール!≫


やばい!もうツーストライクだ、このままじゃ何もできないまま
て言うかアレだよな、相手がどんな無茶苦茶してくるか分からないのに球種の読みあいも何も無いもんな。

こっちもビルドアームの能力使わないと対抗できないってことだ。


『3球目いっくぞー!』


オレが一人覚悟を決めている間に環も腕交換を終えたみたいだ。

さぁ最後は何が来る?


≪フェニックス!≫≪ドライヤー!≫


システム音と同時にサプレッサーの両手から真っ赤な炎がボウボウって燃え上がった。
ヤバイ、あれ絶対に火力に特化した攻撃だ。引き金を引いた瞬間ドカンって行くやつだ。

引き金を引いてからライフルを振ったんじゃ間に合わないかも。
いっそバント狙いで行くべきか?でも最初のみたいに大暴投の可能性だってあるし…。

時間がない中で迷ったオレは、グリーンフレームの背中に装備してた、あるものをライフルのグリップにセットした。


≪ライオン!≫


それはライオンの顔の形をした丸い盾。それはオレの右手にセットしてる『ライオン』のビルドアームと同じ変容塗料を使ったものだ。
オレはライフルの銃身を短く持って、刃を潰した斧じゃなくて銃の側面、つまりライオンの顔を環に向けた。


≪ライオン!≫≪掃除機!≫


さらにグリーンフレームの両手のビルドアームから出した金色と青緑の変容粒子をライフルにまとわせる。
これなら当てられる可能性はかなり上がるはずだ。


「でもこれ、もう野球のバットの持ち方じゃないよなぁ」


これはもうアイスホッケーとかクリケットとかテニヌとかの方が近いんじゃないか?やったことないけど。
苦笑いしつつ、まぁいっかーと改めて環と改めて向き合う。


「さあ、来い!環!」


それに応えて環も引き金を引いた。


『いっくぞーすばる!めっちゃメラメラあついぞーマグナム!』


物凄い音がしたと思ったらバット型のアームレイカーを持ってるオレの両手に凄い重い衝撃が掛かった。
覚悟してなかったら間違いなく後ろに吹っ飛ばされてた。

一瞬遅れて警報がなって、近くに高熱源体があるから逃げろーってモニターが出てきた。
けどそれは無理だぜ。だってその熱源体、今ライフルにつけたシールドで受け止めてるボールだもん。


「うおおおおおおおお!」


ちょっと気を抜くと腕が弾かれそうだった。


「うおおおお頑張れっ、頑張れオレっ!」


ライオンのビルドで凄く頑丈になってるからライフルは壊れない!
掃除機のビルドでグリップのエネルギーパスから向こうの炎を吸収してるから、吸収しきったらこの重いのはなくなる!

そうなればこの態勢からでもボールを飛ばせる。ビルドにはそれくらい凄いパワーがある!


「うっおおおおおおお!」


両脚を踏ん張り、両手に力をこめて押し返す。
同時にシールドを回転させて、ボールを思い切りはじき返した。


≪ファール!≫

「あー、ファールかぁ」


やっぱりと言うか、ぶっつけ本番でこんな打ち方したんじゃ真っすぐ飛ばないよな。
ヒットにできなかったことは残念に思いつつ、この打席で初めてボールに当てられたことにオレはそこそこ満足していた。


『ぎゃあああああ!』


けどそんな余韻に浸る暇はなかったんだ。
ボールを打つのに夢中で気づかなかったけど、環のダブルサプレッサーが燃えていたんだ。


「環!?」


両腕とビームマグナムは無茶な火力で砕けて、バラバラ状態で足元に散らばって燃えていた。
サプレッサーだけじゃなくその周りの芝生も燃えていて、まるで炎の海に囲まれているみたいだった。


『ぎゃあああああ!しるばばれっどが燃えてるぅぅぅぅ!』


その光景にオレは頭が真っ白になった。


『うわぁぁぁ大変だぁぁぁどうしよ環!落ち着け、とにかく一度落ち着いて』


一度パニックになるともう駄目だった。まともにモノを考えられなかった。

冷静になって考えれば、オレは掃除機のビルドアームで環を助けられたかもしれない。
でもそれは後になってから言われて気づいたことで、その時はひたすらパニクっていた。


≪クジラ!≫


だから環を助けたのはオレじゃなくて、頭の上から突然降ってきた大量の水だった。
その水はダブルサプレッサーとスタジアムを苦しめてた炎を消して、オレたちの頭も冷やしてくれた。


『ぷはっ!え、あれ……?』

「あれは……クジラ?」


空を見上げてみるとそこには空を泳ぐ羽の生えた真っ赤なクジラがいた。


「じゃない、アビスガンダム…でもなくて、アビスシルエットをつけたアストレイ、か?」


よく見たらクジラの顔を書いたMA形態のアビスガンダムっぽいのが、背中の2門の大砲バラエーナから水を噴き出していた。
羽が生えているように見えたのは、両足がジャスティスの背中のファトゥムみたいなジェット機に乗せてたからだ。

飛んでるそのクジラは地面に降りてくると、アビスシルエットとジェット機を分離した。
アビスシルエットはショルダーとバックパックが合体して、単体でクジラの顔…と言うかポケモンのゲノセクトみたいになった。

そんなゲノの中にいたガンプラはやっぱりアストレイ・レッドフレームで、それを動かしているのは。


『お前ら、そういうことするなら声を掛けろよ』

「主任」


いつの間にかバトルルームに来ていた主任だった。


『怪獣の兄ちゃん、助かったぞ!』

『助かった、じゃないっての。火遊びするなら水くらい用意しとけ』


その後、二人揃っていっぱい怒られることになっちまった。


◆◆◆◆◆◆◆


『ビームマグナムに炎熱系2つも重ねるなんて、ヒートトリガーのツインマキシマムみたいな無茶な
真似したらどうなるか少しは考えなかったのか?火だるまどころか爆散してたっておかしくないんだぞ』

「『ごめんなさーい』」

『俺じゃなくてシルヴァ・バレトに謝れ。ビルドの実験するときは必ず俺を立ち会わせろとも言っただろ。
今度俺を呼ばなかったら次から2人の衣装をずっと可愛いスカートにしてくれってミス・アオバに伝えるぞ』

「『ごめんなさいしるばばれっど(サプレッサー)!もうしないから許して!』」


なんてとんでもないお仕置きだ…オレは背筋が凍り付いた。環も同じだったと思う。


『……オオガミ、とりあえずこの勝負はドクターストップでお前の負けだ。一旦バレトを治してこい』

『うん、わかったぞ!』


言われた環は大急ぎでサプレッサーを回収してバトル室から出ていった。きっと作業室の方に向かったんだろう。


『なぁ、ナガヨシ』

「な、なんだよ」


二人きりになって声を掛けられて、ちょっと緊張した。


『スカート履かせるって、そんなに重大な罰なのか?』

「へ?」

『セクハラって怒られるかもとは思ったけど、マジでビビられて驚いてる。空気を換える為の冗談のつもりだったのに』


毎日学校の制服で着てるんじゃないのかって、主任は真剣に悩みだした。それがちょっとおかしかった。


「いや、制服で着るのと私服や衣装で着るのって違うんだよ。
だって恥ずかしいじゃんか。ヒラヒラしてるしスースーしてるし、それに…」

『それに?』

「それに、衣装でみんなが着てるスカートって特に可愛いデザインだしさ」


だから制服のスカートと違って、余計に恥ずかしいというか。


『可愛いが恥ずかしいって、お前もオオガミも普通に女子として可愛いほうだろうに』

「ぬなっ!?」


な、なに言ってんだよ。オレが可愛いだなんて!?


『何驚いてるんだよ。そもそもスカウトでもオーディションでもアイドルになれた時点で保証されてるだろ、ビジュアル可愛いって』

「やめろー!それ以上可愛いって言うな!」

『おのれの場合、そうやって恥ずかしがる性格も可愛いわけだが』

「もうやめろよバカ!」


これ以上可愛いって言ったらマジで許さないからな!


『へいへい分かった分かった……ん?もしかしてナガヨシのガンプラがストライクじゃないのもスカート付きだからか?』

「はぁ?なんでストライク?」


オレにはどこからそのチョイスが出てきたか分からなくて首をかしげる。


「だって、一番野球用語っぽいガンダムだろ。野球少女だってプロフィール聞いてから、おのれはきっとあれを選ぶんじゃないかと」

「なんだよそれ。そりゃあストライクって名前は野球っぽいかもだけどさ。
バッターやるときにその名前で呼ばれたら、なんか勝負する前から三振しそうじゃんか」


だからそう言う理由じゃ選ばないって。
別にストライクが悪いわけじゃないし、むしろカッコいいデザインだとは思うけどさ。


「あー、なるほど。それじゃあアウトフレームとかもバッター無理だな」


なんか納得したらしいけど、そういう問題でもないと思うんだ。


「そもそもなんでオレが野球繋がりでガンプラ選ぶって思われてんのさ」


そりゃあ野球は好きだよ。でもそこまで野球一筋みたいなキャラでもないと思うんだけど。

そう言ったら主任が不思議そうな顔をして言った。


「だっておのれ、ビルドアームズのモニター頼んでから使ってるのって『ライオン』や『トラ』に
『タカ』、『ドラゴン』とかだったじゃないか。明らかに日本のプロ野球チーム繋がりだろ、これ」


ぐっ。それを突っ込まれると弱いというか単に馴染みがあっただけって言うか。


「そ、それはほら、主任が好きなやつ興味のあるやつから試していいって言ってたからで」

「別に悪いとは言ってないけど。あぁそう言えばおのれ、『掃除機』とか『冷蔵庫』とか家庭的で女子力高そうなアームも多かったよな」

「いや女子力関係ないじゃん!ただウチは兄ちゃんたちが掃除とか料理とかさっぱりだからオレが家事やってるってだけで」

「そっかそっか良いお嫁さんになるな、きっと」

「やめろよ、ほんと!」


それこそセクハラってやつじゃねえのか、ソレ!


「でもそれならなんでアストレイ使うことになったんだ?別に野球のチーム名でも家事の道具でもないだろ」

「いや、それは」


どうしよう、散々からかわれた後だと教えにくい。


「好きなファイターが使ってたとかか?」

「好きっ!?」


ナイナイ!そんなわけナイだろバカ主任!


「何をそんなに怒って……いやゴメン、俺が無神経だった」

「何を謝ってんだ!?」


今絶対何か勝手なこと考えて勝手に納得しただろっ。そうなんだろっ!


「いやホント悪かった。教えたくないことなら言わなくていいから」

「だから勝手に納得すんなっ!これはっ、主任が出してた技をオレもやってみたくて選んだんだよっ」

「……俺?」

「そうだよ!前の世界大会で千早とリカルド・フェリーニのビームをまとめて打ち返したろ!」


第6回世界大会の予選ピリオドで3ON3の試合があって、その時主任は千早とフェリーニのチームと対決した。
千早の狙撃とフェリーニのバスターライフルを150Mガーベラストレートで打ち返してた。

他の競技でも光雷球を使って分身する魔球とか、レールガンみたいにバーンてなる豪速球を投げてたりしてさ。
素直に言うのは今更恥ずかしいけど、凄いカッコイイって思ったんだぜ。

ガンプラアイドルになったとき、オレはそんな主任の出した技を野球でやってみたいって思ってプロトアストレイを選んだんだ。


「それは、何と言うか……なんかゴメン」

「なんで主任が謝るんだよ」

「おのれを振り回して傷つけたかと思って」

「……別に気にしてないって、このくらい」


主任って結構撃たれ弱いよな。いやちょっと違うか。
撃たれると弱いんじゃなくて、撃つのが苦手って感じだ。

なんか変な雰囲気になったんで、話を変える。


「でもさ。ガンプラアイドルになってから初めて知ったけど、ガンプラで野球やるって結構難しいんだな」

「まぁ日本じゃ人数揃える以上に筐体を揃えるのが難しいしなぁ。
うちのシアターとか聖凰学園みたいにデカい筐体を用意できる施設ってそんなにないし。

地域大会レベルならガンプラ野球やサッカーもちょこちょこ行われてるみたいだけど、
練習する場所がないから結局試合のレベルもそんなに高くなくてあまり盛り上がらない」

「そうなんだよなー。だからガンプラ野球がもっと注目されるようになるにはどうしたらいいんだろって考えてさ」


世間からもっと注目されたら、もっと気軽に野球を出来るようになるはずだろ?
それで考えたのが、ガンプラ野球がもっと凄く派手でカッコイイ感じにしたらどうかなって。


「……まさか派手にする為にビームマグナムをピッチングマシーンにするみたいな無茶したのか?」


あ、なんか主任がジト目になってる。呆れられてるのか、オレ?


「いやほら、ピッチングに銃を使ってもいいってことにすればボールを握れないようなガンプラでも野球が出来るかなって」

「その配慮は優しくて素敵だと思うし、バトルドッジボール的な超ルールも派手で面白いかもだけど。
将来的にその爆轟速球を取れるようなキャッチャーを育成しないと、結局9対9で派手な野球するのは無理なんじゃないか?」

「うっ」


そっかーやっぱり難しいのかぁ。どうするかなー。


「…一度俺とキャッチボールしてみるか?」

「へ?」


軽くショックを受けてたオレに、主任は環がマグナムで打ち出したのと同じボールをどこからか取り出して、オレに向かって放ってきた。
そのまま何も言わずにオレのグリーンフレームから距離をとって膝をつき、さっき外したアビスシルエットを背中に装備する。

開いた両手を重ねて前に突き出し、オリジナルより長めのサブアームでバックパックと繋がってるショルダーアーマーも脇から前に出して、両腕を覆うように構えた。


「さぁ、思いっきり来い!」

「いや、来いって言われても」

「トラでもタカでもなくライオンを選んだのが趣味じゃないなら、もう『投げれる』んだろ?」

「…!」


何かを見透かされたような気がして、だけど別の温かい何かのような気もして、オレは右手でボールを強く握った。


≪ライオン!≫


そして握った手からボールにエネルギーを注ぎ込む。同時に手のひら自体にもエネルギーを込める。
本当はビームサーベルやライフルに注ぎ込まれるはずのエネルギーはバチバチ音を立てて帯電した。

前に見た試合で、主任はこの電気のパワーでレールガンみたいに瓦礫を投げてた。
ミラージュコロイドと合わせて分身を作ったりも。

オレも765プロのアイドルになってから、何度か光雷球の練習はしてた。
ニルスやアンズたちからモーションデータをもらったこともある。

でもそうやって主任の技を再現しようとすると、技を出す前に簡単に手が壊れるんだ。
元々プロトアストレイは光雷球を使える仕様じゃないからそうなるんだって。環のマグナムと同じなんだよな。

主任みたいに自由自在に操るにはビルダーとしての作り込みとファイターとしての操作技術が両方足りないって言われたけど。


でもビルドのモニターって仕事を任されて、いろいろ試してるうちに気づいたんだ
ライオンのビルドアームは物凄く頑丈だから、これならもしかしてって。

だからオレは最初に貰ったビルドの成型パーツを使うんじゃなくて、自分で変容塗料を借りてアストレイの腕を改造することにした。

そうすればライオンの頑丈さで光雷球を使える腕ができるから。
そこから主任のモーションデータで魔球の練習するのにまた色んな苦労があったんだけど。


「いくぞ、主任」


オレは右手を高く掲げ、最後にひときわ強くエネルギーを込める。続いて左足を空へ伸ばす。
そしてその足で大地を踏みしめ、思い切り右腕を振り下ろし。

ため込んだエネルギーを手のひらから指先へと走らせ、ボールを飛ばした。


「ライトニング・ライオン・シュート!」


それは超電磁砲(レールガン)って言う攻撃と同じものだった。

撃たれてから動いたんじゃ回避も防御もできない超スピード。
指が離れた瞬間、ボールは文字通りの一瞬で主任のもとへ飛んでった。

閃光のようなって国語の教科書になら書いてそうな、オレ自身にも目で追うことのできない速さ。

その一瞬の間に何が起きたのか、オレにも分からなかった。
だからこれは終わってから超スローで確認した話だ。

オレが投げた球は金色の雷に包まれながら飛んで行った。
向かう先は主任のレッドフレームの手のひら、じゃなくて顔だった。

別に狙ったわけじゃない。オレは確かに主任の手に向かって投げようとしたんだけど外れちまった。
そのまま当たればレッドフレームの顔は砕けて木っ端みじんになってたはずだ。


『クジラ光雷球』


でも衝突する前に、突き出した手のひらの前に主任の顔と体がすっぽり隠れるくらいの水の玉が現れたんだ。
オレの投げたボールはその水の玉に当たって中に取り込まれて、渦に巻き込まれたみたいに水の中をぐるぐる回って。

水の玉は蒸発でもしたのかどんどん小さくなって、最後には水がなくなってボールはレッドフレームの手のひらに収まってた。

ここまで全部一瞬のことで、オレの目に実際に見えたことをありのまま話すと『ボールを投げたと思ったら、向こうの手のひらに捕まれてた』
何を言ってるのかわからないかもだけど、オレも何をされたのか分からなかった。


『じゃあ次は俺が投げる。構えな』


スロー動画を見ても混乱してるオレをよそに、主任は背中のバックパックを取り外して何故か右の前腕に移動させた。
そしてボールを右手のひらに乗せて、腕を真っすぐ真上に伸ばして、アーマーと右手でボールを囲んで。


≪クジラ!≫


そのボールを中心に青い水の玉を作り始めた。
最初はボールより皮一枚大きいくらいだったのがドッジボールくらいになって大玉螺旋丸くらいになってオレらのガンプラより大きくなって!


『よーし回転も加えちゃうぞー』


なんか引くくらい明るい声を出しながら水の玉の中が渦巻き出したというか乱回転してマジに螺旋丸みたいになったというか
ボールはその球の中を無茶苦茶なスピードで振り回されてヤバイ回転がついてる…あれを投げつけられるのか、オレ?


『しまった、デカく作りすぎたなぁ。もっと小さくしなきゃ』


でもオレはまだ甘かった。主任は掲げた水の玉を回転させながらその玉を小さくし始めた。

あれ、水を減らしてるんじゃなくて、同じ量の水を圧縮してるんだよな?
だって玉が何かヤバイくらいに光ってるし、螺旋丸でそういう修行あったし。

ごくりと喉を鳴らすオレの前で、小さくなっていく水の玉の中にいるボールがものすごいスピードで回転してく。

そのヤバイ回転をするボールと玉は、レッドフレームの腕につけられたショルダーアーマーがピタリと閉じてクジラの顔の中に隠されて。


『どうした、構えないのか』


放心してたオレは、あんまり普通に声を掛けられて急におっかなくなった。


「しゅ、主任。それ、何やってんだ?」

『何って、パワーをためて、圧縮して、回転も掛けて、さらに圧縮して、打ち出す瞬間まで
手元が見えないようにしてる。こうすればバットで打つのもミットで取るのも難しいだろ?』

「取る方まで難しくしてどうすんだよ!」


キャッチボールだぞっ、ドッジボールじゃないんだぞ!

ていうか取れるもんなのか、それ。
最初に作った大玉を見ただけでも、オレのライオンシュートよりずっとすごい粒子量だって分かる

なのに、さらに圧縮と回転?それこそ螺旋丸みたいに触れた瞬間爆発するんじゃないのか。


『するかも知れないな。それでこそド派手な超次元ガンプラ野球って奴だ』

「いやだからそんなの」

『―――そんな世界に変えるんだろ?』


オレに取れるわけがない、とは言わせてもらえなかった。いや、言えなかった。

急に寒気がして、レッドフレームが怖くなった。
ヤバイ光雷球を目の前で見せられてた時だってこうはならなかったのに。

も、もしかしてこれが殺気って奴なのか?


『両手を前に突き出して、左右の光雷球を重ねるように作れ』


オレは言われるがまま操作した。反抗する気は起きなかった
グリーンフレームの両手を開いた状態で突き出して、左右同時に光雷球を作る。


≪ライオン!≫≪掃除機!≫


手首を寄せ合て金と青緑の異なる2色をした光雷球を近づけるとバチバチと放電し反発しあう。

『ライオン』の光雷球から出た金の放電が青緑の左手にも当たって表面を金色に変えたけど、これでどうにかなるとは思えない。


『……そのまま腕にチカラ入れとけよ』


主任は垂直に掲げていた右腕に左腕を添えて、左足を空高く掲げた。


『クジラ・ボルテックアタック!』


その足を振り下ろし、フィールドを踏みしめ、閉じられていた右腕のクジラが開いて――青い閃光が飛び出した。

その閃光を出しながら怒涛の勢いで迫る激流に押し出されたボールは、目にもとまらぬ速さでオレの腕に飛び込んできた。
【絶対に目にもとまらぬ速さだって分かる】のに、そのボールが【ゆっくりオレの手に飛んでくる様子が見えた】。

残念ながらそのおかしさに気づく余裕はその時のオレにはなかった。

直後にオレの光雷球を貫いて手のひらに触れたボールの衝撃で、今にもはじけ飛びそうだった

必死で腕に力を込めて押し返そうとするけど、どうにもできる気がしなかった。
重くて、苦しくて、怖くて、あと一瞬で吹っ飛ばされて粉々にされるって確信できた。


なのに、その一瞬先の未来がなかなかやってこない。
重くて、苦しくて、怖くて、死んじゃいそうな地獄の時間が永遠に続いて――突然気づいた。


オレ、今死にかけてるんじゃないかって。


主任がボールを飛ばすのに使った光雷球は明らかにオレよりエネルギーもコントロールも上で、だからボールのパワーもスピードもずっと上だ。
なのにいつまでたってもボールがオレを吹っ飛ばさないで周りがゆっくり見えてるのは、死にそうになると周りがスローに見えるって奴じゃないか?

ボールを投げられて実際に壊れかけてるのはグリーンフレームでオレじゃないってことは、ちゃんと分かってる。でもそれしか考えられない。

オレはオレが死にそうだって気づいてから、たぶん恐いとか逃げたいとか考えた筈だ。考えたと、思う。

だけどそれ以上に、もう死ぬのかって思ったオレは―――何かもー吹っ切れた。吹っ切れたって言うか、キレた。
重いとか苦しいとか怖いとかどうでもよくなって、主任の言葉を思い出した。


"そんな世界に変えるんだろ"


無理だって思ったのにこの地獄キャッチボールに付き合ったのは、殺気が怖かっただけじゃない。
主任のその言葉にすげえドキドキしたんだ。やってみたいって、そう思ったんだ


≪ライオン!≫≪掃除機!≫


オレはアームレイカーをチカラいっぱい押して、光雷球の出力も目一杯上げた

絶対にできる。だって主任は撃つのが弱いんだ。
その主任がやらせたなら、どれだけ無理って思えてもこれは出来ることの筈だ。


≪ライオン!≫≪掃除機!≫


このままヤラレたりなんかしない、絶対にこの無茶苦茶な螺旋丸もどきを止められる。


≪ライオン!≫≪掃除機!≫


オレなら、オレとグリーンフレームと主任のビルドなら絶対出来るんだって―――そう考えただけでワクワクする!


≪ライオン!≫≪掃除機!≫―――――≪ベストマッチ!≫


放電しあう金と青緑の光雷球が絡み合い渦を巻く。

青緑の放電がオレの手のひらで暴れるボールを包む青いエネルギーを吸い取って。

金の放電がボールを受ける両手を硬くしなやかにする

硬いだけじゃない、それだけじゃあキャッチできない。

力強くて柔らかい絶妙のタッチが必要で、それはもうオレの手の中にある。


「うおおおおおおおおお!」


嵐みたいだったボールのエネルギーがどんどん小さくなっていく。

エネルギーを抑え込んでる指も少しずつ閉じていって、その指と指がくっついたとき。

ボールは、動かなくなってた。


「やっ……た?」


まったく動かなくなったボールを見ても、オレはまるで現実感が湧かなかった


「そのセリフはやってないフラグだぞ」

「うおわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


いきなり真横から掛けられた声に驚いたオレはアームレイカーを放り出して、その声と反対側に飛びのいた。
顔を上げたら、いつの間にか操縦ブロックに入り込んでた主任がいた。さっき感じた殺気なんて、微塵もない。


「しゅ、主任」

「おう、よくやったな。安心しろ、今回はフラグ不成り――」

「なんなんだよアレはっ!」


オレは両手で主任の襟をつかんでガーって詰め寄った。


「ぶほっ!ちょ、ナガヨシ待」

「なんだよあの滅茶苦茶なボールはなんなんだよあんなの受け止めろってなんであんなの受け止められるんだよ
途中で鳴ったベストマッチってなんなんだよオレ死ぬかと思ったんだぞなんでガンプラバトルでファイターが
死にそうになるんだよなんだよホントなんなんだよっ!」


後になってみれば、その時のオレはキレた状態が続いてたんだろうな。

もう死にそうになったのとか死ななくて済んだこととか凄い事達成したとか訳わかんないとか。
色んなことがありすぎて頭がオーバーヒートして凄いハイになってたんだ。

でもその時のオレには当然わかんなくて、とにかく主任の首をガンガン振り回してた。


「なんでだよっ!」

「落ち着け、説明するからっ!あと顔が近いっ!」


主任はオレの両手を振り払って、両肩を握って押し返した。


「前に言ったろ。ビルドシリーズの塗料で変容したプラフスキー粒子は特定の組み合わせでツインドライブ
みたいに凄いパワーを出すんだって。ライオンと掃除機のビルドは、その【ベストマッチ】の関係にあるんだ」

「ベスト、マッチ」


だから、なのか?前から他の組み合わせよりも調子よく動くとは思ってたけど。


「単に塗料と粒子を重ねただけじゃ駄目だ。ファイターがそのビルドに適合した強い気持ちを持っていないとベストマッチは成立しない。
ピンチを前にして怯むよりも滾る雄々しい心と、女性らしい細やかさ。そんなナガヨシの魅力がライオンと掃除機のビルドに適合したんだ」


雄々しさと、女性らしさ……ってなんだよ女性らしさって。オレそういうキャラじゃないってば!


「この手の問題は事前に理屈をこねるとかえって上手くいかなくなるから、話さなかった」


スルーすんなよ、バカ主任!


「でもお前はベストマッチとその必殺技を繰り出して見事にキャッチした。これでガンプラ野球普及への道を一歩進んだぞ」


だから話を聞けって……必殺技?


「途中から重ねた光雷球が渦を巻いてたろ。ベストマッチ関係にある粒子が混ざり合うと、周辺粒子を取り込んでより強大化する。
もちろん対戦相手が使ってる粒子も巻き込んで、相手のパワーを利用して相手を止めたり倒したりする必殺技に昇華される。

これがプロジェクト・ビルドの勝利の法則『ボルテック・フィニッシュ』だ」


必殺技、ボルテック・フィニッシュ。それを、俺が使えたのか。


「あぁそうだ。ナガヨシ、本当によくやったな」


そう言って主任はオレを子供にするみたいに撫でてきた。
それでようやく『終わったんだな』って実感したら、急に力が抜けてオレはその場にへたり込んだ。


「ナガヨシ!?」

「あ、あれ?オレ、どうしたんだろ」


腕も足も全然力が入らない。立ち上がりたいのに全然だめで何でか目元が熱くなってきた。


「ゴメンっ、俺が悪かった!」


その場で跪いて目線を合わせてきた主任が慌ててオレにハンカチを押し付けてきた。

そのときようやくオレは自分が泣いていることに気づいた。


「なんで…?なんだろコレ…」


気づいたら余計にポロポロこぼれてくる涙に、オレはいっそうパニクって余計に涙が出てきた。


「すまん、やりすぎた!恐い思いさせて本当にゴメン!」


主任はそう言って必死に頭を下げていたけど、オレにはどうして自分が泣いているのか本当にわからなかった

死にそうで恐かったのか、全部終わって安心したのか。
やり遂げて満足したのか、撫でてもらって嬉しかったのか。

理由が全然わからないまま、泣いてるのを見られる恥ずかしさから逃げるみたいに主任のハンカチで目を隠して。

それでもオレは涙が止まらなかった。


「あーーーー!すばる、なにがあったの!?」


またも突然隣から聞こえてきた声に驚いてハンカチを外して見上げたら、この狭い操縦ブロックの中に環まで来ていた。

手にはサプレッサーを持っていたから、修理が終わって戻ってきたんだと思う。


「すばる、泣いてるのか!?」

「ち、違うよ。オレは泣いてなんか」

「泣いてるぞっ!」

「すまんオオガミ、俺のせいだ」


まだうまく喋れないオレと訳が分からない環が混乱する中、主任がひとりで謝ってた。


「違う…環、主任は別に」

「オオガミ、悪いけど誰か大人のお姉さん呼んできてくれ」

「う、うん分かった」


環はそう言ってもう一度ガンプラ室を飛び出して、すぐにこのみ達を連れてきてくれた。


問題は、みんなを呼びに行く途中でなんか変に話が伝わったみたいで。
主任がオレに何かひどいことして泣かせたーって話がみんなの噂になってた。

しかもその噂が何故かオレの兄ちゃんたちにまで伝わって、後日シアターまで主任に殴り込みをかけてきた。



◆◆◆◆◆◆◆


「ゴメン主任、オレのせいで迷惑かけたみたいで」


後日、オレは主任に改めて謝った。
急に泣き出したこと、兄ちゃんたちのこと、必殺技のお礼も言えてなかったことをだ。


「いや俺が悪かったんだ。ナガヨシのお兄さんたちは妹思いの良い人たちじゃないか」

「でも殴り込みって」


場外乱闘なんてしたら下手すりゃ大会出場停止もんだってのに。


「ちゃんと手順は踏んでたから大丈夫だって」


主任はそう言って兄ちゃんたちを庇ってくれるけど、オレは納得できない。


「しかも傷物にした責任を主任に一生取れって、オレは傷1つつけられてなんかないってのに」


勘違いで殴り込みとか、家族として恥ずかしい。
主任だったからまだ良かったけど、相手がプロデューサだった日には人生終わりにされてたんじゃないか?


「そこは妙な噂を無責任に流したうちのアイドル達にこそ責任を問いたいな。
まぁお兄さんたちを責めないであげてくれ。俺も気持ちは分かるから」


気持ちが分かるって、主任にも妹とかいたのか?


「いいや、血のつながった妹はいないよ。でも俺には妹分で幼馴染だったエレナがいるから。
俺だってエレナが765プロにスカウトされたって聞いたときは本社に突撃したからな」

「はぁ!?」


え、なにそれ初耳なんだけど。プロデューサーに文句言ったってことか?


「いいや、アオナギとじゃないよ。アオナギに話してもボケられるだけだから高木社長とアルトアイゼン達に面談を少しな」

「んん?どういうことだよ?」

「俺がシアターに常勤で働くことになったって話だよ」


なんかそうらしいけど、余計にわからないよ。どうしてその流れで主任が働くことになるんだ。


「よくわからないけど、そこで話してなかったら主任はシアターで働いてなかったってことなのか?」

「そうだな。ナガヨシにとってはオレに出会わず泣かされたりする事も無いそっちの方が良かったかもだが」


そんなことを言われてムっとした。


「変なこと言うなよ。会わなかったほうがよかったなんて言われたら、オレだって怒るぞ」


そう言ったら主任はなんか凄いびっくりしたみたいな顔をした。
まるっきり予想外なことを言われたみたいな、もしかして目が点になるってこういう顔なのか?


「なんだよ、おかしなこと言ったか」

「い、いやそんなことはない。今のは俺が悪かった。ゴメン、ナガヨシ」


そう言って主任は頭を下げるけど、オレにはまだ腹立たしいことがあった。


「だったら、そのナガヨシって言うのもいい加減やめてくれよ」

「え?」

「オレさ、子供のころから兄ちゃんたちと同じ野球チームに入ってたんだよな。
でもそんな中で苗字で呼ばれると兄妹の誰のことかわからなくなるだろ?
だから、みんなオレ達のことは下の名前で呼んでたんだ」

「つまり、俺にもおのれのことを名前で呼べと?」

「そうだよ。難しいことじゃないだろ?」


どう考えても簡単なことの筈だ。なのに主任は額にしわを寄せて難しい顔をした。


「一つ確認するけど、今回俺とおのれのことで流れた噂の内容って知ってるか?」

「主任が俺になんか酷いことして泣かせたって話だろ?」

「……お兄さんたちが心配するわけだ。純粋で無防備すぎる」


主任は何でか呆れたような目でオレを見た。こら、ため息とかつくなよ失礼だぞ。


「いい、もうわかった。俺も覚悟するわ。だから――よろしくな、スバル」


主任から差し出されたその手を、オレはもちろん握り返した。


「うん、よろしく主任」


(おしまい)






≪ガンプラ紹介≫


●アストレイ・グリーンフレーム・LCハンド

永吉昴のガンプラ。
アストレイの両腕の前腕をビルドの変容塗料で塗装し、GNコンデンサを移植した機体。
Lは右手のライオン、Cは左手の掃除機(クリーナー)を意味している。

昴は光雷球によって超電磁砲な剛速球、ミラージュコロイドも混ぜた分身魔球・消える魔球を投げることを
望み、しかしガンプラの強度の不足、あるいは繊細な粒子操作が出来ないという問題で実現できなかった。

それがビルド塗料によって叶った形になる。

今回は目立った使用はなかったが、掃除機の左手はアブソーブシールドと同様に流体状態の粒子を
吸収して自身のエネルギーに変える。ベストマッチを発揮しても固体を構築している物質化粒子や
プラスチック内部の粒子には干渉できない(前者は消しゴム、後者はバットやコブラの領域)



●アストレイ・レッドフレーム・クジラアビス

アビスシルエットをベースに「クジラ」のビルド粒子変容成分を混ぜて成型したパーツを
装備したレッドフレーム。プラフスキー粒子を水に変換して操作する。

バックパックのバラエーナ改2連装ビーム砲、ショルダーアーマー内部の3連ビーム砲、
魚雷発射管はすべてビーム等の代わりに水を放出する。

バックパックのジョイントは背中の他に前腕にも取り付けることが可能で、状況に応じて使い分ける。
ショルダーアーマーを接続するサブアームは原典機より長く、アーマーをナックルとして両手に装し、
内部の砲門から水を噴出して推進力にして力強く殴るなどの行為も可能。

アーマーにはクラビカルアンテナのように粒子操作の精度を高める働きもあり、劇中で
腕をアーマーで覆ったのは今回の攻防(投げと受け)で光雷球の精密操作を必要とした為。

ちなみに日本のプロ野球界にはかつて『ホエールズ』という名の球団も存在していたが、昴の趣味に
合わせる為にジオウがチョイスしたわけではなく、本編から数週間前にシアターで起きた『火事騒ぎ』
を受けて、耐火・消火のシステムを充実させようと研究していたところに環が火事騒ぎを起こしたこと
を察知してそのまま急行した、と言うのが真相である。


(おしまい)

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あきゅろす。
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