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頂き物の小説
その12.松田亜利沙のカメラワーク

とあるガンプラビルダーと彼女たちの星輝く日々の記録


「その12.松田亜利沙のカメラワーク」







39プロジェクト・オーディション会場


「では次の方どうぞ」


こ、ここがあの765プロ。あの天海春香ちゃんや如月千早ちゃんと同じ空気を吸ってるなんて…ス−ッ!ハーッ!


「あの、まずは自己紹介をお願いできますか?」


はわっ!空気を鼻いっぱい吸うのに夢中になってたら注意されちゃいました!


「は、はい!あの、ありさ…松田亜利沙といいます!今日は、よろしくお願いいたします!」


「はい、よろしくお願いします。さっそく質問ですが、あなたはどうして
この39プロジェクトのアイドルになりたいと思ったのですか?」


「はい!ありさは…ありさはアイドルちゃんが大好きなんです!」


「もちろんガンプラアイドルとして輝くみんなのことも大大大好きです!
如月千早ちゃんもティアナ・ランスターちゃんも大大大大大好きです!」


トーゼン城ヶ崎美嘉ちゃんや三条ともみちゃんも大好きです!


「ですが不満もあります。それは――アイドルガンプラ合戦でテレビに映るのが!ガンプラばかりと言うことです!

ガンプラを動かしてるアイドルちゃん達の姿をもっともっと映して欲しいのです!」


流れる汗を、あふれる涙を、懸命に戦うパッションを、それでも抑えきれないキュートさを!

亜利沙はこの目に映したい!その瞬間をカメラに収めたいのです!


「だからありさは、ガンプラアイドルの、39プロジェクトのオーディションを受けに来ました!



◆◆◆◆◆◆◆


2013年 4月


「うえーん、主任さーん」


おお!あそこで泣いているのは最近39プロジェクトに入った春日未来ちゃんですね!

オーディション中にザク太郎ちゃんとお友達になって、ガンプラバトルを始めた期待の新人です!

ザク太郎ちゃんを抱きしめながら泣いてる姿、とってもキュートなのです!むふふ!



「おーいマツダ」


およっ?なんですか主任さん。


「手が空いてたらカスガにガンプラバトル教えてやってくれないか」

「ええええっ!あ、ありさがですか」


いやいやいや!ありさなんてシアターの中で間違いなく最弱!

そんなありさが輝かしいアイドル道をひた進もうとする未来ちゃんに何を教えろと!?


「間合いの取り方だけでいいから」

「は、はぁ」


主任さんはそれだけ言ってすたこら去ってしまい……待ってぇぇぇぇ。


「亜利沙さぁぁぁん。ガンプラバトルが分かんないんですー」


おふっ!泣いてる未来ちゃん、間近で見ると一層キュートです

これはカメラに収めなくては!なくてはー!


「コックピットは暗いしモニターは良く見えないしメーターがいっぱいでー」


むむ、それはどういうことですか?


「ガンプラバトルをするときってー、周りが暗くなって青いメーターみたいなのが
いっぱいじゃないですかー。どれを見ていいか分からないなーって困ってるうちに
全部真っ赤になって、ワンワンうるさい音がなっちゃうんですー」


おおっと、それは攻撃を受けて警報が鳴ってやられちゃったんですねー。


「それはモニターは小さくて周りが全然見えないし、相手のガンプラさんはすぐに
画面から消えちゃうし、ゲームと違ってザク太郎くんのことも見えないしー」


ゲームと違って見えない…あぁなるほど!確かにそれは戸惑う所ですね
ロボットゲームや格闘ゲームだと、動かしているキャラクターを後ろや横から見ている構図で操縦します

でもガンプラバトルは、ガンプラのセンサーから見える風景を、ガンプラの視界を、ガンプラの中から見る形になります
ガンプラの中にいるんですから、ガンプラの姿を見ることはできません。


「わたし、ザク太郎くんに誘われてガンプラバトルやろうって思ったのに、これじゃ私一人で
バトルしてるみたいです。しかもすぐ負けちゃって、気づいたらザク太郎君が傷付いてるしー」

「ふむふむ」

なるほどなるほど。だいたいのことは察しました。

ありさに間合いを教えろとは――つまりそう言うことなのですね、主任さん!




◆◆◆◆◆


≪Plaese set your GP-Base≫


「と言うわけでさっそくバトルなのです!未来ちゃん、セコンドとして後ろから見ていてくださいね!!」

「はい、わかりましたぁ!!」


うんうん、いいお返事です。今すぐ振り返ってバチバチ撮影したいです!

そのありさは気持ちをググっと堪えて、もう一人の協力者にお願いします


「ひなたちゃんもよろしくお願いしますです!」

「う、うん。このじーぴーべーすとザク太郎を機会に置けばすればいいんだね」


協力者とは木下ひなたちゃん!ザク太郎くんやグフ彦くんたちと一番仲がいいアイドルちゃんです。

彼女は普段ガンプラバトルはしないのですが、ザク太郎ちゃんがバトルするためには誰かにセットをお願いする必要がありました。



≪Beginning【Plavesky particle】dispersal. Field――city≫


ありさとひなたちゃんがGPベースをセットしたら、青白いプラフスキー粒子が立ち上ります。

それでバトルベースの上にビル並ぶ街の様子が浮かび上がり、ありさたちの周りを遮断されいくつもの空間モニターが現れます


≪Please set your GUNPLA≫



「さぁザク太郎ちゃんをバトルベースにおいてくださいー」

「わかったよー」


バトルベースの指示に合わせて、顔の見えないひなたちゃんにお願いをします。


そして、ありさがセットするガンプラは――コレです!


「あれ?ザク太郎にそっくり!」

「ふふんちょっと違うのです。この子のベースはザクファントム、ザク2のザク太郎ちゃんとは違うのです」


ガンダムSEEDデスティニーに搭乗したザクのリメイク機ザクウォーリア。
その指揮官用機でありブレードアンテナがついてるのがザクファントムです。


「それに背中からなんか首が生えてる?なんですかこれ?ドラゴンですか?」

「むふふ、これはケルベロスウィザード。どっちかと言えばワンちゃんですね」


背中に取り付けているのはケルベロスウィザード。

本来は犬型のモビルスーツ「バクゥ」用に開発された追加装備で、バクゥと同じタイプの頭部と首が2組付いているのが特徴です。


ただドラゴンみたいと言った未来ちゃんの言葉も間違いじゃありません

ケルベロスウィザードの武器は背中の2つの頭の口から2本のビームサーベルが牙のように生えていることなのですが
このウィザードはそのサーベルの基部が頬の横に、後ろを向くように移動しています。

なのでビームサーベルを展開すると、牙と言うより龍のヒゲみたいになるのです。

さらに言うとこれはもう「サーベル」ではないのですが。


……なんて説明してる間にガンプラへの粒子の充填も操縦スフィアの構築も全部完了です。

ありさがスフィアを掴むとカタパルトが物質化。さー行きますよー。


「松田亜里沙、ケルベロス・ザクファンクション――いきまーっす!」


ちなみにファンクションは「機能」と言う意味の英語ではなくて、ファン・アクションの略なのです。

すなわち!「ファンによるアイドルちゃんのための行動」と言う意味なのですよ!


鼻息荒くバトルベースに飛び出したありさとファンクションちゃんはビル並ぶ街に着陸。

ビルと言ってもガンプラの何倍も背が高い高層マンションとか、ガンプラが乗れそうな広い屋上付きの建物は無さそうです。

とりあえず、手近なビルに背を預けます。

「こういう場合、普通は身を隠しながら相手の位置を探ります」


相手が気付いてない内にこっちが気付けば、一方的に攻撃できますからね


「なるほどぉ。サバゲーって奴ですね!」

「たぶんそうなのです!」


いえ、ありさも人間対人間のサバイバルゲームなんてやったことないからソレっぽいなーってイメージで語ってますけどね。


「でもビルの影に隠れてたらこっちからも相手のことなんて見えないですよね?モニターも狭いし」

「そこで役に立つのがレーダーなのです!」


ありさはたくさん空中に浮かんでる計器のひとつを指さします。


「自分のガンプラを中心にどっちの方角どのくらいの距離にガンプラがいるか分かるのです!」


もちろんレーダーで感知できる距離や精度はガンプラの出来栄えで決まります。

ですがこのザクファンクションにはブレードアンテナ3本、ビームアンテナ4本もついてます。索敵も通信もバッチリなのです!


と言うわけでスロット展開、ぶぅんと音を立てながらビームアンテナが起動します。さぁザク太郎ちゃんはどこですかぁ?


「……何にも映ってないですね」

「あれー?」


こんな筈はないのですが…はっ!?もしかしてザク太郎ちゃんはありさより格上のステルス処理がされてたのですか?

ザク太郎ちゃんは主任さんが生み出したガンプラだから、あり得ない話じゃないのです!


「あのー、ありささん」

「うほぉ!?」

こりゃぁ困ったですと慌てていたら、いつの間にかひなたちゃんが操縦席に入ってきてたです。ほんとにいつの間にですか!?


「あのね、ザク太郎がちっとも中に入れないんだけど、どうしたらいいのかなー?」


「え?」


ひなたちゃん側の操縦席に行ってみると、カタパルトが現れていませんでした。

それでひなたちゃんにスフィアを両手で押してくださいとお願いしたところ、問題なく稼働したです。


「亜利沙さん!レーダーになんか点滅する点が現れました。これがザク太郎ですか?」


ザク太郎ちゃんはようやくバトルフィールドに降り立ち、レーダーに映ったと未来ちゃんが大きな声で報告してくれました。


未来ちゃん、どうやらガンプラバトルに通信機能があるのを知らないのですね


「あわわ!亜利沙さん、なんかモニターが出て音が鳴ってます!」


ぽちっとコールを飛ばしたんですが、通話の仕方が分からないみたいです。また未来ちゃんの大きな声です


ありさは大急ぎでバトルベースを半周しました。そして慌てながら何度もモニターを指タッチする未来ちゃんを激写です!

未来ちゃん、ガンプラバトルの機能はほとんどスフィアで操作するんだって知らなかったみたいですねー。

何度も指タッチする未来ちゃんの慌て顔、とってもキュートでした!


撮影に満足したありさはスフィアを操作、ひなたちゃんの席から飛ばしたコールを受信します。


「あー、ありさんさんたちが映ったよー」


モニターにひなたちゃんの姿が映りました。もちろんスクショはバッチリ確保です!


「わー本当だー。ひなたちゃんが映ってるー。これ、向こうからも私たちのことが見えてるんですか」

「当然です!」


そう、この通信機能を使えばバトルしているアイドルちゃんの顔が!流れる汗が!紅潮する肌が!まるっと見えるのです!

この為にありさはガンプラバトルを始めたと言っても過言ではないのです!


「じゃあコレ、ザク太郎くんにも私たちの姿が見えてるんですか?」

「え」

「あ、そうだねー。ザク太郎、見えてるかい?未来さんたちだよー」

「ザク太郎くん、見てるー?」

「あー、えーと」


どう話したものでしょうかと、モニターに向かって手を振る未来ちゃん達を撮影することも忘れて悩みました。


「え、違うのかい?未来さんたちのこと、見えてないのかい?」


と悩んでる間にモニターの向こうのひなたちゃんが何故かそんなことを言いました。


「え、どういうこと?ひなたちゃん、ザク太郎と話せるの?」

「ううん、言葉はわかんないよ。でもあたし毎日一緒にいるから、なんとなく分かるんだ。
なんとなくしょんぼりしてる気がしたら首を横に振り出したから、そうなのかなーって」

「あー…ごめんなさい未来ちゃん、ひなたちゃん。実はそうらしいんです」


ありさのザクファンクションは自分で動いたり喋ったりしません

ザク太郎ちゃんやリトルミズキちゃんたちは自分で動けてもまだ喋れません

だからこれはシアターでただ一人自由に動いて喋ることが出来るガンプラから聞いた話なのですが


「私たちがコックピットで見れる通信とかレーダーとか他の計器とか。
そう言う便利な情報はガンプラの皆には分からないみたいです」


分かるのは見たもの聞いたもの嗅いだもの触ったものニュータイプ的直観で感じたものくらいで、デジタルなことは無理だとか。


「えー、それって仲間外れみたいじゃないですか。ザク太郎ともお話したいのにぃ」

「そうだよねぇ。なんとかならないのかねぇ」


はう!二人の優しさが尊いのです!

いいでしょうイイデショウ。そこまで言うなら尊いアイドルちゃんのため、このありさが一肌脱ぐのです。


「わかりました!なんとかしましょう」

「え、できるんですか!?」


ありさはスフィアを操作して、SPのスロットを起動!これでファンクションの必殺技が発揮できます。


ケルベロスウィザードの2つの首の頭頂部、アンテナの根元から発射された光が空に投影されて像を成します

そして浮かび上がるのは、セコンド席の未来ちゃんと向こうのメイン席にいるひなたちゃんのリアルタイム立体映像!

ひゃわー!素敵です2人とも!


「わわわ、これって私たちですかー!」

「はー、凄いねー。ガンプラバトルってこんなこともできるんだねー」


ソウデショウそうでしょう!これならありさたちだけじゃなくガンプラの皆も、アイドルちゃん達の素敵な姿が見れるのです!
当然観客のみんなにも業界の人たちにもバッチリアピールできて世界中がウィンウィンなのです!


「あれ、ザク太郎?どうしたんだい?」


ん?ひなたちゃん、ザク太郎ちゃんがどうかしたんですか?


「なんだか急に俯いちゃったんだよー」


むむむ。何故でしょう、お空にはこんなに素敵な光景が広がっているのに。


『だからだよ。スカートの中が見えそうだから、ザク太郎は下向いてるの』


「ええっ!?」


おおっと!スカートの前を抑えて恥じらう未来ちゃんとひなたちゃんの真っ赤な顔、カワイイのです!!

これは何としても写真に撮らねば永久保存しなくてはー!

反射的にスフィアから手を離しカメラを取り出したありさは、そこでようやく気づきました。


『まったく君って奴は、ちっとも反省してないんだね』


今の声の主が、青くてまんまる頭で耳が無いベアッガイが、ありさのGPベースの上に立っていたことを。


「ディ、ディオえもんさん」


そうこの人、いえこのガンプラこそ現時点シアターで唯一お話が出来るガンプラ、ディオえもんさんなのです!


「ディオえもんセンセー」

「わわわ、なにこれー!ガンプラが喋ってるー♪」


「はじめまして、未来ちゃん。ぼくディオえもんです。自己紹介の前にありさちゃんとお話させてね」


そういって何処から取り出したのか、身長の3倍はありそうなハリセンを掲げました


『ジオウくんに様子を見てきてって頼まれたんだけど、何してるのかな?』

「あ、ありさはただザク太郎ちゃんに一生懸命バトルする未来ちゃん達の姿を見せてあげたいなーって」

『で?』

「ス、スカートの中はデジタル処理で映らないようになってますし」

『で?』

「しゅ、主任さんに止められてたのを忘れたわけじゃないんです!でも、ただ、その」

『で?』

「未来ちゃんとひなたちゃんがとっても可愛かったので、ありさハッスルしちゃいました!」

『で?』

「ま、間合いを教えろと言われたお役目も今からやりますです!」

『………おしおきは後にしようか』


「はいぃぃぃぃぃ!わかりましたぁぁぁぁぁぁ」


なんとか許してもらえそうな雰囲気になったので全力で頭を下げるです!

そう思ったありさの前にセコンド席にいた未来ちゃんが飛び込んできました。


「あの!わたし春日未来!キミなんて言うの?なんで喋れるの!?」


そう言って未来ちゃんはディオえもんさんを両手で掴んで持ち上げました。
無邪気な未来ちゃん、輝いてます!早速撮影を。


『てやっ!』

「はぅっ!!」


しようとしたありさのオデコにディオえもんさんの投擲したハリセンが命中、後ろにひっくり返りました。



◆◆◆◆◆◆◆


「えー、要するにですね。間合いと言うのは自分の戦いやすい距離を把握するということなんです」


結局おしおきされて仕切り直ししたありさのザクファンクションは、ザク太郎ちゃんと改めて向き合いました。


アメイジングブースター(緑色に変更済み)を装備しているザク太郎ちゃんに頭がごちんとくっつきそうなくらい近づきました。


「例えばこれくらい近づくとファンクションが手に何を持ってても見えないですよね
それにひょいっと横に移動するだけでモニターから見失います」


そうなったら見えないところからの攻撃を無防備に受けてしまうのです。


「それに相手が近接型の機体ならこの距離からでも大ダメージな攻撃を繰り出してきます
汎用型でもビームサーベルをブゥンと発動してお腹に当てられるだけでも大変なことになります」


逆にザク太郎ちゃんの装備だとこのゼロ距離戦闘で有効に使える武器がありません

ロングライフルは相手に向けられないし、ロケットランチャーを撃つと自分も爆発に巻き込まれるです。
ヒートナタだって思い切り振りまわせなくて威力が発揮できませんし、ハンドガンも狙いがつけにくいです。


「つまりこの距離はザク太郎ちゃんにとって戦いにくい距離だってことなのです。
だからココまで近づかれないように振舞うか、近づかれたら大急ぎで逃げなきゃいけません」


そう言ってファンクションをザク太郎ちゃんから離して、そのまま反復横跳びしてみます。


「離れれば相手があっちこっち動いても簡単には見失いません。ザク太郎ちゃん、見えてますよねー?」

『ありささん、見えてるよー』


ザク太郎ちゃんは首を縦に振ってくれましたし、モニター越しにひなたちゃんにもOKを貰いました。


「ならもっともーっと離れたら、どれだけ動いても見失わなくなりますか!?」

「そうですね、その通りになります」


未来ちゃんはとってもとっても素直ないい子ですねぇ

振り返って撮影したいのをこらえ、未来ちゃんの提案通りに後ろ向きに移動して思いっきり離れてみます。


「タイヘンです!ザク太郎が豆粒みたいに小さくなって見難いです!」


はい、その通りです。思いっきり離れちゃったんでモニターの中のザク太郎ちゃんはお豆さんみたいにぽつーんと映ってます。

こうなると見失わない代わりに攻撃が当て辛くなります、色んな意味で。


「ザク太郎ちゃん、そこからロングライフルでありさたちを狙えますか?」


言うが早いかザク太郎ちゃんはライフルを構えてくれました。


『あ、ありささん。銃なんか撃って、大丈夫かねぇ?』

「大丈夫です!ダメージレベルはCですから、直撃してもダメージはないですよ」


そしてガンプラを心配するひなたちゃんの表情は当然スクショ済みです!


その間にザク太郎ちゃんはライフルを構え、まず一発撃ちました。
残念ながら弾丸はファンクションよりかなり右を通り抜けました。

更に一発撃つと今度はだいぶ左側に逸れました。


「と、このように遠くに離れると見失わない代わりに攻撃が当てにくくなります」

「それじゃあ離れても近づいても戦えないってことですか!?」


しょんぼりしそうな未来ちゃんの声もまた可愛い…ですが!ですが、今は撮影できません。

撮影するとディオえもんさんが怒ります!なので安心して撮影する為にも一刻も早く授業を終わらせます!



「いやいやいやそんなことはアリマセンよ。例えばこんな方法もあります」


スフィアを操作、メインセンサーをズームインするです


「あ、ザク太郎が大きくなった!」

「はい、デジカメと同じでこんな風にしてピントを合わせることが出来るです」


もちろんこんな風にズームしたら、またちょっと動かれただけで見失う問題が再燃します。

しかし少なくともこのケルベルスザクファンクションには問題ありません。


さらにスフィアを操作。メインのモニターの左右にもう1つずつモニターを出します


「あぁっ!モニターが増えましたよ、ありささん!」

「ファンクションには頭が3つありますから、ひとりで狙撃手と観測主の役割だってこなせるのです」


さらにオートロック機能を使います。これでライフルを撃つときはシステムが自動でザク太郎ちゃんに銃口を向けてくれます。


「ところで未来ちゃん。ファンクションの武器がどんなだったか覚えてますか?」

「え、えーと……ドラゴンのひげ!」


大正解です!と言いたいところを何とか我慢します。

正直な話、ファンクションの一番の武器はこのビームアンテナで強化した通信機能とミラージュコロイド制御機能ですけどね!
これがないと相手のファイターの姿を投影することもままなりませんからぁ!


「ざ、残念ながら違います。なのでちょっとモニターに出してみましょうか」


またまたスフィアを操作。さらにモニターが2つ増えました。

しかもこのモニターにはザクファンクションを右斜め後ろ、そして左斜め後ろから見た姿が映っています



「わぁ!これファンクくんですよね?」

「カメラドラグーンです。カメラの付いてるロケットを飛ばして、ファンクションを映していると思ってください」


さらにこのドラグーン、武装がない代わりにミラージュコロイドまで使えます。
これを使ってビームを曲げたり、姿を消したり、思いもよらないところから撮影するなんてこともできるのです。

まぁ今必要なのはそれじゃないのですが。


「さて未来ちゃん。ファンクションの腰と左右の太ももに銃があるのが見えますか?」


太ももについてるのはガンカメラ機能を搭載、強化したカレトヴルッフです。
パーツの組み合わせで銃にも剣にもカメラにもなる優れものです。

さらに腰に懸架しているのはチェンジリングライフル。アニメ「ガンダムビルドダイバーズ」にも登場した武器です。
狙撃用のビームライフルと近距離用のガトリングを使い分けることが出来ます。

ありさは改造して望遠スコープを追加しています。しかもカレトヴルッフと合体して威力を高めることも出来ます。


説明もそこそこにライフルを取り出しカレトヴルッフ1つと接続、ザク太郎ちゃんに銃口を向けました。


「ザク太郎ちゃん。3つ数えてライフルを撃ちますので好きなように動いてください」


ザク太郎ちゃんはこくりと1回首を縦に振って、こちらに顔を向けたままジグザグに後方へ移動しました。

ありさはその様子をメインカメラとサブカメラ2機で追いかけます。ドラグーンのほうは今回は後方待機です。


そして3つ数えて・・・ズドン!

ありさのライフルから飛び出したビームは見事ザク太郎ちゃんの胸に命中。
ダメージは無い筈ですが、驚いたのかザク太郎ちゃんは後ろ向きに転んでしまいました。


「うわー!当たった!」

『ザク太郎、大丈夫かい?』


ひゅー!素直に喜ぶ未来ちゃんも心配するひなたちゃんもベリィグー!

心配はいらないのですよ、ダメージレベルCでのバトルはガンプラを一切傷つけないのです。

だからほら、ザク太郎ちゃんも何事もなく立ち上がって。


「ザク太郎、くん?」


立ち上がるはずなのに、何故かその動きは鈍くて、胸を押さえてて。


『ありささん、なんか赤く光ってるモニターが出てきたんだけど』


ま、まさかありさ、設定を間違えたですか!?
だからビームの直撃を受けてザク太郎ちゃんは大怪我を!?

不安でいっぱいになったありさは縋るように未来ちゃんを振り返ってしまいました。


「大変!火傷とかしたならすぐに冷やさないと!」


そ、そうです。怪我したなら治療をしないと。


『落ち着きなよ、みんな。ザク太郎は大丈夫だから』


今にも飛び出しそうな未来ちゃんとありさに、モニター越しにストップが掛かりました。
いつの間にかディオえもんさんがひなたちゃんの肩に乗っていたのです。


『ダメージレベルC設定だから、物理的には何も壊れてないし、継続的な痛みもないよ。
でも攻撃を受けた以上、ゲームシステム的にダメージエフェクトによる行動制限を受けてるんだ』

「ダメージエフェクト?」


え、そんなのあったんですか?


『そりゃそうでしょ。このゲームはライフゲージもHPもなく、行動不能になったら
負ける遊びだよ。なのに何度攻撃を受けてもノーダメージじゃ勝負がつかないじゃない。
だから攻撃を受けた場所はそのダメージレベルに応じて動かしにくくなるんだよ」


い、言われてみれば確かに。


「じゃあ、ザク太郎くんが胸を押さえてるのもそのせいなの?」

『心配なら一度バトルを終了させてみる?』


ごもっともな言葉でした。心配ならスフィアを操作してサレンダーを選択すればいいだけだったんです、


『それはちょっと待ってやってくれんかね?ザク太郎、まだ頑張りたいって思ってそうなんだわ』


なのに今度はひなたちゃんからストップが掛かりました


『歩き方とか、視線の揺らし方とか、そう言うのでね。
ザク太郎が今、とっても悔しくて楽しいって気分なんだって思うんだ』


「悔しくて、楽しい、ですか?」


それは、逆の感情なのではないですか?


『ザク太郎、一生懸命逃げたのにありささんに撃たれて悔しいって思ってる。
でも亜利沙さんが凄かったから、亜利沙さんみたいになりたいって考えてる。
今度は亜利沙さんに向かって自分が撃ちたいって、ワクワクしてるんだと思うんだ』


それは…分かる気がします。悔しいけど、楽しい。悔しいから、楽しい。

だから、負けても、転んでも、また立ち上がる。
アイドルちゃん達よりヒーローさん達の領分かもしれませんが。


『水を差して悪いけど。亜利沙ちゃんはガンプラバトルのシステムを上手く使って今の攻撃を当てたんだ。
カメラのズームも射撃のロックオンも、ザク太郎が自分で何でもしようとしている内は出来ないよ』


って、それをここで言いますかディオえもんさん!


「え、そうなの?」

『そうなの。レーダーもモニターも見えないって話したでしょ。ありさちゃんの今の射撃だって、
システムを利用してミリ単位の補正をしてるんだ。けど、ボクらが自分で動くと照準がブレるからね』

「じゃあ今日亜利沙さんから教わったことは、私とザク太郎くんの役に立たないってこと?」

『それは、キミがモモタロスになりたいのかキバットになりたいのかによって変わるね』

「ほえ?」


何でそこで急に仮面ライダーなんです?


『知らない?仮面ライダー電王とかキバとか。環ちゃんとか恭文くんとか時々見てるけど』

「知ってるけど、ガンプラと何か関係あるの?」

『あるとも。戦いを全部ザク太郎の動きたいようにさせて、レーダーの確認とか
エネルギーのチャージとか補助的な仕事だけに徹するならそれはキバットでしょ』


ははぁ、なるほど。メインパイロットの席に立っていてもセコンドみたいな役割をするからキバットさんなんですね。


『逆にザク太郎には一切自分のカラダを動かさないように言い含めて、
自分のやりたいようにカッコよく戦いたいって言うならそれはモモタロスだよ』


それも納得ですが、それって普通のガンプラバトルなんじゃないでしょうか。


「それはちょっとヤダなぁ。ザク太郎だって自分の体が思うように動かせなかったら嫌だと思うし」

『まぁ言いたいことは分かるけど。それがイヤかどうかは人によるだろうね。
少なくとも野上良太郎はモモタロスたちに体を貸して嫌な気はしてなかっただろうし』


……ありさのファンクションはどう思ってるんでしょうねぇ。


『まぁそれはいいさ。じゃあモモタロスになりたくない未来ちゃんは、ザク太郎にはやりたいように
やってもらって、未来ちゃん自身はそれをサポートするキバットタイプのファイターになりたいのかな?』


ディオえもんさんがそう言うと、未来ちゃんは自分のこめかみをぐりぐりし始めました。


「うーん。それもちょっと違うなーって思う。あたしも自分で色々やってみたいって思うから。今日亜利沙さんに
教わったことも自分でやってみたいし。だけど私がザク太郎のカラダで遊ぶのも、絶対違うーって思うし」


よく分からないよーと言って、未来ちゃんは両手を組んで悩み始めました

そんな未来ちゃんを見て、ありさはある提案をします。

「……なら、ライバルならどうですか?」

「亜利沙さん?」

「ありさ、前に主任さんに言われたことがあるんです。
ガンプラアイドルのみんなの素敵な表情を撮影したいなら、最強のライバルとして立ちふさがれって」


そう、きっとこの話をするために主任さんは今回の教師役をありさに任せたのです。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆


数か月前 シアター加入直後



その日、ありさは主任さんとガンプラバトルしていました。


ありさのガンプラは「ジムスナップK9」。レナート兄弟さんのジムスナイパーK9の市販品を組み立てたものです

と言ってもガンプラ初心者同然のありさには凄い改造なんてできません。
ただその代りGPベースに登録するガンプラの機能設定は結構いじりました。

ありさ、運動は苦手ですがアイドルちゃんの撮影とデータ整理に使ってきたカメラとモバイルの扱いは自信ありましたから。

例えば、スナイパーライフルやマシンガンは「望遠機能付きカメラ」と設定しました。
だから銃口からビームは出ません。代わりに銃口をカメラのレンズに見たてて撮影します。

そしてEXAMシステムでスペックを上げて徹底的に逃げまくります。
その間にブラッドハウンド隊を相手のコックピットに潜入させて、アイドルちゃんを撮影するというコンセプトだったのですが。


「盗撮すんなボケェ」


そう言われてありさのブラッドハウンド隊は主任さんの手に握られた日本刀でばっさり切り払われました。
いえ、人間用の日本刀と同じサイズの150Mガーベラストレートだったんですが!

その時の主任さんの表情は何か見るだけで相手を凍らせそうなくらい冷たくて……ひぃぃぃぃぃ!


「て言うかどうやって忍び込ませた?コックピット前の障壁を越えたのか」

ゲーム中のバトルベースのフィールドと外の境界には、基本何もありません

なのでフィールドの外にガンプラが出ると粒子が無くて動けなくてリングアウト負けするのですが、これには例外があります。
それがコックピットブロックの正面です。ここだけはガンプラが飛び出してファイターが怪我すると危ないからか、見えない壁があるのです。

ここを越えて中に入らなければ、アイドルちゃんの写真は撮れません。

なのでありさは強化したセンサー系でこの見えない壁が薄い部分を探し出し、ありったけの爆弾で壁に穴をあけます。
壁が元に戻る前のわずかな時間にランチごとブラッドハウンド隊を潜入させて、撮影に取り掛かると言う方法を見つけ出しました。


「その情熱と技術は大したもんだが、それを覗きに使うなボケが」


主任さんは頭を抱えてため息をついていました。な、なんだか申し訳ない気分になります。
ですが、ですがありさは止まるわけにはいかないのです。すべてはアイドルちゃんの素敵な瞬間を写真に残すためにぃぃぃ!


「クレームがついたらシステム的にもルール的にも社会的にも対策されるっつってんだ」


うっ、それは困ります。そうなったら戦うアイドルちゃんを撮れません。

ならありさは!ありさはいったいどうしたらっ、どうしたらいいのですかぁ!


「……いっそ、お前自身の戦う姿を世に出してみるか?」

「はい?それはどういう」

「お前がバトルで戦う姿を全部撮影してブログに挙げるなりミニ写真集を出すなりしてみるかってこと。
いっそアウトフレームみたいな投影機能をガンプラに持たせて、戦いながらリアルタイムで発信してもいい」

「え………ええええええええっ!?」


ありさがガンプラバトルする姿を世間様に公開ですか!?無理ムリむりなのです、そんな恐れ多い!

そんな、アイドルちゃんみたいなことありさにはっ!


「何寝ぼけてんだよ、お前だってもうこのシアターのアイドルじゃねえか」

「はぅっ、そうでした!」

「おのれが率先して戦う姿を世に出して、世間に需要があれば他のガンプラアイドル達もこぞって後を追うだろ。
そうなりゃお前の望むアイドルちゃんの戦う姿を、誰もが写真に収められる世界が出来上がるだろ」


言われたことの意味を咀嚼して、喉が急にカラカラに乾いた気がしました
ありさ、今とんでもなく途方もないことを言われてませんか?


「そ、それはつまり」

「お前自身のガンプラバトルで、新しい流行を作って世界を変えろと言ってんだ」

「ええええええええええええ!?」


そんな無茶な!?ありさはただアイドルちゃんが大大大好きなだけのパンピーですよ!
カリスマギャルとかファッションリーダーとかじゃないんですよ!出来るわけがないですっ!


「だから、お前はもうアイドルだろうが。だいたいお前、そんな弱腰でどうやってアイドルの良い顔撮る気だったんだ」


だからそれは、コックピットブロックにカメラを持ち込んで。


「そうじゃない。例えカメラを相手のすぐそばに持ち込めたとして。

ガンプラバトル最中に他のことに夢中の奴なんかと戦ってて、良い笑顔すると思うのか。
不愉快で不機嫌でアイドルがしちゃいけないような、歪んだ表情になるとは思わないのか」


その指摘に、頭をガツンと叩かれたような思いがしました。


「相手が本気でガンプラバトルに打ち込む姿を撮りたかったら、てめーがまず本気出す価値のあるライバルになってみろ!」


その言葉は、ありさの胸に深く突き刺さったのです。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


そしてお話は現在に戻るのです。


「ありさは、アイドルちゃんが大好きです。テレビを見てる時も、コンサートホールでペンライトを振ってる時も。
アイドルちゃんは素敵な笑顔でいてくれました。その笑顔でありさやたくさんのファンのみんなに元気をくれました」


だから、勘違いをしていました。

ありさがガンプラファイターとしてアイドルちゃんの前に立った時、アイドルちゃんは無条件でいい笑顔をしていると。

そんな訳は、なかったのです。


「アイドルちゃんが笑顔でいてくれるのは、夢いっぱいの凄い人たちだからって理由だけじゃないのです。

ありさたちの書いたファンレターとか、コンサートで振ったペンライトの光とか、声を張り上げた応援とか
そう言うのがいっぱい集まって、アイドルちゃんにありさたちのパワーを届けられているから」


ありさたちも、アイドルちゃんの笑顔の一部なんです。そんな当たり前のことを、ありさは忘れていました。


「ありさは、ガンプラアイドルちゃん達の戦う姿を写真に収めたい。そこは何にも変わりません」


バトルで誰かに勝ちたいとか、カッコよく戦いたいとか、世界を平和にしたいとかじゃないのです。


「でもありさのやりたいことの為には、アイドルちゃんと本気で戦わないといけないんだって教えて貰いました。
だからディオえもんさんも言葉を借りるなら、ありさは味方の怪人じゃなくてライバル怪人になりたいんです」


アイドルちゃんを本気にさせて、アイドルちゃんを一生懸命戦ってもらって、その全部を一番近くで見たいのです。

そしてもしも主任さんが、ありさにこの話をさせたくて未来ちゃんの先生役を振ったのだとしたら。


「ザク太郎ちゃんの味方として戦うんじゃなくて、ライバルとしてザク太郎ちゃんの前に立って、
ザク太郎ちゃんと競い合う。それだって『ガンプラバトルで一緒に遊ぶ』方法のひとつなのです」


ザク太郎ちゃんとの関わり方に悩んでいた未来ちゃんに、選択肢を一つ増やしてあげることだと思うのです


『……って亜利沙ちゃんは言ってるけど、未来ちゃんはどう思う?』


ディオえもんさんに振られた未来ちゃんは、腕を組んでうーんと唸りながらぽつぽつと自分のしたいことを話してくれました。


「たしかに今日ありささんのせこんど?をしてザク太郎の戦ってる所を見れたのは面白かったです。
でもザク太郎に攻撃したりされたりしてみたいかって言うとそうでもなくて。

ガンプラの操縦はしてみたいけど、せっかくザク太郎くんに誘われたんだから一緒に頑張ってみたいし

あ、でもファンクションくんを後ろから見れたカメラロケットは私もやってみたいです。
あれならザク太郎君が戦ってる所がよく分かるから。

それにひなたちゃんが姿が見れなくてもザク太郎の気持ちが分かったのも凄いなぁって思うし
私もできるようになりたいです。それから」


おおおっ……未来ちゃんは夢いっぱいですねー。唸っていたと思ったらあっという間に顔が明るくなりました
次から次へとやりたいことが出てくる未来ちゃんはとってもいい笑顔なのです。当然永久保存版として撮影するのです。


『話をまとめると、さしあたってはザク太郎と同じチームで、ザク太郎の姿を見ながら、ザク太郎の
カラダは動かさずに、だけど思いっきり未来ちゃんのやりたいように操縦してみたいってことかな』

「そう、なるのかな?」


むむ、ひなたちゃんレベルの以心伝心はとりあえず後回しですか。
まぁ簡単じゃないですからね。妥当なところだと思います。


『わかった、それでやってみようか。未来ちゃん、こっち来て』

「え、そんなこと出来るの?」

『出来るよ。さぁ早く』


そう言われて未来ちゃんはザク太郎ちゃんの操縦席に移動。
ふふふ、ありさにはディオえもんさんの狙いが分かりましたですよ。


『いいかい、スフィアをこう捻って、ここのスロットを選択して…』

『こ、こう?……うわぁっ!?』


ザク太郎ちゃんが纏っていた鎧や武器のパーツが分離・再合体して武装ロケットの姿になりました。。

これがアメイジングブースターの真の姿です。そして未来ちゃんのビックリした顔はバッチリスクショ済みです!


『モニターが増えて…あ、ザク太郎が見える!こっちに映ってるのはロケット?
あ、もしかしてこっちがザク太郎の見てる景色?じゃあ、このロケットを今私が動かしてるの?』


『その通り。これなら2人掛かりでありさちゃんに挑めるでしょ』


そうですコレなら2人掛かりでありさに…って何ですとぉ!それは流石にマズイです!


「わーい!ディオえもん、ありがとう!」


あぁでも喜んでる未来ちゃん可愛いです!ザク太郎ちゃんもガッツポーズしてます!コレは断れません!!


『じゃぁ改めて、バトル再開!!』

「はい!春日未来、いっきまーす!」


未来ちゃんが言うが早いかアメイジングブースター(緑)はいきなりアクセル全開!これは、予想以上に早いです!!


「うわぁぁぁ速いぃぃぃぃ」


分離して軽くなったんだから当然ですが、未来ちゃんにとっては更に予想外だったみたいです。
表情がコロコロ変わってます。スクショが間に合いません!

ファンクションに真っすぐ飛んでくるアメイジングブースターを回避するのもギリギリでした!


『右のスフィアだけを押して旋回!』

『こ、こう?』


すぐに振り向いて旋回中のブースターに向かってチェンジリングライフルを構えます。
この1発で仕留めるか、急いでもう一度回避するかしないとマズいです。

何故かと言うと背後からザク太郎ちゃんが迫ってくるのがレーダーで見えてるからです!挟み撃ちです!
それにファンクションは撮影機材をいっぱい積んでる分、機動力は鈍いのです!


『ロケットランチャー』

『発射ー!』


おおっと方向転換と同時にロケットランチャー全弾発射ですか。
ならばチェンジリングライフルをガトリングモードにして全部撃ち落とします!


さらにロケット撃墜で前方に爆煙が広がる中、ケルベロスヘッドを後ろに向けて口のビームガンでザク太郎ちゃんをけん制。


『てりゃぁぁぁぁ!』


そしたら煙を越えてアメイジングブースターが突っ込んできました。フルスロットルですよ、フルスロットル!

ファンクションに向かって一直線です。今からじゃあ避けても間に合わない距離です――えぇ、『今から』避けてたら。


『へわっ!?』


体当たりするつもりで突っ込んできたアメイジングブースターがすり抜けました。
未来ちゃんも予想外だったのか、可愛い悲鳴です!

秘密はこのザクファンクションのミラージュコロイド操作機能!
機体の立ち位置をガンプラ1つ分隣にいるように見せかけるくらい出来るのです。

そしてアメイジングブースターの進行先には、ビームガンでけん制・誘導したザク太郎ちゃんの姿が!


『わわわー!』


そのまま猛烈な勢いでザク太郎ちゃんにぶつかり、未来ちゃんのアメイジングブースターはバラバラになりました

……ごめんなさい。でもこれも勝負です。
ダメージレベルCですから損傷は無いでしょうけど、あの勢いでぶつかったらもう2人とも動けない筈――。


『やっちゃえザク太郎くん!』


筈なのに無傷のザク太郎ちゃんがハンドガン撃ちながら突っ込んできました!!


「なんとぉぉぉぉ!?」


しかもブースターと再合体してます。見事に隙をつかれてケルベロスヘッドも両方沈黙。

同時にビームアンテナをなくして光学迷彩のコントロールも切れました。
実体を晒したファンクションにヒートナタを振りかぶったザク太郎ちゃんが迫ってきてぇぇぇぇ。


『いっけぇぇぇぇぇぇ!』

「くぅっ、迂闊なのですよ!」

背中のウィザードをパージ!さらに太ももに付けてるカレトヴルッフを遠隔操作。
固定台を回転させて後ろに向かって内蔵エネルギーを発射、ウィザードを撃ち抜くのです。


『きゃぁっ!』


ウィザードは爆発、背中から襲撃しようとしたザク太郎ちゃんはもろに爆炎に巻き込まれたのです。

この隙に振り返ってチェンジリングライフルを構えます。そのまま後ろ向きに移動して距離を。


『うおおおおおりゃああああああ』


取ろうとしたのに、爆炎の向こうから跳んできたミサイルがファンクションの頭上を飛び越えて地面に激突。

爆発がファンクションの進路を塞ぎ、着弾と同時に爆炎からブースターが飛んできました。

正しくはブースターのパーツが、バラバラのまま飛んできたんです
予想外の姿に驚いたありさは一瞬反応が遅れてガトリングを打ち損ねました。

それがありさたちの明暗を分けました


『てりゃぁぁぁぁぁ!』


なんとアメイジングブースターはそのまま飛んできて、ファンクションに合体したのです!
合体と言うか、ありさの武装を全部弾き飛ばしながら憑りつかれました!

『今だ!しっちゃかめっちゃかに動かして!!』

『うん!』


ぎゃあああああ!!曲がっちゃいけない方向に手足が動いているのですぅ!?これじゃあ迎撃出来ません!


『今度こそやっちゃぇぇぇぇぇ!!』


そして正面から迫ってくるザク太郎ちゃんに、ありさはそれでも最後の瞬間まで脱出しようと足掻いて――。


≪Battle Ended≫


拳を突き出しながら応援する未来ちゃんの声と共にナタは振り落とされ、それが決着となりました。

フィールドとコックピットを構築していた粒子は消え、ファンクションは動かなくなります


「やった!やったよザク太郎くん!」

「良かったねぇ、2人とも」


ベースの向かい側で未来ちゃんはザク太郎ちゃんを抱えて大喜びです。
そんなクルクル回る未来ちゃんと、お祝いするひなたちゃんを――――デジカメできっちり撮影ですよ、うひょぉぉぉぉぉ!!


『ありさちゃん、キミね。バトル直後にやることはもっと他にあるでしょ?』

「ふっ。言いたいことは分かるですよ、ディオえもんさん」


一生懸命バトルしたファンクションを労いなさいと言うのですね。
だがしかしっ!その考えは間違っているのです!!


「何故なら今この瞬間の2人の笑顔はファンクションが一生懸命戦ってくれた賜物なのです。
その戦いに報いるのなら、今この瞬間をキッチリバッチリ写真に収めなければダメダメなのです!!」


もちろん最後の攻防で一瞬ごとに切り替わる未来ちゃんの表情も後でバトルデータから切り出し保存するのですよ。


『……キミは、ブレないねぇ』

「当然なのです!ありさはこの為にガンプラバトルを始めたのですから!」


と言うわけであと百枚くらい撮るのですよ。うひょおおお!


「それにしてもあの高速の正面衝突からの合体は凄かったですね!ありさ、クラッシュして壊れちゃったかと思いましたもん」


シャッターを切りながらバトル中に疑問を口にしたら、ディオえもんさんが解説してくれました。


『……あの場面での君の落ち度は、ダメージレベルCの設定にも拘らず衝突してバラバラになったと言う事実に
違和感を覚えなかったことだね。あれは衝突寸前で分離して、回避したんだよ。その直後にザク太郎への再合体だよ。

高速での合体が成功したのは、複雑な合体をする構造のアメイジングブースターだからこそシステム的な補助が働いたんだ。
ただ背中にくっつけるタイプのブースターだったら、勢いに流されて合体失敗してただろうね』

「ふむふむ、なるほど。勉強になります。しかも最後はありさのファンクションに
合体して身動き封じちゃったんですから、まさに想像力の勝利なのですね」


むふふー、未来ちゃんのこれからが楽しみなのです。

さしあたってはこの後の反省会とザク太郎ちゃんのメンテナンスをしている未来ちゃんの写真をバンバン撮りますよー。


『あっ、盛り上がってる所悪いけど君にはジオウ君から次の指示があるよ。だからご一緒するのは無理だねぇ』


なんとぉ!?どうしてここまで来てありさと未来ちゃん達と別行動なんですか!?


『ほら、さっき無断で未来ちゃんとひなたちゃんの立体映像を投影したでしょ。その件でちょっと怒ってたから』


うっ。それはその、ザク太郎ちゃんも仲のいい二人の姿が見たいだろうなと思いましたし。
それにありさはやっぱりシアター組アイドルちゃんの中で最弱なわけで、そんなありさの姿を晒しても。


「だから事前説明もなく、二人のスカートが翻るのをザク太郎が見上げるような映像出したってことか?」


そんな、とんでもないです!ありさはいやらしい目的ではなく、あくまでアイドルちゃんたちの素敵姿を…って


「って、主任さん!?」


いつの間にか主任さんがバトルベースのすぐそばに来ていました。い、いったい何時から。


「あ、主任さんだー。主任さん、やりましたよ!私とザク太郎くん、大勝利です!」

「おー良かったな二人とも。楽しかったか、ザク太郎」


ザク太郎ちゃんは未来ちゃんの掌の上でバンザイジャンプ。
そのアピールからすごく楽しかったという気持がありさにも伝わってきます。きますが。

「じゃあバトル後のストレッチとメンテナンスをしっかりしようか。それが終わったら今日の話を聞かせてくれ」


「ハイッ、分かりましたー」

『ひなたちゃん、ぼくらも行こうか』

「あ、うん。分かったよ」


そう言って未来ちゃんとひなたちゃんとザク太郎ちゃんにディオえもんさんは撤収開始。


「あ、ありさもご一緒しますです」

「お前は待て」


ありさも付いて行こうとしてファンクションを抱えたら、主任さんに首根っこ掴まれました。


「ぐぇっ!?」

「前にさ、立体映像を投影するならまず率先して自分の姿を見せろって言ったよな?俺の気のせいじゃないよな?な?」


掴まれたまま後ろから詰問されて、亜利沙の背中に冷や汗が流れます。

主任さんがどんな顔してるか気になりますけどどんな顔してるか怖すぎて振り向けません!


「それはその」

「気のせいじゃないよなっ?」

「はいソノ通りです!すいませんでしたぁぁぁぁ!」


ありさは無条件降伏です。他に取れる選択肢が一つもありません。


「……ファンクションのメディカルチェックは俺がやっとくから、おのれは特別授業を受けてこい」

「と、特別授業ですか?」


い。嫌な予感しまくりなんですが。


「なぁマツダ。おのれが自分から立体映像に投影しないのは、自分がシアター最弱のアイドルからなんだよなぁ?」

「おおお、おっしゃる通りです」

「そんなおのれに自信を着けさせるべく、ミス・モモセにセクシー授業を依頼した。泣いて喜べ」


せくしー?モモセって、莉緒さんにですかぁ!?


「そうだ、その授業で美貌と自信を磨いてシアター上位のアイドルになれ。そうすりゃ遠慮なく自分の立体映像も作れるだろ」

「い、いえそんな滅相もないです。そう言うのはエレナちゃんとか風花さんとか、才能のある人にしてあげたほうが。
あああありさは最弱でショボショボですから、わざわざお時間を取って頂いても無駄になる可能性が高いと言いますか」


「へー。ほー」

わわわわわ間違えました。黙って謝る一択の場面で言い訳です!ありさはありさの命を蔑ろにしましたぁ!


「能力が無くて出来ないって嘆く癖に、能力を得ようとはしないわけだ。
しかも能力が無くて何もしない癖に人様にはあーしろこーしろって要求するのかぁ」

「ひぃぃぃぃ!」


首根っこ掴んでた手がアイアンクローになってありさの頭に食い込んでますぅぅぅ


「ご、ごめんなさいぃぃぃ」

「劣等感を逆手にとってワガママばっかりかぁ。お前もアキヅキ先輩やキサラギに似てきたなぁ、おい」


そのままありさは引きずられて、莉緒さんの下へ連れていかれました。
そこで、レッスンと称して露出の多い衣装に着替えさせられていっぱい撮影を……ありさ、もうお嫁にいけないかもしれません


「心配するな。本当にまずくなっらたアオナギかアカバネチーフかツダPが貰ってくれるだろうから」

「そこはせめて主任が貰ってください!」




(おしまい)









(あとがき)



ジオウ「と言うわけで2020年も2週間ほど経過したところで今年初めての投稿です」


(今更ながら、あけましておめでとうございます)


亜利沙「おめでとうございます……ありさ、もう死にそうです」

ジオウ「新年早々、縁起でもないこと言わない。とまと主人公のプリキュア化を決定づけた偉業の女が情けない面すんなって」


(あれは発覚のタイミングもあって、2019年で1番の衝撃的事件でした)


亜利沙「ありさは何もしてませんからね!色んな人に良くやったって言われても、困ってるだけなんですよっ!」

ジオウ「はいはい分かった分かった。じゃあ仕事を頼むな」


亜利沙「うう、納得できません……今日のガンプラ紹介は『ザク太郎アメイジング』です


ザク太郎ちゃんが、三代目メイジン・カワグチことユウキ・タツヤさんが作った
「ザクアメイジング」に使われた『アメイジングブースター』を纏った姿です。

ザク太郎ちゃんが一般兵用の緑のザク2と言うこともあって、
色をメタリックグリーンに変更していますが基本的には同じものです

ただし作り込みが本家以上なこともあって、ガンプラバトルのシステムを使って
オートで行う合体と分離の速度がビックリするほど速くてスムーズなんです!

正面衝突寸前の高速機動中でも慣性制御まで完璧にこなして合体しちゃうんですよ!

それにSPスロットに登録した合体パターンも何種類かあるようで、例えば三代目さんが
第6回世界大会で使ったラピッド仕様の合体のように、足のパーツを肩に付けるような
合体もボタン一つでやってのけちゃうんです。凄いですねぇ、ザク太郎ちゃんアメイジング」


ジオウ「ここは元のザクアメイジングが遊び心に溢れてたが故の応用力の広さって感じかな。
第6回大会でバリエーションが増えたこともあってプレイバリューはアメイジングの中でも特に高いと思う」


亜利沙「想像力こそが自由の翼ということですね。勉強になります」


(なお今回のバトルで色々な機能を未来が使いこなせたのはディオえもんが隣でアドバイスしたからです)


ジオウ「ザク太郎は自分の意思で動くガンプラだから、他のガンプラと同じようなことをしても色々違うしね。
初心者の未来を通してガンプラバトルがどういうものなのか触れつつ、色々2人で乗り越えて―――いったら楽しいよな」


亜利沙「そこ決定じゃないんですか!?」


(人生は不確定です)


亜利沙「喋れるガンプラと言えば、リトルミズキちゃんはこのお話だと」


ジオウ「まだ喋れない。今回は『その4』で未来がシアターに加入したすぐ後のお話だからな。
なのでいずれ言葉を話せるようになる前のリトルミズキと戦う話なんかも出来たらいいなと」


(後は普通のガンプラバトルすることが難しいプリンセスとか)


亜利沙「ほほぅ。ならこれからも戦うアイドルちゃんたちの素晴らしい姿を撮影できるわけですね!」

ジオウ「だからまず自分を鍛えろって。おのれ、セクシー免許皆伝するまでは撮影禁止だからな」

亜利沙「なんですとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」



(果たして松田亜里沙は再登場出来るのか……と言う所でおしまいです。今年もよろしくお願いします)



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