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頂き物の小説
その10.2019年度小日向美穂誕生日記念小説 『君の中の永遠』


とあるガンプラビルダーと彼女たちの星輝く日々の記録


「その10.2019年度小日向美穂誕生日記念小説 『君の中の永遠』」




私のデビューイベントは、ショッピングモールの屋上でのトークイベントでした。



「はじめましてっ。小日向美穂、15歳ですっ!熊本からやってきた、とってもキュートな……へ?」


私は本当に上がり症で、緊張しぃで…だから絶対絶対成功させようって、いっぱい特訓したんです。



「し、知らない人がこんなに…こんなにたくさん……あわ、あわわわわっ、わ、私、えっと〜」


でもステージから客席が見えたら、あがってきて、上手くしゃべれなくなって


「あ、あの、あのあの、その、はぅぅぅ……っ」


もう駄目だーって思ったそのときでした。


『なーにやっとるかー!』

「はぅ!」


私の後頭部を思い切りハリセンで叩きながら、【師匠】がステージに立ったのは


『ご通行中のみなさん、こんにちはー。ボクはとーってもプリチーな熊の【ディオクマ】です』


それは身長20pくらいで左右で白黒半分このカラーリングの【ベアッガイ2】…ガンプラのディオクマ師匠です。

人形の師匠が突然飛び出して動き回って、倍以上大きなハリセンを振り回したら、目を回しますよね?

私もお客さんたちも、みんなそうでした。


『こっちの子は今日初めてのお仕事をするアイドルの……えーとコーヒー牛乳くん』

「違います、小日向美穂です!」


目を回していても名前を間違われたら反射的に言葉が出てきてしまいました。


『そうだったコマネチくん』

「違いますっ!小日向美穂です!」

『ヒートナタくん?』

「だから、小日向美穂です!」

『えーよくわからなーい。お客さんのみんなはこの子の名前わかったー?』


「「「こひなたみほー」」」


師匠の呼びかけに会場の皆さんが私の名前を呼んでくれて、私は驚きのあまり勢いよく御礼を言っていました。


「あ、ありがとうございます!」

『おー、すごいなー。流石は勤勉なニッポン人!』

「師匠がヒドいだけですよー」


こうして私はお客さんたちに名前を覚えて貰えて、トークイベントはなんとか成功したんですが


「『今日はすみませんでした」』


段取りとか色んなものを無視して師匠がステージに上がったことを、2人で色んな人に謝りました。

師匠のことを以前から知っていた担当プロデューサーの桜咲Pやスタッフさんたちは許してくれました。

でも新人OJTで一緒にいた346プロ新入社員の津田さんにはとっても怒られました。



「そもそもお前はなんだ。どこから動かしてる!?姿を見せろ」

『中の人などいない!ボクは見ての通りクマ界のプリチーアイドルにしてそこのコニャニャチハくんの師匠、ディオクマだー!』

「小日向です!」

「何がアイドル師匠だ、お前が何を教えると言うのだ」

「まぁまぁ津田さんも美穂も落ち着いて」

「ですが桜咲プロデューサー。こんな得体のしれない輩を自社のアイドルに近づけるわけには」

「彼は小日向のご両親にもちゃんと挨拶してるのよ」

「人形が!?」

「人形も、ね。彼、とっても優秀なのよ。私たちもお世話になってるわ」


それでも一応は納得してくれて、会社には師匠のことは内緒にしてくれました。

それから喧嘩をしながらもたくさんのお仕事をするようになりました。



「ヒイロー!早くわたくしを殺しにいらっしゃーい!」

「いったい何を言ってるんだ!これはなんだ」

『芝居の稽古だよ、言わせんな恥ずかしい』



お芝居の稽古をしたり。


『うぷぷぷぷぷぷ。会場の野郎ども&お嬢ちゃん達、こんにちはニャン』

「なんで語尾がニャンにゃんですか!?」

『そう言う君もニャンニャンないてるじゃニャイか』

「ち、違います。いまのは噛んだだけで」

『みんなー、コヒニャタちゃんはにゃーにゃー鳴いた方がカワイイですかー?』

「「「かわいー」」」

「ひぃ、可愛いなんてそんな……それにあの、私は小日向です!」



また一緒にステージに立って、津田さんに怒られたり。



『はい、そこタイミング併せる!イチ、ニ、サン、ハイ』

「「「スキ☆スキ★スキ!」」」」

『おーしいい感じー!今日のライブも頼むよー』

「「「ハイ、ディオクマ団長!」」」

『いい返事だ!でもボクのことはくれぐれも内緒にね!』

「「「ハイ、ディオクマ団長!」」」



何故か師匠がファンの人たちから団長って呼ばれたり。




≪クマ!≫≪ケーキ!≫

『ハニースイーツ・キャンディコート!』

「なんだ、これは」

『見たことないの?飴掛けだけど』

「それは知っている。聞いているのは、それをなんでガンプラに掛けているのかということだ」

『見た目が綺麗でしょ』

「まぁ、確かに見栄えは良いが」

『さらに敵ガンプラを拘束したうえ大量のカロリー摂取で動きを鈍らせることも出来るんだよ』

「悪魔か貴様!」


ガンプラバトルのレッスンを受けたり。
だけどお仕事には繋がらなくて、津田さんが不満そうだったり。



「白坂、小梅…よろしく、お願いします…来たよ、クマさん……」

『おぉ待ってたよ、ウメコちゃん』

「お知合いですか?」


師匠のお友達の小梅ちゃんが346プロのアイドルになったり。
その後、津田さんが私と小梅ちゃんの新しい担当になったり。



それに、同期の美嘉ちゃんや茜ちゃんと一緒に大きな会場でお仕事したり。
コウメちゃんもバックダンサーとしてだけど初めて同じステージに立ったり。



『…凄いなぁ、キミは』


……その時のことはよく覚えてます。

そこはアイドルになってから一番の大きなライブ会場で、だから当然緊張も一番して。

師匠もお守り代わりに、私の衣装にくっついていてくれたんです。


「何がですか?」

『今日のステージさ、ライトは熱いし声援で空気が震えるし。
会場からの熱気と光のうねりが洪水みたいに押し寄せて、正直『俺』は怖かったよ』


ボク、じゃなくて『俺』。ガンプラの、ディオクマッガイの向こうにいる師匠の、『素』の師匠からの言葉でした。


『でもお前は笑ってた。

押し寄せてくる津波みたいな光を、嬉しい楽しい幸せだって受け止めて、キラッキラに輝いて。

そんなお前のキラキラを受けて、会場の皆はもっともっと熱くなって。

その熱を受けたお前はもっと、もっと、もーっと、高みに昇って行って』


もっともっと。両手をグルグル回して、そのままガンプラの体が空に飛んでいきそうなくらい回しながら。


『ステージでくっついてたボクからは、キミが眩しく見えた。

観客席にいた俺からは、お前がとても高くて遠い場所に行った気がした……凄かったぞ』


珍しく。本当に珍しく。素の師匠に褒めて貰えました。


「はい!ありがとう、ございます!」

『……おい、泣くなよ』


私は驚きと嬉しさとライブの余韻が混じりって感極まって、泣いてしまって


「って、あれ。今から観客席からって」


『あぁ』

「師匠、来てたんですか!?ブラジルから!!?」

『おのれとコウメの晴れ舞台だからな。コウメの義父(オヤジ)も引っ張って来たよ』



そのあと初めてコウメちゃんのお義父さんとお会いして。

何て言うか、クマさんとライオンとターミネーターを合体したような人でした


生身の師匠は――ジオウ・R・アマサキ師匠は、初めて津田プロデューサーと対面して、何かをいっぱい話していたようです。


「なぁ、ミホ」

「はい、師匠?」

「頑張ろうな」


それからしばらくして、師匠から津田プロデューサーにお仕事の『企画』を提案するようになったみたいです。


「ベビーくん、今日も師匠は津田さんの所に行ってるんだって。何を話してるのかなー」


なんだか私の知らないところでいっぱいお話してて、その頃には私も一人でお仕事に行ったりすることが多くなっていました。


それは、私が師匠の言いつけ通りに一人でガンプラを作っていた、そんなある日のこと。



「プラフスキー粒子を使った演出…ですか?」

『そ。バトルベースの上に色んなフィールドを構築するみたいに、特別な素材で作った衣装の上に色んなデザインを構築する』


それって、ステージの間に着せ替え出来るってことですか?


『そうそう。でもそれだけじゃないよ。粒子で作った1分の1のザクウォーリア(上半身)の
掌の上で歌ったり、ガンプラたちをステージにあげてバックダンサーさせたりとかさ』


そんなことまで!?いったいどうやってですか!?


『第6回ガンプラバトル世界大会で決勝トーナメントに上がったとき、PPSEのお偉いさんとお話してねー
そこでカイザーくんの話とミックスアップして、もともと持ち込んだ話より大きくなったよー』


そ、それは何て言うか恐れ多いような。


『怖いかい?またあわあわあわーってアガッちゃうのかな?』


……いいえ、大丈夫です。わたし、ちゃんとやって見せます!


『うんうん良い返事だ。本番はまだ先だけど、取材とかもいっぱい入る。ステップアップしていこー』


はい!………あ、でも。


『なにかな、ココナッツくん?』


小日向です。あの、師匠。


『うん』


「そのステージには、師匠も立つんでしょうか?」



師匠には今までMCで助け舟を出してもらったことはあったけど、どれも緊急事態でのことで最初からその予定だったことはなくて

新しい曲を貰うと私より早く完璧に覚えて私に教えてくれるけど、一緒にステージで歌ったこともないです。


だからもし一緒にステージに立てるなら、とても嬉しいと思ったんです。…最近別行動が多くて寂しかったからじゃないですよ?



『ナイナイ。それはナイよ。裏方の仕事だって山ほどあるし、そもそもボクアイドルじゃないしー』


「でもバックダンサーをガンプラの皆がしてくれるなら」


私と師匠が共演しても、いいんじゃないでしょうか。



『…え、なに?キミ、マジで言ってんの???』


私が本気だと気づいた師匠は、師匠はめずらしく困惑した様子になりました

こんな時だけど、表情のないガンプラでそれを伝えられる師匠の表現力は凄いなーなんて思いました。


「マジというか、そうできたら嬉しいなって思って」


それで、一度思いついたらもう絶対そうしたいなって気持ちになっちゃったんです。


『……ボクがステージに立ったらみんなの視線を独占だよ、キミのこともパクっと食べちゃうよ』


そう言って師匠は私の提案にノーサイン。

だけど、こうなったらわたしもそう簡単には引き下がれません。頑固で強気なことだけが私の取り柄ですから。


「なら、私がもっとちゃんとしたアイドルになったら、考えてくれますか?」

『そう言うことは、なってから言いな』


師匠からはおでこを小突かれましたけど。


『言っとくけどこの仕事は規模も今まで最大だよ。
そこまで言っといていつもみたいにあわあわ慌てたら、その様子を逐一ブログにあげるからね』

「はうっ!」


続けてそう言われて早くも緊張でドキドキしてきました。

それでも、大丈夫ですってガッツポーズで答えます。


「だ、大丈夫です。だって、このお仕事は師匠が取ってきてくれたお仕事ですから!」

『…まぁ期待してる』


はい、私ガンバります!

それでいつか、師匠と一緒にステージに立って、一緒にキラキラして見せます。


『けどペース配分はちゃんとしなよ。キミはほっとくと、すぐオーバーワークになるんだから。
自分のことを大事にできない奴は、ちゃんとしてるって言わないよ?』

「は、はい大丈夫です!大丈夫なようにガンバりますから!」


ガンバり続ければ、師匠と一緒なら、いつか叶うって私は信じてますから!






―――そう、信じていたんです。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆




【次は聖夜市〜、聖夜市に止まります】


「へわっ!?」


夢から覚めた私は、反射的にキョロキョロ周りを見渡して、電車に乗っていたことを思い出しました。

窓の外は真っ暗で、そこで私は盛大に寝過ごしてしまったことに気づきました。


うぅ、しばらくなかったんだけどなー。こんなんじゃまた師匠に怒られ。


「…ないんだっけ、もう」


と気づいて頭が急に覚めました。


【聖夜市〜、聖夜市に停まります。乗り換えのお客様は〜】

「わー降ります降ります!」


慌てて電車から降りた私は、折り返しの電車に乗るために隣のホームに行こうとして、ある建物が目に入りました。

早く寮に帰って明日に備えなきゃいけなかったことも忘れて、私は改札から外へ出ました。



私が向かった場所は、駅のホームからもライトアップされているのが良く見えた――ミリオンシアター。


765プロとヤジマ商事との共同で作ったこの劇場は、プラフスキー粒子を利用した世界で初めてのARライブシアターです。

そして私の師匠が、ジオウ・R・アマサキさんがいま働いている場所でもあります


「……師匠」


シアターを見上げながら、私はカバンの中からいつも肌身離さず持ち歩いている【師匠】……ディオクマッガイのガンプラを取り出しました。

でも、いつもいつも私に語り掛けてくれた師匠は、今は何も喋ってくれません。


それは当然なんです。今は765プロとヤジマ商事で働いてる師匠が、こっそり346プロの私とお仕事を続けるなんて、絶対ダメなことですから。


ううん、私がそうしてくださいって送り出したんですから。



"私は、大丈夫ですから"

"でも、お前"

"師匠、いつも言ってましたよね。自分のことを大事にしろって"

"…あぁ"

"だから師匠も、師匠の一番を大事にしてください。師匠の一番大事な人の所へ、行ってください"



今の私たちの立ち位置は、私が望んだことなんです。

なのに、こうして傍にまで来てしまったのは、私がちゃんとしてないってことで――


「何やってんだ、こんな所で」


俯いていた私の前にいつの間にか誰かが立っていて、その声に震えました。

「―――!」


だってその人の声は、私が一番会いたくて、でも会いたくないと思ってしまった人で。

だから、私は顔を上げることが出来ませんでした。


「す、すみません。私、もう帰りますから」

「アホか」


私は往生際悪く顔を伏せたまま背を向けて逃げようとしたんですけど。

あっさり肩を掴まれて、振り向かされて。

久しぶりにお会いした師匠は呆れた顔で私を見下ろしていました。


「会いたいってメール送って来たくせに、何帰ろうとしてたんだよ?」

「へ?」


身に覚えがなくて戸惑っていると、師匠がスマホを見せてくれました。

確かに私のアドレスから画像付きのメールが送られていました。

慌ててカバンの中を探すと、私のスマホが見つからなくて。

どこかで落としてきたのかなって反射的にキョロキョロしちゃったら、足元に落ちてたのを見つけました。


「た、確かに私のスマホからメールが送られてます」


でも本当におぼえがありません。いったい、いつの間に?


「……お前、居眠り癖だけじゃなく夢遊病まで発症したのか?」


うわぁ、呆れられてる!


「とりあえず、ここで話し込むのもアレだから中に入れよ」

「いや、でももう帰らないと」

「今から一人で帰っても、帰りの電車で寝過ごすだろお前は」

「はう!?」


◆◆◆◆◆◆◆◆


結局私は師匠に促されて、シアター内にお邪魔することになったのですが。


グフとドムがペットボトルのお茶を運んでくれて、目を丸くしました

「ありがとうグフ彦、ドム丸」


シュタって敬礼で答える2人のガンプラを見て、私も反射的に敬礼してしまいました。

「あ、ありがとうございます」

「なんで敬語なんだよ」


はわっ!?し、仕方ないじゃないですか!ガンプラとお話するのは、いつも師匠とだったんですから。


「えっと、小日向美穂です。よろしくね、グフ彦くんドム丸くん」

そっと右手を差し出すと、何故か二人とも驚いたように軽くのけ反りました

それから2人はおずおずと右手を伸ばして、私の人差し指と中指を掴んでくれました。


「……そーいう所なんだよなぁ、お前って」

「はい?」

「たぶん今のがコイツらの人生で初めての握手だぞ」

「えぇ!?」

「手とか肩とかに乗せられたことはあったろうけどな」

と言いながら師匠は左手で私の頭を撫でて…はわわ!


「な、なんで頭を撫でるんですか」

「こいつらを小っちゃくて可愛いペット扱いじゃなくて、初対面で対等の相手として接する奴はそんなにいないぜ」


だ、だってガンプラと対等って当然のことですよね?師匠からずっとそう教わってきましたよ。


「そうだな。それより、そっちから紹介はしてやらないのか?」

「え?」

「連れてきてるんだろ?」


師匠が誰のことを言ってるか分かって、私はカバンの中から【師匠】を取り出しました。


「えっと、この子はディオクマ…師匠です。ジオウ師匠からお預かりしてるガンプラです」


そう紹介すると2人は急に膝をついてディオクマ師匠を拝みだしました。


「ど、どうしたの!?」


「いやまぁ名前だけは聞いてたんだと思う。ディオクマがいなかったら
俺はガンプラ作ってなかった訳だからこいつらには神様みたいな認識だったのかも」


そ、そうなんだ。でも聞いてたと思うって、師匠が話したんじゃないんですか?


「俺からは話さないよ。会わせてもあげられないし」

「あ…」


会わせてあげられないって言う師匠の顔に、寂しさが浮かんだのが見えました。

師匠の視線の先にいるのディオクマ師匠は、ガンプラが自分の気持ちで動くこのシアターでも、ぴくりとも動きません。
グフ彦くんやドム丸くんは言葉を話さなくてもとっても感情豊かに動いているのに

私と一緒に居て、動いて喋っていたディオクマ師匠は、遠くからジオウ師匠が動かしていた。

でも師匠にとっての本当のディオクマさんは、プラフスキー粒子が無くても自分で考えて喋って動いていました。
そんな不思議な力が、昔の――エレナちゃんと師匠が一緒にブラジルにいた頃のディオクマさんにはあったんだそうです。

その頃のディオクマさんを私は写真でしか知らないけど、仲間と一緒にいた様子はとても楽しそうでした。


「ところでもう一人の紹介はしてくれないのか?」

「え?」


誰のことだろうと首を傾げる私が答えに辿り着く前に、師匠は私じゃない誰かに声を掛けます。


「いや――自己紹介してくれよ、ベビーR」


その言葉に応えるように、私のカバンから何かが飛び出しました


≪スケボー!≫


謎の音声と共に飛び出したのはSDのレッドフレームベースのガンプラ。


背中にスターゲイザーと同じ2本のアームから構成される虫眼鏡のようなリングとGNドライブを背負って、
さらに別のGNドライブ付きのスケボーに乗って空を跳ぶガンプラの名前は、『ベビーR』


私が作って、師匠が第7回ガンプラバトル世界大会で一緒に戦った――戦って貰ったガンプラです。

そのときはカレトヴルッフ3本を背負ったレッドドラゴンのような仕様だったんですけど、間違いなく同じガンプラです。


『バーロー!!』


勢いよく飛び出したその子は、師匠のおでこにスケボーで激突!師匠のカラダがのけ反りました


≪探偵!≫


激突の反動で弾かれて落下するベビーくんはスケボーをわきに抱えながら背中のアームを動かしました。

足元に移動させたリングから粒子を放出して落下速度を緩めて無事に着地したけど、私の頭は混乱の極みでした


「べ、ベビーくん!?なんで!?どうして動いてるの!?」


だってベビーRが、ベビーくんがこんな風に自分で動き出すことなんて、今まで一度もなかったのに。


『バーロー!』


わぁごめんなさい!わからないことだらけのダメダメな私でごめんなさい!


「このシアターに来たことが切っ掛けだろうな。正確には、敷地内に入ってきたときには動いてたんだろ」


師匠はスマホを操作して、例のメールに添付されていた画像を出します。


「この画像。ミリオンシアターが写っているけど視線が低すぎる。これじゃあ足元に寝転がりでもしなきゃ取れない
まぁお前のことだから営業時間外にシアターの敷地内に忍び込んで居眠りしてても別に不思議だとは思わないけど」

「不思議に思ってください!」


私そこまでじゃないです!……ない、はずです



「けどそれ以外の可能性もあった。このシアターは玄関前や外周の花壇でもガンプラが動けるように電波を出してる。
粒子を放出してるんじゃなくあくまでドローン用の処理をされたガンプラの起動信号なんだけど、それが効いたんだなきっと」


だからベビーくんは、自分で考えて自分で動くことができた、ってことですか?


「グフ彦、ドム丸。こいつはベビーR。俺とミホが一緒に作った子供で、お前たちの兄さんだ」


「子、子供!?」


ち、違いますそれは全然違います私たちそんな関係じゃないですー。


『…バーロー』


ベビーくんはグフ彦くんたちは右手を差し出す。でもなんで悪口言いながらなの?駄目だよそんなの!

けどグフ彦くんは気を悪くした様子もなく握手してくれて。

もしかしてベビーくんは悪口でも何でもなくただバーローとしか喋れないのかな?
グフ彦くんたちにはベビーくんが何て言ってるか、分かるのかな。


「それとさっきのは結構いいキックだったぞ、ベビーR」


師匠はベビーくんに手を差し出して握手しようとしたけど、ベビー君はキっと睨みつけて。


『バーロー!』


その手をスケボーで弾いて罵倒の言葉を――今度こそ悪口で言ったんだってわかります――ぶつけました。


「お前、何を怒ってるんだ。心当たりが悪すぎて分からんぞ」


ベビーくんは私のカバンに潜り込み、リングを器用に使ってスマホを取り出して操作――あ、駄目!


『バーロー!』


そこに映っていたのは、今日の午前中にエレナちゃんから送られてきた画像。

「似合う?」というメッセージと一緒に贈られてきたそれは、左手の薬指に指輪をしたエレナちゃんの姿です。

師匠に写真を見られて、それを最初に見たとき感じた胸に穴が開くような気持がぶり返しました。


「あの、おめでとう、ございます」


そんな嫌な気持ちを抑えて、私の口から出た言葉がそれでした。


「おめでとうって、なにがだよ?」

「エレナちゃんと、上手く行ったんですよね?だから、おめでとうございます。


何が何だかわからないと言う師匠に、私は精一杯の笑顔を向けて伝える。


「お祝いが遅れて、すみません」


そうだ、お祝いをしなきゃいけない。私はこうなることが分かっててて、こうして欲しくて背中を押したんだから。

画像を貰ってから胸が苦しい気がするのなんて気のせいで、今日のお仕事もNGを出してしまったのも関係ない。

私は、笑顔で師匠を、大事な人を祝福しなきゃいけないんだから。


『バーロー!』


だからベビーくんもお祝いしてあげて。これは師匠のためなんだから。


「あー、だいたいわかった。ミホ」

「はい」

「コレやる」


師匠は私の手を握って、何かを手渡してきた。それは丸くて綺麗な石がついてて丁度指が通りそうなくらいの穴が開いてて。


「へ?」


それは、どこからどう見ても指輪で。


「え、ええ、あの、え?」


だけど何でそれが私の手の中にあるのか理解が追いつかなくて。


「だから、お前にやる。お前に似合うと思って用意してたプレゼントだ」


それが私へ贈られたものだと言われて、混乱は極まって。


「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」


気づいたら、大声をあげていました。


「…いくらこのシアターが全室完全防音設計だと言ってもあんまり大声出すなよ、はしたない」


あとで聞いた話だとこのシアターは【師匠に対応】するために劇場だけじゃなく全室を防音対応にしているそうです。

でも私はそんなことを一切知らないまま、周りのことも考えずに大声を出していました。出さずにいられませんでした。


『ばぁ…ろぉ…』


ベビーくんもザク彦くんたちも力なく両耳を抑えて、力なく膝をついていましたけど気遣う余裕もありません。

だって、だってだってこれなんなんですか!?

なんで私にまで指輪を!?は、まさかコレは夢なんじゃ!ほっぺたつねらなきゃ。


「落ち着け。あとアイドルが無闇に自分の顔を傷付けるな」


それから師匠は話してくれたことを要約するとこんな感じです。

師匠はつい先日、ある女性にちょっと高価な"扇"をねだられました

色々あって師匠はその要求に応じたんだけど、その彼女にだけ贈り物をしてもっと親しい人たちに何もしないのは筋が通らない。

そう思って、親しくしている女の子みんなの分のプレゼントも用意したのだとか。


「て言うかコウメから聞いてないのか?」


聞いてませんよ!それって小梅ちゃんにも贈ったってことですか!?


「じゃ、じゃあナターリアちゃんとかにも」

「ナターリアには贈っちゃダメだろ、あいつはアオナギのなんだから」


それはそうかもしれませんけど、じゃ、じゃあ何で私にこんなものを!?

と言うかエレナちゃんに贈ったのは!?写真のこれは【婚約指輪】じゃないんですか!!


「違う。いずれは贈るにしても、そう言うのはダイヤが定番だろ」


婚約指輪には永遠を象徴するダイヤモンド……ってまさか。


「今回はあくまで普通のプレゼントだ」


…それ、エレナちゃんに言いましたか?


「似合うと思って用意したとだけ」


じゃあなんでエレナちゃんの薬指に指輪を!?


「つい、カッとなって」


告白は!?


「してません!」


ダメじゃないですか!?


「だよなー、そんな気はしてた!」


もう、もうもうもう!何してるんですか師匠っ!


「とにかくコレは受け取れません!今すぐエレナちゃんに告白してきてください!!」


私は右の手のひらに載せた指輪を差し出して、師匠を促しました。


「いや告白はともかくコレはお前のもんだ。受け取って欲しい」


師匠はそんな私の右手を両手で包んで、押し返します。


「ダメですよ!こんなことをエレナちゃんが知ったら、あとで絶対傷付きますよ!」


当然、私はその上に左手を重ねてさらに押し返します!


「だとしても、こんな誤魔化す為みたいにお前に買った指輪を引っ込めるのは筋が通らない!」

「ダメったらダメです!」

「やるったらやる!」


師匠と私で押し合いへし合い……師匠の分からず屋!


「おい、ベビーR!お前もなんか言ってやれ!

『バロ!?』


あっ、ベビーくんまで巻き込むのはズルいです!


「お前は俺がお母さんをほったらかしにして他の女と一緒にいるから怒ってたんだろ!
ならこの頑固者のお母さんにこの指輪を受け取るべきだって説得してくれ!!」

『バ、バロォ』

「ダメだよベビーくん!私は師匠に幸せになって欲しいんだから、この指輪師匠に返すの手伝って!」

『バァロォォっ』


ベビーくんは私と師匠の間でおろおろ、グフ彦くんたちもオロオロ。
でも私たちはそれを気遣う余裕もないくらいすっかり頭に血が上っていました。


「俺のことは良いよ!お前はもっと自分のことを大事にしろって言っただろ!」

「師匠こそもっと自分を大事にしてくださいって私も言いました!」

「してるよっ!してるからお前に受け取って欲しいんじゃないか!」

「してません!してなかったから―――師匠は二代目さんの大変な時に間に合わなかったんじゃないですか!?」


だから、言うつもりのなかったことを言ってしまった。


「あ…」

「おまえ、そんなこと考えてたのか」


そう、ですよ。だって私は知ってます。

第7回の世界大会が始める直前、二代目さんが倒れて意識不明になったって聞いた時のあなたの横顔を。

だからあなたは世界大会を、予選ピリオドまででヤメるつもりだった。
二代目さんが託した蒼凪さんと三代目さんを間近で見て、ナターリアちゃんへの義理を果たした後は、もう戦う理由が無かったから。


だけど私は、そこで師匠が終わったらダメだって思って、世界中が師匠のことを知らないまま終わるのが嫌だって思って。

だから私は、私のベビーRを使ってくださいって半ば無理やりに押し付けました。
師匠は、自分のことは大事にしなくても、ガンプラの名誉の為になら戦える人だって知ってたから。


けど結局、師匠は決勝トーナメントの途中で棄権して、私は何もできなくて。
だから、今度こそは間違えちゃダメだって、そう思って。


「………勘違いするな、お前が悪いことなんて何もない」

「でも」

「本当だ。俺はちゃんと、間に合った」

「え?」

「数か月前だ。俺は第8回世界大会の新競技テストに参加して。そこであの人と戦えた。そして、伝えたいこと全部伝えたよ」


師匠は優しい目でそう言ってくれたけど、私は突然のことでまだ信じられません。


『本当のことだよ』


戸惑ってる私の耳に知らない誰かの声が聞こえました。

声がした方に視線を向けると、いつの間にかテーブルの上のベビーくんたちの隣に知らないガンプラがいたんです。

それは両耳のない、青いベアッガイでした。


『はじめまして。ボク、ディオえもんです。ジオウ君が作った、一番最初のガンプラです』

「こ、こちらこそ」


突然のガンプラの登場に、私は師匠と手を握ってることも忘れたままその子を見つめました。
師匠の最初のガンプラと言うことは、もしかしてこの子もディオクマーズのガンプラなんですか?


「違う。諸事情あって、こいつとディオクマーズは面識が無いんだ。それでディオえもん、どうしてここに?」


『グフ彦たちから救難信号が飛んで来てね。探しに来たらこの有様さ。
ところでキミの名前は小日向美穂ちゃん、でいいのかな?』

「は、はい」


『ジオウくんがいつもホントォォォォォにお世話になってます。本当はもっと早くに挨拶したかったんだけど、
"あいつに背中押されて此処にいるのに、成果も出せずに会えるか!"ってジオウくんが意地張るからさぁ』

「うっさいよ!」


ディオえもんさんは困ったもんだと頬杖をつきました。その仕草はもう完全にひとりの人間としか見えません。


『実はね、ボクはジオウくんにも内緒でこの10年カワグチくんの所にいてね。
だから保証するよ。ジオウくんはカワグチくんとバトルして、やりたいことを全部やれたって。

それもこれも全部、キミのおかげなんだよ美穂ちゃん』


「私の?そんな、嘘です」


とても信じられませんと、私は首を横に振ります。


『ウソじゃないよ、なぜって』


「待てディオえもん、そこから先は俺が言う」


そんな私の手を強く握って、師匠は言葉を紡いでくれました。


「俺はさ、元々の予定だとARライブのノウハウだけヤジマ商事に伝えて去年のうちに故郷に帰るつもりだった。

どんな建前を繕ったって、蒼凪が関わるこのシアターがガンプラバトル大好き集団に染め上げられるのは
想像に難くなかった。そんな居心地が悪くなると決まってる場所に来るつもりなんて、なかったんだ」


真剣な目で、噛み締めるように言葉を繋いでくれました。


「でももしここに来なかったら、ブラジルに帰っていたら、俺がテストに呼ばれることはなかった。
当然二代目のおじさんに伝える機会も、あの人を苦しみから解放する機会もなかった―――全部お前のおかげだ」


私の目に、熱い涙がこぼれそうになりました。


「お前のせいで何かが出来なかったんじゃない。お前が背中を押してくれたから、俺はやり遂げることが出来たんだ。
おじさんを助けられたのも、ベビーRやグフ彦たちが生まれたのも、全部お前がきっかけになってくれたおかげなんだよ」


目元だけじゃなくて顔も、胸まで熱くなりました。


「そんな、こと」

「だからさ、そんなお前が今そうやって俯いてるのは―――ふざけんなって、怒鳴りたくなるよな?」

「え――イタタタタタタっ」


いつの間にか私の手を放していた師匠の両手がグーを作って、私のこめかみをグリグリしてきました。


「お前、自分は大丈夫だから言って来いって俺を送り出したよな!本当に大丈夫だから卒業試験
受けさせろとも言ったよな!なのにこの体たらくはなんだっ!仮免取り上げるぞこのバカっ!」

「ご、ごめんなさぁぁぁぁぁいっ!」


だからグリグリはやめてくださいぃぃぃぃぃ。


『あーあ。折角いい雰囲気だったのにねぇ』


ひとしきりグリグリされて、3分後にはなんとか解放されました。
頭を押さえてうずくまる私を見て、師匠はため息つきながら言いました。


「とにかく、アレだ。お前ひとりにしとくとロクなことないし、これからは定期的に会うぞ」

「で、でもそれは」

「理由ならある。ベビーRが喋っただろ」

『バーロォ?』

「ARシステムを使っても発声できるガンプラはまだ少ない。状態観察と保護は必要だ」


それは、そう言うことなのかもしれないけど。でも。


「まぁそれも結局建前だ。本音はそうやって接点を増やせば、俺とお前が一緒にステージに立つ機会もあるだろうってことだ」

「え?」


そ、それはまさか。


「なんだよ、忘れたのか?お前、前に言ったろ。俺と同じステージに立ってみたいって」

「――−!」


忘れてなんか、いません。今日も夢の中で見たくらいです。


「あの時さ、俺がアイドルでも何でもないことを差し引いても無理だって思ってた。

アイドルはファンを応援するお仕事だけど、俺は不特定の誰かを応援するってことができなかった。
何故かって言えば、俺はガンプラバトルを楽しんでいいって思ってる人間が――憎かったから」


それは、ガンプラを楽しいおもちゃだと思ってる人が常識の世界で、師匠に近しい人たちだけが打ち明けられたお話です。


「第7回大会で三代目とのバトルを棄権したのも、試合そっちのけでアイツの眉間にガーベラを叩きこみ
かねなかったから。そんな無様な真似して反則負けになりそうな試合にベビーRを巻き込めなかった」

『……バーロー』


ベビーくんも、悲痛な表情を師匠に向けています。


「けど、ここに来てザク太郎やリトルミズキが生まれてくれて思ったよ。
ガンプラたちはただ一方的に人間に弄ばれてるんじゃない、彼らにもバトルを楽しみたい奴がいるんだって。

グフ彦やドム丸たちがバトルより花壇の手伝いを望んでくれて、俺は救われたよ。
俺の心配は、的外れで独りよがりな勘違いじゃなかったって」


だけど師匠の表情は、一瞬で晴れやかなものに変わりました。


「そしたら現金なものでさ、ガンプラバトルを好きな奴らのことも少しだけ許容できるようになった。

相手のことが憎くても、丸ごと全部肯定できなくても。
それでも応援したり傍に居たいと思ってもいいんだって、考えられるようになった。

ううん、思い出したんだ。だってこれはお前やおじさんに出会って、とっくに知ってたことなんだから」


それはまるでイベントの前の日のような、ワクワクが抑えきれないような顔です。


「このシアターに勤務することを決めた時、俺たちの夢は切れてしまったと思った。
でもこのシアターのおかげで、俺たちの夢は繋がったんだって今では言える。


師匠は笑っていました。それは何かに挑戦しようとしているようでもありました。


「だからさ、お前に夢を見せて貰った時、お前に背を押された時にも言えなかったことを言うよ
今日言うことになるなんてちっとも考えてなかったけど、それでも今心からの言葉を伝えるよ」


師匠は私の右手に握られていた指輪をするりと取って――私の左手の指に嵌めました。


「俺と一緒に来て欲しい。人間もガンプラも一緒に笑える舞台を一緒に作ろう」


――――――――涙が、溢れました。


「ダメ…ダメですよそんなの。だって、エレナちゃんが」


「あぁそうだ俺はエレナが大好きだし、必要だ。だけどそれと
これとは別の話だ。今しなきゃいけないのは俺とお前の話だ」

「でも」

「問題ない。全部俺が何とかするし、何とか出来る。出来なくっても抜け道を探すし
作り出すし諦めない!だから俺と一緒にいるのが嫌か嫌じゃないかだけ、答えてくれ」

「ずるいですよ、そんなの」


そんな風に言われたら――――嫌だなんて言えるわけ、ないじゃないですか。


コクンと小さく首を振った私は、師匠に抱きしめられて。

私はその胸に顔を埋めて、熱い涙で濡らしました。


『やれやれ。これから大変だよー』

『…バーロー』




(おしまい)







あとがき


ディオえもん「みなさん、こんにちは。ボク、ディオえもんです」

中谷育「みんなー、中谷育です。初めましてー」


えもん「さて本日は2019年度小日向美穂誕生日記念小説『君の中の永遠』をお読みくださりありがとうございました」


(12月16日は小日向美穂ちゃんのお誕生日です!)


中谷育「ありがとうございましたー。ところでディオえもん」

えもん「何だい、育ちゃん」

中谷育「ここの作者さんが小説のあとがきを書くの、とっても珍しいよね。
それに、どうして私にお仕事貰えたのかなーって。出番ゼンゼン無かったのに」


えもん「あぁ、それはね」


(12月16日は中谷育ちゃん(と大和亜紀さん)のお誕生日でもあります!あと実は響鬼さんとかも…)


えもん「というわけでおめでとー。これはプレゼントだよー」

中谷育「ありがとー!……わー、指輪だー!大人っぽいー」

えもん「ま、本物じゃないんだけどねー」

中谷育「それでもありがとー」


(ちょうどミリシタでそんなカードが出ましたから)


えもん「さてお祝いも済んだところで早速だけどお仕事お願いするねー」




中谷育「はーい、今日のガンプラ紹介いきまーす。


今日のガンプラは、美穂さんの『ベビーRデテクティブ』

デテクティブって言うのは探偵さんのことなんだよ
第7回世界大会で主任さんが使った時との大きな違いはカレトヴルッフとフライトユニットが背中に無いこと。

代わりに背中のバックパックに虫眼鏡みたいなサブアームと探偵さんのビルドGNドライブがついてるんだ。
この虫眼鏡はセンサー系を強化する他にも探偵さんの七つ道具みたいに色んな事が出来るんだよ。

それにビルドGNスケボーに乗って走ったり跳んだりするし、サッカーもとっても上手なんだ。
言葉はまだ『バーロー』としか喋れないんだけど、声は声優の高山みなみさんと似てるんだよ♪」



えもん「はーい育ちゃん、ありがとー。具体的な活躍についてはまた別の機会に書きたいなって思ってます。

ただ美穂編は同人版本編軸の島村卯月ちゃんがどこに着地するか分からないと書き辛いってのもあってなかなか難しいんだよね。
実は今回のお話の中で、美穂ちゃんがジオウくん背中を後押ししたときの卒業試験バトルを書こうと言う案もあったんだけど。


育「執筆期間とか文章量とか色々あって没になっちゃったんだよねー」


(予定ではハザードになったジオウ君を相手に、ベビーRがベストマッチ出まくりで大暴れでした)


育「そのお話、執筆する予定はあるの?」

えもん「最悪来年の誕生日小説かなー」


(ハザードを出すためにも、できるだけ早く出したいんですけどね)


育「ところでディオえもん、私もう一つ気になってることがあるんだけど。
主任さんはエレナさんと美穂さんの、どっちのほうが好きなの?」


えもん「…えー、それにつきましては恭文くんにフェイトさんとフィアッセさんのどっちが好きかと聞くようなものです」


(恭文くんのお嫁さんたちで例えると、エレナはフェイトか知佳、美穂はフィアッセか卯月ポジのイメージです。
ちなみにまだ出番のない一ノ瀬志希がアルトアイゼンかティアナ、小梅はシャンテかミキ(しゅごキャラ)です)


えもん「なお恭文くんハーレムはみんなで仲良くシェアしようと言うある意味で機動六課にも似た和やかな
空気ですが、ジオウくんの所は互いに割とヤキモチだらけの予定です。同じことをしても仕方ないしねー」


中谷育「じゃあ昼ドラみたいにドロドロするの?大人だー!」


(まぁそんな凝ったことにはなりませんし、陰湿にもならない予定ですが)


えもん「と言う所で今日はお開き。少し間が空きますが、また次のお話でお会いしましょー」

中谷育「またねー♪」


(本日のED:ジオウから美穂への想いのイメージソング「君の中の永遠(機動武闘伝Gガンダム後期ED)」)




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


346プロの女子寮へと送る帰り道。
電車に揺られながら、案の定寝入ってしまったミホに寄りかかられながら考える。


……許されるなら、今すぐ大声出して喚きたい。もしくは河に飛び込みたい。
頭に血が昇ったとは言え、ハーレムって、ハーレム宣言って―――恥ずかしすぎる!!


自分はこいつらを独り占めしたいくせに、自分は誰かひとりのものにならないなんて!
なんて筋が通らない話だろう!この国の法律が認めていようが何だろうが、まったく免罪符にならない。

受け入れてくれたミホの好意さえ、嬉しいのにとても苦しい。


アオナギも遠慮のない好意に多方面から晒されて、さぞ押しつぶされそうな気持を味わっているのだろう。
リアル子供時代からこんなジレンマに苦しめられていたなら、気が狂ってもおかしくないと思う。

もしそうなら、アオナギのあのイカレタ性格の何割かは噂に聞く現地妻ズやフィアッセ・クリステラのせいなのかもしれない。
おのれ英国のクリステラ、よくもあんな怪物を育ててくれたなコンチクショーと証拠なく言いがかりをつけたくなる。


「……んん…師匠…」


その無垢な寝言を聞いて、バカな思考がストップ。
こら、電車の中でそんなうかつな寝言を立てるな、そもそも無防備に外で寝るなと何回叱ったか分からない

その何倍もの回数も見続けた彼女の寝顔に、飽きることのない愛しさがこみ上げる。

この穏やかな寝顔を、他の誰にも見せたくない。
この子の笑顔を、他の誰にも譲りたくない。

それはエレナに対しても、―――たちに対しても同じで。


この気持ちは苦しいけど、だけど何物にも代えがたいほど温かくて。


優しさだけじゃこの気持ちを奪い切れないと言うなら、俺はちゃんと悪い人になろう。


あのアオナギ・ヤスフミよりもずっとずっとブッ飛ばして進んでいく、怪獣になろう。


それは色んな人に嫌われて、多くの人やガンプラを泣かせることかもしれない。
もしかしたらその泣かせる人の中に、ミホ自身さえ含むかもしれなくても。


それでも俺の永遠に守りたいものは、ここにあるから。




(2019年度小日向美穂誕生日記念小説 おしまい)


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あきゅろす。
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