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頂き物の小説
その6.島原エレナ誕生日記念小説 エレナとジオーとディオクマーズ


とあるガンプラビルダ―と彼女たちの星輝く日―の記録



『その6.島原エレナ誕生日記念小説 エレナとジオ―とディオクマ―ズ』




はじめて会ったのはモノゴコロつく前。

だからジオ―から初めて言われた言葉かなんだったのか、ワタシは覚えてなイ。


「きみ、おうちどこ?わからなかったら警察に連れてくけど。どのみちそこの誘拐犯を突き出さなきゃならないし」

「お―!人さらいしたみたいに扱うのはやめてください」

「人さらいだよこのバカ!」

「バカってひどいデ―ス。せめてルチャをつけてくださ―い」


でもそんな話をしてたって聞いて、その様子が凄く想像できるヨ。

ママンと友達で、ワタシを預かってジオ―の家に連れてきてくれたククルンとジオウはいっつもケンカしてタ。

だけどいっつも怒っててもジオ―は怖い感じがしなかった。ククルンもいっつも笑ってタ。


「シウ・コアトル・ツァレア―ダ!」

「しうこあ―」


ワタシをがククルンと一緒にジオ―にジャンプして抱きついたら、いつも怒ってるジオ―があわあわ―って慌てるんだヨ。

それが面白くて、何度も何度もしちゃうんダ―。


◆◆◆◆◆◆◆◆



3、4歳の子供に空中殺法させるなボケェ!

大怪我させたらどうすんだ!首が折れたらどうすんだ!


「ワタシが見てるから大丈夫デ―ス。それにおと―さんのキャッチも完璧デ―ス」


ボクらのいないところでバカしたらど―すんだ!

おのれのバカをよそ様の子供に伝染させるなこのバカ!!



「あ―も―指摘が追いつかない!」

「む―、おと―さんエレナには優しいデ―ス。私にも優しくしてくだサ―イ」


できるか!あとボクはおまえのおと―さんなんかじゃないって何度言わせるのさぁぁぁぁぁ!


ハァハァ……この金髪で背が高くておっぱいが大きいバカの名前はククルン。

仕事でお出かけしてるボクのおと―さんの「アイジン」の1人。

今ボクの家にはボクとおに―ちゃんの他に、「アイジン」が4人いる。あと、このバカが連れてきたエレナも。

そのアイジンの中で一番バカで、ボクの一番ダイッキライなのがこのククルンだ。

大人の癖に子供のボクを「おと―さん」だなんて呼ぶし。

どんだけ嫌だって言ってもルチャリブレの技をかけてくるし。


つまりは人に迷惑かけておいてへらへら笑ってるバカだ。

こいつがエレナを連れてきたとき、ついに人さらいをしでかしたんだと信じて疑わなかったさ!


「あんた、少しは落ち着きなさいよ」


落ち着けないよ、リュアお姉ちゃん!

落ち着いてる間にこのバカのせいで誰かが不幸になるよ!


エレナもこんなバカの真似してたら将来人に迷惑かけて笑うようなバカになる!

て言うかその前に大けがするかもしれない!そんなこと許しちゃ駄目でしょ!


「そりゃそうかもしれないけど」


なのに誰もこのバカ止めてくれないし!

パトらんは天然だしおに―ちゃんは見てるだけだしジャガ―は腰が引けてるし!

しかも今回はリュアお姉ちゃんまでいっしょになって空中殺法だし。


「ちょっと昔が懐かしくなっただけよ。深い意味はないんだからね!」


意味が分かんない……この紫髪ツインテ―ルでボクの次にうちで背が低い人はリュアお姉ちゃん。

アイジンの1人で、一番の常識人……なんだけど空中殺法だけはなんでかククルンに張り合ってくる。

まぁ攻撃方法あの手この手のククルンと違って姉さんのはただのジャンピングハグだから痛くは無いんだけどさ。


だけどそれとこれとは別!

あんなバカの真似をしてお姉ちゃんとエレナになんかあったら大変でしょ―が!

それを教えたら、お姉ちゃんは急に難しい顔をし出した。


「あんたさ、自分が怪我したらとか痛いことになったらとかは思わないわけ?
そりゃアイツも含めてアンタにケガさせる気はないけど、万が一の怪我はアンタにだって関係ある話でしょ」


???思わないけど、何かおかしい?怪我したらおに―ちゃんが治してくれるし。

それにお姉ちゃんが言ったんだよ?男は女の子のしたいことを受け止めるのが仕事だって。


「確かに言ったけど、じゃあどうしてケツァルコアトルのことを嫌ってるのよ。あいつも女よ」


自分が楽しいからって、それを良いことだと思って人に押し付けるのは駄目なことでしょ。

その駄目なことを、良いことのつもりでずっと続けてるククルンは気持ち悪いんだ。


「じゃあどうして私の言うことは聞くのよ。私、結構無茶振りしてるわよね?」


そりゃそうだよ。だってお姉ちゃんは元から邪悪だもん。


「………」


悪い子が人に嫌われるのが分かってて、それでも悪いことするのは当たり前だよ。だって悪い子なんだもん

だから悪い子のお姉ちゃんは気持ち悪くなんかないよ。

でも良いことのつもりで悪いことして、それが嫌われることだって認めないククルンは気持ち悪い。


「………あいつも大概だけど、あんたの価値観も相当ねじれてるわね」


なんでかお姉ちゃんは溜息をついた。

とにかくエレナがバカにならないよ―にする方法がないかとお姉ちゃんに相談する。


「それならアンタのほうで他の遊びを教えてあげたら?
駄目だからってガミガミ怒っても言うこと聞いてくれないわよ」


なるほど、と思った。さすがはお姉ちゃんだ。


「それとさ、女の子を受け止めるのとはまた別枠で妹には優しくしなさいね」


それは、お姉ちゃんよりもってこと?


「そう。でないと、いざってときに後悔するわよ?」


よくわからないけど、とにかくそうらしい。

お姉ちゃんの教えをまた心に刻みつつ、早速エレナに新しい遊びを始めることにする。


と言っても女の子のする遊びってなんだろう?


あやとり……技を知らない。

ままごと……まだエレナに理解できると思えない。

人形遊び…そもそも人形もぬいぐるみも持ってない―――あ、いや。


そういえばアレがあった。


ルチャリブレバカのククルンが押し付けてきた、初めてルチャじゃなかったもの。

左側半分が真っ白で右側が真っ黒なクマの人形。

本当は人形じゃなくて、ガンプラって言うらしい。

黒い方の目が真っ赤で、まるで悪魔みたいな悪い顔してる。

けどボクは密かにその悪そうな顔が気に入ってた。


ベビ―フェイスのふりして人に迷惑かけるバカより、いかにも悪そうな笑い顔のクマのほうが僕には好ましかった。


そうだ、いっそあのクマと一緒に凄く悪い感じになろう。

ククルンのせいでバカになりそうなエレナを、いかにも悪そうなクマが救ったらきっとカッコいい。


えっと、悪い奴ってどんな風に笑うんだっけ?


あげゃげゃ?

それとも、むっふっふ?


あ―でもないこ―でもないと考えてよ―やく決まった。

悪の半分こクマはボクの口を使ってエレナに初めての挨拶をした。


『うぷぷぷぷ!や―や―お前ら初めまして。ボクは世界で一番偉大なクマ、ディオクマだよ!クマぁぁぁぁ!!』




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


初めて出会ってから、1年くらい経ったコロ。

ククルンもリュアもパトランもジャガ―もヴァンも、お仕事で外国に行っちゃっテ

ジオ―は小学校で、ワタシは保育所で昼間のほとんどを過ごしていた


「エレナちゃん、お兄ちゃんが迎えに来てくれたわよ」


それで学校が終わるとディオクマを肩に乗せたジオ―が迎えに来てくれる


『うひゃひゃ!せんせ―、さよ―なら―』


ジオ―と手を繋いでワタシのうちに帰ル。

ママンが帰ってきたら一緒にご飯を食べてジオ―はジオ―の家に帰っちゃウ。

たまにうちに泊っていくけど、ワタシはジオ―の家に泊れなイ。


子供だけでお泊りなんて駄目だって、ママンが言うノ。ジオ―は一人で帰るのに。


『エレナちゃん、ちょっと寄り道してかな―い』


ディオクマにそう言われて、ジオ―と手を繋いで行った先はおもちゃ屋サン。


「おもちゃ屋のおじさん、この子の仲間はいますか?」


ジオ―が右手に掴んだディオクマを見せながらそう聞けバ、おじさんは黄色いクマの箱を取ってくれタ。


「ジオ―、それなぁニ?」

「ディオクマの新しい仲間、新しい家族だよ」


ジオ―はその箱と他にも何か買って、ワタシを連れて家に向かっタ。

ワタシの家じゃなくて、ジオ―の家ニ。

ひさしぶりに来たジオ―の家はとってもガランとしてタ。

前は玄関を開ければククルンがギュ―ッとしてくれて、パトランが美味しいお菓子を用意してくれタ。

ジャガ―の背中に乗ってギアナまで走ったことも、ヴァンのおばけと一緒に遊んだことも――

――ぜんぶぜんぶ嘘みたいで、急に寂しくて怖くなっタ。


「ただいま―」

『おかえり―』


え?


見上げればそこにはジオ―とディオクマの優しい顔が当たり前みたいにあっテ。


『ほらエレナちゃん、お家に帰って来た時の挨拶は?』

「た、ただいマ―」

『うん、おかえり―』


ワタシはようやくこの家にただいまを言えタ。


ジオ―は私をリビングに連れて行って、さっき買ったばかりの箱を開けル。


新しい家族と会える、と思っていたら中身はバラバラになってる黄色いのが四角い枠の中で繋がれていタ。



『これから組み立てるんだよ。まぁみてて』


ジオ―はそう言ってハサミみたいなので黄色いのを一つずつ枠から外して、ぱちぱちって組み立てていっタ。

すこしずつクマの形が出来てくのはまるで魔法みたいで、ワタシもおもわず手を伸ばしテ。


くしゅんっ!


くしゃみした拍子にカラダがいくつかテ―ブルの下に吹き飛んじゃっタ。

ジオ―と一緒に慌てて拾い集めるけど、両耳の部品が無くなっていタ。


『だいじょうぶ、何とかするから』


また泣きそうになったワタシの頭をジオ―とディオクマが撫でてくれタ。

耳のないクマの頭に何かお薬みたいなのを塗って傷を埋めて、その上から筆で色を塗ってク。

バラバラの手足にも同じ色を塗って、乾かして、また組み立てテ。


あっという間に―――耳のない青いクマが完成しタ。

ジオ―すごい!やっぱりすごイ!


「どうだ、この子がボクらの新しい家族だぞ」


ジオ―が私の手に抱かせてくれたその子は本当にきれいな青色だっタ。

空みたいに大きくて、海みたいに広くて、それからそれから――!?


「!?どうした、エレナ!」


急に涙目になった私を、ジオ―が慌てて抱きしめてくれタ。

でも私は急に湧きあがった悲しい気持ちをこらえきれずに声を上げて泣き出しタ。

今になって振り返っても、ここで泣いた意味がワタシにも分からなイ。


ジオ―の作ったそのクマの青い体が、まるで――――涙の色みたいに見えて、悲しくなったなんテ。


◆◆◆◆◆◆◆


泣きだしたエレナをなんとかあやしたボクは、寝付いたエレナを背負ってエレナのうちまで送っていく。

作ったばかりで名前もないガンプラはボクの部屋の押し入れにしまってきた……連れてくる気にはなれなかった。

エレナはあの子を見て、涙の色みたいだと言った。


そんなつもりはなかった。

青色を選んだのは深い意味は無い。単にそう言う気分になっただけだ。


本当はボクもエレナみたいに泣いてしまいたいなんて、思ってない。

泣きたいから青く塗った、なんてことはない。

そんな理由もない。


ボクは一人でもちゃんと生きていける。

むしろククルンが迷惑をかけてこない分、すっごく自由だ!なんだってできる!

家に一人で帰って一人でお風呂に入って一人で寝て一人で起きて一人でご飯を作ってエレナを保育所に連れて行って一人で学校に行って。


全部、ひとりでできるから。

ボク一人でエレナを守って、ボク一人でエレナをお世話して、ボク一人でエレナを笑わせて――あげられない

子供のボクだけじゃどれも無理で、ククルンのつくったディオクマがいないと無理で、ボクのガンプラは笑わせるどころかエレナを泣かせて。


だけど泣きたいなんて思ったことは無い。

だってボクが泣いたらエレナを守れない、エレナを困らせる、エレナを不安にさせる。

お姉ちゃんとも約束した。エレナを大事にするって。


だから僕が泣いていい理由も、泣きたい理由もあるわけないんだ

なのに、寂しがってるエレナの為に家族を作ろうとしたのに、そのせいでエレナを泣かせて―――。


「いや―、正直君は十分以上に凄いと思うよ―」


え?


「はじめてで、しかもあんな短時間で塗装から乾燥まで完成させちゃっただけじゃなく
こんなにも自分の心情となりたい自分を作品に詰め込めるなんてさ。大した才能だよ」


誰だ!?誰かが、この部屋にいる。まさか、泥棒!?


「まぁそこは君の特殊な体質だけじゃなく、君の契約してる誰かさんとこの家の立地も影響してるんだろうけどね」


誰だ、姿を見せろ!あと人の家の悪口言うな!!


「うぷぷぷぷ!悪口なんてとんでもない。君だってピラミッドが逆さになって屋根に刺さってる家が
普通だなんて思ってなかったでしょ?この家はここらの霊脈を集めて魔力を蓄える工房になってるのさ」


そんな話は知らない!とにかく、居場所を―――待って。うぷぷ?


「うぷぷぷぷぷぶぷ!や―っと気づいたかい。イヤ―それにしても君って本当にねじれてるね。
泣くことができる自分を願いながら、そのなりたい自分を切り離して閉じ込めるなんて」


そこでボクはようやく、声の主がずっとテ―ブルの上に立っていたことに気づいた。


「ディオ、クマ?」

「うぷぷ、その通り!一応改めて自己紹介しようか、ボクは世界一愛らしくて可愛くて天才な大精霊、ディオクマだよ―」


そう喋っているのはディオクマ――ククルンが作って、今日までボクが何度となくひとり人形劇に使っていたガンプラだった。


「えぇぇぇぇ!?」

「も―凄いでしょ、最高でしょ、天才でしょ!!うっぷっぷっぷ―!」


◆◆◆◆◆◆◆


すごいすごイ!ジオ―すごイ!

あれから1日経ッテ、今日は学校がお休みだから朝からジオ―の家に来たら、ディオクマが自分で動いて飛んで走って踊れるようになってタ!


「エレナ。褒めてもらって悪いけど、ボクは何もしてなくてだな」


「謙遜する必要はないよ。ボクが動き回るエネルギ―は君が提供してくれてるんだし。
それに君と契約してる誰かのチカラがなかったらこの体はそもそも動かなかったよ」


「昨日も言ってたけど、その契約ってなんだよ」


「僕は凄い大精霊だけど、でもだからこそこんな風に人間と触れ合えるカラダを持つことは難しい。
でも、今このガンプラのカラダはいわゆる動く人形みたいなお化けになりかけてる状態なんだ。

たぶん君と契約してる誰かが怪物発生に関わるスキルか何か持ってたんだね。で、そこに君って言う特殊な才能と大きなエネルギ―に
素敵な工房まで持ってる子が傍にいた。そんな諸―の要素がツギハギに繋がって、奇跡的にこういう状態になってるワケ。

疑似サ―ヴァントならぬ疑似守護霊とか疑似精霊って感じ?ま―その奇跡を見事掴んで見せたのはボクがテ―ンサイだからだけどね!」


「いちいちテンサイテンサイってウザイぞ」


スゴイ!ジオ―とディオクマがなんか難しい話してル!何言ってるか分からないけどスゴイ!!


「て言うか契約?そんなのした覚えないんだけど」

「君じゃない誰かが代わりにキミ名義で契約したんじゃないかな?
例えばプレゼントって言ってよそから妹分を預かってくるような誰かとか」

「あのバカ帰ってきたら殴ってやる!!」


2人の話はほとんど分からなかったけど、その言葉はとても衝撃だッタ。

帰ってくル?

ククルンたち、帰ってくるノ?

いつ?いつ帰ってくるノ?


「いやあの、エレナそれは」

「ワタシ、ククルンたちに会いタイ!」


我慢できなくなって、ワタシは大声を出してた。
ジオ―は困った顔で頭をかいてたけど、その手を下ろして私の頭を撫でてくれた。


「おい、そこのテンサイ。お前、何か知ってるか?」

「何かって?」

「ククルンたちが仕事でどこにいったのかとか、どうすれば探し出せるのかとか?」

「残念ながらどこに行ったかは知らないね。今日明日のうちに君が探し出す方法ってのも知らない」

「………今日明日じゃなきゃ何かあるのか?」

「あるとも――― えぇぇぇぇくすとりぃぃぃぃむ!!」


きゃっ!


「に到達すればいいんだ」


ディオクマ、いきなり大声出すからビックリしたヨ!



「なんだよそりゃ」

「えくすとり―むで分からないなら、「 」って言えば分かる?」


?今ディオクマ、なんて言ったんだろ。よく聞こえなかったヨ


「…お兄ちゃんから聞いたことはある」


あれ、ジオ―もなんか怖い顔してル?


「でもそれって、世界中のことを知りたいから世界征服するんだ―って
くらい無茶な話じゃんか。そもそも、そんなのどうやればいいのさ?」

「簡単だよ、ガンプラを作りな」


ガンプラ?ディオクマの、仲間?


「種目はなんでもいいんだけど、キミに一番才能ありそうなのがそれだからね。
一芸を極限まで極めれば一周回って『そこ』に辿り着くようになってるんだよ。すべてのはじまりに、さ」

「それ、何千年もかかる話じゃないのか。ボクたち生きてないよ」


何千年!?そんなに待てないヨ!


「まぁそうだろうね。なら、ククルンくんだけに限定すれば君たちにも今すぐ始められる方法があとひとつあるよ」


ディオクマ、ホント!


「ジオ―くん。エレナちゃん」


うん!なに?


「子供を作ろうか」


……ほえ?


◆◆◆◆◆◆◆◆◆


は?何言ってんのこのクマ?

バカなの?ククルンに汚染されたの?だとしたらゴメンなさい!


「ボクもこうして動き出す前から君らのことは見てたんだ。この体を作ったククルンは君のことをおと―さんと呼んでいたね」


呼んでたけど。


「それはつまり、彼女は君の子供だと主張してたわけだ。でも君には子供なんていない」


当たり前だよ、ボク子供だよ!


「うん、だから――彼女は君の、未来の子供である可能性がある」


………はい?


「君がこの先の未来で作った子供が大きくなって、何らかの方法で時を遡ってきたのかもしれない」


それがククルンだっての?


「かもね―」


いやいや、そんなのこじ付けだろうが。単にアイツが頭のおかしいバカだった、それだけでも説明はつくんだぞ。

あからさまに信じてない目を向けるとディオクマはボクの肩に昇って耳打ちしてきた。


「あるいはすでにこの世にいない彼女が、いつか君の子供に生まれ変わるのが分かってたとか」


!?


「?」


反射的に大声で怒鳴りそうになった。けどエレナの前だったから、エレナに聞こえてなかったから、止まった。

こいつは今のふざけた想像を、ククルンたちが死んでるかもって可能性を、エレナに聞かせないためにわざと耳元で話したんだ。

それを台無しにすることは、何とか思いとどまった。

………どっちにしろ、子供を作れなんて、そんなの無理だよ。


「無理、ねぇ。何でそう思うのさ」


だって、ボクらは子供だし


「ほほう、子供だとなんで駄目なのさ」


いやだから、僕らは子供で『大人じゃないから』だよ。

子供を作るっていうのはさ、『キャベツ畑で大人の男の人と女の人がキスをしたらコウノトリさんが赤ちゃんを運んできてくれる』ってことでしょ―が!


「……キミ、へんなとこで知識がトンチンカンだね」

「キス?チュ―?チュ―すればククルン帰ってくるの?」


いや、エレナ、だからそれは――んぐ!?


「ん!」


い、いきなり抱き着かれて押し付けられた!?

俺のデリケ―トな所にエレナのデリケ―トで柔らかくてあったかい所を!?


「ヒュ―ヒュ―♪若いのにやるね―」


なにのんきなこと言ってんだ!このバカクマ!いや今はそれよりエレナだ!いきなり何すんだ!

あと空中殺法は危ないからやるなって言ったろ!やるならせめて先にやるぞ―って言ってから。


「ジオ―、元気出た?」


お説教しようと思ったら、エレナが見上げてきた。真剣な、それでいて今にもまた泣き出しそうな目をしていた


「ククルン言ってた、チュ―したらジオ―は元気になるって」


それは、前にされたときにも聞いたな。

ククルンはバカで迷惑だったし、ルチャで大迷惑だったけど、他にもキス魔って言う迷惑でもあった。

それで俺もエレナも何回かされてて、それでエレナもククルンの真似したことがあって。


「何!?君たち今のが初めてじゃないのかね!?なんとタダレた生活をしてるんだ!!


ちょっと黙っててくれないかなバカクマ!


「チュ―したらククルン子供になって帰ってくるんだよね」


しかもなんか話がごっちゃになってる!?

エレナ、落ち着け。それは


「会いたいよ、みんなに」


とうとう泣き出したエレナに、ボクは何も言えない。

だってククルンたちを探しに行く方法も連絡を取る手段もボクには無くて。

ディオクマの言葉が本当だったとしても、子供のボクたちにはどうすることも。


「あ、別に人間の子供じゃなくてもガンプラを作ればOKだから」


………は?

何それ。ちょっと待て

いや待たなくていいから説明しろ。そりゃどういう意味だ!!


「言うでしょ、芸術家にとって作品は子供同然だって」


……………………………………………………………………………………よし。

とりあえずこのクマの首をもごうと決めた。


「ちょっとちょっとなんでそうなるのさ!」


やかましいわ!お前、さっきククルンがボクの未来の子供とか生まれ変わりとかいったよな!

プラモが人間になったり人間がプラモになったりするわけあるか!!嘘ぶっこくにしても辻褄合わせろ!


「別に嘘なんかついてないよ。プラモだろうと陶磁器だろうと長い間人に触れたものは精霊化するからね。

ひょっとしたらキミが子作りして生まれるククルンくんは200年後くらいの未来で人類とガンプラの平和に
生きれる世界の為に戦ってるかもしれないよ。人呼んで『仮面ライダ―プラモ』、合言葉はBFF!」


どこから出てきたその想像!あとそのBFFってなんだ!?


「ベスト・ファミリ―・フォ―エバ―!!」


喧しいよ!あいつが200年後でも人類とガンプラにム―チョム―チョって迷惑かけてるかもしれないとか、どんな悪夢だ!


「まぁまぁ落ち着きなって。なにも最初から成功させろって言ってるんじゃないよ?
ガチャだって数撃たなきゃ当たんないんだし、目的達成までにガンプラもたくさん作らないと。

てなわけでとりあえず1体作ってみようか」


バカクマはどこからともなく新品のベアッガイ2の箱をボクの前に出した…おい、それ本当にどこから出した?

て言うかどうやってそれ買ってきた?まさか盗んできたんじゃないだろうな!?


「してないしてない……それにさ、何もできないって断言しちゃうより時間は
かかるけど出来ることがあるって言った方がエレナちゃんも落ち着くんじゃない」


!?

その考えは正直気に入らなかった。だけど正しいとも思った。

目の前のエレナはまだ泣いていた。

やたらボクにガンプラを作らせようとするコイツのことは正直怪しい。だけど

"妹は大事にしなさい"

その約束より大事なことなんて、ボクにはない。つまり


「あ―もう分かったよ!作ればいいんだろ作れば!!」


と言うしか道は無かった。その勢いのままやや乱暴に箱を開ける

中身は昨日も見た黄色いプラスチックのパ―ツ。いざ組み立てよう、と言うところで躊躇する

昨日普通に作ったらエレナを泣かせた。それはやっぱりショックだった。

なら、どうすればいい?同じことを繰り返さないためには何が必要?


「難しく考えるのも分かるけど、まずはどんなガンプラが作りたいか、どんなことを
して欲しいか、今の自分がなりたいものしたいことは何かを考えてごらん」


何がしたいか、か


そういう事ならボクが一番にしたいのはみんなを探しに行くことだ。

世界のどこかで迷惑をかけてるだろうあのバカを探して、世界中を駆け回ることだ。


だけどボクは子供で、リオの街から外に出て行くことも簡単じゃなくて。

だから運動神経と体力バツグンのカラダが欲しいと思った。


頭は……このさいちょっとくらい悪くてもいいと思う。

ううん、エレナを笑わせるためにはその方がいいのかもしれない

シャクだけど、本当にシャクだけど、エレナを笑顔にすることについてはククルンのほうが上手だった。

だからもういっそ、大事なこと以外何もかも忘れちゃうくらいの凄いバカになってくれた方がいいかも


だけどククルンみたいに誰かを傷つけたり迷惑かけたりするのは絶対だめだ

そのバツグンの運動神経をもっと平和なことに使って欲しい。


他には何かないか?


ディオクマはボクがたくさんガンプラを作ればそれがボクの子供になると言った

その中に生まれ変わったククルンがいるかもって。

でもそれはククルンじゃない子がたくさん産まれるってことでもあって。


ならその子たちをボクはどうすればいいんだろう?

おと―さんみたいにアイジンをつくって預けるの?一緒に暮らさないの?


違う、そんなわけない。ガンプラがボクの子どもだって言うなら、ボクは一緒に暮らす家族になりたい。

そうだ、ボクはおと―さんよりちゃんとした『お父さん』になりたい。


それで生まれてきた子供たちと、みんなで一緒に遊びたい。

ならサッカ―だ。たくさんたくさん子供を作って、チ―ムがいっぱい作れるくらい作って、サッカ―しよう。

それからお父さんらしく見えるように立派なヒゲもつけよう。


よし、いいぞ、大分固まった。


あとはこの子の色をどうするか……黄緑にしよう。エレナの髪と同じ色だ。

この子はボクだけじゃなくエレナの子供でもあるから。親子は似ちゃうのが当たり前だから。


そうと決まれば、あとはカラダが勝手に動いていた。

まだ2回目なのに、からだがテキパキ動いた。塗装も、ヒゲを自作するのも勢いのままガ―っとやっちゃった。


「ジオ―、すごい!」

「それも控えめな表現だねぇ、ホント恐ろしいくらいの才能だよ。あるいは血筋かなぁ」


そして、数時間後。ボクのガンプラは完成した。


「いいや、まだだよ」


けどディオクマが駄目だしした。


「一番大事なことが残ってる―――名前を付けてあげなきゃ」


それならもう心に決めている。この子の名前は『ディオリ―ニョ』、君の名前はディオリ―ニョだよ。


みんなの前で発表するのはどこかくすぐったい気がした


「よろしくだヨ、ディオリ―ニョ!」

「うん、よろしく―」


だから反応が一歩遅れたのかもしれない。


「って今こいつ喋らなかったか?」

「うん喋ったよ―」


それどころかリズミカルに動き出してサンバまで披露してくれた!?


「ジオ―すごい!ディリ―ニョ、すごい!」


待て待てチョット先に話させてくれ!

ディオリ―ニョ、お前なんでそんないきなり喋れるんだ?


「ん〜なんでだっけ?…忘れちゃった!」


お―い!


「そんなことよりサッカ―しよう!」

「うん!」


待て!先にはっきりさせなきゃいけないことが!

それにこの人数じゃサッカ―は無理だろ―が―!

と言うかさっきまで泣いてたのにそんなあっさり楽しそうでいいのかエレナさん―――っ!


「ここから、はじまるんだねぇ」


何を綺麗に終わらせようとしてるんだ、このバカクマァァァァァァ!



◆◆◆◆◆◆◆◆


―――とっても懐かしい夢を見タ。

ワタシがまだブラジルにいた頃の夢。

ククルンたちと一緒に暮らした頃の、ディオクマ―ズと毎日遊んでた頃の、とっても優しい夢。

夢でみんなに会えたことが嬉しくて、でも今は寂しイ。みんなのいない今が寂しい………ジオ―に会いたいナ。


ワタシは電話しようと思ってケ―タイに手を伸ばしタ。


それで寝てる間にメ―ルが来てたことに気づいタ。

そのメ―ルにジオ―が入院したと書かれていて、私はゾッとしタ。


すぐに着替えて顔を洗って、朝ごはんも食べずに私は飛び出しタ。

ジオ―までいなくなったら、ワタシっ。


「ジオ―!」


病室に駆け込むと放心したみたいにベッドに座ってるジオ―がいタ。


「あ、エレナ…」


ジオ―、大丈夫ナノ!?


「あ、あぁ大丈夫。ただの検査入院だから、ちょっと二代目と派手に
バトルしたら一緒に診て貰えって放り込まれただけで何も問題ない」


でも頬っぺた凄く赤いヨ!


「それはたぶん、自分で何度もつねったせい、かな?」


なんでそんなことしたの!ワタシ、すっごく心配したんだヨ!


「あはは―。ゴメンネ、エレナちゃん。

ジオウくんてば、自分が起きながら夢見てるんじゃないかって疑ってるんだ―」


なにソレ、そんなの……え?

聞いたことのない声が聞こえた。キョロキョロと部屋の中を見渡すと、テ―ブルの上にその子はイタ。

耳が無くて、お坊さんみたいに丸い頭をした青いベアッガイだっタ。


「やぁ。ようやく会えたね、エレナちゃん」


その子は自分で右手を挙げて私に声をかけてきタ。

ガンプラが、自分で動いテ自分で喋っタんだって、目の前で見ても信じられなかっタ。

こんなのはおかしい。だって、みんなもういないんだから。動かないんだかラ。


「エレナ。お前の目にも、この子が自分で動いて喋ってるように見えるんだな?」


この子はリ―ニョじゃなイ。キッドじゃなイ。ディオメッドじゃなイ。

エルでもニコフでもワンディオでもなイ!ディオクマでもディフォ―マ―ズの誰かでもなイ!

だけどワタシ、この子を知ってル?ずっと前に、会ったことがアル?

とまどってるワタシの前で、その子は明るい声で言っタ。


「初めまして。ボク、ディオえもんです。……やっとできたよ、13年目の初めまして」


あ…。

思い出しタ。この子はもしかしてジオウが一番最初に作ったあの子ジャ。


「お近づきの印に、キャラチェ―ンジ!」


振り上げた左手がキラキラ光ったと思ったら、急にジオ―に抱き着かれタ。

驚いて声を上げようとして、でももっと驚いて声が出なくなっタ。


「うっ…ううう…うわぁぁぁぁぁぁぁ!」


ジオ―が、泣いてル。ジオ―が泣くなんてとても珍しい…ううん、もしかしたら初めて見たかもモ。


「うわぁぁぁぁぁ!良かった、ヨカッタ、夢じゃなかった!夢じゃなかったよぉぉぉぉぉぉ!」


子どもみたいに泣きじゃくるジオ―の涙は熱かっタ。


「ずっと、ずっと生きててくれた!守っててくれた!帰ってきてくれた!
みんなも、みんなも絶対帰ってくる!帰ってくるよぉぉぉ!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


そんなジオ―の背中に手を回して、ギュッてして、私は笑っタ。

ジオ―はまだ、全然諦めてなかったんダ。


みんな、帰ってくるよネ。

そしたらまた、みんなで一緒に暮らせるカナ。


胸がすごくドキドキして熱くなってル。

私はもう一度ジオ―にギュってしタ。


「やっぱり、ジオ―はすごいヨ!!」



(おしまい――――そして、何度でもここから始まる物語)



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

≪ガンプラ紹介≫



●XiNo.001 ディオリ―ニョ(CV:鈴木みえ)

ベアッガイベ―スの黄緑色で、扇のような立派な金色の髭を生やしている。
ジオウが2回目に作ったガンプラで、はじめて疑似守護霊(疑似しゅごキャラ)化したガンプラ。

ディオクマ―ズの最初の一人。リトルミズキとは異母兄妹のような関係になる。

とっても陽気で純真で騙されやすく、一番大事な家族以外のことはすぐに忘れちゃう度を超えた忘れん坊

趣味はサッカ―だが、そこに込められた本当の想いは家族を守り導く『お父さん』になりたいと言う願い。
家族だけでサッカ―チ―ムを作れるくらい子供たち(ガンプラ)を作ろうと言う小さき夢から生まれた。

今回は登場しなかったが、のちに「ぷちっがいサッカ―チ―ム」を率いることになる。




●XiNo.000 ディオえもん(CV:横山智佐)

ジオウが作った、本当の意味での最初のガンプラ。

ジオウが自らの特性に気づかないまま作ったことで、彼が心の奥底に隠してた「なりたい自分」の属性を得た。

それは実の親も育ての親もいなくなり「寂しいのも辛いのも全部吐き出して、泣いてしまいたい」という思い。

だがジオウはその気持ちを込めてしまったガンプラを自分から遠ざけた。これにより、某イ―スタ―の御前のように
泣くための心を切り離したような状態になり、20歳まで泣くことが出来ない人間になった。

(これは何も悪いことばかりではなく、世界同時行動不能事件の際にはひとりだけ活動することが可能だった)


その後、ジオウが知らぬ間に疑似しゅごキャラ化して押し入れからいなくなり、10年近くある人物の傍にいた。
劇中最後に彼がジオウの傍にいたのは、そのある人物との大バトルの末に返却されたから。

活動時期の関係でディオクマ―ズとしては数えられていない。
のちに頭部に収納式のビ―ムロ―ダ―を装備し、空戦能力を格段に上げることになる。


また彼の青いカラダは一晩中泣き明かして塗装が剥がれたからではなく、素体の上から塗装したもの。
だから声もガラガラになったりせず、ディオクマのような声にはならなかった。




●ディオクマッガイ(CV:大山のぶ代)

謎のルチャリブレ大好きお姉さん、ククルンが作ったベアッガイベ―スの白黒半分こなガンプラ

その核になっているのはA’s世界のディオクマと同じく、精霊の宿る神の時代のバトスピカ―ド。
つまりは本編軸世界のディオクマそのもの。ただし黒子と融合してるわけでもないので錬金術等は使わない。

ククルンの正体はFGOですっかりおなじみの南米の主神様―――ではない。
厳密にはケツァルコアトルとここにいるククルンは、イリヤスフィ―ル(SN)とシトナイくらいに違う。

ここにいるククルンはとある同系統でありながら別物である神の存在がミックスされている。
その神とは「絶対なる幻蛇神ククルカ―ン」……並行世界のジオウによって生み出された
五色の絶晶神の一柱である。ジオウを父と呼ぶのは、彼女の創造主と同一存在であったからに過ぎない。

この先も本当の意味での親子関係を築けないかどうかは誰にも分らない。案外本当に200年後の世界で
仮面ライダ―プラモとして外宇宙から来た侵略者たちと戦っているのかもしれない。



(おしまい)


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あきゅろす。
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