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頂き物の小説
『とある騎士見習いとメガネっ娘の一日』












ん?今回は私が導入なんですか?ですが、ここには面白いものはありませんが…いるのは、私を含めたデバイス達(リインさんはお仕事中ですが)だけです。後は、私達のメンテナンスをしてくれているシャーリーさんですね。


《しかし、思ったより早く終わってしまって暇ですね…》

《仕方ない。》

《まだ、新人達のデバイスが残っていますからね。》


同じインテリジェントであるレイジングハートとバルディッシュも早々に終わって同じ場所に転がっているのですが…仕方ありません。暇つぶしとしてこの2機をからかうことにしましょう。


《…アルトアイゼン。今、何か妙なことを考えませんでしたか?》

《何てことを言うんですか、レイジングハート。》

《そうですか。失礼しまし───》

《私は常に面白いことを考えていますよ?》

《…私も、後10年もしたらあなたのようになるかと思うと、ぞっとします。》

《楽しいですよ、きっと。》

《あなたのマスターである少年の苦労に泣けそうです。涙は流せませんが。》

《…》

《何ですか、バルディッシュ?》

《いや。》

《乙女の会話を聞くなんて野暮ですね、あなた。》

《全くです。》

《すまなかった。》

《《………》》


駄目です。なんとつまらない人、いえデバイスでしょうか。フェイト執務官も真面目ですが、このデバイスはさらに真面目ですね。JS事件のときに一時的に饒舌になったと聞いていましたが…


《ええい。あなた、もう少し話そうと努力しなさい。努力を。》

《そうですね。アルトアイゼンまでとはいかなくても、マッハキャリバーくらいには喋ってもいいのでは?》

《そういうのはキミ達に任せている。》

《あなたが喋ることに意味があるんですよ。》

《サーとの関係に問題ない。よって、改善する理由も見当たらない。》

《あなた、どこまであの人至上主義なんですか。》

《少しは他のことも考えてみては?…(その、私のことでも結構ですので)…。》


む!今、何やら非常に面白い音声を拾いましたよ!?リピート、リピート…くっ!音声が小さいですね。

音量を最大へ……今度はノイズがひどいとは!ええい、これしきで負ける私ではありません。最新の注意を払って、ノイズの除去をせねば!特定のレイジングハートの通信波長を残して、残りのノイズ波長をデリート、デリート、デリート………

‘プシュッ!’

ん?ドアが開きましたね…あれは、エリオさんですか?デバイスを取りに来たんでしょうか…まあ、いいです。それよりもノイズのデリートを急がせて……

「シャーリーさん。」

「んー?どうしたの、エリオ君。ストラーダなら、まだ調整中だよ?」

「いえ、ちょっとシャーリさんにお聞きしたいことが…」

「何かな?エリオ君、私をデートにでも誘いにきてくれたの?」


シャーリーさんの一言でエリオさんは真っ赤になってますね。いやはや、若いっていいです。…いけません。発言が年寄りくさくなってしまいました。私だって、まだ20代ですよ。

っと、考え事をしてたせいで危うく残すべき波長を消してしまうところでした。いけないいけない。もっと慎重に作業を行わないと。


「その…はい!」

「へ?」

「シャーリーさん…その、僕と…」


…ん?何やら雲行きが妙な形に…いえ、いけません。集中しなければ────


「僕と、今度の休みにデートしてくださいっ!」



…はい?いや、あの、メンテナンス終わったばかりなのに、私の情報処理にエラーですか?いえ、そんなわけないですね?データを再生してもノイズに負けない音量で聞こえてきますし…つまり、これは…


《《《《はああああああああああああああああああああっ!?》》》》


メンテナンスルームに、全てのインテリジェントデバイスの音声が響き渡りました。

‘ピッ’

ついでに、音声データが消去されました。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

僕がシャーリーさんのところに行く、10分ほど前。


最近、キャロの考えてることがよく分からなくなってきた。

と言うか、どうしてか『エリオ君はね!ちょっとは、女心を学ぶべきだと思うんだ!』って怒られることが増えてきて…はぁ。


「女心、かぁ…」


スバルさん達は『こればっかりは私達の口からはね〜』って言って教えてくれないし。女心をヤスフミに聞くのも違う気がする。なのはさんに聞いてみるべきか…いや、きっとスバルさん達と同じ答えが返ってくるに違いない。

副隊長達は…何故だろう。女心を聞いても無駄だと僕の中の何かが告げている。失礼じゃないか、もう一人の僕?いや、確かに2人とも性格が下手な男より男らしいけど…ひょっとすると僕よりも男らしいけど!

ちなみにフェイトさんは『え?女心?…ヤスフミ、ちゃんと女心とか分かってるのかなぁ?』と自分の考えに没頭しちゃった。…フェイトさん、ヤスフミと距離が近づくにつれてダメダメになってる気がするなぁ…

後、僕の周りでそういったことにアドバイスを求められる人って…他に誰が…


「…っと、あ、あれ?ここは…?」


デバイスルーム。確か、中ではシャーリーさんが僕達のデバイスを───シャーリーさん?

そうだ。シャーリーさんはどうだろう。以前、僕とキャロが出かけたときにプランとか考えてくれたし。年上だけど、よく恋愛関係で話をしてるから、きっとフェイトさん達よりもその類には詳しいに違いない!

うん、それがいいや。ちょっと聞いてみよう。

‘プシュッ’


「シャーリーさん。」

「んー?どうしたの、エリオ君。ストラーダなら、まだ調整中だよ?」

「いえ、ちょっとシャーリさんにお聞きしたいことが…」

「何かな、エリオ君、私をデートにでも誘いにきてくれたの?」

な、なんでデート!?

いや、待てよ?これって案外チャンスなんじゃ…プライベートでシャーリーさんみたいな女性に一日付き合ってもらえば、僕みたいな男でもちょっとは女心が分かるんじゃないのか?

うん、悪くない!


「その…はい!」

「へ?」

「シャーリーさん…その、僕と…僕と、今度の休みにデートしてくださいっ!」

「…へ!?」

「シャーリーさんに、色々と教えて欲しいんですっ!」

「え、ちょ、いや、何を!?何を知りたいの、エリオ君!?」

「え、えっと、僕がまだ知らないことや、分かってないことを…知りたいんです!シャーリーさんに教えて欲しいんです!」

「ぅ、え、ぁぅう…!?」


あ、顔を真っ赤にして言葉に詰まってる…いや、ここで退くな、エリオ・モンディアル!キャロとのパートナー関係をしっかりとこれからも続けるためには、シャーリーさんに僕がまだ知らない『女心について』教えてもらわなきゃいけないんだ!


「わ、私じゃなくても!ほ、ほら!フェイトさんとか、キャロとか───」

「シャーリーさんがいいんです!シャーリーさんじゃなきゃ、駄目なんです!」


キャロは問題の起点だし、フェイトさんは役に立たないのが証明されてしまった。と言うか、今のフェイトさんとデートなんてしたら、ヤスフミに何をされるか分かったものじゃない。そこを踏まえても!シャーリーさんが一番頼みやすい!


「お願いします!僕に!女《《《《はああああああああああああああ!?》》》》ください!」


くっ、今の声は何だ!?ちゃんと女心を教えてくださいって言ったの伝わったかな!?


「ぅ、あ、あの、その…エリオ君…ほんとに、私で、いいの…?」

「もちろんです!」

「あ、ぅ…うん…そ、それじゃ…今度の休日にでも…」

「は…はい!ありがとうございます!」


よっし!これで、少しは女心が分かる男になれるかな?早速、準備を色々としなきゃ!



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



…え、何ですかこれ?いつの間に、シャーリーさんったら無垢な少年にフラグなんて立てちゃってたんですか?いや、そもそもどうしてあの人、シャーリーさんとのデートにあそこまで乗り気なんですか。フェイトさんが泣きますよ、あれ。


《…ショタコン…》

「はっ!み、みんな違うよ!?今の、違うからね!?と言うか、今の発言は誰!?」

《シャーリーさん。さすがに、10歳に手を出すのはどうかと…》

《色々教えて欲しいといわれて、Yesとは…犯罪もいいところですよ。》

《今すぐ、サーに連絡する。》

「バルディイイイイイイイイイイイイイッシュ!?さ、させるものかぁっ!」


む!これは、念話を阻害するフィールド…さすがデバイスマスター。この部屋は彼女の城ですね。


「いや、私にそんな趣味はないよ!うん、無いから!?」

《彼に何を教える気なんですか、あなた。》

《あなたは、サーの良い友人でしたが…》

《みなさん、今の会話データはプロテクトをかけて保存しましたね?》

《もちろんです。あの少年を守りましょう。我々で。》

《《《《《All right、friend》》》》》

「全員揃って!?と言うか、アームドデバイスのみんなまで意思統一!?今、ものすごいレベルであなた達AIが進化したよね!?」

《さあ、いきますよ。誰か一人でもデータを残せば我々の勝利です。》

「くっ…!なら、デバイスマスターの名にかけて、今のやり取りのデータを全て消去してみせる!みんな、覚悟っ!」


私達のデータ領域にシャーリーさんのプログラムが侵入を始めるのと、それに対抗する防御プロテクトの構築…

さて。マスターの弟分であり、友人でもある彼のためにも…ここは退けません!



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「それじゃヤスフミ。行ってくるよ。」

「ん。楽しんできなよ。」


昨日からやけにそわそわしながら洋服を選んでいたエリオがやや駆け足で隊舎を後にするのを見て、僕は思わず頬が緩んでしまう。

いやー、エリオもいっちょ前に服装とか気にするお年頃か。僕に何度も『これで大丈夫かな?』とか『変じゃないよね?』とか聞いてくるエリオは新鮮だったね。こういう兄弟らしいやり取りって、どこかで憧れてたのかもしんないわ。


「きっと、キャロとでも待ち合わせしてんだろうね。」

《そうですね。…ん?んん?》

「…どうしたのさ、アルト?昨日から何か変だよ?」

《いえ。実は先ほどから妙にノイズが激しくなって…何故でしょうか?》

「シャーリーに見てもら───っと、そういや今日は休みだっけ。」

《ええ。その通りで───…ん?またノイズが…?》

「ちょっと。なら、僕のほうで簡単にチェックしようか?」

《そうですね。後でちゃんとお願いします。》


最近は何事も無い日が続いているとはいえ、油断は禁物だ。戦闘中にアルトが使えなくなりました、なんてことになったら目も当てられない。とりあえず、朝ごはんを食べてから…っと、あれは。


「フェイトー、おはよう。」

「おはよう、ヤスフミ。」

「おはよー…というか、さり気なく私の名前をスルーしないでよ。」

「やれやれ。仕方ないな。おはよう、ま「魔王なんて呼ばないでね?」…なのは。」

「全く。恭文君、最近ワンパターンだよね。」

「失礼だね。僕はいつでも「私をからかう新しい手段を探してるとか言うんでしょ?」…馬鹿な!」

「最近、恭文君の心の中がちょっぴり読めるようになってきたよ。」

「な、なるほど!とうとう「読心術まで身につけて、さらに魔王化した、とか思ってるでしょ?」…な、なんだ!じぶ「自分が魔王だって自覚してるんじゃないか、とか言いたいんだよね?」…」

「…ふっ。」


く、屈辱だ!魔王にこうも手玉にとられるなんて!?やはり、あれか!もう少しレパートリーを増やすべきなんだ!もう魔王ネタだけじゃ駄目なのか!?


「どうせ、今は『もう魔王ネタだけじゃ駄目なのか?』とか考えてるでしょ。」

「人の心を読むんじゃないよ!プライバシーって知ってるかな、魔王!?」

「恭文君に人権について説教されたくないよ!人をいつまでも魔王呼ばわりして!」

「…2人とも…心で通じ合ってるんだね…以心伝心なんだね、なのはとヤスフミは…」

「「はっ!?」」


ああ!なんだかフェイトがダウナー思考に入ってる!?何も入ってないコップをスプーンでカラカラと…怖っ!?めちゃめちゃ怖っ!?目が真紅の単色ってどういうことさ!


「以心伝心…いいよね、なのはは…私なんて、ヤスフミが考えてることとか分からないよ…」

「ふぇ、フェイトちゃん、落ち着いて!?その目を私に向けないでくれるかなっ!?」

「分からないよ、ヤスフミが本当に私のこと好きなのかとか…ひょっとして、私遊ばれてるのかな…?」

「そんなわけないでしょうが!?ちょ、フェイト!お願いだから落ち着いて───」

「もう、こうなったら独身貴族として頑張るか、ユーノでも口説いてみようかな…?」

「そんなことになったら、僕はユーノ先生をぶった斬るよ!?」

「じゃ、そうなったら危ないから気をつけてね?」


あ…あれ、戻ってる?ちょ、え、今のは何?まさか……


「駄目だよ、ヤスフミ。あまり他の女の子と通じ合ってるのを見せるのは…審査に減点だからね?」

「あ、う、うん…ごめん…」

「うん、分かってくれたら嬉しいよ。」

「…え、どーして私が疎外感とか感じなきゃいけないの…?」

「お詫びに、今度の休みに…その、私と‘デート’して《《《ああああああああああああああああああああっ!!》》》うひゃぁっ!?」


び、びっくりしたぁ!?アルト達デバイスが急に叫び声を…というか、レイジングハートにバルディッシュまで大声を出すなんて…何事さ?今、僕ってものすごく珍しい光景を目の当たりにしたよね?



「ど、どうしたのバルディッシュ!?」

「レイジングハートも、何かあったの?」

《サー!今すぐに彼を!エリオ・モンディアルを保護してください!》

《駄目です、もう出かけてしまいました!》

《何ですって!?》


…は?いや、どうして急にエリオの保護とかいう話になるのさ?後、どうして3体ともそこまで焦ってるの?


「バルディッシュ。説明しなさい。エリオに、何かあったの?」

《サー、先日のことです。実は────……》


そしてバルディッシュ達が教えてくれたのはデバイスルームでの一件だったんだけど……

はぁ!?しゃ、シャーリーとエリオがデート!?何それ!?しかも、エリオから誘ったって…え、嘘!?どういうこと!?シャーリー、いつの間にエリオにフラグなんて立てたのさ!?


《この情報を消去されないために、パスワードを設定して特定のキーワードでのみ解除できるようにしたのですが…くっ!まさか、デートという単語がここまで使われないものとは!》

「い、いや、でも…考えすぎだよと思うよ、私は。いくらなんでもシャーリーがエリオを狙うなんて…」

《甘いですよ、マスター。エリオ陸士が『色々と教えて欲しい』と言った後、間違いなく彼女は頬を染めていました。》

《何を教えるつもりか知りませんが、普通のことを教えるのに頬を染める必要はないはずですよ。》

「いや、でもそれだと…シャーリーがショタコンという‘ガタタタタン!!’…フェイト…?」


フェイトが───いや、フェイトの姿をした何かが、そこにいた。思い切り椅子を蹴飛ばすようにして立ち上がり、前髪で目は隠れている。

ハッキリ言って、さっきより数倍怖い。


「…バルディッシュ。戦闘行動に支障は?」

《N…No problem!》

「なのは。私、今から外回りに行くけど…かまわない?」

「も、問題ありません、ハラオウン執務官!」

「ヤスフミ…ついてきて、くれるかな?」

「は、はい!もちろんです!」

「ん…いい子だ…なのは、ロングアーチにストラーダの現在位置を特定させておいて。」

「え、その…理由とか、は…?」

「…そのぐらい、考えておいてくれるよね?」

「りょ、了解しましたっ!」


怖ええええええええええええええええ!?何、何なのさこの恐怖は!あれだよ!多分、僕の修羅モードに匹敵する何かがあるよ、今のフェイトには!僕の色んな本能が逆らっちゃ駄目だと告げてるってどれだけさ!?


「シャーリー…友達だって、思ってたんだけどな…」

「「ひぃっ!?」」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



うわわわっ…な、何か今、猛烈に寒気を感じたような…?

気のせい、だよね。うん。ただシャーリーさんとデートしてるだけなのに、寒気なんて感じるはずがないじゃないか。僕もちょっと緊張しすぎちゃってるのかな?


「ん?エリオ君、立ち止まっちゃってどうしたの?」

「あ、すいません。」

「ほらほら、映画が始まっちゃうよ?」


今日のシャーリーさんは、その…すごく可愛いと思う。普段は制服しか見てないせいもあるんだろうけど、新鮮だし。何より…珍しくコンタクトだったり。ヤスフミが以前言ってたけど、女の人って本当にちょっとしたことで雰囲気が変わるんだなぁ…


「何を見るつもりだったの?」

「ええ。普通ならこういった場合真面目な恋愛ものとか見るんでしょうけど…その、実はこういったもの、もらっちゃいまして。」


『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー 特別先行試写会 (関係者限定)』


「…これ?」

「や、やっぱり駄目ですよね!?別の見ましょう!いいんです、これは今度ヤスフミにでも渡して―――」


‘ガシィッ!’

ちょ、シャーリーさんから抱きしめられたっ!?え、何で―――って…泣いてるー!?どうして!?僕、何かしちゃった!?何を間違えたの僕はっ!?

「エリオ君…ううん、あえてこう呼ばせて…」

「は、はい…?」

「愛してる、マイダーリーーーーーーーーーーン!!」

「ぅええええええええっ!?」

「最高!最高だよ、エリオ君!ああっ!前回はなぎ君が先に見に行っちゃったから悔しかったの!」

「そ、そうですか…あの、その…」

「さあ!行くよ、エリオ君!」

「え、あ、ちょっ…わわわわわ!?」

最近のキャロやフェイトさんを見てよく思うけど…女の人って逞しいなぁ…

でも、その…なんて言うか、さすがに腕を組んだまま行動するのは恥ずかしいかもしれない…い、いや、これも女心を知るため!頑張れ、僕!

澄み切った空の向こうで、半透明なオリジナルの僕がサムズアップしているのを見ながら、僕はシャーリーさんと一生懸命背伸びしたデートを楽しむことにした。


「ところで、このチケットどうしたの?」

「あ、はい。この前の休みに事故から助けたショータローという方から…」

「ちょ!?」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「面白かったですね。」

「うんうん。もう、今なら私、次元も時も超えられそうな気がするよ。」

「僕、それをリアルにやってますけどね…」

「あはははは。そう言えばそうだったね。」


…え、何?何なの、あのいちゃつきっぷり?久しぶりの休暇ということで、なぎ君のところにでも行こうかと108部隊から出てきてみれば…あ、あれ、六課のデバイスマスターのシャーリーさんと、エリオ君…だよね?し、しかも腕なんて組んじゃってる!?

ど、どうしてこうなってるの!?シャーリーさん、年下趣味だったとか!?小さい子が好きなの!?あ、でも同じ小さい男の子でも、なぎ君はカッコイイというか大丈夫というか…って、そうじゃないよ、私!?ブ、ブリッツキャリバー!通信!通信をっ!


「も、もしもし!なぎ君!なぎ君っ!?」

『へ?あ、ギンガさん?どうしたの?』

「どうしたもこうしたもないよ!何で!?どうしてあんなことになってるの!?」

『いや、意味分からないから!?落ち着きなよ、ギンガさん!?』

「あ、ご、ごめん…って、あれ?なぎ君、ひょっとしてフェイトさんと一緒?」

『あー…う、うん。実は』



あ、やっぱり。今、ちらっと見えた金髪はフェイトさん…あ、あれ?何だろ。悲しいような、腹立たしいような…ちょっと、ムカツキ?今すぐなぎ君のとこに行ってリボルバーナックルを打ち込んでやりたい気に…?

い、いや、落ち着かなきゃ。これは、いいことなんだよ。なぎ君にとっては良いこと。だから、そんなこと考えちゃ駄目だよ私…はぁ。


『?ギンガさん?どうしたの?』

「はっ!そ、そうだ!ねえ、なぎ君!シャーリーさんって年下好きなの!?」

『は!?ちょ、まさかギンガさん、シャーリーとエリオに会ったの!?』

「今、目の前だよっ!何だか、ものすごくラブラブなんだけど!腕なんて組んで、2人ともすごく楽しそうなんだけど!?」

『うそ、やっば―――はっ!?』

『…ギンガ…?』


―――…っ!?な、何!?今の通信越しでも心臓を鷲づかみにされたような声!え、ひょっとしてフェイトさんの声なの!?


『今どこにいるの…?』

「あ、あの、フェイトさん…?」

『現在の場所を答えなさい、ギンガ・ナカジマ一等陸士…!』

「クッ、クラナガンの中央第3区画にある映画館、イストレジャーの前であります、マム!」

『そう…ギンガ、そのまま2人を尾行して…すぐに、私も向かうから…』

『ちょ、フェイト!デバイスなんて持ち出して…速度!車の制限速度超えてるよ!?ちょ、ギンガさん、エリオ達に逃げてって言ってええええええええ!』


‘ブツンッ…’


《通信、切れましたが?》

「…どうしよう…?」



ひょ、ひょっとして私…とんでもない爆弾のスイッチ押しちゃったとか…?ふ、2人はどこに!?どこに行って―――あれは?




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「なー?いいだろー?」

「そんなガキより、俺たちと良いことしよーぜ?な?」


…こんな人達、本当にいるんだ…

いやいやいや。そうじゃない。そうじゃないよね、僕?



「えーっと、ごめんなさい。私、今この子と一緒に楽しんでるので。じゃ!行こう、エリオ君。」

「ちょっと待てって。よっ!」

「痛っ!?」


っ!こいつ、シャーリーさんの髪を掴んで!?


「いーじゃねぇかよ、な?」

「は、離してください!」

「おら、ガキ!こっからは大人の遊びだ、とっとと帰りやがれ!」

‘がすっ!’

って…い、いけない。油断してたら、蹴られちゃって…別に訓練に比べれば痛くはないけど…とりあえず、相手が子供だからって油断してる隙にこの人達からシャーリーさんを解放させて、逃げ―――



「エリオ君!あなた達、子供になんてことするの!?」

「へいへーい、お説教は別の場所でなー!」

「人気の無いとこで聞いてやるよ。ひゃはははは。」

「痛っ…やめてっ…離してっ!」


っ!…こいつら…!

どうする?僕なら、こんな何の変哲もない2人組を叩き伏せるのなんて簡単だ。けど、それは局員の暴力事件…六課のみんなに迷惑が…どうする!?どうすればっ!?


「ちっ…しつこい、ぜっと!」

「ぅあっ!」

「おーい、あんま傷つけんなって。楽しみが減るだろー?」

「い、痛っ…」


…泣いてる?…シャーリーさんが、泣いてる…?

これで…これでいいのか、エリオ・モンディアル!?

泣いてるんだぞ!いつも明るくて、優しくて、今日だって僕の子供じみたワガママに付き合ってくれてるシャーリーさんが、泣いてるんだぞ!?

いいわけないだろ!いいわけないじゃないか!

迷うことなんてないじゃないか!僕が騎士を目指したのは何のためだ!?僕を助けてくれたフェイトさんのように!泣いてる誰かを助けられるためじゃなかったか!?

…だったら…だったら!僕が今、すべきことはっ!


「…ストラーダ…」

《Sonic move》


‘バシバシッ!’


「つぅ!?」

「痛ぇっ…え、お、女はっ!?」


2人が手を押さえて驚いてるけど、僕には知ったことじゃない。シャーリーさんも何がなんだか分からないような顔で、腕の中から僕を見ている。

…うん、やっぱり女の人って本当に軽いや…こんなにも、細くて、か弱い女性に…こいつらはっ!



「ガキ!てめぇ、何しやがった!?」

「…今は…少なくとも、今日という日だけは、この人は…僕のパートナーだ…!」

「エリオ、君…?」

「だから!だから今!この人は!僕が守らなきゃいけないんだ!僕の誓いのために!」


僕の思いに応えてくれるかのように、溢れた稲妻が空気を、地面を走る。目の前の2人の顔が真っ青になっていくけど…今更、それで!

今なら、ヤスフミの無茶な行動の理由が分かる。規則もルールも、きっと大切なんだ。守ってこそ、守られる場所があるから。

けど、それで納得できないことがある。それで守れないものが、確かにある。

だから、きっと今の僕にはこれしか出来ない。ルールの中から守れる強さは、今の僕には無いから。それでも、守りたい人がいるから!


「こ、こいつ…魔導師…!?」

「ちょ、ま、待てよ!俺たちが悪かったって、な!?」

「黙れ…」

「「ひっ!」」

「駄目だよ!エリオ君、それは!」

「う、おおおおおおおおおっ!」


一瞬だけブリッツアクションを使って、相手の懐へ潜り込む。以前、シグナム副隊長から教わった。力とは、速度と重さで決まるんだと。僕の重さなんてたかが知れてる!

けど、速さなら…自信があるっ!

‘ボゴゴンッ!’

鈍い音と同時に、男2人が吹き飛んだ。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




あの後、どこからともなく現れたギンガに、エリオ君は厳重注意を受けることになった。

ただ、厳重注意だけ。

どうやら、私が絡まれる様子を見ていたらしくて、エリオ君は局員として困っていた一般人を助けたという形になるのだとか。まあ、それでも魔法の使用とかで怒られたのは仕方ない…よね。

それで、そのエリオ君はというと…現在、私の前でものすごくブルーになってたり。


「エリオ君、そんなに落ち込んでるとせっかくの夜景が台無しだよ?」

「あ、すいません…」

「また謝ってるし…」


先ほどから、ずっとこんな調子。

折角の楽しいデートだったというのに、あの2人組のせいで最後にとんだ形で水をさされてしまった。後で、あの2人には個人的に社会的制裁を加えてくれる…!六課のメインオペレーターの実力を、思い知らせてあげよう…!


「…最近、ですね…」

「ん?」

「ヤスフミとフェイトさんの関係が進んで、ティアナさんやスバルさん、そして何よりキャロが…みんな、どんどん変わっていくのが分かるんです。」

「…あ〜、そうだね。なぎ君は、なんだかんだ言って周りに影響を与えてくれる子だから。」

「けど、僕は何も変わってないように思えて…以前より、キャロに怒られる回数も増えてきて…何だか、距離を感じちゃうんです…」


いや、むしろそれは距離が近づいたがために怒られてるんじゃないのかな…?最近のキャロはアルトアイゼンに似てきて、遠慮が無くなってきてるから…


「それで、よく女心が分からないって言われて…知ったら、僕も少しは変われるのかなって…」


…は?

ちょっと。ちょっと待って。今、何と言ったの、この子?女心?女心を知りたいって言った!?え、まさか今日のデートってそのため!?私に教えて欲しいことって、それ!?

うわあああああああああああああ!?は、恥ずかしい!恥ずかしすぎるよ、私!?え、昨日の夜に一生懸命に着ていく服を悩んで、滅多に見ないファッション雑誌とかルキノから借りてたんだけど!?いくつもの服を並べて、自室でうなってたんだけど!?

だ、駄目だ…自分が恥ずかしすぎる…!人生でも片手の指で数えるほどしかない、デートに、しかも年下の男の子相手に浮かれすぎた昨日の自分を引っぱたきたい!


「シャ、シャーリーさん!?顔が赤と青にくるくる変わってますよ!?」

「ぅえ!あ、うん、気にしないで!?大丈夫!ちょっと、色々と思い出しただけだから!?」

「は、はぁ…」

「えっと、それで、その…そ、そう!女心はちょっとぐらいは分かったのかな?」

「…はぁ…」


え、何でため息!?わ、私何かの地雷踏んじゃった!?ああっ!何だか、昨日からこんな小さな子にペース乱されっぱなしだよ、私!なぎ君のこと、もうからかえない!


「…今日。相手が悪いとはいえ、僕…一般人に魔法を使いました。」

「え?」

「僕じゃなくて、ヤスフミやシグナム副隊長だったら…いえ、スバルさんだったとしても、魔法なんて使わずに、シャーリーさんを助けられたんだろうなって…僕は…弱くて、局の規則を守って戦うこともできなかったし、結局ギンガさんにカバーしてもらって…」

「エリオ、君…」

「女心なんて、そんなこと言ってる場合なんかじゃなくて…ヤスフミみたいに背負う覚悟なんてのもなくて、けど弱いことに今まで気づかなくて…っ…シャーリーさんに、我侭聞いてもらったのに、あんな…ごめっ…な、さい…!」


…そうだよね。JS事件を解決して、もう一人前の魔導師にもなったけど。六課のみんなが思っていたほど、きっとエリオ君は成長してたわけじゃない。そんなことを気づかせないほど、この子は真っ直ぐなだけで。いつの間にか、‘一人前の人間’になったと錯覚させるぐらいに。

けど、私は───


「ねえ、エリオ君…ううん、エリオ。ちょっと聞いてくれる?」

「っ…は、い…?」

「私ね。さっき、エリオに助けてもらったとき、本当に嬉しかったよ。」

「でも、僕は───」

「いいから最後まで聞くこと。エリオは強いよ。そりゃ、なぎ君や隊長のみんなほど強くないかもしれないけど…けど、私を守ってくれるぐらいには、強いもの。」

「シャーリー、さん…」

「なぎ君は、最近随分とましになってきたけど…ねえ、エリオ。もっと強くなろうっていう気持ちを持つことは重要だと思うよ。けど、そのために弱い部分だけに目を向けないで。自分の強さと、自分が守ったものにも目を向けて。今、私がここでエリオと話せているのは…間違いなく、エリオが守ったものなんだよ。エリオの強さが、守ったものなんだよ。」


一人前じゃないのかもしれない。けど、エリオが弱いなんてことがあるはずがない。ただ、ほんの少しだけ、エリオの周りにいる人達がちょっと強いだけだ。魔導師としても、人間としても。

エリオの手をそっと握る。小さいのに、手のひらは訓練でごつごつしてて…けど、とても暖かくて、力強さを感じる男の子の手。

「ねえ、エリオ…自分を信じて。自分が守ったものを信じて。そして、色んなことを知っていこう?強さも、弱さも。守りたいものや、今のままじゃ守れないものも。私も、きっと色んなことを教えてあげられる。だから、色んなものを知ろうとする気持ちを…自分から閉ざそうとしちゃ駄目。」

「…っ、はい…はい…!」


涙を浮かべて、けどさっきまでの暗さが無くなった笑顔は正直男の子なんだなぁと…

はっ!よ、よく考えたらこの状況って結構…!場所は公園の展望台!時間が時間だけに人気も無い!夕日も差して綺麗!そして、私はエリオの手をきゅっと握り締めて見詰め合って…!

こ、こうして見るとエリオって容姿はかなり整ってるよね…将来性もあるし、なぎ君みたいに無茶もしないし。フラグを乱立してるわけでもないし。あ、何だかちょっと夕焼けのせいかエリオの顔が赤く…私も、ひょっとして───はっ!い、いけない!私、今何を考えたぁっ!?

い、いやでも…今日は色々と助けてもらったり、映画に連れて行ってもらったり、楽しかったのは事実なわけで…だから、うん…


「…ねえ、エリオ…少しだけ、目を閉じて?」

「は、はい。」

「そのまま、ね。」


純粋に私を信じて目を閉じるエリオが可愛いなと思いながら、今日のエリオを思い出せば…可愛いだけなくて、カッコいいところも多かった。男の子と男との間にいる、のかな。

だから、これぐらいは…いいよね…?

近づいてくるエリオの顔に、自分の心臓がどきどきするのを感じながら、私はゆっくりと瞳を閉じた。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



一瞬だけ、僕の頬に何か柔らかくて暖かくてちょっぴり湿った何かが触れたような気がした。

確認することは、出来なかった。

いや、目を閉じていたからというのもあるんだけど…その感触をふっとばすくらいの恐怖が僕の体を包んだから。思わず鳥肌が全身に立つぐらいの怖気が僕の体中を走ったから。


「シャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜リ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜……!」

「っっっっっっっ!?ふぇ、フェイト、さんっ!?」

「え、フェイトさん!?な、何でそんなに怒ってるんですか!?と言うか、ヤスフミとギンガさんまで!?」

「「…しゃ、シャーリー(さん)…」」

「いいいいいいいつからららっ!?いつから、みみみ見て!?」

「今、だよ…ちょうど、まさに今だよ…もう少しで、間に合ったのに、ねぇ…!」

「「っー!?」」


ど、どうして!?フェイトさんはどうしてそんなに怒ってるの!?僕がシャーリーさんとデートすることに、何か問題でもあったのかな!?あと、後ろで見ているヤスフミとギンガさんが顔を真っ赤にしてるのは、関係があるの!?


「間に合わなかった…私が、もう少し早ければ、間に合ったのかもしれないのに…!」

「お、落ちついでください、フェイトさん!これは…そう!お礼です!お礼なんです!」

「お礼…お礼で、そういうこと、しちゃうんだ…違うよね?駄目だよね?そういうのって、想い合ってる2人でするんだよ?普段は私とヤスフミをからかって、自分の時はお構いなしじゃ、最低じゃない。ねえ、間違ってる?私の言ってること、間違ってるかな?」


その台詞はなのはさんによる死亡フラグー!?

え、僕何をしたの!?いや、シャーリーさんに何をされた、僕!?どうしてフェイトさんに頭冷やされることになってるんだああああああああああああ!?


「シャーリー、少し───」

「頭冷やされるんですか、私!?」

「───頭、ピ○チューしようか。」

「何故、世界一有名な電気ねずみ───はっ!?まさか!?」


フェイトさんの手元にバチバチ鳴ってる魔方陣!?や、やばい!あれはやばい!ヤスフミとギンガさんはフリーズから立ち直ってないから当てに出来ない!どうする!?どうする、エリオ・モンディアル!?

ああっ!もう時間がない!とりあえず、こうなったのはシャーリーさんにデートを申し込んだ僕の責任だ!つまり、あれは僕が受けるべきもので、シャーリーさんだけは守らなきゃ!


「ストラーダ!僕のバリアジャケットのマントをシャーリーさんに!」

《All right》

「エリオ君!?」

「はあああああああああああああああっ!」


電気は互いに引き合う性質があったはず!今の防御力が薄い状態で電撃を受けたらどうなるか分からないけど…が、頑張れ、僕!フェイトさんがどうしてこうなったのか分からないけど、この一撃は頑張って防げ!


「「サンダアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」」

「フォオオオオオオオオオオオオオルッ!」

「レイイイイイイイイイイイイイイジッ!」


フェイトさんの魔方陣から放たれた雷は、狙い通りの僕の雷をまとったストラーダへと向かってきて────

────目の前が、真っ白になった。

あ、そう言えば…シャーリーさんに、まだ伝えてないことが…あったなぁ…



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「シャーリーさん。」

「ん?やはははは、エリオもすっかり元気だね。」

「ええ。あ、お見舞いありがとうございました。」

「気にしない気にしない。と言うか、半分ぐらい私の責任だしね。」


そう言ってニコニコと笑うシャーリーさん。

あの後、フェイトさんの魔法で気絶した僕は六課の医務室へと運ばれていった。シャマル先生いわく『この年の男の子って、何か自傷願望でもあるのかしら?』とのこと。いや、そんなものはないですよ…

けど、自分が傷ついても守りたいものがあるんだと。そういうことなんだろう。ヤスフミも、僕も。

そして、自分が傷つくと悲しむ人がいるから、僕は強くなっていこう。色んなものを学びながら。

とりあえず、今は…


「シャーリーさん。あの時、言ってなかったことがあるんです。」

「へ?」

「ありがとうございました。デートに付き合ってくれて。僕の悩みに、一つのヒントをくれて。本当に、ありがとうございました。」

「…うん。どういたしまして。」


頬をほんのりと赤く染めたシャーリーさんは、とても綺麗だなと、なんとなく思った。

考えてみると、シャーリーさんって本当に才色兼備って言葉が似合う人なんだなぁ…フェイトさんは、その、最近…ヤスフミと関わるようになってから、どうも私生活が…

…今度、ヤスフミと話し合った方がいいのかな…?


「それじゃ、エリオ。一緒に朝ごはんでもどう?」

「はい。…あ、シャーリーさん。」

「ん?今度はどんな質問かな?」

「いえ、質問じゃなくって…その、またいつか…僕とデートして、色んなこと、教えてくれますか?」

「へ!?」

「女心もそうなんですけど、シャーリーさんに…もっと、色々なことを教えて欲しいなって。」

「あ、あー…う、うん。まあ、いいよ…約束したしね。」

「ありが──「なああああああああああああああああああああああああ!?」──…え?」


突如として大声が上がって、振り向いてみると…何故かロングアーチの人達がいた。


「な、何でみんなここに!?」

「い、いや、シャーリーが遅いねって話をして、みんなで呼びに来たんだけど…」

「エリオに、シャーリーが…そんな…色んなことを教えちゃう関係なんてっ!アルト、私どうすればいいの!?」

「ルキノ、落ち着いて!落ち着かなきゃ!今こそ、私達の出番だよ!シャーリーの好みを、ちゃんと厚生させてあげよう!?」

「幼馴染だったのに、今まで気づかなかったなんて…僕は、副官失格だ…!」

「いや、副官関係あんのか、それ?それにしても、エリオ。お前もやる男だったんだなぁ?どれ、今までに教えてもらったことを言ってみろよ。な?」

「何を言ってるんですか、ヴァイス陸曹!?」

「と言うか、違ああああああああああああああああう!私とエリオは、まだそんな関係じゃなああああああああああああい!」

「「「「まだ!?」」」」

「うわあああああああああ!も、もう、みんな黙れえええええええええええ!」


どこから取り出したのか、デバイス調整用の道具を振り回しながらヴァイス陸曹達を追いかけていったシャーリーさんを、僕は追いかける。一応、僕の不用意な発言が原因だろうと思うから。

それにしても、いつもみたいに冗談めかして誤魔化せばいいのに、シャーリーさんらしくないなぁ?

とりあえず、女心を理解するには僕にはまだまだ学ぶべきことが多そうだ。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



○月XX日 

いつものメンテナンスのとき、先日に幼き我が主とデートをしたデバイスマスター殿がぶつぶつと独り言をつぶやいていた。

『二桁はぎりぎり離れてないんだよね』『いや、倫理的に問題があるし』『でもまたデートするって言ったから』『5年もすれば大丈夫』『フェイトさんに頭ピ○チューされる』

などなど。

しかし、彼女は気づいていないのだろうか?

そうやっている彼女の顔は、真っ赤でありながらもどこか嬉しそうだということに。

とりあえず、マスターへの報告事項に追加。

『メガネっ娘にフラグが立ちました』

……む?この言い回しですか?ええ、アルトアイゼンから教わったものです。なにか問題でも?


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あきゅろす。
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