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頂き物の小説
第8話「現在と過去」



「それでは会議を...もぐ...始めます...もぐ」

「まずは...もぐ...この世界の事...もぐ...だな」

「大方...もぐ...情報は掴んでるん...もぐ...だろ。あ、お代わり下さい」

『お前らは食べながらやろうとするなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』


天丼を食べながら会議を始めようとする父さん、ジェイス、ダーグには当然全員から突っ込みが襲いかかる。


「というかダーグ!お前は当たり前の様にお代わりを要求するな!」


そしてチビなダーグは恭文の飛び蹴りで蹴っ飛ばされ、壁にめり込んだ。




無数の勇者が集いし時、1つの真実が明かされる。


異界を切り裂け、エースの翼。


とある家族の異世界冒険記:コラボ編2

Another Century's Episode R編

第8話「現在と過去」




現在時刻、ヒトハチサンマル...18時30分。俺達はオウミの艦内映画館兼ブリーフィングルームで夕ご飯を取る事になった。

時間に関してはこの星の時間についてのデータを入手してそれを反映する事にした。


そして今回の夕ご飯は豚肉を天ぷらにして炊きたてのご飯の上に3枚乗せてそこに母さん特製の生姜ダレで味付け、そして生姜を乗せた天丼である。お好みで半熟玉子付き。俺は付けない。

それだけではなくワカメ、豆腐、油揚げをふんだんに具材として使用した味噌汁と白菜や大根、きゅうりの浅漬けが付いている。


豚肉はミルフィーユの様に普通の肉といい肉を薄くして重ねた物を巻いてそれを切る。それを薄く叩いて伸ばした物を使用している。

これ、うちだと結構使われててな。母さんが趣味でやり始めた学生向け弁当屋で大好評なんだよ。母さんの料理テクとこういう工夫で生み出される極上弁当は高くても700円いかないし。

その味を解説すると...豚天はサクサクの衣の中にジューシーで肉汁が溢れてくる豚肉。そこに生姜ベースのタレの風味が肉の味をより引き立ててくれる。ホカホカのご飯も一緒に食べるとなお良し。

味噌汁は...何か凄くホッとする味。自分が日本人だと自覚出来る瞬間だな。

浅漬けはポリポリ齧ると浅漬け独特のサッパリした味わいが口の中に広がる。やっぱり日本人だなぁ、俺...。


そして食いながら会議しようとしてぶっ飛ばされたわけだ。


「やすっち!俺は感謝しているんだ!この天丼に!これを作った人達に!そしてこの天丼と巡り合わせてくれた食の神様に!!」

『知るかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』


母さんからおかわりを貰ったチビなダーグに全員が突っ込む。

そしてチビなダーグは全員にぶっ飛ばされる。哀れだとは思っていない。


「待て!食事は神聖なる時間だ!それを荒らすのは神が許そうと私が許さん!」

『何か出て来た!?』


そこに乱入するのは龍也...さんだった。此奴...料理に対する拘りが半端ない...。


「龍也様は食事に関しては厳しいのです」

「貴様ら...王に逆らうとは...斬られる覚悟はあるな!?」

『何でそうなるんだよ!?』


アイギナが龍也...さんの補足をして何故か黒く濁った目でシャルナが剣を向けて来る。駄目だ、龍也...さんの守護騎士は役に立たん!


「まあヤンデレやからなぁ...」

「いや、絶対はやて君が言えた義理じゃn」


そんな事を口にしたジェイルにダガーの雨が降り注ぐ。

...八神はやて、お前もか。


「黙ってろやマダマ」

「この程度で私が死ぬわけ」

「ないもんなぁ」


何故か当たり前の様に蘇ったジェイルだけど目の前には手には圧縮された魔力が宿っていた。


「オメガ・バースト!」


...しゃーない、止めるか。ここで暴れられるのも困るからな。

俺はユニコーンのシールドを3基召喚、サイコフレームが緑に輝いているそれをジェイルの前に配置してIフィールドとサイコフィールドの複合バリアを形成、八神はやての熱を伴った魔力波を打ち消す。


「これ以上暴れるな。さもないと俺はお前を潰すしかない」

「黙れクソガキ。叩き潰されたいんか?」


俺の言葉に苛立ち半分で返してくるヤンデレ。

あのヤンデレアイドルもそうだったが目のハイライトが消し飛んでやがる...。ヤンデレってやっぱり皆こうなのか...。


「ヤンデレに負ける程やわになった覚えはない!」


俺もユニコーンガンダムに変身して即座にNT-Dを起動、デストロイモードに変身する。

当然サイコフレームの発光色は緑。シールドファンネルあるし。


「ユニコーン!?」

「またそれか...」


ユニコーンのパイロットのリトには驚かれてアラタに飽きられた。

実は要塞攻略戦まで俺達は交流を兼ねてちょくちょく模擬戦をしていた。そこで俺は結構ユニコーン使っていた。あれはサイコフィールドの理不尽さを存分に発揮した模擬戦だったよなぁ...。

他に使ったのだと家でオリジナルで設計されたドラゴニックガオガイガーやナノスキン装甲非搭載のフェニックスガンダムとかだな。

ドラゴニックガオガイガーは機会があったらまた説明しようか。


「お前が暴れてどうする。あんたもそこまでにしてくれ」

「そうだ、はやて。気持ちは分かるが迷惑をかけるな」


臨戦体制の俺達を止めたのは父さんと龍也...さんだった。龍也...さん、途端にシリアスキャラになるんじゃないよ...。

...駄目だ、言い慣れん。これじゃあ何処かのゆとりアイドルと同じじゃねぇか...。


「厨二なのは機体だけじゃなかったか」

「これは紛れもない厨二だろ」


...お前らいつかぶっ潰す...!



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「...何か凄く見覚えがある人がいるんだけど...」

《ですね。あれ、最後やったの何時でしたっけ?》

《ジガンは知らないのー》

《私も...ですね》


じいちゃん...蒼凪恭文が頭を抱えていた。その姿に人形形態なアルトアイゼンは同意、同じく人形形態なジガンスクードとヴァイスリッターは首を傾げた。ついでに今回は見た目で分かる様に同じ名前のスパロボ機体。


じいちゃん時代か...。多分ジガン達がいない頃となるとかなり古いな。

俺にはさっぱりだがな!


《自慢する事じゃないですよ》

「...?」

「トリエ、お前が気にする必要はない」


終夜はこっちの話を聞いて可愛らしく首を傾げるトリエとやらの頭を撫でながら説明する事にした様でこっちに向き直る。


「お前らの考える通りだ。こっちの格納庫にはセンチュリオ・トライアあるから後で見たけりゃ見ろ」

「マジかい...」


センチュリオ...トライア?また聞いた事が無い機体だな。どんな奴なんだ?一体...。

てかちょっと待て。重要なのはここじゃない。


「待て。トリエって何もんなんだ?」


俺のその言葉に二人は目を合わせて少し経った。これは...あれか?ニュータイプ的な思念のやり取りなのか?

そして終夜がこっちに向き直る。


「ニュータイプとコーディネイターとガンダムファイターの遺伝子を掛け合わせたクローンをDG細胞を基にして作成されたナノマシンで強化した人工生命体。その4番目の試作個体」

「...は?」

「いや、そうなんだって」


え?何そのチート設定。てかどこの転生者ネタだよ。


「残念ながらそれが僕の知っている設定なんだよねぇ」

「てか今確認とったから確定だ」


終夜の言葉にトリエはコクコク頷く。マジかよ...。


「んでこいつの前の試験体の中に俺に似た奴がいたらしい。その結果、第一声がお兄ちゃん?だったからな。そしてうちで引き取ったわけ」


成る程な。理屈は通ってる。でもご都合だな、おい。


「それは...まぁあれだ。うちの特権?」

「訳分かんねぇよ!」

「そういやヒロ」

「何でしょうか?」


っておい!無視するな!何か悲しくなるだろ!仲間外れな感じで!


「鳴神ソラとかソロって何もんだ?」

「これもん」


終夜の問いにヴィヴィオが返答した。てかこれもんかよ...。

ヴィヴィオの声にオーディンは目を光らせて再び壁に投影する。


『撃龍変身!!』

『デュワ!!』


そこには金髪でギザギザな髪をした奴が手に持った剣についているドラゴンの口の中に鍵を差し込み、その相方が青、赤、白のカラーリングでレンズ部がオレンジ色なゴーグル型のアイテムを取り出して目に掛けた。

これは分かる。あれだ...てか何でだよ!?


「...どゆことなの?」

「てかこいつ、キングダムハーツのソラじゃねぇか!」

「本当ですか!?」


爺ちゃんも俺も突っ込む。そう来やがったか...。


《人々の笑顔を守る為!リュウケンドーは現れん!魔弾剣士リュウケンドー!ライジン!》

《ゼロ!ウルトラマンゼロ!セブンの息子だ!》


そしてソラは魔弾剣士リュウケンドー、ソロはウルトラマンゼロに...もしかして他のウルトラ系ライダーも皆ウルトラマンになるのか!?


「もうどうなってんだよ...」

「何言ってんのさ。それでも僕の孫?」

「やっぱり...ああ言うしかないよなぁ...」


俺は一回爺ちゃんと呼吸を合わせてそして言う。俺達の世界を指し示す言葉を...。


「「カオスだ!」」

「...?」

「お前はまだ分からなくていいんだよ〜」


てかこいつ、完全な兄馬鹿じゃねぇか。

やたらと厨二病な癖に...。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


あれから賑やかな夕食は終わり皿を片付けて今度はオウミの中央作戦室に移動した。

想像以上に広く、俺たち全員が入ってもまだ余裕があった。


「んじゃ分かった事纏めたから取り敢えず言っておく」


そう言って誠哉は前方の大型モニターにデータを映し出す。


「まずこの星の名前は惑星エリア、地球型惑星に分類される」

「惑星...エリア?」

「ルビー知ってるの?」


地球型惑星か...。確かに俺や飛燕は兎も角アリア達も普通に呼吸してたからそうなのだろうと思ってたんだよなぁ...。

もしアリアが地球型惑星と知らずにヘルメットを外したら...ヤバイ、ブルっときた。


「はい。アポロさん達から話を聞いた事がありまして...」


ん?待て、アポロだと?

アポロ、エリア...何かどっかで聞いた事あるぞ、これ。


「アグレッサーっていう敵から逃げて来た奴らがこの星に移住、住んでいたらしいんだがアグレッサー防衛用のアンドロイドの大反乱で全滅したらしい」

「つまりそのアンドロイドがこの星を支配しているんやな」


...間違いない。あれだ、あのゲームだ。

やすっち達も何かを察した様な顔だ。恐らく考えている事は俺と同じ筈だ。


「んであの雑魚どもはイコンと呼称されていて数による集団戦法が大好きな無人機。
もう分かるよな?」

『...ACE:Rかよ!?』


だよなぁ...あのAnother Century's Episodeシリーズのあれだよなぁ...。

俺まだ途中までしかやってないんだよ。あの軌道エレベーターの所まで。


「知ってるんですか?」

「いや、俺達の世界にあったゲーム」

「...マジで言ってるの?それ...」


ヒナギクに突っ込まれるが事実なんだよなぁ...。証明手段ないけど。


「これがゲーム中不明だったアグレッサーのデータ...」

『BETAかい!』


次に画面が切り替わり物量に身を任せて進撃するナマモノが映った。

てか何でBETAなんだよ!何か本家以上にぶっ飛んでないか!?


「となると私達はACE:Rとやらのストーリーの裏で戦っているわけになるな」

「Jud.だが全く知らない世界じゃないだけましだろ。イコンがだいぶ変わってるしBETAいるけどな」

「逆に言えばそれだけになる。これかなりでかいアドバンテージだよ」


やすっちの言う通りだ。BETAがいたりイコンが変わっているけど流石に情勢や大筋は変わってないだろ。裏にいるのが奴という点も恐らくは...な。

となると懸念するべきは...


「俺達の世界の敵、だよな」

「ああ。少なくとも私達の敵、ネクロがいる」

「一体ネクロって何なんだ?」


龍也の言葉にシンが質問する。俺も含めて他の奴らも聞きたそうな感じだった。


「ネクロは死んだ魔道師の魂や。遺体を変化させ誕生する悪性の魔道生物だ。生者を襲い生命力やリンカーコアを奪い自らの糧にする。Lv1〜4までの4段階に分かれている」

「つまりゾンビか...」


ゾンビ...火野のやすっちと戦ったあの不死鳥なフォン・レイメイ軍団とでも言えばいいのか?


「さらに亜種としてデクスと言う種類が存在します。デクスとはネクロより遥かに凶暴で生命力が高いのです。でもパワーと引き換えにあまり理性は高くありませんけどね」


シャルナが龍也の解説にさらに付け加える。

つまりデクスとやらは戦闘特化のタイプか。獣としか想像出来んな。野生の本能のみで戦うって感じで。


「彼らはネクロマンシーで強制的に蘇生され、本人の意思を剥奪された上で破壊の限りを尽くす悲しき亡者達。倒す事が彼らの救済になる。完全にネクロ化するともう元には戻れないからな」

「傲慢だな。殺しを正当化している様にしか聞こえないが?」


その言葉に噛み付いたのは戦闘機パイロットの上山雄介だった。双子の雄大や仲間である終夜も同じ感じだ。

あ、付き人達が殺気発してる。こいつらどんだけ好いてんだよ...。異常過ぎやしないか?


「まあ否定出来んな。続けるぞ?
奴らは破壊と殺戮を好む。全てを壊し殺すこと、それが奴らの存在理由と言っていい。私達も長年戦い続けているが一向に数が減らない。むしろ増えていると言って良いだろう」

「つまり倒しても倒しても湧いてくると」

《全くどこのゾンビゲーですか。完全にホラーですよ、それ》


龍也の説明にやすっちとアルトアイゼンが返す。

ゾンビゲーか...。確かにアルトアイゼンの言う通りだよなぁ。屑ヤミーが大量に湧いて出て来たのとどっちが怖いんだか...。


「ネクロの特性としては極めて高い再生能力と一定量魔力や生命力を吸収するとその姿を変える事にある。Lv1は黒い亡霊型、Lv2はボロボロの甲冑姿と決まっている。この程度のLvなら自我も薄いし知能も対して高くない。それに特殊な事をしてこないので比較的に楽に戦える。
ただし、影に潜ることができるからその一点は要注意だな」


Lv1、2はある意味ザコらしいな。知能が対して高くないところとか。

つーか影潜りって今度は忍者かい。


「そしてLv3。Lv4は上位ランクに位置するネクロだ。一概にどういう姿をしているとは言えんのだが獣や龍と言った異形型か獣人と言った姿を持つのがLv3だ。このLvになるとなんらかの特殊能力を身に付けている可能性が高い。それに知性と自我も兼ね備えるのでかなり厄介だ」


次は仮面ライダーでいう敵の怪人か。異能持ちってあたりが何とも厄介だな。それぞれに対策しないといけないのは慣れてはいるが...面倒なんだよな、あれ。


「だがこの世界だと...恐らくは何かの機体に取り付いているだろうな」

「魔力の補充が出来ないから...ですね」

「その通りだ。だから上位の機体に取り付いているのがLv3以降と考えていいだろう。
それとネクロには金属にネクロの細胞を植え付けネクロ化させる方法や生きている人間にネクロの細胞を植え付けてネクロ化させる方法もある」

「酷い...!」


全員がその光景を想像して顔を歪ませる。特に子供組がヤバイ。凄く怒りのオーラが立ち込めてるんだけど!?

にしても金属のネクロ化か...多分こっちがこの世界だとメインになるな。


「恐らくな。そして最後にLv4だが...こいつらは正真正銘の化け物だ。姿は人に近いか人からかけ離れた者かの2つで、その戦闘力は個体ごとに差はあるがLv3の2倍から6倍だと思えば良い」

「...それはまたとんでもない強敵だな」


つまりあれか。ライダーやスーパー戦隊でいうところの幹部ポジか。確かに厄介だよなぁ、そういうの。


「でも物理的に倒せない訳じゃないでしょ?例えばコアがあるとか」

「ほぅ...。それに気づくとはな。余程そういうのに経験があると見た」

「まあ色々チートとやり合った身だからね。」


まあやすっちはチート相手は慣れてるよな。フォン・レイメイ然り巨大Xキャラ然り。それに怪人とかともかなり戦ってるから対処も手慣れてる。てか怪人俺だった。

他の世界のやすっちもそれぞれチート相手に滅茶苦茶戦っているし...やすっちはどこの世界でもそういうのに巡り合う運命でもあるのか?

その時、リーエが躊躇いつつも口を開いた。


「それと...半ネクロです」

「リーエ!言わなくていい!」


リーエの言葉を龍也は止めようとする。言わなくていいだと?そこまで曰く付きなのか?


「...私です。半ネクロはネクロの因子との適合率が高く、それ故に人間とネクロの中間点である存在。そしてネクロの本来の姿。
私は完全にネクロ化する前に龍也様に浄化してもらいましたが適正故に半ネクロになりました」


あー...そういうことか。つまり龍也はリーエを敵視する可能性を考えて止めさせようとしたわけか。

待てよ。だとするともしかしてスザクはデクスって奴なのか?


「はい。スザクは比較的大人しいタイプにあたるデクスです」

「キュー!」


いや、そんな右の翼を掲げられても...存在感のアピールか?

そう思っていたらスザクが翼から羽毛をこっちに向けて放った。


「ぬぉ!?」


それは俺の足元に着地、同時に爆発する。別に痛い訳じゃないが内心めっちゃビビった。いや、マジで。


「スザク!やめなさい!」

「いや、今のはダーグの自爆だろ。つーか結構ビビりなのか?」


リーエがそれを見てスザクを窘めるが終夜がそれを止める。

地の文を当たり前の様に読みやがって...!何だそのチート!これが本物のニュータイプとでも言うのか!?


「いや。俺ニュータイプだし」


...マジかよ。


「...それがお前の中に充分関係するのか?」

「いえ、一応凶暴性等は制御出来ていますが...」


そんな俺達を放っておいて相変わらずのブロント語で聞くブロント。てか普通に話せるリーエは凄いと思う。

初対面に近い状態だろ?普通は戸惑うだろ。


「じゃあいいじゃん」

「...え?」


それは兎も角、そんなリーエにまず声を掛けたのはあむっちだった。

その声に俯いていたリーエが顔を上げる。


「そうですよ。別に人間じゃないからどうこうは言いませんよ」

「あくまでもネクロに近づいただけだよね?
別に凶暴化して襲ってくるわけじゃないならいいんじゃない?」


ヒロと飛鳥もあむっちの言葉に続く。

彼ら子供組の腕を組んでいるあむっちが最後に言い放った。...いや、こう言うのが一番だろ。


「そんな些細な事で敵視するつもりないし」

「あむさん...」


ううむ...流石はこの中では口撃最強だな。リーエを黙らせやがった...。


「てか待てダーグ!あんたあたしの事そんな風に思ってたわけ!?」

「うわぁ...」

「酷いですぅ」

「あむちゃんに謝れー!」


あれー!?気づいたら責められてる!?

周りも白々しい目で見てくるのかよ!?やすっちは目を逸らしやがったぞ!それも口元を微妙に歪めながらな!


「いや、自爆でしょうが」


うぐぉァ...我が娘の言葉が胸に突き刺さる...。


「そういえば私達はいわば原作介入系な訳だな」

「みたいね。勿論ここでもダイヤ教を布教するわよ」

「シオン教もです」

「お前ら、んな事考えてたのかよ!」


俺がやられている間もしゅごキャラ勢は相変わらずだな、おい。キャラが濃いというかなんというか...。


「これで一回解散な。
それとヴィヴィオ達は残れ」


俺達は席を立ってそれぞれに行動しようとした。俺は取り敢えず何か軽くつまめる物を貰いに行こうとした。

だがヴィヴィオ達に残る様に言った終夜に全員の動きが止まる。


「え?まさか」

「説明してやるよ、俺達の世界と戦争をな」


ヴィヴィオは何か思い当たる節があるらしく終夜がそれに答える。

てか待て。戦争...だと?



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


私達はあの話を聞いた後もここに残っています。理由は彼らの事を聞く為です。私は聞くつもりは然程ないのですがダーグ様が聞くと言っているので。


「何であんたらまでいるの?」

「いや、折角だし。後あれだけの戦力を保持する理由が分からない」

「あー...納得する理由が欲しいと」

「というよりはあそこまでの戦力を必要とする状況が私には想像つかないな。そこまで悲惨なのか?」


恭文様と龍也様の疑問は最も。

実質永久機関で膨大なエネルギーを生み出す波動エンジン搭載、61cm陽電子衝撃砲を主砲として四連装6基24門を搭載したオウミ、戦闘機としては制圧能力を初めとした様々な性能で破格の性能を有したADF-02、VFとして劇中で圧倒的な力を発揮したYF-29を凌駕しかねない性能を秘めたYF-35、そして単機でスーパーロボットに匹敵するレベルと思われる重武装、高火力、機動性、防御力を発揮したカタルシスガンダム。

これだけの戦力を保持する理由と言われると幾つか想像がつきます。

例えばかなり大規模な戦争状態やもしくはそのくらいが彼らの世界の常識なのか...。


「確かに悲惨ではある。戦争続きでこっちに飛ばされる直前まで黒幕とドンパチしてたからな。
しかし俺達の戦力は実質壊滅状態だ」

「航空戦力では無人のVFを本艦は44機、さらに随伴艦18隻とそっちに積まれていた合計128機が全滅したからな」


...確かに壊滅ですね。彼らの手元に残っているのがエース達で圧倒的な性能を持っているとはいえ戦艦1、戦闘機1、VF1、MS1。それに偵察機といったところでしょうか。

軍隊では40%で壊滅と聞きますが幾ら無人とはいえ無視出来るレベルを遥かに超えていますね。


「黒幕?」

「...知ってる奴もいるかもしれんが一応言っておこう。財団Xだ」

『ッ!?』


その言葉に恭文様やダーグ様を初めとしたこの中の半分近くが思わず立ち上がった。


《財団X...ですか》

《よりにもよって》


財団X...いわば平成版のショッカー。表向きは科学研究財団の看板を掲げており、世間での知名度もあるが裏では強力な兵士を手にするため様々な組織・個人に援助を行う闇の組織、死の商人である。
援助の見返りに協力者からその研究成果を吸い上げており、彼ら自身の戦力もかなりのものでガイアメモリやアストロスイッチで怪人になっている者も多数いる。

財団Xと...なら納得ではありますね。彼らの戦力に対応して滅ぼすだけの戦力としては寧ろこれ位はないといけないと私は思っていますし。

そして財団Xを滅ぼした直後にこの世界に来た、そういう事ですか...。


「まあそれはいいか。
まず俺達の世界はエースコンバット世界ベースになる」

「待った。何でエースコンバット世界出身なのにエースコンバット分かるのさ」


終夜様の言葉に恭文様が即座に突っ込む。エースコンバット...ナムコの3Dドッグファイトゲームでしたか。

確かにゲームの世界のキャラはそのゲームについては知るはずもないはずです。スーパー戦隊や仮面ライダーの皆さんが自分達の物語を知らない様に。


「それはだな...。転生者諸君手を挙げなさーい」

「え?オーディンは何も...」


終夜様のその言葉に手を上げたのは達哉様、飛鳥様、憐様、そして誠哉様でした。本当にあるんですか、神様転生...。


「ええ!?オーディンは何も!?」

「世界の違う故だろ。成り立ちが違うんじゃないか?」

「そう...なのかなぁ...?」


ヴィヴィオ様はその言葉にうーんと唸りながらオーディンと共に首を捻っている。


「続けるぞ。取り敢えず知っていたのは転生者である父さんの伝手。
んでその世界に存在するユージア大陸、その北東にある島国ノルトランド...別名日本の一都市、学園都市に住んでいた」

「学園都市って...まさか...あれか?」


学園都市...とある魔術の禁書目録でしょうか。

確か様々な能力を持った超能力者がいて...まさかさっきの変身は...。


「その通りだ。つまり俺は超能力者ってわけだ。ついでにレベル5の第3位。俺の能力は言わずとも分かるだろ」

「変身能力...ですか」


ガンダムへの変身能力。さらにサイコフレームが緑色に発光していた事と彼の言葉から彼は間違いなくニュータイプ。

能力がどの範囲までなのか分かりませんがレベル5は一人で軍隊を相手に戦える位の筈。つまりそれくらい強力な力を持っている。


「まあ大体あっているがそこに制限ありの召喚も含まれている。
んで優は第7位。能力は...まあ頭がヴェーダ?」

《ヴェーダだと?どういうことなのか説明して欲しいものだな》


終夜様の言葉に問い詰めたのはホログラムなティエリア様。ヴェーダは00に出てきた量子演算コンピューター。その名が出てくるのは予想外でしょうね。


「終夜さん何言ってるんですか。完全演算(パーフェクトオペレーション)、つまり演算チートです」

「頭の中の演算能力がそこらのスパコンの数十倍とでも言えばいいか?
取り敢えず刹那さん、クアンタムバースト使って対話する時はオウミとリンクを張って下さい。ELSの様な生命体相手だとまた倒れますよ?」

「...どこまでも知られているのがあれだが分かった。可能な限りリンクを張る」


憲一様の言葉に刹那様が少々難しそうに見える顔をしていますが必要な事でしょう。私達には劇中の様な再生治療が施せるか怪しいですし。


「んでこいつらがサイファーとメビウス1。まあエースコンバットの主人公だ」

「...人の事をペラペラ喋るな」

「マジかよ...」


またエースコンバットですか...。しかも有名なサイファー、ガルム1とメビウス1と来ました。


ガルム1、サイファー。エースコンバットZEROのプレイヤーで主翼と垂直尾翼が青く染まったF-15Cに搭乗、その名前はヒンドゥー語で0を意味している。

ベルカによって自国領域のほとんどを占領されたウスティオが招集した外国人傭兵パイロットの1人でウスティオ空軍第6航空師団第66飛行隊ガルム隊隊長として片羽の妖精ことピクシーと共にベルカ戦争に参加する。

その圧倒的な実力でウスティオを解放、さらに超高層レーザー兵器エクスキャリバーを陥落せしめてエリアB7Rでエース部隊を含めた多数の敵機を撃墜、それから畏怖と尊敬を込めて円卓の鬼神と呼ばれた。

ベルカ戦争終結後にはクーデターを起こした国境無き世界との戦いでは重巡航空中管制機XB-Oを撃墜して大量報復兵器V2を格納しているクーデター軍本拠地、アヴァロンダム要塞を撃滅、直後に現れた元僚機のピクシー駆る新型機ADFX-02とV2大気圏再突入阻止の為に交戦、これを撃破した。


そしてメビウス1。エースコンバット04のプレイヤーでISAF空軍第118戦術航空隊メビウスの隊長。水色に近い銀色の迷彩色のF-22に搭乗している。

無敵艦隊エイギル艦隊を沈め、エルジア軍の大陸東部主要防衛線タンゴ線の拠点であるイスタス要塞を落とし、120cm対地対空両用磁気火薬複合加速方式半自動固定砲ストーンヘンジを破壊、そして巨大要塞メガリスを内部から破壊するなど最終的にはISAF空軍1個飛行隊...12機から16機分に相当する戦闘能力を有すると評価され自軍からは英雄、敵軍からは死神として恐れられていた。

後に自由エルジアを名乗る残党軍殲滅の為に単機での特殊討伐作戦オペレーション・カティーナが発動。その要として自由エルジアを壊滅に陥れた。


...どちらも化け物じゃないですか。これが彼らの世界のトップエースですか。

でもエースコンバット世界という事は彼ら以外にもトップエースは沢山いる筈。エースコンバット5のプレイヤー部隊、ウォードックもといラーズグリーズにエースコンバット3Dのスカーフェイス1。そして敵として登場する数多くのエース部隊。


「下手すると俺達が今まで戦ってきたエース部隊が出てくるかもしれん。
その時は俺達が相手する」

「でも2機だけだろ?終夜を加えても3機。対抗出来るのか?」

「寧ろお前らが対峙したら機体に慣れていてかつ戦場慣れしていないと即座に返り討ち確定だ。
それに奴らの相手はやり慣れている」


一夏様の問いにメビウス1、雄大様が返す。

この中で戦場慣れしていて機体に慣れているパイロット...ヒロ様達とルビー様達、刹那様にアマタ様達ですか。

これはしょうがないですね。素人がエースに挑んでも返り討ちです。それにロボットだと空をより速く強く飛ぶ戦闘機相手は不利、やはり彼らに任せるのが一番でしょう。


「...致し方あるまい。我らでは対抗出来ないのだろう?」

「申し訳ないがな。だが事実だ。他に質問はあるか?なお戦争の歴史はパスだ。説明に時間がかかり過ぎる。後で端末渡すからそれで見てくれ」


...こちらの質問したい事を封じられましたか。そのせいか凄く恭文様がぐぬぬしてますよ。


「一つ、質問いい?サイファー、メビウス1」

「その言い方か...何だ?」


憐様は彼らをTACネームで呼ぶ事にしたらしいですね。名前を覚えるより早いからでしょうか。本人達は微妙に顔をしかめていますが。


「...アサルト3はどこ?」

『ッ!?』


憐様の質問に彼らは凍り付いた。それも目に見えるレベルで。

アサルト...3?つまり彼らの3番機ですか?



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


私にはどうしても引っかかる事がある。

それはあのアサルト隊のエンブレム。あれは三人の騎士が剣を重ねあっていたけど今のアサルト隊は2機編成。


じゃあその残り1機はどこ?まさか終夜?


「...アサルト3、タリズマン」

「タリズマンって...」

「ああ、ガルーダ1のタリズマンだ」


ガルーダ1、タリズマン。

エースコンバット6でのプレイヤーでエメリア共和国空軍東部防空軍第8航空団第28飛行隊通称ガルーダ隊の1番機。

エメリア・エストバキア戦争開戦前の経歴には不明な点が多い。
2013年に東方防空軍団に異動となり、首都グレースメリア防空の任に就いている。
通称ガルーダ隊の隊長として、開戦初日にエストバキア空軍と交戦。
ケセド島での戦いで頭角を現した後、シルワート攻防戦・アイガイオン撃墜など圧倒的不利の中で数々の戦果を重ねた。
そのため敵味方双方に名声が響き渡り、エストバキアによってガルーダ隊抹殺のための特殊作戦が実施されるほどであった。
一時的に飛行禁止処分を受け、直後に戦列に復帰するなど謎の多い軍歴であるが、戦争の趨勢を決する全ての戦場での中核的戦力であったことに間違いはない。
グレースメリア解放、シャンデリア撃破など、終戦に至るまでの数多くの困難な任務を成功させ、エメリア共和国解放の英雄となった、というのがアサルトレコードでのガルーダ1。

パッケージではF-15E ストライクイーグルを駆っており二次創作では大抵F-15Eに搭乗している。パッケージ機体だし。


「あいつの機体はF-15Eじゃない。F-15SE、サイレントイーグルだ」

「サイレントイーグル?」


サイファーの言葉にヒロが聞き返す。

まさかのサイレントイーグルとは...。3Dではお世話になりました。


「確かF-15Eを前方に対してのみステルス仕様にした奴だっけか」

「ああ。それをあいつは重武装型に改修した機体に乗って数々の戦果を上げてきた。
その後はVFA-44...CFA-44とVF-30を合わせた機体に搭乗してアサルト3として活動してきた」


CFA-44ってエスコン6で敵対国だったエストバキアの最新鋭機体じゃない。大丈夫なの?情勢云々は。

まあYF-30との合体は分らなくはないけどさ。機体形状似てるし。


「本人もそこは悩んでたんだが何かあって吹っ切った」

「あいつはそういう所は固くてな。まあ俺達もか」


...まあいいや。その辺りは個人の心境だし。


「そうだったな。あいつは行方不明だ」

「行方...不明」


そう言うとサイファーは壁に阻まれた先にある空を見上げる。


「ああ、馬鹿な奴だ。敵要塞の動力炉を破壊する為に単身突撃、その結果動力炉の爆発に巻き込まれた...はずだ」

「はず?どういう事なんですか?」


新八がサイファーの言葉に質問する。

はずってどういう事よ?全員多分心の中では首を傾げているはず。


「実際この目で見たわけじゃないしあいつはやたらと悪運が強いからな、生きていたっておかしくはない」

「悪運って...流石に無理が...」


ルビーが終夜にツッコミを入れる。

悪運と言っても確かに強弱あるけどそれは流石に...ねぇ。


「いや、奴の悪運は凄まじいぞ?奴は僚機との極秘作戦行動中に敵の大群に襲われた。だがやがて味方が救援に来てそれでどうにか切り抜けたのさ。死亡フラグわんさか建ててさらに左エンジン撃ち抜かれていたくせにな」

「...すっごい聞き覚えがあるんだけど、それ」


エスコン6のミッション12でしょ、それ!?


Mission12大量破壊兵器無力化-凶禍隠す敵陣深く-。

エメリア首都グレースメリアの焦土化を企図するエストバキア軍は郊外のフォートノートンに化学兵器を持ち込みこれを輸送車輌に乗せ換えていた。こんな暴挙を見過ごすわけには行かない。

その為、峡谷内に低空から侵入、レーダーに引っかからないよう隠密裏に渓谷を突破し、敵の本体を奇襲する作戦が立案された。

その作戦を唯一遂行可能な前の作戦で命令違反をして現在謹慎中のガルーダ隊に出撃命令が下される。


このミッションは簡単に言えばエスコンシリーズ恒例の渓谷ミッション。谷から出ず、さらに時間制限に間に合う様に出くわす敵の部隊を急いで撃破しつつ本隊を叩く。

無事に本隊撃破後、帰還命令が下り帰還しようとするが敵の航空部隊がこれでもかと言わんばかりに登場、それらと交戦する事になる。でも多勢に無勢で追い込まれるがその時、味方がツケを返しに参戦してくれる。

あれは思わず泣いちゃったよ。王道だけど泣いた。仲間がカッコよすぎて...。


「この話はこれ位でいいだろ。んじゃ本題に入ろうか。俺達の世界で起きた時空管理局戦争の発端から終焉まで」


ついに戦争...。...ん?時空管理局戦争...?


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「んじゃ本題に入ろうか。俺達の世界で起きた時空管理局戦争の発端から終焉まで」


終夜は一番前にある席に座ってそれを回転させてこっちに向く。

時空管理局...あのキチガイ組織がまさか終夜の世界にも存在するとはな。


「時空管理局ってどういう組織なの?」

「簡単に言えば警察、裁判所、軍隊を一纏めした組織だ。」


時空管理局。それはミッドチルダが中心となって設立した数多に存在する次元世界を管理・維持するための機関で通称「管理局」。

警察と裁判所が一緒になった様な組織で、他にも文化管理や災害の防止・救助を主な任務としている。

これだけ聞くと聞こえはいいのだが権力が1点集中している為に不透明な部分が非常に多い。派閥も数多くあるのが確認されており権力闘争が常日頃から繰り広げられていたりする組織だ。

その結果がJS事件と呼ばれている実質自作自演のテロである。こんな組織に治安維持出来るのかと常に思っているが取って代わる組織が存在しないので仕方なくって感じだな。俺としては。


「まあ戦争前から管理局の一部隊、機動六課の連中とはぶつかり合ってはいたんだよ。
俺達の家族の落とし物をロストロギアと言い張って強奪しにかかって邪魔されると公務執行妨害だって言ってきて何度も突っかかって来て叩きのめしても叩きのめしてもキリがなかった」

「まあなのはは不屈だしねぇ。仕事大好き人間達ならあり得るね」

「うっ...!」


恭文の言葉にエースオブエース、高町なのはが胸を押さえた。まさか直接お目にかかれるとは思ってはいなかったがこうして見るとただの人間だな。噂では友達を作る為に砲撃を当たり前の様に放つ悪魔だとかロストロギアを取り込んだ冥王だとか聞くんだがな。

いや、それに関しては恭文の方がヤバイか...。曰く体長4mで羽を6枚持ち、腕を切られようと0.1秒で即再生、さらにはどんなロストロギアでも美味しそうにガリゴリ喰らう人外鬼畜の魔導師だとか。

始めて出会った時は声で悟られない様に頑張った。内心冷や汗ものでもう死ぬのかと思った...。


「何でそのデマ知ってるのさ!?てかんな事思ってたんかい!」

《何を言っているんですか。あれはもう手遅れですよ》

《なのなの。諦めるの、主様。そしてその鬱憤を雌豚ジガンにぶつけるの》

「ジガン!それは私の役目なのですよー!」

「《リインさん、何言ってるんですか!?》」


...マスターがマスターならデバイスもデバイス...か。いや、一人良心がいたか。


《...大変だな、恭文...》

「ありがとうベレン...。その言葉が凄く身に染みるよ...」

《へぇ...そうですかそうですか...》


...何かアルトアイゼンが腕のパイルバンカー磨き始めたぞ。あれは..嫉妬k


《何言ってるんですか、オセロ騎士》


そう思ったその時、俺は甲冑の顔面に何かを食らい吹き飛ばされた。悲鳴を上げる体に鞭打って起き上がるとそこにはパイルバンカーを構えたアルトアイゼン...。

それは俺の事か!?というより甲冑なければ死んでたぞ!


「...オマケに転生者軍団が居た」

「何処にでもいるのかなぁ...そういうの」


終夜が凄く微妙そうな顔をしながら言った言葉にヴィヴィオが同じ様な顔をして同意する。

転生者...あれか。神様転生とかそういう二次創作系か...。


「どんな力を持って居たんだ?」

「ある奴はジェネシックガオガイガーに変身出来るデバイスとエヴォリュダーの力を得た奴、またある奴はドローチートやカード投げといったデュエリストに必要な資質を手に入れた奴、そしてお決まりの銀髪イケメンで魔力SSS、そして無限の剣製(アンリミテッド・ブレイドワークス)と壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)持ちなな奴もいた。他にもストフリデバイス持ってる奴らとか色々いたな」


どいつもこいつも...。奴の世界はチートがひしめき合ってるのか?そしてその中で戦い続けて来たからこそのこの戦力か。


「...随分とチートである意味でお決まりなな奴らですね...」

「でもチートはそれを上回るチートにより叩き潰されるんだよ」

『え?』


だがその時整備士である真田が発した言葉に全員が耳を疑った。

...待て、あいつらを上回るチートが当たり前の様にあるというのか?いや、確かにニュータイプでユニコーンに変身した終夜やこのオウミならあり得なくもないが...。


「というわけでスイッチオ〜ン」

「ちょ、おま!?」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


モニターに映し出されたのはとある遺跡。そこには4つの存在がいた。


終夜達が生み出し、終夜がコアマシンであるドラゴニックガイガーに変身、さらに召喚されたフェンリルガオー、ライガーガオー、スレイプニルガオー、バイコーンガオー、フェニックスガオーとファイナルフュージョンした勇者王、ドラゴニックガオガイガー。

それに相対するのは破壊神ジェネシックガオガイガー、青き8枚の翼を持つストライクフリーダム、そして銀髪のイケメン。一人だけ場違いであるが全員人サイズなので問題はない。


《死ねぇ、モブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!》


銀髪イケメンは無限の剣製で召喚した剣をドラゴニックガオガイガーに向けて放ちそれがドラゴニックガオガイガーの周囲に刺さると次々と爆発していく。壊れた幻想である。

その爆発による煙ににドラゴニックガオガイガーは包まれた。


《ハッ!他愛もないな。所詮モブ如k》

《誰がモブだゴラァ!》


調子に乗っていた銀髪イケメンは煙の中から飛び出て来た光るリングを纏った拳に吹き飛ばされて遺跡の壁をぶち壊して奥に消えて行った。

同時に煙の中からドラゴニックガオガイガーの背部を構成するフェニックスガオーの背中から小型のビーム砲台、フェザーファンネルが飛翔、ストライクフリーダムとジェネシックガオガイガーに砲撃を浴びせつつ巧みに分断していく。

そしてフェザーファンネルに気を取られているジェネシックガオガイガーをブロウクンファントムによって飛ばした右の拳を戻したドラゴニックガオガイガーが背中の赤い翼、フェニックスフェザーを展開して勢いをつけた上で蹴り飛ばした。


《まだまだァ!》


だがジェネシックガオガイガーは体勢を立て直して金色に輝く触れた物を光にする指、ゴルディオンネイルをドラゴニックガオガイガーに伸ばす。


《このまま光にしてやる!》

《甘いんだよ!》


その事を分かっているドラゴニックガオガイガーは向かってくる右腕の上腕部を側面から殴りつける。

それにより攻撃は外れ、ジェネシックガオガイガーは左腕を突き出そうとするがその前にドラゴニックガオガイガーは勢いそのままに素早く1回転してその勢いを込めた左足でジェネシックガオガイガーを蹴り飛ばす。


《何!?》

《動きを止める余裕があるのか!》


そしてドラゴニックガオガイガーは蹴り飛ばされて後ろを向いているジェネシックガオガイガーの背中を掴みスラスターを全開にして遺跡の壁に叩きつけてからそのままガジェットガオーのウイングを掴み引き千切る。


《ドライビングドリル!》


さらに間髪入れず引き千切った時に後ろに軽く下がった右脚の膝に装備された破砕能力に優れた錘状構造のドリル、ドライビングドリルをガジェットガオー本体に叩き付ける。

そのドリルはコアマシンであるジェネシックギャレオンにも届きジェネシックギャレオンが爆発した。ドライビングドリルにはエネルギー波を発して内側から破壊する力があるのだ。


火を噴きながら倒れたジェネシックガオガイガー。ドラゴニックガオガイガーはそれを見届ける事なくフェザーファンネルを戻した。


《もう止めろ!》


フェザーファンネルを戻して約30秒後、ミーティアを装備したストライクフリーダムがドラゴニックガオガイガーに向けてミーティアに装備された93.7cm高エネルギー収束火線砲、60cmエリナケウス 対艦ミサイル発射管、120cm高エネルギー収束火線砲を一斉射撃する。

キラ臭いのはそういうキャラ設定なのでお気になさらず。


《プロテクトシェード!》


ミサイルは再び放たれたフェザーファンネルに落とされ、ビームは左腕の展開したフィールド発生器から発せられる薄いバリア、プロテクトシェードに防がれた。

それどころか放たれたエネルギーをドラゴニックガオガイガーは五芒星として収束させて撃ち出した。


《クッ...!》


五芒星は必死に避けようとしたストライクフリーダムを嘲笑うが如く追いすがりミーティアのエンジン部を飲み込んだ。当然ミーティアは残っていたミサイルやエンジンに引火して大爆発する。

その爆発の中からストライクフリーダムはドラグーンと共に飛び出してビームサーベルを抜刀、ドラゴニックガオガイガーに立ち向かう。ビームライフルが何処にも見当たらない事からミーティアから取り損なったらしい。


《フェニックスツール!》


ドラゴニックガオガイガーはそれに対してドラグーンの迎撃にフェザーファンネルを差し向けつつ尻尾の先端を分離、それを右手に装備する。するとそこから緑色の刀身が現れてそれを構えて迎撃体制を取った。


《ウィル!ソード!》

《はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!》


ウィルソードとビームサーベル2本がぶつかり合い、激しくスパークする。しかしウィルソードの緑色の刀身がオレンジに輝くとビームサーベルの刀身は霧散、その剣はストライクフリーダムの右肩を切り落とした。


《う...がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!》

《逃がすか!フェニックスツール!》


その痛みに悶絶しながらも距離を取ろうとするがドラゴニックガオガイガーはそれを許さずフェニックスフェザーを展開、動きの鈍ったドラグーンを破壊しながらも尻尾の第1節、第2節を分離して左腕に合体させた。そして緑色の本体が形成されて同時に右肩を構成するフェンリルガオーの口からドリル状のボルトを射出、合体させて突撃する。


《ボルティングドライバー、ブロウクンボルトォ!!》


ボルティングドライバー。それはフェニックスガオー以外から射出されるボルトによりその効果を変えるフェニックスツール。

そしてブロウクンボルトとは敵に差し込んで敵内部に直接エネルギーを叩き込み、敵を内側から破壊するボルトである。


《くっそぉぉぉぉぉぉぉぉ!来るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!》


ストライクフリーダムは後退しながら腹のカリドゥス複相ビーム砲と頭部の31mm近接防御機関砲、クスィフィアス3レール砲を乱射してドラゴニックガオガイガーの接近を防ごうとするがドラゴニックガオガイガーは頭部バルカンは装甲で弾き返し、それ以外を最小限の動きで躱してボルティングドライバーをVPS装甲の僅かな隙間である発射寸前のカリドゥスに差し込んだ。そして発射寸前のカリドゥスのエネルギーとボルティングドライバーから流し込まれたエネルギーによりストライクフリーダムは粉々に爆散した。


その爆炎の中から勇者王、ドラゴニックガオガイガーが赤き瞳を輝かせて現れた。だがその姿は勇者王ではなく全てを破壊する破壊神であった...。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


『............』

「...まあこれが戦った中の映像の一つだ」


...容赦なんてなかった。何の躊躇いもなく敵を殺した。

それにドラゴニックガオガイガー。恐らく勇者王ガオガイガーの系列機なのだろうけど正直勇者王には見えなかった。むしろ立ち塞がる全てを破壊する破壊神がピッタリだと思う。


「ドラゴニックガオガイガーって...何?」

「うちで作ったガオガイガー。Gストーンの製造成功記念に作った。その名の通りコアマシンはドラゴンモチーフのドラゴニックガオーで架空の生物をモチーフにしたガオーマシンと合体した勇者王...か」

「そんなサラッと...そんな簡単に作れる物なんですか?」


ルビーがアリアの質問にあっさり答えた誠哉さんに聞き返した。

Gストーンの製造成功記念で作ったって...ただのチートじゃねぇか!


「まあ...うちは学園都市の中でもさらに数十年進んでいるって言われてるから...そのプライドと趣味でのめり込んだら日進月歩どころか分進週歩状態だ」

「うっわぁ...何そのチート...」

「というか例えが微妙過ぎる...」

「そのチートがひしめき合ってるのが俺達の世界だよ。それと例えは気にするな」


正真正銘のチートだった...。というかおかしいだろ!?本当にこのレベルのチートがひしめき合ってるのか!?


「そうこうして時は過ぎ、そしてとある日。俺達は俺の妹の関係上、精霊界に行った」

「精霊界ってデュエルモンスターズのですか?」

「その精霊界であってる。そして奴らも精霊界を発見してそこに住むモンスター達の力を恐れた」


俺はバトスピの前に少しだけやってたからあまり詳しくはないけど理解出来る。アニメも見たから分かる。

確かにあれは管理局が目をつけてくる。特に神のカードや三幻魔、地縛神は絶晶神の匹敵しかねない存在だしなぁ...。


「確かに僕らの世界の管理局ならあり得ない話じゃない。というより精霊達の力を恐れるのは当然でしょ。特に神のカードを初めとした曰く付きのカード達は」

「まあそこはあいつが邪神系も完全制御で我が物にしているから大丈夫だ。あいつは邪神を踏みつける奴だからな...」


蒼凪の恭文がそれに納得する。他の何人かもそれに頷いていたが終夜の言葉を聞いて全員がひっくり返った。

邪神を踏みつけるってどんな奴だよ!何故か絶晶神を踏みつけて高笑いする八神の姿が思い浮かんだ。確かに八神ならやりかねない...。


「んで奴らは精霊達の力を封じる装置の開発と散布、全権及び全テクノロジーの譲渡、そして精霊達の管理局への永遠の従属。この馬鹿げた内容を叩きつけて来た」

「いきなりの最後通告か...」

「いや、実質上の宣戦布告だろうな」


白黒とダーグが何故かNERVの総司令官みたいに腕を組んでそれぞれ冷静に答えた。

おい!何で当たり前の様にシリアスなんだよ!さっきのひっくり返った状況はなんだ!?


「俺達は勿論開戦の道を選んだ。いや、選びざるを得なかった」

「対話の道はなかったんですか!?」


終夜の言葉にヒロがすぐに反応して声を上げるが終夜は首を横に振って否定した。


「それもあったんだがな...。実はこの時、奴らは次元空間にアルカンシェル搭載のL級次元航行艦を待機させてやがった」

「つまり猶予はなかったってわけか」


アルカンシェルって八神から聞いたが空間を湾曲させて反応消滅させる戦略兵器だったか。

...ふざけてやがる。何も話もせずにただ一方的になんて...!俺達の世界の管理局は一応降伏を進めてたぞ!

他の人達も不愉快そうな表情や決して表情には出していないが手を握りしめたりそういうオーラを漂わせている。


「俺達は宣戦布告前に次元世界各地の反管理局組織、反管理局派の世界に打診して協力体制を取った」

「戦略的には有効な戦術です。同時に多方面から攻める事で戦力を分散させるのは守る側にとっては非常に苦労するのです。
今回の場合は大小含めて200前後。それだけの数が多方面から同時に攻めたとなるとただでさえ人員不足な管理局は対抗出来ません」


終夜の言葉に彼らの参謀である優が眼鏡を整えつつ機械みたいに感情を消した声で説明した。

何かを倒す為に必要ならどんな手でも使う。これがこいつらの強さでこの戦力なのか...。

流石に容赦無く殺すという方向までは俺には無理だな。と言うより躊躇する。こんな事を即決なんて出来るわけがない。


「そして宣戦布告。その時の演説がある」


終夜は手に持ったリモコンを操作してモニターにある動画を映した。

そこには茶髪で長い髪の毛を持った少女がマイクの前に立っていた。


《皆さんお久です。神崎遊梨です》


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「遊梨!?」

「あいつ何やってんの!?」


恭文さんと龍也さんは知っている?でもお互い異世界の存在のはずだから同一人物に会うなんて...。


「待て。何でお前ら知ってるんだ?」

「「デュエル仲間」」

「...つまりあいつはお前らの世界に行ってデュエルしたわけだ。あいっかわらずだなおい...」


終夜さんのみならず彼ら全員が頭を抱えて蹲った。いや、早苗さん以外だった。

早苗さんは右手を頬に当ててあらあらしていた。そのマイペースさは見習いたいですよ...。


「一体遊梨とどういう関係なのさ」

「あいつは...双子の俺の妹だ」


あの映像と終夜さんを全員が比べる。そして納得した。

成る程、確かに髪の色や目の色が同じだ。そして...雰囲気も。


「ルビー、あいつと一緒にするな」

『...え?』

「待て!お前ら何を言っている!あいつと性格が似てたまるか!!」


僕の言葉を否定してそれに驚いた家族一同に突っ込む終夜さん。

...自覚していないとは怖いですねぇ。

そうこうしている間にも画面の中で演説は続いていた。


《皆も知っていると思うけど時空管理局なる初対面の組織からいきなり実質上の宣戦布告があった。
これを受けて私達は私達の未来を脅かす管理局に対して宣戦布告をする!火の粉は振り払い、その火の元は完全に消し去らなければならない!
立てよ精霊達!我らと向かい合わず一方的に支配しようとする愚者達を蹴散らし、護るべき者を護る為に!》

「凄まじいプロパガンダだこと」

「この後めっちゃ自分を責めてたけどな。自分が早く奴らを滅ぼさなかったから皆を巻き込んだって」


遊梨さんの演説に恭文さんが一言。それに終夜さんが反応して彼女の心境を口にした。

でも早く滅ぼさなかったからって...割り切るのが上手いというか的と味方のラインが明白、という事でしょうか?


「そしてオウミが宣戦布告と同時に空間衝撃弾頭で次元空間内の次元航行艦を撃滅、その足で戦う覚悟を決めた精霊達を乗せたオウミは管理局の各世界にある地上本部を強襲していった」

「空間衝撃弾頭...ですか?」

「空間そのものを超振動させて別次元の同座標にいる敵を粉砕する弾頭だ。
まあ回避は困難だが威力は上手く直撃させて次元航行艦をようやく落とせるレベルでしかないがな」


またえげつない物を...。上手くやれば敵艦の中を直接粉砕って事ですよね?弾頭はミサイルに積めばいいですしただの超兵器じゃないですか。


「それと同じ頃次元世界の中継ポートをアサルトの三人が奇襲、次々と壊滅に陥れた。
さらに反管理局派が一斉に武装蜂起。唯でさえこっちに苦戦していた奴らは背後からの不意打ちにあっという間に瓦解して行った」


これは先程の優さんの説明の通りですね。

モニターの戦局図は管理局の支配範囲を示す青が反管理局派の赤色に塗りつぶされていた。

そして青の範囲は次元空間のある一点を中心とした円とある星の1都市にまで縮んだ。


「そしてそんなこんなで残りはミッドチルダと本局のみになった。
俺達はミッドチルダ攻略の為に悪魔の作戦をした」

「悪魔の作戦?」

「ミッドチルダ首都、クラナガンの沖にあった火山を利用したのさ」


それがどういう意味かを理解していない人は首を傾げていたがそれを理解した人達は顔色を変えた。


「...津波か」

「そうだ。予め1週間前に攻撃宣言したから民間人は避難したから遠慮なんてなかった」


龍也さんが呟いた言葉に終夜さんは肯定の意を表した。まさか災害でさえも利用する作戦まで...。


「火山は見事に大噴火、津波が発生してクラナガンを襲った。
それにより空戦魔導師以外は津波に飲まれて全滅。地上本部は辛うじて無事だったが被害は語るのも馬鹿らしいレベルだった」


そしてモニターには津波で水没した都市が映っていた。その波間にはボカシが入れられていてそれで僕は理解した。

そこには...死体が浮かんでいるんだ...。


「そして俺は転生者により要塞化した機動六課を強襲、隊舎ごと全てを滅ぼした」

「滅ぼしたって...」

「文字通りだ。そこにいた魔導師達ごと撃滅した。俺がな」


リモコンをモニターに向けて何かの操作をすると場面がさらに変わった。

それはバックパックの6枚の金色に輝くリフレクターと2つの巨大な砲身、ツインサテライトキャノンが特徴的なガンダム、ガンダムDXがツインサテライトキャノンを建物の上に置かれている壊れた対空火器に守られていたであろう施設に放っている光景だった。

緑色のバリアが貼られていたけどそれをツインサテライトキャノンは軽々と撃ち抜いた。そしてツインサテライトキャノンの光が消えるとそこは巨大なクレーターになっていて海から海水が流れ込んでいた。


「その頃次元空間内では次元航行艦隊とオウミの一方的な殴り合いがあった。そして管理局の戦力を引きつけている間に反管理局派のメンバーが本局を奇襲」


そしてまたモニターの画面が変わり今度は次元航行艦とオウミの砲撃戦が映し出された。だが戦局は一方的。

次元航行艦の魔導砲はオウミの周囲に展開している水色のバリアに遮られ、逆にオウミの水色の砲撃は一発一発正確に次元航行艦を撃ち抜いて次元の藻屑にしていた。

そして本局襲撃に慌てたかのか艦隊の一部がバラバラに反転していた。恐らくそれぞれの艦長の独断と見ていいと思う。


「それに慌てた艦隊はオウミの拡散波動砲で旗艦クラウディアを初めとした多数の艦が轟沈、大混乱した残存艦隊は一掃された」


そんな隙をオウミは逃がさなかった。艦首の巨大な砲口から先程までとは比べ物にならない程巨大な水色のビームを発射。それはある程度進んで拡散して次元航行艦隊を撃滅した。


「そして時空管理局は見事に崩壊、管理局は俺達が流した裏の不正事実やら云々によって次元世界にとって忌むべき存在になった。
そして後釜に様々な国家が集まって構築された大時空連合が設立された」

「それがお前の世界で起こった管理局の末路か...」


そうして彼らの戦いの一端が明らかになった。そして彼らの強さが分かった。

彼らは躊躇わない。例え人を殺し、世界を破滅に導くとしても常人が迷うところを彼らは決して躊躇わない。

一種の狂人と言ってもいい。だけど悪い人であるかと言われるとまた違うと思う。


彼らの目はこの話を始めてからずっと悲しみと悔みを帯びていた。きっとそれは自分達の罪を自覚した上での後悔なのだと思う。

もっとこうならない様には出来なかったのか、こんな戦い、作戦をする必要はあったのかと何処かで思っている筈。

こうするのが最善手と分かっていてもどうにかならなかったかと思っている様に見えた。

こう考えている人が悪い人だとは僕は思わない。


「...お前らの考えは分かってる。
確かにこうして良かったのかって今でも悩んでいるさ。もっとより良い方法があるんじゃないかって考えてはいた」


彼はだが...と前置きをおいて覚悟のこもった声で宣言した。彼の信念を。


「守る物の為になら邪魔する全てを破壊する。
少なくとも俺はそうだ。邪魔する奴は何だって叩き潰す。神様だろうが邪神様がだろうが知ったこっちゃない。邪魔する者は破壊する、そう決めたからな...」


そう言い残して部屋を出て行く終夜さん。それを見て頭を抱える家族達。

僕らはそれをただ見届けるだけしか出来なかった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「まああの覚悟は本物だ。実際、神は叩き潰したからな、あいつは...」

「神を...ですか?」


部屋を出る終夜を見届けつつ、誠哉さんは終夜の言葉を補足しつつある事実を告げた。

アラタも聞き返すが本当の事...らしい。

なんせ俺達はそういう事をしたとしか聞いていない。真実は全てあいつの記憶の中だけだ。


「ああ。あいつはある意味で元凶とも言える転生を司る絶対神に歯向かい、そして葬ったんだよ。臣下の神も纏めてな」


神にさえも歯向かう覚悟、そしてそれを実現した神を葬る力。

それはどちらかが欠けていては決していけない物。力が伴わない覚悟は無力、そして覚悟がない力は破滅をもたらす。


「そんな事...出来るんですか?本当に...」

「やったんだよ、あいつは...。
何らかの転移で神のいる世界へワープ、そこで次元切断の応用で葬ったらしい」


信じられないかも知れないが本当らしいんだよ、これ。

だが俺たちの目の前で虹色の光を放ち、氷の翼を広げたあいつは姿を消してその後、空が弾けた。そしてあいつはその空から帰って来た。


「らしいって...」

「仕方ないだろ?俺達は簡単な事しか聞かされていないんだ」


そう、あいつはあの時にあった事の詳細を決して話さなかった。家族である俺達にでさえだ。まああいつは時々そんな風にはなる。だがいつかは話してくれるからそれを信じて待つとしよう。


誰よりも命を感じその慟哭を幼い時から受け止め続け、守る為ならば神にさえも歯向かい、そして神を葬る事さえもなし得た存在、それが神崎終夜。幾つもの絶望から奇跡を起こして全てをひっくり返した俺達の家族だ。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


私、八神龍也と共にいた方のジェイル・スカリエッティはあの話の後、取り敢えず自分がやらねばならない事の為に技術陣を集めて相談をする事にした。


「君達の腕を見込んで頼みたい事がある」

「はい、SRX系列の設計図。これベースにアクエリオンやメシアの合体システムを流用すりゃ作れるだろ」


要件を言う前に真田君からUSBを受け取った。その中にはZRX系列の原型、SRX系列の機体のデータが入っていた。

見抜かれていたか...。流石と言うべきだな。あの超兵器達の整備主任だけはある。


「何故SRX系列のデータを...?」

「あくまであんたらの発見した機体とは別に俺達が独自設計した物だ。まあ誠哉さんの知識からの受け売りで合体システムを初めとした機構的な部分は完全に再現してあるから問題ないと思う。
流石にプログラムは独自だがそこは許せ」

「いや、これだけの機体を受け売りがあるとはいえ自力で設計するとは...」

「うちの家は研究所だぜ?常日頃からこういう研究はしているんだ。その成果がオウミやVFだからな。
設計図はそのまま終夜の力になるから設計図だけでも損じゃない」



「すみません、僕もお願いしたい事があるんです」


そこにやって来たのはセイ君だった。その顔はいつものサインをねだっていた時の純粋な顔ではなく覚悟をした顔だった。


「ビルドストライクの大改装をしたいんです。改装中はビルドガンダムMk-Uでやります」

「ふむ...設計図とかはあるのか?」

「スケッチと搭載するシステムの概要なら考えています」


そう言いセイ君は左手に持っていた紙束を机の上に置く。

ほぅ、ここまで細かく...これならば微調整すればすぐにでも改装出来るな。


「このシステムはエクシアに先行搭載しよう」

「実体剣だけに限定すれば万が一の被害は抑えられる」

「でもこれはうちで似た様なもん作ってたからいいとして最後のはキツくないか?」

「ブラフスキー粒子を空間に...ブラフスキージェネレーターでも作って散布するか?」

「何処のナイトレーベンですか。確かにそういう方向では似てますけど。ガンプラバトルのフィールドには常にブラフスキー粒子が散布されていますしそれを用いるつもりだったんです」


そうしてあれこれトントン拍子に進み一通りの改装プランが出来上がった。

そして最後に異世界の私、ジェイスがセイ君に再確認を取る。


「...いいのかい?君は実戦を今まで経験した事はない筈だ。それにビルドストライクは元はガンプラ、この様に実際の戦闘に用いるのは...」

「はい...。いくらMSになったとしてもこんな事に使いたくはないんです。でも」


そしてその言葉にセイ君は少し間をおいてその覚悟を口にする。


「時には戦う覚悟が必要だと思ったんです。例えビルドストライクやビルドMk-Uが壊れたとしても...」

「...すまん。お前の様n」

「いいですよ。レイジとも相談して決めた事ですから」


誠哉君はセイ君に謝ったがセイ君はそれを拒んだ。

我々大人は彼の様な子供ですら戦いに駆り立てる覚悟をさせてしまった。

それも我々の罪なのかもしれないな。全く駄目だな、我々は...。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「後こちらのガンダムの調整だな。まだ完全ではないのだよ」


セイがこの部屋から出て少しの沈黙の後、俺達は再び会議を再開した。

近くの要塞基地は叩き潰した。だから少しの間は敵も来ないだろう。だから今の内にやれる事はやっておきたい。

んで早速ジェイスが提示したのがブレイブ、カイゼル、ドットの調整作業。

特にドットには追加の支援戦闘機の製造を依頼された。設計図は既にある為、直ちに工場に設計データを回したが機体が完成したからすぐに実戦投入出来る訳ではない。

システム面での調整作業がある。特に合体システムを搭載しているなら当然だ。ドット側にも調整作業は必須だ。


だが俺として真っ先にやっておきたい事がある。それを提示する事にした。


「それにカタルシスの調査だな。どうせあいつは長くは持たないんだ。急いでやっておきたい」

「長くは持たない?」





「構成素材の問題だ。あいつの構成素材は性能は文句無しのチートなんだがな、耐久性に問題があって1週間しか持たないんだよ。そして限界を迎えると砂になる」


ガンダニュウム複合装甲と名付けたそれは加わった衝撃を計算してその振動と相殺する振動波を発する事で強力な防御力を持った演算型・衝撃拡散性複合素材をベースに様々な装甲のいい所取りをした素材で終夜の変身する機体は必ずと言っていい程使われる超軽量装甲。その分脆いのだがGN粒子が流し込まれる事でその性質が一変する。

装甲の硬度の大幅上昇と全領域の振動を相殺する力を発揮して従来の装甲では耐えられなかったデルタドライブの出力に対応出来る装甲となり物理、エネルギーその他諸々問わず圧倒的な防御力を発揮する無敵の装甲になるのだ。

ついでにGN粒子を流し込む性質上、装甲に溜め込む性質を持つ為GNコンデンサー要らずになっている。

ここまで聞けば完璧な装甲と思うだろうが重大な欠陥がある。実はこの素材の耐久性能は持って一週間という弱点を持っており一週間過ぎると装甲が砂状になって崩壊するのだ。

カタルシスを簡単に調べた所、機体の構成素材が全てこの装甲である事が判明した。つまり一週間過ぎるとカタルシスは崩壊するのである。


「何でそんな物を使ったんだ?MSの構成素材としては不向きだろ」

「元々はあいつが変身していたからその度に装甲は新造同然だったんだよ。一週間も連続展開する状況なんざないしな。もしあっても変身解いて即座に作り直せばいいからな。
でもあいつから独立して一つの存在になった。故の結果だ」


ジェイルにその事を聞かれるが俺はあいつの特異性も混じえて返す。

あいつは変身する。つまり毎回一から精製していると言っていい。

だからこの弱点は弱点になり得なかったんだがこの一件でそれが完全に裏目に出た。まさか終夜から独立するとは思いもしなかった。


「ふむ...異世界を超えてMS化したのが裏目に出たわけか...」

「一応あいつから代わりの機体のオーダーは出てるんだよ。もう建造は始まってる」


そう言い俺はモニターに目を向ける。

そこには複葉翼が特徴的なウェイブライダー形態から変形してレールガンを銃身下部に装備した長砲身のライフル、ロングメガバスターを構えたMSが映っていた。


「υ...か。あの時廃案になったこいつをまさか再生する羽目になるとはな...」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「それで後は...」

「はい。ヴァルヴレイヴ関連の整備パーツ類は全て完成、ピストン輸送の真っ最中です。後はガンプラ発祥のMSとライガーゼロのパーツでひとまずは終了ですね。
ここはフル稼働ですけど」


ここが壊れたらシャレにならないからな。この工場の機能停止、それはこの部隊の補給が一切合切断ち切られる事を意味する。

一応食料関連は別にしてあるしそのデータはあちらにも現物込みで送ったから食糧危機に陥る事はない筈。


「これがオウミの全自動工場か。すげぇな...」

「お客さんか...いらっしゃい、何かあったか?ヴァルヴレイヴのパーツは輸送中だが」


あの補給パーツの中には本来W号機の装備である腰背部に装備される多脚状特能装備マルチレッグ・スパインとW号機のメイン装備であるホイール形状のスピンドルと射出基部のナックルの2ユニットで構成されたスピンドル・ナックル、その装備のマウント用の専用装甲もある。

さらにY号機のセンシズ・ナーヴを利用したマルチセンサーアーマー、森羅万象とY号機の装備である近接格闘武器としても使えるロッド状兵装、ハミング・バードや鉤爪状の刃5本を扇状に束ねた形状で掌に装着して斬撃や硬質残光放射が出来るファン・タロンもある。

そしてカゲロウの6本の長刀が仕込まれた多銃身連射砲、エッジド・ガトリングも製造。アーダー・アクセルといった他の装備は資材の関係上製造はしなかった。だが機会があれば製造されるだろう。


「...つくづくチートって思い知らされるなおい...。資材面を除いて」

「エネルギーを物質化出来ればいいんだがそこの辺りの技術は開拓途中でな。素材を変換して作り出すのが限界だ」

「いや、充分でしょ...。というかそこまでいったらただのチートの権化じゃない」


ごもっともだ。でもいつか出来る気がする。実は草案は出来るている。後はそれを実現する装置なんだがそれがまた難しいんだよなぁ...。


「あ、そうだ。インパクトブースターよろしくなー」

「「は?」」

「頼む態度を考えろ!」


ダーグがUSBメモリを投げて笑顔で頼んで来た。それにほうけた俺達の目の前でダーグはアリアにブン殴られた。

全く...簡単に言ってくれる。設計図あるだけマシだがな。


「ダーグ様...失礼しました」

「いや、現場に答えるのが裏方の仕事だ」


飛燕さんが失礼を詫びたが俺は許した。あの態度は確かにあれだけど俺は根っからの技術屋だ。他の人達はよく分からないが俺だけでもやるつもりだ。誠哉さんは巻き込むがな。


兎も角それが整備士。機体を万全に整えて最高の機体で送り出す。必ず帰って来てもらう為にも。

その為になら何だってする。必要な物は調達、もしくは作る。徹夜だってなんのその。それが俺のプライドだ。


「でもなぁ...少しは俺達の苦労を考えて欲しいんだな」

「ダー。完徹確定」


あ、そういえばこいつらもいたな。パーツの輸送係で。

一通りの整理が終わって暇そうにしてたから引っ張って来た。トランスフォーマーだから問題ないだろう。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


また俺視点である。

俺はオウミ第二格納庫の端にある更衣室から特殊ガラスを通して調査が行われているフェイズシフト装甲の特徴をも受け継いだガンダニュウム複合装甲を使用している為、色の抜け落ちたカタルシスを見つめていた。


...まさかお前が俺から離れてMSになるとはな、あの時は助かったけど俺がお陰様で何故かお前とエヴォリューションになれなくなった。まさに俺から分離した存在と言っていい。

進化の果てが浄化か。それがお前の答え...いや、俺の答えなのか?カタルシス...。


「何を黄昏ているんだ、終夜」

「龍也...さんか」


俺の後ろから来たのは龍也...さんだった。ったくこのタイミングかい。


「龍也で構わない。好きに呼びたまえ」

「偉そうなのが癪だがまあいいか。んで何の様だ、龍也」


この偉そうなのがいけすかないがそれよりも用事を聞きたい。何もありませんなんて雰囲気じゃないからな。


「お前は...守る物の為になら邪魔する全てを破壊すると言ったな?」

「ああ。...もしかしてあんたもか?」


龍也はそう言って特殊ガラスの外のカタルシスを見ながら話し始めた。


「私もだ。守りたいと願った物を守る為なら何だってするさ」

「...あれか?同類だから慰めにでも来たか?」


俺が皮肉交じりに返すがあいつは心外そうな顔で返して来る。


「いいや。そんなつもりはないんだがな。一つ聞きたい事がある」


龍也は少し間を置いて問いかけて来た。俺とこいつの決定的な違いを。


「お前は守る為になら例え自分が死ぬ事も厭わないのか?」


...そう来たか。そう来ると言う事はこいつは間違いなく自分の命を捨てる事を躊躇しない奴だ。

俺の返答は考えるよりも先に自然と口から出た。


「...それはやめとけ。ロクなことにならん」


よく分からないイラつき共に。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



終夜が私の言葉に反論してカタルシスを見つめながら語り始めた。


「俺、実際死にかけた時があってな。
その時に守りたい奴らから涙ながらに言われちまったんだよ。「お前が死んだらどれだけの人達が悲しむのよ」ってな。それに他の守りたい奴らの思念も感じちまってな、それも同じ感じだった。
死にかけると周りに心配をかけてしまう。それって守った入るのかねぇ...」


その声には後悔を感じられた。恐らく彼も守りきれなかったんだろう、自分の守りたい人達を。


「お前のやっている事は身体面しか守っていないんだよ。心を守らなくてどうするんだよ」

「だが取りこぼしては意味がない!」

「その通りだ。俺も守りたい奴らを死なせちまった事がある」


私の反論に終夜は同意して拳を握り締めながら再び語り始めた。


「ある時、敵の特殊兵器に手こずっている間に守りたい奴らが死ぬのを感じた。
当然絶望し嘆いた。それがトリガーになって力が覚醒して時を巻き戻す無茶苦茶が出来たからある意味では救い出したんだがな」


時を巻き戻す...何と羨ましい力だ。私にもそんな力があればどれだけの人を救えただろうか...。

それにしても...だ。まるでもう一人の自分を見ているみたいだな、本当に。少しの違いも含めて。


「...やはりお前と私は似ているな。幾つかを除いて」

「守りたい物の為なら死んでも戦うか守りたい物の為に戦うが死ぬのは許されず...か」


気づいていたか。何と無くだが私の感じた相違点は正しかった様だな。


「私は神だなんだの言われてきたがそんなのは違う。私は弱いちっぽけな人間に過ぎない...。
それでもだ、それでもなお決して届かぬ理想を望む」

「確かに仮に神に限りなく近い力を手に入れてもイコール守れるってわけじゃない。
俺はその力に飲まれて俺は危うく守りたい奴らを殺しかけた。本物の神様でさえ葬り去ったその力は俺の中に未だに眠っている。まるで呪いだな」


神に近い力か...恐らく私の力とはあた別の方向なのだろうな。終夜はどれだけの戦いを乗り越えてここまで進んできたのだろうな。彼はまだ若いのに...。


「救えたはずなのに取りこぼした命。護れたはずなのに失った命...。私にはそれがあまりに多すぎる」

「お前、自分以外を全て守る気だろ。それは無茶苦茶だぞ?例え絶対的な神でもそんな事出来やしない」


...痛い所を付かれたな。確かに理想であるが逆に言えば理想でしかない。だが私は...


「だが私はやる。私は本来存在しない人間だ。ならば届かない理想を追い続けるのも良いだろう?その先に何も無いとしてもな」

「お前...」


終夜はやはり悲しそうな声で呟く。近い存在だから余計に分かってしまうのだろう。

だから次の言葉を紡ぐ。これで反論が止まってくれる事を祈って。


「私には何もないのだよ、喜びも幸福も。
私の中に在るのは怒りと絶望だけだ。こんな壊れた人間、いや人形が幸福になれると思うか?それは否、ありえないのだよ。
だから私は言える。こんな風になるなとね。闇を彷徨うは人形で十分だよ」

「確かに人形は勘弁願いたいな。そうなったらあいつらが鬼になるし、あいつらに振り回される。んなのある意味で悪夢でしかない。俺の体が持たん」


終夜は両手を上げて溜息をつく。そんな事になるならどんなに羨ましい事か...。

やはりもう一人の私だな。全てが上手くいった私ともいうべき存在...それが終夜なのかもしれない。

だからこういう事を言う。恐らくは私の覚悟を察しているから。


「フッ、お前は幸せ者だな。羨ましいよ」

「誰にだって願いさえすれば幸せになる権利くらいはあるさ。どんな形にしろ...な」


どんな形にしろ...。彼の世界が戦争続きだっただけに余計に重みを感じる言葉だな。平和という意味がかなり深く感じる。


「当然お前にだってある...がどうせ聞きやしないんだろうな」

「ああ。私は人形だからな」


恐らく私と終夜は分かり合えない。似ているが根本的な思想が真逆。

言いたい事は分かる。だが私はもう止まれない。セレスを...私をあんなにも愛してくれた女の思いに報いる事が出来なかった。そんな奴に未来は与えられるべきではない。

そう、私はただはやて達を守れればいいんだ。そう決めたのだからな...。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


俺は出て行く龍也を見届けながら自然と拳を握りしめていた。


龍也、俺とお前の違いはもう一つある。それは自分の意思で生きている同族たる人間を殺したか...だ。


あいつはネクロになりかけた人間を殺したと聞く。

だが俺に言わせればそんなものまだ優しい。殺してくれって言われているだけ、当人にお礼を言われるだけ多少はマシだ。


俺は...自身を大量破壊兵器として今まで敵になった人間を殺してきた。死にたくないと懇願してくる奴らを容赦無く。

間接的にでしろ俺が殺した人間は10万は下らない。殺しただけでなく不幸にした人間は最早億単位までいくだろう。


何が全てが上手くいった私だ。俺は守る為になら敵を全て破壊して救う事を考えない破壊者だぞ?

一応降伏勧告くらいはするが聞き入れられなかったら迷わずに破壊する。時にはビームで消し炭に、またある時にはビームサーベルで一刀両断、数えるのが馬鹿らしいレベルだ。


そんな俺を羨ましい...か。お互い狂ってやがるな。でも何故か俺は色んな奴らから好かれている。妹や幼馴染、仕事仲間その他諸々。

好かれる理由はもう考えない事にした。その事実ははっきりしている以上、それは受け止めなければならない。

その返事、したかったんだけどなぁ...。その前にこの世界に来ちまった。帰ったらタコ殴りだな。物理的にも精神的にも...はぁ。

だがこんな大罪人は地獄行き確定だ。それまでは長い長い時を可能な限り幸せに歩ませてもらおうか。それが生きている人全てに平等に与えられた権利だろ?皆...。




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あきゅろす。
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