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頂き物の小説
第27話「クラナガンまるごと超決戦」:2




 ……陽が昇ったか。

 いよいよだ……いよいよ、ここから始まる。

 オレ様の野望の第一歩が、今日、これから、再び始まるんだ。



 電王達に敗れ、傷を癒しながら、オレ様はずっと考えていた。

 実力では完全に勝っていた。それなのに……なぜ負けた?

 キバとかいうライダーの乱入があったからか?……違う。

 アレがなくても、おそらく電王はオレに勝っていた……では、それはなぜだ?



 答えが出ないまま、あのザインとかいうヤツと出会い、大ショッカーをネガショッカーとしてまとめ上げ、このミッドチルダにやってきて、再びヤツらとまみえて……それでも、答えは出なかった。

 そして今……答えの出ないまま、オレはヤツらとの決戦を兼ねた一大作戦を決行しようとしている。

 ……おい読者ども。“絶対に勝てる悪の組織”を目指していたオレにしては、ずいぶんと不確定要素の大きな戦いをしかけようとしている、とか思っただろ……あぁ、気にするな。オレも自分でそう思ってる。

 だがな……これもまた、オレが悪の組織のリーダーとしてステップアップするために必要だと思ったからだ。



 アイツらは……電王どもは勝算なんか考えねぇ。ただいつもの調子でぶつかってきて……オレから勝ちをもぎ取った。大ショッカーどもを蹴散らした。

 だから今回、オレも勝算なんか考えねぇ。

 アイツらと同じように、いつもの調子でぶつかってやる。こっちの戦力全部ぶつけて……アイツらがオレ達に見せた勝ちパターンを、今度はオレがやってやる。

 アイツらがどうしてオレに勝てたのか……その答えを、アイツらの戦いぶりの中から見つけるために。

 そして勝つ……アイツらの強さを知り、アイツらの強さを身につけて……オレは悪の組織のリーダーとして、さらなるステージに進むんだ。この世界を喰らうのはその後だ。



 柾木ジュンイチ、高町なのは、フェイト・T・高町……あの三人の時間がこっちの手の内にある以上、アイツらは死に物狂いでそれを取り戻しに来るだろう。

 オレ達を叩きつぶすために、本気で、投入できるであろう全戦力をもって挑んでくるはずだ。

 だが、それはこちらも同じ……それぞれの戦場に、最高の戦力を配置した。ザインのヤツにも、(外道に走らない範囲内で)最高の作戦を考えさせた。

 さぁ、電王。舞台は整えてやったぜ……







 貴様らの言うところの、クライマックスの始まりだ!





















 …………と思っていたんだがな。



「しまったな……
 四つの進軍ルートの、どれからオレが進軍するかくらいは教えおいてやるべきだったか。
 機動六課と鉢合わせしても、電王達がいなければ拍子抜けだ」



 そんなことをつぶやきながら、オレは部下を引き連れ進んでいく。

 現在位置はこの世界の連中が廃棄都市とか呼んでいる、首都クラナガンをグルリと囲んでいる、捨てられた都市区画。

 その南側の区画を進んでいる。このままこの世紀末感バリバリな街並みを抜け、そのまま首都の南側メインストリートに入り市街中心部を目指す……もっとも、確実にジャマは入るだろうが。







 ……どうでもいいが、呼び方、普通に『再開発地区』でいいと思うんだが。『“廃棄”都市』なんて呼び名では、再利用の意志がないように見えるじゃないか。

 よし、オレがクラナガンを制圧したら改名させよう。やはり呼び名というのはわかりやすく合理的でないとな。











「それで……“ネガショッカー”に“アクトロン”“ワルトロン”なワケ……?」

《わかりやすさを追求することに異論はありませんが、方向性がおかしいと言わざるを得ませんね》

「あのさ……お前らツッコむとこが違くないか? いや、解るけどよ」

「実際方向性がおかしいんだ。気にするな」











 ………………ほぅ。



「よかったじゃないか。
 ハズレを引かずにすんだな――電王にゼロノス、それに……蒼凪恭文とマスターコンボイだったか」



 そう。聞こえた声は正面から――そしてそこに、ヤツらはいた。



「まぁね。
 っつっても、お前がこっちから進軍するのはだいたい予想できてたからね――ハズレを引く心配はしてなかったよ」

「ふむ、そうなのか。
 一応、どういう流れでオレがこっちから進軍すると読んだのか、推理を聞いておこうか」

「簡単な話だ。
 “ここが南側だから”だ」



 答えたのは、チビな人間の姿に変身しているマスターコンボイ――ほぉ、いい読みだな。



「なぜ貴様が進軍時間を正午に指定したのか、そこが引っかかっていたんだ。
 なのは達の件でオレ達を絶望させるには一晩あれば十分だったはずだし、夜の内にしかけた方が、真っ向からオレ達とぶつかることになったとしても闇に乗じることができる分作戦の遂行上都合がいい。
 そして何より……そこからあまり時間をおきすぎると、オレ達にショックから立ち直り、戦いの準備をする時間を与えてしまうことになりかねない。戦略として常道をいくなら、お前らはあのまま間髪入れずに次の段階に進むのが正解だったはずだ。
 にもかかわらず、貴様らは一旦退き、翌日正午からの決戦などと指定してきて、オレ達に時間的猶予を与えた。
 合理的なザインがそんなことをするはずがない。間違いなく貴様の提案だ。だとしたらそこには必ず意味があると思った――そして、だから気づいた。
 正午と言えば、太陽がもっとも高く、“もっとも真南に近づく”時間だ。
 太陽の下を堂々と進軍したかったんだろう?――本来闇に潜んでいるべき悪の組織が、邪魔な正義の味方を蹴散らして隠れ潜む必要がなくなった、その証として。
 だから、貴様はもっとも陽が高く昇る正午前後の時間帯、この南側の進軍ルートを選んだ……訂正はあるか?」

「…………満点だ」



 世辞でも嫌味でもない。心からの称賛の拍手を送る。



「さて……それじゃあ、こちらの疑問も晴れたことだし」



 オレの言葉が、合図だった――オレの周囲の怪人達が殺気立ち、電王達もそれに応じてそれぞれにかまえる。

 ……おっと、その前につついておくか。



「これ以上ないほどにやる気になってくれたようだな。
 目論見通り本気になってくれてありがたい限りだが……しかし、また少人数で挑んできたな。
 ずいぶんと人数を余所に割いてきたじゃないか。オレがこの南ルートから進軍すると読んでいたなら、ここに主力をまとめてきそうなものだが」

「お前らが同時多方進軍&“降魔陣”なんてややこしい作戦立ててくれたせいじゃないのさ。
 おかげでこっちも役割分担決めるの大変だったんだからな」



 オレの指摘に蒼凪恭文が答える――なるほど。“やはり”オレ達の四方からの進軍も“降魔陣”も、全部まとめてつぶしに来たか。



「そういうこと。
 今頃、他の三方でもお前の部下どもは通せんぼくらってるはずだよ」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ヴィータさん!」

「来たっすよっ!」



 あぁ、そうだな。

 みなみやひよりの言葉に内心でうなずいて、やってくる怪人軍団をにらみつける。

 ここはクラナガン東側の廃棄都市区画――その中央メインストリート。

 そしてあたしらの役目は、こっちから侵攻してくるネガショッカーの迎撃だ。



 ちなみにメンツはこのあたし、鉄槌の騎士ヴィータにビクトリーレオ。

 でもって、さっき声をかけてきたひよりにみなみ。



「オレの強さは、泣けるでっ!」



 キンタロス。



「へっ、ようやく出番だな!」

《待ちくたびれちゃったよーっ!》



 ロードナックル兄弟。



「うーっ! なんでわらわ達がネガタロス達と戦える南組から外されるんじゃ!」

「しょうがないよ。最初から本命にぶつける前提の恭文やりょーたろーと違って、ボク達はクジ引きの結果なんだもん」

「け、けど、こっちもこっちで、なんか強そうなのがいっぱいいるよっ!」

「むしろ、恭文くん達にあらかた持っていかれそうな南より、こっちの方が貢献できると思うべきかしらね」



 ネガタロスがいるだろう南じゃなくこっちの守りに回されて、さっきから不満タラタラな万蟲姫とそれをなだめるメープル、サニーにミシオ……ここだって重要な守りの要なんだから文句言うな。

 そして……



「こうなったら、ここで思いっきり大暴れして、スッキリしてやるのじゃっ!
 お主にも期待しておるぞ――“ゴエモン”!」

「へぇへぇ」



 昨日こっちについたばっかりのネコイマジン――改め“ゴエモン”。

 “盗賊”から自分の変身したライダーを『シーフ』と名づけたように、この名前も大泥棒の石川五右衛門からとったらしい……そんなに好きか、泥棒猫呼ばわりが。



「リラックスしてんのはいいけど、アイツらの相手まで忘れんなよ。
 いくぜっ、てめぇらっ!」

『おぉーっ!』



 あたしの号令に全員が答えて、ネガショッカーの怪人軍団に向けて突撃。

 さぁ……ブッつぶしてやるぜ!







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ネガショッカー所属と思われる巨大生物群を目視確認。
 やはり、ネガタロス以下最優先目標の姿はありません」

「やれやれ……やはりここはハズレか」

「ま、予想通りなワケだし、最初からあきらめてたけどねー」



 ジェットガンナーからの報告に、シグナルランサーと二人でため息――ハァイ、こちら西地区防衛線。指揮官のアリシアちゃんでーす♪



 にしても、『“巨大生物”群』ねぇ……ま、その辺も含めての『予想通り』なんだけどね。

 こっちのメインストリートはけっこう広いから、魔化魍なりギガンデスなりの大型戦力はここをメインに投入してくるだろう――っていうのは、私達隊長陣全員の共通見解だったから。

 なので、こっちの防衛戦力も指揮担当である私を除けば全員トランスフォーマー&ゴッドマスターばかりを配置してる。もうセリフのあったジェットガンナーとシグナルランサーに加えて――



「うぅっ、来るよ、お姉ちゃん……」

「ハッ、上等。
 ゴッドオンすれば体格差はほぼ埋まるわ。気にすることないわよ」

「そうですよ、つかささん。
 恭文さん達が心置きなく戦えるように、私達でここをしっかり抑えましょう」

「みーっ!」



 ビビるつかさに励ますかがみ、そんでもってかがみに同意するみゆき……カイザーズ、その中でもライナーズ古参の三人だ。

 さらに、最後にみゆきに続いた鳴き声はつかさの相方。アイツの使役する地竜――トリケラトプスっぽい見た目をした、金属質の身体を持った竜の子供、ヴェルファイア。通称“ヴェル”。

 そう、ヴェルまで出てきてる……ヴェルをかわいがってあまり戦わせたがらないつかさだけど、今回ばかりは話は別ってワケだ。



 そこまでの覚悟なんだから……つかさ! アイツらに、アンタの竜召喚を見せてあげなさい!



「は、はいっ!」



 ――雄雄しくそびえる黒き鋼鉄
   我が力となり大地を駆けよ!



「来よ、我が竜ヴェルファイア!
 竜魂召喚!」



 つかさの召喚魔法が発動。あたし達の腰ぐらいの背丈しかなかったヴェルの身体が巨大化。まさにキャロとフリードの竜召喚の如く、ヴェルの身体が大きく変化していく。

 バカなマッド科学者(スカリエッティに非ず)のせいでトランスフォーマーの生体金属細胞を埋め込まれた結果、生機融合体へと進化したヴェルの、戦うための姿――

 あちらさんに負けないくらいの体躯となったその姿はビースト系トランスフォーマーそのもの。さらにつかさが召喚した牽引式砲台がその後ろに連結されて戦闘準備完了。

 その名は――



「召喚――ワイルドファイア!」

「オォォォォォォォォォォンッ!」



 ヴェル本人に代わって名乗りを上げたつかさの言葉に、ヴェルが力強く咆哮する――さて、と。



「それじゃ、ヴェルの準備もできたことだし……あたし達もいくよ!」



 言って、あたしは愛槍ロンギヌスを手に、先陣を切って飛び出す――ジュンイチさんや我が愛しの妹達を“あんな”にしてくれた、その報いを思い知らせてあげるよっ!







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 …………来たか。

 このままスルーされて終わるようなことがなくてホッとしたぞ。



「ホッとしているのはお前だけじゃないぞ、シグナム。
 私も、今回ばかりは黙って後輩に経験値を譲る気にはなれんからな」



 同意するスターセイバーにうなずき、北側の廃棄都市群のド真ん中を進軍してくるネガショッカーの怪人やギガンデス群をにらみつける。

 それにしても……



「よっしゃあっ! やったるぜぇっ!」

「だなだなっ!」

「へへっ、腕が鳴るぜっ!」

「みさちゃんならできるよ。がんばって!」



 ………………こいつらがそろっている時点で苦労する予感しかしないんだが。

 本当にクジ引きの結果なのか? 暴走コンビに日下部……なんで猪突猛進組のトップ3がここに集中しているんだ。そして峰岸はあおるな。



 残りのメンツがシャープエッジとピータロスというのがせめてもの救いだが……



「うちは見事にバカ枠と武人枠とで分かれてるでござるな……」

「巻き込まれた峰岸あやのも大変だな……」



 ……いや、一番大変なのはその両極端なメンツを指揮しなければならない私なんだが。周りにアイツらの面倒を押しつける気満々かっ!



 というか……



「一番槍はもらったんだなっ!」

「行くぜオラぁっ!」







 ちゅどーんっ。







『ふんぎゃあぁぁぁぁぁっ!』



 あー、くそっ、予想通り暴走コンビは真っ先に脱落してくれるしっ! いきなり頭数減ったじゃないかっ!



「こうなったら私達だけで蹴散らすぞ!
 峰岸! 日下部の手綱をしっかり握っておいてくれ! そいつにまで墜ちられたらそれこそ手がつけられなくなるっ!」

「任せてくだs

「さぁさぁ、かかってこいってヴァ!
 このあたしがみんなまとめてブッ飛ばしてやるぜぇっ!」

「って、みさちゃん、待ってぇっ!」



 …………本当に、どーして私はこの班の指揮官になってしまったんだろう……

 まさか、蒼凪の不幸がうつったとでもいうのか……?







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「…………始まったみたいだね」



 アルトを通じて、全体の戦況はロングアーチから随時伝わってくる――そう。他三方の防衛線が戦闘を開始した報せが入ってきたんだ。

 現時点で、四方の防衛ラインでまだにらみ合いを続けているのは僕らのいるこの南側だけ……と、いうワケで、さっさと開戦といこうじゃないの。



 ちなみに、ここを任されたメンツは僕を始め、さっきからネガタロスと話しているメンツの他に……



「ふふんっ、ウチらも負けてられへんな。
 いくで、なっちゃん!」

「まったく、なんでこんな大一番までアンタとセットなのよ……」



 すでに殺る気満々のいぶきとなずな。それから……



「…………いた」



 ネガタロスの率いる集団の中に金色の獅子の姿を見つけ、ギンッ!とにらみつけるあずささん。

 …………以上。

 そう。これだけの人数だ。

 もちろん、まだ名前の挙がってないメンツもそれぞれの場所で、自分達の役目を果たすために動いてる……ただ、まだ出番には早いっていうだけの話だ。



「……ごめん、恭文くん」

「別にいいよ。
 心配しなくても、ジュンイチさん達は絶対助けるから」

「お願いね」

「その代わり……」

「わかってる。
 絶対……負けないから」



 言って、あずささんが前に出る――それに応じて、向こうからも金色の獅子が前に進み出てくる。



「……場所、変えるわよ」

「かまわん。
 勝負に水を差されたくないのはこちらも同じだ」



 互いに交わす言葉はわずか――でも、それだけで十分。互いの戦意を交換して、あずささんとレオイマジンは同時に駆け出した。僕らから離れて、廃棄都市群の中に消えていく。



「フンッ、いいな、あぁいうのも。
 組み合わせも悪くない。できれば貴様らなどとにらみ合っていないで観戦したかったぐらいだ」

「まったくもって同感だね。
 お互い、役目があるって辛いよねー」



 ネガタロスの軽口に付き合いながらも、打ち込むスキを探る……もちろん、向こうもこっちのスキを探ってる。



「だが、勝つのはオレ達だ。今度こそ……つぶす」

「上等だよ」



 答えて、アルトの峰で肩をトントンと叩く……つか、あくまで余裕の態度は崩さないつもりかコラ。

 ホントに上等だよ。その笑い、さっさと引っぺがしてやる。



「悪いがそうはいかないな。
 というか……貴様、ひとつ忘れているだろう?」

「何をさ?」



 聞き返す僕に、ネガタロスは答える。



「『何を』? そんなのは決まってる。
 この戦い……」







「本気を出したのは、お前らだけじゃないってことさ!」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「――見つけた!」



 イクトさんの予想してくれた目標ポイントを視界に捉えて――予想通り、そこに目標があるのを確認する。

 あたし達フォワード陣人間メンバー+αは、“降魔陣”の発動阻止を担当することになった――要するに、発動を許したらちょっとやそっとじゃ止められないから、発動するその前に叩く、ってこと。



 イクトさんの話によると、“降魔陣”のような大規模な術を使うには術式の構築や発動後の制御のため、相応の術式陣が必要になるらしい。

 つまり、その術式陣さえ破壊してしまえば、“降魔陣”は発動できなくなる。

 ただ“降魔陣”の場合、あのザインが考案しただけあって一ヶ所つぶしたくらいじゃ止まらないらしい――瘴魔力の循環する道、その中枢点となるポイントを全部つぶさなきゃいけない。

 その数、全部で八ヶ所――陣の内側を走る八紡星、その八つの頂点。それを破壊する役目を任されたのがあたし達。今頃はティア達もそれぞれの担当するポイントに着いた頃だと思う。

 まぁ、ティア達なら心配いらないだろうから――あたしはあたしで、お仕事いきますっ!



 目標は目の前。瘴魔力が地面からあふれて作り出している渦そのもの。イクトさんが名づけて曰く、“降魔点”っ!



「いくよ、マッハキャリバー!」

《All right.》



 あたしの号令にマッハキャリバーが答える――姿勢制御を一任して、あたしは目の前に魔法陣を展開する。

 中央の魔力スフィアの周りを巡る環状魔法陣。放つ魔法はもちろん――











「ディバイン――バスタァァァァァッ!」











 なのはさんに憧れて、お兄ちゃんが形にしてくれて……本家の使い手のなのはさんがさらなる高みに持っていってくれた、あたしの主砲、あたし版ディバインバスター! この一撃での一発粉砕狙い!

 あたしが殴りつけたスフィアから巻き起こった魔力の渦が、一直線に降魔点に襲いかかって――











 ――パァンッ!











 ――――――えぇっ!?



 一瞬、何が起きたのかわからなかった。

 降魔点を直撃するかと思ったその瞬間、ディバインバスターの渦が突然弾けた。



 いったい、何が……!?











「やめておけ」











 ――――――っ!



「この降魔点に傷ひとつでもつけてみろ。貴様の命がいくつあっても償いきれんぞ」



 バスターを弾かれた衝撃で舞い上がった粉塵、その中からあたしの前に現れたのは――



「…………人、間……っ!?」



 てっきり、瘴魔獣かネガショッカーの怪人が現れるかと思ってた……だから、目の前に現れた相手に、ちょっと驚く。

 見た感じはほとんど人間――両手の鋭い爪とか明らかに人間やめてる牙むきだしの口とかがなきゃ、本当に人間に見える。

 魚をモチーフにしているのか、ウロコっぽい装飾だらけの鎧に身を包んでる。

 というか……



「あたしのディバインバスターを……」







「“片手で止めた”……!?」







 相手の右手から、プスプスと煙が上がっている。間違いなく、今のディバインバスターを防いだ跡……なんだけど、どう見ても“右手からしか煙が上がっていない”。

 言うまでもなく、なのはさんの本家バスターには遠く及ばないけど……それでも、そのなのはさんの直接の指導を受けて、あたしのバスターの威力だってそうとうなレベルに上がってるはず。

 それを、片手一本で止めてみせた……魔導師で言うなら、間違いなくオーバーSランクの芸当だ。



 ネガショッカーにそんなことができるヤツがいるとしたら、ライダー関係ならまず上級怪人だけど、今までの仮面ライダー作品で見た顔じゃない。

 あと考えられるのはザイン関係。だとしたら……



「マッハキャリバー。
 アイツの……“瘴魔力を”測定して」

《…………感あり。
 瘴魔力の出力を確認。出力レベル……“瘴魔獣将レベルに相当”》



 …………やっぱり。



 瘴魔獣将――“JS事件”の時、ザインが配下に引き連れていた、瘴魔の力を持つ強化人間。

 けど、あの時ザインに従っていた七人の瘴魔獣将は全員倒したはず……新しく生み出していた……?



「その通りだ――スバル・ナカジマ」



 ――――――っ!? あたしの名前を……!?

 ……あ、でもザインの部下なんだし、あたし達のデータは当然持ってるか。



「そういうことだ。
 我が名はザイン様が瘴魔獣将のひとり――“ウルフフィッシュ”のファング」



 ウルフフィッシュ……オオカミウオか……

 また強そうな魚がベースだね。だけど……



「名乗ってくれたところを悪いけど……あたし達も急いでるの。
 速攻であなたを倒して、その後ろの“降魔点”、壊させてもらうよ」

「できると思っているのか?」

「当然」



 迷うことなく即答する。

 もちろん、あたしのバスターを片手で止めるような相手に簡単に勝てるとは思わないけど……それでも、絶対に勝てない相手じゃない。

 増してや一対一だ。アイツさえ倒しちゃえば――



「そうか……
 ならばやってみろ。オレ達を倒して、あの“降魔点”を破壊してみせるがいい!」



 ――――『オレ“達”』!?



 気づくと同時に、伏せる――直後、あたしの頭の上を鋭い爪の一撃がかすめていった。あ、あっぶなーっ!?



「もうひとりいた……っ!?」



 すぐに起き上がって、もうひとりの相手からも距離を取る――こっちはすぐに怪人だってわかる見た目だ。

 肉食獣がベース……ネコ系か、犬系か……ちょっとそこまではわからないけど。



「狼だ」



 あ、教えてくれた……というか狼か。ファングの“オオカミウオ”に合わせた、ってところかな?



「そういうワケではないが……一応名乗っておくか。
 我はグロンギの長がひとり……」







「ン・ガミオ・ゼダ」







 ………………はい?



 今……何て名乗りました?

 『“ン”・ガミオ・ゼダ』? 『ン』って名乗った?



 ちょっとちょっと……それ、つまり“ン種”のグロンギってこと!? テレビの『クウガ』のラスボス、ダグバと同じランク!?

 ひょっとしなくても……グロンギの最強クラスきちゃった!? 『グロンギの“長”』とか言ってたし!



「我らが、ここの“降魔点”の守護者というワケだ。
 その我らを相手に大口を叩いたのだ――その自信、ハッタリかどうか見せてもらうぞっ!」

「………………っ!」



 ガミオと名乗ったグロンギの言葉に、とっさに意識を切り替える――そうだ。今は予想外の大物に気後れしてる場合じゃない。

 この場を任されたのはあたしなんだ……あたしがアイツらを倒して、ここの“降魔点”を破壊しなきゃいけないんだ。



 絶対負けない……相手がラスボス級だろうと、絶対勝つんだ!







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「っ、とぉっ!?」







 真上に跳んで、振り下ろされた一撃をかわす――結果、地面に爪を突き立てた相手の真上にちょうど回り込んだ形になる。







「――――っ、せいっ!」







 そこから全身で振り回すように、アイギスで一撃――左手のシールドと一体化している刃が、相手の背中を斬り裂く。



 そう。確かに斬り裂いた――はずなんだけど。







「……そんなものか?」







 やっぱり……効いてないっ!

 まぁ、そうだよね。私達の攻撃が“アンデッドには”効かないっていうのは実証済みだしね。



 そう。アンデッド――破壊を担当することになった“降魔点”にたどりついたあたしの前に立ちふさがったのが、目の前のアンデッド。

 それも、ただのアンデッドじゃない。



 緑の筋組織に、黒くてゴツゴツした生体装甲。

 そして、頭から伸びる二本の触角に、仮面のように顔の上半分を守る緑色・半透明の保護膜……



「つか……まさかジョーカーが出てくるなんてね。
 “原作”じゃ味方だったから、まさか敵として出てくるとは思わなかったよ」



 軽口を叩く私だけど、相手は――“原作”では仮面ライダーのひとり、カリスの正体だったジョーカーアンデッドは特に挑発に乗ってくるような様子は見られない。

 というか……まぁ、正直言うと挑発に乗ってメチャクチャに攻めてこられても困るんだけど。

 だって……







「――――っ、らぁっ!」







 ――来たっ!

 咆哮はジョーカーとは反対側から――とっさに跳んで、背後から迫るもうひとりの攻撃をかわす。

 外見的にはかなり人間っぽさが残ってるけど、明らかに人間やめてる感じ――ライダーな怪人と人間の中間、とでも言えばいいかな。

 試しにサーチしてみたら瘴魔力反応アリ。間違いなく、瘴魔獣将だろうね。

 鎧は身に着けてなくて、ピッタリと身体に張りつくようなボディスーツ。全体にずんぐりむっくりした肥満体で、その全身から細長いトゲが生えてる。今はダラリと垂れ下がってるけど。

 考えるまでもなく……ベースはハリセンボンだね。



 けど……







「そんな針で、私を倒せるとか思わないでよ。
 まずはその針、全部そり落としてあげるよっ!」







 距離的にはジョーカーよりも瘴魔獣将の方が近い。軽口で挑発しながら、アイギスをかまえて突っ込む。

 対して、瘴魔獣将は私の斬撃をかわして周りを跳び回る――あー、もうっ! デブいクセしてすばしっこいっ!

 けど――







「跳び方、単調っ!」







 動きが単純なら先読みも簡単。相手の跳んだ先に先回りして、アイギスでホームラン狙い――って!?











 ぼよんっ。











 そんな、情けない音と共に――アイギスの刃が“めり込んだ”。

 ウソ!? 刃物が斬れずにめり込むだけとか、どんな軟体してるのさ!?

 驚いて、相手を見て――またまたビックリ。



 “針が――ない”!?



 瘴魔獣将の全身を覆っていたはずの無数の針がない。あんな無造作に垂らしてたあたり、収納できるとも思えないs――





















 考え事ができたのは、そこまでだった。

 だって――気がついた時には、地面に叩きこまれていたから。



 というか……いったぁいっ!

 受けた一撃のせいで全身が痛い。熱くはないから、ジョーカーの光弾攻撃とかじゃないみたいだけど……

 幸い動けなくなるほどのダメージじゃない。すぐに起き上がって、相手の姿を確認して……納得した。



「なるほど、そういうことか……」











「そっくりさんが、もうひとりいたってことか」











 そう。私が戸惑ったきっかけ……相手の身体から針が消えていた、その答えがコレ。

 ハリセンボンな相手とは別にもうひとり……そっくりで、針だけがきれいサッパリなくなってる、もうひとりの瘴魔獣将がそこにいた。



『我ら、ザイン様に仕える瘴魔獣将!』

フグバルーンフィッシュのパスボル!」

ハリセンボンニードルフィッシュのケンザン!」

『オレ達ゃ双子の兄弟よ!』



 ………………ベース生物違うのに『双子』って……あ、同時に生み出されたなら確かに双子か。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「はぁぁぁぁぁっ!」

「ふんっ!」







 新調したリボルバーナックルを握りしめ、繰り出した一撃が、受け止められる――その衝撃で、相手を中心に地面が陥没、クレーターを作り出す。

 そのくらいの一撃を叩き込んだのに、相手はしっかりと踏んばって耐えている……まったく、とんでもない硬さの甲羅だこと。

 まぁ、素体が素体じゃそれも当然か……ロブスタークロウフィッシュのシザー、だっけ?







「貴様こそやるじゃないか、クイント・ナカジマ。
 オレの甲羅に阻まれて、なおこれだけの衝撃を伴う一撃とは、こちらの予想以上だぞ」







 それは……どうもっ!

 押し返してきたシザーの腕を私も弾いて、お互いに距離を取る。



「世辞などではないぞ。実際に貴様は強い。
 他の降魔点を守る我が同胞達……当たった相手によっては十分に勝ちを狙えるレベルだった。
 だからこそ……」











「“我々”に当たってしまったのは、貴様にとって不幸だったな」











 …………『我々』!?

 相手はシザーだけじゃない――とっさに周囲を見回す私だけど、相手は思いのほかあっさりと、堂々と姿を現した。

 そう。現したんだけど……







 ………………ちょっと待って。







 これでも私は、ジュンイチくんの親のひとりを自負してる――で、ジュンイチくんがうちで仮面ライダーのディスクを見ていたところに何度も出くわしてるから、それなりに作品についての知識もある。



 けど、今はそのことをちょっと後悔。

 だって……わかってしまったから。



 現れたのが、“どれだけ危険な相手なのか”。







 ――“水”のエル。



 ――“地”のエル。



 ――“風”のエル。







 『アギト』の最強怪人、エルロード――しかも、それが三種総登場。

 挙句の果てに、三人ともが強化体……そう。『原作』では強化体の登場しなかった“風”のエルも、他の二体と同じように前垂れが装飾に追加されてる。エルロード強化体、共通の特徴だ。

 もしかして、これって……



「けっこう……ヤバイ?」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「……フンッ、やはりか」



 ネガタロスの言葉に、僕らはすぐに“それ”に気づいた。

 すなわち、あちらさんが各“降魔点”に配置しているだろう防衛戦力……そこに、かなりの大物を配置しているってことに。

 なので、ジュンイチさん達ほどじゃないけどそれなりの感知スキルを持ってるマスターコンボイに探ってもらったら……その通りだったらしい。



「各“降魔点”の周囲にやたらとデカイ反応がゴロゴロしてる。
 すでにスバルや泉こなた、クイント・ナカジマが接敵……次に接敵しそうなのはエリオ・モンディアルか」



 まったく……やってくれるね。

 ネガタロスの性格的に正面突破にこだわるだろうから、そっちに戦力を優先して、“降魔点”の防衛にはそんなに強力な戦力は置かないだろうと踏んでたんだけど……ザインの仕業だな、間違いなく。



「ヤバそう?」

「『心配ない』と言いたいところだが……正直、五分五分といったところか」



 尋ねる僕に、マスターコンボイがそう答える。



「単純に戦力だけで比較するなら、完全にこちらが負けているが……それでも、アイツらがそう簡単にやられるものか。
 貴様ほどではないが、スバル達だって“JS事件”の頃から再三自分達より強い相手を相手にしてきている。その経験を活かすことができれば、勝負はわからん。そういう意味での『五分五分』だ。
 それに……」

「…………だね」



 マスターコンボイの言いたいことはわかる……なので、アルトをかまえて、ネガタロス達をにらみつける。



「アイツらを僕らが速攻で叩いちゃえば、それで終わり……だものね」

「へっ、確かに、そっちの方が手っ取り早いよな!」



 告げる僕の言葉にモモタロスさん(in良太郎さん)が答えて、僕らは改めて戦闘体制に移行。



「フンッ、それこそムリだろ。
 お前ら、オレ達がそう簡単にやられるとでも――」











「思ってるさ」











 ネガタロスの言葉に被せた時には、もうマスターコンボイがその眼前に飛び込んでた――こっそりアクセルダッシュ(四倍)を発動させていたんだ。

 そのまま、相手の反応も待たずにオメガを一閃して――





















 空を薙いだ。





















 刃がネガタロスを捉えた瞬間、風船が弾けるみたいにネガタロスの姿が消えた。

 超スピードでかわした――とかじゃない。

 これは……



「幻術か!」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「えぇ、その通りですよ」



 あちらに向かわせたイマジンに撮らせている中継――映像の中で悔しがっているチビスケ達にザインのヤツが告げる。

 今、オレ達がどこにいるかと言うと――まぁ、一応首都にはちゃんと来ている。

 ヤツらの推理の通り、南側のルートから進軍した。

 ただし……ヤツらと接触する前に、転送によって一足飛びに新市街までショートカットさせてもらった、それだけの話――ちょうど今、転送を終えて新市街・南地区のメインストリートに降り立ったところだ。

 『卑怯』とか言うなよ? ちゃんと四つのルートのひとつから進軍したし、そもそも四つのルートから“どういうふうに”首都の中心まで進軍するかは言っていなかった。

 少なくとも宣言した内容には反していない。ウソを言ったことにはならないからな――まぁ、裏をかかれて悔しがっているヤツらの姿にちょっとだけ優越感に浸っているのも事実だが。



「悪の組織の人間の言うことを真に受ける方がバカなんだよ。
 あばよ、電王――オレ達はこのまま中央まで進ませてもらうぜ」



 ともあれ、今は自分達のすべきことをするだけだ。映像の中の電王達に言うと、首都中央に向かおうと歩き出して――





















〈…………そんなことだろうと思ってたよ〉





















 ………………何?

 映像の中のチビスケの声に、ふと足を止める――その拍子に、気づいた。



 ……人が、いない。



 時刻は正午。廃棄都市と違って人の生活する新市街だ。そこら中に人があふれていてしかるべきなのに……見事なまでに誰もいない。

 これはまさか……ひょっとしなくても、封鎖されている!?

 と、そんなオレ達の目の前に、突然光の塊が現れた。

 色は緑。その光が弾けると、中から姿を現したのは――



「なめたマネしてくれんじゃねぇか、えぇ、おい!」



 電王――赤鬼野郎のついた特異点。



「けど、残念。
 ボクらを釣り上げようなんて、ずいぶんと思い上がったもんだね」



 青亀野郎。



「こっちだって、お前らの言うこと全部を真に受けたりしねぇっつーの」

「その通り!」



 ゼロノスとその相方。



「めんどくさいんだからさ、変な小細工とかなしにしてくれる?」



 クレーン車から変形するトランスフォーマー。



「そちらにはザインがいるというのに、素直に進軍すると思えという方がムリな話だ」



 ザインの元同僚。確か名前は炎皇寺往人……おい、言われてんぞ、ザイン。



「そのようですね。
 なるほど……そちらも、私達の手を読んでいたというワケですか」

「ネガタロスはともかく、策士として“被害は最小限、効果は最大限”を地で行く貴様が、主の方針とはいえ真っ向勝負に素直に乗ってくるとは思えんからな。必ず、ネガタロスをうまく言いくるめてこちらの裏をかいてくると思っていた。
 手口についても、貴様が“水”属性、すなわち転送系のエキスパートであることを考えれば、だいたいの予想はつけられる――だからこちらも、あらかじめ遊撃隊を用意しておき、貴様らの転送反応をキャッチしたのにあわせてシャマルに転送してもらった、というワケだ」

「なるほど……
 しかし、今の私の主はネガタロス様……私の進言に耳を貸さず、そのまま真っ向勝負に踏み切っていたらどうするつもりだったんですか?」

「その時は遊撃部隊が奇襲部隊に変わるだけの話さ。
 だが……まぁ、その心配はしていなかったがな」



 こちらを見て、炎皇寺往人が告げる――その視線に込められているのは、敵に向けるものとは思えない強い信頼の色。



「ネガタロス――貴様のことだ。こっちがこうして対抗してくることを、むしろ期待していたんじゃないのか?
 ザインにあっさりだまされるような輩ならその程度。戦う価値もない相手としてそのままクラナガンを陥としてしまってもかまわない。
 だが、逆にザインの策を読んで対抗してくるようなら、それこそつぶしがいのある獲物だということ……どちらに転んでも、貴様にとって不都合なものはない。
 貴様はオレ達を試す意味で、自分の趣旨に反するザインの献策にあえて乗った……違うか?」

「否定はしねぇよ」



 こいつら、オレの気性まで読んでこうして対抗してきたってのか……おもしれぇ。

 ザインが策にこだわる気持ちが少しわかったような気がする。コソコソ頭使って戦うことの何がおもしろいんだと思っていたが……なかなかどうして、こういう読み合いもけっこう悪くねぇな。



「いいねぇ。それでこそ叩きがいがあるってもんだ。
 せいぜい楽しませてもらおうか、電王にゼロノス、そして機動六課!」

「上等だ、オラ!」

「楽しむ余裕なんかやるかよ。速攻でブッつぶしてやる!」



 オレの改めての宣戦布告に、電王とゼロノスが答える。二人して同時にベルトを腰に巻き、











『変身っ!』

《Sword Form》

《Change and Up》












 二人が、ライダーの姿へと変身する――だから、



「それなら、こっちも」



 言って……オレもまた、腰にベルトを巻く。

 すでに手にはライダーパス――かつてヤツらから奪い、そのままオレのものになっているそれを、ベルトにかざす。











「…………変身」

《Nega Form》












 瞬間、オレの全身をスーツが包む……電王の変身過程と同じく、一度プラットフォームに変身。

 なお、オレ様の自慢の角とかがどうスーツの中に収まっているのか、その辺の質問は一切受けつけん……というか、オレにもまったくわからん。どうなってるんだ、これ。

 そんなことを考えている間に、プラットフォームの上半身にプロテクターが装着される。赤鬼野郎の変身と同じアーマーの、色違い+模様入り。

 最後に、オレの一部が電仮面となってマスクに装着される――そして出来上がるのは、赤鬼野郎の変身した電王の色違い。もっとも、強さはこちらが別格だがな。



「さぁ……」







「本物の“悪”を、見せてやる」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「……どうやら、向こうも始まったようだな」



 仕込みがバレたザインが幻術を解除したんだろう。マスターコンボイにつぶされたネガタロスの幻に続いてザインやデスイマジンの姿が消えた――そこから向こうが開戦したと読んだマスターコンボイがつぶやく。

 さて、残っているのはほとんどが雑魚か……それなりの数がいるけど、僕らならどうとでもできるね、こりゃ。



「いや……やっちゃん、簡単に言ってくれるけどなー」

「アイツらを、あたしといぶきだけで相手しろっての?」



 こっちも、マスターコンボイが幻術を解除して良太郎さん達の虚像が消滅。“本来の”ここの配置メンバーだけになる。

 つまり――僕とマスターコンボイ、いぶきになずなの四人。最初から、さっきレオイマジンと一緒にここから離れていったあずささんを含めた五人だけでここを守る算段だった。



 で、どーして今の発言、いぶき達が僕らをカウントから外したかっつーと……



「だから……さっさとアイツ、ぶっつぶして来てよね」

「負ける気はあらへんけど数の差が差やからね。進軍を優先されたら、広域攻撃のないウチらじゃけっこう取りこぼしてまうと思うからなー」

「わかってるよ」

「瞬殺して合流してやるから待っていろ」



 マスターコンボイと二人でいぶき達に答えて、“そいつ”の前に進み出る。

 そう。“ほぼ”雑魚だらけなこの場のネガショッカー側戦力、その唯一と言ってもいいくらいの例外――







 フェイト達の時間を奪った張本人、バラのイマジン――ローズイマジンの前に。







 やっぱり、ヤツは正規にここ配置だったか。

 フェイト達の時間を奪った以上、コイツが僕らの最優先ターゲットになることなんて、ザインどころかネガタロスにだってわかるはず。

 となると、ザインのことだ。絶対に自分やネガタロス達とは分けて配置する……自分達のショートカット作戦に気づかれたとしても、ネガタロスや自分に向ける戦力とローズイマジンに向ける戦力に分断できるから。

 そう読んで、僕だけはネガタロス達を無視してガチのこっち配置にしてもらったんだけど……正解だったね。



「さて、いぶきやなずなから頼られちゃったし……」

「速攻で叩いて、なのは達の時間を取り返すぞ!」

《手加減なしでブッつぶしてやろうぜ、ボス!》

《バシッと決めていきましょうっ!》







(第28話に続く)





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



次回、とコ電っ!



「オレがただ、時間を奪えるだけだとでも思っていたのか?」



「よくがんばったが……ここまでだ」

「まだ……だ……っ!」



「まさか、アイツらまでネガショッカーに加わっていたなんて……っ!」

「ヤバイ相手なのか?」

《少なくとも……ここでの参戦に『最悪』とコメントできるくらいには》



「お前……何者だ!?」

「何者もクソもねぇよ……」





第28話「オレはオレだ!」





「誰にケンカを売ったか、教えてやるぜ!」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あとがき



Mコンボイ「ついにネガショッカーとの最終決戦が開幕した第27話だ」

オメガ《決戦前夜の主要メンバーの姿と、開戦の様子……ですね。
 未描写の部分も含めると、四方の防衛ライン、八ヶ所の“降魔点”、そして転送でクラナガン新市街までショートカットしてくれたネガタロス達とそれを迎え撃つミスタ・良太郎達……全13ヶ所ですか。
 しかもその中でも対戦カードごとにさらに細かく戦いの場面が分かれていく、と……》

Mコンボイ「また長丁場になるんじゃないか? これは……
 あと、スバルや泉こなた、クイント・ナカジマが向かった以外の“降魔点”でも今回の話のラストの時点で開戦まで至っているんだがな……あの流れで残りの場所まで描こうとするとさすがにくどくなるだろうという判断で残りの場所については次回に持ち越しだ」

オメガ《…………次回予告、思いっきり大苦戦ムードなんですけど。
 え、何ですか? ミス・ティアナ達……出番と同時に苦戦決定ですか?》

Mコンボイ「オレ達も人のことは言えなさそうだがな。
 まぁ、反撃に向けて話を盛り上げるため、とでも思っておけばよかろう」

オメガ《というか……予告のラストでしゃべってるこの人って……あれ?》

Mコンボイ「思いっきり“ヤツ”の決めゼリフだな……
 だが、ヤツは今の段階では……」

オメガ《とりあえず、次回の時点で正体を明かしてくれるところまで進んでくれそうですけどね。
 ……っと。さて、そんなこんなで、そろそろお開きの時間ですね。
 みなさん、今回も読んでくださって、本当にありがとうございました》

Mコンボイ「次回も必ず読むがいい」





(おしまい)







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