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頂き物の小説
第26話「ゲーム、スタート」:02



 ネコイマジンが……変身した。

 万蟲姫ちゃんについて、電王の新しいフォームに……例によって『電王』とは名乗らないみたいだけど。



「そんじゃ……やりますか」



 そして、ネコイマジンの変身した電王……ロッドフォームの色違いならぬ“電仮面違い”、仮面ライダーシーフが腰のデンガッシャーを取り出し、組み立てる。

 完成したのは、ジークさんのウィングフォームと同じ、2、3番のパーツからなるショートアックスと1、4番のパーツを連結したブーメラン……あ、ブーメランの方がまっすぐ連結されている。ブーメランじゃなくて、ナイフとかダガーみたいな感じで使うつもりかな?







「よっしゃ、いくぜっ!」







 デンガッシャーを組み上げて、シーフが走る――さっきから私にちょっかいをかけてきてる、アルマジロのイマジンに向けて。







「どいてろ、高町なのはっ!」

「おもしれぇっ!
 そんなちっぽけな斧とナイフで、オレとやろうってか!」







 私の脇を駆け抜け、突撃していくシーフに、向こうも興味を持ったらしい。私よりもシーフの方を迎え撃とうとするけど……







「悪いなっ!」







 それはほとんど一瞬と言ってもいいような、そのくらいスピーディで、なめらかな反撃だった。アルマジロイマジンの拳をかわして懐にすべりこんで、







「そのっ!」







 お腹の、甲羅の継ぎ目に、逆手に持ったダガー形態のデンガッシャーを思い切り突き立てる。

 その時にはもう、反対の手に握るショートアックス形態のデンガッシャーを水平方向に振りかぶっていて――







「つもりだぜっ!」







 打ち込んだ。

 ショートアックスで、“ダガーの柄尻を”思い切り――甲羅の継ぎ目に刺さり、だけど貫けずにいたダガーの刃は、ショートアックスの一撃で一気に甲羅の内側へと打ち込まれた。







「ぐおぉっ!?」







 さっきから、私の反撃を甲羅の強度任せで防いでいたアルマジロイマジンだ。まさか抜かれるとは思ってなかったんだろう。お腹にダガーが突き刺さったまま、痛みにうめいて後ずさりして――







「おっと、逃がさないぜ!」







 シーフが言って――彼とアルマジロイマジンの間に光が走った。

 デンガッシャーに宿る電王のエネルギー、フリーエネルギーの光だ。アルマジロイマジンのお腹に刺さったダガーとショートアックスを、それぞれの柄尻でつないでいる……まるで鎖鎌のように。

 そして、シーフがそれを引く――フリーエネルギーの鎖に引っぱられて、引き寄せられたアルマジロイマジンの顔面を思い切り蹴り飛ばす。

 ついでに、アルマジロイマジンの身体から刺さったままのダガーを引き抜いて回収――顔面への蹴りでふらつくアルマジロイマジンに、両手のデンガッシャーで立て続けの斬撃。

 しかも、全部甲羅の継ぎ目を的確に――うん。あれじゃどれだけ甲羅が硬くても関係ないね。







「こん……のぉっ!」







 とはいえ、得物の小ささは否めない――決定的なダメージには足りなかったみたいだ。アルマジロイマジンが斬られるのもかまわずシーフに襲いかかって――うん。







「私を……忘れないでよっ!」

《Divine Buster》







 無視されてちょっと傷ついた私が援護砲撃。たっぷりとチャージさせてもらったディバインバスターをお見舞いする。







「ネコイマジン、決めちゃえ!」

「おぅよ!」











《Full Charge》



「遊びは……終わりだっ!」











 私に答えて、シーフがデンオウベルトにパスをセタッチ。デンオウベルトから発生したフリーエネルギーが、デンガッシャーにチャージされていく。

 けど……エネルギーはデンガッシャーそれぞれの刃には流れていない。むしろ柄尻、それぞれをつないでいるフリーエネルギーの鎖へと流れているような……







「そうら!」







 チャージされたエネルギーの行き先にかまうことなく、シーフが両手のデンガッシャーを投げつける――ただし、アルマジロイマジンの左右に向けて。

 その結果、アルマジロイマジンを捉えるのはダガーとショートアックスをつなぐフリーエネルギーの鎖だ。そのままアルマジロイマジンにからみついて動きを封じる……なるほど、このためにデンガッシャーの刃じゃなくて鎖の方を強化したのか。

 ということは……











「どぉりゃあっ!」











 やっぱり。

 “チャージしたデンガッシャーで動きを止めてから……”っていうのはウラタロスさんと同じだもんね。

 と、いうワケで――動きを止められたアルマジロイマジンを待っていたのは、シーフによるトドメのデンライダーキック。ウラタロスさんの片足蹴りとは違って、両足でのドロップキックをお見舞いする。

 蹴りの反動で跳んだシーフが軽やかに着地。対してまともに一撃をもらったアルマジロイマジンは仰向けに蹴り倒されて――爆散した。



「よっしゃあっ!」



 ガッツポーズで、シーフが勝ちどきの声を上げて……







《…………なの姉》







 ………………? どうしたの、プリムラ?



《あのフォーム……“犯罪クライム”だから“シーフ”って名づけた……んだよね?》



 うん。そうみたいだね。



《で、デンオウベルトは『Climb Form』って言ってた》



 それがどうしt……







 ………………あ。







《“犯罪”って意味だと……スペル、『Crime』じゃなかったっけ?》



 …………うん。

 えっと……『Climb』って書く方の“クライム”って、意味何だっけ?



《“登山”です、マスター、プリムラ》



 ありがと、レイジングハート。

 えっと……つまり、あのデンガッシャーの形はショートアックスがピッケル、ダガーが崖に打ち込むアンカーを象徴してるのか……



 ……って、問題はそこじゃなくて……



《つまり、あのシーフって名前……》

「語源と、まったく関係なし……?」







 ………………

 …………

 ……







「……本人には秘密にね」

《異議なーし》

《了解しました》







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「向こうは、どうやら終わったようだな」

「だね」







 マスターコンボイの言葉に軽く同意――ネガタロスの剣をアルトの一閃で弾き飛ばしながら。







「なら、こちらもそろそろ終わらせるとしようか」







 と、そんなことを言い出すのは、さっき万蟲姫を助けに乱入して、僕らを驚かせてくれた青い本棚ライダー……ディエンド。







「ほ、本棚……
 仮面やプロテクターのライドプレートを本に見立てたのだろうが……そんな呼び方をしたのは貴様が初めてだぞ」







 僕の言葉になぜか若干ショックを受けたみたいだけど、すぐにディエンドは立ち直る……んだけど。



 …………うん。やっぱり気になる。

 ディエンドの声に聞き覚えがある。

 すごくよく知ってる人の声にそっくりだ……だけど、同時に違和感を感じる。

 そっくりなはずなのに、どこか違う……何だろ、この違和感。

 それに、本当にディエンドの正体が“あの人”とは思えないし……だって、“今現在どこにいるか把握済みだし”。



 そんな感じで首をかしげてる僕にかまわず、ディエンドが手にした銃にカードをセットする……まるで、さっきディエンド自身が召喚したゾルダみたいに。







《FINAL-ATTACK-RIDE!
 “DI《“DI《“DI《“DIEND”!》








 銃からの発声に伴って、ディエンドがかまえた銃の前方に光のカードがばらまかれる――そしてそれは、ディエンドが召喚したライダー達をも巻き込んだ。彼らもまた光のカードの群れに姿を変えて、銃口を中心に渦を巻く。

 そして――











「ディメンション、シュート!」











 ディエンドが引き金を引いた。銃口から解放されたエネルギーが光のカードを飲み込み、より巨大な破壊の渦と化すと逃げ出そうとしたタイガーオルフェノクを追尾、直撃する。

 ついでに周囲のネガショッカー所属の怪人さん達をも巻き込んで、まとめて薙ぎ払う――嵐が過ぎ去った後には、メチャクチャにされた銀行の窓口だけが残されていた。

 そして――







「ぐぅっ!?」







 ジュンイチさんと戦っていたデスイマジンもチェックメイト。ジュンイチさんの爆天剣に自慢の大鎌を中ほどで断ち切られて、ネガタロスのすぐ目の前に蹴り飛ばされてくる。







「さて、どうするよ?
 貴様らの自慢の手下どもは、もはや壊滅状態だが」

「あぁ、そうだな……
 もう少しがんばってくれるかと思っていたが、まぁ、こんなもんだろ」







 オメガを突きつけたマスターコンボイだけど、ネガタロスはまだまだ余裕……見ればザインもニヤニヤと気に入らない笑いを浮かべたままだ。

 何だ、この余裕……まさか、また何か企んでる?



「ずいぶんと余裕じゃねぇか。
 何企んでるのか知らねぇが……実行前につぶしちまえば関係ないんだぜ!」



 僕と同じことを考えたらしいジュンイチさんが、相手の反応も待たずに仕掛ける――ネガタロスを無視してその脇を駆け抜けて、一足飛びにザインを狙う。

 ――ダメだ。向こうもそのくらいは読んでたみたいだ。ジュンイチさんの振り下ろした爆天剣は、ザインの目の前で、ザイン自身の力場によって止められた。



「やれやれ、見くびられたものですね。
 私程度なら、策など弄さず真っ向勝負でも楽勝で叩けるとでも思ったのですか?」

「あぁ……その通りだよっ!」



 答えながら、ジュンイチさんが再度の斬撃……やっぱり止められた。

 ジュンイチさんだって、ザインの力場が強化されていることは織り込み済み、その上で斬りつけたはず……それでも止めるとか、どういう強度の力場だよ。



「ったく、その対物強度がうらやましいな……お前の力場はっ!」



 言いながら、ジュンイチさんは炎による攻撃に切り替える……やっぱり止められた。冗談抜きで硬いぞ、アレ。ひょっとして横馬のガードより硬くない?



「バカにしないでよっ! 私のディフェンスの方が硬いんだからっ!」



 はいはい。魔王も対抗意識燃やさない。







「ヤスフミ!」

「お前ら、無事か!?」







 ……っと、ここで援軍到着か。

 さっきのディエンドの必殺技……アレでぶち抜かれた壁の穴から真っ先に飛び込んできたのは、確認するまでもない。フェイトとイクトさんだ。



「ウチらもおるでーっ!」

「ったく、もう終わってると思ったのにまだなワケ? 何チンタラやってるのよ、あんた達」



 あ、いぶきとなずなもいる……そしてなずなは大きなお世話じゃ。

 で、最後に姿を見せたのは四人を運んできたらしいジャックプライム……あの、なんですでにボロボロ?



「聞かないで……」



 ………………?

 まぁ、いいや。とにかくフェイト達までやってきて、戦いの流れは完全にこっち側……なのに。



「やれやれ……やっとご到着か。
 もう少し早く現れるかと思ったが……足止めに差し向けたワームに手こずったか?」



 それでも尚且つネガタロスは余裕だったりする……とりあえず、ジャックプライムをボロボロにした犯人だけはわかったけど。



「『もっと早く現れるかと……』か。
 つまり……フェイトやイクトの登場も読みの内ってワケか!」

「えぇ……そういうことですよ!」



 ジュンイチさんに答えて……そこで初めて、ザインが攻勢に出た。人の身の丈ほどの太さの水流がジュンイチさんを至近距離から直撃、吹っ飛ばす!



「にゃろうっ!
 この程度で、オレが……っ!」



 けど、そこはジュンイチさん。あっさり立て直して着地して――











「きゃあっ!?」

「どわぁっ!?」











 そこにいたなのはに気づかず、背中からまともにぶつかった。

 味方を巻き込むとか、またジュンイチさんらしくないミスを……ひょっとして、ここ最近なのはのこと変に意識しちゃってるから、無意識に無視してたとか?

 とにかく、ぶつかった二人はそのまま二人してひっくり返って……











 ………………あ。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「いてて……」



 あー、くそっ、かわしきれなかった……

 至近距離であんな大規模水流とか、昔のアイツが撃てるシロモノじゃなかったのに……マジでパワーアップしてやがる……







 …………つか、あれ?







 ちょっと待ってのしばし待て。

 オレ、確かザインに吹っ飛ばされたんだよな……?

 で、あるからして……普通に考えれば、オレの激突先は今いる銀行の床なり壁なりだったりするはずだ。

 なのに……背中、っつーか、今現在オレの後頭部が感じてる感触はそんな感じじゃない。

 銀行の床じゃない。なんかもっと柔らかい……







「……あ、あの……ジュンイチさん……」

「なのは……?」







 あれ? なんでここでなのはの声が?



「あの、その……
 そろそろ、“私の上から降りてもらえると”助かるんですけど……ちょっと重……」

「………………え?」



 いやいや、ちょっと待て。ちょっと待ったのしばし待て。

 なのはのヤツ……今何つった?

 『自分の上から』? つまりオレ……アイツの上に乗っかってる?

 ってゆーか今、なのはの声ってオレの頭のすぐ上からしたよな?



 OK。状況を整理しよう。

 オレはなのはの上に乗っかってる。

 なのはの声の発生源はオレの頭のすぐ上。

 ってことは……オレの後頭部のこの柔らかいのって……











 …………なのはの…………………………胸?











「ぅだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」



 一瞬思考が途切れて、自分の上げた悲鳴に我に返る――その時にはもう、なのはの上からどいて……というか、思いっきりその場から後ずさりした後だった。



 びっ、ビックリしたーっ!? 何ラッキースケベイベントやらかしてるのオレっ!?

 つか恥ずかしーっ! 恭文とかマスターコンボイとかも、やらかしてる時はこんな気分だったのか!?

 悪かったな。お前らの気持ちがよくわかったよっ! からかうのはやめないけどっ!



 あー、くそっ、我ながら顔真っ赤なんだろうなー。なのはもなのはで、恥ずかしそうに胸抱えてるしっ!

 心なしか頭のリボンもしょげ返ったみたいに垂れてるし、後ろからなんかツタっぽいものがゆらゆらと……







 ………………

 …………

 ……











 …………………………“ツタっぽいもの”!?











「なのは! 後ろだ!」

『――――――っ!?』



 オレの上げた声に、なのはが、恭文達が気づく――同時、ただ揺らめいていただけのツタがいきなり激しく動いた。

 周りの床板を吹っ飛ばし、勢いよく伸びたそれがなのはに襲いかかり――させるかっ!

 すでにオレは動いてる。なのはに向けて全力ダッシュ――正直、間に合うかどうかギリギリ紙一重って感じだけど……間に合えっ!



 完全に反応が遅れた――そしてそれは、オレがらしくもなく動揺しちまったせいだ。

 さすがのオレだって、あんなシチュで動揺しないワケがない……けど、いつものオレならその動揺を抑え込んで、あくまで冷静になのはに詫びることができていたはずだ。

 けど、いつもみたいにできず、動揺して、なのはから距離を取って……結果なのはのカバーが遅れた。

 オレがしっかりしていれば防げたピンチなんだっ! 絶対に……拾ってみせるっ!



 これ以上はムリってくらいに加速。なんとかなのはをその場から突き飛ばして――











 次の瞬間、





















 オレの視界が閉ざされた。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ジュンイチさん!?」







 それは一瞬だった……そして、完全に不意を突かれた。

 ラッキースケベイベント発生で動揺しまくるジュンイチさんに完全に注意を持っていかれて、なのはに迫っていた何かのツタらしきものにまったく気づかなかった……おかげで、真っ先に気づいたのは動揺しまくっていたジュンイチさん本人だったという有様。

 気づかれて開き直ったのか、ツタが一気になのはに襲いかかる。僕らのフォローが間に合うタイミングじゃなくて……ジュンイチさんが、なのはを守りに飛び込んだ。

 なのはを突き飛ばしてその場から逃がして――







 ツタに全身を絡め取られて、あっという間にその姿を覆い尽くされた。







 さらにツタは巻きつき、ジュンイチさんの身体を何重にも覆っていく――あっという間に、まるで毛糸玉のように絡まるツタの玉の出来上がり。







「ジュンイチさんっ!」







 なのはの悲鳴が聞こえる――けど、心配無用っ!

 お前のフォローのためにすでに走り出してた僕がいるっ! ジュンイチさんを覆い尽くしたツタの玉、その玉を支えているツタの群れを、手にしたアルトで叩き斬るっ!

 まだ何本か残ってるけど……十分だ。残ったツタだけでは支えきれなくなって、ツタの玉は地面に転がる。







「メープル、サニー!」

「はいはいっ!」

「任せといて!」







 名前を読んだだけですぐに気づいてくれた。僕の呼びかけで動いたメープルとサニーが、地面に転がるツタの玉をほどきにかかる――あっちはアイツらに任すとしてっ!







「マスターコンボイ!」

「捉えた……そこだっ!」

《Icicle Cannon》

《Energy Vortex》








 こっちも僕の合図で動いてくれる――マスターコンボイとの同時砲撃で、ツタの生えていた辺りの床を爆砕っ!







「ちぃっ!」







 ……ビンゴ。爆発の中から、イマジンがひとり、飛び出してきた。

 トゲ付きのツタが中身に巻きついたような感じの身体で、あちこちに真っ赤な花が……一目でわかるね。バラのイマジンだ。モチーフは『いばら姫』とか?







「アイツが……っ!
 よくも、ジュンイチさんをっ!」







 まぁ、そんなことはどうでもいい。問題なのは――アイツがなのはを狙って、それをかばったジュンイチさんをあのツタ玉に閉じ込めてくれたということだ。

 と、いうワケで……ある意味原因となったなのはがキレたのもムリのない話か。レイジングハートをバラのイマジンに向けて――







「させませんよ」







 ――って、ザイン!?

 いきなり現れたザインが、なのはのぶっ放した抜き打ちの砲撃を受け止める――なるほど。







「ソイツをつぶされたら困る、か……どうやら、ソイツがお前の大本命のようだな」

「えぇ、その通りです」







 イクトさんのカマかけに、あっさりうなずく……ごまかす気ゼロかい。







「もうごまかす必要もありませんから。
 少し予定とは違う形になりましたが、それでも私の策の狙いを考えるといい方向に進んでますからね。
 おかげで……」





















「頭に血が上って、“もう一度狙われていることに気づいていない”」





















 ――――――っ!







「なのh







 気づくけど、一瞬遅かった――僕の警告よりも早く、さっきみたいに地中から飛び出してきたツタが今度こそなのはを捕獲。ジュンイチさん同様ツタ玉状態に拘束して――







「きゃあっ!?」







 ――――フェイト!?







 すぐ後ろで悲鳴が上がる――フェイトも捕まった!?

 くそっ、ジュンイチさん、横馬と立て続けにやられて注意を逸らされたっ!







「フェイトっ!」







 振り向きざまにアルトを一閃。ツタの一部を叩き斬って、フェイトの捕まったツタ玉を床に転がす。







「フェイト!」

「テスタロッサ!」







 イクトさんと二人で、あわててツタをほどきにかかる……横馬? 知るかっ!











「………………明日だ」











 ………………?

 ネガタロス……いきなり何を……?



「今回の作戦、目的は貴様らに挑戦状を叩きつけること……そしてその三人が、“挑戦状”だ」

「どういうこと!?」

「今度は何企んでるん!?」



 なずなといぶきがそれぞれの得物をかまえるけど、ネガタロスは余裕の態度のまま続ける。



「明日正午、オレ達はクラナガンの四方、東西南北それぞれのメインストリートから、中央部へと配下の怪人軍団を進軍させる。
 そして、いずれかの部隊がクラナガン中心部にたどり着いた時……」











「そこを中心に、“降魔陣”を発動させる」











 な――――――っ!?



「すでに“仕込み”は終えています。
 陣の構築は完了。後は陣の中心から術を発動させるだけです」



 驚く僕らの表情に満足したのか、ザインがムカツク笑顔で説明してくれた……くそっ、やってくれる。



「貴様ら……何のつもりだ?
 わざわざ自分達の作戦を説明するなど……」

「言っただろう? 『挑戦状』だと。
 これはお前らに対する決戦の申し込み……悪の組織らしく、世界をエサにお前ら“正義の味方”と決着をつけようっていうんだ。
 まぁ、お前らの中には『世界なんてどうでもいい』なんてのたまうヤツらもいるらしいからな……そいつらを引きずり出すために、改めて“挑戦状”を用意させてもらったがな」



 マスターコンボイの問いには再びネガタロスが答える――そうか。それが、ジュンイチさん達三人……っ!



「これで貴様らは戦いに出てくるしかない。
 クラナガンを守るために……そして、そいつらを“元に戻す”ために」



 『元に』……?

 このクソタロス、フェイト達に何を……!?











「………………なっ!?」











 イクトさん……!?

 ネガタロス達の相手を僕らに任せて、フェイトの救出に専念していたイクトさんが固まった。



「そんな……!?」

「ウソでしょ……!?」



 ジュンイチさんを助けてたサニーやメープルまで……!? いったい、何が……











 ………………なっ!?











「そういうことだ」



 僕らの反応がよほど楽しかったらしい。バラのイマジンが初めて僕らに向けて口を開いた。



「見ての通りだ。
 もらったぜ……お前らの“時間”」



 ヤツの言葉に……理解した。



 アイツらが、僕らへの“挑戦状”として“何をしたのか”。



 僕らを本気にさせるために……“何を奪ったのか”。



「取り戻したければ、全力でオレ達と戦うことだ。
 オレ達は本気の機動六課と戦いたいんだ。こちらを舐めてかかっているお前らに勝ったところで自慢にもなr

「――――――っ、貴様ァッ!」



 咆哮と共に、蒼い炎が荒れ狂う。イクトさんの放った炎が、まだセリフが途中のネガタロス達を飲み込んで――過ぎ去った後には、何も残ってはいなかった。

 そう……ほんの一かけらの消し炭すらも。つまり……



「…………逃げ……られた……?」



 結論を、いぶきが代弁してくれた……そう。逃がした。逃がしてしまった。

 目の前の……この現実を、この理不尽を、ひっくり返すこともできないままに。

 あのバラのイマジンのツタに捕まって、救出された三人……











「あの……ここ……どこですか……?」











 なのは。











「……おとーさんは……?……おかーさんは……?」











 ジュンイチさん。



 そして……











「あの……あなた達………………誰、なんですか……?
 母さんは……? リニスは、どこ……?」











 ………………フェイト。











 思い知らされた……守れなかったと。











 フェイト達の“時間”を……僕らと出会い、過ごしてきた今までを、積み重ねてきた記憶を……根こそぎ奪われたんだと。



 アイツらに、“時間”を奪われて……





















 小さな子供の頃にまで“戻されて”しまった三人を前に……僕は心の底から、思い知らされていた。







(第27話に続く)





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



次回、とコ電っ!



「若返ったとか、そんなんじゃない……正真正銘、“戻ってる”……」



「今度こそ……つぶす」

「上等だよ」



「本気を出したのは、お前らだけじゃないってことさ!」



「私……なのは。
 高町、なのはだよ」

「高町……」

「なのは……?」





第27話「クラナガンまるごと超決戦」





「……このままじゃすまさない。絶対に」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あとがき



Mコンボイ「ネコイマジンの変身の披露と共に急展開。片づいたと思ったところを見事に突き落としてくれた第26話だ」

オメガ《本当にやってくれましたね……。
 本家『とまと』版ではミス・フェイトが記憶という形で“時間”を奪われたのに対して、こちらはさらに人数を増やした上、“身体の時間”まで奪いましたか》

Mコンボイ「あぁ……本当にな。
 しかも、まさか柾木ジュンイチまでやられるとは……」

オメガ《一度現場に出たらKYレベルで敵の主力級を狩り歩く男ですからねー。戦力バランス的に退場していただくべきだと考えたのでは?》

Mコンボイ「おいおい、それじゃあ『Xサイ』が参戦してきている理由がなくなるだろうが」

オメガ《あ…………
 そういえばそうですね……何気にライバルフラグが立ってるのに、ここで退場していたら対決の機会を逃しますよ》

Mコンボイ「作者め、まさか今回の事件中に決着つける気ないんじゃないだろうな……?」

オメガ《さすがにそれはないと思いますが……
 ともあれ、その辺の心配は次回からの決戦の進み具合を見てから改めて考えましょうか》

Mコンボイ「本家『とまと』版と比べて、両陣営共に戦力が増してるからな。
 しかもネガショッカー側はクラナガンの四方から攻め込むと予言している。間違いなく、戦場は廃棄都市群だけでは収まらんぞ」

オメガ《それに、暗躍を続けているみなさんも未だ合流してませんしねー》

Mコンボイ「ディケイド一行か……
 まぁ、最終決戦ともなればさすがに乱入してくるだろうが……」

オメガ《出てきたら、今回“ガタック”が心配してた通りかなりややこしいことになりそうですけど。読者を混乱させて楽しむつもりですかね、あのドS作者。
 ……っと。さて、そんなこんなで、そろそろお開きの時間ですね。
 みなさん、今回も読んでくださって、本当にありがとうございました》

Mコンボイ「次回も必ず読むがいい」





(おしまい)







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



(おまけ)



 思わずひったくりのジャマをして、“スバル達が”話を聞きたいって言ってきたのを無視して……現在、人ごみに紛れて移動中。



 ったく、思わず飛び出しちまったせいで、また面倒なことになっちまったな。

 他人と関わること自体イヤだってのに、その上まさかアイツらに絡まれるなんて、間が悪いにも程があるだろ。

 “オレの知るアイツらとは別人”なのはわかってる……けど、“別の時間の同一存在”である以上はきっと性格も似たり寄ったりに決まってる。

 だとすれば、ヘタに関わればこの先延々とからまれるに決まってる。そんなのまっぴらごめんだっつーの。



 ったく、なんでオレがこんなどうでもいいことで気をもまなきゃならないんだよ。これだから他人と関わるのはイヤなんだ。



 ……と、それはともかく、これからどうするか……

 とりあえず、“見つからないように”どこかに隠れたいんだけど……











「見つけましたよ!」











 あ、見つかった。

 隠れる場所を見つけるよりも先に見つかった――オレを見つけて声を上げたのは、一緒に“こっち”に来たオレのパートナー(自称)。

 一応容姿を説明させてもらうと、身長はオレより頭ひとつ分下。顔は……その辺の評価基準がよくわかんねぇオレはともかく、そこらの連中の目には美人に見えるらしくて、よくナンパされてる。

 ほどいたら腰まで届く長い金髪はその日の気分でいろんな髪型にまとめてる……ちなみに今日は三つ編みだ。

 服装は一般ピープルに混じってもわからないようにごく普通の普段着。空色のミニスカートに真っ白なシャツ、その上に春物の若草色のジャケットを羽織ってる。

 あと……気にするヤツもいそうだから言っとくと、スタイルは抜群にいい。関わりたくないオレにとってはどーでもいいけど。



「まったく……突然いなくなるんですから……
 逃げたのかと思って焦っちゃいましたよ」



 ………………



「……なんで無言で視線を逸らすんですか?
 …………まさかホントに逃げてたんじゃないでしょうね!?」

「さて、晩ご飯はどこで食おうかなー?」

「話を逸らさないでくださいっ!」



 …………チッ。



「ンなこと言われても、やる気なんか出るワケないだろ。
 オレはお前や“ディケイド”にムリヤリ連れてこられただけで、そもそも関わるつもりなんかなかったんだぞ。
 何が悲しくて、わざわざ異世界くんだりまで来て悪者退治なんかしなくちゃいけないんだよ?」

「異世界に逃げた大ショッカーの残党なんかほっとけるワケないじゃないですか。
 それに、瘴魔の残党まで合流してるんですよ」

“こっちの時間の”、だろう?
 “オレ達の時間の”瘴魔でもないのに、なんでオレ達が出張らなきゃならないんだよ?
 そもそも瘴魔にしたって大ショッカーにしたって、オレ達は直接やり合ってないんだぜ。“ディケイド”達とかこっちの時間の連中が戦って、取りこぼしてた連中じゃねぇか。なんでそいつらの尻拭いをオレがやらなきゃならないんだよ?
 つーワケで、オレには関係ないね。好きにやってろってんだ」

「あーもう、ホントにこの人は……」



 オレの答えに、頭を抱えた上に深々とため息をついてくれた。何を今さら。



「とにかく、こうしてこっちに来たからには、ちゃんと大ショッカーの残党は何とかしてもらいます。
 と言うか……でなきゃ“彼”だって元の世界に返してくれないと思いますし」

「……人の足元見やがって……」

「私がですか?
 それとも“彼”がですか?」

「お前も“アイツ”も両方だよっ!」



 くっそー、大ショッカーを片づけなきゃ、帰ることもできないってか……

 あの野郎、“ディケイド”になって世界を渡る能力を持ったからって、何度も気軽に人を巻き込みやがって……これだから他人と関わるのはイヤなんだよっ!



「また言ってる……
 『その性格を直せ』、とは言いませんよ……“そういう性格”だからこそ、あなたが選ばれたワケですし。
 けど、いい加減自覚くらいは持ってくださいよ。あなただって……」





















「れっきとした、仮面ライダーのひとりなんですよ?」







(今度こそおしまい)







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