頂き物の小説 第25話「因縁のネガい、再び」 「…………ふぅっ」 休憩がてら給水所でお茶をもらって、乾いたのどを潤して一息。 ……にしても、異世界で正真正銘、日本の麦茶が飲めるなんて考えてもいなかった。 他にも、食堂のメニューも地球と大差ないし……おかげでたまにここが地球とは別の世界だってことを忘れそうになる。 それはともかく、現在、あたし、雷道なずなは機動六課のオフィスで警邏の報告書の作成中。 別に管理局に属しているワケじゃない、ぶっちゃけ外様のあたし達だけど、業務を手伝ってる以上はその結果の報告はしておく必要がある、ってことでね。 で、あたしはその作業も一区切りついたんだけど…… 「あぅ〜……なっちゃん、手伝ってぇな……」 「お断りよ。 っていうか、いい加減報告書の書式くらい覚えなさい。何回説明受ければ覚えるのよ?」 相方である(と周りから勝手に認定されている)いぶきは頭の使いすぎでグロッキー状態。まったく、初めてやる作業ってワケでもないでしょうに。 「そうは言うけどなぁ……」 「………………」 いぶきの言いたいことはわかる。彼女の見た方へと視線を向けて―― 「ふぇ〜……ティアぁ、手伝ってよぉ……」 「うっさい。黙ってやる」 ……いぶきはともかく、スバルはこの手の作業で手こずってたらいろいろと問題があると思うんだけどねぇ、本職なんだし、エリート職種目指してるって話だし。 おかげでいぶきに対してもしめしがつかない。こちらに向けたキラキラした瞳が「本職のスバルでさえ手伝ってもらってるんだから、自分が手伝ってもらっても悪くないよね?」って猛烈に主張してる。悪いに決まってるでしょうが。 「はやてさんの厚意で手書き、それも日本語での提出OKにしてもらえただけありがたいと思いなさいよ。 本来だったらここの端末使って、ミッド語で作って提出しなきゃならないのよ、報告書」 「ミッド語か日本語かの件はともかく……手書きOKは、間違いなく端末を使えへんなっちゃんやイクトさん向けの配慮やと思うんやけど」 うん。うっさい。 しょうがないでしょ。霞ノ杜神社は基本アナログ派。唯一携帯電話だけは連絡の迅速性重視で積極的に導入してるけど、それ以外はパソコンどころかワープロすら置いてないんだから。 「アンバランスやなぁ」 だからうっさいっての。 「あー、苦戦してますねー、いっちゃん」 「うぅ〜、小夜さん、手伝ってぇ〜」 ついには小夜さんまであてにし始めた。まったく、この子は…… 「あー、もう、わかったわよ」 仕方がないので、イスを持ってきていぶきのとなりに座る――どっちみち、報告書の提出には一緒に警邏に出ていたいぶきの分も必要なんだ。この子のが出来上がるまでヒマを持て余すくらいなら…… 「何だかんだ言って、助けてあげるんですね〜♪」 「うんうん。せやからなっちゃん大好きやわ〜♪」 「って、こらっ!」 小夜さんと一緒にからかいながら抱きついてきたいぶきのせいで、危うくイスごとひっくり返りそうになる。 あー、もう! ピータロスはどこ行ったのよ!? アイツがいればこの子の世話を押しつけられるのにっ! 「ピーちゃんやったらデンライナー行っとるでー」 …………逃げたわね。 ピータロスにどんな“オシオキ”をしてやろうかと考えていた、その時―― ちゅどーんっ! どこかコメディちっくな爆音が聞こえてきた。半秒ほど遅れて隊舎に届いた衝撃が窓ガラスをビリビリと震わせて、あたし達のやり取りをのん気に見ていたカマイタチのポチがビクリと身体をすくませる。 「……あー、“また”やっとるみたいやねー」 「ですねー」 けど、あたし達にとっては特に驚くに値しない。実際、目の前のいぶきや小夜さんはのん気なものだ。 だって、あたし達はこの音の正体に心当たりがあったから。 これは…… ――時の列車、デンライナー。次の停車駅は、過去か未来か―― 『とある魔導師と古き鉄と時の電車の彼らの時間』・『とまコン』バージョン とある魔導師と守護者と時の電車と仮面の戦士達 第25話「因縁のネガい、再び」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ …………ふむ。 両手を握り、開く――その感触を確かめながら、そこに“力”を集中させる。 違和感……なし。 「………………うん。 今日も万全。絶好調」 「それ確かめるためだけに毎日オレ達を吹っ飛ばすのやめてくんねぇかな!?」 ガバッ!と身を起こして、消しずm……もとい、ガスケットがツッコんできた。 「ったく、いったい何なんだな…… ここ最近、毎日毎日吹っ飛ばしてくれて、ワケわかんないんだな」 もうひとつの消しずm……もとい、アームバレットが地面に突っ伏したまま……いや、顔だけ上げてそんなことを言ってくる。 つか、そんなこと言われてもなぁ…… 「そうは言うけど、調子がおかしいことがあった以上、ちゃんと復調したか、毎日確認して経過観察しなきゃならんだろ」 「その方法がどうして“オレ達を吹っ飛ばす”なんだよ!?」 「一番わかりやすいから」 ちゃんとこれ以上なくわかりやすい答えを即答してやったっていうのに、ガスケットのヤツはその場に崩れ落ちた。失礼な。 現在オレ達がいるのは六課の訓練場。目の前にいるのはガスケットとアームバレット……シグナルランサーは呼びに行ったらいなかった。逃げたな。 で、何をしているかと言うと……先日ちょっと調子がおかしくなったことがあったので、調整目的で模擬戦の相手をお願いしたワケ。以上、状況説明終わり。 「大丈夫だって、お前らならな。 お前ら、このオレに鍛えられてるってことを忘れてないか?――ちゃんとその辺を踏まえて、『お前らなら大丈夫だ』って信用しているからこそ、オレだって安心して相手に指名できるんだからさ」 「…………それ、信じてるのは“旦那に鍛えられたオレ達の実力”じゃなくて“オレ達を鍛えた自分の手腕”だろ?」 フォローを入れてやるオレだけど、ガスケットが割と冷静にツッコんでくる……あーあー、聞こえない聞こえなーい。 「だいたい、旦那が調子崩すなんてことがそもそもあるのかよ? 年がら年中絶好調に暴走してるクセしてよぉ」 「はっはっはっ、暴走してるのはお前らの方じゃないか。“暴走コンビ”なんて名乗ってるクセしてさぁ」 「そのオレ達にまで言われるほどやらかしてるって自覚はねぇのかよ」 あーあーあー、聞こえない聞こえない聞こえなーい。 「まぁ、それはともかく……マジレスさせてもらうなら、オレだって調子を崩すことくらいあるわい。 全知全能の神様ってワケじゃねぇんだからな」 そうガスケットに説教かましながら、指先に炎を灯す。 「そして、だからこそ調子の良し悪しには気を遣わなきゃならない。 この炎、エネルギー値計測してみろよ。見た目にはこんな小さな炎だけど、今現在なのはのバスター級の“力”を凝縮してんだぜ――けど、これだってオレ自身がその熱量を精密に制御しているからこその話だ。 ちょっとでも気を抜けば、あっという間に暴発して……」 「ジュンイチさーん」 「どわぁぁぁぁぁっ!?」 「ぎゃあぁぁぁぁぁっ!?」 ………………あ。 いきなりの声に驚いて――今まさに話していた“暴発”が現実となった。オレの制御を離れ、本来の荒々しさを解き放った炎が、目の前で荒れ狂う。 なんか悲鳴が聞こえた気がしたけど……うん。気のせいだと思っておこう。 そんなことよりも、今は驚かせてくれた相手が問題だ。 「な、ななななな、なのは!? ど、どうしたんだよ、いきなり!? 突然声かけんな! ビックリするだろ!」 「……いつものジュンイチさんなら、私が訓練場に足を踏み入れた時点で気づいてるじゃないですか……」 ………………あれ? そういえば…… え? あれ? 今マジで気づいてなかったことないか、オレ? うーん、ガスケット達をブッ飛ばした手ごたえからは特におかしな感じはしなかったけど、やっぱ調子悪いのか……? 今だって心臓バクバクいってるし。 「……ま、まぁ、いいや。 それで……な、何の用だよ?」 「未だにどもりまくってるのが気になりますけど……それはそうと、隊舎の方に連絡が入ってましたよ? クラナガンの、信用金庫からなんですけど……」 「あー……」 なのはの言葉に、思い出す――そーいや、今年も“アレ”の季節が巡ってきたんだなー。 「“アレ”……ですか?」 ひとり納得するオレの顔をなのはがのぞき込んでくる………………って!? 「ぅだぁぁぁぁぁっ!?」 「ちょっ、ジュンイチさぁぁぁぁぁんっ!?」 瞬間、顔全体が熱を帯びたのが自分でもわかった。そして次の瞬間――驚いたなのはの声に気がついた時にはもう、アイツから離れるように後方に大ジャンプした後だった。 え、ちょっ、少し反応過剰すぎませんかね、オレ!? とりあえず、自分の身体を捉えた重力に任せて地面に降り立って―― 「だなぁっ!?」 ………………うん。何も踏まなかった。踏んでないったら踏んでないんだ。 「…………そんなに驚かなくてもいいじゃないですか」 一方、オレが思わず距離を取っちまったもんだから、なのはは不満そうに頬をふくらませてる……んだけど、ムリゆーな。本当に「思わず」な反応なんだから。意図的にやってるワケじゃないんだよ。 あー、くそっ。オレってば、本当にどうしちまったんだ? ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「うーん……」 私の目の前で、ジュンイチさんが盛大に首をひねってる……うん、未だに自覚ないんだね。 自分が“どういう状態”にあるか、まったくわかってないジュンイチさんの姿に、わかっていたとはいえため息をもらさずにはいられない。 正直に言うと、私……というか、六課主要メンバーは全員、ジュンイチさんがどうしてこんな感じなのか、その理由を知ってる。 この間、マックスフリゲートに出向いた時……その時に、クイントさんから言われたことが原因だ。 あの時、いつものように「ジュンイチさんもいい加減結婚とかすればいいのに」な話になって……「自分と私達の誰かが結婚した光景をイメージしてみろ」。そうクイントさんに言われた。 クイントさんに対しては意外と素直なところのあるジュンイチさんだ。言われた通りその光景を頭の中でイメージ。 そしてその結果――見事なまでに思考がオーバーヒート。真っ赤になってフリーズしちゃった。 以来、不意打ち気味な感じで私達と出会ったり、接近を許したりすると例外なく“あぁ”なっちゃう状態が続いてる。 そう。要するに……自分が恋愛してるイメージに照れて、恥ずかしさのあまりフリーズしてしまった。しかも、それを未だに引きずってるんだ。 元々、ジュンイチさんの鈍感は「誰かから(『Love』的な意味で)好かれるワケがない」という思い込みが原因だった。その思い込みを、クイントさんは「『if』の状況をイメージしてみる」という変化球でスルーしてみせた。そこはいい。 けど……ジュンイチさんが、ここまで「自分が恋愛をしている」というシチュエーションに対する免疫がないとは思わなかった。 まぁ、あの鈍感ぶりのせいで自分の恋愛なんて一切せずにこの歳までいたんだから、その手の感情に慣れてるはずもないんだけど。 オマケに、あくまでもジュンイチさんの中の「自分が恋愛の当事者になるワケがない」って大前提が覆ったワケじゃない。おかげでジュンイチさん自身、自分が例のイメージをきっかけに私達を異性として意識するようになっていることに気づいてない。 …………なんか、こうして振り返ってみると、ある意味前より厄介な状態になってるんじゃないかと思えてくる。 私達に対して驚いたりフリーズしたりする度に、炎を暴発させたり目の前の何かしらをブッ飛ばしたりしてるし……実際、目の前でガスケットさん達が黒コゲになってるし。 うん。決めた。後でみんなに相談しよう。そして何とかしよう。 ガスケットさん達以外に被害が広がる前に、なんとかジュンイチさんにまともになってもらおう。できれば恋愛意識改善の方向性で。 それで、私のことをちゃんと女の子として…… ……………… ………… …… …………って、違う違うっ! 私とジュンイチさんは……そうっ! ヴィヴィオの親として一緒にがんばる“同志”なんだからっ! 《……マスターも人のことは言えないと思います》 《だよねー》 レイジングハート、プリムラ……何か言った? ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「お疲れさんっしたーっ!」 そうあいさつして、日当をもらったオレはバイト先の工事現場を後にした。 立場上日雇いのバイトしかできねぇオレだが、幸い今のところ食うのに困るようなことにはなってない。 聞いた話によると、オレ達が来る前に起きたでっかい事件のせいで街のあちこちが壊れてて、建築業界は今のところ仕事が山積み、労働力はいくらあっても足りないらしい。ビバ復興特需。 ともかく、今日の稼ぎで、コンビニで晩飯の弁当を購入。“ついてた人間から離れて”路地裏に飛ぶ。 さて、今日はから揚げ弁当だ。いただきま〜す…… 「何をのん気な……」 おや、レオイマジンの旦那。 「ネコイマジン……相変わらずのようだな」 「あぁ、おかげさんでな」 旦那に答えて、から揚げをひとつ口の中に放り込む。 まったく、我ながら面倒なことしてるよな――“目的を果たすまでは帰らない”なんて誓いを立てたのはいいけど、おかげで給料もらいに帰ることもできずに日雇いバイトで食いつなぐ日々だもんな。 まぁ、マジメに働いて食うメシも悪くないってことで…… 「それで……」 「“目的”の方はどうなっている?」 ………………あ。 「しまったぁぁぁぁぁっ! 最近ぜんぜんあのガキども襲ってねぇぇぇぇぇっ!?」 「本気で忘れてたな、貴様っ!?」 レオの旦那にツッコまれた。 「い、いや、まぁ……えっと…… 確か、最後にアイツらの前に出たのが、あのシャチのねーちゃんが出てきた時で……」 ……あー、そうだそうだ、思い出した。 ハチっ子やあのチビ犬だけじゃなくて、シャチのねーちゃんまでもが万蟲姫について……ひとりで真っ向から突っ込むのも厳しいからって、じっくりスキをうかがうことにしたんだっけか。 「それでそのまま忘れていたら世話ないだろうが……」 …………おっしゃる通りで。 けど……まぁ、こうして無事に思い出したワケだしな。 よっしゃ! そんじゃ、決意も新たに、今度こそあのガキどもをぶち殺してやろうかっ! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「防犯訓練……ですか?」 「ん」 聞き返す横馬に、ジュンイチさんはあっさりとうなずいた。 「フリーランスの何でも屋としての、大口依頼のひとつでな。クラナガン市内の銀行組合を相手に、毎年この時期、新年度前にやるよう長期契約を取りつけてあんだよ。 で、その本年一発目を間近に控えてるのが、今回連絡のあった信用金庫、ってワケだ」 「つまり、今回の用件はその訓練の打ち合わせ、か……?」 「そゆこと」 マスターコンボイの問いにもあっさり答える。 うん、とりあえず今のところはいつもの調子だね……横馬がついてきてる以上、いつ“暴発”するかわかったものじゃないけど。 現在、僕らはジュンイチさんの“お仕事”に同行中――うん、「“暴発”の危険がある今のジュンイチさんをひとりで出歩かせられない」っていうはやての意向でね。だったらなのはを同行させるなと言いたいけど。 ちなみにメンツは“お仕事”の主役であるジュンイチさんと真っ先に同行を表明した横馬。で、はやてに頼まれて“暴発”関係のフォロー役に僕とマスターコンボイ。 そして―― 「へっ、銀行に防犯訓練ってことは、要は強盗対策だろう? おもしれぇ。オレが手本を見せてやるぜ!」 「モモタロス……あんまりやりすぎちゃダメだからね」 はい。モモタロスさんがついて来ました。 いざ出発しようとしたところに出くわして、話を聞いて興味を持って……いつもの着ぐるみ着用の上、良太郎さんを巻き込んでここにいる。 ウラタロスさん達はその場にいなかったからいないけど……うん、きっと後から来るんだろうなぁ…… 「……んー、でも……」 …………って、どうしたのさ、なのは? 「いや……なんていうか……ジュンイチさんらしくないな、って」 「って、どの辺が?」 「ジュンイチさんが受ける依頼にしては、ずいぶんとおとなしめじゃない? ジュンイチさんの性格上、いろんな意味でもっと暴れられそうなのを好むと思うんだけど。 大口の依頼とは言っても、元々ジュンイチさんって株成金でお金なんて有り余ってるんだし、そんな大口・小口で依頼を選ぶ必要もないだろうし……」 なるほど、なのはの言いたいことはもっともだ。 だけど……それはこの人の“ある一面”を知らないからこそ言えることでもある。 「えっと……なのは? ひょっとして……知らないの?」 「え? 何が?」 「ジュンイチさんの……クラナガン滞在時の銀行強盗との遭遇率」 そう……ジュンイチさんがこんな、僕でさえも「らしくない」と思う仕事を受けてる理由はきっとそこ。 ジュンイチさんって、自分がクラナガンに滞在している間に起きた強盗事件には毎回確実に巻き込まれて、自分の手で鎮圧するハメになってるからなー。 現に、電王ご一行と出会った時のイマジン戦、イマジンがついた“銀行強盗との”チェイスにも関わってるワケだし。チェイスに終止符打ったのあの人だし。 もちろん、ジュンイチさんが10年前に次元漂流者としてミッドに来て以来の話ではあるんだけど……事実それ以来、ジュンイチさんがクラナガンにいる間は、なぜかあの人のいる場所から最寄の銀行で強盗事件が起こってる。 本人曰く、遭遇率驚きの100%(記録更新中)とのこと……うん。ありえないでしょ、この数字。 そんだけ毎回巻き込まれてれば、「自分達でなんとかしろ」と言いたくなるのもある意味必然。こういう依頼を受ける気にもなるってものだよ。 《ですね。 まったく、強盗さん達も、どうしてジュンイチさんがいる時に限ってわいて出てくるのやら》 待機状態のまま僕の首からプラプラぶら下がってるアルトも呆れ気味。仮に身体があったなら肩のひとつくらいすくめていることだろう。 《しかも、ジュンイチさんがクラナガンにいない時はパッタリと発生が途絶えているというじゃないですか。 もうジュンイチさんが強盗を引き寄せてるとしか思えませんよ。いっそあの人をクラナガンから追放してしまえば、一緒に強盗も駆逐されるんじゃないですか?》 「あ、アルトアイゼン、それはさすがに……」 アルトの言葉になのはが苦笑してる……うん、なのはにとっては都合が悪いよね。ジュンイチさんがクラナガンから追放されたら会う機会激減するワケだし。 「ち、違うってば、恭文くん! ジュンイチさんと強盗の関連性も立証できないのに、そんな追放処分なんてできるワケないよ、って話だから!」 《わかってますよ、冗談です。 ですが、メリットもあるんじゃないですか?》 「え…………?」 《何しろナカジマ家や今のアジトにも滞在できなくなるワケですから、ギンガさんや現在彼と同居しているリンディ提督に先手を打たれる危険はグッと激減すると思われますが――えぇ、何の“先手”かはあえて言いませんけど》 「………………」 悩むなよ。 「んー、まぁ、なのは……お前さんの疑問の答えは、恭文の説明でだいたい正解だ」 一方で、そう言って説明を引き継ぐのはジュンイチさん……なんだけど、ちょっと顔赤い。 んー、さては今なのはが何に食いついたか察したかな? その辺はいい傾向だと素直に思う……“暴発”の危険性さえなければ、ね。 それはともかく、今回の依頼の話だ。 「まぁ、オレ自身暴れられるなら大歓迎だし、強盗の殲滅に関しては特に問題はないんだけど……だからって、それであてにされても困るってもんだ。 だいたい、いつまでも遭遇率100%の記録が更新され続けてくれるとも限らないしな。ひょっとしたら明日……いや、一時間後にでもオレが絡まない形で強盗事件が起きるかもしれない。そんな事態に備えて、ちゃんと防犯訓練はやっとくべきだ」 「まぁ、それはそうですね」 うんうんとうなずいて、なのはが納得してる……ジュンイチさんの遭遇率の異常さはさておき、後半のジュンイチさんの主張については、ちょっと話を聞けば軽く推測できそうなもんだろうにね。 相変わらず考えるのを放棄してるよね。そんなだから『魔王』って言われるんだよ。 「魔王じゃないもんっ! っていうか……ジュンイチさんの話題となると、どんなおかしな事態もありえると思えちゃって……遭遇率の話だけで納得しちゃったんだよ」 まぁ、その気持ちは否定しないけど。 「でも……ジュンイチさんがそんなマジメなこと考えてくれていても、相手の方はどうなんですか? 『どうせいつもジュンイチさんがいてくれるから大丈夫』……なんて思われてたら、いくら効果的な対処法を教えてもちゃんと身に着けてくれるとは限らないんじゃ……」 「んー、その心配はないだろ」 苦笑から一転、“教える”という仕事のためか教導官モードになって尋ねるなのはだけど、ジュンイチさんの答えはあっさりしたもので…… 「負けたら大金分捕られるとなれば、そりゃ必死になるってもんだよ」 『《ストップ》』 ある意味聞き捨てならないセリフが出たような気がしたので、なのはだけでなくマスターコンボイやモモタロス、良太郎さんと一緒になって止める。 「ジュンイチさん……いったい何してる? 『負けたら』とか『分捕られる』とか……」 「んー、大したことじゃないよ。 訓練方式はオレが強盗役として襲撃し、それに対処するというもので……報酬はオレが強盗の際に分捕った金、ってだけ。 ほら、『GS美神』でも初期の方にそんな話あっただろ」 あーあー、強盗の霊を成仏させるためにやったっていうアレね……って、そうじゃなくてっ! 「いったいなんつー方法で訓練してるのさ、あんたわっ!」 「そうだよ! ジュンイチさんが本気になって襲撃したら、止められるワケないじゃないですか! そんなの、銀行側とグルになってホントに強盗してるようなものじゃないd 「そんな楽しくもオイシイ訓練にどうして僕を誘わないのさ!?」 「恭文くん怒ること違ぁぁぁぁぁうっ!」 ジュンイチさんだけじゃなくて僕の発言にもなのはがツッコんでくるけど……うん、甘いよ、なのは。 「大丈夫だよ、なのは。 だって、この鍛え魔の性格考えたら、本気になるのは襲撃そのものじゃないだろうし」 「え………………?」 「本気になるとしたら、『どういう攻め方をしたら“銀行の人達の教訓になるか”』って部分だろうね。 ちゃんと銀行の人達の訓練になるように、普通の強盗のとり得る手段だけで、その範囲内で工夫して襲撃してる……その上で勝ちに行ってる。 つまり……銀行の人達にとっても十分に迎撃成功の余地は残されてるんじゃないかな。違うかな、ジュンイチさん?」 「正解。 安心しろ、なのは。恭文の言う通り、連中にとってどうしようもないような攻め方はしてねぇよ。ちゃんと冷静に対処すれば撃退できるレベルで攻めてる。 それだけじゃねぇ。こっちが強盗役っていうルール上、当然こっちが負けたら報酬はゼロ……条件対等、オール・オア・ナッシングの真剣勝負さ」 「いや、だからと言ってその報酬方式を認めるのは局員としていかがなものかと思うんですけど……」 まぁ、なのはの言ってることも正論なんだけど……あきらめようか。相手はジュンイチさんだよ? そんなバカ話をしながら、僕らは目的の銀行へと到着して―― 「あー、恭文!」 ………………この声って…… 「奇遇じゃの、恭文! こんなところでも会えるとは、やはりわらわとは運命の赤い糸でつながっておるようじゃの!」 ………………うん。ひとつだけ言わせてもらおうか。 周りの客がドン引きしてるから、イマジンズ引き連れてATMの順番待ちするのはやめようね――万蟲姫。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「相変わらず、情報入ってこないねー、エリオくん……」 「うん……」 只今、ビークルモードのアイゼンアンカーの強化ボディの片方、ブルーアンカーの荷台に腰掛けて休憩中。つぶやくキャロにボクもそううなずいた。 今日はボクら二人と、アイゼンアンカーと、シャープエッジ……ライトニング・フォワードだけで聞き込みに出てきてるんだけど、相変わらずネガショッカーに関する情報は見つからない。 「まぁまぁ、いいじゃないのさ。 実際ネガショッカーが出てきて、めんどくさいことになるよりはさ」 「まったく、何をのん気なことを…… ヤツらがこうもおとなしくしている以上、何かしら企み、その準備を進めていると考えるべきではござらぬか?」 のん気に肩をすくめるアイゼンアンカーにシャープエッジがそんなことを言う……キャロはどう思う? 「うーん……わたしも、シャープエッジが言うみたいにネガショッカーは何かの準備を進めてるんだと思う。 だけどね……アイゼンアンカーの言う通り、そのおかげでみんなが大変なことになっていないのは、それはそれでいいことだと思うよ?」 「そういうものかな……?」 「きっとそうだよ。 もしネガショッカーが出てきても、わたし達ががんばってやっつけて、みんなを守ってあげればいいんだもの……ね、フリード?」 「きゅくーっ♪」 ボクに答えたキャロの言葉にフリードがうなずく……うん。ホントたくましくなってるよねー、キャロって。 「だねー。 エリオ、将来苦労するよ、絶対」 「し、将来って……アイゼンアンカー!?」 「エリオくん……?」 アイゼンアンカーの言葉に思わず“将来”のことをイメージしちゃった――あわてるボクに、キャロはわかっていないのか首をかしげてる。 うん、落ち着こう、ボク。こんなんじゃ最近のジュンイチさんと変わらないよ。 「あ、いたいた」 「エリオー! キャロー! アイゼンアンカー、シャープエッジもお疲れ!」 あれ……? 「ティアさん、スバルさん……?」 かけられた声の主に気づいたキャロが声を上げる――もちろん、しゃべってないだけでジェットガンナーも一緒にいる。 けど……あれ? スバルさん達って、もう今日のパトロールは終わって、隊舎に戻ってたんじゃ……? 「あー、そうなんだけどね……ハハハ……」 ? スバルさん……? 「なずなに追い出されたのよ。 『スバルがいるといぶきに悪影響だ』って」 …………あー…… 「ちょっ、エリオひっどーい! どうしてそこで納得しちゃうの!?」 「あ、いや、その……」 「アンタが日頃からしっかりしてないからでしょうが」 スバルさんがティアさんに怒られた。 「もうちょっと、年下だの後輩だの、自分が手本にならなきゃいけない相手がいることを自覚しなさいよ。 アンタの態度が、そういう子達の今後にも関わってくるんだからね」 「わ、わかってるけど……」 ティアさんに怒られて、スバルさんがしょんぼり肩を落として―― 「きゃあぁぁぁぁぁっ!」 ――――――っ!? 「悲鳴!?」 「あっちだ!」 驚くキャロに対して、すぐにスバルさんが出所を特定してくれる。 あれは――ひったくり!? バイクに乗ったフルフェイスの大人が、女物のバックを片手にバイクを加速させようとしているのが見えた。 被害者らしい女の人もいる。必死な様子でバイクを追いかけようとしてるけど……魔法もなしでバイクに追いつくのはムリだろう。 けど、あの人は運がいい。 だって、この場にはボクらがいるワケだし。 そして……あのひったくり犯のバイク、ボクらの方に逃げてきてるし。 「あたし達の前でひったくりとか、いい度胸してるじゃない…… みんな、速攻で止めるわよ!」 『はいっ!』 「うんっ!」 ティアさんの言葉にボクとキャロが、そしてスバルさんが答える。バイクの進路をふさぐように路上に出て―― ――――――え? 瞬間――ボクらの間を駆け抜けた人がいた。 ボクらの誰でもない、誰かも知らない“五人目”……その人が、ボクらよりも前に、ひったくり犯のバイクの前に飛び出したんだ。 そして―― 跳んだ。 バイクに向かって、正面から、頭から突っ込むように力強く――そのままバイクと、その上にまたがるひったくり犯と正面衝突。 もちろん、そんなことをされてひったくり犯の方はタダですむはずがない。突っ込んだ人と一緒にバイクから転げ落ちて――って!? 「――危なっ!?」 残ったバイクはそのままボクらの方に突っ込んできた。あわてて散ったボクらの間を駆け抜けて、その先でひっくり返る。 そうだ……ひったくり犯は!? 「くそっ!」 ……無事だったみたいだ。ヘルメットのおかげで重大なケガはなかったのか、転がった先の地面で身を起こすのが見えた。 でも、逃げるでもなく、自分をバイクから突き落として、一緒に倒れている人を見下ろして――まさか!? 「よくもジャマしてくれたな……こいつっ!」 言いながら、ひったくり犯がナイフを取り出す――けど、大丈夫。 だって……次の瞬間には、飛び込んだボクがそのナイフをはたき落としていたから。 相手に状況を理解するヒマは与えない。すかさず起動させたストラーダ、その槍の穂先をひったくり犯ののど元に突きつける。 「そこまでです。 時空管理局です……ひったくりの現行犯で、あなたを逮捕します」 幸い、ちょうど所轄の局員の人がパトロールで通りかかったので、ひったくり犯はそのままお任せすることにした。 犯人の乗っていたバイクも、証拠として引き渡して―― 「ありがとうございます、本当に……!」 「だから、礼なんていいっての」 で、気になるのが、ボクらよりも先にひったくり犯に飛びかかっていった男の人。 だけど……うん。なんか、ちょっと様子が変。 見た目的にはごくごく普通の一般市民。歳は……うん、イクトさんほどじゃない。ジュンイチさんと同じくらいかな? けど背丈はジュンイチさんよりはありそう。髪型はちょっと長めの黒髪で、服装はジーパンに無地のトレーナー、黒地に赤い炎のプリントされたジャケット……うん、服装にも特におかしなところはないね。 唯一、無気力がすぎるような……まるで恭文が前に貸してくれたマンガの主人公みたいな“魚が死んだような目”がちょっと気になるけど、そこさえ気にしなければ、ごく普通の人に見える。 そう。見た目にはおかしなところはない……『変』と思ったのは、その態度だ。 だって、自分から助けに入ったっていうのに、被害にあった女の人からお礼を言われて“迷惑そうにしてる”んだから。 何て言うか、見るからに挙動不審って感じ……なんだけど、かと言って、何か後ろめたいことがあるようにも見えない。 恭文やティアさんが言ってた。そういう人は、自分のしてる悪いことがバレやしないかって思って、言動の中に焦りが混じる。それで怪しく見えてくるんだって……なのに、この人からはそういう感じの不審さがぜんぜん見えない。 焦りとか後ろめたさとか、そんな感じじゃない。ただ純粋に、好き嫌い的な意味でイヤがってる……そんな感じ。 「別に、お礼を言われるようなことなんかしちゃいねぇよ。 じゃあな」 そんなことを言って、まだお礼を言いたそうにしてる女の人を放って立ち去ろうと……って、ダメだよ、行かせちゃ。 「ま、待ってください! 一応、関係者として事情聴取しなきゃいけないので、ちょっと待っててもらえますか!?」 あわててスバルさんが男の人の前に出て止める――そう。犯人を取り押さえてくれたのはありがたいけど、関わった以上はこの人も“関係者”。当事者としてその時のことを聞き取りして、記録に残さないといけない。 だから、まだしばらくはここにいてもらわなきゃ…… 「………………チッ」 ぅわっ、ロコツにイヤそうに舌打ちしちゃったよ、この人!? 「な、何よ、その態度! 別に悪いことしたワケじゃないんだから、聴取くらい問題ないでしょう!? それとも何!? 何か後ろめたいことでもあるワケ!?」 「ねぇよ、そんなモン」 ムッとして答えるティアさんだけど、男の人はそんなティアさんにもイヤそうな態度を少しも隠そうとしなかった。 「ヤなんだよ、他人に関わるの。 他人に関わるとロクなことがねぇ。そいつにその気がなくたって、他人の行動はオレにとって悪い方向にしか働かねぇ……実際、今だってお前らのせいで迷惑してるし」 「め、迷惑って、わたし達は別に……」 「帰りたいのに帰してくれないだろうが。 お前らにとっては仕事なんだろうが、オレにとっては迷惑そのものなんだよ」 弁解しようとしたキャロに対しても、男の人は容赦なし……うん、本当にイヤそうだ。 「大丈夫ですよ。あなたが犯人を止めてくれた時のことを、あなたの口から聞きたいだけですから。 それに……ちゃんと証言してくれれば、ひょっとしたら金一封とかもらえちゃうかもしれないですよ?」 す、スバルさん。さすがに金一封はないんじゃ…… たぶん、お金をちらつかせれば止まると思ってるんだろうけど……それじゃまるでジュンイチさんのやり口だy 「いらねぇよ、ンなもん」 って、それもイヤなの!? 渋い顔しといて何だけど、お金だよ、お金!? 「お礼だろうが賞金だろうが、もらえるってことは“渡しに来る人と関わる”ってことだろうが。 オレはそっちがヤなんだよ。本当にお礼がしたいって言うなら、もうオレのことはほっといてくれ。このまま二度と絡んでくるな。オレにひとりでいさせてくれ。 “誰も関わってこない”っていうのが、オレにとっては最高の“お礼”だよ」 「あ、ん、た、ねぇ……っ!」 あ、ティアさんが怒った。 「さっきから聞いてれば、何勝手なことばっかり言ってんのよ!? 『他人と関わりたくない』!? だったらなんでひったくり犯止めてんのよ!? 自分から関わりにいってるじゃないの! 言ってることとやってることがかみ合ってないじゃない! 口先だけじゃない! そんなに人と関わりたくないなら、見捨てればよかったんじゃないの!? どーせあたし達が止めてたんだしっ!」 ティ、ティアさん……それはさすがに局員として問題発言なんじゃ…… 「“オレだってそのつもりだったっつーの”」 ――って、え……? 「『なんでひったくりを止めたか』だって? ンなのオレだってわかんねぇよ。 関わるつもりなんかなかったのに、無視して行こうとしてたのに、気づいたら飛び出してたんだ。そんなの心底イヤだったのにな――それを『どうして』とか聞かれたって、答えられるワケねぇだろうが」 『イヤだったのに』って部分をやたらと強調して、男の人がボクらに言う――あの、それって…… 「だから、もうこれ以上関わりたくないんだ。これ以上関わらない内に帰りたいんだ。 わかったらほっとけ。証言がほしいなら、他に目撃者なんかいくらでもいるだろ――じゃあな」 どうリアクションを返したらいいか、正直困ってるボクらにそう言うと、男の人は今度こそ行っちゃった……ボクらとは別に止めようとした所轄の局員さんの手も振り払って。 「………………何だったの、アイツ」 ポツリとつぶやいたアイゼンアンカーの言葉に、思わず同意しそうになった……たぶん、この場のみんながそうだと思う。 「『気づいたら飛び出してた』って……それって、つまり『思わず助けちゃった』ってことですよね……?」 「だよね……」 キャロとスバルさんが顔を見合わせてつぶやくけど……あの人、そんな自分でさえも心底イヤがってた。 わざわざ「助けよう」とか考えなくても、とっさに誰かを助けることができる――それはちっとも悪くない、むしろすごくいいことのはずなのに…… 「たとえそれが善行でも、たとえそれが自分に利することでも、“他人と関わることになる”というだけで嫌悪の対象となる……筋金入りの人間嫌いでござるな」 「しかもそれでいて、“誰かを助けずにはいられない”なんていう、めんどくさくもお優しい心はなくしてない、と。 うん、本当にめんどくさい性格してるよね」 「フンッ、もういいわよ、あんなヤツ」 シャープエッジやアイゼンアンカーの言葉に答えたのは、まだ不機嫌そうなティアさんだ。 「しかしランスター二等陸士。彼の証言が取れなかったが……」 「しょうがないわ。さっさと立ち去って事情を聞くヒマもなかった……とかごまかしておきましょ。 というか、あんなのの聴取をするなんてこっちから願い下げだわ」 ジェットガンナーにそう答えると、ティアさんは現場検証をしてる鑑識さん達の方に行っちゃった。 「あ〜ぁ、そうとうご立腹だね」 「よほど、あの者の態度が気に食わなかったようでござるな」 ロードナックル(クロ)とシャープエッジの言う通りだと思う。正直に言えば、ボクもあの態度にはムッときたし。 「でも……」 ……って、スバルさん……? 「それでも、思わず誰かを助けちゃうような、本当は優しい人なんだよね……? そんな人が、他のみんなのことを嫌いになっちゃうなんて……なんか、ヤだな……」 「………………そう、ですね……」 スバルさんのつぶやきにうなずいて、ボクはもう一度、あの人が去っていった方を見る。 もう……あの人の姿はどこにも見えなかった。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「フフフフフン♪ 嬉しい偶然じゃのー。まさか今月のお小遣いを引き落としに来たら、そこで恭文に会えるなんての♪ これはまさかアレかの? 『お小遣いを軍資金に恭文をデートに誘え』という天からの啓示!?」 「安心して、万蟲姫。 そんな啓示を下す天なら、僕が今すぐぶった斬りに行くから」 意外なところで僕らと出会って、舞い上がっているバカ姫を一刀両断。 つか、仮にも瘴魔の姫様なんだから、お小遣い銀行に預けたりとかしてんじゃないよ。 「何言ってるのじゃ。 お金があるからって手元に置いていたら、事あるごとに使ってしまうのじゃ――そう簡単に使ってしまわないようにするには、銀行はまさにうってつけなのじゃ!」 「な、なかなかしっかりしてるんだね……」 「当然だよ! ココアちゃんはすごいんだぞーっ!」 苦笑するなのはにサニーが万蟲姫を持ち上げる……うん、おだてるのはそのくらいにしとこうか。でないとバカ姫がまた調子に乗りそうだから。すでに鼻高々状態だから。 「むー。恭文の愛が厳しいのじゃ…… しかし、そういう恭文達は……わらわに会いに来てくれたんでなければ、どうしてこの銀行に?」 「あぁ、ジュンイチさんの仕事の付き添いでね……」 言って、受付で銀行の上の人達に取り次いでもらっているジュンイチさんの後ろ姿をチラリと見る。 「……付き添いのいるような人間ではあるまいに」 「付き添いがいるような状態に陥ってるからだよ」 万蟲姫に答えて……知らないまま地雷を踏まれても困るので最低限の説明はしておく。 クイントさんの発言がきっかけで、なのは以下自分に好意的な女の子達のことを異性として意識し始めていること。 けど、本人の恋愛感情に対する耐性のなさから事あるごとにオツムの回転的な意味で熱暴走を引き起こしてしまうこと。 オマケに、本人は相変わらずそのことに対する自覚がないから、本人に予防線を張ってもらうことも期待できないということ…… 「……ふむ……なるほどのぉ。 あのジュンイチが色恋沙汰ではヘタレじゃったとは、また意外な話じゃの」 「言いたいことはわかるけど、そんなイメージの問題がどうでもいいくらいにややこしい話になってるからね、言っとくけど」 相手を異性として意識するようになった、って点では、ジュンイチさんはかつてのフェイトで言うところの“ノーダメバリア解除”の段階に進んだと言えるだろう。 けど……そこからがまったく違う。フェイトが不器用ながら僕らと距離を詰めようとしてくれていたのに対して、この人、むしろ逆に扱いづらくなってるワケで。 なのは達が接近すれば熱暴走。不意を突かれれば炎暴発……歩く不発弾を相手にしてる気分だよ、こっちは。 「そうだよなぁ……オレも一回“くらってる”し。 おい、なんとかなんねぇのかよ、アレ?」 「そんなこと言われても……」 モモタロスさんに話を振られて、良太郎さんが困ってる……まぁ、僕らだって何をどうしたら“アレ”が改善されるのか、皆目見当もつかないワケだし。 「おーい、お前ら」 ……と、ジュンイチさんの方は取り次ぎが終わったみたいだ。カウンターからこっちに向けて声をかけてくる。 「オレはお偉いさんと打ち合わせしてくっから、そのバカ姫どもと適当に時間つぶしててくれや」 「ちょっと待つのじゃ! 『バカ姫』ってわらわかえ!?」 ジュンイチさんの言葉に万蟲姫が抗議の声を上げる――うん、他に誰がいるのさ? 「あと……恭文とモモ、それから良太郎もついて来い」 …………って、え? 「ボクらも……?」 「恭文とモモ、興味持ってたろ。 せっかくだから参加させてもらえないか打診してみようと思ってさ――で、モモが参加となると、良太郎もどうせ出ることになるだろ?」 声を上げる良太郎さんに答える形でジュンイチさんが説明――なるほど、それで指名の三人か。 「じゃ、なのは、マスターコンボイ――“こっちは任せた”」 「おぅ、“任された”」 ジュンイチさんの言葉にマスターコンボイが答えて、僕らは銀行の奥へ――さて、ジュンイチさん。 「“向こう”はマスターコンボイに“任せて”おいて大丈夫そうですね」 「なんだ、恭文も“気づいてた”のか」 「とーぜん。 モモタロスさんもでしょう?」 「たりめーだ」 「え? え?」 ひとりだけ、良太郎さんが話についてこれないでいるけど……大丈夫。すぐにわかりますから。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「…………ふむ」 恭文達が銀行の奥に消えていき――さて、どうしたものか。 「どうする? オメガ」 《別に気にすることないんじゃねーの? 好き好んで“襲われるまで待ってることもないんだし”》 「え、ちょっ、マスターコンボイさん、オメガ……?」 「『襲われる』って、いったいどういう……?」 オレ達の会話に、なのはやメープルが不安そうに口をはさんでくる……やれやれ。 「お前達……本当にこういうことには気づけないんだな」 「だ、だから何なんですか!?」 「つまり、だ……」 オレがなのはに答えようとした、その時だった。フロア中の銀行員や順番待ちの客達が一斉に立ち上がり、 「戦闘開始だ、ということだ」 変装を剥ぎ取り、ネガショッカーの怪人達は一斉にその正体を現した。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「…………ンなこったろうと思ったよ」 奥に入ったとたん、案内役の行員が変装を脱ぎ捨ててモールイマジンに――なので、脱ぎ捨てた瞬間顔面に鉄拳一発。 さすがに即死はなかったけど、完全に意識を手放したモールイマジンは一切の活躍シーンを許されずに大地に崩れ落ちたのでした。まる。 「うん、相変わらず容赦ないね」 「さすがのオレもここまで問答無用ではやらねぇぞ……」 目を回したモールイマジンをつついて、恭文とモモタロスがつぶやく――いいじゃないのさ。ケンカの基本は先手必勝だよ? 「みんなが言ってたのはこのことだったんだね…… ……って、ちょっと待って! それじゃあ、表に残してきたなのはちゃん達も!?」 一方で、ようやく納得した良太郎がなのは達のことも察して驚いてる。まぁ、オレ達やモモタロスと違ってイマジンの“力”もにおいも感知できないからしょうがないんだけどね。 「って、何をそんなのん気に!」 「良太郎さんこそ落ち着いて。 向こうはマスターコンボイが気づいてましたから」 オレがのんびりしてるもんだからますますあわてる良太郎を恭文がなだめる――そう。マスターコンボイひとりが気づいてれば、相手の初動を止めるのに十分すぎる。そこさえ止められれば、なのは達やバカ姫達が気づいてなかったとしても対応は間に合うでしょ。 「そういうこと。 オレ達はこのまま奥に進んで、そこにいるであろう黒幕とご対面、ってワケだ」 改めて良太郎に告げると、腰の“紅夜叉丸”を抜き放って爆天剣に“再構成”する。 「さーて、鬼が出るか蛇が出るか……」 オレの……そう、電王である良太郎達じゃなく、オレの行く手に先回りするとか、ネガタロスの手口じゃないのは明らかだ。 絶対に別の誰かがこの絵図を描いてる。その“誰か”が誰なのか……ハッキリさせてやろうじゃねぇk ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「むんっ!」 人間向けの建物内ではヒューマンフォームのままでの戦闘になるが――どの道イマジン相手の戦いはヒューマンフォームの方が戦いやすいので問題はない。オメガを振るい、飛びかかってきたモールイマジンを弾き返す。 「レイジングハート!」 《Blitz shooter》 《いっけぇっ!》 なのはの方も危なげなくイマジンどもを蹴散らしている――不満そうに見えるのは単に不意を突かれたからだと思っておく。 間違っても閉鎖空間ゆえに砲撃が撃てずフラストレーションがたまっているからではないだろう――と思いたい。 「このこのこのっ!」 「えーいっ!」 「どきなさいっ!」 メープルが駄々っ子パンチ、サニーが体当たり、ミシオがムチとこちらのイマジンどもも奮戦。そして―― 「フレーッ! フレーッ! みんな、がんばるのじゃーっ!」 ………………働け、バカ姫。 「ムリ言うでないわ。 みんながみんな独自に戦っておるのに、誰もついてくれていないわらわに何ができると!?」 「最初から誰かについてもらえばよかったんだろうがっ! それが当然のように物陰にさっささと退避しおって! 見てたぞこっちわっ!」 えぇい、自分だけちゃっかり楽なポジションに収まりおって! こうなったら、どさくさ紛れにエナジーボルテクスで敵のイマジンどもごと…… 「ダメだからね、マスターコンボイさん」 「…………チッ」 なのはに止められた。 だが、あぁものん気に見物されていては、正直腹も立つというものだ。 それにヤツ自身の安全確保にもよろしくない。実際、“ヤツの後ろにコウモリのイマジンが”―― 「――万蟲姫! 後ろだ!」 「え………………?」 とっさにオレの上げた声に状況を理解する万蟲姫だったが、本人の言う通り肉体的には戦闘向きでないヤツの対応できる状況ではない。 コウモリのイマジンが振り上げた右手の爪が万蟲姫を狙い―― 「させるかぁぁぁぁぁっ!」 吹っ飛んだ。 万蟲姫が――ではなく、万蟲姫に一撃を入れようとしたコウモリのイマジンの方が。 そして―― 「こいつはオレの獲物だ…… 横取りするヤツぁ、たとえ同僚だろうが許さねぇぞ!」 そう宣言するのは、かつて万蟲姫を殺そうとオレ達の前に現れたネコイマジンだ。 そういえば……最近姿を見ないとは思っていたが。 「うるさいっ! その話はするなっ!」 禁句だったらしい。 「と、に、か、くっ!」 オレにさらに追求されるとでも思ったのだろうか。話の切り替えを強調しながら、ネコイマジンは万蟲姫へと向き直り、 「久しぶりだな! 今日こそお前の命w 「おー! 久しぶりじゃの! 今日はゆっくりしていけるのかえ?」 「だから、ちっがぁぁぁぁぁうっ!」 ……相変わらず友好モード全開の万蟲姫のリアクションに頭を抱えて絶叫した。 まぁ……同情はしておくぞ。お前自身はあくまでもマジメに万蟲姫を殺そうとしているワケだものな。 オレもかつて、敵同士だった当時からなのはに懐かれ、つきまとわれていた時期があったから、お前の気持ちもわからないでもないが…… 「そう思うなら誤解を解くのを手伝ってくれてもいいんじゃねぇかな!? オレ達、あくまでも敵同士だよなぁ!?」 「バカが。敵同士だからこそ見捨てるんだろうが。 何を好き好んで、敵のためにわざわざ骨を折ってやらなければならん?」 「いや、そりゃそうなんだけどな!?」 「それに……同類だからこそ見捨てたい部分も少しはあるしな。 オレもさんざん苦労させられたからな、むしろひとりでも多く巻き込みたい――『あんな目にあってるのはオレだけじゃない』と精神的に楽になれる」 「『少しは』どころかむしろそっちの理由が大半だろてめぇっ!?」 フンッ、聞ーこーえーんーなー? 「マスターコンボイさん、楽しそう……」 なのはが後ろでつぶやいているが無視する。 まぁ、蝿蜘苑のバカどものコレはいつものことだから放っておけばいい。オレ達はこのままネガショッカーのヤツらをぶちのめしt 吹き飛んだ。 いきなり、恭文達の消えていった扉が、爆発を起こして砕け散った。 そして、巻き起こる粉塵の中から飛び出してくるのは―― 「恭文!?」 「ジュンイチさん――良太郎さん達も!?」 オレとなのはの声が同時に上がる――そう。恭文と柾木ジュンイチ、そしてソードフォームの電王だ。 どいつもこいつも、とりあえずは無事のようだが――何があった? アイツらの実力を考えるなら、並大抵の相手はその場で叩きのめして終了、だ。 だが、恭文達はこのフロアに“戻ってきた”。 それはつまり――ヤツらを“退かせる”ほどの“何か”がいる、ということだ。 ネガショッカーに属する戦士で、そこまでの相手となると…… 「どうしたどうした? オレをブッ飛ばして終わらせるんじゃなかったのか?」 やはり貴様か……ネガタロス! ヤツが相手なら確かに苦戦するのもうなずけるが……だからと言って恭文達も黙ってやられるワケがない。 「大丈夫ですか、ジュンイチさん!?」 「大丈夫ジョブJob、のーぷろぶれむ!」 中でも、負けず嫌いが服を着て歩いているような男であるコイツは特に――なのはに答えて、柾木ジュンイチは右手を大きく振りかぶり、 「廊下みたいなせまい場所ならともかく――こーゆー開けた場所なら、身内を巻き込む心配も最小限ってね!」 いきなり全開。解き放った炎がネガタロスへと襲いかかり―― 「ムダですよ」 止められた。 突然ネガタロスの正面に現れた影、かざされたその手を中心に巻き起こった水流の壁が、柾木ジュンイチの炎を受け止めたのだ。 柾木ジュンイチめ、何だかんだ言いながらも屋内であることを考慮して火力を落としていたようだが……マント男も、加減していたとはいえヤツの炎を真っ向から止めるか。 水と炎がぶつかり合い、水蒸気が周囲を満たす――すぐに視界は晴れ、現れた“影”の正体を確認する。 “水の防壁”という時点で予想はできていたが……やはり貴様か、瘴魔のマント男! 「アイツ……っ!」 「ココアちゃんの……っ!」 そして、その姿にらしくもなく殺気立つのが万蟲姫のところのメープルとサニー……そういえばコイツらは知ってるんだったな。 あのマント男が……万蟲姫の両親の仇であることを。 「フフフ……また会えましたね」 そんな二人の敵意を真っ向から受けてもまるで動じず……まぁ、元から迫力不足もはなはだしい二人ではムリもないが、とにかくマント男は悠々と返してくる。 「それにネコイマジンもいるな。 貴様、まだその小娘を殺せていなかったのか?」 「言わねぇでください……! コイツら、何言っても話が通じねぇんです……っ!」 一方でネガタロスはネコイマジンに反応……ネコイマジンがその場に崩れ落ちるが、正直そっちはどうでもいい。 「いや、よくねぇからな!? すんげぇどうでもよくねぇからな!?」 今度はこちらに抗議してくるネコイマジンだが、何度言われようとこちらにとっては何のデメリットもないのだし…… 「そうだな。どうでもいいことだな」 「って、ネガタロスの旦那まで!?」 とうとう上司であるネガタロスにまで言われてしまった。ヤツの言葉にネコイマジンが悲鳴を上げて―― 「なぜなら……」 「貴様に、もう用はないからな」 その次の瞬間―― ネコイマジンの身体を、背後から大鎌の刃が貫いていた。 『な…………っ!?』 突然の、ネコイマジンを襲った一撃――驚愕するオレ達の前で、刃を引き抜かれたネコイマジンがその場に崩れ落ちる。 その向こう側に姿を見せたのは―― 「…………今日、ネコイマジンが死ぬ」 貴様……デスイマジン!? 「だ、旦那……どうして……!?」 「必要ないんだよ、貴様は」 地に伏せ、苦しげにうめくネコイマジンに対し、ネガタロスの非情の宣告が突きつけられる。 「ターゲットを殺せないどころか、そのターゲットに懐かれるなんざ、悪の組織の一員として決して許されない醜態だ。 そんなバカをやらかすヤツは、オレのネガショッカーにはいらねぇんだy それ以上、ネガタロスが言葉を発することはなかった。 なぜなら――恭文と柾木ジュンイチが同時に繰り出した二条の斬撃が、ネガタロスへと襲いかかっていたから。 そして、オレもまたネガタロスに向けて地を蹴っていたから。 先行した二人の斬撃はネガタロス自身と、そして瞬時にヤツのもとに移動したデスイマジンの大鎌に止められた。後に続くオレの一撃も、恭文を力ずくで弾き飛ばしたネガタロスに受け止められる。 だが、オレも柾木ジュンイチもこのままそれぞれの相手と押し合うようなことはせず、すぐに左右に飛びのく。恭文も再度の突撃はなしだ。 なぜなら―― 「ディバイン――」 《――Buster》 《くらえぇぇぇぇぇっ!》 なのはが、すでにチャージを終えているからだ――解き放たれた桃色の閃光が、ネガショッカーの幹部連中に襲いかかる! というか……屋内だというのに、いきなりプリムラの支援付きでディバインバスターか。ヤツらもネコイマジンをやられたのに相当カッカきているようだな。 「当たり前だよ! あんなことされて、黙っていられるワケ……えぇっ!?」 オレに答えかけたなのはの言葉が止まる。いったい……何っ!? 「そんなものですか? 高町なのは」 今のなのはの砲撃も止めるのか!? あのマント男の力場は! 「当然ですよ。 いくら非戦闘タイプと言っても、瘴魔神将たるもの、この程度の砲撃くらいは止められなければ……ね」 驚くオレ達に対し、マント男が告げる――いや、ちょっと待て…… “この声は”……!? 「今の声……!?」 《まさか……!?》 なのはやプリムラも驚いている――どうやら、オレの聞き間違いではなかったようだ。 非戦闘タイプ、“水”属性、そしてこの声……っ! 「ジュンイチさん……っ!」 「あぁ……ようやく合点が行ったぜ」 と、いうワケで、当然“ヤツ”のことを“この中で一番知っているはずの男”に話が向く――なのはの問いに、柾木ジュンイチは静かにオレ達のカンの的中を認めた。 「というか……可能性のひとつとして、考慮しておくべきだったんだ…… “JS事件”の後、瘴魔軍の残党の動きがパッタリと途絶えた時点で、もっと疑問に思っておくべきだったんだ…… なぁ、そうだろう?――」 「ザイン」 (第26話に続く) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 次回、とコ電っ! 「しっかりするのじゃ! こんなところで死んだらダメなのじゃ!」 「あなた達も知っているでしょう? スカリエッティが“JS事件”でしていたことは」 「通りすがりの仮面ライダーだ」 「お前の命……もう一度わらわが預かる!」 第26話「ゲーム、スタート」 「もらったぜ……お前らの“時間”」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ あとがき Mコンボイ「……と、いうワケで長らく待たせてしまったが、『とコ電』最神話……じゃない、最新話をお届けだ」 オメガ《何ですか、『最神話』って。 相変わらずモリビトのPCはおバカな変換しますねー》 Mコンボイ「そこを開き直ってネタにするモリビトもモリビトだが……まぁ、そこはいい。 今回は、舞台をクラナガンに戻しての新エピソードなワケだが……」 オメガ《前回投下されたミスタ・ジュンイチの爆弾、あまり被害を及ぼしていないようですね……》 Mコンボイ「暴走コンビが一手に引き受けてしまっている感があるからな。 “暴発”の件以外のところで柾木ジュンイチが意外と冷静だったのが災いした――異変“だけは”察してて、対応に乗り出したおかげで被害規模が一気に小さくなってしまった」 オメガ《“異変に”気づいた割には“原因に”はまったく気づいていないようですが》 Mコンボイ「本当にな…… 劇中でなのはも危惧していたが、被害が暴走コンビのみに留まっている内に何とかしてもらいたいところだが……」 オメガ《それどころじゃない問題も出てきましたね。 まさかあのザインが『とまコン』シリーズにまで復活してくるとは》 Mコンボイ「一部の読者にはすでにバレていたようだが……確かにヤツの復活は厄介だな。 元々が絡め手専門だ。脳筋ぞろいの六課のメンバーとの相性は最悪に近い」 オメガ《おまけに、あまりにもミス・万蟲姫に懐かれすぎたせいで見捨てられたネコイマジンも重傷、と……》 Mコンボイ「やれやれ……悪いことは重なるものだな」 オメガ《作者によると、最大級の『悪いこと』はむしろこの後に控えているそうですが》 Mコンボイ「……本気か?」 オメガ《残念ですが本気ですよー。 まぁ、『とコ電』の原作である本家『とまと』電王編でもミス・フェイトが大変なことになりましたし……それと似たようなものと思っておけばよろしいかと。 ……っと。さて、そんなこんなで、そろそろお開きの時間ですね。 みなさん、今回も読んでくださって、本当にありがとうございました》 Mコンボイ「次回も必ず読むがいい」 (おしまい) [*前へ][次へ#] [戻る] |