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頂き物の小説
第24話「お姉様とお呼びっ!」



「コウマジン……?」



 イクトさんの挙げたその名に、思わず聞き返す。

 えっと……“ジン”は魔法陣の“陣”として……“コウマ”? 相手は“瘴魔”ですよね?



「“魔”が“降”りる“陣”と書いて、“降魔陣”だよ」



 ヤスフミがどう字をあてるか教えてくれた。



「……って、そうじゃないだろ。
 おい、その“降魔陣”っていうのは、いったい何なんだ?」



 あ、そっか、問題はそっちか。

 侑斗さんにツッコまれて、本題へと意識を切り替える――そう。気にすべきはどう書くかじゃない。それがどういうものかだ。

 けど、私達の注目を浴びるイクトさんは、どこか苦虫をかみつぶしたような顔でため息をついて、



「“降魔陣”というのは、かつて“瘴魔大戦”時にザインが考案した……」











「瘴魔獣の大量生産を目的とした儀式陣のことだ」











 (もちろん悪い意味で)想像をはるかに上回る答えが待っていた。



「オレ達のように人間がその力を宿しているケースは別として、純粋な瘴魔は人の持つ恐怖や憎しみ……いわゆる“負の思念”から生まれ、“負の思念”を糧としているのは知っているな?」

「何を今さら」



 あっさりと万蟲姫が答える――うなずいて、イクトさんは続ける。



「つまり、“負の思念”が蔓延した状況下では、それだけ瘴魔獣が生まれやすくなる。
 そこに目をつけたザインは、人々を隔離し、恐慌状態に追い込むことで意図的に“負の思念”が蔓延した空間を作り出し、その“負の思念”をもって瘴魔獣を大量に生み出すことを考えついた」



 なるほど……それが“降魔陣”。

 確かに、言われてみれば今の状況はまさにその“降魔陣”の発動条件を満たしている。

 陸路の寸断によって視覚的に、結界によって実質的に脱出ルートが遮断され、さらに外部との連絡手段すらも奪われた隔離空間。

 その中で殺人鬼のウワサに怯え、不安がピークに達していた村人達。



 そして、実際に起きてしまった瘴魔獣による殺人事件がその不安を爆発させた……



「この村を覆っている結界も、“降魔陣”の重要な要素だ。
 村人を隔離するためだけではない。彼らの発散する“負”の精神エネルギーを結界内に留め、拡散しないようにするためのものでもある」

「逃亡防止だけじゃなくて、効果の向上まで兼ねてるのか……ずいぶんと迷惑な方に合理的だな」



 うめく侑斗さんの言葉には全面的に同意したい。イクトさんも同感なのか、うなずいて続ける。



「実際に、“降魔陣”の効果はすさまじいものがある。
 かつてザインが“降魔陣”を作り出した時は、完成前に阻止したにも関わらずかつてない規模の“負の思念”が蔓延し、危うく大量の瘴魔獣を生み出されるところだった。
 そして……その実績から、後にオレ達の地球の東京全体が“降魔陣”にされ、今後こそ国のひとつや二つ平気で陥とされかれないほどの瘴魔獣が生み出された」

「東京全体が!?」

「そうだ」



 思わず聞き返す私に、イクトさんがうなずく。



「“降魔陣”の最も悪質なところはその手口でも、瘴魔獣の大量生産性でもない。
 その成立条件に“陣の規模は一切関係ない”点にある――“対象範囲を覆えるだけの隔離結界”と“瘴魔獣を生み出せるだけの恐慌状態”。この二つの条件さえ満たせば、その範囲がどれだけの広さであろうが“降魔陣”となり得る。
 極論を言うなら、条件を満たす手段さえあれば国ひとつ丸ごと“降魔陣”にすることだって不可能じゃないし、その逆にごく最小限の範囲に陣の規模を絞り、こちらに陣の存在を特定させづらくすることだってできる――目的に応じて、自在に陣の規模を調節できるんだ」

「そんな……っ!」



 イクトさんのその説明に、私の頭の中にある可能性がよぎった。

 考えたくはない。けど、イクトさん達の地球の事例を考えると決して無視できない可能性。つまり――



「もし、これと同じことがクラナガンで起きたら……っ!」



 そう。イクトさん達の地球の東京が“降魔陣”にされたように、もしクラナガンがこの村と同じように“降魔陣”にされたら……



「群集のパニックというものは、一度起きればその火は際限なく燃え広がっていくものだ――条件さえそろえば、たった一発の銃弾で村がひとつ地上から消えることだってあるんだ。
 ここと同じようにクラナガンで恐慌を起こせば……その規模は想像もつかない。
 そして、その恐慌によって生み出される瘴魔獣の群れの規模も、な」



 イクトさんの答えは、私の中のイヤな予感をこれ以上なく肯定するものだった。

 もしそんなことになったら、ミッドチルダは……ううん、次元世界全体がとんでもないことになる。



 けど、それ以前に……



「だが、それよりもまずはこの村だ。
 このままでは“降魔陣”によってこの村は飲み込まれる。人々の恐慌が瘴魔獣を生み、その瘴魔獣によってさらなる恐慌が引き起こされ、新たな瘴魔獣を生む……最悪のループが完成する」



 そう。今はこの村を救うことが最優先だ。

 クラナガンで“降魔陣”を仕掛けられたら――そんな話は今の段階では“ifもしも”の想定でしかない。けど、この村は今この時、“降魔陣”のせいで滅ぼされようとしているんだから。



「その“降魔陣”を止める方法はないのかえ?」

「恐慌を鎮める……それ以外に方法はないよ」



 尋ねる万蟲姫にはヤスフミが答えた。



「蒼凪の言う通りだ。
 この結界を作り出し、恐慌をあおっているヤツらを叩き、その上で住人達を鎮める……恐慌の原因を取り除き、“負の思念”の蔓延を止める以外に、“降魔陣”を止める方法はない」

「つまり、この結界を作ってるヤツをやっつければいいんだよね?
 お任せだよ! 今の話はよくわかんなかったけど、そーゆー展開こそボクらの出番っ!」

「ううん……それだけじゃないよ」



 イクトさんの言葉にいろいろとアウトなカミングアウトと共にシャドーボクシングなんか始めたメープルだけど、そこへサニーが口を挟んだ。



「たぶん……みんなを怖がらせてる“サクラ”がいる。
 ただ殺人鬼のウワサが流れていたってだけじゃ、みんなあんなに怖がらないよ……その不安をもっとあおっていた人達が、絶対にいる」

「そういえば……さっき瘴魔獣との戦いの現場に出てきた女の人、ずいぶんタイミングがよかったわよね?
 瘴魔獣が倒されて、その場に死体と私達だけが残されたところに出てきた……」

「その後に集まってきた人達もだよ。
 あれだけ引きこもっていたのが、悲鳴が上がるなりあっさり出てきた……普通なら、引きこもるほど怖い状況で悲鳴が上がったらむしろますます閉じこもらない?」



 サニーの言葉にミシオが、そしてヤスフミが同意する……確かに、言われてみればあの時の状況には不自然な点が多すぎた。



「そう考えると、あの時殺されていた人間も、死体に見せかけたダミーの可能性が高いな」

「あぁ。
 “降魔陣”の特性上、巻き込む人間はひとりでも多い方がいい。たかがひとり、されどひとり――とな。
 恐慌を起こすためにも、その引き金となる実際の殺人はどうしても必要だ。だが、そのために貴重な“負の思念”の発生源である人間をひとりでも減らしてしまうことは好ましくない。
 ならどうすればいいか……答えは簡単だ」

《生身の人間を殺さず、ダミーの死体で殺人事件を演出する……》



 ホーネットとイクトさんの会話に割り込むアルトアイゼンの仮説はたぶん正解。

 つまり……私達は、この“降魔陣”を作り出している張本人と、この恐慌をあおっている“サクラ”の人達、両方をなんとかしなくちゃいけない……



 それにしても、私達が来ている時に相手が行動を起こしてくれて助かった。もし私達が中にいなかったら、この“降魔陣”を止めることはそうとうに難しかったはず……







 ………………あれ?







 ……“私達が来ている時に”







 ふと思い出した……私達がこの村に来ることになった、そもそもの原因を。



「そういえば……ヘイハチさんへのメッセージは、この村から送られてきていた……
 ひょっとして、あれは住人からヘイハチさんへのSOSだったんじゃ……」



 私がそう口にすると、イクトさんは今それを思い出したのか、ちょっと驚いた顔になって――さっきまでよりも深刻な顔になった。

 あれ……私、何か変なこと言いました?



「いや、変、というか……」

「……今、ものすごくヤな予感が脳裏をよぎった」



 ヤスフミまで?



「うん。
 そもそも、あのビデオメッセージは僕達宛てじゃなかった。先生宛てに局に送られてきて、送り先がいなかったせいで関係者の僕らのところに回ってきた……
 けど……」

「もし……仮に、だ。
 “最初からそうなることを見越して、ヘイハチ師宛てに送られてきていたとしたら”?」



 ………………え?



「つまり、先生宛てを装って、最初から僕らに届けるために送られてきていたかもしれないってこと。
 実際、最初先生宛てに届いてたものだったから、僕らはここで瘴魔関係の事件が起きてるなんて知らないままにここへ来たワケで」



 えっと、それって、つまり……



「私達……まんまと誘き出された?
 けど、どうしてそんなマネを?」



 そうだ。仮にヤスフミ達の推理の通りだとして、そもそもどうして、私達……いや、あて先を考えれば“ヘイハチ一門”か。彼らを誘き出すなんてことをしたのか。

 単に“降魔陣”を起こすだけのつもりなら、誘き出す必要なんかない。そんなことをしても、“降魔陣”の阻止に動かれるだけ……実際そうしようとしてるんだし。

 けど、私の質問に、ヤスフミとイクトさんは気まずそうに顔を見合わせて、



「その質問に答える前に、僕からお願い。
 フェイト……仮に結界とかジャミングとかが解けて六課に連絡ができるようになっても、全部片づくまでは絶対に連絡しないで」

「え?」

「事態が六課の知るところになれば、絶対に連中が誘き出したかった“本命”がカッ飛んでくるからだよ」



 首をかしげる私にヤスフミが答える……つまり、本当に誘き出したかった“本命”は今ここにはいない……?

 いわゆる“ヘイハチ一門”に属していて、六課にいて、今日ここに来ていない人……



「…………ジュンイチさん?」



 そのくらいしか思いつかなかった。

 ヤスフミやヒロさん、サリさん……直接の弟子を除けば、六課にいる人間で一番……私達以上にヘイハチさんと師弟関係に近いのはジュンイチさんだろうから。



「じゃあ、まさか、この事件の犯人はそもそも、ジュンイチさんを誘き出すつもりだった……?
 けど、それが運悪く……運良く? 本人がいなかったせいで、私達が代わりに誘き出されちゃった……」

「少なくとも僕らにとっては『運良く』だよ、間違いなく」











「またあの人の“暴走態”を相手にするなんて、死んでも勘弁願いたいし」











 ………………え?



 今、すっごく思い出したくない地獄の記憶が蘇りかけたんだけど。

 暴走? ジュンイチさんが? この状況を知ったら、また?

 それって、つまり……



「“降魔陣”も、ジュンイチさんのトラウマ絡み?」



 うなずいてほしくなかった。なかったけど……イクトさんもヤスフミもうなずいてしまった。



「さっき、結界が二つの役目を兼ねているという話になった時、桜井が『合理的だ』とイヤミをもらしただろう。
 そう。合理的――お前達も“JS事件”で目の当たりにしたように、ザインは極めて合理的な考え方の持ち主だ……ただし、“最悪の方向に”、な」

「この“降魔陣”も、そもそもの目的は二つあったの。
 ひとつは、言わずと知れた瘴魔獣の大量生産。
 そしてもうひとつが……ジュンイチさんのトラウマをえぐって、精神的につぶすこと……」

「つまり、この“降魔陣”には、ジュンイチさんのトラウマが関係してる……」



 二人の言葉に考え込む――万蟲姫達や侑斗さんが話についてこれずに不満そうにしてるけど、正直それどころじゃない。

 いろいろ聞き出したいことはあるけど……まず、ふと浮かんだ疑問からぶつけてみる。



「けど……前にライカさんが言ってましたよね?
 『ザインでさえ、ジュンイチさんの暴走は恐れていた』って……だとしたら、そのザインが暴走を招きかねないジュンイチさんへの精神攻撃を狙っていたっていうのは、矛盾しませんか?」

「その時は、少しばかり状況が違ってな。
 ザインが最初に“降魔陣”を仕掛けたのは、柾木が“瘴魔大戦”の中、別件で暴走した直後のことだったんだ。
 暴走し、オレ達を殺しかけたことで、当時の柾木は暴走に対し強い拒絶の念があった……ちょうど、先日の暴走の後のような状態になっていたんだ」



 イクトさんの言葉に、思い出す。

 あの事件の後、ジュンイチさんは暴走して私達を傷つけたことをものすごく悔いていた……そのままの勢いで、私達の前から姿を消そうとしたくらい。

 それも、『パパになる』っていう、ヴィヴィオとの約束を破ってしまうことになるってところまで覚悟を決めて……あんな状態に、その時もなっていたんだ……



「そういうことだ。
 ヤツがそんな状態の時に、再びヤツのトラウマをえぐるような事件を起こせば、ヤツの中では暴走しようとするヤツの精神の暗黒面とその拒否反応が真っ向からぶつかることになる。
 暴走しようとする憎悪とそれを忌避する心……あまりにも強すぎる二つの感情のぶつかり合いによる、柾木の精神の崩壊、ザインはそれを狙っていたんだ」



 イクトさんの言葉に実感する……本当に、最悪な意味で合理的だと。



「あー、ちょっといいかえ?」



 って、万蟲姫……?



「とりあえず……恭文、この状況は、ジュンイチのトラウマを思い出させるものなんじゃな?」

「うん」

「じゃが……前の暴走の時に説明されたあの者のトラウマと今のこの状況、ぜんぜん似ても似つかないと思うのじゃが……」



 あ……そういえばそうだ。

 ジュンイチさんのトラウマ……かつて大好きだった女性、レムさんを、暴走の果てとはいえその手で殺してしまったこと。

 けど……今のこの状況は、前にヤスフミ達が話してくれたその一件の状況とはまったく符合しない……



 気づいた私や質問した万蟲姫に対して、イクトさんは静かに息をついて、説明してくれた。



「お前も知っているだろう。
 柾木は自らの肉体を改造され、その復讐のために生きていた時期がある。
 その経験が、今のヤツを最強、無敵チートたらしめているワケだが……逆に言えば、その経験を積む前、積んでいる過程では、ヤツはチートでもなんでもない、ただの発展途上の若輩者だったということだ。
 当然、敗北や失敗、挫折を何度も味わっている」

「その“失敗”のひとつ……それもとんでもなく大きいもの。間違いなく、ジュンイチさんにとってはレムさんの一件に次ぐトラウマ。
 そんな一件をベースに、“降魔陣”は考えられたの」



 ジュンイチさんの過去の、トラウマになるほどのひどい失敗……

 その失敗を元に、“降魔陣”は考え出された……?



「……敵が“降魔陣”を使ってきた以上、お前も知っておくべきか。
 もちろん六課の連中にも後で話しておくべきだろう。うかつなことをしゃべってヤツのトラウマをえぐられてはかなわん」



 思考の渦に沈みかけた私にそう言うと、イクトさんは私や侑斗さんや万蟲姫達、その“一件”を知らない面々を見回して、



「さっき、『たった一発の銃弾で村がひとつ地上から消えることだってある』という話をしただろう。
 それは、オレ達の地球で実際にあった話だ」

「ひょっとして、それが……?」



 聞き返す侑斗さんに、イクトさんがうなずく。



「今から16年前のことだ。オレ達の地球で、ひとつの村が殺戮によって全滅する事件が起きた。
 被害者はその村の住人すべて。そして加害者もまた、その村の住人すべて……村に住むすべての人間が互いに殺し合ったんだ。
 そして……」







「その惨劇を引き起こしたのが……柾木だ」











 ――時の列車、デンライナー。次の停車駅は、過去か未来か――











『とある魔導師と古き鉄と時の電車の彼らの時間』・『とまコン』バージョン



とある魔導師と守護者と時の電車と仮面の戦士達



第24話「お姉様とお呼びっ!」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「………………ん?」



 それを感じたのは、オレの作った料理(中華)をみんなが堪能してくれている真っ最中のこと。



「ジュンイチさん……?」

「どうしたの?」



 真っ先に反応したのはなのはとクイントさん……は、ともかくとして……



「…………気のせい、か……?」

「あのさぁ……自分だけで納得してないで説明してくれない?」

「みんながみんな、ジュンイチみたいにアレコレ感知できるワケじゃないんだからさ」

「そうだよ。
 あたしやマスターコンボイさんはまだ感度低いし……」



 違和感は一瞬だけ。だからそのまま流そうとしたけど、周りがそれを許してくれなかった。クイントさん、セイン、スバルから次々に説明を要求する言葉が飛んでくる。



「気のせいだと思うんだがな……
 ……恭文達がまたオレの過去がらみで厄介ごとに首を突っ込んだみたいな気配が……」

「何その具体的な気配」



 オットーから的確なツッコミが返ってくる……しょうがないだろ。本当にそんな気がしたんだから。



「ま、それだけ具体的ならかえって信憑性も薄れるってもんだな」

「そうだね。
 本当に気のせいだよ、それ」



 ノーヴェやホクトの言う通りだろうな。気を取り直して、オレも自分の分のチャーハンの制圧に取りかかる。







 …………んだけど、相手はあの不幸マスター恭文だからなぁ……







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「いたか!?」

「いや、どこ行きやがった!?」

「探せ! まだこの村にひそんでるはずだ!」



 くそっ、どこに行ったんだ……?

 この村に突然現れて、人を殺し始めた殺人鬼ども……オレ達はそいつの姿を探し回っていた。手分けして村中を探して、顔を合わせたヤツに見つけたかどうかを聞いて回る。

 こんな小さな村じゃ、何かあっても管理局なんかすぐには来てくれねぇ……オレ達でなんとかするしかないんだ。

 この村はオレ達が守る……殺人鬼が何だ! 返り討ちに、皆殺しにしてやる!



「おいっ!」



 …………?

 声をかけてきたのは雑貨屋の親父……どうしたんだよ?



「定食屋の親方、見てねぇか?
 さっきから姿が見えねぇんだ」

「まぁ、みんなほうぼうを探し歩いてるからな……」



 答えかけて――止まる。

 待て……オレ達は、“ナニ”を探していた?

 相手は殺人鬼……返り討ちにあったって可能性だって!?

 イヤな予感がして、走り出そうとした、その時だった。







「ぎゃあぁぁぁぁぁっ!?」







 響いた悲鳴は通りのすぐ向こうから。まさか!?

 あわてて親父と二人で悲鳴のした方向に走って……そこにいたのは、大工の棟梁だった。

 そして――







 その足元では、八百屋のおばちゃんが血だまりの中に倒れていた。







「と、棟梁!?
 おばちゃん、どうしたんだよ!? 何があったんだ!?」



 すぐにおばちゃんへと駆け寄り、確かめる――死んでる。棟梁に何があったのか聞いて――



「……そうだよ……そうなんだよ……」



 …………棟梁?



「アイツらは殺人鬼……けど、アイツら、“どうしてこの村のことを知った”……?」



 え…………?



「そうだよ……この村に呼んだヤツがいるんだ……
 『ここならたくさん人が殺せる』とか言って、ヤツらを呼んだ仲間が、この村に……」



 お、おい……

 まさか、棟梁……おばちゃんがその“仲間”なんじゃないかって……







 ――とすっ。







 ………………え?

 不意に、背中に何か熱い感覚が走った。振り向くと、そこには……



「お、お前なんじゃないのか……!?
 お前が、ヤツらを呼んだんじゃ……!?」



 震えながら血まみれの包丁を握る、雑貨屋の親父がそこにいた。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「舞台となったのは、ヨーロッパ……オーストリアの外れ。
 ここと同じような、電車も通っていない山の中の集落だった」



 時間が惜しい。一刻も早く“降魔陣”を止めなくちゃ……森の中の獣道、人目を避けて村に戻りながら、イクトさんが語る。



「そこには柾木が仇と狙う連中の、エージェントのひとりが潜伏していた。
 そいつを追って現地入りした柾木だったが、相手も巧妙に正体を隠していて捕捉できなかった。
 そこで柾木は、“相手に尻尾を出してもらうことにした”」

「それって……」



 聞き返すフェイトに、イクトさんがうなずく。



「その時、ちょうど現地は長雨の真っ最中で、地盤が緩んでいた……雨音に紛れられる程度の爆破でも、地すべりを起こして道路のすべてを寸断することはたやすかった。
 同時、同じく悪天候の仕業に見せかけて通信回線も破壊、完全に村を孤立させた。
 そうして外界と隔絶した上でウワサを流したんだ。
 『この村には、殺人鬼が正体を隠して隠れ住んでいる』とな」



 フェイトだけじゃない。侑斗さんや万蟲姫達も、イクトさんの話を苦虫をかみつぶしたような顔で聞いてる……ムリないよね。

 だって、自分達が今まさに体験している状況、そのままなんだから。



「さらに、実際に殺人鬼がうろついているような演出も怠らなかった。
 不審者に扮して夜中の村をさまよい歩いたり、食料として捕らえた野生動物の“残り”を、殺人鬼が殺したかのようにズタズタにして村の中に転がしたり――“よそ者”として自分に疑いがかからないよう、宿も取らずに野宿して、作戦以外での集落への立ち入りを極力避けるようなこともしていたそうだ。
 そうして、住人の不安をあおり、焦ったターゲットが尻尾を出すのを待ったんだ」

「それで……どうなったの?」



 恐る恐る、サニーが先を促す――聡い子だ。きっとどうなったのかはわかってるはず。けど、聞かずにはいられなかったんだろう。



「結果として、ターゲットは網にかかった。
 状況にしびれを切らせて、持っていた専用の通信システムを使って外部と連絡を取ろうとした――そこを押さえ、柾木はターゲットを捕捉。情報を引き出し、復讐として……射殺した」



 『射殺』。その一言にフェイトがピクリと反応する――だけど、話はまだ終わりじゃない。



「無事にターゲットを“処理”して、作戦は成功した……“はずだった”。
 “その後繰り広げられた地獄絵図さえなかったら”な」



 イクトさんの言葉に全員が息を呑む――そう。この話の、本当の“地獄”はこの後だ。



「お前達が肌で感じた、あの村の空気と同じだ。
 柾木の工作によって不安がピークに達していたのは、ターゲットだけではない――村の人間すべてがそうだった。
 そこに起きた殺人――彼らの不安は爆発し、瞬く間に恐慌に発展した。
 柾木が村に直接入らず、正体を隠して潜伏していたのもまずかった。おかげで疑いを向けられ、つるし上げられる“はけ口”も特定されず、誰もが誰もを疑い、自らの命を守るために殺し合った。
 その場にあるすべてのものが凶器と化し、女子供、赤ん坊に至るまでが犠牲となった。
 事態に気づき、収拾にあたった柾木も、当時の戦闘能力では目の前のひとり、二人を無力化するのでせいぜい。その“無力化した者達”も、他の者を止めにその場を離れたとたん別の者に殺される始末。
 殺戮は丸一日繰り広げられ……すべてが終わった時、血の海の中に立っていたのは柾木ひとりだけだったそうだ」

「そんな……ひどい……っ!」



 聞いていて吐き気をもよおしたらしい。フェイトが口元をおさえてうめく――まぁ、イメージの域ですんでるだけフェイトや他のみんなはまだマシな方なんだけど。

 僕なんか、前にジュンイチさんの記憶をダイレクトで見た際にその光景をモロに見せられた。もうグロかったのなんの。

 前にネガショッカー所属のグロンギが作った血の海ですら、アレに比べたら“子供だまし”レベルだろう。フェイトがアレを見たら、ショックで卒倒するのは間違いない。



「生き残った柾木も、ただではすまなかった。
 もちろん、肉体的にではなく、精神的に、だ――レム・ストナーの時とは違う。暴走していない、自らの意思で行ったことがきっかけで引き起こされた惨劇……
 それが、齢8歳で復讐鬼と化し、心をすり減らして戦いに明け暮れていた柾木の心にどんな“影響”を与えたか……“アレ”を見た者なら察しがつくだろう」



 イクトさんの言葉にフェイトや万蟲姫がうなずく。

 要するに、ただでえレムさんの件でズタズタだった当時のジュンイチさんの心に、トドメの一撃が下されたワケだ。



「なるほど……その事件、特に、住人が起こしたパニックに、ザインってヤツは注目したワケか……
 瘴魔が恐怖だの憎しみだのから生まれるっつーなら、大量に作り出そうと思ったら今の話の状況はそれこそ理想的だ」



 比較的ダメージが軽かったっぽい侑斗さんが冷静につぶやく――まぁ、そういうことだね。

 瘴魔獣を作り出せて、さらに元になった一件に対して強いトラウマを持つジュンイチさんへの攻撃材料にも使える……ザインもつくづくシュミが悪い。そりゃイクトさんの怒りを買って殺されるワケだよ。







「ぎゃあぁぁぁぁぁっ!?」







 ――――って!?

 ここまで聞こえてきた悲鳴に、思わず足を止める。



「今のは!?」

「あっちだ!」



 フェイトと侑斗さんがすぐさま方向を特定、みんなで悲鳴の上がった方に向かって――



「――――っ、ひどい……っ!」



 その場の惨状にメープルがうめく――そう、“惨状”。

 あちこちで住人が血まみれになって倒れてる。まだ火災というほどの規模じゃないけど、道端のいろんなものにも火がかけられてる――まさしく暴動一歩手前の状態だ。

 とにかく、あわてて一番近くにいた人に駆け寄り、容態を確かめる。

 ……よかった。生きてる。



「…………ぅ゛っ……」

「あ、大丈夫ですか?」



 気がついたらしい、僕が助け起こしている村人にはフェイトが正面から声をかける。



「いったい、何があったんですか?」

「わ、わからない……いきなり、後ろから襲われて……」







「ひぃっ!」







 ――――――っ!? また新しい悲鳴!?



《マスター、正面の物陰です》



 アルトの声にそちらに視線を向けると、確かに物陰から男物の靴のつま先がちょこんと見えていて――震えてる。



「大丈夫です。
 私達はあなた達に危害を加えるつもりはありません」

「ほ、本当か……?」



 フェイトの言葉に、隠れていた誰かさんは物陰から恐る恐る顔だけを出してきた。

 対して、フェイトが彼の様子を見ようと駆け出――



「ちょい待ち、フェイト」



 ――そうとしたところを僕が止めた。



「ヤスフミ……?」



 不思議そうに僕を見返すフェイトだけど……僕が答える代わりに、イクトさんが誰かさんに尋ねる。







「“貴様の本体はどこだ?”」







「え………………?」



 ワケがわからない、といった顔の誰かさんの手元から何かが飛び出して――その正体を確認する間もなく、イクトさんの放った炎が誰かさんをブッ飛ばした。

 全身を炎に包まれ、誰かさんが地面を転がって――その姿が変わる。



「瘴魔獣……!?」



 そう。さっき侑斗さんがブッ飛ばしたのと同じ、タコ型の瘴魔獣だ。

 たぶん、さっき懐から飛び出したのはコイツの触手だったんだろう――今となっては確認のしようもないけれど。



「おそらく先ほど桜井が倒したものと同じ、本体からコピーされた劣化個体だ。
 村人に擬態して、この惨状を作り出して……」

「そこに僕らが来たもんだから、被害者のフリして闇討ちしようとした……ってところかな?」



 イクトさんに付け加えながら、アルトの切っ先で瘴魔獣の亡骸をつんつんとつつく――完全に炭化していて、僕がつついただけであっけなく崩れ落ちた。



「でも……タコ、だよね?
 さっきから気になってたんだけど、タコの瘴魔獣で、なんで擬態できるの? だってタコだよ?」

「あのな、メープル……タコだって擬態できるんじゃよ?」

「え、ホント!?」



 ……なんか、メープルやバカ姫が『何を今さら』な話をしてるけど……まぁ、そうだよね。意外に知らない人っているよね。

 そう。世間一般のイメージだとそういう印象はないけど、タコだって立派に擬態できる。カメレオンみたく体色を変化させて、岩とかに張りついて獲物を待ち受けたりする映像を、動物番組とかで見たことのある人もいるんじゃないかな?



「ま、その辺はどうでもいいとして……」

《どうやら、この騒ぎを助長している“サクラ”はこのコピー個体が行っているようですね》



 アルトが僕の考えを代弁してくれた。

 なるほど。騒ぎを広げている“サクラ”をどうやって確保してるのか疑問だったけど、そういうことか。

 思えば、最初の殺人を起こした瘴魔獣や殺された人もダミーだったんだから、その可能性は最初から考えられたワケで……うん。僕もまだまだ推理力が足りないね。



「……となれば、ここに残る要員は決まりだな」



 ――って、え?

 いきなり剣を抜き放って一歩前に出るのはイクトさん……『残る』って、“サクラ”の処理ですか?



「相手は“サクラ”に瘴魔獣の劣化コピーを使っている。
 となれば、それを一番見抜きやすいのは瘴魔神将であるこのオレだ」

「……そういう理屈なら、オレも残った方がよさそうだな」



 ホーネットまで……確かに、これまで確認されている手口を考えると、“サクラ”を見つけ出すのは神将である二人が一番の適任者ってことになるけど……



《まぁ、このまま一緒に行動しようとして途中で遭難されるより、最初からひとりでさ迷い歩いてもらっていた方がこっちとしては助かりますけど。“サクラ”探しもその方がはかどりそうですし》

「…………そういうことだ」



 あ、泣いた。アルトの指摘に血の涙を流してイクトさんが泣いた。



「とにかく、だ。オレやホーネットで街の恐慌を抑える。
 その間に、お前達でこの騒ぎを起こしている瘴魔獣の本体を見つけ出して、叩け」

「大丈夫なんですか? イクトさん……」

「心配するな、テスタロッサ」



 当然ながら、恐慌の真っ只中に飛び込むことになるイクトさんを心配するフェイトだけど、イクトさんがこの程度のことでどうにかなるワケがないし、増してやそれでビビるはずもないワケで――







「道には迷っても、討つべき相手に迷ったりはしないさ」







 ……けど、 そのジョークは割と外してると思いますよ、イクトさん。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「…………行ったか……」



 瘴魔獣の本体を探し、別行動となった蒼凪やテスタロッサ達を見送る。

 …………さて、と。



「これで、思う存分やれるな」

「フンッ、ずいぶんとやる気じゃないか」

「当然だ」



 軽口を叩いてくるホーネットに答えて、オレは向き直る。

 この場に残ったオレ達を包囲するように、周囲の路地からわらわらと姿を現した住人達へと。

 当然この中にも、騒ぎをあおり、拡大させている“サクラ”が紛れているのだろうが……



「……運がなかったな。
 今日のオレは、すこぶる機嫌が悪い」



 蒼凪達にはあぁ言ったが……白状すると、わざわざ“サクラ”を分けて叩く気にはなれなかった。

 何しろ……



「アイツの心の傷を踏みにじられて平然としていられるほど、オレは人間ができているワケではないのでな」



 言いながら、真横にかざした右手を真っ青な炎が包み込む――







 そう。平然としていられるはずがない。



 あの悲劇は、確かにあの男にとってぬぐいがたい“罪”であり、忌むべき過去の象徴だ。

 だが……あの一件があったからこそ、あの男は自らの復讐のあり方に疑問を持ち、誤っていた道を正すことができた。

 あの一件は、柾木ジュンイチという人間を形作る上で、決して欠けてはならない大切な出来事なんだ。

 だが、そんな柾木の過去を……この状況を仕組んだ犯人も、それに踊らされている住人達も……どいつもこいつも、アイツの想いも知らずにつつき回してくれる。実に不愉快だ。







「我が友の心の傷を土足で踏みにじる“降魔陣”を、オレは心から嫌悪する!」







 悪いが、犯人一味もろとも、死なない程度に焼き払わせてもらう!

 自分で考えることもせず、いたずらに情報に踊らされた罰だと思ってもらおうか――覚悟を決めろ、焼却対象むらびとども!







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ……順調だな。

 あちこちから悲鳴が聞こえ、煙が立ち昇り始めた村を見渡し、ほくそ笑む。

 “降魔陣”は順調にその形を成しつつある。この分なら、瘴魔獣を生み出し始めるのもそう遠い話ではないだろう。

 ただ……我が主の指示で巻き込む手はずだった柾木ジュンイチがワナにかからず、代わりにヤツの仲間達が現れたことだけは計算外だったが。

 まぁ、それはそれで都合がいい。オレの手でヤツらを討って、それをオレの手柄にしてやれば……







「見つけた!」







 …………来たな。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「見つけた!」



 いつかのネズミなイマジンの時と同じだ。村ひとつを巻き込むような作戦を展開している以上、その指揮のためには見晴らしのいい場所に陣取ることが必要――そう考えて、イクトさんに村の人達を任せた僕らは村を見渡せる丘へと直行。

 そして――予想通り、そこに僕らが今までに見た個体と同じ、タコの瘴魔獣の姿があった。



《……“Bネット”のデータに該当がありました。
 タコ種の瘴魔獣で名前は“オクトバッシャー”……瘴魔大戦後に自然発生が確認されたタイプのようですね》

「ふーん」



 とりあえず、検索してくれたアルトの説明に軽く納得しておく。



「フンッ、現れたか、ゼロノスとその仲間達……」



 ……おや、あちらさんも、僕らのことをお待ちかねだったみたいだね。



「意外だよ。
 ジュンイチさんを呼び出したくて“降魔陣”なんかやらかしたみたいだし、僕らのことなんかどうでもいいと思ってたよ」

「……こっちの思惑はだいたい理解できているみたいだな。
 ならば話は早い――ただでさえ柾木ジュンイチを取りこぼしているんだ。その上“降魔陣” までつぶされてたまるか」

「言いたいことはわかるけどね、こっちはそんなの知ったこっちゃないんだよ。
 あの人のトラウマをえぐられたら後が面倒なんだもの――絶対につぶさせてもらうよ」



 オクトバッシャーに答えて、セットアップしたアルトをかまえて――











「ここは、私にいかせてくれないかしら?」











 ――っとと……?

 いざブッ飛ばしてやろうってところで声をかけてきたのはミシオだ。

 えっと……どういう風の吹き回し?



「だって……“降魔陣”っていうのは、柾木ジュンイチの“復讐の過去が元になってるんでしょう?”」

「…………なるほどね」



 うん、納得した。

 ミシオは、契約者の復讐に協力するって契約で実体化したイマジンだ。

 だけど、復讐するのは間違いだって……協力するフリをしながら、僕らに復讐を阻止してもらうように動いてた。

 つまり、彼女はジュンイチさんとは別の形で、復讐っていうものに思うところがあるワケだ。そんな彼女が、復讐の果てに起きた悲劇がもとになって考え出された“降魔陣”に何も感じないはずがない。



「なんだ、相手をするのは貴様だけか?
 こっちとしては、全員でかかってきてくれてもかまわないんだがな」

「そういうワケにはいかないわよ。
 私達が全員でかかっていったりしたら、あなたなんて瞬殺だもの――私がスッキリするまで殴る前に終わっちゃうわ」



 瘴魔獣に答える言葉はいつも通り落ち着いた感じ――だけど、声色が違う。

 そりゃもう力強く、ドスが効いてる。つまり――



「ぅわぁ……そうとう怒っておるな、ミシオ」

「当然」 



 自分のやるべきことはわかってるらしい。ミシオのとなりに並び立って、僕らの気持ちを代弁してくれた万蟲姫にミシオが答える。



「柾木ジュンイチが心に深い傷を負った悲劇……それをわざわざほじくり返して自分達のいいように利用する……シュミが悪いのよ、あなた達!」



 オクトバッシャーをビシッ!と指さして言い放つミシオ……いーぞいーぞ。もっと言ってやれー。



「いくわよ、ココアちゃん!」

「おーなのじゃっ!」



 そしてさっさとブッ飛ばしてやれー。



 ライダーパスを手に、ベルトを腰に巻く万蟲姫にミシオが取りつく。そして――











「変身っ!」



《Wip Form》











 ベルトにパスをセタッチ。それに応えたベルトの発声に伴って、ガンフォームと同じアーマーが装着される。 

 そしてマスクに配置されるオブジェは当然シャチの顔。例によって電仮面にリ・バースして装着される。

 そして誕生する、仮面ライダー電王ウィップフォーム……ううん、電王ウィップフォーム改め……



「名づけて、仮面ライダーマリーネ、ってところかしら……
 けど、あなたみたいなヤツに名前で呼ばれるのも不愉快よ。
 だから……」











「お姉様とお呼びっ!」











 ……あ、『女王様』じゃないんだ。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「さぁ……お仕置きの時間よ」



 言って、みんなが変身した時と同じようにデンガッシャーを組み上げる……組み合わせは、ウラタロスくんと同じロッドモード。







「お仕置き、だと……?
 上等だ、やれるものならやってみろ!」

「言われなくても、そのつもりよ!」







 だけど、同じなのは“そこまで”。突っ込んでくるオクトバッシャーに言い返しながら、ロッドモードの一番後ろ、石突の部分を持って振るって――“デンガッシャーがバラけた”。

 もちろん、単にバラけただけっていうワケじゃない――デンガッシャー全体がフリーエネルギーで包まれて、それがロッドモードの連結順に各パーツをつないでいる。そんなデンガッシャーを振るって、オクトバッシャーを近づけることすら許さず打ちのめす。

 これが私のデンガッシャー専用形態、ウィップモード――システムコールの“ウィップフォーム”は伊達じゃないのよ?







「ほらほら、どうしたの?
 威勢がいいのは口だけかしら?」

「う、うるさい!」







 言い返して、オクトバッシャーが再び襲いかかってくる……まったく、あっさり挑発に乗ってくれちゃって。

 あまりの単純さにため息をつきながら、ウィップモードのデンガッシャーで打ち据える――あっけなく返り討ちにされて、オクトバッシャーが地面を転がる。







「情けないわね。もう少しがんばったらどうなの?
 このままだと、あっけなく終わって“降魔陣”もつぶされるわよ――せめて自分の仕事くらいはまっとうしたら?」

「大きな、お世話だ……っ!」







 私に言い返して、オクトバッシャーは8本の腕を振り回して、こっちに向かって襲いかかってくる。

 冷静にその動きを見極めて、デンガッシャーの鞭がカウンターを叩き込m











「させるか!」











 …………って、え?

 私が暴れさせたデンガッシャーの動きが止まった。

 オクトバッシャーの触手、その内の一本に絡め取られて。







「調子に乗るなよ……
 その鞭が厄介なら、まずはその鞭から封じてやればいいだけの話だろうが!」







 デンガッシャーの動きを封じて、オクトバッシャーはなんだか勝ち誇ってる……んだけど……



「あのね……ひとつ忘れてない?」

「何…………?」

「確かに、私があなたと戦わせてもらっているけどね……」











「僕らが手出ししちゃダメとは、言われてないんだよね♪」











 その言葉と同時、オクトバッシャーの触手が断ち切られた。

 言葉通り、乱入してきた恭文くんの斬撃によるものだ――続けて、フェイトちゃん、侑斗さんがオクトバッシャー本体に連続して斬りつける。







「ボクらだっているんだからねっ!」

「このこのこのこのっ!」







 さらに、サニーが後ろからオクトバッシャーの後頭部にかみついて、メープルもポカポカとオクトバッシャーを両手で叩く――正直、二人の攻撃は効いてそうにないけど、可愛いのでオールOK。







「サニー、メープル、離れて!」

「もひとついくよ!」







 そんなサニー達にフェイトちゃんが、恭文くんが告げる――サニー達が離れたところに、二人の息の合ったコンビネーション斬撃が炸裂、オクトバッシャーは触手もひとつ残らず断ち切られて、私の目の前に転がってくる。







「さて……それじゃ、そろそろフィニッシュにいきましょうか?」











《Full Charge》



「さぁ……かみ砕くわよ!」











 ベルトにパスをセタッチしてフルチャージ。デンガッシャーにエネルギーが流れ込んでいくのがわかる。
 と、四つに別れ、フリーエネルギーの流れによってつながっていたデンガッシャーの鞭が真ん中、二番と三番のパーツの間で途切れた。前後二つ、一番と二番、三番と四番のパーツでそれぞれ新たな鞭を形成する。
 空いてる手でそれをキャッチして、出来上がるのはさながら鞭による二刀流。というワケで――







「えぇいっ!」

「どわぁっ!?」







 二本の鞭でオクトバッシャーを捕まえ、頭上に向けて放り投げる。落ちてくるオクトバッシャーを、予測落下地点で待ちかまえながら十分に引きつけて――











「オルカ、デストロイヤー!」











 鞭による嵐が巻き起こった。私の振るう二本の鞭が、空中で身動きのままならないオクトバッシャーに絶え間なく叩きつけられる!

 空中で成す術なく打ちのめされ、オクトバッシャーの身体が再び真上に跳ね飛ばされ――はるか頭上で、叩き込んだフリーエネルギーが炸裂、オクトバッシャーの身体を大爆発が包み込む。

 そこから後退、“場所を譲る”――そんな私がさっきまで立っていた場所に、黒こげになったオクトバッシャーが“車田落ち”で落下。爆発、四散する。

 ま、ざっとこんなもの……



「………………あ」

「どうしたの?」



 気づいた私に、フェイトちゃんが尋ねてくる……ので、仮面の下で笑いながら、答える。



「うん、ちょっとね……」







「アイツに『お姉様』って呼ばせるの、忘れちゃった♪」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「侑斗!
 大丈夫か、ケガはないか!?」

「あーあー、大丈夫だよ。
 大丈夫だからそうひっつくな! 暑苦しいんだよ!」



 瘴魔獣が倒れたことで、村を包んでいた結界も消滅したらしい……と、いうワケで、村の外で出番ナッシング状態に追い込まれていたヒロさん達も合流。心配して真っ先に駆け寄ってきたデネブさんに侑斗さんはいつも通りのツンデレ全開。

 で、その一方で僕らはヒロさんやサリさんに何があったのかを軽く説明。



「ふーん……
 つまり、連中の狙いは瘴魔獣の大量生産とジュンイチへの嫌がらせ……で、あたしらはそれにまんまと巻き込まれたワケか」

「はい……」



 ヒロさんの言葉に、フェイトは鎮痛な面持ちで答える……うん、気持ちはわかる。

 瘴魔獣の発生まではいかなかったけど、“降魔陣”のせいでここの人達が被害にあうのは止められなかった……死者だって出てる。

 そりゃ、一から十まで守れるワケじゃないのはわかってるけど……それでも、フェイトにとっては辛いことなんだろう。



「一応、はやてに連絡して最寄の所轄部隊に動いてもらったから、後のレスキューはそっちにお任せになると思う。
 けど、ねぇ……」

「『けど』……?
 何か気になることでもあるのか?」



 そんなサリさんの問いに答えたのは僕じゃなかった。



「敵が、柾木を巻き込むことも狙って“降魔陣”を使ってきたこと……だな」



 ホーネットを引きつれて……というか、ホーネットに案内してもらって僕らに合流してきたイクトさんだ。



「事情を知らない人間からすれば、“降魔陣”はただの瘴魔獣大量発生の儀式陣にしか見えん。
 だが、敵が“降魔陣”の“もうひとつの効果”……すなわち、柾木への心理的ダメージをも狙っていたのは明らかだ。そうでなければ、柾木を誘き出そうとする理由がないからな。
 これは、柾木の過去を、そして“降魔陣”が生み出された経緯を知らなければできないことだ」

「つまり、相手は“降魔陣”関係の裏事情を知っておる、ということじゃの……
 ……まさか、相手はかつての瘴魔軍の関係者、とか?」

「それか、ザイン……だっけ? “JS事件”で蘇生されてみんなと戦ったっていう、ソイツが遺したデータを後から見つけたヤツの仕業とか」



 万蟲姫の仮説だけじゃない。彼女に答えるサニーの仮説も、十分にありえる話だ。

 何しろ、ついこの間、クロスフォーマーのバカどもがその“ザインの残したデータ”を見つけたせいでジュンイチさんが暴走させられたばかりなワケだし。



《何にせよ、情報が足りないのが痛いですね……
 いい加減、首謀者さん達にはネガタロス達のようにさっさと顔を見せていただきたいんですが》

「戦隊ものだと、もうシリーズ冒頭から姿を見せてくれてたりする作品もけっこうあるんだけどねー」



 アルトとそんなことを話しながら、考える。

 瘴魔を従えて、ジュンイチさん中心にちょっかいを出してきてる敵……正直、僕らが二の次にされてる気がしてちょっぴりプライドが傷つくけど、そこはいい。



「まったく……ジュンイチさんって、ホント僕らより強いクセして心配ばっかりさせてくれるよね」

《スキル的には完璧超人なのに、それ以外のところでシャレにならないウィークポイントが多すぎるんですよ、あの人は》



 本当にね。

 その内、ヒロインよろしく“囚われのお姫様”ポジションとかに収まったりしないだろうね?



《かんべんしてくだいよ。
 そんなことになったら、“王子様”にあたるポジションを狙っていろんな人がバーサークしますよ》

「………………」



 アルトの言葉に、“そうなった時”の光景を思わずイメージして……











 ………………あまりにも、違和感がなさ過ぎた。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「…………そっか。
 もう、終わってんのか」



 六課から連絡を受けて、ビックリした。

 クラナガンから離れた小さな集落で“降魔陣” が仕掛けられ、しかもすでに恭文達によって阻止された後だって言うんだから。

 つか……“恭文達がオレの過去がらみで厄介ごとに巻き込まれた”気配はそのものズバリだったか。



「誰だっけ? 『それだけ具体的ならかえって信憑性が薄れる』っつったヤツは」

「ふ、普通はそういうものじゃない……」

「そこまで具体的に察知できるお前が異常なんだよ……」



 オレにツッコまれて、ホクトやノーヴェが反論してくる……やれやれ、何を言ってるんだか。



「『オレが異常』なんて……何を今さら」

「そこは否定しましょうよ……」



 なのはにツッコまれた。



「まぁ、いいや。
 もう解決したっていうなら、オレ達は動く必要もないだろうし」

「えぇ、そうね。
 あなたがしゃしゃり出るのはやめておきなさい」



 もう今から出向いても出番はないだろう――あっさりとそう結論づけて話を切り上げるオレにはクイントさんが同意する。



「もうやることが残ってなさそうなのもそうだし……そもそも、あなたの手を煩わせたくないから、恭文くん達もがんばったんでしょうしね」



 んー、まぁ、そういうこと。

 まったく、アイツら……オレに対して気を遣いやがって。



「気を遣わせるような弱みを抱えてるからそうなるのよ。
 ちょっとはみんなを安心させられるように、落ち着いたらどうなの?」

「簡単に言ってくれるけどさぁ……」

「あら、簡単なことよ。
 家庭のひとつも持てば、さすがのあなたも少しは落ち着くんじゃない?」



 あっさりとクイントさんは答えるけど、それこそ『簡単に言ってくれる』だ。



「そうは言うけど……そんな家庭を持つ相手がいないって。
 せいぜい、“娘”のホクトやヴィヴィオを家に迎えるくらいだぜ?」

「だったら探せばいいじゃない。
 もう26なんだもの。結婚を考えてもいい年よ?」



 そうオレに答えると、クイントさんは“オレの結婚”なんて話題に興味津々な様子のなのは達を見て、



「試しにイメージしてみなさいよ。
 あなたが、あの子達の誰かと結婚して、家庭を持ったイメージを……ね」

「オレが……アイツらと……!?」



 またどえらいチョイスを持ってくるな。

 オレが、アイツらと結婚……そんなこと言われても……







 …………言われ……ても……







 ………………………………あれ?







「ちょっ、じ、ジュンイチさん!?
 なんか顔がものすごく赤いですよ!?」



 ティアナに言われて……実際頬に触れて、気づく。

 なんかすげー熱くなってる。顔面に血流が集中してるんだ。



 え、ちょっ、なんで? どーしてここで赤くなる?

 オレはただ、アイツらの誰かと結婚した光景をイメージしようとしただけで……







 …………結……婚…………







 ………………だぁぁぁぁぁっ! なんでそこで停止するオレ!?

 アイツらとは、実際には別にそういう関係でもなんでもないだろ! ただ仲間とか弟子とか家族とか……







 …………家……族…………







 ………………だぁかぁらぁっ! 止まるなオレぇぇぇぇぇっ!

 なんでアイツら相手に赤くならなきゃいけない!? 別に本当に結婚する前提でイメージしたワケじゃ……







 …………結……婚…………







 ………………だぁぁぁぁぁっ! なんでそこで停止するオレ!?







 ………………

 …………

 ……







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



(ジュンイチの思考が無限リピート状態に入っております。しばらくお待ちください)







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「…………頭、冷やしてくる……」



 なんかものすごい葛藤があったみたい……結局、顔を赤くしたまま、お兄ちゃんは食堂を出ていって……うん。



「…………自分で自分を吹っ飛ばしに行ったのかな?」

「いや、この場合の『頭冷やす』は普通に冷却でしょ、水かぶるとか」



 ティアにツッコまれた。



「っていうか、何、あの反応……
 いつもの柾木ジュンイチじゃ、絶対にありえないリアクションよね?」

「あ、あぁ……」



 でも、確かにお兄ちゃんの様子はおかしかった――そう思ったのはあたしだけじゃなかったみたい。あのクアットロやトーレですら『いつもと違う』と言い切るぐらいなんだし。



「えっと……私、何か変なこと言っちゃった?」

「うーん……」



 母さんの言葉に、思わず考え込むけど……うん。あんなお兄ちゃん、初めて見るからちっとも見当がつかない。

 つかないけれど……



「……ふむ……」



 ………………?

 マスターコンボイさん……何か気づいたの?



「関係があるかどうかは、わからんがな……
 今、ヤツはクイント・ナカジマに“自分の結婚”という状況を意識させられ、あの状態になった。
 つまり……そのイメージの中に、ヤツにとってそこまでの混乱を生じさせる“何か”があったと考えるべきだ」



 お兄ちゃんをあんなにしちゃう、“何か”……

 結婚生活のイメージ、だよね……



「………………夫婦ゲンカの末に殲滅せんめつされかけた、とか?」

『ぅわぁ……』



 あれ? 今度はみんながドン引き?



「いや、スバル……それ、あり得すぎて怖いわ……」



 ティアがそう言うと、みんながうんうんとうなずいてる……あれ? お兄ちゃんって案外みんなの中で序列低い?



「…………ふむ、なるほど……」



 ……って、スカリエッティ……?

 いきなり納得して……え? 本当にお兄ちゃんって序列低いの?



「序列? 何の話だ?
 そうではなくて、彼が“あぁ”なってしまった原因に思い至ってね」

『えぇっ!?』



 スカリエッティの言葉にみんなが驚く……いや、あたしもビックリなんだけど!?

 だって、あのスカリエッティが……研究と娘であるナンバーズのみんなのことしか頭にないと思ってたスカリエッティが、ジュンイチさんのあの状態をちゃんと分析したっていうの!?



「『他のことが頭にない』とか、キミには言われたくないんだが……いや、それは後でいいか。
 とにかく、今の彼の状態なんだが……」



 話題を戻してきたスカリエッティの言葉に、みんなが興味津々って感じで聞き入る――そんな中、スカリエッティはマスターコンボイさんを見て、



「マスターコンボイ。彼の記憶を垣間見たことがあるというキミに聞きたい。
 彼は幼少期、自らの暴走で大切な人を亡くして以来、『自分が人から愛されるべき人間ではない』とずっと考えてきたんだったね?」

「あぁ」



 それは、前にお兄ちゃんの記憶をのぞいたことのあるマスターコンボイさんだからこそできる断言――スカリエッティの確認に、そううなずいてみせる。



「そして……そうした考えから『自分を好きになる女性などいるはずがない』という思い込みに至り、それが彼の非常識とすら言える自らへの好意に対する鈍感さの原因となっていた……そこまではいいね?」



 そこまではあたし達にとっても周知の事実……なんだけど、スカリエッティにまで『非常識』とか言われちゃうあたり、お兄ちゃんの鈍感ってそうとうひどいんだなぁ……



「スバルはいちいち茶々を入れない。
 それで……それがどうかしたんですか?」

「何、簡単な話だよ」



 あたしの頭を軽く叩いて、続きを促すのはギン姉……対するスカリエッティは笑いながらそう答えて、



「自分が恋愛をする、という発想を完全に頭から排除して、彼は今までの人生の大半を生きてきた。
 当然、そんな彼に“恋愛の経験があるワケがない”」



 ………………あ。



 なんとなく……スカリエッティの言いたいことがわかった。

 他のみんなも気づいたのか、あたしと同じく「あ」って顔をしてる……代表して尋ねるのはなのはさんだ。



「つまり……こういうことですか?
 ジュンイチさんって、あぁ見えて自分の恋愛経験はほぼ0で……だから、“自分の恋愛感情に対する耐性がまったくない”……と?」

「そういうことだ。
 そんな彼が、クイント・ナカジマの一言で、キミ達のことを“そういう対象”として見てしまった……そりゃあ、感情の制御ができなくなるはずだよ」



 えっと……それって……







 お兄ちゃんが、なのはさんやギン姉達を恋愛対象として見るようになって……意識してるってこと?











 ………………えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?







(第25話に続く)





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



次回、とコ電っ!



「ぅだぁぁぁぁぁっ!?」

「ちょっ、ジュンイチさぁぁぁぁぁんっ!?」



「なんとかなんねぇのかよ、アレ?」

「そんなこと言われても……」



「久しぶりだな!
 今日こそお前の命w

「おー! 久しぶりじゃの!
 今日はゆっくりしていけるのかえ?」

「だから、ちっがぁぁぁぁぁうっ!」



「またお会いできましたね、みなさん」

「貴様……っ!」





第25話「因縁のネガい、再び」





「必要ないんだよ、貴様は」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あとがき



Mコンボイ「……とうとう年を越してしまってからの更新となってしまった、ミシオ初変身編、兼、“降魔陣”編の後編だ」

オメガ《まぁ……サブタイトルから想像がついた方も多いと思いますが、女王様よろしく鞭が武器ですか……》

Mコンボイ「仮面ライダーの公式設定上、鞭で戦う公式ライダーは少ないようだから……ということで考えたらしいぞ」

オメガ《あー、確かに》

Mコンボイ「まぁ、デンガッシャーをどう鞭に持っていくかで悩んだようだが、そこも劇中描写の通りに解決したようだしな」

オメガ《……必殺技用に二つに分割した姿は、鞭というより鎖の長いヌンチャクに見えないこともないですけど》

Mコンボイ「そこは言ってやるな。作者も気にしてるんだ……」

オメガ《あー……
 と、それはともかく、またしてもミスタ・ジュンイチの過去が明らかになりましたね……》

Mコンボイ「あぁ……
 毎度毎度、厄介な過去を抱えている男だ」

オメガ《特に今回は暴走のリスクだけでなく、“降魔陣” なんてものまで仕掛けられてますしね》

Mコンボイ「挙句その当人は今回の話のラストで当人自身がまた厄介なことに……」

オメガ《相手が相手なだけに、これでドタバタに持ち込まれたらそうとうな大騒動になりますよ、絶対……
 次回以降、面倒なことにならなければいいんですけど……
 ……っと。さて、そんなこんなで、そろそろお開きの時間ですね。
 みなさん、今回も読んでくださって、本当にありがとうございました》

Mコンボイ「次回も必ず読むがいい」





(おしまい)





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