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頂き物の小説
第18話「バカとゲームと勝ち名乗り」:2



「龍の力をその身に借りて、神の名の元悪を討つ!
 龍神合身ゴッドブレイカー、絶対無敵に只今見参!」




 合身を完了し、ダイダラボッチの前に降り立つ。とりあえずアイツが理解できるかどうかは微妙なので、ネガタロス達に向けて見得を切り――



「……と、いうワケでこっちの合体にまつわる儀式は一通りクリアだ!
 もう攻撃してきてもいいから、かかってこいや、ネガタロス!」

「フッ、その余裕、いつまでもつか見物だな!
 “合体中は攻撃しない”のお約束は守ってやったんだ! ここから先は真っ向勝負だ! やれ! ダイダラボッチ!」



 いやー、ネガタロスが“お約束”を律儀に守ってくれたおかげで、こっちとしても気分よく始められるねー……っと!



 突っ込んできて、つかみかかってきたダイダラボッチをこっちも迎え撃ち、オレ達はガッシリと組み合う形になる。



 とりあえず、現時点ではパワーは五分……に見えるけど、



「フンッ、その程度のパワーで、ダイダラボッチに勝てるものか!
 やれ! ダイダラボッチ!」



 向こうにはまだ余力があった。ネガタロスの言葉に、さらに力を発揮したダイダラボッチがオレを押さえ込みにかかる――けど、



「『その程度』……?
 そいつぁ……」







「こっちのセリフだぁっ!」







 次の瞬間、骨の砕けるイヤな音が響いた。



 余力があったのは向こうだけじゃない――本気を出したゴッドブレイカーオレのパワーに耐え切れず、ダイダラボッチの両腕がへし折れたんだ。しかも、両手も握りつぶされるというオマケつき。







「ドラゴニック、テイロン!」







 間髪入れずに武装をコール。右ヒザに配置されている、ゴッドドラゴン時の足の爪――それが跳ね上がるように起きて、オレのヒザ蹴りによってダイダラボッチの腹に突き立てられ、深々と抉る。







「その程度のパワーと強度で――」







 激痛に悲鳴を上げ、ヒザをつくダイダラボッチ――そのヒザを足場にして、







「ゴッドブレイカーが倒せるかぁっ!」







 その顔面にヒザ蹴り一発、シャイニングウィザードじゃあっ!







『ギャアァァァァァッ!』







 ……あ、ドラゴニックテイロン、展開しっぱなしだった。

 顔面を鋭い爪で深々と抉られて……というか貫かれて、ダイダラボッチが絶叫する。まぁ、普通の人間だったら死んでる損傷だしね。そりゃ痛いか。







『ガァァァァァッ!』







 距離を取るオレに対して、ダイダラボッチが怒りの咆哮を上げる……ん? なんか、空気が振動して……?







『ガァァァァァッ!』







 ――――コイツは!?



 その正体に気づいた時には遅かった。



 ダイダラボッチはただ怒りのままに叫んでいたワケじゃなかった。その咆哮によって巻き起こった衝撃が、周りのビル群もろともオレに叩きつけられる!



 空気を震わせた衝撃で対象を振動させ、物質そのものにダメージを与える音波衝撃砲――アイツ、こんなこともできたのか。



 もっとも――











「ぜんぜん――平気っ!」











 ゴッドブレイカーには効かなかったワケだけど。







「やれやれ、耐えられる攻撃で助かったぜ。
 オレができないおかげで、ゴッドブレイカーも対物理攻撃系の防御はぶっちゃけザルだからな……その点、 コイツには悪いことしてるぜ」



 対物防御もできるヤツが乗り手だったなら、今の攻撃もそれなりに防げたんだろうけど……うん。対物防御がへっぽこでゴメンナサイ。



「………………さて」



 それはともかく……だ。



「今のが、追い詰められた獣が報いた最後の一矢……と思っていいのかな?」



 言いながら、右足に収納されていた専用剣、ゴッドセイバーを取り出す。



「そんじゃ……耐えたこっちは遠慮なくフィニッシュといくぜ!」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「爆天剣!」







 オレの叫びに呼応し、ゴッドセイバーは光の粒子となって霧散・再び収束して爆天剣へとその姿を変える。







「ブラスト、ホールド!」







 続けて、胸のゴッドドラゴンの頭部が炎を吐き出し、その炎が爆天剣に宿る――さらに、余ったエネルギーはダイダラボッチへと向かい、拘束場を作り出してその動きを封じ込める。



 そして――







「いっけぇっ!」







 背中のバーニアを全開にふかして、一直線にダイダラボッチへと突っ込んで――











「紅蓮――両断!」







「カラミティ、プロミネンス!」











 咆哮と共に刃を一閃。ダイダラボッチの身体を一刀の元に両断する!







 左右に断ち切られて、ダイダラボッチの身体が外側へとバランスを崩すと、その切り口に現れるのは禍物まがものを浄化する力が形作る“封魔の印”――次の瞬間、
ダイダラボッチの身体は大爆発を起こし、焼滅した。







 そして、オレは爆発の炎の中、振り下ろした勢いで地面に突き刺さった爆天剣を引き抜く。








 ……そんじゃ、久々にいってみるか!



 相手を返り討ちにした時にはできない――完全撃破時限定の勝ち名乗りっ!











「爆裂、究極!
 ゴォッドォッ! ブレイカァァァァァッ!」












 ……はい。某エルドランシリーズが元ネタですが何か?







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「おぉっ! なかなかカッコえぇことするやん、じゅんさんっ!」







 敵を撃破して、カッコよく勝ち名乗り……あれぞまさにヒーローの姿!







「あんた、まさか『自分もやりたい』とか言い出さないわよ……ねっ!?」







 ウチにツッコみながら、なっちゃんが竜王神の槍でバケガニをはっ倒す……はっはっはっ、何を言い出すかと思ったら。







「もちろん……やる気マンマンやっ!」







 言って、ウチが振るった獣帝剣が、のしかかってきたツチグモの前足一対を一薙ぎでぶった斬る。



 攻撃をつぶされた上に前足まで失って、悲鳴を上げるツチグモの顔面に蹴りを一発。さらに獣帝剣の峰を使ってその身体をすくって――ひっくり返す勢いで投げ飛ばす!







 強引な投げ方のせいでメチャクチャに回転しながら、ツチグモが地面に叩きつけられる――ほな、そろそろ決めるでっ!







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「フォースチップ、イグニッション!」



 ウチの叫びに応えて、飛んできたんは青色の、地球のフォースチップ。背中のチップスロットに勢いよく飛び込んできて、



《Force-tip, Ignition!
 Full drive mode, set up!》




 獣帝神がフルドライブモードへと移行。あちこちに姿を現した放熱システムが、勢いよく熱風を噴出する。



《Charge up!
 Final break Stand by Ready!》




 全身にみなぎるフォースチップのエネルギーが一点に集中していく――獣帝剣の刀身にエネルギーを集中させて、ウチはツチグモに向けて地を蹴る。



 一気に距離を詰めて、ツチグモの目前で真上に跳躍。そして――







「灘杜流退魔剣術、奥義・龍鳴斬改め――」











「轟火、獣王斬り!」











 落下の勢いも加えた一閃を、ツチグモに叩きつける!

 一撃に乗せて、獣帝剣に込めてたエネルギーが残らず叩き込まれる。すぐにウチが後退して――次の瞬間、叩き込んだエネルギーが爆発、ツチグモを木っ端みじんに吹っ飛ばした。


 勝利を確認して、いよいよいきます、じゅんさんに続け、勝利の雄叫び!



 じゅんさんが『爆裂究極』やから、えっと、えっと……そうや!











「超絶! 極限っ!
 獣ぅぅぅぅぅ帝っ! 神――――っ!」








◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 あ、アイツ……ホントにやってくれたわ……



 なんかうれしそうにこっちにピースサインしてくるけど、とりあえず無視。



 まったく、よくもまぁ、あんな恥ずかしいマネを……同系機を使ってる身として恥ずかしいったらないわ。







 ……って、身内の恥を嘆いてる最中なんだから……







「無遠慮に突っ込んでくるんじゃ、ないわよ!」







 突っ込んできたバケガニのハサミをかわして、その脇を抜ける。ついでに竜王槍をヤツの足の間に引っかけて――べきっ、とイヤな音を立てて足の一本がてこの原理でへし折れた。



 すかさず槍を引き、一閃。的確に甲殻のすき間、関節部を狙った斬撃で、へし折れた側の、別の足を一本――さらにもう一本叩き斬る。



 片側ばかり一気に三本も足を失って、バケガニがバランスを崩して――







「せー、のっ!」







 いぶきがツチグモを投げ飛ばしたのと同じように、竜王槍を使ってバケガニの身体をひっくり返す。



 背中から地面にひっくり返り、バケガニが身を起こそうともがく――フンッ、ムダよ。片側ばかり足を失った、そんなバランスの悪い身体で復帰なんてできるもんですか。







「フンッ、カニのクセに、こんな水気のないところに出てくるからそういうことになるのよ!」







 さて、あんまり長引かせると、いぶきが『カニ鍋にする!』とか言い出しかねないし――そろそろ決めるわよ!







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「フォースチップ、イグニッション!」



 アタシの叫びに応えて、飛んできたのは青色の、地球のフォースチップ。背中のチップスロットに勢いよく飛び込んできて、



《Force-tip, Ignition!
 Full drive mode, set up!》




 竜王神がフルドライブモードへと移行。全身各所に姿を現した放熱システムが、勢いよく熱風を噴出する。



《Charge up!
 Final break Stand by Ready!》




 全身にみなぎるフォースチップのエネルギーが一点に集中していく――竜王槍の刀身にエネルギーを集中させて、アタシはバケガニに向けて振りかぶり、



「いっけぇっ!」



 竜王槍を投げつけた。ブーメランのように回転、飛翔する竜王槍はバケガニの真上に滞空。込められていたエネルギーを解き放ち、竜巻を起こしてバケガニを拘束する。



「竜王撃!」



 続けてかまえるのは、リュウレックスの尻尾部分。鋭い無数のトゲによって破壊力を増した、まさに砕くための一振り――剣としても槍としても使える、竜王撃だ。



 竜王神の背中の翼を広げ、一気に加速、飛翔――竜王撃の表面が節単位で交互に回転、すべてを砕くドリルと化す中、アタシは最大速力でバケガニへと突っ込む。



 そして――







「霞ノ杜流退魔槍術、奥義・気力大疾走改め――」











「旋禍、竜帝突き!」











 突撃の勢いも乗せた渾身の一突きを、バケガニに叩きつける!

 それもただ突き込んだだけじゃない。竜巻となってバケガニの動きを抑えていたエネルギーもまた、竜王撃のドリル回転に巻き込まれる形でバケガニに叩き込まれる。

 一撃はバケガニの身体をいともたやすく撃ち貫き、アタシはそのまま相手の身体を突き抜けて通り過ぎる――次の瞬間、叩き込んだエネルギーが爆発、バケガニを木っ端みじんに吹っ飛ばした。

 はい、終わった終わったー……







「じー……」







 …………あー、いぶき?







「アタシはやらないわよ、勝ち名乗り」



「えぇっ!?」



「いや、当たり前でしょ!? なんであんな恥ずかしいマネ!」



「そないなこと言わんと、なっちゃんもやろうや。
 けっこうスッキリするよ?」







 し・な・い・か・らっ!







「……じーっ……」







 いや、だから……







『じーっ……』



「って、ジュンイチ、アンタもか!」



『じーっ……』







 …………あー、もうっ!







「わかったわよっ! やればいいんでしょ、やれば!」







 根負けしたのはアタシの方……だって、こうなるとこの二人って退かないし。



 じゃあ、えっと……











「超絶! 極限っ!
 竜っ! 王ぅぅぅぅぅっ! 神――――っ!」












「…………うん、なっちゃんノリノリや♪」



 ……うっさい。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「…………フンッ、ここまでか」



 ジュンイチさんの予想通り、ネガタロスは自分から仕掛けてくるようなことはせず、ダイダラボッチに指示を下していた以外は完全に観戦モードだった。



 で……投入した巨大戦力が全滅したので、帰ろうとしてる……逃がすかっ!







「待ちやがれ!」







 ――って、モモタロスさん!?







 僕よりも早く飛び出したモモタロスさんが、ネガタロスに向けて斬りかかって――











「残念だったな」











 ネガタロスが言うと同時、モモタロスさんのモモタロスォードが止められた。





 パラドキサアンデッドの鎌だ。すかさずアークオルフェノクに首根っこをつかまれて、モモタロスさんがこっちに向けて投げ返されてくる。







「フンッ、本格的にお前達と遊ぶのはまだ先だ。
 今回は、瘴魔への宣戦布告に留めておくとしよう」

「フンッ! おおといきやがれなのじゃっ!」







 ネガタロスに向けて、万蟲姫があかんべーする――それを見て鼻で笑いながら、ネガタロスは突然発生した黒いオーロラのようなものに溶け込むように消えていった。







「……お前にしては、ずいぶんとおとなしく見送ったものだな」

「各勢力の大ボスクラスを二人も相手にして、うかつに突っ込むほど短絡的じゃないよ」



 イクトさんに答えて、ため息――あのデスイマジンと同等のヤツが二体もいちゃ、ヘタに突っ込んでいっても返り討ちにあうだけだ。さっきのやり取りだって、ネガタロスが本気だったならモモタロスさんはあの二体の手によってタダではすまなかっただろう。



 ネガタロスを倒すには、まずアイツらから何とかしていかなければならないだろう――けど、他の組織の最強クラスだって、引き入れてる可能性が高いしなぁ……







「……では、わらわ達も帰るとするかの」

「はっ」

「うんっ!」







 そんな僕らをよそに、万蟲姫達はもう一件落着とばかりに帰り支度――







「ち、ちょっと待って!」



 良太郎さん……?



「キミ達も……ネガタロスと戦うんだよね……
 だったら、一緒にやらない? お互い、味方はひとりでも多い方が――」



 良太郎さんのその言葉は途中で途切れた。



「そこまでにしておけ、少年」



 一瞬で距離を詰めたホーネットに、手刀を眼前で寸止めされて。



「ぅわぁっ!?」

「フンッ、カン違いするでないわ。
 わらわは恭文の味方であって、機動六課や世界の味方をするつもりなどないわ。
 ……では恭文、また今度遊びに行くのじゃーっ♪」



 驚いて尻餅をつく良太郎さんに言い放つと、万蟲姫はこっちに手を振りながらホーネットやメープルと一緒に帰っていった……相変わらず切り替え早いね。そして遊びになんてこなくていいよ、うっとうしいから。



「しかし、ヤツがネガタロス達の組織……ネガショッカーか? ヤツらとの敵対の道を選んでくれたのは大きいぞ」

「まぁ、ね……」



 キンタロスさんの手によってツチグモの糸から助け出されたマスターコンボイに同意する。



 こっちの味方としては最初から当てにしてないけど、だからって向こうに付かれても困るし、それにこの構図なら第三勢力として向こうを引っかき回してくれる展開も期待できる――











「……しょっちゅう万蟲姫が六課に遊びに来て、結果的にこっちの戦いに巻き込まれて共闘、とかいう展開ばっかりになると思うの、オイラだけ?」







 言わないで、ブイリュウ。











 それ……ものすごく、現実になりそうな予想なんだから。







(第19話に続く)





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



次回、とコ電っ!



「新しい、イマジン……!?」



「あなたが、殺したんですか……!?」



「契約完了。
 あとは……お前を殺すだけだ!」



「ココアちゃんから離れろ!」





第19話「瘴魔わんにゃん物語」





「初めてお前が、私達の役に立てるんだ」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あとがき



Mコンボイ「あー、作者がもたついてたせいで一週間を開けてしまったが、なんとか第18話をお届けできたな」

オメガ《久々の長話ですねぇ。
 一週開けた分加筆したんですか?》

Mコンボイ「いや、これで当初の予定通りのボリュームだ」

オメガ《前回の話の倍以上の長さなんですけど!?
 なんで前後編でこんな落差が生じてるんですか!? すこしは前の話のボリュームを増やすとかバランスを取るところでしょう!?》

Mコンボイ「モリビトも、まさか後編でやりたかったイベントを全部こなしたらここまでのボリュームになるとは思わなかったらしい」

オメガ《そりゃ、間に合わなくなるはずですよ……
 さて、そんな感じでいろいろな要素を詰め込みまくりの今回ですけど……》

Mコンボイ「あー、万蟲姫の本名のようなサラッと流されたものも、グロンギの事件の顛末のようないろいろと見過ごせないものも、ピンからキリまで、というヤツだな」

オメガ《特にグロンギを倒した子についてですけど……はい。これでいろいろディケイド組について予想してたのが確信に変わった人もいるのではないかと》

Mコンボイ「まぁ、クウガはともかく……な」

オメガ《と、いうワケで。いろいろわかった方は、こんな早い段階からネタバレに走った作者をどうぞ遠慮なくあざ笑ってくださいませ。
 ……っと。さて、そんなこんなで、そろそろお開きの時間ですね。
 みなさん、今回も読んでくださって、本当にありがとうございました》

Mコンボイ「次回も必ず読むがいい」





(おしまい)





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