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頂き物の小説
第16話「その名は竜王神」



『トランス、フォーム!』












 咆哮と共に、二体のトランステクターが獣型から人型へと姿を変える。







 より一層禍々しさを増したオーラを身にまとい、イマジンからトランスフォーマーへとその在り方を変えたネガタロスとデスイマジン。二人が僕らに対して名乗りを上げて――





















「アクトロン!」



「ワルトロン!」







「ド直球にも程があるっ!」





















 ジュンイチさんのツッコミが、前話ラストから少しだけ変わっていた。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「レッコウ!」



《Load cartridge.》







 あたしの声に伴い、愛用の戦斧型アームドデバイス、レッコウがノーマルのカートリッジを消費。

 排莢はいきょうされ、宙を舞うカートリッジの空薬莢からやっきょうを空中でキャッチ、相手に向かって軽く放る。







「むっ!?」







 一気に攻撃に出るかと思いきやワンクッション。こっちの狙い通り、レオイマジンはあたしの行動に虚をつかれたらしい。まさに「思わず」って感じで、あたしの放った空薬莢からやっきょうを自らの杖で弾いて――







「そいやぁっ!」



「ぐわぁっ!?」







 カートリッジの魔力を思い切り込めたレッコウで思い切り一撃。クリーンヒットをもらって、レオイマジンの巨体が宙を舞う。







「お次っ!」







 立て直すヒマなんて与えやしない。立ち上がるレオイマジンに向けてレッコウを突きつけるようにかまえ、その先端に魔力スフィアを生み出す。





この子レッコウ、砲撃は苦手なんだけど……四の五の言ってられないよねっ!」



《Zero Black――Fire!》







 砲撃専門のゴウカを呼び出している時間はない。レオイマジンに向けて、お兄ちゃんの必殺砲撃の名を冠させてもらった砲撃魔法を解き放つ。

 巻き起こった魔力の奔流はレオイマジンを飲み込んで――











「オォォォォォッ!」



「ちょっ!?」











 ウソ!? ゼロブラックの魔力流の中をムリヤリ突っ込んできた!?



 今度はあたしの方が驚きで反応が遅れた。レオイマジンの杖の一撃を受けて吹っ飛ばされる。

 バリアジャケットのおかげで珠のお肌に傷はついてないけど……いったぁ……っ!







「やってくれるじゃない……っ!」

「貴様のような小娘と、いつまでも遊んではいられないからな!」







 うめくあたしに答えて、レオイマジンが突っ込んでくる。

 やばっ。さっきの一撃が効いててまだうまく動けない――しょうがないっ!











「イスルギ!」











 あたしが叫んだとたん、レオイマジンの杖が金属音と共に止まる。

 パワードデバイス、イスルギ――その単独稼動形態であるウミガメ形態でレオイマジンの攻撃を受け止めたんだ。

 そのまま、イスルギは分離、アーマーとなってあたしの四肢に装着される。







「二つ目のデバイスか……
 そういえば、貴様は四種のデバイスを使い分けるんだったな――柾木あずさ」

「へぇ、あたしのことは調査済みってワケ?」







 レオイマジンに答え、あたしはその場に立ち上がる。

 とはいえ――さっきのダメージはまだ残ってる。たった一撃でここまで削られるなんて、さすがは原作でも幹部級だった子は違うね。







「どうする?
 残り二つのデバイスもお披露目してあげようか?」

「強がるな。
 三機以上の同時運用は、まだ貴様の技量が追いついていないはずだ。
 だから、四機目がブーストデバイスなんだろう? 追いつけていない制御技術をシステム面からフォローするために」







 ……ご明察。







「所詮は学者畑。いくらデバイスが優秀でも、そんな体たらくでこのオレに勝とうなどっ!」







 あたしに向けて言い放ち、レオイマジンが突っ込んできて――











「――――けどね」











 宙を舞った。

 あたしの振るったレッコウに足をすくい、払われて。







「な…………っ!?」



「さすがはライオンベース。いい踏み込みだね」







 驚愕するレオイマジンに向けてあたしが告げて――







「“六課に来る前のあたしになら”、通じただろうね」







 そう付け加えるのに伴い、レオイマジンの身体が地面に叩きつけられた。







「六課の教導官をなめないでよ。
 “点”の魔力弾がほぼ“面”になって襲ってくる、あのシュートイベーションの悪夢に比べたら、キミの突進なんてカワイイものだよっ!
 しかも、最近はそこにウチのお兄ちゃんまで加わってるしっ!」







 想像してみよう。工夫も根性も、何もかもを力でねじ伏せる凶悪無比な魔力弾の嵐――“その嵐に守られながら”突っ込んでくる炎の化身。







 ……あんなのどないせぇっちゅうんじゃぁっ!







「そんなのに鍛えられてるんだよ――強くなるしかないじゃない。
 確かに、あたしは技術者畑の人間として六課に来たよ――スバルやティアちゃんみたく訓練校を出たワケでもなければ、エリオくんみたく個人的に誰かから鍛えてもらっていたワケでもなかった。キャロちゃんみたく大自然の厳しさにもまれたワケでもない。
 けどね――」







 レオイマジンに向けて、力いっぱい断言してあげる。











「そんなあたしを“キミより強く”鍛え上げるのが、機動六課なんだよ♪」











 ――時の列車、デンライナー。次の停車駅は、過去か未来か――











『とある魔導師と古き鉄と時の電車の彼らの時間』・『とまコン』バージョン



とある魔導師と守護者と時の電車と仮面の戦士達



第16話「その名は竜王神」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 …………強い。



 まだ対峙しただけの、刃のひとつも交えていない段階――だけど、それだけはハッキリとわかった。

 原作での暴れぶりを知っているとか、そんなのは一切関係ない。正面からにらみ合い、こちらにビシビシと叩きつけてくる相手のプレッシャーが、その事実を雄弁に物語ってる。



 そう――アクトロンにワルトロンなんていう、ふざけたネーミングのインパクトなんて簡単に吹き飛ばすくらいに。



「『ド直球』……いいじゃないか。
 こっちはこれから、悪の組織として大々的に名前を売り出していく予定なんだ。ストレートな名前ほど、相手の印象に残るというものだ」

「残しすぎじゃボケ。
 こうも印象が強いと、肝心要の悪っぷりが相手の印象に残るかどうか怪しいもんだ」



 名乗りと同時に即ツッコんだジュンイチさんも、そのことは十二分にわかっているらしい。アクトロンに取りついたまま余裕の態度のネガタロスに答える声はどこか緊張している。



「安心しろ。お前達が印象に残る、残らないを心配する必要はない。
 ここで討たれて果てるお前達には、なっ!」







 ――――来るっ!



 最初に動いたのは、ネガタロスのとなりに控えていたデスイマジン――ヤツの取りついたワルトロンだった。

 翼竜モチーフであるワルトロンの翼が分離、その手に生み出した棒に合体して大鎌を作り出す――突っ込んできたデスイマジンの振り下ろしてきたそれを、僕らは散開してかわす。







「バルディッシュ! ジンジャー!」



《Yes,ser.》



《はいっ!》







 フェイトの声に答え、バルディッシュがバリアジャケットを展開、さらに、もうひとりの相棒、パワードデバイスのジンジャーの身体がバラバラに分離。鎧となってフェイトの全身を覆う。

 あずささんの“四神”の原点、“複数のデバイスの統合的運用”を初めて体現した、第一世代複合デバイスシステムのひとつ。バルディッシュ・アサルトとジンジャーから成る“バルディッシュ・リリィ”、その真の姿のお披露目だ。



 つか、フェイトもちゃんと向こうの強さを理解しているね。ふざけた名前に油断してない。



 あの姿はリミットブレイクに次ぐ戦闘形態――事実上、通常運用における最強形態だ。

 つまり――“全力で戦わなきゃいけない。けどうかつにリミットブレイクも使えない”、そんな強敵と戦うための姿なんだから。







《Falcon lancer, shoot》



「Fire!」







 あいさつ代わりとばかりにランサーを雨アラレと降らせるフェイト――だけど、







「そんものかっ!」



「く――――!」







 案の定と言うべきか、ワルトロンには通じない。おかまいなしに突っ込んできたその巨体をフェイトは素早くかわして――







「イクトさん!」



「おぅっ!」







 そのさらに後ろに控えていたイクトさんが炎をぶちかます――さすが、あっさり耐えてくれるけど。



 でもってこっちにはネガタロス――来たっ!







「オラぁっ!」







 右手に配置されたビーストモードの頭部、それで思い切り殴りかかってきた。僕らが散開した後の地面を遠慮なく粉砕する。



 つか、今コイツ――







「やっぱり、良太郎をピンポイント狙いかよっ!?」







 そう。ジュンイチさんがうめいた通り、ネガタロスの今の一撃は僕らの中でも特に良太郎さんに狙いを絞ったものだった。

 その良太郎さんはいち早く気づいてたジュンイチさんが手を引いて、一緒に離脱していたからなんとか無事だけど。







「当たり前だ。
 電王には前回辛酸をなめさせられているからな。真っ先に叩きたくもなるさ」

「気持ちはわかるが、こだわりが過ぎるとそれが足元をすくうぞ!」







 僕らに答えるネガタロスに言い返して、ギガントボムが肩のミサイルランチャーを斉射――ダメだ。直撃したっていうのにあっさりと耐えられた。

 思いの他苦戦してる。やっぱり“今のまま”勝ちに行くのは高望みがすぎたか……けど、それならっ!







「マスターコンボイ!」



「皆まで言うなっ!」







 それなら――それ相応にブッ飛ばしてやるまでだっ!







「マグナ! オレ達もいくぜ!
 今回はマグナブレイカーだ!」



「オーケー!」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『ゴッド――オン!』







 その瞬間――僕の身体が光に包まれた。強く輝くその光は、やがて僕の姿を形作り、そのままマスターコンボイと同等の大きさまで巨大化すると、彼の身体に重なり、溶け込んでいく。

 同時、マスターコンボイの意識がその身体の奥底へともぐり込んだのがわかる――代わりに全身へ意思を伝えるのは、マスターコンボイの身体に溶け込み、一体化した僕の意識だ。







《Saber form》







 トランステクターのメインシステムが告げ、マスターコンボイのボディカラーが変化する――グレーだった部分が、まるで染め上げられていくかのように青色に変化していく。

 それに伴い、オメガが分離――巨大な両刃の剣が真ん中から別れ、二振りの刀となって両腰に留められる。

 そして、ひとつとなった僕ら二人が高らかに名乗りを挙げる。











《双つの絆をひとつに重ね!》

「ふざけた今を覆す!」











「《マスターコンボイ・セイバーフォーム――僕(オレ)達、参上!》」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「エヴォリューション、ブレイク!」
 オレの叫びに応じ、駆け付けてきたマグナダッシャーが力強く大地を駆け抜ける。
 そして、車体両横の装甲が上部へと展開。さらに車体下部の推進器で起き上がると共に、車体後部が180度回転、後方へとスライドして左右に分割。つま先が起き上がり両足へと変形する。
 続いて、運転席が左右に分かれて肩アーマーとなり、その下部に折りたたまれるように収納されていた腕が展開。拳がその内部から飛び出し、力強く握りしめられる。
 車体上部――変形の結果背中となったそこに配された砲台はキャノン部が前方に倒れてショルダーキャノンに。ボディ内部からロボットモードの頭部がせり出し、その額から変形に伴い跳び下りていた
オレとマグナに向けて誘導トラクターフィールドが展開される。
 放たれた光に導かれ、オレ達はマグナダッシャーへと引き寄せられ――次の瞬間、一瞬にして機体内部の圧縮空間に用意された、ライドスペースへと転送される。
 そこに用意されたコックピットシートに腰かけ、オレはシート両側に設置されたクリスタル状のスロットルレバーを握りしめる。
「マグナ! 全システム起動!
 戦闘コンバットシステム――Get Ready!」
「了解!」
 マグナからの答えと共に、オレはスロットルレバーを勢いよく押し込む――変形を完了し、システムが完全に起動した機体のカメラアイが輝き、オレが高らかに名乗りを上げる。
「“龍”の“炎”に“王”の“牙”!
 “不屈の果てに高みあり”!
 
龍炎王牙――マグナブレイカー!」








◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「たぁぁぁぁぁっ!」







 突っ込んで、全身のバネを総動員しての一撃――ホクトが、愛用の大鎌型アームドデバイス“ニーズヘグU”でモールイマジンを斬り伏せる。







「はぁっ! せいっ!」







 もちろん私も動いてる。正面のレオソルジャーに右ジャブから本命のストレート。きれいに入り、のけぞるレオソルジャーを思い切り蹴り倒す。



 けど、このイマジン達、いったい何なの……?

 いきなり現れて、暴れ回るだけ……いったいどんな契約を……?







「あぁっ!」







 ホクト……? いきなり大声を上げてどうし……あぁっ!

 無闇に暴れ回るイマジン達、その内の何体かが向かっているのは、あのプラネタリウム……あそこを破壊するつもり!?







「させるもんか!」

「あぁっ!
 こら、ホクト! 待ちなさい!」







 私が止める声も聞かずにホクトが阻止に動く。直接建物を狙ったモールイマジンの一体を背中から斬り捨てるけど、







「きゃあっ!?」







 別の一体に横から殴り倒される――もう、うかつに突っ込むから!







「ホクト!」







 すぐにフォローに回ろうとするけど、その間に別のモールイマジンやレオソルジャーが立ちふさがる。



 いけない! このままじゃ……ホクトもプラネタリウムも守れない――











「でぇりゃあっ!」











 …………って、え?



 いきなりの声と共に、ホクトを組み伏せていたモールイマジンに誰かが体当たり。







「おい、大丈夫か!?」







 モールイマジンを吹っ飛ばして、ホクトを助け起こすのは、さっき出会った男の人。







「……お兄ちゃん……?」

「見てられないんだよ。ムチャクチャな戦い方しやがって……」







 ホクトに応えて、彼はホクトをちゃんと立たせるとイマジン達に対して振り向いて、







「コイツらもコイツらだ。
 こっちはさっさと頭を叩いて終わりにしたいのに、ザコばっかりわらわらと……ホント迷惑」







 言いながら、彼が腰に巻くのは良太郎さんが変身に使っていたような分厚い作りの、けれどまったく意匠の違うベルト。

 さらに、彼はそのベルトのサイドホルダーから一枚のカードを取り出して、







「変身」

《Altair Form》







 変わった。

 カードをベルトに差し込んだ彼の姿が、良太郎さんのものとはデザインの違う緑色のスキンスーツに包まれる。

 さらに、空中にいきなり現れた緑色の鎧が上半身を覆う。そして、マスクを飾る、両目の辺りを通るように走る、線路のような装飾に添って、牛の頭の飾りが後頭部から顔の方へと回り込んでいく。

 牛の装飾はマスクの両目の位置で停止。マスクに固定される――内側の角でつながる形で、ひとつのゴーグルになったんだ。







「最初に言っておく!」







 変身を終えた彼が、イマジン達に向けて右の人さし指をピッ、と立てて言う。







「お前らザコに、用はねぇっ!」



「何を!?」

「誰がザコだ、誰が!」

「やっちまえぇっ!」







 彼の言葉に気分を害したらしいイマジン達が一斉に襲いかかってくるけど……







「『誰が』?
 『お前ら』って言っただろうがっ!」







 彼は数の不利なんか気にしてない。腰に留めていた二つのパーツを組み合わせて、大剣を組み上げるとそれで先頭の一体を斬り捨てる。

 っていうか、変身して、組み合わせて使う武器を持ってて……あの人も、まさか電王の関係者……?







「おい、ギンガ!
 何ボサッとしてんだ!?」

「は、はいっ!?」







 あの人に声をかけられて我に返る――いけないいけない。今は戦いに集中しなくちゃ。







「っていうか、こんなにイマジンが出てきてるのに、野上達は何やってるんだ!? こっちの機動六課にいるんだろ!?」

「え、えっと……
 イマジン達はここの他にもあちこちに現れてるらしくって……たぶん、そのどこかの対応に回ってるんだと思います」

「クソッ!」







 私の答えに、あの人は仮面の下で舌打ちして――さらに一体、イマジンを斬り飛ばす。







「イマジン達、何考えてんだ!? こんなに戦力投入してきやがって……
 こりゃ、デネブのヤツを先に帰しておいて正解だったな……この分じゃ、向こうにも何体現れてる……かっ!」







 言いながら、また一体。



 ……というか、“デネブ”……?







「……ホントに、星が好きなんだねー」

「う、うるさいな! 今はどうだっていいだろ!?」







 ホクトの言葉にあの人が言い返して――











「ところがそうでもないぞ、ゼロノス」











 ――――っ!?



 答えた声は私のものでもホクトのものでも――“イマジン達のものでも”なかった。








《KAMEN-RIDE!》







 続けて聞こえる電子音声。そして――











《“METEOR”!》











 私達の前に、ひとりの仮面ライダーが現れた。



 黒いスキンスーツに青いプロテクター。同じく青く、流星……というか隕石をイメージさせる仮面。







「何? このライダー……」







「召喚だと……!?
 こんなことができるのはっ!」







 つぶやくホクトをよそに、ゼロノスは周囲を見回して声を上げる。











「お前か! “ディエンド”!」











 ……“ディエンド”……?



「……お前の星好き、存外どうでもよくはないぞ」



 そう言いながら、声の主は路地裏の暗がりから姿を現した。



「少なくとも……それを知っているから、こうして気の利いたライダーのチョイスもできる」



 黒と青のスキンスーツ、肩から胸、そしてマスクに至るまで、黒いプレートが並べられるように縦に敷き詰められている、そんな奇抜のデザインのライダーだ。



 この人が、“ディエンド”……?







「何だぁ、お前ら?」

「電王の仲間か!?」

「……『仲間』というには、少々付き合いは浅いがな」







 周りで騒ぎ立てるイマジン達に答えると、ディエンドと呼ばれたライダーは一枚のカードを取り出し、それを手にした銃に装填して、







「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ!」



《ATTACK-RIDE!
 “BLAST”!》








 引き金を引いた。放たれた光弾は誘導弾のように弧を描いてイマジン達に降り注ぐ。

 同時、もうひとりのライダーも動く――無言で突撃。拳法の身のこなしでイマジン達を次々に打ち倒していく。



 と、今度はその腕についた端末を操作して、







《“SATURN”, Ready?》


《OK! “SATURN”!》







 電子音声と共に、かまえ、突く――拳の先に輪を持った惑星が現れて、その直撃をもらったイマジン達がまとめて数体、吹っ飛ばされる!







「ゼロノス、そしてギンガ・ナカジマ。
 ここは引き受けてやる――早くゼロノスの拠点に向かえ。
 敵の首領が、そこにいる」

「何だと!?」

「だから行けと言っている」

「――――っ。
 おい、行くぞ、ギンガ! それからそっちのチビも!」

「は、はいっ!」

「うんっ!」







 あの人――ゼロノスに言われて、私はホクトと二人、彼の後に続く。







「あの……さっきのライダーは……?」

「仮面ライダーディエンド。本人の言う通り“通りすがりの仮面ライダー”だよ!」







 私の問いに答えると、ゼロノスは足を止めると私の方へと向き直り、







「そしてオレは仮面ライダーゼロノス――」











「桜井、侑斗だ」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「こんっ、のぉっ!」







 気合一発、刃を一閃――けど、オレとマグナの操るマグナブレイカーの刃は、デスイマジンの駆るワルトロンの大鎌に止められる。



 そのまま押し返し、反撃してくる――ので、こっちも後退してその刃をやりすごす。







「くそっ、なんつーパワーだ……!」







 ゴッドオンできないオレ用にトランステクターをムリヤリいじくって作った機体とはいえ、このマグナブレイカーの馬力は大型トランスフォーマー、大型トランステクターに決して負けていない。“暴走させたら核爆発級の大爆発”なんてデンジャーな動力積んでるのは伊達じゃないんだ。



 けど、そんなマグナブレイカーを相手に、ワルトロンは完全にパワー勝ちしている。

 その上オレ達の動きにもついてこれている――いや、こっちについてはありえない話じゃないか。コックピットから操るこっちと一体化して操る向こう。反応面でも向こうが明らかに条件有利なんだから。







「はぁぁぁぁぁっ!」

《オォォォォォッ!》



「フンッ、勢いだけは立派だな!」







 恭文とマスターコンボイも、ネガタロス相手に戦線膠着こうちゃく中。激しく斬り結んでるけど、お互いイイのを入れられずにいる。

 アクトロンにスペックで負けてるマスターコンボイの不利を、ネガタロスに剣技で上回っている恭文の有利がフォロー、結果互角……って感じだな、ありゃ。



 フェイト達のフォローは期待できない。フェイトはジンジャー達の助けがあったって結局リミッター越しだし、ギガントボムは元々技術者肌。この二人は火力の問題で戦力としてあてにできない。

 イクトは逆に火力ありすぎ……つか、“狙って撃つ”ってことがてんでダメなイクトに援護なんてさせちゃいけない。







 あーっ、くそっ、完全に戦況が固まった。何か、状況を動かす一手が欲しいところだけど……







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「せいっ!」







 左のオメガを水平に振るい、後退してやりすごすアクトロンに向けて一歩踏み込んでの右の袈裟斬り――あちらさんの左腕に装備された、ビーストモード時の尻尾であるランスに受け流される。



 こっちの右サイドに回り込んで、そのランスで突き込んでくる――右の、アルトの宿る方のオメガで弾く。



 さらに飛んでくる突き、突き、突き――後退して仕切り直す。







「あーっ、くそっ、やりづらいっ!」

《まったくだ》

《やれやれ、大した腕でもないのに、性能頼みでやってくれますね》



 ホントにね。



 やり合っての実感として――あちらさんの剣の腕は決してどうにもならないほどではない。



 けど、機体のスペックは明らかに上――特に反応速度だ。技のキレに対して反応だけが明らかに突出しているもんだから、スキら見つけて斬り込んでも反応が間に合ってしまう。

 さらに向こうの攻撃も微妙にタイミングをずらしながら際どいところに飛んでくる。おかげでやりづらくてしょうがない。



 あー、やっぱ生身で斬り合うのとは感覚違うなー。今後の課題だよ。







《ですね。
 さて……そこまで状況をおさらいしたところで、どうします?》







 そんなの、決まってる。



 相手の反応が間に合うというのなら――間に合わないくらい早く斬るか、間に合おうがおかまいなしに叩き斬れるくらいの一閃を打ち込むだけだ。







《まぁ、そういうことだな。
 ……しかし……》



 ? マスターコンボイ……?



《いや、ヤツの攻めなんだが、自信満々に攻めてきた割には、妙に積極性に欠けているというか……
 今だって、ヤツの突きにたまらず下がったこっちに向けて、さらに追撃に出る事だってできたはずだ》



 そういえば……



《まさか、まだ何か裏がある……と?》

《もう、いい加減にしてほしいところではあるがな……》



 マスターコンボイがため息をついて――来た!



 アクトロンネガタロスが突っ込んできたのに対し、カウンター狙いで左右のアルトを振るい――











 空を薙いだ。











「…………え?」







 疑問符が頭の中に浮かんだ瞬間、頭上に影――跳び越えられた!?

 頭上や背後からの攻撃を警戒しながら振り向くと、ネガタロスはそのまま着地、僕達には目もくれずに走り出す。



 その先にはフェイトやイクトさん、それに――そうか!







《ヤツめ……また野上良太郎を狙ってきたか!》







 マスターコンボイが声を上げる――あんにゃろ、さっきの良太郎さん狙いの一撃のほとぼりが冷めたところをまた狙ってきやがった!?







「つまり、野上のガードについているオレ達は眼中になしか!」

「生身だからって、甘く見ないで!」







 良太郎さんの直衛についているイクトさんとフェイトが動く。迎え撃つように飛び出し、炎と砲撃をぶっ放す――







「甘く見ていないさ――」











「だからこそ、全力で突き抜ける!」











 ネガタロスはその直撃を、目の前に防壁を集中させて防御。フェイト達が次を撃つ前に二人の間を突破する。







「死ね、特異点!」







 そして、阻む者がいなくなったネガタロスが良太郎さんに向け、右腕の竜の口からビームを放ち――











 その射線上から良太郎さんが消えた。











 ビームは目標を捉えず、その先の地面を爆砕する。ネガタロスが眉をひそめたのと同様に、何が起きたかわからない僕らだけど――







「…………セーフ」







 告げる声は僕らの左方から――見ると、そこには良太郎さんを米俵よろしく肩に担いだジュンイチさんの姿があった。







「なるほど……貴様が特異点を守ったか……
 だが、デスイマジンの相手をしていた貴様に、割り込む余地はなかったはず……」

「あぁ。
 お前の言う通り、普通に割り込もうとしてもまず間に合わなかった。
 だから――“カタパルト”を使わせてもらったのさ」

「カタパルト、だと……?」

「あぁ」



 ネガタロスにうなずいて、ジュンイチさんが目で示した先には――







「ナ〜イスピッチング――――マグナ!」







 両足を大きく広げたかまえのマグナブレイカーの姿があった。

 その姿は、ジュンイチさんのかけたセリフのせいかまるで投球後のピッチャーのようにも見えて――まさか!?







《マグナブレイカーに、自らを投げさせたのか!?》

「な……なんてムチャを!?
 普通なら、身体がバラバラになってるところですよ!?」

「オレ、普通じゃねーし」







 マスターコンボイの言葉に驚くフェイトだけど、ジュンイチさんはあっさりとそう答えて――







「普通じゃねぇから、普通のヤツなら全身がバラバラになるような衝撃にも耐えられる――せいぜい、アバラ七本内蔵が二、三個、あと良太郎を捕まえた左腕がへし折れた程度だ!」

「十分大事じゃないかな、それ!?」







 告げられた言葉に思わずツッコむ良太郎さんだけど――







「るせぇ。
 お前が死んじまう方がよほどの大事じゃ」







 対するジュンイチさんは迷わずそう答えた。







「いずれ治る“重傷”と二度と取り返しのつかない“死亡”、どっちがマシだっつーんだよ?
 痛い思いしても、それでみんなから『ムチャしすぎ』って怒られても……死んじまうよりはるかにマシ……だっ!」







 言うと同時、ジュンイチさんが跳躍――良太郎さんを担いだまま、ネガタロスの放ったビームをかわす。







「それはいいけど、早く戻ってきてくれないかしら!?
 わたしひとりじゃ、マグナブレイカーの制御は厳しいんだけど!」

「はいはい、わかってますよっと!」







 一方、ジュンイチさんが抜けた後のマグナブレイカーを支えるのはマグナさんただひとり。デスイマジンの大鎌を受け止めながらのマグナさんの言葉に、ジュンイチさんが答えて――





















 ――――え?







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「っつーワケだ!
 良太郎! どっかに下ろすぞ!」

「う、うん。
 ごめん。役に立てなくて……」

「安心しろ。
 白兵戦要員に、機動兵器戦での活躍なんぞ期待しちゃいねぇよ」



 ちょっと申し訳なさそうな良太郎に答えて、アイツを地上に下ろす。



「今のを借りだと思うのなら、ネガタロスをボコってくれればそれでいい。
 今から、アイツをあのトランステクターから引きずり出してくるからさ――」











「『――――それはムリですね」』











 …………え?



 気づいた時には、そいつはもうそこにいた。

 服装が違ってなきゃ、一瞬鏡でも見ているんじゃないかと思うような、オレにそっくりな誰か――いや、“ナニカ”。



 右手をまっすぐ伸ばして手刀として、オレに向けて――って、ヤバっ!?







「危ねぇっ!」



「ひゃあっ!?」







 とっさに身をひねってかわす――オレを狙った手刀の軌道、その延長線上にいた良太郎を突き飛ばしながら。



 と、良太郎の尻ポケットからこぼれるライダーパス……ちょっと待ったのしばし待ていっ!



 手を伸ばしてライダーパスを手にするオレに向けて、乱入者のさらなる手刀。







 対してオレは――“ライダーパスで”受けた。ガキィッ!と音を立て、手刀は手にしたパスに阻まれる。







 あ、あっぶねぇぇぇぇぇっ!? 今、普通の手刀を止めたのなら絶対しないような効果音したよな!? 龍騎のデッキと違って作中一度たりとも破壊されなかったパスの強度を信じてよかったぁっ!



 ――と感謝する一方で乱入者に向けて反撃の蹴り。あっさりとかわされたけど、とりあえず後退してくれた。







「…………何モンだ、お前」







 どう見てもイマジンに見えない乱入者に向けて問いかける。







「元からネガタロスの下にいたワケじゃねぇだろ。
 答えろ――どこからの回しモンだ」



「『そうですね……別に隠しておく理由もありませんし、あなたに敬意を表してお答えしましょうか」』







 ……余裕の態度がムカつくけど、ガマンして先を聞く。







「『ボクは“Xカイ”……ダークコマンダー様率いる“プレダコンズ”に厄介になっている身でしてね」』

「ジンにやたらとちょっかいを出してきてる、レヴィアタン達の転職元か」

「『えぇ。
 今回、ネガタロス氏から同盟の申し入れがありましてね……こちらとの利害も一致したので、立候補したボクが送り込まれることになりまして」』

「よくもまぁ、こんな犯罪史上うさんくささランキングぶっちぎり第一位の組織への派遣に立候補できたもんだ」

「『当然でしょう?
 だって……」』











「『ようやく、あなたと戦えるんですから」』











 ――――っ!?



 とっさに身をよじる――ほんの一瞬前までオレの脇腹があったところをコイツの手刀が貫く。







「てめぇ、いったい……!?」



「『ようやく会えましたね。
 待ち焦がれましたよ、この時を!」』



「――野郎っ!」







 すかさず反撃。横っ面を狙ったオレの拳をソイツは身を沈めてかわして――こっちに向けて右のショートアッパー!



 スウェーしてかわして、反撃――オレとコイツの拳が、蹴りがぶつかり合い、それが次第に激しさを増していく。







「へぇ……けっこうやるじゃんか。
 …………けどっ!」







 素直に賛辞を送り――こっちはギアを上げる。



 もうついてこれないだろ――何ぃっ!?











「『ついてこれないと……思いましたか?」』











 コイツ……ギアを上げた状態のオレのコンビネーションをさばきやがった!?



 それどころか反撃までしてくる――上等だコラ!







「しゃらくせぇっ!」







 さらにギアを上げる――この速度域でのラッシュについてこれるのは仲間内でもごく少数。そんなスピードでのラッシュ。



 けど……追いついてきた。さばき、かわし、反撃してくる。







 この野郎……っ!







接近格闘戦インファイトで、オレと、速さでタメ張りやがるかっ!」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 …………ウソ。



 ジュンイチさんと、足を止めての打ち合いになって――あの人の“速さ”に、ついていってる……!?



 確かに、ジュンイチさんは高速戦闘では僕やフェイト、シグナムさんに譲る――けど、それは“飛行速度”“移動速度”という意味合いでの“速さ”だ。

 対して、足を止めての打ち合いのような、反射神経や体さばきの速さが要求されるような“反応速度”という意味合いでの“速さ”においては、逆に僕らよりもはるかに速い。



 そう。自分の間合いの中に限ってはジュンイチさんは“最速”……そのはずだった。

 けど、アイツはそんなジュンイチさんの間合いの中で、ジュンイチさんの“速さ”についていってる……!?







「フェイト! イクトさん!
 あそこに飛び込める!?」



「ちょっと、難しいかも……
 悔しいけど、私の近接戦闘での最高速度を完全に超えちゃってる……っ!」



「その上、そうとう重いのを打ち合っている……
 ヘタに飛び込めば、こっちが巻き込まれて一撃で沈む」







 フェイトはともかく、イクトさんにそこまで言わせるか……







「だったらお二人さん! こっちを手伝ってもらえないかな!?」







 そう声をかけてくるのは、デスイマジンに追い込まれ始めているマグナさん。







「ジュンイチなしじゃこの機体、まともに動かないんだからっ!」







 動力部の出力制御の大半をジュンイチさんに依存しているマグナブレイカーは、現在目に見えて動きが悪くなっている……どう見てもセーブ運転中。

 そんな状態で最強クラスの敵の操る機体との戦いなんて、確かに自殺行為もいいところだ。ギガントボムとの二人ががりでも、なんとか撃墜されずに踏みとどまってる……そんな感じだ。







 かと言って、僕がフォローに回ろうに……もっ!







「させると思っているのか!?」







 こっちはこっちでネガタロスがジャマしてくる。フォローに回るのは、ちょっと難しそう。







「フェイトちゃん、イクトさん、行ってください。
 ボクなら大丈夫だから……」

「って、良太郎さん。
 今狙われたばかりの人に言われても……」

「だからだよ」







 良太郎さん……?







「ネガタロスは様式美に強いこだわりがある。
 一度失敗した不意討ちを、もう一回することはないと思う」

「なるほどな……」







 良太郎さんの言葉に納得するイクトさんだけど……







「残念だったな、電王!」







 僕らと斬り結びながら、ネガタロスが言う。







「確かに、一度失敗した手に見苦しくすがるつもりはない。だがな――」





















「それならそれで、別の手を使うまでだっ!」





















 その言葉と同時――現れた。







 この辺一帯にも潜ませていたらしい――モールイマジンやレオソルジャーの群れが。







「お前達はそいつらの相手でもしているんだな!」

「くっ……!」

「大丈夫、イクトさん。
 こうなったら、ボクも変身して……」







 言って、良太郎さんがポケットに手を突っ込んで――







「…………え?」







 って、良太郎さん……?







「……パスが……ない」



『えぇっ!?』



「ここだ、ここっ!」







 驚くみんなに答えるのはジュンイチさん――って、なんでアンタがパス持ってんの!?







「さっき良太郎のポケットからこぼれたんだよっ!
 で、返す前にこの状況!」







 マヂですか。







 けどそうなると本気でヤバイ。

 パスがないと良太郎さんは変身できない。ますますフェイトとイクトさんを彼の護衛から外すワケにはいかなくなった。

 けどそうなるとマグナさんへのフォローが――











「ちょっと、アンタ達!」











 ――――って?







「アタシも割とピンチなんですけど!?
 何のフォローもナシって何よ!? 新手のイジメ!?」











 …………なずなのこと忘れてたぁぁぁぁぁっ!







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ふ、ざ、け、ん、じゃ、ないわよっ!

 今の今まで、敵も味方も完璧スルーってどういうことよっ!?







 と、いうワケで、アタシ、雷道なずなは前回から引き続き丸太にしばりつけられたまま放置状態……だった。



 そう。『だった』。さすがにこれだけ敵が出てくれば何体かはアタシに気づくワケで、現在そうしたイマジン達に包囲されている。



 ……これ、このまま無抵抗に攻撃くらいしかない状態なんですけど。



 冗談じゃないわよ! むざむざやられてたまるもんですか! なんとか脱出して……って、やっぱりほどけないしっ!



 もがくアタシに対して、イマジン達はジワジワ包囲を狭めてきて――











 銃撃された。











 銃弾が次々にイマジン達を叩き、ひるませる。いったい、何が――







「遅くなってすまない!」







 ――デネブ!?



「侑斗に言われて戻ってきたんだが、オレ、足遅いから……本当にすまない!」



「いや、謝るのは後でいいから、これほどいてよ!」



「あ、あぁ!
 ネガタロス達め、なずなをこんなひどい目にあわせて……っ!」







 ……やったの、アンタのお仲間なんですけどねぇ?







 まぁ、ほどいてもらえるのならそれでいいんだけど。とにかくデネブはアタシを解放しようと丸太の後ろに回って――











「……ほどけない」











 …………はい?



「結び目が細かくて……オレの指、太いから引っかからないんだ!」



 ………………何よそのオチぃぃぃぃっ!?



 期待させといてそれはないでしょうがっ! いや、確かにアンタの指って銃口になってるから太いのはわかるけどっ!

 あぁ、もうっ! アンタに期待したアタシがバカだったわ――って!?




「ちょっ!? デネブ!?」

「え…………? ぅわぁっ!?」



 なんか、ジュンイチの機体マグナブレイカーと死神イマジンの機体が戦ってた辺りからエネルギー光弾が……こっちに飛んでくる!?











「きゃあぁぁぁぁぁっ!?」

「ぅわぁぁぁぁぁっ!?」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「なずな!? デネブ!?」







 フォローなんて、していられなかった。

 二人に向けて飛んでった、マグナとデスイマジンの戦いの流れ弾――オレが気づいたその次の瞬間には、着弾し、爆発した。







「『あららー。
 あれじゃあの二人、おしまいですかね?」』



「やかましいっ!」







 のんきにつぶやく“Xカイ”とかいうクソガキに裏拳一発――かわされたけど。



 けど、悔しいがアイツの言う通りだ。

 文句なしの直撃、アレじゃなずなもデネブも……











 …………ん?











「…………ククッ、ハハッ」

「『………………?」』

「よく見てみろよ、クソガキ」







 オレの笑いの意味がわからず、首をかしげるクソガキを促す。











「どうも、運命ってヤツは心憎い演出、ってヤツがお好きらしいぜ?」











 オレの言葉に伴って、爆炎が晴れていき――











「最初に言っておくっ!」











 そこには、“金髪に緑のメッシュが入り”“瞳が緑色に染まった”なずなが立っていた。



 デネブの姿はない――まぁ、なずなの髪と瞳の変化で、どこに行ったかなんて考えるまでもないんだけど。

 そして……











「これは……事故だっ!」



『いや、それは見ればわかるからっ!』











 なずなについたデネブの言葉に、敵味方・ザコ主力問わず全員からのツッコミが飛んだ。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 アンタねぇ、人の身体使って何ボケ倒してるのよ!?



「いや、今の流れ弾を撃った人達が、悪いと思ってやしないかと思って……」

〔ンなの気にしなくてもいいのよ、バカッ!〕



 爆発に巻き込まれて、気づいたらデネブが侑斗にいつもしているようにアタシについてて……う〜、一生の不覚だわ。



「けど、おかげでなずなも助かった。よかったよかった」

〔まぁ……そこについては、確かに〕



 うん、割とマジでよかった。もうさんざん放置されていたワケだから。



〔でもね、デネブ〕

「ん?」

〔今のこの状況、決して『いい』とは言えないと思うんだけど〕



 確かに丸太からは解放されたけど、イマジンに包囲された状況はそのままなワケで――











「おい、お前ら!」











 ――って、ジュンイチ!?







「事故ついでだ!
 もういっちょ、イレギュラーいっとけ!」







 言ってジュンイチが投げつけてきたのは――ライダーパス!?







「フム。そうだな」







 って、何デネブも乗り気になってるのよ!? アンタはゼロノスのパートナーでしょう!?







「でも、いっぺんやってみたかったし。
 と、いうワケで……借りるぞ、野上!」







 アタシのツッコミに答えると、デネブはパスをかまえて――その腰にベルトが巻かれる。







 そう――ゼロノスのそれとは、違うベルトが。



 そして――







「変身っ!」

《Vega Form》







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 え……えぇぇぇぇぇっ!?







 まぢでビックリした。



 なずなにデネブさんがついて……電王になった。ゼロノスじゃなくて。



 いや、ピータロスがガオウになった例もあるし、仕組みの上では可能だっていうのはわかる。わかるよ。







 けど、デネブさんが? 電王のベガフォーム!? えぇぇぇぇぇっ!?







 ちなみに、見た目的にはゼロノスのベガフォームよりもスッキリした印象だ。白銀の下地に山伏とかと修行僧とかの服の前垂れを思わせる装飾のボディアーマー……中央にはやっぱりデネブさんの顔。

 背中のデネブローブはゼロノスの時と違って白色でデザインも違う……あ、留め具に「弁」の字。そういえばデネブさんって武蔵棒弁慶と烏天狗がモチーフなんだっけ。











「……最初に言っておくっ!」











 言いながら、デネブさんがデンガッシャーを組み立てる――ロッドモードに組み上げると、その先端に薙刀のような片刃の、緑色のオーラソードが生まれる……ナギナタモード、ってところか。



 完成したデンガッシャーを手にドンとかまえ、デネブさんは自分の胸を指さして、











「胸の顔は、やっぱり飾りだ!」











 …………うん。電王になってもやっぱりデネブさんだ。







「いくぞ、なずな!」

〔あぁ、もうっ!
 やってやるわよ! やればいいんでしょ!?〕







 ともあれ、デネブさんはデンガッシャーを手にイマジン達へと突っ込む――応戦するイマジン達だけど、デネブさんにかなうはずもなく、次々に打ち倒されていく。







《あっちは、もう心配なさそうですね》

《あとはマグナブレイカーだが……っ!》











「そっちはウチにお任せやっ!」











 ――って、この声!?







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「くぅ……っ!」







 イイのをもらって、押し戻される――マズイわね、本格的に。

 ジュンイチは謎の乱入者と交戦中なんだけど――本気で何者なの? あのジュンイチと互角だなんて……







「余所見をしていていいのか?」

「――――っ! しまっ――きゃあっ!?」







 デスイマジンから一撃をまともにくらって、マグナブレイカーが地面に倒れる。







「マグナ――ぐわっ!?」







 次いでギガントボムも斬り倒された。そして、デスイマジンが改めて私の方へと向き直る。







「まずは私からトドメってワケ……?」







 私のつぶやきに、デスイマジンは答えない。ただ大鎌を振り上げて――











「させへんでぇっ!」











 ――って、え…………?



 突然の声と共に、デスイマジンの駆るワルトロンが吹っ飛んだ。

 吹っ飛ばしたのは……







「いぶきちゃん!?」



「お待たせや!
 嵐山いぶき、ただ今参上や!」







 そう。いぶきちゃんだ――あの子のトランステクター、ジュウライオンとジュウゴリラが、同時の体当たりでワルトロンを吹っ飛ばしたんだ。







「ほな、いくで!
 ジュウライオン! ジュウゴリラ! 合体や!」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「トランス、フォーム!」







 ウチの言葉に従って、ジュウライオンとジュウゴリラが全速力で走り始める。



 と、ジュウゴリラが背中のブースターの力を借りて大ジャンプして――その身体が“割れた”。背中を基盤として支えにする形で、そこから支えられる頭部をその場に残して左右にスライド。左右の半身と頭部に囲まれる形で、真ん中にぽっかりと空間を作り出す。

 ジュウライオンの方は四肢を全部たたむと身体が縦に三分割。ケツの方を支点に左右の身体が後ろに回転。180度正反対を向いたところで固定されて、スライドして伸びるとつま先が出てきた。ライオンの頭部が胸側に倒れて、ボディの中央部と下半身がこれで完成。

 合体形態への変形が終わったジュウゴリラとジュウライオンが近づいて――







「獣王、合体!」







 ウチの叫びを合図に、ジュウゴリラが左右の半身で、ジュウライオンの身体を背中側からはさみ込むように合体する!

 ジュウゴリラの両拳が分離、その内側からロボットモードとしての拳が現れ、分離した方の拳は両肩に合体して肩アーマーとなる。

 ジュウゴリラの頭部、てっぺんの部分が中華料理屋のターンテーブルのように180度回転。後ろに突き出るようになっとったトサカが前面を向く――その動きに連動して、顔も頭ン中で回転。入れ替わって、ビーストモードとしてのそれに代わってロボットモードとしての顔が現れる。







「ゴッド、オン!」







 ここでようやくウチのゴッドオン。まーくんとひとつになる時みたいに、光となって完成した身体に溶け込んで、ウチ自身がこの機体そのものになる。

 すべてのシステムが連動して、全身に力がみなぎるんがわかる――額のトサカが左右に開いて兜飾りになる中、拳をグッと握りしめて、ウチが力いっぱい名乗りを上げる。











「獣ぅぅぅぅぅ帝っ! 神――――っ!」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ……あれが、いぶきの……!?







 さっきの情報交換で、いぶきも来てることと、あの子がトランステクターを手に入れていた事は聞いていた。



 けど……聞くのと見るのとじゃ大違い。その威容を目にするだけで、あの子の手にした力の大きさが伝わってくる。







 …………だったら!







〔デネブ、身体返して!〕



「なずな!?」



〔いいから返しなさい!
 このままじゃ、言いたいことも言えやしない!〕



「わ、わかった!」







 言って、デネブが変身を解除。アタシは晴れて自由の身に。

 すかさず飛びかかってくるモールイマジンがいるけど――甘い。呪符の中に“しまって”おいた槍を“取り出し”、斬り捨てる。







「マグナさん!」







 そしてアタシは告げる。







「“検証”用に持ち出してきてた“レリック”のケースがあるでしょ!? アレ起動させて!」







 力を求める、その言葉を。







「なずな!?」



「いいから早く! 加勢してあげるから!」



「え、えぇ!」







 アタシに言われて――中で作業を始めたんだろう。マグナブレイカーの動きが止まる。



 待つこと数秒、すぐに状況は動いた。











《システム、起動。
 適合情報、スキャニング》












 そんな言葉と共に光が走る――辺り一帯を照らしたその光はすぐに消えるけど、代わりにその出所だったマグナブレイカーの胸から光の塊が飛び出してくる。



 それは、まるで最初から主が誰かわかっているみたいにアタシの後ろに舞い降りて――弾ける。



 そして現れたのは――







「ガォアァァァァァッ!」



「ギャオァァァァァッ!」







 T-REX型の、そして翼竜型のロボット――トランステクターだ。



 ……この状況でこのデザイン。スキャン元が一発でわかるわね。

 そう。ワルトロンとアクトロンのビーストモードだ。敵をモチーフにしたとわかって、ちょっとだけ凹むけど――







「……ま、いいわ。
 少しでも強いモチーフを選んだ結果だって言うなら……ね」



 それに、これはこれであちらさんへのイヤミにもなるし。







「さぁ……いくわよ!
 リュウレックス! リュウゲイラー!」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「トランス、フォーム!」







 アタシの言葉に従って、リュウレックスが全速力で走り始め、その頭上をリュウゲイラーが飛翔する。



 と、リュウゲイラーの身体が“割れた”。頭部を背中に折りたたむと背中を基盤として支えにする形で左右にスライド。左右の半身に挟まれる形で、真ん中にぽっかりと空間を作り出す。

 リュウレックスの方は両手をたたむと前傾姿勢だった身体がまっすぐに。尻尾が分離すると頭部が胸側に倒れて、まっすぐに伸ばされた両足、そのつま先部分が180度回転。かかとだった部分が倒れてつま先になり、ロボットモードの両足への変形が完了。ボディの中央部と下半身がこれで完成。

 合体形態への変形が終わったリュウゲイラーとリュウレックスが近づいて――







「竜帝、合体!」







 アタシの叫びを合図に、リュウゲイラーが左右の半身で、リュウレックスの身体を背中側からはさみ込むように合体する!

 リュウゲイラーの両足、そのつま先の部分が分離すると内側からロボットモードとしての拳が現れ、分離したつま先は両肩に合体して肩アーマーとなる。

 そして、リュウレックスの内部からロボットモードとしての頭部が現れ、まとめられていた兜飾りが左右に開く。







「ゴッド、オン!」







 ここでようやくアタシのゴッドオン。マスターコンボイとひとつになる時みたいに、光となって完成した身体に溶け込んで、アタシ自身がこの機体そのものになる。

 すべてのシステムが連動して、全身に力がみなぎるのがわかる――拳をグッと握りしめて、アタシが力いっぱい名乗りを上げる。











「竜っ! 王ぅぅぅぅぅっ! 神――――っ!」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「いくわよ!」







 無事合体完了。けどここは戦場。手にした新しい力に感激なんかしちゃいられない――言って、アタシはワルトロンに向けて突っ込む。



 対し、ワルトロンを駆るデスイマジンは動じることなく対応。迎撃しようとアタシに向けて大鎌をかまえるけど――







「いいのかしら?
 そんな悠長に待ちかまえていて!」







 アタシが手を振るうと、その軌跡に現れる多数の呪符――そこから放たれた炎が、雷がデスイマジンに向けて降り注ぐ。







「距離っていうのは、こうやって詰めるのよ!」







 そのスキに一気に間合いを詰める――アタシの掌底がデスイマジンの腹を打ち、ひるんだヤツの横っ面を回し蹴りで蹴り飛ばす! 







「おぉっ! なっちゃんすごい!」

「アタシだって、徒手空拳の修行してないワケじゃないのよ!」







 さらに掌底で左右のワン・ツー。打ち込みながらいぶきに答えて、







「とはいえ、アタシにはやっぱりこれね。
 竜王槍りゅうおうそう!」







 言って、大地に右の拳を思い切り打ち込む――引き抜き、取り出したのは地中で精製した竜王神専用の槍、竜王槍。







「はぁぁぁぁぁっ!」







 竜王槍をかまえ、気合と共に連続突き。まともにもらってひるみながら、それでも反撃とばかりに大鎌を振るってくるけど――遅いのよっ!



 すでにあたしはバックステップで間合いの外。攻撃を空振りしたデスイマジンに、あたしの放った呪符状のエネルギーミサイルが降り注ぐ。







「さぁ、決めるわよ、いぶき!」



「らじゃった!」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「フォースチップ、イグニッション!」



 ウチの叫びに応えて、飛んできたんは青色の、地球のフォースチップ。背中のチップスロットに勢いよく飛び込んできて、



《Force-tip, Ignition!
 Full drive mode, set up!》




 獣帝神がフルドライブモードへと移行。あちこちに姿を現した放熱システムが、勢いよく熱風を噴出する。



《Charge up!
 Final break Stand by Ready!》




 全身にみなぎるフォースチップのエネルギーが一点に集中していく――獣帝剣の刀身にエネルギーを集中させて、ウチはワルトロンに向けて地を蹴る。



 一気に距離を詰めて、ワルトロンの目前で真上に跳躍。そして――







「灘杜流退魔剣術、奥義・龍鳴斬改め――」











「轟火、獣王斬り!」











 落下の勢いも加えた一閃を、ワルトロンに叩きつける!

 一撃に乗せて、獣帝剣に込めてたエネルギーが残らず叩き込まれる。すぐにウチが後退して――







「ぐわぁぁぁぁぁっ!」







 叩き込んだエネルギーが爆発、ワルトロンを吹っ飛ばした。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「フォースチップ、イグニッション!」



 アタシの叫びに応えて、飛んできたのは青色の、地球のフォースチップ。背中のチップスロットに勢いよく飛び込んできて、



《Force-tip, Ignition!
 Full drive mode, set up!》




 竜王神がフルドライブモードへと移行。全身各所に姿を現した放熱システムが、勢いよく熱風を噴出する。



《Charge up!
 Final break Stand by Ready!》




 全身にみなぎるフォースチップのエネルギーが一点に集中していく――竜王槍の刀身にエネルギーを集中させて、アタシはワルトロンに向けて振りかぶり、



「いっけぇっ!」



 竜王槍を投げつけた。ブーメランのように回転、飛翔する竜王槍はワルトロンの真上に滞空。込められていたエネルギーを解き放ち、竜巻を起こしてワルトロンを拘束する。



「竜王撃!」



 続けてかまえるのは、リュウレックスの尻尾部分。鋭い無数のトゲによって破壊力を増した、まさに砕くための一振り――剣としても槍としても使える、竜王撃だ。



 竜王神の背中の翼を広げ、一気に加速、飛翔――竜王撃の表面が節単位で交互に回転、すべてを砕くドリルと化す中、アタシは最大速力でワルトロンへと突っ込む。



 そして――







「霞ノ杜流退魔槍術、奥義・気力大疾走改め――」











「旋禍、竜帝突き!」











 突撃の勢いも乗せた渾身の一突きを、ワルトロンに叩きつける!

 それもただ突き込んだだけじゃない。竜巻となってワルトロンの動きを抑えていたエネルギーもまた、竜王撃のドリル回転に巻き込まれる形でワルトロンに叩き込まれる。

 すぐにアタシが後退して――







「ぐわぁぁぁぁぁっ!」







 叩き込んだエネルギーが爆発、先のいぶきの一撃で深刻なダメージを受けていたワルトロンをさらに吹っ飛ばした。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ぐわぁっ!?」







 いぶき達の必殺技二連発。まともにくらって無傷で済むワケがない。ワルトロンがビーストモードの翼竜形態に戻って墜落。デスイマジンも大地に放り出された。







「ほぉ、なかなか……」



「虎の子つぶされた割には、余裕じゃないのさ!」







 で、それを見て感心なんかしてるネガタロスに向けて、僕らが一撃っ!……かわされた。







「まぁ、いい。
 今日の目的はあくまで顔見せ。勝ち負けに特にこだわるつもりもないしな――“Xカイ”!」



「『おや、もう終わりですか?
 少々物足りないですけど……まぁ、今日はこのくらいでもいいですか」』







 ネガタロスに呼ばれて、“Xカイ”とかいうジュンイチさんのそっくりさんが舞い降りてきて……げげっ!?







《無傷だと……!?》







 マスターコンボイが思わずうめく――そう。現れた“Xカイ”はまったくの無傷。



 “ジュンイチさんを戦いの場で相手にしたっていうのに”。



 じゃあ、ジュンイチさんは……?







「心配すんな。こっちも無傷じゃ」







 そう答えて、ジュンイチさんが僕らのそばに舞い降りてきた。







「かーなーり、プライド傷ついたけどなっ!」







 ……そうとうにご立腹だけど。







《それにしても、あなた達……いったいどういうつもりですか?
 いきなり、こんな戦略性のカケラもない襲撃をしかけてくるなんて》



「何、大したことじゃないさ。
 お前達への宣戦布告のついでに……お前達の戦力がどの程度のものか、見せてもらっただけだ」







 ――――っ! 狙いは僕らの戦力評価!?







「あぁ。そういうことだ。
 期待以上の強敵なようで“安心したぞ”」

《安心、だと……!?》

「そうだろう?
 “JS事件”とやらを解決に導き、あのユニクロンとの戦いでも中心となって大活躍。
 今管理局の中でもノりにノっている機動六課――そこをつぶしたとなれば、オレ達の新しい悪の組織の名を上げる、最高のデモンストレーションになる」







 ほぅほぅ。つまりコイツら、自分達が名を売るためのダシに僕らを使おうってワケかい。







「ずいぶんとナメたことを言ってくれるじゃないのさ。
 そうやっていくつの悪の組織が正義のヒーロー達につぶされていったと思ってるのさ?」

「フッ、前にコケていったヤツらの失敗までそのままマネをしていくつもりもないさ」



「関係ねぇよ、ンなもん」



「ジュンイチさん……?」







 ネガタロスに答えて、ジュンイチさんが前に出る。







「お前らが名前を売るコトぁねぇ。
 ……この場でつぶすっ!」

「ちょっ!?」







 いきなり最大火力!? ジュンイチさん、どんだけマジモードなのさ!?



 止めるヒマもなかった。ジュンイチさんが炎を解放して、灼熱の渦がネガタロス達へと襲いかかり――







「『やれやれ、しょうがないですね」』







 “Xカイ”がその前に立ちふさがった。自分の放った炎でジュンイチさんの放った炎を迎え撃つ。



 二つの炎の激突で、僕らと、ネガタロス達との間に炎の壁が生まれる。



 そしてそれが収まった時――ヤツらは姿を消していた。







 ネガタロスとアクトロンも、デスイマジンとワルトロンも、そしてあの“Xカイ”とかいうヤツも――







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ――ガキィンッ!

 甲高い金属音と共に、お互いの得物が弾かれ合う――なかなかやるねっ!







「貴様こそ。事前に得ていた情報とは大違いだ。
 機動六課で腕を上げたというのは本当らしいな」







 言って、レオイマジンが杖をかまえる。



 応じて、あたしもレッコウを……って、あ、あれ……?



 いきなりかまえを解いちゃって……どうしたの?







「……作戦終了だ。
 柾木あずさ。貴様との勝負……ひとまず預けるぞ」







 言って――レオイマジンは唐突に跳躍、離脱していった。







「逃がさないよ!」

「待って!」







 そして、ウラタロスがその後を追おうとして――あたしが止めた。



「どうして止めるのさ、あずさちゃん?」

「バカかてめぇは。ケンカを売られたのはお前じゃなくてあずき女だろ。
 だったら、ケリはあずき女がつけるのが筋だろうが」

「そういうこと。
 悪いけど……アイツはあたしをご指名なの。
 だから、アイツについてはあたしが戦う――OK?」

「……しょうがないね」



 モモタロスに乗っかったあたしの言葉に、ウラタロスは納得してくれたみたい。



「まぁ、えぇやろ。
 どっちにしても、アイツは逃げてったんや。今回はオレらの勝ちやろ」



 うんうんとうなずいているキンタロスだけど――カン違いしているようなので訂正しておく。



「ううん、あたし達の負けだよ」

『はぁ!?』



 これには、キンタロスだけでなくモモタロスやリュウタロスからも驚きの声が上がる。

 ウラタロスはあたしの言いたいことがわかったのか「あぁ」って顔してるけど――とりあえず、モモタロス達に説明してあげる。



「アイツは『作戦“終了”』って言った……『失敗』じゃなくてね。
 つまり、アイツらは無事に目的を果たしたんだよ……それが何なのかはわからないけどね。
 ムザムザ目的を果たさせて、逃亡まで許した――負け以外の何だって言うの?」



 あたしの説明に、負けず嫌いのモモタロスやリュウタロスなんかはまた騒ぎ出すけど――悪いけど無視。



 今のあたしの頭の中の主な議題は、あのレオイマジンのこと。

 あたしだって、この機動六課で魔導師として鍛えられて……まだひよっこなりに、それ相応のプライドはあったりする。

 そのプライドに対して、真っ向から挑んできたレオイマジン……うん。絶対に、負けたくない。











 次は……きっちりつぶして、あたしが勝つ。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「……うん。わかった。
 じゃあ、私達も戻るから」



 業務上の暗号化スクランブルをかけてのやり取りだから、僕らにはどんな話をしているのかはわからない――はやてとのやり取りを切り上げると、フェイトはそう念話をしめくくった。



「街のあちこちに出ていたイマジン達も、一斉に姿を消したって。
 ネガタロスの言ってた“戦力調査”が目的だったっていうのは、本当みたいだね」



 そっか……まんまと目的を果たされて、逃げられたワケだ。



「オマケに、ジュンイチさんでも勝てないようなバケモノが登場、か……」

「ぬかせ。次は勝つ」



 僕の言葉に、ジュンイチさんがぷいとそっぽを向いて答える――けど、やり取りの軽さとは裏腹に状況はかなり悪い。



 だって、ジュンイチさんですらようやく互角だってことは……悔しいけど、僕らじゃ勝てない。

 事実上、あの“Xカイ”ってヤツはジュンイチさんにお任せするしかないワケで……つまり、今後ジュンイチさんはヤツに備えて、対イマジン戦には簡単に出てこられなくなる。



 正直、ジュンイチさんが出てきてくれればそうとう楽できるんだけどなぁ……



「とはいえ……悪い話ばかりというワケでもあるまい」

「まぁね」



 口をはさんでくるマスターコンボイに答えると、



「まず……敵の正体と目的がわかった。
 そっちも、どこの誰が裏で糸を引いてるかわからないまま、場当たり的にイマジンと戦ってたんでしょ?
 何もわからず闇雲に動いていた今までと比べれば、格段の進歩だわ」



 そう言うのは、竜王神とのゴッドオンを解除したなずなだ――うん。その通り。



 でもって――



「さらに、なっちゃんが念願のトランステクターゲットぉっ!」



 同じく、獣帝神とのゴッドオンを解いてきたいぶきが、なずなの肩を叩く。



「いやいや〜、まさかこの一件になっちゃんまで絡んどるやなんてなー。
 ウチらの縁も、まだまだ簡単に切れそうにないなぁ」

「いつまで続くのよ、この腐れ縁……」



 カラカラと笑ういぶきのとなりで、なずなが頭を抱える――僕らがコメントしても泥沼になりそうだから助けないけど。







 まー、何にせよ、だ。







「なずなの言う通り、敵の正体も、目的もハッキリした。
 これ以上はやらせない。ヤツらのやることなすこと、ひとつ残らずブッつぶしてやろうじゃないのさ」



 ネガタロスの性格上、こうして顔見せが済んだ以上当分出てこないだろう。悪の首領らしくアジトでどっしりかまえて、部下のイマジンを小出しにしてくる可能性が高い。

 だったらそれをひとつひとつつぶしていくまで――根気との戦いになるけど、今のところヤツらの手札全部つぶして、ネガタロス自身が出てこざるを得なくなるところまで持っていくのが最善手なのは確かだ。



「何にせよ、対応は今まで以上にしっかりと……だね」

「そういうことです」



 良太郎さんの言葉にうなずく。











 そうだ。しっかりしなくっちゃ。



 あんなヤツらに、僕らの時間を好き勝手させないためにも……ね。







(第17話に続く)





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



次回、とコ電っ!



「まさか、そういうご用件だったんですか?」



「蒼凪恭文……だね?」



「これ……イマジンの手口じゃない」



「あー、大丈夫。
 後ろにいるのが誰なのか、だいたい想像ついたから」





第17話「わらわは帰ってきた!」





「ぷっくりころころ、ホットケーキ〜♪」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あとがき



Mコンボイ「今回の第16話はネガタロスとの顔見せ編の後編にして……」

オメガ《ミス・なずなのトランステクター、竜王神の登場編ですね。
 まさかネーミングセンス最悪とうたわれたアクトロンやワルトロンがスキャンのモチーフになるとは思いませんでしたが》

Mコンボイ「まぁ、名より実を取った、と思っておこう。
 ネーミングセンスはアレでも、実力的にはかなりの脅威だったのは確かだ」

オメガ《いやまぁ、そこは否定しませんけどね。
 ともあれ、この話で前回のこのコーナーでも触れた“機動六課VS悪の組織”の図式が成立したワケですし、今後の流れのだいたいの骨子はこれで固まったと思っていいんですよね?》

Mコンボイ「だいたいは……な。
 登場人物的にはまだまだのようだが」

オメガ《差し当たって、ネガタロスに勧誘されたディセプティコンの再登場……ですね》

Mコンボイ「あと、次回予告によれば……」

オメガ《…………帰ってくるんですか、彼女……》

Mコンボイ「帰ってくるようだな……
 もう、それ自体が厄介ごとのフラグにしか思えんが」

オメガ《とりあえず……まず間違いなく矛先が向くであろうミスタ・恭文にがんばっていただく、ということで。
 ……っと。さて、そんなこんなで、そろそろお開きの時間ですね。
 みなさん、今回も読んでくださって、本当にありがとうございました》

Mコンボイ「次回も必ず読むがいい」





(おしまい)





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