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頂き物の小説
第12話「ワニワニ・リベンジパニック」



 く…………っ! やり辛いっ!

 舌打ちして、突っ込んでくるワニをモチーフにしたイマジンの体当たりをかわす。

 結果、イマジンはビルの壁に突っ込んで――コンクリート壁の方が負けた。轟音と共に体当たりを受けた部分が粉砕される。







「フンッ、すばしっこいヤツだ。
 だが、それもいつまでもつ!?」







 言って、ガレキの中からイマジンが現れる――タフなヤツだな、本当に!

 こっちもそれなりに攻撃を当てているというのに、あの固い表皮のおかげでほとんどダメージを受けていない。

 まぁ、『ほとんど』というだけで、まったく通っていないワケではないから、地道に攻撃を当てていけばなんとかなるか……



「その前に向こうが引き上げちゃうか、こっちがガス欠になるかしなきゃいいんだけどね」



 レヴィアタン……本当にありそうだからそういうことは言うな。







「ごちゃごちゃうるさいぞ!」







 話している我々に向けて、イマジンが突っ込んできて――











〈ATTACK-RIDE!
 “BLAST”!〉












 響いた電子音声と同時、イマジンの体表を銃弾が叩いた。

 だが――待て。今の攻撃は我々ではないぞ?







「何だ、新手か!?」







 一方、イマジンの方もいきなりの攻撃に戸惑っている。周りを見回して声を上げ――











「『新手』ねぇ……
 まぁ、間違っちゃいないか――もっとも、そいつらの仲間ってワケでもないんだけどな」











 暗闇の向こうからの声がイマジンに答えた。



「あえてそいつらとの共通項を挙げるなら……“お前らの敵”ってことくらいか」



 そして、声のする方から何かが稼動する音がする。



 というか、この声……



「ったく、ヘタな陽動かましやがって……
 この世界じゃあまり目立ちたくないんだ……さっさと叩きつぶさせてもらおうか」



 その言葉に続いて――再び、電子音声が響いた。







〈KAMEN-RIDE!〉





















〈“FOURZE”!〉











 ――時の列車、デンライナー。次の停車駅は、過去か未来か――











『とある魔導師と古き鉄と時の電車の彼らの時間』・『とまコン』バージョン



とある魔導師と守護者と時の電車と仮面の戦士達



第12話「ワニワニ・リベンジパニック」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「くら待て、シグナム!
 コイツぁいったいどーゆーことだっ!?」



 ジュンイチさんがシグナムさんに詰め寄る気持ちはよくわかる――うん、本気でワケがわからないもの。

 辻斬り犯と目されたイマジンとは良太郎さん達とギンガさん達が戦ったものの、いきなり『契約者のために協力してくれ!』とか言われたらしいし。

 で、その契約者のところに案内してもらったら、それがなんとシグナムさんだって言うし。

 僕らもどういうことか知りたいの。きっちり説明してもらいましょうか。



「ど、『どういうことだ』と言われても……」

「シグナム……お願い、正直に話して。
 イマジンは危険だってわかってたはずだよね? なのにどうして契約なんか……」

「ち、ちょっと待て、テスタロッサ!」



 フェイトにも言われて、シグナムさんはあわてた様子で声を上げる。



「どういうも何も……」



 言って、シグナムさんはワニイマジンを見て、











「そもそも……そいつは何者だ?」











 ……はい?



「ジーク殿のような、野上殿に協力してくれているフリーのイマジンか?」



 いやいや、ちょっと待って。

 なんか、話がおかしな方向に転がってきてない?



「お、おい待て!
 オレのことを知らないってどういうことだ!? オレはお前が契約してくれたから実体化できたんだぞ!
 それを『知らない』!? 契約を果たすために、こっちは武者修行までしていたのに……」



 あぁ、やっぱりあれは辻斬りじゃなくて武者修行のつもりだったんだ。



 けど……本気でどういうことだ?

 イマジンは本気で焦ってる。このままじゃ契約が果たせないって。

 でも、シグナムさんがシラを切るとも思えない。何? この食い違い。



「…………ん?
 おい、恭文」



 マスターコンボイ……?



「『電王』のTVシリーズ、第21話と第22話が似たようなパターンじゃなかったか?」



 また具体的な数字を出すねぇ……まぁ、僕が『電王についての勉強用に』ってディスクを貸してるせいだけど。

 けど……あれ、どんな話だったっけ?



「以前オレ達も戦った、ウサギとカメのイマジンが出てきた話だ。
 確かあの時、イマジンは契約者が寝ぼけている時に契約してしまった……そのせいで契約者はイマジンのことを覚えておらず……」



 あぁ、思い出した。

 そのせいで、イマジンは珍しくちゃんと契約を果たしたのに、なかなか過去へ跳べなかったんだっけ。



 確かに、契約者がイマジンのことを知らないっていうこのシチュエーションはあの話とよく似てる。



 ってことは……



「あの……シグナムさん。
 ここ最近寝ぼけちゃってたこと……もっと言うなら、その中で何か願い事というか、願望を口走っちゃったことってありませんか?」

「ま、待て、野上殿。
 そんな、寝ぼけていた間のことなど、寝ぼけていた当事者が覚えているワケがないだろう」



 なるほど、それはごもっとも。



 となると、他にその時のことを覚えていそうな人は……



「……あぁ、そうだな。
 当然オレに来るよな」



 そう。ワニイマジンさんだ。僕らに注目されて軽くため息。



「……そうだな。思い出してもらわなければ困るのはオレも同じだ。説明するか。
 もう、一ヶ月くらい前になるか……」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ふむ……どうしたものか……

 今日も今日とて、契約者となり得る者を探しているのだが……なかなか手頃なヤツは見つからないな。

 まぁ、オレが選り好みしているせいでもあるんだが。

 しかし、聞けばゼロノスがこの世界にやってきたという。いずれは電王も来るだろうし……できればヤツらにジャマされないで叶えられるような、そんな願いの方がありがたい。







「……はぁ……」







 …………ん?

 いきなり聞こえたため息に見下ろすと、ベンチに座るひとりの女性。

 何やら疲れているようだが……それ以上に精神的にため込んでいるものがあるな。

 強い願いであればあるほどシンプルでいい。コイツにするか。

 そう決めて、オレは女性の中に飛び込む――彼女のイメージから身体を形作ると、時の砂でできた未契約状態の身体で彼女の前に姿を現す。



《さぁ……お前の願いを言え》

「願い……?」

《そうだ。
 叶えるのが簡単なものなら、どんな願いも叶えてやろう》



 さぁ、どんな願いだ……?











「……戦いたい」











 …………は?



「最近、仕事、仕事でちっとも戦えてない……
 あぁ……強い相手と戦いたい……」



 また珍妙な願いだな……まぁいい。これならなんとかなりそうだ。



《わかった。
 その願い……》





















「確かに、承った」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「…………と、いうワケだ」

『………………』



 イマジンの話に、僕ら全員の冷たい視線がシグナムさんに集中する。

 だって、これは……ねぇ? いろいろとありえないもの。

 時期的にはまだ僕らが良太郎さん達に会う前だから、何も知らずに契約、なんて流れがあってもおかしくないけれど……それでも少しは怪しもうよ。



「い、いや、あの頃は仕事がいろいろ重なって大変で……まぁ、疲れもたまっていたからな……正直、頭があまり働いていなかったかもしれん」



 んー、まぁ、仕事については僕らが大賀行きで抜けていた頃だから、しょうがないかもしれないけど……



 けどシグナムさん、残念ながらツッコみどころはそれだけじゃない。



「というか、願いがコレって……
 シグナム、そんなに戦いたかったんですか……?」

「う゛っ……そ、そんな目で見るな、テスタロッサ!
 仕方ないじゃないか! 最近剣友会の集まりもないしっ! 柾木が暴走した時だって、それどころじゃなかったじゃないかっ!」



 ほぼ全員が殺されかけましたしね。



 でも、それでフラストレーションが溜まりまくったあげく怪しさ大爆発の砂人形にお願いって……どんだけ疲れが溜まってたんですか?



「高町恭也達が心配するはずだ……」

「うぅ……」



 マスターコンボイの言葉がトドメになったのか、シグナムさんが机に突っ伏す……うん。同情の余地なし。



 ただ……これでどうして、先日のオトリ作戦が空振りに終わったのかは理解できた。

 ワニイマジンはシグナムさんに戦わせてあげるための“強いヤツ”を探していたんだ。

 つまりシグナムさんは最初から武者修行の対象外。引っかかるワケがない。



 でも、とりあえず事情はわかった……どうしようか、これ?



「どうもこうもないよ、なぎくん。
 契約を完了させるワケにはいかないんだし……やっぱり、倒すしかないんじゃないかな?」



 ふむふむ。

 じゃあギンガさんが殺ってね。僕は無抵抗の相手を斬るなんてヤだから。



「う……そ、それは私だってイヤだけど……
 でも、契約が完了して過去へ跳ばれたら、過去が消されちゃうんだよ?」

「あぁ、それなら安心しろ。
 別に過去を変えることに興味はないから」



 …………は?



「確かに、前の世界ではカイの口車に乗せられて2007年に向かったのだが……正直、アイツにノせられて巻き込まれたようなものだしな」



 あ、カイっていうのはTVシリーズのラスボスのことね。



「本当のことを言うと、先に契約しては電王に倒されていく同族達を見て後悔していてな。
 だから、とりあえず取り返しのつく限りは取り返しをつけれておこうとしてな。
 契約を完了して過去に跳べば、そこで契約者とのつながりは完全に切れる。後はのんびり余生を楽しませてもらおうと思っていた」



 んー、まぁ、モモタロスさん達のような前例もあるし、まるっきりありえない話ではないけれど……



「……恭文、どうする? 信じるのか?」

「……正直、僕としては今の話だけじゃ信じる理由にはならない」



 マスターコンボイの問いにそう答える。

 そう。いくらありえない話ではないからって、モモタロスさん達がそうだったからって、コイツもそうだって保証はないしね。



 でも……だ。



「……けど、キンタロスさんが信じた」



 いつもその後に続く行動がトンチンカンなおかげで誤解されがちだけど、キンタロスさんって決してバカじゃない。

 むしろ、人や物事を見る目は確かなものがある。そのキンタロスさんが信じたのなら……信じてもいいと思う。



「過去に跳んだら、ちゃんと今自分が宣言したことを守ること。
 それさえ約束してくれるなら、僕はお前を信じる」

「うむ。それなら問題はない」



 迷うことなくイマジンはうなずいて――



「あぁ、後ひとつワガママを言わせてくれるなら、今までの武者修行で打ち倒してしまった者達にもわびて回りたいものだが。
 一応手加減したし、“勝った時は毎回救急車を呼んでいた”が……」



 …………え?



 今……何て?



「ち、ちょっと待って」



 思わずイマジンにストップをかける。



「今……『毎回救急車を呼んでいた』って言った?」

「ん? あぁ。
 別に殺すつもりだったワケでもないんだからな」



 その言葉にフェイトと顔を見合わせて――そんな僕らを代表して、イクトさんが尋ねる。



「つまり……救急車を呼ばなかったことはないんだな?」

「オレが勝った場合は、な……オレが負けた時は呼ぶ必要はあるまい?
 それが、いったい何だと言うんだ?」

「……負けた人、救急車を呼ばれずに放置されたケースがある」

「はぁっ!?」

「それもひとりや二人じゃない」



 驚くイマジンに、さらに言葉を重ねる。



「ったく、一日に何人もブッ飛ばして回ってるからだ。
 何件か忘れてたんじゃないか?」

「『何人も』!?
 待て待て! それもおかしい!
 オレは一日にひとりしか戦ってないぞ!?」



 ジュンイチさんの言葉にも、イマジンはまたしても食い違う証言をしてくる。

 これ、どういうことさ? いきなり話がきな臭くなってきたんだけど。



 このイマジンがウソを言ってないとしたら……



「まさか……別の辻斬りがいる……!?」



 マスターコンボイが僕らの考えを代弁してくれて――あ、通信。



〈あー、よかった。やっとつながった!〉

「クレアさん……?」

〈ごめんっ! イマジン、取り逃がしちゃった!〉







 ………………

 …………

 ……











 はいっ、ビンゴ――っ!







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「状況を整理するぞ。
 クレアの話によれば、もう一体のイマジンもワニがモチーフの近接パワータイプ。
 こいつにやられた被害者はぶった斬られた上に放置されて重傷。お前らも襲われて応戦。
 そしたら、電王とは別の仮面ライダーに乱入されて、取り逃がした……」

「う、うん……」



 持ち出してきたホワイトボードにクレアさんの証言から拾い上げたキーワードを列挙していく――マーカーがボードの上をすべる、キュッキュッ、という音と共に告げるジュンイチさんに、クレアさんがうなずく。



「別の仮面ライダー……侑斗かな?」

「んー、クレアの話から推測した限りだと、なんか違うっぽいよなー。
 良太郎達の言う、“オレ達の世界ではまだ物語が描かれてないライダー”がうろついてんのか?」



 首をかしげる良太郎さんに答えるジュンイチさんだけど……何だろう? クレアさん、ジュンイチさんを見てしきりに首をかしげてるような……



「…………? 何だよ、クレア?」

「あ、うぅん、何でもないです、何でも……」



 ジュンイチさんも気づいて声をかけるけど、クレアさんはそう答えるばっかり……うん、どう見ても何かをごまかしてるね。



「……まぁ、いいか。
 とにかく、ソイツがこっちで保護した方のワニイマジンにぬれ衣を着せる形になってたワケだ――意図してやってたことなのかどうかは、知らないけどな」

「まぁ、その辺の話を抜きにしても、コイツは倒しとくべきイマジンってことでいいでしょ」



 ジュンイチさんの言葉に僕が付け加える――だってこっちは過去へ跳んだら遠慮なく時間を壊しそうだし。



 ……それにしても。

 この間のラットイマジンといい、ハゲタカイマジンといい、今回のワニイマジン二体といい……僕の知る限りはいなかったタイプのイマジンばかりだ。

 イマジンの社会も日進月歩ってことか……良太郎さん、知ってるイマジン、いますか?



「えっと……倒さなきゃいけない方のワニのイマジンなんだけど……モモタロスが戦ったことがあるって」

「見た目どおりのパワータイプだ……ま、オレ達の敵じゃなかったけどな」



 良太郎さんの言葉にもモモタロスさんが付け加える。



《とりあえず……当面はこのイマジンへの対処ですね。
 こっちのワニイマジンと違って、コイツは人を傷つけることを何とも思ってない……》



 アルトの言う通りだ。コイツをほっとけば被害者がどんどん増える。その上過去に跳ばれたら……



「っつーワケでワニさんや。
 お前さんのケアは後回しになるが、かまわんか?」

「かまわないどころか、オレにも協力させてくれ」



 尋ねるジュンイチさんにワニイマジンはむしろ乗り気でそう答える。



「オレに余計なぬれ衣を着せてくれたお礼はしてやらなければな。
 コイツはオレが倒す――武者修行で磨いた力、見せてやる」



 ワニイマジンもやる気だ――ところで、ひとつ気になってたんだけど。



「何だ?」

「いや、アンタのモチーフなんだけど……」



 答えて、ワニイマジンの特徴的な部分を見る。

 すなわち、右手のフックと、腰に下げた時計。



 これって……



「たぶん……っつーか間違いなく、『ピーターパン』に出てきたワニだろうな」



 だよねー。フック船長の右腕を時計ごと食べちゃったっていうアイツ。

 ジュンイチさんの言葉に納得する……で、一番言いたかったこと。







「…………シグナムさんが……ピーターパン?」

「何が言いたいっ!?」







 いえいえ。

 たぶん恭也さんや知佳さんしか知らなかっただろう、シグナムさんの“カワイイ部分”が垣間見えたかなー、と。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「とりあえず、一連の辻斬り事件の中で、ワニイマジンの仕業なものを省いて、アリゲーターイマジンの仕業と思われるものをピックアップしてみた」



 シグナムいぢりも一段落して、話は事件についてのものへと戻る――言って、オレは整理を終えたデータを表示した。



「発生時間も場所もバラバラ……法則性らしいものは見えないかな……?」

「ここから次の犯行を予測するは、難しいですね……」



 一番目を引く、発生日時を付記した現場マップを見たフェイトやなのはがつぶやく……もしもーし。他のデータも見ようなー、お前ら。



「…………あら?」



 お、みゆきちゃんは気づいたか。被害者の個人データを見ての声だったし。



「……この人達……同じスポーツクラブに通ってる……?」

「え…………?」



 言われて、恭文もデータを確認する。

 ちなみに、オレもデータをまとめていた時に気がついた。なので、電話という形ではあったけど、そのスポーツクラブに話を聞いてある。



「問い合わせたところによると、一ヶ月くらい前……ちょうど辻斬り事件が起き始める少し前、このスポーツクラブを退会している男がいた。
 なんでも、その直前、格技室でリンチにあっていたらしい。クラブ側もそのことを知ったのは退会後、防犯カメラの映像をチェックした時にようやく……だったらしくて、事前にどうにかすることはできなかったらしい。
 一応管理局ざたになって、犯人達が障害で罰金刑と治療費の支払いをすることで和解が成立してるけど……もし、被害者がそれで納得してなかったら……」

「報復は……考えるよね」



 オレの言葉に恭文がうなずく――だいたい話は見えてきたみたいだな。



「つまり契約者は、その退会した男……?」

「そうか……契約内容は、そのリンチの復讐だ!」

「おそらくはな。
 アリゲーターイマジンにやられたヤツらは全員、そのスポーツクラブでベルカ式戦技のサークルを作っていた。退会した男は新入りで、根性試しの名目でボコられたらしい」



 ティアナやこなたに答えてため息――あー、ヤな話して胸くそ悪い。



「なんだか、他人事とは思えませんねー」



 同じくリンチにあった末に殺された経験者であるチビ小夜さんがため息――安心しろ。リンチかまされた理由としてはアンタの方がまだ真っ当だ。



「とにかく、さっそくその契約者(仮)かっこかりかっことじのところへ――」



 言って、恭文が立ち上がろうとした、その時だった。











「オレに行かせてくれ!」











 机をバンッ!と叩き“つぶして”、キンタロスがそんなことを言い出した。



「き、キンタロス……?」

「良太郎、お前ならわかるやろ。オレはこういうのが一番嫌いなんや。
 自分がやられた仕返しを人任せにするようなヤツも、手ぇ貸すのはえぇけど、闇討ちみたいな卑怯なマネをするヤツも!
 イマジンも契約者も、まとめて根性叩き直したるっ!」



 言って、キンタロスは良太郎すら振り切って飛び出していく――あ、『電王』知らなかった組があ然としてる。ま、こんなアクティブなキンタロスは初めて見るだろうしな。



 でも……だ。やっぱり“キンタロスらしい”、そんなネタがひとつ。



「アイツ……契約者(仮)の住所確かめずに飛び出して行きやがった」

「って、ジュンイチさん、何をのん気なことを!
 私が行って、案内しますから! 行くよ、シロくん!」

「う、うんっ!」



 オレにツッコんだギンガが、ロードナックル(シロ)と一緒にキンタロスを追う――じゃ、そっちは任せたよー。



 ……と、いうワケで。



「オレ達はぼちぼち行こうか。
 当事者のひとりなのにマジ忘れ去れてるワニイマジンさん♪」

「その肩書きはいらん」



 気にするな。単なるネタだ。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「待ってください、キンタロスさん!」



 隊舎を出て少し行ったところで、街に向けて走るキンタロスさんに追いついた。

 あの……まさか街までずっと走って向かうつもりだったの?



「何や、嬢ちゃん。
 今から契約者のところへ行くんや。ジャマせんといてくれ!」

「その契約者がどこに住んでるのか、キンタロスさん知らないじゃないですか!
 案内しますから、キンタロスさんも乗ってください!」

「お、おぅ……」



 振り切ろうとするキンタロスさんに答える――ようやく自分が契約者の住所を知らないことを思い出したのか、キンタロスさんは割と素直にビークルモードで私を乗せたシロくんの上によじ登った。



「まったく……そんなにイマジンが許せなかったんですか?」

「あぁ……許せんなぁ」



 私の言葉に、シロくんの上であぐらをかいたキンタロスさんはキッパリと答えた。



「そいつのせいで、オレ達に協力してくれたあのワニのイマジンがいらん罪まで背負わされるところやったんやからなぁ。
 アイツは、オレの強さに惚れ込んで協力してくれてる! せやから、オレもそれに応えたらなあかんのや」



 キンタロスさん……



「頼む、嬢ちゃん。
 オレのワガママに、もう少し付き合ってくれ」

「お断りします」



 キンタロスさんの頼みを、私はキッパリと拒絶する。

 だって――



「あなたに協力するのは“私”じゃない――」











“私達”みんなです」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 とりあえずギンガさん達に先行してもらって、僕らはワニイマジンや良太郎さん達と一緒に契約者(仮)のところへ。

 この先のアパートなんだけど……あれ?



「なぎくん! みんな!」



 ギンガさんだ。シロやキンタロスさんと一緒に待っていたところに、僕の姿に気づいて手を振ってくる……えっと、まさか……



「うん……もう跳ばれた後だった。
 私達は空のチケットを持ってなかったから、どうすることもできなくて……」



 あぁ、それで僕らを待っていたのか。



「契約者はアパートの部屋に?」

「うん、お願い」



 ギンガさんに促されて問題の契約者さんのところへ。良太郎さんが空のチケットをあてて……



「……やっぱりな。
 スポーツクラブの人が言ってた、リンチ事件のあった日だ」



 ジュンイチさんが満足げにうなずくけど……それにしても、一ヶ月ちょっと前か。またすぐ近くの時間に跳んだものだね。



「そうだね……こんな近い時間に跳んでも、大した時間の改変なんかできないと思うんだけど……」



 ウラタロスさんも首を捻ってる……良太郎さん達にとっても、これは珍しいケースだってことか……



「ジュンイチさん……どう思います?」

「ここでオレに振るかよ」

「僕らの中で一番相手の思考を読むの上手いじゃないですか」

「その通りなんだけどな」



 うん、ここで謙遜したりせずズバリと認めちゃうのがジュンイチさんクォリティ。



「ふーん……確かに、ウラタロスの言う通りちょっとおかしい状況かな……?
 今言ってた通り、こんなすぐ前の時間に戻っていろいろ消したって、“今”に対する影響なんてタカが知れてる……
 時間の改変が目的なんだとすれば、こんな直近の過去に跳んだって何の意味もない。
 コイツの目的は、別にあるのか……?」



 けど、そんなジュンイチさんもよくわからないらしい。首をかしげてつぶやいて――



「あー、少しいいかな?」



 はい? 何ですか、クレアさん?



「悪い方のイマジンについて説明した時に話したよね?
 “ボク達を助けてくれたライダー”のこと」



 あぁ、全身真っ白な、おにぎり頭のライダー……でしたっけ?

 さっきもジュンイチさん達が話してたけど、少なくとも僕らはそんなライダーは知らない。良太郎さん達の方もそういう特徴のライダーは知らないらしいけど……



「でね、そのライダーが言ってたの。
 『ヘタな陽動しやがって』って……」



 …………陽動?

 つまり……今回のイマジンの目的は陽動? 本命は別?



「とにかく過去に跳んで、オレ達を……というか、電王を現代から引き離すつもり……ということか?
 つまり、ヤツらはこの時間で何かをしている……?」



 イクトさんもイクトさんで眉をひそめる――その話が本当なら、僕らはこうしてイマジンを追いかけて過去に行くことで、ヤツらの思惑に乗せられていることになる。



「けど、だからって過去に跳んだイマジンを放っておけないよ。
 これが誘いだって言うなら……早く終わらせて早く帰ることを考えよう」

「……そうですね」



 良太郎さんの言葉にうなずく――そうだ。きっとそれが最善。

 まだ誘いだって決まったワケじゃないけれど……その可能性がある以上、全力でつぶす!







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ……さて……

 デンライナーが空に消えた辺りを見つめたまま、息をつく。

 「一緒に行くか?」とも誘われたが、とりあえずオレは残ることにした。

 どうせ過去に行くのなら、オレは……







「トランスフォーム!」







 頭上からの声に見上げると、契約者の相棒――確かスターセイバーと言ったか。ヤツがジェット機からロボットモードとなってオレの目の前に舞い降りた。

 そして――



「お前……ついていかなかったのか?」



 オレの契約者が、彼の“中”から姿を現した。



「あぁ……
 ひとつ、やることがあってな」



 さて、これで“準備”は整った。



「さぁ、契約者よ……」











「契約を、完了させようか」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「――いた!」



 僕らの“今”からたった一ヶ月前のクラナガン。僕らの知ってる、そのままの街並みのはずだったそこは、アリゲーターイマジンによってあちこち破壊されている。

 ……さて、と。



「早くしないと、この時間のフェイト達が来ちゃうかもしれないし……そういう意味でも速攻で叩かないと」



 今この時間はアリゲーターイマジンの介入や僕らの出現で書き換わった状態だ。僕らの知ってるフェイト達にその記憶がないからって、鉢合わせの可能性はゼロじゃないんだ。



「あー、その問題があったな。
 ちょっと待ってろ」



 ………………?

 ジュンイチさん、携帯でいったい誰と話を……?



「………………よし、もみ消し完了」

「誰と話した!? そして何を話した!?」



 マスターコンボイ……それはいろいろな意味でツッコまない方がいいと思う。



「よっしゃ、ほないこか!」



 とにかく、今はイマジンだ。キンタロスさんがイマジンの前に進み出て、



「キンタロスさん」



 ギンガさん……?



「私と行きましょう」

「嬢ちゃん……?」



「言ったはずですよ。『私達みんなが協力する』って。
 ひどい目にあわされた人をそそのかして利用する……私だって、あのイマジンのしたことは許せません!
 私、堪忍袋の緒が切れました!」



 あーっ! ギンガさん、それフェイトのセリフーっ!



「いや、テスタロッサのセリフでもないからなっ!?」



 あー、すいません、イクトさん。つい。



「……そんなら、いっしょにやろか!」

「はいっ!」



 と、ボケツッコミを繰り広げている僕らをほったらかしにして、キンタロスさんがギンガさんの“中”に入る――髪に金色のメッシュが入って、



「良太郎!」

「う、うんっ!」



 見た目:ギンガさん、声:キンタロスさんって状態で話しかけられて、良太郎さんがあわててパスを渡す。

 そして、キンタロスさんはギンガさんの腰にベルトを巻いて、











「変身」



《Ax Form》











 パスをセタッチ。プラットフォームを経て電王・アックスフォームへ。そして――







「オレらの強さにっ!」

〔あなたが泣いたっ!〕







 …………ギンガさん。



「割と、ノリノリ?」

〔うん、ちょっと……
 なぎくんや、モモタロスさんと変身したスバル気持ち、少しわかったかも……〕



 なるほど。さすがはあの豆芝のお姉さん、か。



「追ってきたな、電王!
 返り討ちにしてやる!」



 対して、アリゲーターイマジンがキンタロスさん達に向けて突っ込んでくる。キンタロスさんも迎え撃とうと身がまえて――





















「待ていっ!」





















 って、この声……っ!?



「多勢に無勢に拍車をかけることになるが……」







「その戦い、オレも加わらせてもらうぞ!」







 やっぱり、ワニイマジン!?

 現代に残してきたはずのアイツが、どうして……!?

 この時間のアイツかとも思ったけど、事情を把握してるっぽいし……



「忘れたか? 恭文よ。
 オレ達イマジンは、“デンライナーなしでも過去へと跳べる”」



 ――って、まさか!?



「そうだ。
 契約者……シグナムに殺されかけてと契約を完了し、その上で過去へと跳んだ。
 そしてこの日のために、研鑽に研鑽を重ねてきたのだ!」



 言って、ワニイマジンは自分の剣をかまえて、アリゲーターイマジンへと突っ込む。



「8年間、この日のために磨いてきた剣、受けるがいい!」



 って、8年……?

 シグナムさん、長いこと生きてるし、跳ぶならもっと前かと思ったけど……



「ちなみに、跳んだ先の時間のシグナムさん、何してた?」

「そこにいる、ジュンイチと出逢っていた!」

「あ、あの日かぁぁぁぁぁっ!」



 ワニイマジンの答えに、ジュンイチさんが頭を抱える……ホントに縁が深いですよね、アンタら。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ジュンイチさんと、シグナムさんが……?

 前々からつながりの強い二人だとは思ってたけど……

 気になる……すごく気になるけど、今は戦いに集中。キンタロスさんが私の身体を使って、ワニイマジンと斬り結ぶアリゲーターイマジンへと突っ込む。

 少し卑怯な気はするけど、斧に組み上げた電王の武器……デンガッシャーっていうらしいけど、それでアリゲーターイマジンの背中に一撃を打ち込む。

 まともにくらってひるむアリゲーターイマジンに、ワニイマジンは手にした剣を横薙ぎに打ち込んだ。そこへ、キンタロスさんと私が、力を合わせて掌底一発っ!







「くそっ!」







 アリゲーターイマジンが私達へと向き直って……その背中をワニイマジンが斬りつける。私達とワニイマジンとで、アリゲーターイマジンをはさみ撃ちで痛めつける。







「キンタロス!
 時間をかけたくない――決めて!」

「よっしゃ!」











《Full Charge》











 良太郎さん達に答えて、キンタロスさんがフルチャージ。パスをベルトにかざして、ベルトが発したエネルギーがデンガッシャーの刃に集中していく。







「ならば……オレも!」







 そして、ワニイマジンもまた、手にした剣にエネルギーを集める。







「はぁっ!」



「オォォォォォッ!」







 キンタロスさんがデンガッシャーを真上に放り投げ、自分もそれを追うように大ジャンプ。

 ワニイマジンも、右手に握る剣を大きく振りかぶってアリゲーターイマジンへと突っ込む。

 アリゲーターイマジンの頭上で、私達はデンガッシャーをキャッチして――











「セイヤァァァァァッ!」



「オォリャアァァァァァッ!」











 ワニイマジンの横一閃を受け、よろめくアリゲーターイマジンの身体を、キンタロスさんと私の振り下ろしたデンガッシャーが、脳天から真っ二つに斬り裂くっ!

 十字に身体を叩き斬られて、アリゲーターイマジンは爆発、四散して……







「…………ダイナミック、チョップ」







 ……後から言うんですね。



「ハハハッ、良太郎も同じこと言うとったで」



 私に答えて、キンタロスさんはアリゲーターイマジンの爆発した跡に視線を向ける。

 まだ変身も、私についた状態も解いてない。だって……







「グォオォォォォォッ!」







 ほら、ここ最近のパターン通りっ! イマジンがギガンデスになって復活した!



 陸戦型の……確か、ギガンデスヘル!







「ベースがワニやし、海戦型で来るかと思ったら、陸戦型かい!」

〔あー、ワニって陸でも強いですし……〕

「まぁ、えぇわ。デンライナーでブッ飛ばしたれば同じことや!」



 そう言うキンタロスさんの言葉に伴ってデンライナーが現れる――んだけど、あの、キンタロスさん。



「ん、何や?」

〔せっかくなので、こちらも今まで通りのパターンでいきましょう。
 私はマスターコンボイやシロくんと出ますから、キンタロスさんも良太郎さんと〕

「何や、せっかくギガンデスに備えとったに、結局いつも通りかい」

〔すみません、キンタロスさん。
 でないと……〕







「よぅし、イマジンがギガンデスになったよ!
 いよいよボクらの出番だよっ! クロくん、マスターコンボイ!」

《はいはい、わかったわかった》

「少しは落ちつけ、貴様」







〔……すでに出ること前提でスタンバっているシロくんが不憫でならないので〕

「……泣けるなぁ……」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『ゴッド――オン!』







 強く叫んだ、その瞬間――私の身体が光に包まれた。自分でも自分の姿を確認できないほど強く輝くその光は、やがて私の姿を形作り、そのままマスターコンボイと同等の大きさまで巨大化すると、その身体に重なり、溶け込んでいく。

 同時、マスターコンボイの意識が身体の奥底へともぐり込んだ。代わりに全身へ意思を伝えるのは、マスターコンボイの身体に溶け込み、一体化した私の意識だ。







《Storm form!》







 トランステクターのメインシステムが告げ、マスターコンボイのボディカラーが変化する――グレーだった部分が、まるで染め上げられていくかのように私の魔力光と同じ色、すなわち藍色に変化していく。

 それに伴ってオメガが分離――巨大な両刃の剣が真ん中から別れ、両腕の甲に合体。両腕と一体化した可動式のブレードとなる。

 両腕に装着されたオメガをかまえ、ひとつとなった私とマスターコンボイ、二人で高らかに名乗りを挙げる。







《双つの絆をひとつに重ね!》

「想いの魔法を拳に込めて!」












「《マスターコンボイ――Stand by Ready!》」








◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「《マスター、コンボイ!》」







 私とマスターコンボイが声をそろえて叫んで、大きく跳躍した私達の腕からアームブレードモードのオメガが分離。左腕を肩アーマー内に収納、露出している部分の腕の装甲の一角が開き、中から合体用のジョイントが現れる。







「ロード、ナックル!」







 次いでシロくんが叫んでビークルモードにトランスフォーム。車体脇のアームに導かれる形で後輪が前輪側に移動、前輪を含めた4つのタイヤが整列して、車体後尾には合体用のジョイントが露出する。

 そして、私達とシロくんが交錯して――







『《ゴッド、リンク!》』







 私達三人の叫びと共に、マスターコンボイの左肩に連結する形で、左腕に変形したシロくんが合体する!

 右手にブレードモードに戻ったオメガを握りしめ、拳が異様に巨大な左腕を振るい、私達三人が高らかに名乗りを上げる。







『《ナックル、コンボイ!》』







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「いきますっ!」







 メインコントロールはもちろん私。ナックルコンボイとなった私は脚部のダッシュ用ローラー、レッグダッシャーを展開して、一気にギガンデスに向けて突撃する。

 迎え撃とうとするギガンデスだけど……シロくんの四つの車輪によって形成される巨大な拳を叩きつけて殴り飛ばす。

 さらに、吹っ飛ぶギガンデスを追いかけて追撃のラッシュ――ヒジ打ちぃっ! 裏拳、正拳! とぉりゃあぁぁぁぁぁっ!







《……ギンガお姉ちゃん、最近『Gガンダム』見たでしょ?》







 ……うん。ナンバーズの格闘組が見たがったので、一緒に。

 と、そこへ響く汽笛――そしてやってきたのは、初めて見る金と黒の装飾の車両を先頭に連結したデンライナー。

 ひょっとして……それが、キンタロスさんの?







「オレの……というより、アックスフォームのな!
 とにかく、オレもいくで!」







 良太郎さんと二人で電王・アックスフォームとなったキンタロスさんが答えると、新たな車両が武装を展開。先頭の、まるで角のような大きなブレードに、両サイドの刃を備えた何本ものアーム。

 そのまま、デンライナーは身を起こしたギガンデスに向けて突っ込んで――“組み合った”。

 両サイドのアームを腕に見立てて、ギガンデスと組み合ったんだ。

 そのまま、アームでギガンデスを何度も殴りつけて、仕上げに力任せに投げ飛ばす。







《……オレの気のせいか?
 電車が、ガチの殴り合いをしているように見えるんだが》

「わ、私もそう見えるんですけど……」

《というか……虫?》







 シロくん、それはツッコんじゃダメだと思う。

 とにかく、私達も戦いに参加する。デンライナーと挟み撃ちにする形で、殴り、蹴り、ブッ飛ばす!







「決めるで、嬢ちゃん!」

「はいっ!」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



《フォースチップ、イグニッション!》』







 マスターコンボイと私、そしてシロくんの叫びが交錯し――セイバートロン星のフォースチップが飛来した。そのまま、マスターコンボイのバックパックのチップスロットに飛び込んでいく。

 それに伴い、マスターコンボイの両足と右肩、そして左腕に合体したシロくんの装甲が継ぎ目にそって展開。内部から放熱システムが露出する。







《Full drive mode, set up!》







 そう告げるのはマスターコンボイのメイン制御OS――同時、イグニッションしたフォースチップのエネルギーが全身を駆け巡った。四肢に展開された放熱システムが勢いよく熱風を噴出する。







《Charge up!
 Final break Stand by Ready!》








 再び制御OSが告げる中、私は左拳をかまえ、







「いっけぇっ!」







 思い切り地を蹴った。レッグダッシャーのホイールが唸りを上げ、一直線にギガンデスへと突っ込んでいく。

 そして――











「爆熱――」

《疾走!》




「ナックル、グランド、ストーム!」












 渾身の力で、その左拳をに向けて叩きつけ――はね飛ばす!

 すぐ脇を駆け抜け、急停止した私達の背後で、大地に叩きつけられたギガンデスはなんとか身を起こすけど――











『鉄拳――』

《制裁!》











 私とマスターコンボイ、そしてシロくんの言葉と同時、絶叫と共に巻き起こる大爆発――周囲でくすぶっていた残留エネルギーが大爆発を起こして、ギガンデスは四散、消滅した。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「お疲れさま、ギンガさん、良太郎さん。
 それに……キンタロスさんにワニイマジンも」



 戦いを終えて、デンライナーに戻ってきたギンガさん達にコーヒーを差し出す……ちなみにイマジン組の分はいつも通りナオミさんの作だけど、人間組の分は僕が淹れた。



「今回のきっかけになったリンチ事件についても局に通報しておいたよ。
 これで、少しは摘発も早まるはず。契約者のおにーさんも少しは溜飲が下がるでしょ」



 ひょっとしたら、これで歴史が変わってイマジンと契約せずにすむかも……



「それでも気がすまず、結局イマジンと契約するかもだけどなー」



 ジュンイチさん……そういうことは言うもんじゃないよ。



「ハンッ、人間の抱える恨みの深さナメんな。
 オレ達にとって何でもないようなことでも、一生恨みに思って生きてくヤツだっているんだ」



 あー、こういう話になるととことんひねくれるよねー、ジュンイチさんって。

 まぁ、恨み事云々うんぬんについてはリアル体言者だからしょうがないのかもれないけど。



「さて、ともかく帰りますか。
 ……お前はどうする?」

「『一月後まで乗っていくか?』という意味で言っているなら、遠慮しておこう」



 気を取り直して尋ねるジュンイチさんに、ワニイマジンはそう答えた。



「契約を完了し、過去へと跳んだことでシグナムとのつながりも切れているからな――今のオレはこの時間の住人だ。
 どうせあと一月だ。お前達の“今”に戻るまで、のんびりせてもらう。
 それに……オレなりに、少し追ってみようと思う」



 ? 『追ってみる』って……何を?



「そろそろ現れる時期だからな……オレにとっての一月後、お前達との再会までに、少しは情報を集めておいてやる」



 それって、まさか……



「あぁ」



 うなずいて……ワニイマジンは告げた。











「オレ達をこの世界に導いた、主犯についてな」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ……って、一ヶ月前に言ってたよね?



「む、言ったな」



 うなずくのはもちろんワニイマジン――はい。“今”に戻ってきた直後に現れやがりましたよ、この男。



「で……成果は?」

「ほぼなしだ!」



 ……キッパリと言い切ってくれたよ。



「そもそも、ヤツらはこの世界にオレ達を導くなり足取りがつかめなくなっていたからなぁ。
 聞き込みをしようにも、オレはお前達のように素顔を隠す着ぐるみなど持っていなかったしな。
 いやぁ、これはしたり。はっはっはっ」



 こ、こいつ……所詮はイマジンってこと!? カッコよくキメてるフリして、地の部分けっこうバカだよっ!



「まぁ、安心しろ。
 『“ほぼ”なし』だと言っただろう――少しは収穫はあった」

「何さ?」



 ちなみに僕らも知ってる情報だったらはっ倒すよ? 僕らの期待を裏切った的な罪で。



「レオソルジャーとモールイマジン……わかるか?」



 うん、まぁ。

 イマジン軍団における雑兵要員……ショ○カーで言う戦闘員ポジションの連中だよね?



「ヤツらの何人かを見かけた。
 悪さをするでもなく、探し物をしていた」

「探し物って……?」

「オレも最初はわからなかったんだが……」



 聞き返すはやてに、ワニイマジンはそう前置きした上で、



「何度か見かけるうち、共通点に気づいた。
 ヤツらは、管理局の“古代遺物ロストロギア”研究施設や、そこに出入りするトラックを監視していた」



 って、まさか……



「狙いは、“古代遺物ロストロギア”……!?」

「それも、特定のものに狙いを定めている」



 うめくフェイトに答えて……あれ、いきなり言いにくそうに……?



「実は、その……悪いとは思ったが、荷物のチェック係に取りついて、積荷のリストを見せてもらった」

「な――――っ!?」

「あー、悪事であることは承知している。裁くというなら甘んじて受けよう。
 だが、その前にその結果得た情報を話させてくれ」



 エキサイトしかけたフェイトを、ワニイマジンはそう言ってなだめる。



「少なくとも、ヤツらが監視していたトラックには共通の積荷がいくつかあった。
 その中で、“古代遺物ロストロギア”に指定されていたものはただひとつ……」





















「“レリック”だ」







(第13話に続く)





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



次回、とコ電っ!



「アリゲーターからとって、“ゲータロス”なんてどうですか?」



「おい、青坊主! オレ達もその捜査に一枚かませろ!」



「今回お前らお呼びじゃねぇんだ。さっさと帰れ」

「そう言うな。
 久しぶりの真っ向対決なんだ」



「この数は少々めんどうか……
 やはり、これを借りてきて正解だったな」





第13話「すべて喰らってやる」





「変、身」

《GAOH Form》





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あとがき



Mコンボイ「シグナム・高町がバカをやらかしたせいで始まった今回の騒動がとりあえず終結した第12話だ」

オメガ《まぁ……彼女らしいと言えばらしいですけどね》

Mコンボイ「あんな願いに振り回されたワニイマジンも不憫なことだ。
 『“願い事”らしい』という意味では、リンチにされたアリゲーターイマジンの契約者の方がまだマシだ」

オメガ《いいじゃないですか。
 解決した今となっては、それもひとつの笑い話です》

Mコンボイ「契約を完了して過去に跳んだことで、シグナム・高町とのつながりも切れているからな。
 今のワニイマジンは完全に独立した一個人ということだな」

オメガ《えぇ。ミスタ・ジークと同じですね。
 そして、ミス・シグナムを差し置いて見せ場を奪いまくると》

Mコンボイ「……本当にありそうでシャレになっていないな……」

オメガ《気にしないでいきましょう。ミス・シグナムの出番がなくなってから改めてネタにすればいいんですから。
 それはそうと……またまた姿を見せましたね。通りすがりのあの方が》

Mコンボイ「だな……
 だが、公式設定では確かヤツは……」

オメガ《えぇ。描かれた中では得ていない力を使ってますね。
 しかし、そこはとりあえず、今まで描かれたエピソードの後で手に入れた、という解釈で十分なのでは?》

Mコンボイ「ふむ……それもそうか」

オメガ《むしろ、彼らがどう我々前に姿を現すか、そこを気にしておくべきかと思われますが》

Mコンボイ「作者のヤツも、彼らについてはまた何やら企んでいるようだしな……どうなることやら」

オメガ《まぁ、企んでること自体はいつものことですけどね。
 ……っと。さて、そんなこんなで、そろそろお開きの時間ですね。
 みなさん、今回も読んでくださって、本当にありがとうございました》

Mコンボイ「次回も必ず読むがいい」





(おしまい)





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