[携帯モード] [URL送信]

頂き物の小説
第7話「アンハッピー・バレンタイン」



「……ん……ん〜……」



 その日、オレはいつになく早く目を覚ました。

 部屋に備え付けの時計で時刻を確認する――午前4時か。



「……ヒューマンフォームで寝るのも、目覚めるのも、すっかり慣れたな、我ながら……」



 オレ達トランスフォーマーにとって、睡眠とは自己修復システムやデフラグの効率的な運用のためのものでしかない。

 そういう意味では普通にロボットモードでメンテナンスベッドの中に収まるだけで十分なのだが……恭文達に連れ回されている内にこっちヒューマンフォームで眠ることの方が多くなってしまった。

 トドメが先日の“龍神事件”だ。大賀で世話になった東旅館はトランスフォーマー非対応で常日頃からヒューマンフォームだったからな。アレがヒューマンフォームで眠ることの習慣化へのダメ押しになってしまったようだ。



 ……などと過去を振り返っている間にすっかり目が覚めてしまったのでそのまま起きることにしたワケだが――







「…………ヒマだな」







 それが、約1時間後にオレが抱いた感想だった。



 早く起きた分いろいろやることが前倒しになった。おかげで日課の鍛錬やニュースのチェックを済ませてもなお時間が有り余っている。

 おかげでヒマでしょうがない。誰だ。『早起きは三文の徳』なんて言ったヤツは。こうもヒマだと得を通り越してむしろ苦痛だぞ。



 さて、そうなるとどうしたものか……



「……食堂が開くのを待つか」



 まだ食堂が本日の営業を始めるには時間があるが、食べるスペースに入ることはできる。向こうで朝食時まで備え付けの新聞でも読みながら待たせてもらおうかと思い立ち、食堂に向かうことにした。





















 だが――



「…………む?」



 食堂に入ってすぐ、オレは違和感に気づいた。



 今回のように早い時間からここで待たせてもらうのは今に始まったことではない。何度かこの時間にここへ来たことがある――だからわかる。

 この時間、厨房のスタッフは皆食材の仕込みのために奥の方に引っ込んでいるはずだ。

 ならば……手前の方で何を作っているのは誰だ?



 気になってのぞき込んでみると、そこにいたのは意外な人物だった。



「……何をしている? フェイト・T・高町」

「ひゃうっ!?
 ま、マスターコンボイ!?」



 オレに気づいていなかったのか、フェイト・T・高町は文字通り飛び上がるほど驚いている――まぁ、そこはどうでもいいか。

 問題は……



「こんな時間から何をしている?」

「あ、これは、その……
 ……ま、マスターコンボイこそ、こんな時間にどうしたの?」

「早く目が覚めてしまってな。食堂ここの開店待ちだ。
 ……で、貴様は?」



 こちらへの問いに即答し、すぐさま先の質問をくり返す。ククク、そう簡単にごまかされると思うなよ?



「わ、私は、その……
 ……な、何でもないからっ!」



 しかし、ヤツめ、あっさりと回答を放り出して逃亡してくれた。ごていねいに、作っていた何かも鍋つかみでしっかりと回収して。



 …………何だったんだ?











 ――時の列車、デンライナー。次の停車駅は、過去か未来か――











『とある魔導師と古き鉄と時の電車の彼らの時間』・『とまコン』バージョン



とある魔導師と守護者と時の電車と仮面の戦士達



第7話「アンハッピー・バレンタイン」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 結論から言うと……様子がおかしかったのはフェイト・T・高町だけではなかった。



 なのはや、他の女性隊員の何人かも何やらそわそわしているし……六課隊舎そのものが甘ったるい空気に包まれている。

 ……別に、雰囲気がそういう感じなワケではない。

 物理的に甘いのだ。

 実際に甘味あふれる匂いが、隊舎のそこかしこで漂っている。何なんだ、いったい……



「…………ん?
 どうしたのさ、マスターコンボイ」



 あぁ、恭文か。



「実はな……」



 自分だけで考えていてもしょうがない。とりあえず恭文に軽く事情を説明。



「……あー、そのことね。
 別に気にしなくてもいいよ。単にバレンタインが近いだけだから」



 ばれんたいん……?

 ……前に、何かの話の弾みで誰かから聞いたような……あぁ、思い出した。



「バレンタインというと……あれか?
 女が一日中チョコレートを作り続け、男がそれを食べ続けるという、女の調理技術と男の胃袋との真剣勝負――」

「とりあえず、そんな与太話を教えたのが誰か聞いてもいいかな?」

「柾木ジュンイチだ」

《絶対だまされてますからね。それ》

「何っ!?」

「あー、今正しい説明してあげるから。
 バレンタインっていうのは……」











「ハーピーの冥闘士スペクターだろ?」



「この期に及んで茶々入れないっ!」











 乱入してきた柾木ジュンイチが恭文にしばき倒された。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ったく、マスターコンボイがその手の話題に疎いのをいいことに、いらんこと吹き込むのはやめてもらえませんかね?
 それで尻拭いするのが誰だと思ってるのさ?」

「お前」

「だからやめろって言ってんでしょうがっ!」



 しばき倒したジュンイチさんを正座させて、ちょっとしたお説教タイム。



「だいたい、マスターコンボイに話したような与太話のネタ、どっから仕入れてきたのさ?」

作者モリビトの過去作品」

「うん、その手のネタも慎もうか。いろいろと危険すぎるから」



 ホントに、ネタのためなら手段を選ばない人だなぁ、この人は。



「ところで……恭文」



 ん? 何? マスターコンボイ。

 バレンタインデーの説明なら、ジュンイチさんへのお説教が済んでから……



「いや、モモタロスが……」

「モモタロスさんが?」



 言われて振り向くと、なるほど、モモタロスさんがこっちに……



「おい、お前らっ!」

「ぅおっ!? な、何ですか!?」

「カメと良太郎見なかったか!?」



 え? ウラタロスさんと、良太郎さんですか?



「見てませんけど……」

《何かあったんですか?》

「あのバカガメ! また良太郎の身体使ってナンパに出かけやがった!」



 ……あー……



 まぁ、バレンタイン間近のこの時期なら確かによく釣れるでしょうしねー。



「気にすることないんじゃないのか?
 良太郎が一緒なんだろ? だったらナンパついでに情報収集もちゃんとするだろ。でなきゃ良太郎が怖いし」

「そういう問題じゃねぇよっ!」



 のん気にアクビなんぞかますジュンイチさんに、モモタロスさんが言い返す。



「いつもいつも、どうしてあのカメばっかり!
 イマジン探しならオレだってできるのによぉっ!」

「イマジン探しだけだろ。
 情報収集とか、モモタロスにできるのかよ?」

「………………」



 ジュンイチさんにツッコまれて、モモタロスさんは沈黙して――







「……どこ行きやがった、カメぇっ!」







 あ、逃げた。



「追いかけるか? ケンカなぞされても面倒だろ」



 マスターコンボイはそう言うけど……必要ないでしょ。だって、ホラ。







「あれ? モモタロスさん、どこか行くんですか?」

「あん? 犬っ子か。
 わりぃがお前の相手はしてらんねぇんだ、じゃあな!」

「何かあったんですか?
 何ならあたしも行きますよ?」

「おぅ! 来い来いっ!」







 ……と、ゆーワケでスバルがついてった。ケンカになってもスバルが止めてくれるでしょ。何だかんだでケンカとか嫌いだし。



 んー、しかしアレだね。



「なんつーか、ここ数日のドタバタがウソみたいに平和だよねー」

「かみしめておけ。どうせ束の間の平穏だ」



 …………ジュンイチさん、それ言わないで。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「ねぇねぇ、これなんかよくない?
 ハート型の手作りチョコ!」

「ダメダメ。そういうのは女の子が好きなだけで、男の子には結局引かれちゃうわよ?」

「………………」



 六課の食堂、その厨房――周りで他の女性局員のみなさんが盛り上がっている中、あたし、ティアナ・ランスターは真剣にそれを見ていた。

 とある雑誌の一ページ……うん、バレンタイン特集の記事。







 …………べ、別に、マスターコンボイにどうとか、そういう話じゃないから!

 ただ、あたしも女の子としてこういうイベントには興味があるワケで……うん、それだけの話だからっ!



「……けど、作ってあげたら、もらってくれるかな……?」











「何をもらうの?」



「ぅどわぁぁぁぁぁっ!?」











 いきなりの声に思わずかまえる。クロスミラージュをセットアップ、銃口を向けて――



「ぅわぁっ!?
 ティアちゃん、すとーっぷ!」

「リュウタ!?」



 そう。そこにいたのはリュウタロス――リュウタだった。

 うん、そう呼んでもいいって言うから……というか、以来『リュウタロス』って呼ぶとむしろごねるようになった。

 しかもあたしのことは『ティア』って呼ぶようになったし……うん。どう考えても懐かれてるわよね。この間の事件がきっかけで。



「それでそれで? 何くれるの?」

「別にアンタにあげるワケじゃないわよ。
 ただ、バレンタインのチョコをどうするか、ね……」

「チョコレート!?
 欲しい欲しいっ! ねね、ちょうだい! いいよね!? 答えは聞いてないっ!」

「ちょっ、落ち着きなさいよっ!
 だからアンタにあげるなんて言ってないでしょうがっ!」

「えー?
 じゃあ、誰にあげるの?」

「え゛…………」



 リュウタにツッコまれて、思わず言葉に詰まる。

 ど、どうしよう……マスターコンボイにあげる、なんて言おうものなら、今すぐにでもマスターコンボイのところまで突撃しかねないわ――











「お前達、何をしている!?」











 その時、鋭い声が厨房に響き渡った。

 一体何事――って!?



「イクトさん!?」

「む、ランスターもいたか。
 まったく、どいつもこいつも……ほらそこ、手を止めろ」



 そう。声を上げたのはイクトさん。っていうか……



「また似合わない話題に絡んできましたねー……」

「厨房でこれだけ騒いでいればイヤでも気になる。
 とにかくお前達、一度作業を止めろ」



 答えて、イクトさんは改めてみんなのチョコレート作りをやめさせる。

 けど、何のつもり……?



「そんなものは決まっている。
 いくらバレンタインデーと、手作りをプレゼントしたいと言っても、それで好き勝手やられても困るんだ」



 そう言うと、イクトさんは息をついて――











「いいか、チョコレートを作る上で注意しなくてはならないのはな……」



『チョコ作り講座始めちゃった!?』











 え、何!? まさか『好き勝手やられても困る』ってレシピ的な問題!?



「当然だ。
 どんなチョコレートにするにせよ、それが“チョコレート”である以上気をつけなければならない点はさほど変わらない。まずはそこを押さえてもらわないとな。
 でないと……」







「あ、アリシアちゃん!? なんであたしはチョコ作っちゃダメなのかな!?」

「それでヴァイスくん撃墜されても困るからだよっ!」

「そ、そんなことしないよっ!?」

「前科があるのに信用できるもんですかっ!」

「ぅわーんっ!」







「…………あぁなるからな」

『あぁ……』



 向こうで、アリシアさんにバインドかまされて引きずられていくあずささんの姿に、その場の女子全員が納得した。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ……くそっ、あれから一年か……

 よりによって、あの日にあんなことになるなんてな……



「…………ぐっ!?」



 な、何? 何だ、今のは!?

 何かが、オレの中に入ってきたような……



《お前の願いを言え》



 ――――っ!?



《どんな願いも叶えてやる。
 お前の払う代償はたったひとつ……》





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「じゃあ、私達はここで」

「ばいばーい♪」

「えぇ、また」



 手を振る女の子達に答えて、彼女達を見送る……いやぁ、楽しい一時だったね。



〔ウラタロス……〕



 そんな疲れたような声を出さないでよ、良太郎。ちゃんと情報収集もしてるじゃないのさ。



〔でも、そのために女の子に顔近づけたり肩を抱き寄せたり……もう、恥ずかしくて恥ずかしくて……〕



 うん、相変わらず純情だね。これで本格的に彼女とかできたらちゃんとお付き合いできるのか心配だよ。



「さて、それはともかく、次行ってみようか♪」

〔ま、まだ行くの〜っ!?〕



 気にしない気にしない。さぁて……



 パッパーッ!



「良太郎さん!」



 …………ん?

 いきなりクラクションと共に声をかけられて、振り向いた先には一台の、緑色のクレーン車。そして、その運転席に座っていたのは――



「あぁ、つかさちゃん、どうも♪
 ……あと、エリオくんとアイゼンアンカーもね」

「なんで声かけたボクよりもつかささんの方に真っ先に目がいくの!?」

「おっと、これは失敬」



 クレーン車の運転席で声を上げるエリオくんに答える……って、ひょっとしてキミが運転を?



「そんなワケないでしょ。
 エリオはまだ10歳だよ。なのに免許を取るなんてめんどくさいことできるワケないでしょ」



 そう答えたのはアイゼンアンカー。ビークルモードで、つかさちゃんとエリオくんを乗せたまま告げる……話すのにあわせてヘッドランプが明滅するのは仕様なのかな?



「わかりやすくていいでしょ?
 トランスフォーム!」



 答えて、クレーン車……の荷台に積まれていた小型クレーンが人型に変形。そういえばキミだけ本体は人間サイズなんだっけね。

 で……このクレーン車はキミがコントロールしてた、と。



「……ふーん。
 髪に青いメッシュ。で、メガネ……なるほど、ウラタロスか」



 ……そして、頭のキレもそれなりに。ってところか。



「大正解。
 それで? キミ達も聞き込み?」

「あ、いえ……違うんです」



 ……って、なんでつかさちゃんが答えるのかな?



「えっと……私がエリオくんにお願いして……」







「ちょっと、“お迎え”に」






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ウラタロスが離れてくれて、とりあえず自由になったボクは、エリオくん達に誘われる形で一緒についていくことになった。

 あー、ちなみにボクから離れたウラタロスは着ぐるみを着込んでる。出先でボクらと出会った時用に、って外に出るみんなに一着ずつ手渡されていたんだって。







 そうしてやってきたのは、郊外にあるとても大きな教会だった。

 えっと、ここって……



「聖王教会の大聖堂です。
 あ、聖王教会っていうのは……」



 答えて、エリオくんが説明してくれたところによると……聖王教会っていうのはこの世界の大きな宗教のひとつで、管理局の運営にも大きな影響力を持ってるんだとか。



「らしいね。
 やれやれ、政教分離の原則はどこ行ったんだか」



 ウラタロス……それはボクらの世界の原則だから、こっちの世界の人達にも当てはまるとは限らないんじゃ……



「ところで……ここにいったい、何の用があったの?」

「それは……」



 ボクの質問につかさちゃんが答えようとした、その時だった。



「ぅわぁっ!?」



 いきなり、ウラタロスが吹っ飛んだ……ペンギンの着ぐるみを着たまま、実に数メートルも吹っ飛ばされる。



 ……って、のん気に見てる場合じゃないっ!



「ウラタロス!?」



 あわててウラタロスに駆け寄ろうとするけど……



「危険です、下がってください!」



 そんなボクを止めたのは、この教会の人らしいひとりの女の人だった。

 その手には、トンファーのような形のブレードが……まさか、これでウラタロスを殴り飛ばしたの!?



「いいから、下がってください!」



 もう一度ボクを止めると、女の人は改めてウラタロスへと向き直って、



「怪しいヤツめ! この聖王教会に何の用です!
 あなたのような不届き者は、このシャッハ・ヌエラが容赦しません!」



 あぁ、この人、シャッハさんっていうのか……って、そうじゃなくて!

 もしかして……ウラタロス、不審者と思われてる!?



「や、やめてください!
 この人はボクの仲間で……そんな怪しい人じゃありませんから!」

「素顔も見せず、こんな着ぐるみで大聖堂に現れるような者が怪しくないと!?」



 あぁ、いや、それを言われたら確かにそうですけど……



「どうしても怪しくないと言うのでしたら、素顔を見せなさい、素顔を!」

「いいんですか?
 じゃあ、お言葉に甘えちゃいますけど……」



 って、ウラタロス!?

 止める間もなく、ウラタロスは着ぐるみの頭を外して――シャッハさんがウラタロスの素顔を見て息を呑んだ。



「驚かせてごめんなさい。
 このような見た目ですから、あなたのような美しい女性を怖がらせてはいけないと思い、あんな着ぐるみゃぶっ!?」



 ウラタロス――っ!?



「おのれ、やはり瘴魔獣でしたか!
 この私の目が黒い内は、この聖王教会で好き勝手はやらせません!」



 説明し終わるよりも早くウラタロスが殴り倒された。そのままシャッハさんはウラタロスの上に馬乗りになって、マウントポジションでひたすら殴る……って、待って待ってーっ!



「し、シスターシャッハ、落ち着いてくださいっ!
 この人、ホントに悪人じゃないですから!」

「そ、そうですよ!
 それにシャッハさん、『私の目が黒い内は』って、シャッハさんの瞳は元々黒色じゃないですよ!?」

「そういう問題じゃないですよ、つかささん!?」





















「申しわけありませんっ!」



 あの後、エリオくんとつかさちゃんの説得でシャッハさんはようやく止まってくれた。

 面会者用の待合室でぐったりしているウラタロスに対して、シャッハさんが申し訳なさそうに頭を下げる。



「機動六課に協力してくださっている方とはつゆ知らず、大変なご無礼を……」

「き、気にしないでください……
 あなたのような美しい女性を怖がらせないためとはいえ、あんな着ぐるみを選んだのはボクなんですから……」



 さらに謝るシャッハさんに、グッタリしてソファに横になっているウラタロスが答える……そんなになってもナンパするのは忘れないんだね……



「それがボクだよ、良太郎。
 けど、ボクとしたことが、釣ろうとした魚にかみつかれるとはね……」







「気にしないでください」







 ……って、え?



「シャッハはマジメなのはいいんだけど、それがすぎて少し早とちりするところがあるから……
 今回のことはこちらの落ち度です。私からもお詫びいたします」



 言って現れたは金髪の、とても落ち着いた様子の女の人……あの、どちら様ですか……?



「初めまして。
 私は、この大聖堂と教会騎士団の管理を任されています、カリム・グラシアといいます。
 今回はうちのシャッハが大変なご迷惑を……ほら、シャッハ」

「も、申し訳ありません……」

「そ、そんなに何度も謝らないでください……もう気にしてませんから……」



 カリムさんと、彼女に促されてもう一度頭を下げるシャッハさんに答えて――



「もちろんです!」



 って、ウラタロス!? もう起きて大丈夫なの!?



「あなた達のような美しい方からの心からの謝罪を受けて、許すことのできない人なんているはずがありませんよ。
 ですから、もう気にしないでください。そんな沈んだ顔をされては、せっかくの美しさがかすんでしまいます」

「ウフフ、お上手ですね。
 では、この話はこれで終わり、ということで」



 あ、あっさり復活してナンパするウラタロスもすごいけど……この人もすごい。女の人の扱いに関しては百戦錬磨のウラタロスをあっさりと受け流した。



「ま、騎士カリムはここのお偉いさんだからね。いろんな人との面会なんてめんどくさい仕事を毎日のようにこなしてるから」



 あぁ、なるほど。ほめられ慣れてるのか。

 アイゼンアンカーの説明に納得して――あれ、カリムさん? ボクの方を見て、どうしたんですか?



「あなた達については、はやてから聞いてます。
 違う世界の私達のために……本当にありがとうごさざいます」

「い、いえ……
 ボクはただ、できることをしてるだけですから……」



 うぅ、ボクの方はダメだな。カリムさんに頭を下げられて……すごく落ち着かない。



「そ、それより……エリオくん、つかさちゃん。
 ここに来た用事」

「あ、はい」

「う、うん」



 あんまり落ち着かないから……エリオくん達に話を振った。うなずいた二人の内、つかさちゃんがカリムさんの前に出て、



「あの、カリムさん……
 ヴェルは、元気にしてますか?」

「えぇ。
 ウミやカイと一緒に、元気にしているわ」



 ……ヴェル? ウミ? カイ?





















「みぃっ!?
 みーっ! みーっ!」



 案内されたは、大聖堂の中庭……そこに、その子達はいた。

 ボクらの腰くらいの背丈の大きなヒヨコに……何だろう。図鑑で見たことのあるトリケラトプスに似てるけど……

 とにかく、そのトリケラトプスみたいな生き物の子供がこっちに気づいた。うれしそうに鳴き声を上げて、こっちに向けて駆けてくる。



「ヴェル! 久しぶり!」

「みぃっ!」



 それに対して、つかさちゃんも笑顔で応じた。足元にすり寄ってくるその子の頭をなでてあげる。



「えっと……エリオくん、あの子は……?」

「ヴェルファイア……ボクらはヴェルって呼んでます。
 前にある事件で保護した、地竜の子供です」



 そうなんだ……



「ぴぃっ!」

「ぴぴぃっ!」



 続けてやってくるのは二羽の大きなヒヨコ達。

 こっちの子達はエリオくんやカリムさんの方にじゃれついてきた。つかさちゃんがヴェルにしてあげているみたいにその頭をなでてあげながら、二人が紹介してくれる。



「それで……この子達がウミとカイ。
 キャロのパートナーのシャープエッジが保護してた子達で……“JS事件”が終わった後、隊舎の再建まで、と預かってもらっていたんですけど……」

「思いのほか、ここを訪れる子供達に人気が出てしまいまして……
 その子達にお願いされた私とはやてが、つかささんやシャープエッジに許しをもらって、ヴェルは滞在の延長、一度は六課に戻ったウミとカイにもまたこちらに滞在してもらうことになっていたんです」

「じゃあ……その滞在期間が終わりだとか? だから迎えに?」

「それもあるんですけど……ヴェルについては、ボクらと一緒に戦う仲間でもあるんです。
 今回つかささんも協力してくれますから、ひょっとしたらヴェルの力も必要になるかも、という話になって……」



 …………? ヴェルも、みんなと一緒に戦えるってこと? こんな子供なのに……

 それに、『つかさちゃんがいるから』って? つかさちゃんとヴェルって、いったいどういう関係なの?



「それは……」







〈つかさ! エリオ!〉







 って、え……?

 通信してきたのはかがみちゃん。

 まさか……また事件? イマジンが出たの?



〈良太郎さん達もいるの!?
 ……あ、いや、イマジンじゃなくて……〉











〈ネズミが出たの〉











 ……ネズミ?






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ちょっ、何なのよ、コイツら!?」

「あっちからもこっちからも!?」

「一体、どこからこんな……!?」



 ティアナやかがみ、ジャックプライムの言葉に私も同感。



 だって……ありえない。

 通報を受けて市街に出てみたら……











 商店街が、ネズミの群れで埋め尽くされてるんだもの。











 おかげで商店街は大騒ぎ。それぞれのお店の人達はもちろん、通報によって駆けつけた私達とは別部隊の一般局員も総出で対応にあたってるけど、正直まったく追いついていない。



「く……っ! 一気に薙ぎ払えれば楽なものをっ!」



 うめいて、イクトさんが炎を放つ。解き放たれた青い炎が、通りにあふれかえっていたネズミ達を焼き払う。

 そう――炎を見てもまったく逃げ出す様子のなかったネズミ達を



「そう思うんなら、狙って当てられるようになりやがれっ!」



 ジュンイチさんも炎の弾丸で店の中を駆け回るネズミを一匹一匹確実に撃ち抜いていく。けど――やっぱりネズミ達は炎を恐れていない。



「それだけじゃないよ、フェイト」



 ヤスフミ……?



「このネズミ達……こんな商店街のド真ん中に現れたっていうのに、肉屋さんも八百屋さんも関係なしに走り回ってるだけ……
 肉はもちろん、野菜にもまるで反応してない」



 どういうこと……?



「何かに操られている……そう考えるべきだろう」



 そう答えて、マスターコンボイが近場のネズミをオメガで払いながら合流してくる。



「どういうこと?
 このネズミ達が操られてる、って……何のために?」

「そんなの、この段階でわかるワケがないだろう。
 だが、炎を恐れないことといい食料には目もくれていないことといい、このネズミ達を野生のそれと思えというのはムリがありすぎるだろう」

「それは、まぁ……そうだけど……」

「なら、操られているか、そういうふうにいじられたか……そう考えるべきだ。
 そして、オレの考えている通りなら……おそらくは前者。このネズミ達は操られている可能性が高い」



 『可能性が高い』と言うけれど、マスターコンボイのその口調には迷いがない。

 まさか、マスターコンボイ……操っている犯人に心あたりがある……?



「特定人物に絞り込んでいるワケじゃないがな。
 おそらくは……イマジンだ」

「えぇっ!?
 イマジンって……でも、モモタロスさんは何も……」

「イマジンは人についた状態でも、ある程度は能力を使える。
 たとえば、ミッドで起きているイマジン事件だ……取りつかれた人間が能力者ばりに暴れ回るのもそうだし、野上良太郎に取りついたリュウタロスが催眠術でリュウタロスダンサーズを操ることができるのもそれだ。
 モモタロスは、柾木ジュンイチの気配察知と同様に人についた状態のイマジンの臭いは感知できないのだろう?
 もし、イマジンが取りついた人間の中から出てくることなくネズミを操っているのだとしたら……」



 そう言うと、マスターコンボイはヤスフミを見て、



「恭文。
 イマジン達は、取りついた人間の中の、物語に登場するキャラクターのイメージを元に姿や能力を得るんだったな?」

「え? う、うん、基本的には……」

「それも根拠のひとつだ。
 ネズミを操る……そんな能力をイマジンに反映させてしまいそうな物語に、心あたりがある」



 え…………?



 そんなお話、あったっけ……?











 …………あ。











 あった。

 地球の物語で……今ではミッドにも伝わってる。



 それは――







『「ハーメルンの笛吹き男」!』







「そうだ。
 あの話にちなんで、イマジンにネズミを操る能力が備わったとしたら……」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 くくく……順調だな。

 ビルの上から見下ろした商店街は大騒ぎ。管理局とやらまで出てきているが……フンッ、あの数をどうにかできるものか。



 契約者の願いを聞いた時には、なんてアホな願いだと呆れたものだが……ヤツの持っていたイメージがよかった。おかげで便利な能力まで手に入れられた。

 この能力なら契約の完了もたやすい。さらにヤツらの目も引けて……







「ところが、そう簡単にはいかないんだよねー」







「何っ!?」



 いきなり声をかけられ、振り向くとそこには……バカな!? 電王一味に管理局だと!?



「そういうこと。
 ずいぶんと好き勝手してくれたみたいだね」

「バカな……どうしてここが!?」

「キミがネズミ達を操ってるのかもしれないって聞いて、ピンと来たのさ」



 声を上げるオレに、電王一派のイマジン、亀のヤツが答える。



「どういう方法でやってるのかは知らないけど、キミが操ってるんだとしたら、キミは指示を出すために状況を把握する必要がある。
 とすれば、商店街を見渡せる位置にいると考えるのが自然だよね。
 水のいいところに魚は集まる。釣りをするなら、ポイント選びから考えていかないとね」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 すごい……本当にいた。

 ウラタロスさんが「ここにいる」っていきなり言い出した時には驚いたけど……



 かがみさんからの連絡をを受けて、ボクらはすぐにヴェルやカイ、ウミを連れて戻ってきた。

 その足で現場の商店街に向かったんだけど、そこはもう、一面ネズミだらけで……

 そしたら、フェイトさんからこの騒ぎがイマジンの仕業かもしれないって状況報告が入って……それを聞いたウラタロスさんがここを一発で言い当てたんだ。




 とにかく、今はイマジンを倒さないと……意識を切り替えてボクは目の前の男性を、その身体を乗っ取っているイマジンをにらみつける。



「じゃ、いこうか、良太郎」

「うん」



 良太郎さん達もそれは同じ。ウラタロスさんにうなずいて、良太郎さんが腰にベルトを巻いて、







「変身」



《Rod Form》







 電王に変身。ウラタロスさんが良太郎さんについて、青い電王……電王ロッドフォームになる。



「お前、ボクに釣られてみる?」

「お前が釣られてろ、亀の分際でっ!」



 言い返して、男の身体から砂が吹き出す――それはすぐに形を成して、ネズミをモチーフにしたイマジンを形作る。



「フンッ、わざわざ出てきてくれたね。
 契約者の身体から追い出す、なんてめんどくさいマネしなくてよくなったのは、正直ありがたいね」



 そう言うのはマイクロンモードのアイゼンアンカー。イマジンに向けて踏み出すけど――



「あぁ、いいよ、キミ達は」



 言って、ウラタロスさんがそのさらに前に出た。



「アイツの相手はボクらがするからさ、キミ達はアイツが逃げられないように包囲しててくれる?」

「え? でも……」

「いいからいいから。
 じゃ、頼んだよっ!」



 言って、ウラタロスさんはボクにかまわずイマジンへ……あぁ、もう!



「つかささん、恭文達に知らせて!
 この近くでネズミの駆除をしてるはずだからっ!」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「待て待てぇっ! わ〜いっ!」

「あーっ、くそっ! リュウタはいいよな! 楽しそうでよぉっ!」



 リュウタが楽しそうにネズミを追い回しているのを見て、モモタロスさんが文句を言いながら買い物カゴを足元にかぶせて、そこにいたネズミ数匹を捕まえる。



「あきらめい、モモの字!
 イマジンならともかく、動物相手でリュウタは役に立たへん!」

「わかってるけどよぉっ!
 こっちが必死にやってる時にあんな遊ばれるとムカつくんだよ!」



 キンタロスさんがなだめるけど、モモタロスさんは収まらない……まぁ、気持ちはわかりますけど、リュウタですし……



「ったく、いくら退治してもキリがないわ!」



 僕のすぐそばに着地して、かがみがうめく――自分の拳銃型デバイス、クーガーを撃ちまくり、足元のネズミを次々に気絶させていく。



「つかさがいてくれれば、こんなネズミなんて楽勝なのに!」



 って、何? つかさがいれば、このネズミがどうにかなるっての?



「そういえば、ヤスフミには言ってなかったね」



 フェイトもなんかわかってるっぽいし、いったいつかさが何だってのさ?



「つかさは動物との意思疎通に優れた召喚系術者――“獣使いビーストマスター”なの。
 あの子がいてくれれば、このネズミの群れもどうにかできると思うんだけど……」



 へぇ、あのおっとりしたつかさがねぇ。

 人間誰にでも得手不得手はあるんだね。



〈お姉ちゃん、恭文くん!〉



 ……っと、ウワサをすれば何とやら。そのつかさから通信だ。



「アンタねぇっ! どこで何やってるのよ!?
 もうクラナガンに戻ってる頃でしょう!? まさかネズミが怖いとか言わないわよね!?」

〈そ、そうじゃなくて……良太郎さんとウラタロスさんがイマジンと!〉

『えぇっ!?』



 そのつかさの言葉に、僕やかがみ、フェイト……近くでネズミの相手をしていた全員の視線がモモタロスさんに向く……あの、モモタロスさん?



「あん!? 何だってんだよっ!?
 ……って、イマジンの臭いがしやがるっ!?」

「今気づいたんですか!?」

「わ、わりぃっ! こっちに夢中で気づかなかった!」



 まぁ、必死でしたしね……



「それでつかさ、イマジンの数は!?」

〈ひとりだけだよ、お姉ちゃん!
 今、良太郎さん達が戦ってて、私達はイマジンが……逃げ、ない……よう…………に……〉



 ――あれ? つかさ?



「つかさ!? どうしたのよ!?
 返事しなさい! つかさ!?」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「でやぁっ!」







 振るったデンガッシャーがネズミのイマジンの胸を打ち据え、吹っ飛ばす――いや、浅いね。とっさに後ろに跳ばれて、衝撃を逃がされた。

 まったく、チョコマカとうっとうしいね。けど……







「だったら、動きを止めるまでっ!」











《Full Charge》











 パスをベルトにかざしてフルチャージ。エネルギーの流し込まれたデンガッシャーをイマジンに投げつける。

 狙い通りデンガッシャーはイマジンに命中るオーラキャストに変化してその動きを封じ込める。

 あとは――トドメっ!







「てやぁぁぁぁぁっ!」







 イマジンに向けて跳んで、デンライダーキック。これが決まれば終わりだ!

 そのまま、ボクの蹴りはイマジンへと迫り――





















 ――つかさちゃんが、その前に割って入ってきた。





















〔ウラタロス!〕

「ぅわぁっ!?」







 とっさに足を蹴り上げ、空中でわざとバランスを崩すことで蹴りを止める――おかげで背中から地面に落下した。あー、痛い……







〔つかさちゃん、なんで……!?〕

「危ないから下がっt――ぅわぁっ!?」







 言いかけたところで、横からの衝撃を受けて吹っ飛ぶ。

 まさか、新手のイマジン――って!?







〔エリオくん!?〕

「ちょっとちょっと、どうなってるの? これ……」







 そう。今攻撃してきたのは槍をかまえたエリオくん。でも、どうして……?







〔……ひょっとして〕

「良太郎? 何かわかったの?」

〔あのイマジンの元になったかもしれない、『ハーメルンの笛吹き男』の話を思い出したんだ。
 ネズミの大量発生に困った街を、ひとりの笛吹き男が救うお話……笛吹き男は、笛でネズミを操って、川に誘い込むことで集団自殺に導いて街を救った……〕







 うん。そうだね。そういう話だってさっき話してたね。







〔けど、問題はその後。
 街の人達は、約束していた報酬を笛吹き男に出さなかった。
 そこで、怒った笛吹き男は、その笛で今度は子供達を操って連れ去ってしまった……〕







 ――って、まさか!?







「アイツ……ネズミだけじゃなくて、人間も操れるってこと!?」







 って言ってる間に、槍をかまえたエリオくんが突っ込んできて――ぅわっ、危なっ!?







「エリオ、何やってんの!?
 めんどくさいからやめてよね!」







 アイゼンアンカーも止めようとするけど――ダメだ。エリオくんの方が速い!

 あっさりとかいくぐられて、アイゼンアンカーが逆にエリオくんの槍で弾き飛ばされる――あぁ、もうっ! 完璧に操られちゃってるよ、この子っ!







〔ウラタロス!〕

「わかってる!」







 『傷つけずに止めろ』って言うんでしょ!?







「けど……それ、相当に難しいよ!
 ――こっちはともかくっ!」







 エリオくんの槍をかわすと、イマジンの楯になっているつかさちゃんのところへ。

 その首筋に手刀を一発。意識を失って崩れ落ちるつかさちゃんの身体を抱きとめ、地面に横たえる……とりあえずつかさちゃんはこれでよし――







「――ぅわぁっ!?」







 けど、こっちへの反応は間に合わなかった。エリオくんの槍を背中に喰らってつんのめる。

 なんとか、つかさちゃんの上に倒れ込むのは避けたけど……速すぎるんだよ、この子っ!

 パートナーのアイゼンアンカーにあっさり手を上げるくらいだしね……自分で元に戻ってもらう、っていうのは、ちょっと期待できないよね……

 次々に繰り出されるエリオくんの槍をデンガッシャーで弾く。本気でシャレになってないよ!



 どうしたらこの子を止められるって……











 …………ん?











 待てよ……

 エリオくんとつかさちゃんを操って、ボクらにぶつけてきた……けど、それならどうして……?

 考えられる原因は……

 だとしたら……これで答えは出るはずだっ!







〔ウラタロス……?〕

「良太郎」

〔な、何……?〕

「ごめん、ちょっと抜けるけど……後は先輩達呼ぶなり何なりして、どうにかしてくれるかな?」

〔えぇっ!?〕

「それからもうひと……つっ!」







 大きくデンガッシャーを振るって、エリオくんを後退させる。







「自分と、つかさちゃん達との違いを考えてみて」

〔どういうこと?〕

「まだ、カンの域を出てない話だからね! これ以上は言えないよっ!
 けど、それがきっとヒントになるはず!」







 再び突っ込んできたエリオくんの槍をさばいて、追撃の横薙ぎもかわす。

 さて、良太郎にヒントは託したし、後はどう“飛び込む”か、なんだけど……ぐっ!

 エリオくんの槍が胸のプロテクターに打ち込まれる――本気で強い、というか、上手いね、この子。

 さて……止めますかっ!

 大振りになったエリオ君の槍をバックステップで避け、すかさず前に出る。

 そのままデンガッシャーで一撃……といきたいけど、エリオくんも槍を引き戻してそれを受け止める。

 当然、エリオくんはそこから後退して離れようとする――そのまま押し合いになんてなったら、いくらボクや良太郎が文系だからって、子供のエリオくんには勝ち目ないしね。こっちは変身してるし。

 でも、ボクも離れようとするエリオくんを追いかける。結果、お互いの距離は変わらず、デンガッシャーと槍を打ち合わせた、あの体勢のまま。







「それじゃあ、良太郎! 後よろしく!」

〔ウラタロス!?〕







 言って、ボクは――







 良太郎の身体から離れた。







「えぇっ!?」

 身体の主導権を取り戻した良太郎の声と、電王としての姿がロッドフォームからプラットフォームに戻る音、それらを聞きながら、ボクは――





















 エリオくんの身体に、飛び込んだ。







(第8話に続く)





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



次回、とコ電っ!



「そんな……
 エリオは、エリオは大丈夫なんですか!?」



「やはりそうか。
 貴様……」



「さすがのオレだって、ここで出ていくほど野暮じゃねぇよ」



「ウソはついても裏切りはしない。
 それが……」



第8話「釣り師のプライド」



「まだ、ボクらを釣ってくれたお返しをしてないからね」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あとがき



Mコンボイ「エリオと共にスポットが当たったのはウラタロスだった……という第7話だな」

オメガ《長物使いつながり、ですね》

Mコンボイ「あぁ。ティアナ・ランスターとリュウタロス同様、得物のスタイルつながりのコンビだな」

オメガ《ノリ的には正反対なんですけどね。
 ミスタ・ウラタロスのあのノリはミスタ・エリオにはマネできないでしょう》

Mコンボイ「そうだな……
 しかし、正反対ゆえにぶつかるかと思ったが、そうでもなかったな」

オメガ《最初はそうだったらしいんですけど、むしろ意図的にその流れをボツにしたとか。
 ミスタ・エリオはまだ10歳ですからね。育ちが育ちなせいでしっかりした子として描かれていますが、本来ならまだまだ性格の形成のためにいろいろな情報をスポンジのように吸収している時期です。
 ミスタ・ウラタロスのノリ嫌悪感を抱くよりも前にまず『こういう人間もいる』と知る段階だろう、むしろ周りがエリオへの悪影響を心配するくらいじゃないだろうか、と作者は判断したようです》

Mコンボイ「……オレにはよくわからんが、そういうものなのか?」

オメガ《そういうものなんですよ。
 まぁ、ボスはミスタ・エリオと同じでそういうことを知っていく段階ですから、わからなくてもムリはないですが》

Mコンボイ「待て。それは何か? オレがガキだとでも?」

オメガ《強いて言うなら、ガキ大将でしょうかね。
 ……っと。さて、そんなこんなで、そろそろお開きの時間ですね。
 みなさん、今回も読んでくださって、本当にありがとうございました》

Mコンボイ「次回も必ず読むがいい」





(おしまい)






[*前へ][次へ#]

7/40ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!