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頂き物の小説
第4話「スバル、参上!」



「どわぁぁぁぁぁっ!?」



 人間だってのはわかってるんだ……わかっちゃいるんだよ。



 けど、つい身体が反応しちまった。



 戦いの中でブッ飛ばされてきた犬っ子を思わず放り出して距離をとっちまった。



 くそっ、戦いの真っ最中だってのに……って、ヤベぇっ!?



 俺が放り出しちまった犬っ子のヤツが、亀イマジン二体に狙われてやがる!



 あのままじゃまともにくらっちまう――











 ――俺に、放り投げられたせいで。











「……くそっ!」



 俺のせいで、アイツがやられるだぁ!? 冗談じゃねぇっ!



「良太郎!」

〔大丈夫! 行って!〕

「すまねぇ!」



 良太郎に一言わびを入れて、俺は全速力で突っ走り――











「危ねぇっ!」











 犬っ子の楯になって、亀イマジンの攻撃を浴びていた。











 ――時の列車、デンライナー。次の停車駅は、過去か未来か――











『とある魔導師と古き鉄と時の電車の彼らの時間』・『とまコン』バージョン



とある魔導師と守護者と時の電車と仮面の戦士達



第4話「スバル、参上!」






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ぅぉあぁぁぁぁぁっ!」







 クソガメ二匹の攻撃を受けて、良太郎とモモタロスが吹っ飛ばされる――あの野郎っ!







「よくもっ!」







 オレの脇を駆け抜け、恭文がクソガメどもに向けて飛ぶけど、







「行かせるか!」







 その前にクソコウモリが回り込む――えぇい、うっとうしいっ!







「恭文、行けっ!」



「ありがとっ!」







 オレがクソコウモリの真下に回り込み上空に向けて蹴り上げる。そのスキに、恭文は一瞬足止めされただけで改めてクソガメの元へと向かう。







「おのれぇ……やってくれたな!」



「そのセリフは……オレがあのクソガメ二匹に言いてぇよ!」







 上空で体勢を立て直すクソコウモリに答えて炎を巻き起こす――モモタロスと良太郎が気になる。速攻でつぶさせてもらうぞ!







「オォォォォォッ!」







 全壊で炎を燃やし、爆天剣の刀身に集める――“装重甲メタル・ブレスト”なしじゃ、大技のほとんどは使えないけど、関係ない。







「フルパワーでぶちかませば……ただの技でも必殺じゃあっ!」







 言い放ち、思い切り爆天剣を振るう――袈裟斬りに振るった刃から解き放たれた炎は一瞬でクソコウモリを飲み込み、断末魔すら許さず吹っ飛ばした。



 うし、一体撃破ぁっ!



 次は――











「あ゛ぁぁぁぁぁっ!」











 ――――スバル!?







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 モモタロスさんと、良太郎さんが……二人がひとつになった電王が吹っ飛んだ。



 攻撃をくらいそうになった、あたしの楯になって。



「バ〜カ〜な〜ヤ〜ツ〜だ〜」

「ほっときゃいいのに、代わりに自分がくらいやがった」



 すぐそばに倒れるモモタロスさん達を、二体のイマジンが笑う……違う。



 モモタロスさん、あたしのことをすごく怖がってた。



 食堂車でもギリギリまであたしから離れて、さっきも戦いの真っ最中だっていうのに敵よりもあたしから逃げちゃった。







 それでも……正気に返るなり、あたしのことを守ってくれた。







 そんなモモタロスさんを、こいつら……っ!







「取り消せ……っ!」







 気づけば、あたしはその場に立ち上がり、イマジン達をにらみつけていた。







「モモタロスさん達は、バカなんかじゃないっ!」



「はっ! バカだからバカって言ったんだよ!」

「そ〜い〜つ〜ら〜、バ〜カ〜」







 ――――――っ!





















「黙れぇぇぇぇぇっ!」





















 コイツら……許さないっ!







 渾身の魔力を目の前に集め、魔力スフィアを作り出す。







 イマジン達に向けて、そのスフィアを……思い切り、殴りつける!





















「あ゛ぁぁぁぁぁっ!」





















 閃光が視界を覆い尽くす。全力で放ったディバインバスターは、亀のイマジン二体を飲み込んで――







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 衝撃が過ぎ去った後、そこに立っていたのはスバルただひとりだった。

 モモタロスさん達は倒れたまま。イマジン達の姿はない……仕留めたのかどうか、ちょっと判断つかない。







「……逃げられたな」







 ジュンイチさん?



「頭に血が上ってたんだろうな……スバルの狙いが大雑把すぎたんだ。
 おかげで魔力も拡散して……ヒットはしてるだろうが、致命傷には至ってないはずだ」



 そう、ですか……



 ってことは、スバルのディバインバスターに紛れて離脱した……そんなところだろうね。



「こっちもだ」

「マスターコンボイ……って、まさか、そっちも?」

「あぁ。
 今のスバルの一撃で起きた土煙に紛れて逃げられた」

「仕留めたのは、ジュンイチさんが倒したバットイマジンだけってことか……」

「…………くそっ」



 マスターコンボイと僕のやりとりに舌打ちして、ジュンイチさんは舞空術モドキで空へ。

 周囲を見回してる……イマジンを探してるんだろうけど、やがてため息まじりに降りてきた。



「えっと……ダメ、だった?」

「あぁ。それらしい気配はねぇな……
 戦ってる間は普通に気配はあったから、感じられないってことはないと思う。気配を消せるのか普段の出力が人並みで、パンピーどもの気配に紛れちまったのか……そんなトコだろ。
 それより……」



 合流してきたこなたに答えると、ジュンイチさんはそちらを見た。



 頭を振りながら立ち上がるモモタロスさんと、自分のディバインバスターの破壊痕を放心したまま見つめるスバル。



「正直、オレはあっちのフォローの方がよほど頭が痛いよ」

「……ですよね……」



 はぁ……モモタロスさんの犬嫌いが、まさかスバルにまで波及するとは……



 モモタロスさんはともかく……スバルの方が尾を引きそうだよなぁ、これ……





















 ……予感的中。



「……ごめんなさい」



 とりあえずデンライナーに戻ったものの、僕の予想通りスバルは凹みに凹んでいた。



「スバルさんが謝ることないですよ。
 悪いのは全部バカモモなんですから……ほら、アンタもあやまんなさいよ!」

「お、おぅ……悪かったな……」



 ハナさんに言われて、モモタロスさんが頭を下げる――ただし、相変わらず思いっきり距離をとった状態で。



「まぁ、そこはお互いさまってことにしとこうぜ。
 スバルにも落ち度があったのは事実だ。そもそもクソガメが分裂した時にコイツがスキを見せたところから、連鎖的にパニックにつながったワケだし」

「それを言ったら、ボクらだってスバルちゃんのフォロー、できなかったし……」



 肩をすくめるジュンイチさんに答えるのは良太郎さん。現在ギンガさんによる手当ての最中です。



「そう言うな。オレも見通しが甘かった。
 別々に戦えば大丈夫、とか、モモタロスなら戦いに夢中になれば忘れるだろ、とか、タカをくくってたのは事実だ」

「まぁまぁ、責任の引き受け合いはそのくらいで。
 今は、逃げたイマジンをどうするか、でしょ?」



 ため息をつくジュンイチさんをなだめて、話を本題へ進めてくれるのはウラタロスさん。

 うん、いいタイミングで切ってくれた。あのままだと大グチり大会になってただろうし。



「デカ長。
 前に、良太郎さんに『いつも使ってるチケットは滞在用じゃない。長く過去にいてもらっては困る』って言ってましたよね?」

「はい。
 そしてそれは、あなた達のチケットも同じです……無期限なのは、有効期限だけですから」

「つまり……オレ達のチケットは観光ビザのようなものか……
 現地におもむくことはできるが、長期滞在はできない」

「まぁ、そういった解釈で、間違いはありませんね」



 僕やマスターコンボイの質問に、デカ長が答えてくれる……ふむふむ、それじゃあ……



「今回みたいに取り逃がしたイマジンを探すために、歩き回るのもマズいんですか?
 テレビとかだとハナさんがやってたような……」

「あれは、ハナさんの時間がすでに消滅し、時間から切り離された状態にあったからこそです。
 みなさんにはみなさんの時間があります。ハナさんと同じようには、いきません」

「って言っても……ハナちゃんもミッドに来たばかりでしょう?
 右も左もわからないクラナガンで、ひとりでイマジンを探し回ってもらうワケにも……」

「それに、現地時間、まだ昼間だしなぁ。
 真っ昼間からハナちゃんくらいの子供がうろついてたら、真っ先に補導されるぞ」



 デカ長の答えに、こなたやジュンイチさんも渋い顔。う〜ん、どうしたものか……



「とりあえず、今回は被害を覚悟で連中がまた動き出すのを待つしかないな。
 その間に、オレ達はオレ達でできることをしておくべきだ」

「できること……?」



 シビアだけど、もっともなことを言い出したのはマスターコンボイ。けど……何する気?



「まずはハナはもちろんのこと、他の連中にもクラナガンの地理に明るくなってもらわなければな。
 できれば現代に戻って実際に歩き回りたいところだが……ここにいても地図を見るぐらいの事はできる。データならオレが持っている。
 そしてもうひとつ……」



 言って、マスターコンボイが“そちら”を見て……全員が納得した。



「そうだよね。
 このままってワケにもいかないよね」

「そういうことだ。
 実際、今回それが足かせになっているからな。早急に克服させるべき問題だ」



 そう。スバルとモモタロスさんだ――僕とマスターコンボイのやり取りに、当の二人もようやくこちらの言いたいことを悟ってくれたらしい。



「お、おい、お前ら!
 いったい何させる気だ!?」

「そりゃ、先輩がスバルちゃんを怖がってるのを、何とかするに決まってるでしょ」

「今回、それで良太郎にも迷惑かけとるからな。文句は言わせん」

「そうだそうだーっ! 治せ治せーっ!」



 うろたえるモモタロスさんをウラタロスさんとキンタロスさんが捕獲。リュウタロスさんがはやし立てる。

 そして、モモタロスさんが囚人のように僕らの前に連行されてくる。スバルに反応して逃げ出そうとしてるけど……さて、『治す』と言っても、何をどうすればいいのやら。



「んー、まぁ、荒療治でもよければ、方法がひとつ」



 ジュンイチさん……?



「スバルー、ちょっと来い」

「お兄ちゃん……?」



 ジュンイチさんに呼ばれて、スバルが寄ってくる――拒絶反応がますますひどくなるモモタロスさんの手を取って――











 ガチャンッ。







 モモタロスさんの右手と、スバルの左手とを、“手錠でつないだ”。











 …………って、







『はぁぁぁぁぁっ!?』







 状況を理解した全員が声を上げる――うん、本気でワケがわからない。



「ぅおぉぉぉぉぉいっ!? 何じゃこりゃぁぁぁぁぁっ!?」

「お、お兄ちゃん!?」



 当のモモタロスさんとスバルも大あわて――いや、本気で何やってんのアンタ!?



「いや、だから、モモタロスのスバル恐怖症を治すんだろう?」



 しれっと、何でもないことのように言い切ってくれたし。



「考えてもみろよ。
 モモタロスが本当に怖いのは犬。スバルに反応しているのは、スバルのわんこキャラから本物の犬を連想させるからにすぎない。犬の人形にも怖がってただろ。アレと同じだ」

「いや、まぁ……そうですね」

「だったら攻略は簡単だ。
 要するに慣れだ。行動を共にして、スバルと一緒という状況にモモタロスを慣れさせればいい。
 少なくともスバルから本物の犬を連想する状況さえなんとかすれば、スバルを怖がる状況はなんとかできるはずだ」

「なるほど」

「さながら、恭文のトマト嫌い克服のため、フェイトが頻繁ひんぱんにトマトを食わせて慣れさせようとしているが如く」



 ……そこは思い出させないでほしい。マヂで辛いのよアレ。



「って、冗談じゃねぇぞっ!
 こんなのできるか! 今すぐ外せっ! 手錠の鍵よこせぇっ!」

「カギ?」



 一方で大反対なのが当然ながらモモタロスさん。ジュンイチさんに猛抗議するけど、



「ねぇよ、ンなモン」



 サラリとジュンイチさんはさらなる爆弾を投下してくれた。



「何しろ、その手錠、オレが今“再構成リメイク”で作ったものだからな。
 当然、手錠しか作ってないからカギなんてない」

「ぅおぉぉぉぉぉぃっ!?
 それじゃあ外す時はどーすんだよ!?」

「その時は改めて鍵作ってやるよ。
 っつーワケで現在鍵はない。おとなしく……つながれてろ?」

「ふざけんな!
 こんなのは横暴だ! 独裁だ! 悪魔の所業だぁーっ!」

「はっはっはっ、そこまで言ってくれるか」



 わめくモモタロスさんの肩を、ジュンイチさんはポンと叩いて、







「ありがとう、最高のほめ言葉だ」

「誰がほめたぁぁぁぁぁっ!?」







 空いている左手で頭を抱えてモモタロスさんが絶叫するけど――



「それよりいいのか?
 すぐとなりにスバルがいるんだけど」

「どわぁぁぁぁぁっ!?」

「んひゃあっ!?」



 ジュンイチさんにツッコまれて、モモタロスさんが逃げ出――そうとしたけど、手錠の鎖がそれを阻んだ。鎖に引っぱられる形で、同じく引っぱられたスバルと二人でひっくり返る。



「とりあえず、モモタロスとスバルはこれでいいだろ」



 床に転がるモモタロスさんとスバルには目もくれず、ジュンイチさんはパンパンッ、と手を叩いて僕達の注目を集めて、



「さて、オレ達は別室でクラナガンの地理のお勉強といこうか」

「えぇ? でも……」



 ジュンイチさんの提案に、良太郎さんがモモタロスさんとスバルを見る。

 まぁ、二人が心配なのは僕も同じ。だけど……



《良太郎さん、ここは心を鬼にして、彼らを二人きりにするべきです。
 私達が一緒にいては、世に言う友情パワーのノリで耐えられてしまいます。我々の支えなく、自らの力で乗り越えてこそ意味があるんです》

「そ、そうか……そうだよね」



 そんな良太郎さんをアルトが説得してくれた。おかげでとりあえず良太郎さんは納得してくれた。

 ところで……アルトさんや。



“ずいぶん声が弾んでるね”

“当然ですよ。
 だって、モモタロスさんとスバルさんですよ? この二人がつながれて、何もないワケがないじゃないですか。
 絶対おもしろおかしなハプニングが起きますよ”



 う〜ん……それが目下の一番の不安なんだけどなぁ……モモタロスさん、悪化しなきゃいいけど。



「とにかくそういうこった。はいはい、出た出た」

「ふぅっ、仕方ないね。
 それじゃあ、スバルちゃん、先輩、また後で♪」



 ジュンイチさんが改めてみんなを促して、ため息をつくウラタロスさんを先頭にゾロゾロと食堂車を出ていく。



「お、おいコラ! 待ちやがぅわぁぁぁぁぁっ!?」



 僕らに抗議しようとするけど、スバルが怖くてまたまた逃げ出すモモタロスさんと、そんなモモタロスさんに振り回されているスバルを残して。

 プシュッ、と音を立てて食堂のドアが閉ざされて――







「……ジュンイチさん」

「安心しろ、ギンガ。バッチリだ」



 ………………?







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 うぅっ、なんかおかしなことになってきちゃったなぁ……



 左手の手錠を、そしてあたしとその手錠でつながれているモモタロスさんを見る。

 ……目が合うだけでビクリと肩をすくませるのはやめてほしい。



「…………チッ」



 けど、モモタロスさんはやがて舌打ちすると、座席のひとつに腰を下ろす。



「おめーも座れよ。
 いつまでも地べたにへたり込んでるつもりかよ?」

「……はい……」

「――って、オレの正面にすわんじゃねぇっ!
 俺の後ろだっ! 背中合わせっ!」

「は、はいっ!」



 モモタロスさんに怒られて、あたしはモモタロスさんの向かいの席に座るのをあきらめて、モモタロスさんの背中側の席に腰かける。

 モモタロスさんは右手、あたしは左手――手錠でつながれた方の手を通路側に投げ出して、背中合わせに座る形だ。

 …………でも。



 あぁぁぁぁぁ、間がもたないよぉ……







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「…………逃げませんね」

「頭、冷えてきた証拠だよ。
 理性としては、スバルは怖がる対象じゃないってちゃんとわかってるんだよ、モモタロスも」



 映像に映るスバルとモモタロスの様子に、オレはギンガにそう答えた。

 食堂車を後にしたオレ達はデカ長に客室のひとつを開けてもらってそちらへ移動。映像越しにスバル達の様子を見ていた。

 ……は? 『クラナガンの道を電王組に覚えてもらうのはどうなった?』って? ンなもん、あの場を離れるための口実に決まってんだろ。



 道を覚えるのは後でもできる。それよりも今はこっちだ、こっち!



「まぁ、落ち着いた時に平気でいられても意味ないんだけどな。
 さっきオレにツッコまれた時や、さっきの戦い……とっさの反応でもビビらずにいてくれなきゃ」

「ですよね……」



「……ところでぁ」



 ん? 何さ、恭文?



「いや、この映像……どうやって見てるのかな、って。
 それ、どう見ても食堂車内の防犯カメラの映像だよね? それがどうして客席のテレビで普通に見れてるのさ?」



 なんだ、何を聞くかと思ったら“そんなこと”か。







「ハッキングして映像つなげたに決まってんだろ」



『ごく普通に言い切った!?』







 なんか恭文達が驚いてるけど、オレにしてもればこの程度はたやすいことだ。

 オレの人外能力のひとつ“情報体侵入能力データ・インベイション”――触れたものの情報に意識の一部を送り込み、干渉するこの能力を使えば、防犯カメラの映像をジャックすることくらいは朝飯前だ。

 さっき食堂を出る際、扉の電子ロックの部分に触れてシステム内にアクセスしておいた。これでオレが能力を解除しない限り、食堂車の様子は筒抜けってワケだ。



「って、そういう方法の問題じゃなくてっ!
 ギンガさん、局員としてコレはどうなのさっ!?」

「スバルを見守るためですっ!」

「……ギンガちゃんって、こんなシスコンだったっけ……?」



 気にするな、良太郎。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ……電王どもがうろついてる様子はないな。



「い〜な〜い〜」

「ヒャハハッ! 今なら暴れ放題だぜ!」



 あぁ、そうだ。

 『できるだけハデに、長く暴れるように』って話だったからな……



 …………よし。



「やるぜ、お前ら!」

「ヒャッハァッ!」

「わ〜か〜っ〜た〜っ」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「………………」

「………………っ」



 ……お、重っ! 空気重っ!

 後ろのモモタロスさんに視線を向ける度、モモタロスさんがビクリと肩をすくませる。そのせいで空気がものすごいアレな感じ。



 うぅ……どうしよう……



 あたしも、モモタロスさんにこんなに怖がられると……ちょっと、辛い。

 でも、あたしにはどうすることもできないし……



「………………あの」

「ひっ!?」



 声をかけたあたしに驚いて、モモタロスさんが逃げ出そうとして――手錠に引っ張られてひっくり返った。



「だ、大丈夫ですかっ!?」

「ぅおあぁぁぁぁぁっ!?」



 助け起こそうとするけど、あたしが近づけばモモタロスさんが下がる。あたしが近づけばモモタロスさんが逃げる……で、どうしようもない。



「うぅ……ごめんなさい。
 なんか、あたしのせいで……」



 ここまで怖がられると、あたしが悪いように思えてきた。思わず頭を下げて謝って――











「……謝んなよ」











 …………え?



 その声に顔を上げると、モモタロスさんはあたしに背を向けて座り込んでいた。



「お前が謝る理由なんざねぇだろ。
 オレが勝手に怖がってんのが悪いんだろうが。なのになんでお前が謝ってんだよ?」

「で、でも、あたしがいなければ、モモタロスさんもこんな目には……」



 あたしがモモタロスさんを怖がらせてるせいで、こんな……



「あのなぁ……
 お前、そんな性格でよく刑事なんてやってるよな」

「け、刑事じゃないですよっ!
 あたし達は局員で……」

「やってるコトぁ同じだろうが」



 あたしの反論に、モモタロスさんはため息をひとつ。



「お前……なんで刑……局員だっけか。それやってんだよ? そんなビクビクオドオドしてるクセしてよ」

「あ、あの、えっと……」



 いきなりそんなことを聞かれるとは思わなかった。モモタロスさんの質問に、すぐには言葉が出てこない。

 けど……うん。答えは、決まってる。











「強く……なりたかったから」











 そう、答えた。



「小さい頃のあたしは、本当に弱くて、泣き虫で……
 悲しいこととか、辛いことにいつもうずくまって、ただ、泣くことしかできなくて……
 けど……泣いてばかりで、何もできない自分が、情けなくて……
 だから……思ったんです。
 泣いてるだけなも、何もできないのも、もうイヤだ、って……
 お兄ちゃんや、なのはさんみたいに、強くなるんだ、って……」

「ジュンイチみたいになんのは、やめといた方がいいと思うぜ」

「フフッ、そうですね」



 背を向けたままで、手錠が許すギリギリまで離れているけど……それでも、ちゃんとモモタロスさんが返してくれたことがうれしくて、あたしもちょっと笑顔になる。



「……けど、まぁ……そうだよな。
 アイツは……ジュンイチは、そういうヤツだよな。
 ムチャクチャ迷惑なクセしやがって、なんか負けたくねぇんだよな」

「………………え?」



 モモタロスさん……今……

 その言い方……まるで……







「――――むっ!?」







 って、今度は何ですか!?



「イマジンだ! 動き出しやがった!」

「えぇっ!?」

「おい、良太郎達に知らせるぞ!」



 驚くあたしにかまわず、モモタロスさんが立ち上がって――



「その必要はないよ」

「う、うん……」



 恭文!? 良太郎さん!?



「お、お前ら、なんでもう気づいてんだよ!?」

「さー、とにかく、イマジンをなんとかしないと!
 今度こそケリをつけてやる!」

「うん!」



 恭文の言葉に良太郎さんがうなずく……なんかごまかすような感じ。きっとまたお兄ちゃんが何かやったんだろうなー。

 とにかく、イマジンにリベンジマッチだ。よぅし、今度こそ――







「いーや。お前とモモタロスは留守番だ」







 ――って、お兄ちゃん!?



「そんな手錠でつながったまま戦うつもりかよ?
 鍵を作ってやってるヒマはねぇ。今回はおとなしくしとけ」

「……はぁい」



 お兄ちゃんにそう言われたらぐぅの音も出ない。あたしはみんなを見送るしかなくて――







「おい、犬っ子」







 …………モモタロスさん?







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「いた!」



 さっきの公園から場所を移して、街中のイベントホール前の広場。そこみで暴れ回るイマジン達の前に、僕は良太郎さんやジュンイチさん、そしてマスターコンボイと一緒に立ちふさがる。

 ウルフイマジンにトータスイマジンの本体、ウサギタイプのトータスイマジン……うん、三体ともいるね。







「みなさん、こっちです!」

「ここにいたら巻き込まれちゃうよ〜っ!」

「こなた! みんなを不安がらせるようなこと言っちゃダメ〜っ!」

「あ、ごめん」







 ギンガさん&シロ組にこなた、ハナさんは一般市民の避難……ごめんね、ギンガさん。いつもそんな裏方ばっかりで。



《出番があるだけマシじゃないですか》



 いや、そこツッコんだらいろいろとアウトだから。



「……来たな、電王」

「ちょっとちょっとー。僕達だっているんですけどねー」

「今度こそ仕留める。覚悟しろ」



 こっちを無視して、良太郎さんだけを注視するウルフイマジンにツッコんで、僕とマスターコンボイが前に出る。



「じゃあ、良太郎、いこうか」

「うん」



 一方、良太郎さんのとなりに出てきたのはウラタロスさん。答えて、良太郎さんがベルトをかまえる。

 ってことは、出る? 出るの!? 僕お気に入りの――





















「ちょぉっと待ったぁっ!」





















 って、この声――











「そのケンカ、オレが……いや!」







「あたし達が買うよ!」











 モモタロスさんに……スバル!?







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「って、ホントに出てきちゃってよかったんですか!?
 手錠着いたままですよっ!?」

「るせぇっ! 今さらガタガタぬかすなっ!」







 犬っ子の言葉に言い返す――そう、『犬っ子』だ。







「お前は悔しくねぇのかよっ!?
 あのままアイツにやられたままでよぉっ!」







 こいつは『犬っ子』だ……







「冗談じゃねぇぞ! 引き下がってたまるか!
 オレがヘマしたおかげで良太郎がケガしてんだっ!」







 『犬っ子』なんだ……っ!







「オレがやらかしたヘマなんだ――」







 こいつは――





















オレがこの手で始末をつけるっ犬っ子は犬じゃねぇっ!」





















「そういうことだ、良太郎!
 イマジン一匹、オレがもらうぞっ! いくぜいくぜいくぜぇっ!」

「も、モモタロス、ちょっと待って!」



 言いたい事は全部言った! 後は暴れるだけだ!



 良太郎が何か言ってるがかまいやしねぇ。思い切り走り出して――











「手錠どうするのーっ!?」







 …………あ。











 思い出すのと同時、右手が思いっきり引っぱられた。思いっきり犬っ子の方に引き戻されて――







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『…………え?』



 その場の全員が、目の前で起きたことが信じられなかった。







 僕も、良太郎さん達も……イマジン達ですら。











 だって、手錠に引っぱられたモモタロスさんがスバルにぶつかって……





















「……俺、参上っ!
 
…………って、なんじゃこりゃあぁぁぁぁぁっ!?」



 ……スバルん中入ったぁぁぁぁぁっ!?





















 って、何コレ!? どうなってんの!?

 モモタロスさん達って、良太郎さんにしかとりつけないんじゃ……



「い、いや……そうでもないと思うぞ」



 ジュンイチさん?



「ほら、TVシリーズの最終話。
 あの最終決戦で、モモタロス達は良太郎とは完全に切り離された、独立した存在になってる。
 良太郎とのつながりが切れてるんだから、他の人達にとりつけたっておかしくない」

「そういうこと。
 先輩。先輩だって良太郎以外にとりついたことあるでしょ? 前に刑事をやってた時とか、ディケイドと会った時とかさ」

「お、おぅ……そうだったな。すっかり忘れてたぜ……」



 忘れてたんですか……モモタロスさん……



「まぁ、いいじゃねぇかよ。思い出したんだからさ。
 ……しっかし、さすがに女の中に入ったのは初めてだけどよ……なんかしっくりこねぇな」

「あぁ、わかるわかる。
 ボクらも、ディケイドと戦った時に女の子の身体借りたけど、どうも勝手が違うんだよね」



 ウラタロスさん……そんなことしてたんですか。



「ま、とにかくだ。
 良太郎、パス貸せ、パス!」

「う、うん!」



 気を取り直したモモタロスさん(inスバル)に促されて、良太郎さんがモモタロスさんにライダーパスを投げ渡す。

 ……って、まさか!?



 そのボクの予感は的中。モモタロスさんがパスを受け取ると、おなじみのベルトが腰に……スバルの腰に巻かれる。



 そして――











「変身っ!」



《Sword Form》











 変わった。



 スバルの姿が……電王・ソードフォームへ。



 そのまま決めるのはいつもの見得切り――



「俺、再び参じ――っと」



 ――って、あれ? モモタロスさん……?



「おぅ、尻切れトンボでわりぃな。
 今回は、ちょいと特別バージョンでやりたくてよ」



 そう僕に答えると、モモタロスさんは自分の頭を軽くコンコンと叩いて、



「おい、犬っ子」

〔…………はい?
 え? 何コレ!? どうなってるの!? 確かあたし、モモタロスさんとぶつかって……〕



 え? スバル、返事した?



 確か、普通の人がイマジンにとりつかれたら、意識まで持っていかれるんじゃ……まさか、支配力を弱めたの?



「おぅ、ちょいと身体借りてるぜ。
 それより、せっかくだ。いつものポーズ、お前も特別にまぜてやるよっ!」



〔は、はいっ!
 何度もやってるアレですよねっ!〕



 そして、モモタロスさん(とスバル)は改めてイマジン達へと向き直り、





















「俺っ!」



〔あたしっ!〕







「〔参上っ!〕」





















 ……う、うらやましいっ!



 スバルのヤツ、僕らを差し置いてあんなオイシイ役どころをっ!



「恭文くんの怒るポイントってそこなんだ……」

「おい、何ボサッとしてやがる、良太郎!」



 つぶやく良太郎さんに、モモタロスさんがパスを投げ返してくる――っと、次は僕らの番か。



「良太郎さん、ウラタロスさん」

「はいはい」

「うん」



 そして、僕と、ベルトを巻いた良太郎さんはそれぞれにかまえ、











『変身』



《Riese form》

《Rod form》











 僕ら二人が姿を変える――まず、僕が騎士甲冑を装着。

 続いて良太郎さんが下地となるスキンスーツ――プラットフォームに変身。

 その上から装着されるのは青いアーマー。そして後頭部から回り込んでくるのはウミガメ型のプレート。

 モモタロスさんの変身の時のように、それは顔面まで回ってくると展開、組み変わり、仮面となってマスクに固定された。



 これは……これはっ!











「お前達……ボクに釣られてみる?」











 ……ロッドフォーム、キタァァァァァッ!



 僕、ファンだしっ! ロッドフォームが一番好きだしっ!



 というか、ソードフォームとロッドフォームのタッグ!? いろんな意味でうれしすぎっ!



「そんなに喜んでもらえると、変身しがいがあるね。
 けど、それよりも今は」

「はいっ!」



 ウラタロスさんに言われて、イマジンをにらみつける。



「待たせてゴメンねー。
 けど、ここからはちゃんと相手してあげるからさ」

「とはいえ……お前ら、もう終わりだけどね」

「お前ら……さんざん無視しておいてそれか!
 ふざけてんじゃねぇぞぉっ!」



 僕とウラタロスさんの言葉に、ウルフイマジンが突っ込んでくる――けどっ!







「悪いけど……いつでも僕らは本気だよっ!」







 あっさりとアルトで弾き、斬り返す。たまらずウルフイマジンがブッ飛んで――







「いくぜいくぜいくぜぇっ!」

〔はいっ!〕



「やれやれ、またお前の相手?」

〔ウラタロス、油断しないで〕







 モモタロスさんとスバルはウサギの混じった方のトータスイマジンと。ウラタロスさんと良太郎さんはトータスイマジン本体との戦いに入る。



 そんじゃ、僕らもいくよっ!







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 振るったデンガッシャー、ボク愛用のロッドモードに組み上げたそれは、敵イマジンには身体を沈めてかわれてしまう。



 けど――その攻撃、ウソだよ♪



 本命はここから。すかさず引き上げて、距離をつめようと寄ってきたイマジンの背中に一撃。それでも反撃してくるイマジンの拳を、デンガッシャーで受け止め、相手の腹に蹴りを入れる。







「前に、お前の同類にも言ったけどさっ!」







 突っ込んできたイマジンの足をデンガッシャーで払って転ばせて、起き上がってきたところにデンガッシャーを叩きつけ、蹴り飛ばす。







「亀は、ひとりでいいんだよっ!」







 仕上げに連続突き。たまらずイマジンは吹っ飛び、地面を転がる。



 悪いね、お前なんかとは出来が違うんでね!







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ジャマすんなぁっ!」







 ウサギだか亀だかわかんねぇイマジンが殴りかかってくるけどよ……ンなもんくらうかよっ!



 デンガッシャーで拳を受け止め、お返しに斬りつける。ひるんだところを……オラオラ、めった斬りだっ!







〔モモタロスさん、きます!〕







 たまらず離れたイマジンがもう一度突っ込んできやがった――ハッ、そんなもんっ!







「オラよっ!」







 馬跳びで突進してきたイマジンをかわして、背中を思い切りぶった斬ってやる。







「へっ、ざまぁねぇなっ!
 けど、俺のクライマックスは、まだまだこんなもんじゃねぇぞっ!」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「オラぁっ!」







 斬りつけてくるウルフイマジンの刃をアルトで弾いてカウンター。袈裟斬りで思い切り叩っ斬る。



 すぐに立て直してくるけど、僕もすでに距離を詰めている。相手の反撃よりも早く斬りつける。







「お前ら! よくもっ! 手こずらせてっ! くれたねっ!」







 そこからラッシュ。斬り上げ、袈裟斬り、薙ぎ払い――気分はちょっぴりソードフォーム。



《……マスター、スバルさんがソードフォームになったのが悔しいんですね》



 …………うん、ちょっと。



 ま、それはともかく、だ。



「……お前ら、何のためにこっちの世界に来た?」



 反撃に転じたウルフイマジンの攻撃をいなしながら、尋ねる。







「答えると、思うかよっ!?」







 返ってきた答えは予想通り。ま、期待してなかったけどさ。







「まぁ、それならそれでもいいけど、ねっ!」







 大振りになった斬撃のスキをついてアルトを突き込む。ひるんだウルフイマジンの胴に、アルトを横一文字に叩き込む。



 すぐに刃を返して反対方向にもう一閃、仕上げに袈裟斬りでウルフイマジンをブッ飛ばす。



「どっちにしても、お前らはぶっつぶす。
 これが絶対やらなきゃならないことだってのは、よくわかったよ」

《あなた達、乗り込んでいく先を間違えましたね。
 ジュンイチさんのセリフではありませんけど……誰にケンカを売ったか教えてやりますよ》



 アルトの切っ先を突きつけて言い放つと、ウルフイマジンがひるんで後ずさり。







「さて、先輩達、そろそろこいつら、シメちゃわない?」







 と、ウラタロスさんからフィニッシュのお誘い――それならっ!











《Full Charge》











「はい、先輩」



「おぅっ!」











《Full Charge》











 自分のベルトにパスをかざしたウラタロスさんがモモタロスさんにパスを放る。受け取ったモモタロスさんも同じようにフルチャージ。



 僕もだ。ジガンからカートリッジを三発消費。



 魔力をアルトらに注ぎ込み、その刃を絶対零度の刃へと変える。







「たぁっ!」



「俺の必殺技っ!」







 ウラタロスさんがロッドモードのデンガッシャーをイマジンに投げつけ、モモタロスさんがデンガッシャーのオーラソードを飛ばす。



 ウラタロスさんのデンガッシャーが亀の甲羅状の網“オーラキャスト”となってトータスイマジンを拘束。モモタロスさんの操るオーラソードがトータスイマジンの分離体を痛めつけている中、僕もウルフイマジンに向けて突撃。







 そして――











「でやぁぁぁぁぁっ!」



「パートUっ!」



「チェストォォォォォッ!」











 ウラタロスさんのデンライダーキックが、モモタロスさんのエクストリームスラッシュのフィニッシュが、そして僕とアルトの唐竹割りが、それぞれの相手のイマジンに叩き込まれた。







「っしゃあっ!」



「……ま、ざっとこんなもんだよね」



「はいっ!」







 イマジンの爆散を見届けて、二人の電王と合流……いやーっ! やっぱり電王と一緒に戦えるのって最高っ!



《まぁ、こちらがノリすぎて相手がついてこれないのも問題ですけど。
 おかげですぐに終わってしまって、今ひとつ物足りないんですけど》

「確かに、ちょっと歯ごたえなかったな。
 ま、本気になったオレ達がそれだけすごすぎるってことだよ」



 言って、モモタロスさんがドンッ!と胸を叩いて――って、どうしたんですか? 首かしげて。



「いや……やっぱ女の身体って勝手が違うぜ。
 今だって、良太郎の胸叩いたらそこそこ手応えあんのに妙にフワフワしてるしよぉ」

〔って、モモタロスさん、それセクハラーっ!〕

「え、マヂでっ!?」



 スバルからの抗議でモモタロスさんが割と本気で驚いている……まぁ、異性関係の話は基本的にカヤの外ですしねー、モモタロスさんって。



 でも……うん、よかった。



「ん? 青坊主……?」

「モモタロスさん、もうすっかりスバルのこと大丈夫になったんだなって」

「あー、まぁな」



 うなずいて、モモタロスさんは右の親指で自分を――というか、自分が入っているスバルを指さして、



「コイツも、気合入れて戦ってるってわかったからな。
 コイツは犬っころじゃねぇ。一人前の、デンライナー署の刑事だぜ!」

〔だから、あたしは刑事じゃなくて局員ですっ!〕



 スバルが反論して、僕らの間に笑いがもれる。とにかくこれで一件落ちゃ――











「おーい、お前らー」











 って、ジュンイチさん……?







「気を抜くな。
 まだ……終わってないぞ」







 ジュンイチさんの言葉と同時、イマジン達の残骸が砂となって舞い上がった。それは一ヶ所に集まり、巨大なサイのような怪物を作り出す。



 あれって――まさか、ギガンデス!?







「ギガンデス!? 何だ、それはっ!?」



《倒したイマジンの取り込んでいたイメージが、暴走したんです》







 驚くマスターコンボイにはアルトが答える――そう。イマジンを倒すと、たまにこういうことがある。

 イマジンはとりついた人間のイメージを元に実体化する……そのイマジンを倒すと、ヤツらは取り込んだイメージを制御できなくなる。



 それが、実体を再構築して巨大化、復活したのがギガンデス……僕らの前に現れたのは、陸戦タイプのギガンデスヘル。







「へっ、それならデンライナーでブッ飛ばしてやる!」







 言って、きびすを返すモモタロスさんだけど……







「あー、ちょい待ち」



「ぶぎゃっ!?」








 ジュンイチさんが止めた――スバルの身体ごと、ラリアットで。



「お前らが出るまでもねぇよ」



 言って、ジュンイチさんが視線を向けたのは僕とマスターコンボイ。



「お前らで行ってこい。
 あの程度の相手にデンライナーなんてもったいすぎらぁ」

「はいっ!」

「おぅっ!」







《Human Form,Mode release.》







 さっそくマスターコンボイがヒューマンフォームへの変身を解除。少年の姿から身長6メートル前後のロボットモードへとその姿を変える。



 さぁ……いくぞっ!







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『ゴッド――オン!』











 その瞬間――僕の身体が光に包まれた。強く輝くその光は、やがて僕の姿を形作り、そのままマスターコンボイと同等の大きさまで巨大化すると、彼の身体に重なり、溶け込んでいく。

 同時、マスターコンボイの意識がその身体の奥にもぐり込んだのがわかる――代わりに全身へ意思を伝えるのは、マスターコンボイの身体に溶け込み、一体化した僕の意識だ。



《Saber form》



 トランステクターのメインシステムが告げ、マスターコンボイのボディカラーが変化する――グレーだった部分が、まるで染め上げられていくかのように青色に変化していく。

 それに伴い、オメガが分離――巨大な両刃の剣が真ん中から別れ、二振りの刀となって両腰に留められる。

 そして、ひとつとなった僕ら二人が高らかに名乗りを上げる。







《双つの絆をひとつに重ね!》

「ふざけた今を覆す!」



「《マスターコンボイ・セイバーフォーム――僕(オレ)達、参上!》」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「お、おいっ!? 何だよ、ありゃあっ!?」

「まるで僕らと良太郎だよねぇ」

〔う、うん……〕

〔あれはゴッドオン。
 マスターコンボイさんは、あたしや恭文みたいな“ゴッドマスター”と一体化することで、いろんなフォームになって戦うことができるんです〕







 初めて見るゴッドオンに驚いてるモモタロスさん達にスバルが答える――じゃ、後の説明はよろしく〜。



 そして、僕はかまえる。突っ込んでくるギガンデスに向けて。



 走ってくる勢いのまま、ギガンデスは頭の角で僕らを一突きにしようとするけど、







「あらよっと!」







 バカ正直に付き合ってやるつもりはない。ジャンプ一発、ヒラリとかわし、その背の上に飛び乗る。



 もちろん、ギガンデスだってそんな僕らを振り落とそうと大暴れ。なんとかそれを抑えつつ、ギガンデスに街中を走らせていく。







《どうするつもりだ、恭文!?》



「こんな街中で、このサイズで大立ち回りなんかできるかっ!
 最初にイマジンと戦ったあの公園! あそこまで誘導する!」



《そういうことか!
 なら代われ! オレが誘導する!」



「お願いっ!》







 答えて、マスターコンボイに主導権を渡す。身体がフッと軽くなったような気がし――てっ!?







「トランスフォーム!」







 って、僕がゴッドオンしたままビークルモードに!?



 ともあれ、マスターコンボイはギガンデスから跳び下りるとビークルモードにトランスフォーム。背中に乗られて怒り心頭のギガンデスに追いかけられるように、例の公園を目指して街中を駆け抜けていく。



 つか……なんか、自分の身体が変形するって変な感じが……







「気にするな! オレもお前らが中にいるのにビークルモードというのは変な感じなんだっ!」







 あ、そうなの? じゃ、お互いさまということで。



 とかやってる間も誘導は続く。ギガンデスがこちらを狙って火球を吐いてくるけど、もちろん全部かわす。



 公園は……見えたっ!







「あぁ! 突入したら任せるぞ、恭文!
 トランスフォーム!》







 言って、マスターコンボイはロボットモードへトランスフォームしながら公園の中へ。ついでに僕に主導権も返してくれた。



 すぐに振り向き、後を追って飛び込んできたギガンデスの身体を受け止め、その勢いのままに投げ飛ばす。



 相手が立て直している間に、起動したまま装甲の内側、ビークルモードの指揮所部分にしまっておいたオメガを取り出し、アルトが宿った双剣を手にギガンデスと退治する。



 再び突進してくるギガンデスの巨体をかわして――







《Hound Shooter》



《Stinger Ray》







 通り過ぎたギガンデスの背中に向けて、オメガとアルト、二人がかりで連続射撃。足元を叩く魔力弾にひるんだギガンデスとの距離を詰めて、その背中を二刀流でめった斬り。



 背中を何度も斬られ、ふらついたギガンデスの尻に蹴りを一発。顔面から地面に突っ込む相手からバックステップで距離を取り、







《《Icicle Cannon》》







 アルトとオメガの声が重なった。放たれた砲撃がギガンデスの背中を直撃、その肉体を深々と抉る。



 ふむふむ……向こうもでっかくなってるけど、こっちだってゴッドオンしてるからね、サイズ比はあんまり変わらないし、ブッ飛ばすのも生身の戦いの時と同じ感覚でいけそうだ。



 それさえわかれば話は早い。いつも通りに……ブッ飛ばす!







「マスターコンボイ」



《わかっている》







 マスターコンボイも同じ考えだったみたいだ。だから――叫ぶ。











「《フォースチップ、イグニッションッ!》」











 呼び出すのは僕らの世界の宇宙を作ったトランスフォーマーの神様“プライマス”の力の欠片、フォースチップ。マスターコンボイの背中のチップスロットに飛び込み、僕らの“力”を大きく引き上げてくれる。



 そして僕らは地を蹴る。ギガンデスに向けて、高まった“力”のすべてを両手のオメガ、その刀身に集めながら。



 光の刃を、最高の力で、最速の速さで打ち込むべくかまえて――











《鉄煌――》



「双閃っ!」











 たて続けに斬りつけた。左右のオメガで、ギガンデスを「×バツ」の字にぶった斬る!



 必殺の一撃を打ち込み、突進の勢いのまま、ギガンデスの脇を駆け抜ける――僕らの背後で、ギガンデスの巨体が崩れ落ち、爆散、消滅した。



 これで、今度こそ万事解決かな?



 うん。よかったよかった。







「やるじゃねぇか、お前ら!」







 あ……モモタロスさん達が追いついてきたか。



 避難誘導を終えたギンガさん達と合流してる。ビークルモードでみんなを(屋根にも)乗せて走ってくるロードナックル、その屋根の上には、すでにスバルの中から出てきているモモタロスさん。







「オレ達の見せ場を奪いやがっただけのことは、あるじゃねぇかっ!」







 ははは……そう言ってもらえると光栄で――







《……マスター》







 って、どうしたのさ、アルト?







《あれを》



《犬……か?
 この騒ぎで逃げなかっ……いや、怯えて逃げられなかったようだな》







 きっとマスターコンボイの予想通りだろう……巻き込まなくてよかった。ケガとかさせたら、きっとリュウタロスさんとか悲しむと思うし。







《いえ、そういうことではなく……
 あの犬、何かくわえてませんか?》



「《え…………?》」







 アルトの言葉に、マスターコンボイのカメラアイを望遠モードに。わんこに向けてズーム、インっ!



 えっと、何を加えて……って……







「…………財布……?」







 ………………

 …………

 ……







『《……捕まえろぉぉぉぉぉっ!》』







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「……まさか、犬が財布盗難の犯人だったとは」

「宴会が楽しかったにしても、気が緩みすぎでしょ」

《お酒と夜桜の力はすごいんですよ》



 現代へと戻るデンライナーの車内。意外な結末にため息をつくマスターコンボイや恭文にアルトアイゼンが答える。

 にしても……



「お前、再び役立たずに返り咲いたな」

「るせぇっ! 犬っ子が平気になったからって、犬が平気になったワケじゃねぇっ!」



 オレに答えて、モモタロスがそっぽを向く――そう。最後に始まったわんこ捕獲作戦、モモタロスは完全に戦力外でした。 



「でも、あたしはうれしいですよ!
 モモタロスさんが、あたしを怖がらなくなってくれて」

「お、おぅ……」



 一方のスバルはモモタロスと仲良くなれてご満悦――笑顔のスバルに対し、モモタロスは今度はスバルからもそっぽを向く……って、あれ? まさか照れてる?



 え? 何? フラグ立った? スバルとモモタロスとで? どっちが立てた? どっちが立てられた?



 とりあえず、今言えることは……



「……モモタロス」

「ンだよ?」

「お前のことはいいヤツだと思う。ある種尊敬すらしている。
 けどな……スバルを嫁にやる上では厳しく審査するからな」

「何の話だぁぁぁぁぁっ!?」



 すかさず殴りかかってくるモモタロスの拳を、上体をそらしてあっさり回避。フッ、甘い甘い。



「あのー……ジュンイチさん」

「んー? 何ー?」



 モモタロスで遊んでいると、ギンガが声をかけてきた――なので、ノーガード戦法でモモタロスの拳をフル回避しながら返す。



「本当によかったんですか?
 過去での戦いの被害、あのままにして帰ってきて……」

「あぁ、その話?」



 モモタロスの拳をかわすとその手をつかみ、ひねり、同時に足を払う――すぽーんっ、と空中で一回転して、モモタロスはすとんっ、と元座っていた席に収まった。

 それを見てリュウタロスがやんややんやと拍手喝采……それはそれとして、ギンガの心配は当然か。

 オレ達が何もしなくても破壊されたものが元に戻るなんて、イマジン達に殺された人達が復活するなんて、普通は信じられないだろう。

 そこはギンガと同感だったのか、マスターコンボイも怪訝そうな視線を向けてきているのがわかる。けど……



「大丈夫だよ。
 あの場には良太郎もいたからな」

『良太郎(さん)が?』



 ギンガとマスターコンボイに注目されて、良太郎は恐縮そうに頭を下げる。



 まぁ、そこは先の緊急会議でも説明してなかったし、話しておくか。



「良太郎とハナちゃんは“特異点”といって、時間の改変の影響を受けない特殊な存在……まぁ、一種の特異体質と思ってくれ。
 とにかく、時間の改変が行なわれても、それが自分に直接影響を及ぼすものでなければ、良太郎達には影響はないし、改変される前の時間がどんなだったかも覚えてる。
 その結果、良太郎達の記憶を大元として、周りの人達の記憶、そしてその時間全体が元通りに修復されていくことになる」

「二人の記憶を元に……?」

「時間って言うのは、その時を生きる人達の記憶なんだよ。
 今回みたいに過去でイマジンが暴れて、物や人が消えても、ちゃんとそれを覚えてる、思い出してくれた人達がいれば、その時間はその記憶を元に修復されるんだ」



 オレの説明に乗っかる形で、良太郎が補足してくれる。







 もっとも……それにも制約はあるんだけど。

 第一に、その時間に生きている人の記憶にもとづいて修復される仕組み上、“誰も覚えていない存在は修復されない”。

 実際、恭文がピアノを学ぶ(間接的な)きっかけになったあのピアノマンも、それが原因で、誰も彼のことを憶えていなかったせいで最終的に時間の中から弾き出された。



 そして第二に――







「その時間の修復は、時間の改変を行なった存在――まぁ、イマジンが主になるんだけど、そいつらを倒さないと行なわれない。
 理由は……わかるな?」

「改変された後の記憶を、イマジン達が持っているから……ですね?」



 そう。

 他のパンピーどもならともかく、時間を書き換えた張本人達ともなると、さすがに特異点の影響による記憶の修復は及ばない。

 だから倒さなければならない――倒して、ヤツらの持っている改変後の時間の記憶を消し去らなければ、時間の修復の障害になる。

 過去に跳んだイマジンを倒す……っていうのは、そういう意味でも大切なことなんだ。

 わかりやすい例を挙げると……



「例の財布の一件。“書き換えた張本人である良太郎が”生きてる限り、書き換えられたまま時間は流れていくことになる」



 あのわんこからみんなで財布を奪還した後、良太郎はそれを落とし物として局に届けたのだ。

 奪還した財布があの「盗まれた」って言ってたおっちゃんのものであることは中に入っていた免許証で確認済み。これであの財布はおっちゃん達のもとに戻ったはずだ。現代で仲良く酒を酌み交わしていてくれればいいんだけど。



「けど……よかったんですか? 歴史、変わっちゃいますけど」

「あの程度でしたら、問題はありませんよ。
 彼らのケンカや仲直りは、時の運行に影響を及ぼす類のものではありませんから」



 尋ねる恭文にはデカ長が答える――ま、あの人が言うんならホントに大丈夫なんだろう。アウトならそうハッキリ言う人だし。



「うん、そうですね。
 ……というか……」

「……『というか』?」



 聞き返すこなたに返す形で、良太郎は続けた。



「やっぱり、辛いと思うから……
 大好きな人とケンカして、仲良くできなくなって、あんなふうに傷つけ合うようになるのは……
 うん、見てられなかったんだ」



 そう告げる良太郎は遠い目をしていて――きっと、思い出しているんだろう。お姉さんや、モモタロスとやらかした大ゲンカのこと。







 ……うん、改めて実感した。



 やっぱりこいつ……“本物”だよ。



 腕っ節はヘタレもいいトコのクセしやがって……すごく優しくて、すごく強い。



 恭文が尊敬する、仮面ライダー電王……野上良太郎なんだ。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「……じゃあ、サーチャーにはまったく反応なしだったんですか?」

〈……うん。
 ヤスフミから連絡をもらって、現場周辺の記録を洗ったりもしたんだけど……〉

《それっぽい反応はなかった、と》



 今はジュンイチさんやなぎくん達と、現代に残していたかがみ達と、そしてあの人達と一緒に六課隊舎に移動中。

 ビークルモードのマスターコンボイの車内指揮所……なぎくん達もトゥデイごと乗り込んでいるそこで、フェイトさんに通信で報告。



 でも、サーチャーに反応しないなんて……時間移動とかもそうだけど、本当に規格外の相手なんだって思い知らされる。



〈カメラや視認は大丈夫みたい。公園の監視カメラにも映っているのを確認した。
 けど、探知関係はさっぱり……ジュンイチさんの言ってた通りだ。既存のシステムで追えると思っていたのは甘かったよ〉

「そこは偉そうに言っていたオレも同じだな。
 契約者の“中”にいられる内はオレも気配を追えないし、今回の件でわかったけど、たぶん、アイツら気配を消せる。動物ベースが多いだけあるぜ。
 つまり、現状で一番信頼性が高いのは――」

〈うん。
 その……モモタロスさんの感じてる“臭い”……だよね? それがないと、私達はすぐには動けない〉

「何にしても、連携はしっかりと……だね」

《相手の目的も見えませんしね。
 しっかりと、きっちりとやっていきましょう》



 …………よし。



 私は、こなたと視線を交わして……こなたがうなずいたのを確認した上で、口を開く。



「ジュンイチさん、なぎくん。
 私達にも協力させて」

「…………え?」

「何を……って、まさか!?」

「そ。イマジン対策。
 ギンガちゃんや私も協力する……かがみ達はこれから説得だけど」

『〈えぇっ!?〉』

「今回のことで実感した。
 イマジン達は危険。このままジュンイチさん達だけに任せておくなんて、私……できないよ。
 それに、フリーで動けて、地上に詳しい捜査官は、いても損はないでしょう?」

「あの電王に協力するんだよ! ファンとして、乗っからないワケにはいかないでしょっ!
 幸い、学校の方も進路が決まった私達は自由登校だしね!」

「え? こなた、大学決まったの? おめでとうっ!」

「って、進学のお祝いは後でいいからっ!
 お前ら、『協力する』って、そんな簡単に……」

〈そうだよ。108やそういちろうさん達になんて説明すれば……〉

「先生、フェイトちゃん」

「〈何?〉」



 聞き返す二人に、こなたは笑顔で、



「答えは聞いてない♪」











 ……とにかく、こうして私達も戦うことになった。



 うん、がんばろう。このままなんて、イヤだから。



 私にだってあるんだから……守りたい“今”が。







(第5話に続く)





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



次回、とコ電っ!



「みんなを守って戦うヒーロー……ウチが目指してるのはそこやもん。
 電王に協力するんは、ウチにとっても目標へのステップアップになる」



「……これ、誰が処理するの?」

「というか……もったいないですよ。
 食べ物を粗末にしちゃ、いけないのです」

「いろんな人達ががんばったのが台無しです」



「オシオキだべ〜っ!」

「ごめんなさぁぁぁぁぁいっ!」



「立て直させない――このまま一気に叩き墜とすっ!
 ジェットガンナー!」

「了解!」



第5話「ティアナ・トキを越えて」



「……兄、さん……!?」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あとがき



Mコンボイ「スバルとモモタロスの主役エピソード、その後編となった第4話をお送りした」

オメガ《驚いた人、多いんじゃないですかね?
 何しろ、ミス・スバルが電王になっちゃうんですから》

Mコンボイ「まぁ、な……
 作者曰く、今回のサブサイトもそれにちなんで考えたらしいが」

オメガ《ミス・スバルが『俺、参上!』をやるからこういうタイトルに……ということらしいですね。
 安直と言うかストレートと言うか……》

Mコンボイ「まぁ、わかりやすくていいんじゃないのか?」

オメガ《わかりやすいことは否定しませんがね。
 それはそうと……今回のエピソードは当面の基本方針を示すものでもある……ってことでしたよね?
 ということは、今後当面のエピソードでも今回のように……》

Mコンボイ「ありえるだろうな……とりあえず次はティアナ・ランスターになりそうだが」

オメガ《次回のサブタイトルでメインキャラ宣言してますしね。そこは確定でしょう。
 さて、相手は誰になりますかねー……って、自分から進んで彼女に絡みそうなの、ひとりしか思い浮かばないんですけど》

Mコンボイ「……確かに」

オメガ《ボス、早く腹を括らないとミス・ティアナを取られちゃいますよ》

Mコンボイ「なぜオレにそう聞く!?」

オメガ《さて、どうしてでしょうかね?
 ……さて、そんなこんなで、そろそろお開きの時間ですね。
 みなさん、今回も読んでくださって、本当にありがとうございました。
 新シリーズも、応援よろしくお願いします》

Mコンボイ「次回も必ず読むがいい」





(おしまい)







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 結局、ギンガさんとこなたの説得は失敗。それどころか事情を聞いたかがみ達まで「ほっとけない」と参戦表明。

 とりあえず六課まで戻ってきたけど気が重い。なのは達も交えてもう一度説得してみるか――



「――ヤスフミ!」



 って、フェイト……?

 そんなに息切らせて、何かあったの?

 でも、だったら通信なり念話なりで知らせてくれるよね? あれ?



「ご、ごめん。
 ちょっと驚いて、連絡するの忘れちゃって……」

「『驚いて』……?
 何かあったんですか? フェイトさん」



 さすがに心配になったらしく、スバルがフェイトに尋ねて――











「お、帰ってきた!
 おーい、まーくーんっ!」

「やっちゃん、お帰りなさ〜いっ!」











 …………え?

 何か今……ちょっとだけ懐かしくて、すさまじくありえない声が聞こえたような……



 うん。ありえない。“あの二人”がミッドチルダに現れるはずが……



「えー? なんでそんなリアクション薄いん?
 せっかくまた会えたのに……」

「驚いてるんですよ〜、きっと」



 ……うん。その通りです。あなたの言う通り驚いてます。



 つか、本気でありえない。



 地球にいるはずのおのれらが、どうしてここに現れる!?







「――いぶき、小夜さんっ!?」





(今度こそ続く)





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