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頂き物の小説
第3話「ライドオン・デンライナー」



「……とにかく、今後ともこういうことは避けてくだs――」

「てめぇっ! ふざけんじゃねぇぞっ!」

「それはこっちのセリフだっ!」

「いいかげんにしろ! つぶすぞてめぇら!」

「……やめてくださいと、何度言えばわかっていただけるんですか!?」



 まったく……どうしてこうなってしまうんだろう。

 元々はすごく仲がいいって評判だったそうなのに。



 私、ギンガ・ナカジマ。現在頭を痛めています。



 原因は、警邏けいら中に出会ったこの三人。30代前半の土木作業員。

 その内の二人が、それはもうものすごい取っ組み合いのケンカをしていた。なんとかファイトばりに。

 で、残りのひとりがそれを止めようとするんだけど、この人も力ずくなものだからさらに泥沼。

 なんとか取り押さえて事情を聞いてみると、いつもこの調子だというから呆れた。

 何度も局員からお説教されてもこれだっていう話だし……



『けどよ、コイツ(ら)が……』







「……な、か、よ、く、してください、ね?」







『…………はい』



 はぁ……これで収まってくれるといいんだけど……



「ねぇねぇ、ギンガお姉ちゃん」



 と、私に声をかけてきたのはロードナックル……今の主人格はシロくんの方。クロくんは内側で自分のメモリーのデフラグ作業中。

 それで……どうしたの?



「うん、お客さん」

「お客さん?」



 シロくんの言葉に思わず聞き返すと、現れたのは――



「ヤッホー♪ ギンガちゃん♪」



「あー、こんにちは。
 仕事中ごめんね。このバカが『せっかく通りかかったんだから声かけてく』って聞かなくて……」

「で、でもお姉ちゃん。大変なようだったら、私達もお手伝いできるよ?」

「そうですね。
 もし差し支えなければ、状況を教えてもらえますか?」

「こなた!?
 それに……かがみにつかさ、みゆきまで!?」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「へぇ、ここが食堂……って、みんないるね」

「アイツら……マスターコンボイやスバル達を引きずってどこ行ったかと思いきや……」



 食堂まで来てみると、そこにはモモタロスさん達もいた。早々にご飯を食べているその姿に、良太郎さんとジュンイチさんが苦笑する。

 つか……



「何ですか、あの荷物」

《床が沈んでますね。
 築数ヶ月の隊舎の床を沈めるとか、どういう量ですか》



 ご飯を食べているモモタロスさん達のすぐ近くに、机やらポスターやらが大量に……



「…………あ」

「良太郎さん?」

「みんなダメだよっ! ここに荷物持ち込んじゃーっ!」



 言って、良太郎さんがモモタロスさん達のもとへと駆けていく。

 ということは、アレってまさか……



「デンライナー署の荷物だってさ」



 やっぱり、とあずささんの言葉に納得。



「アイツら、オフィスの割り当てもまだだってのに、もう荷物運び込んできやがったのかよ……」

《行き当たりばったりっぷりも我々の知る彼らそのままですね》



 肩をすくめるジュンイチさんに蜃気楼が答える……で、僕は疑問なんだけどさ。







「どうして、みんなそんなに疲れきってる?」







 スバル、ティアナ、エリオ、キャロ……あずささん以外のフォワード人間メンバーが、軒並み燃え尽きている。スバルはマスターコンボイに、他の三人もそれぞれのパートナーに介抱されている。



「彼らに強引に荷物運びを手伝わされた結果だ」

「別にそれが原因じゃないわよ。
 むしろあのノリよ……アイツら、テンションおかしすぎ」



 みんなを代表して答えてくれたのはジェットガンナーとティアナだ。



「もう、元気で元気で……」

「というか、ボクはうまくやれる自信ないよ……」

「姫! しっかりするでござるーっ!」

「やれやれ、気が合いそうな子達が来たと思ったらエリオ達がこれじゃね。めんどくさいよ」



 キャロやエリオもすっかりグロッキー。おかげでシャープエッジが大騒ぎだけど……お前はオーバーすぎ。ちょっとはとなりのアイゼンアンカーを見習おうか。

 けど……スバルまでこれってのはちょっと意外。体力バカのクセして。



「うん……疲れてるっていうとは、ちょっと違ってね……」

「ん?」

「ねぇ、恭文。
 あたし、あの人達に嫌われてるのかな?」

「はぁ?」



 スバルが? モモタロスさん達に? なんで?



「つーかお前ら、“今の”アイツら相手にそんなんでどうするんだよ?
 普段のアイツら相手にそのザマじゃ、ノってきた時のアイツらには、とてもじゃないがついていけないぞ?」

『まだ上があるの!?』



 ジュンイチさんの言葉にティアナ達が驚く――うん、あるの。だからがんばろう?







「……おい、お前ら!」







 あー、今度はモモタロスさん達? いったい何がどうしたのさ?

 つか、モモタロスさん、声がデカイし距離が遠い。なんでイスの陰から声出してんですか。



「イマジンだ!」



 あぁ、なるほど。いま……







『イマジン!?』







「そうだ!
 つか、オレ達をそこまで連れてけっ!」

「ボク達、こっちの世界の地理はサッパリだしねっ!」



 あ、そっか。

 よし、こうしちゃいられない。



「はぁっ!? ちょっとちょっと、落ち着きなさいよ」

「そうですよ。
 もしそうなら、サーチャーとかに反応が出てるはずですし」

「……そうでもないみたいだよ」



 待ったをかけてくるティアナやキャロを止めてくれたのはあずささん。



「モモくんが『いる』って感知したなら、絶対イマジンは出てきてる。
 でもサーチャーが反応していない……つまり、“そういうこと”だよ」

「どういうことですか!?」

「はいはい、今説明してあげるから。
 お兄ちゃん、恭文くん。とりあえずは事情のわかる子だけで先行して」

「あずささん、お願いします……あ、ついでにジン達にも連絡入れといてください。
 モモタロスさん、車出しますんでナビお願いします。他のみなさんはワゴンで。
 ジュンイチさん達電波組は、今後に備えてイマジンの“力”の気配の感じ分けができないか、試しながら追いかけてきて


「おぅよ!……って、誰が電波だっ!?」



 気にしない気にしない。

 そんじゃ、行こうか!











 ――時の列車、デンライナー。次の停車駅は、過去か未来か――











『とある魔導師と古き鉄と時の電車の彼らの時間』・『とまコン』バージョン



とある魔導師と守護者と時の電車と仮面の戦士達



第3話「ライドオン・デンライナー」






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 桜井侑斗とデネブ……それが、アタシを助けてくれた二人の名前。

 二人はアタシとポチを手当てすると言って、手近なドアから砂漠の広がる異空間へ、そして、そのド真ん中に停まっていた、先頭に牛の頭のあしらわれた列車へと運び込んだ。

 ここが二人の拠点で、“ゼロライナー”というらしい。そこでアタシは、デネブから手当てを受けながら今回の事件のあらましを聞いた。

 恭文達が主に活動しているミッドチルダ、そこにさっきのヤツの同類、つまりイマジン達が現れ始め、それがアタシ達の地球にまで流入してきたこと。

 自分達はそれを追って、ミッドチルダからこっちの地球にやってきたこと。



 二人のことも聞いた。ゼロノス、この列車“ゼロライナー”、時の運行……

 そして、二人やイマジン達は、この世界では物語の中の、フィクションの存在でしかないこと。



 一通りの話を聞いて、アタシは――



「信じられないわね」



 一刀両断した。



「そんなぁ……」

「当然でしょ?
 『自分達は物語の中の住人です』なんて与太話、誰が信じるってのよ?」

「ウソだと思うなら、この後ビデオレンタルの店にでも行ってみるんだな。そうすれば、オレ達の言っていることが本当だってわかる。
 それとも、オレ達の方を『仮装だ』『モノマネだ』『ニセモノだ』って否定するか?」



 肩を落とすデネブに追い討ちをかますアタシに侑斗が告げる――けど、



「話はちゃんと聞きなさい。
 アタシは、『アンタ達の話全部が信じられない』とは言ってないでしょう?」

「…………何?」

「こっちが全部言い終わる前にかみついてくるんじゃないわよ――そう言ってんのよ。
 アタシは、『アンタ達が物語の中の住人だ』って話は信じられないって言ってんの」



 そう。アタシが信じていないのはその一点だけ。

 アタシはイマジンと戦った。ゼロノスに――侑斗とデネブに助けられた。そしてゼロライナーの中にいる。これは紛れもない現実だ。

 『物語の中の住人』? そんなことは関係ない。目の前にいるんだから、侑斗とデネブは確かにここに存在している。

 イマジンも同じだ。フィクションの存在だろうが、現実に存在して、人に害をなすなら討つだけだ。



「退魔巫女なんかやってると、超常の存在なんて四六時中目にしてるのよ。いちいち気にしてなんかいられないわ。
 ついこないだも、魔法とか魔導師とか目にしたばっかりだしね」



 そして何より――コイツらはミッドチルダのことを知っている。しかも、同じようにイマジンと戦っている連中(デネブ曰く『侑斗の友達』)が恭文達のところに向かったっていう話だ。

 アイツらが絡んでるんなら、この突拍子もない事態も少しは信憑性が出てくるってもんよ。



 とはいえ――



「……ま、どんな形でも信じてもらえるなら話は早いな。
 イマジンはオレ達がなんとかする。お前らは引っ込んでろ」

「冗談じゃないわ。
 こっちはこの事件を解決しろっていう仕事で来てるのよ」



 この一線を譲るつもりはない。こっちの関与を渋る侑斗に対して、アタシはキッパリと言い返す。



「はっ、さっきイマジンにやられそうになってたのにか?」

「あ、あれは…………そうね。逃げ遅れた人がいたから、なんてのはただの言い訳ね」



 侑斗の指摘はちょっと痛いところをついてきた――もっとも、それで引き下がるつもりもないけれど。



「けど、こっちもこのまま『じゃあ、後はよろしく』ってワケにはいかないのよ。
 それに……アンタ達といれば、イマジンに対する適切な対処法ってヤツも勉強できそうだしね……」

「おい、お前まさか……」



 アタシの言葉に、侑斗の顔がちょっと引きつる――フフンッ、ちょっといい気味。



「そのまさか。
 このゼロライナーにアタシも乗る――そして、イマジンを追う」

「バカ言うな!
 お前は降りろ! イマジンはオレ達でなんとかするって言ってるだろ!」

「アタシも仕事だって言ってんでしょ!? 手を引けるワケないでしょうがっ!」



 立ち上がって声を上げる侑斗だけど、アタシも同じように立ち上がってにらみ返す。



「ここでアタシを降ろしても、アタシはアタシでイマジンを追うだけ。
 となれば、この先何度も出くわすことになるわよ。その度にこんな押し問答を繰り返すつもり?」

「お前なぁ……」

「それに!
 アンタ達だけで、この事件に対処できると思ってるの? 思ってないわよね? だからアンタ達の仲間がミッドチルダの恭文達と合流しに向かった。そうでしょう?
 アタシだって戦えないワケじゃない! 味方はひとりでも多い方がいい! 違う!?」



 侑斗に言い返して――アタシは大賀温泉郷での“龍神事件”のことを思い出した。

 あの時、アタシは最初『こんな事件自分だけで十分だ』って言って、いぶきや、恭文や……ジンの協力を拒んでた。

 けど、実際はどうにもならなかった。荒魂あらみたまの龍宮小夜も、龍神も、アタシひとりじゃどうにもならなかった。



 今回の事件だって……侑斗だってそれと同じだ。今現在どうにかなってるからって、この先もどうにかやっていける保証なんてどこにもない。

 そして、どうにもならなくなった時……仲間の存在は、どうしても必要になる。



「……侑斗。オレも、彼女に手伝ってもらった方がいいと思う」

「デネブ! お前まで何言ってるんだ!」

「彼女の言う通りだ。手伝ってくれる人は少しでも多い方がいい。
 それにこの子は、きっと本当にひとりでもイマジンを追う――もし今回みたいなことになって、その時オレ達が間に合わなかったら……」

「いっそ、目の届くところにいてもらった方がいいってことか……」

「あぁ……」



 デネブもこっちの味方に回ってくれた……フフンッ、これで二対一ね。



「多数決で決まりね。
 民主主義に感謝しなくっちゃ」

「〜〜〜〜〜〜っ!
 くそっ、勝手にしろっ!」



 あらら、ヘソ曲げちゃった。アタシ達に背を向けて、ヒザを抱えてソファに不貞寝。



「……子供みたい」

「言わないでやってくれ。
 侑斗は、本当は寂しがりやなんだ。心の中では、キミと友達になれてうれしいと思ってる――」

「思ってねぇし友達でもねぇっ! 勝手なこと言うな!」



 デネブの顔に、アタシの手当てに使った救急箱が投げつけられた。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「んー、ここやね」

《ですね》



 眼下に街を見渡せる丘の上の展望台――ここが待ち合わせの場所のはず。

 やっちゃんから「何かあった時用に」と持たされた連絡先、そこに連絡をとったら、ここでこの時間に待っとるように言われた。



「せやけど、まさかあんな“スゴイ”人が出てくるやなんてなぁ……やっちゃんやじゅんさんの交友関係、あなどりがたしや」



 連絡をとった時のことを思い出す――知り合いの魔法関係者やと思っとったら、ウチも知ってる大物さんやったもんなぁ。



「ホンマ、あの二人って顔広いなー」



 改めてウチがそうつぶやいて――











「そのおかげで振り回されるこちらは、たまったものじゃないけどな」











 ………………え?



 いきなりの声は頭の上から。思わず見上げて――って、見上げる前にそれはウチらの前に降ってきた。衝撃で舞い上がった土煙が、ウチらの視界を一瞬で覆い隠してしまう。



《いっちゃん、大丈夫ですか!?》

「う、うん……」



 “携帯龍神様”の中から声をかけてくる小夜さんに答えて、ウチは土煙の向こうに声をかける。



「初対面の子相手に、またハデな登場してくれるやないの。
 そんなにこっちにプレッシャーかけたいん?」

「蒼凪や柾木の知り合いという時点で油断できるか」



 土煙の向こうからの声がウチに答える――やっちゃんとじゅんさんの名前があるだけでこの反応かい。



《お二人に、苦労させられているみたいですねぇ》

「あー、キャラ強烈やもんなー、二人とも」

「フンッ、わかってるじゃないか」



 小夜さんとウチに答えて、相手は土煙の向こうから姿を現した。

 三体のドラゴン型のロボット――T-REX、龍神様と同じ東洋の龍、でもって飛竜。



 そして――







「トランス、フォーム!」







 声を上げ、三体のドラゴンがひとつになる――合体して、ひとりのトランスフォーマーとなって、彼はウチらの目の前に降り立った。



「改めて初めまして――やね。
 嵐山いぶきいいます……いっちゃんでえぇで」

「誰が呼ぶか」



 う〜、遠慮せんでもえぇのに。



「まぁいい。貴様が名乗ったからにはこちらも名乗らなければな。
 地球トランスフォーマー総代――恐怖大帝スカイクェイクだ」

「スカイクェイクさんやね。
 ほんなら……」

「あだ名ならいらんぞ」



 むー、いけず。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 とにかく、ティアナ達はあずささんに任せて、僕達はトゥデイで飛び出した。

 良太郎さん達もワゴンで、ジュンイチさんとスバルもビークルモードのマスターコンボイに乗り込んでその後に続く。

 なお……モモタロスさん達には、物語の中でも使っていた例の着ぐるみを着ていただいております。



「モモタロスさん、どっちですか!?」

「あっちだ!」



 そして助手席のモモタロスさんが指さした方角は……思いっきり市街地かいっ!



 と――そこに、フェイトから通信。



〈ヤスフミ、これはどういうことなのっ!?
 というか、一旦戻ってきてっ!〉

「イマジン出てきてるのに、ンなマネできるかっ!」

〈で、でも、サーチャーには何の反応もないんだよ!
 それなのに、どうしてこうなるの!?〉

〈バカかお前はっ!
 イマジンがどういうエネルギーを発しているか、何のデータもないんだぞ!? データにないものに、サーチャーが反応するはずないだろうがっ!
 未知の存在を相手に、既存の方法をバカ正直に信じるヤツがあるかっ!〉

「ジュンイチさんの暴言はともかく、モモタロスさんがイマジンの臭いを感じてる!」



 そう。サーチャーはどうかは知らないけど、モモタロスさんが『いる』と言っている。

 イマジンの気配を“臭い”として察知できるモモタロスさんの鼻に引っかかったのだから間違いない。イマジンは……動き出してる。



〈に、臭いって……ウソだよね?〉

「マジですが?」

《マジなんですよ》

〈残念ながら大マジだ!〉



 とにかく、目的地は目の前……って、公園?

 やたらと人が右往左往……って、逃げ惑ってんじゃんっ! 間違いなくここだよっ! しかももう騒ぎを起こしてる!

 僕達は公園の入り口で車を停め、マスターコンボイもスバルとジュンイチさんを降ろしてロボットモードへトランスフォーム。僕とジュンイチさんが先頭に立って人の波を押しのけながら、公園の中に突入する――







「お願いです、通してくださいっ!
 時空管理局の者です!」

「はいはい、どいたどいたぁっ!」

「早く避難してよ! 通れやしな――わっぷ!?」







 …………ん? この声は……まさかっ!?

 ようやく人の波を脱出して辺りを見回すと……いたよ。青髪ロングヘアの女の子二人っ! でもって同僚のトランスデバイスひとりっ!



「ギンガさん!」

「こなた!? なんでミッドにいるのっ!?」

「ロードナックル! えぇと、ギンガと一緒ってことは……お前シロか!?」

「……え、なぎくん!?」

「スバル!? 先生まで!?」

「あーっ! マスターコンボイもいる!」

《あなた達、こんなところで何を――》

「ちょうどよかった! 手伝って!」

『…………はい?』







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「……で、その人達がバトロワ始めちゃって、これと」

「そうみたいなの。私も信じられないんだけど……
 とにかく、かがみとつかさ、みゆきには手分けして市民の避難にあたってもらってる」

「アイツらもいるのか……」



 私は、現場に向かいながら、ジュンイチさんやなぎくん達に事情を説明していた。



「……というか、ジュンイチさん」



 そして、その間ずっと気になっていたことを尋ねる。



「……その方達は?」

「……その一件の専門家」



 なぎくんが答えてくれるけど……見た感じ、局員じゃないよね? というか、ペンギンとか竜の着ぐるみを着てるのはどうして?



「ねぇ、恭文恭文。
 何なの、あの人達? どう見ても……」

「こなた、たぶんその予感正解。
 でも話は後……で……」



 なぎくんが黙った。けど、それも当然だと思う。



 だって……目の前の光景がありえないもの。



 男の人三人がケンカしてる、というか、ケンカする二人を別のひとりが止めようとしてる……ただし力ずくで。

 でも……うん、ありえない。周りの木が何本もへし折れて、地面にはクレーターができている。



 一瞬、ジュンイチさんとライカさんが翠屋(クラナガン店)のシュークリームの最後のひとつを巡って大ゲンカした後の惨状を思い出した。そのくらい……アレな感じ。



「ギンガさん……アレ?」

「というか……アレしかないだろ」

「う、うん……」



 なぎくんとマスターコンボイの言葉に、私はうなずく。



 でも……ありえない。



 だって、あの三人は魔法能力者でも、特殊能力者でもないのにっ!



「おい、ボーっとすんな! 止めるぞ!」



 着ぐるみの人にそう言われて、止まっていた思考が動き始める。

 そうだ、とにかく止めないと――と思って駆け出した時には、もう遅かった。







 駆け出した、ちょうどそのタイミングで、ケンカしてた二人がクロスカウンターを入れ合って倒れたから。







 はぁ、こうなる前に止めたかったんだけど……って、あれ、何?

 倒れた二人から砂がこぼれて……いや、吹き出している。

 それは、倒れた二人からだけじゃない。ケンカを止めようとしていた三人目もその場に倒れて、身体から砂が吹き出している。

 その砂はあっという間に三ヶ所に集まり、三体の異形の怪人を作り出した。



 青いコウモリのような怪人、黒い狼のような怪人。そして、緑の亀のような怪人。



 というか……そもそも何者? 瘴魔獣とは、明らかに成り立ちが違う……



「ウソ……イマジン!?」



 え!? こなた、この怪人のこと知ってるの!?



《……三体ですか》

「おいおい、マジですか?」

「さっきのヤツらといい、コイツら今回、三人一組スリーマンセルでも組んでんのか?」



 なぎくんやジュンイチさんも!?

 そんな私達の目の前で、怪物達は倒れたあの人達の中に吸い込まれていってしまった。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「くそっ、跳ばれた!」



 ジュンイチさんが思わず舌打ちする――とにかく僕らは良太郎さんから空のチケットを借りて、おっちゃんのひとりの額にあてる。

 すると、チケットにウルフイマジンの姿と、日付が浮かび上がる。



 ――3年前の、3月24日。



「……この日、何があったか憶えてませんか?」

「……仲間内で、花見ってヤツをしてたんだよ。
 そうしたら……」



 おっちゃんは、もうろうとしながらも答えてくれた。

 なんでも、もうひとりのおっちゃんに財布を盗まれたんだそうだ。



「オレが……ちょっと席を外した間だったんだ。
 どう考えても、アイツしかいなくて……」

「それで、仲が悪くなったんですか」

「オレは、アイツが謝れば許すつもりだったんだ。人間、出来心ってヤツはあるだろう?
 でも……」

「相手のおっちゃんは認めなかった」

「あぁ……」



 それで、仲がこじれにこじれて……そこをイマジンにつけ込まれた。



「……なぎくん、これどういうこと?」

「後で説明する。
 ギンガさんはこの人達のこと、お願い」

「ダメ。今ちゃんと説明して。 
 いったい何が起きているの?」

「聞き分けろ、ギンガ・ナカジマ。
 今は事態の収拾が先決だろう。事情を聞くのは後でもできる。優先順位を履き違えるな」

「でも!」



 と、ギンガさんがマスターコンボイと押し問答を始めた、その時――破砕音があちこちから聞こえてきた。

 そちらに僕らが目をやると……おいおい。



「木が……消えてくっ!?」



 僕達の今いる公園の木が、次々に消えていく。まるで砂の像が崩れるように、あっけなく。

 それだけじゃない。地面にベンチにトーチ……いろんなものが、前ぶれなく壊れ、抉れ、消えていく。



「始まったか……」

「あの、これって……」

「イマジンが過去で暴れてるんだよ」



 そう答えたのはこなた……うん、さすがは僕ら側。順応早いね。

 とにかく、イマジンが過去で暴れると、こういうことになる。



《こうやって、時間を消していくんです。
 人も、過去も、現在も、未来も》



 そう。イマジンが過去で人を殺せば、当然その人は“今”から消える。







 でも……なんでだ?



 何のためにヤツらはミッドに来た?

 なんで、手口が最初の頃のそれに戻ってる?

 過去で契約者の人生を乗っ取るだけならともかく、破壊活動を行なうことに何の意味がある?







「恭文くん」

「そっちはどうだ?」

「あ、良太郎さん、ジュンイチさん」



 ……集中だ。今はそこはいい。

 でも……よくわかったよ。



「……やっぱり同じ日だったんだね」



 そう。良太郎さんやジュンイチさんのチケットにも、同じ日付が載っていた。



「契約内容って、やっぱり……」

「うん。
 僕の見た人は、相手を叩きのめしたいって……
 ジュンイチく……さんの方は、それを止めたいって、契約したみたい」

「とにかく、すぐにイマジンを追うぞ。
 恭文もそれでいいな」

「はいっ!」







 そうして、僕達は過去へと跳ぶことになった。

 新暦73年の、3月24日へ――空から現れた、白い時を駆ける電車に乗り込んで……





















「……信じられない」

「でも、本当だよ」



 結局、ギンガさんもついてきた。今は貨物室で、ビークルモードでおとなしくしているはずのロードナックルと一緒に。

 仕方ないので、僕らと、あっさりと状況を受け入れてくれたこなたとで事情と基礎知識の説明。



「あの……ギンガちゃん」

「はい」

「あの、さっきも話したけど、ボク達のことが時空管理局の間に広まっちゃうのはマズイんだ。
 六課の人達や恭文くん、ジュンイチく……さんはまだいいけど……」



 ……ギンガさん、その苦い表情はやめてあげて。良太郎さん困ってるから。



「本当は、局を信じてくれるとうれしいんですけど……」

「……ごめんなさい……」

「……すみません。ちょっとイジワルしちゃいました。
 私も“JS事件”で局の暗部に触れたひとりですから……組織改革の終わった後ならともかく、今の局を信じてもらおうっていうのが、虫のいい話だということは、わかっているつもりです」



 それじゃあ……



「私も、みなさんやこの電車が存在していることは、黙っておきます。
 その方がいいんだよね、ジュンイチさん、なぎくん」

「あぁ。
 悪いな、片棒担がせちまって」

「ありがとう、ギンガさん」



 ……さて、それはともかく、だ。



「おい、モモタロス。
 さっきからオレ達とやけに距離をとっていないか?」

「そんなんじゃねぇっ!
 オレは……その……こっちが好きなんだよっ!」



 ヒューマンフォームで同席してるマスターコンボイの質問に、モモタロスさんが答える――食堂車の入り口ギリギリの壁際から。



 いや……モモタロスさんには悪いけど、見るからに距離とってますから。

 それに声もなんか震えてるっぽいし……



「…………ふむ」



 ん? ウラタロスさん、モモタロスさんとスバルを見比べてどうし――あ。



「…………ある」

「なぎくん?」

「モモタロスさんが距離をとる理由……ある」



 言って、僕が見たのはスバルだ。



「…………あたし?」



 スバルが不思議そうに自分を指さす傍らで、ウラタロスさんはモモタロスさんに告げる。



「先輩……」











「スバルちゃんが怖いんでしょ」











『えぇっ!?』



 ウラタロスさんの言葉に、一同が騒然となる。



「おい、亀! てめぇ、そりゃどういう意味だっ!?」

「スバル、ちょっちカマン」

「はい?」



 呼ばれたスバルの背中を押して、こなたがモモタロスさんの方へとスバルを押し出して……あ、逃げた。

 座席を次々乗り越えて、反対側の入り口まで。それもものすごい勢いで、壁とかにぶつかりながら、座席やテーブルに何度もつまずきながら。



「……そういえば、さっき隊舎の食堂で『嫌われてるんじゃ……』って言ってたな。
 ありゃ、こういうことか」

「う、うん……
 やっぱり嫌われてるよね? あたし……」

「あー、そういうことじゃないよ、スバルちゃん」



 ジュンイチさんの言葉に凹むスバルを、ウラタロスさんがフォローしてくれた。



「スバルちゃんがどうこうっていうんじゃなくて……先輩、どういうワケか犬がダメなんだよ」

「あ、あたし犬じゃないですよ!?」

「『犬っぽい』ってレベルでもアウト。そのくらいひどいんだよねー、先輩の犬嫌い」

「それにスバルのわんこキャラが引っかかったのか……
 恭文が『豆芝』ってあだ名つけたのは伊達じゃなかったってことだな」

「お兄ちゃん、それフォローになってないよ!?」



 ジュンイチさんにまでわんこ呼ばわりされたスバルには悪いけど……実際引っかかってるモノはしょうがない。



 なんとかしたいところだけど、今は過去で暴れてるイマジンだ。

 もうすぐ到着……さぁ、ケリをつけてやる!





















 ……着いてみると、そこはさっきの公園。ただし3年前の。

 満開の桜がきれいなそこで、三体のイマジンが大暴れしている真っ最中だった。

 ま、ここまでは予想通り。さっさとブッ飛ばして帰りましょ。

 そうして、僕と良太郎さん、マスターコンボイにジュンイチさん……でもってスバルとこなたはデンライナーから降りる。

 おや、コウモリと狼と亀がにらんできてるし。おー怖い怖い。

 なお、ギンガさんとロードナックルには一般市民の避難に回っていただきました。



「うし、バシッといくか」

「うん。いくよ、モモタロス」



 言って、良太郎さんはモモタロスさんと並び立ち、ベルトを腰に巻く。



「僕達は誰が行く?」

「別にお留守番要員いらないだろ。
 良太郎とモモタロスをセットで考えりゃ、実質六対三だ。イマジン一匹につき二人で、一気につぶして終わらせちまおう……つか、ぶっちゃけめんどいし」



 声をかける僕に答えるのはジュンイチさん……“装重甲メタル・ブレスト”は身につけていないけど、すでに爆天剣はスタンバイ済み。戦闘準備完了だ。







「変身」

《Sword Form》







 そして、良太郎さんがパスをベルトにかざし、モモタロスさんが中に入って電王・ソードフォームへと変身。







「……俺、参上っ!」







「ホントに……ホントに電王なんだ……っ!」



 ……こなたが感激してる。気持ちがわかるので止めません。止めませんとも。







「よぅし、スバル! 私達もいくよっ!
 アイギス! マグナムキャリバー! スタートアップ!」

「マッハキャリバー! セットアップ!」







 大張り切りのこなたがデバイスをセットアップ。スバルもその後に続いて二人も準備完了。でもって……







『……変身っ!』

《Riese Form》

《Infinite Form》








 締めは僕とマスターコンボイ。二人で騎士甲冑を装着する。



「へっ、ミッド・デンライナー署の初出動だぜ!
 いつも以上に、クライマックスで行くぜ!」

「はいっ!」



 モモタロスさんに僕が答え、みんな一斉に突撃。迎え撃つイマジン達と激突する。

 僕はジュンイチさんとバットイマジン。ウルフイマジンはマスターコンボイとスバル。でもってトータスイマジンにモモタロスさんとこなたが襲いかかる。

 よかった。モモタロスさんがスバルを怖がってたのが引っかかってたけど、この組み合わせなら……











 ……はて、何か忘れているような?







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ずぁらぁっ!」







 気合の入った咆哮と共に、狼のイマジンはその手の剣を一閃。放たれた光刃がブーメランのように回転しながらこちらに襲いかかってくる。

 だが――







「ぬるいっ!」







 そんな攻撃にむざむざやられてやるつもりはない。オメガの一振りで真っ向から叩き斬り、







《Hound Shooter》







 放った魔力弾の群れが、逆に狼のイマジンを打ち据える。







「たぁぁぁぁぁっ!」







 そこへ突っ込むのがスバルだ。マッハキャリバーのダッシュで突撃、ひるんだ狼イマジンの腹にリボルバーナックルを着けた右拳を叩き込む。

 なんとか耐え、数歩の後退で済んだ狼イマジンだが、すでにオレが追撃に入っている。スバルの後を追う形で距離を詰め、手にしたオメガで斬りつける。

 たたらを踏む狼イマジンの背をスバルが蹴り、戻ってきたところを再びぶった斬る。







「てめぇらっ! 二対一なんて卑怯だろうが!」



「数の差をひっくり返すこともできないザコはみんなそう言うんだ!」







 文句を言ってくる狼イマジンに言い返しながらもう一撃。地面を転がるヤツにオメガの切っ先を向け、



「悪いが、この程度を卑怯だとは思わんな。
 こっちは二対一どころか、一小隊相手にしても余裕でひっくり返すバケモノを知ってるんでな」

「お兄ちゃんと比べるのは、いくら何でもこの人(?)がかわいそうだと思うんだけど……」



 気にするな、スバル。

 この程度のザコ、気遣ってやるだけの価値もない。







「ザコって言うなぁっ!」



「そうやって見え見えの挑発に引っかかるところがザコだと言うんだ」







 怒りの声と共に突っ込んできた狼イマジンをカウンターで斬り飛ばす。



 主導権は渡さん。一気につぶすぞっ!







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「でぇりゃあっ!」







 気合一閃、ジュンイチさんの振るった爆天剣の刃が、空中から飛びかかってきたバットイマジンにカウンターを打ち込む。







「ぐわっ!?」



「まだ終わりじゃないぜ!」







 体勢を崩し、それでもなお飛び続けるバットイマジンに、ジュンイチさんが腰に巻いていた帯をムチのように振るい、巻きつけた。



 柾木家印の特殊ゴム製の帯は、まるで逆バンジーか、はたまたバラエティ番組の企画の一場面のようにジュンイチさんの身体を引っ張り、バットイマジン目がけてすっ飛ばす。







「追撃いくぜ!」







 そして、追いついたジュンイチさんが爆天剣でもう一撃。今度こそバットイマジンが墜落していく。







「恭文!」



「お任せっ!」







 で、墜落地点には僕がいる。落ちてくるバットイマジンをフルスイングでカッ飛ばす。







「おのれぇっ!」







 もちろん、相手もやられてばかりじゃない。身を起こして、バットイマジンが両手から何かを放つ。



 不可視の……衝撃波? 超音波? コウモリだからか?



 まぁ、いずれにせよ――







「その程度でオレに当てようってか……?
 ……なめるなぁっ!」







 狙われたジュンイチさんには届かない。左手から放った炎が衝撃波を飲み込み、もろともにバットイマジンを吹き飛ばす。







「運が悪かったね。
 今回のメンバーで、よりによって僕とジュンイチさんに当たっちゃうなんて」



「なんだと!?」







 僕に言い返して、バットイマジンが僕に向けて衝撃波を放つ――けど、それこそジュンイチさんの言う通り『なめるな』だ。迷わずアルトで両断する。







「何っ!?」







 まさかぶった斬られるとは思っていなかったんだろう。バットイマジンが驚く――うん、スキだらけなので距離を詰めて袈裟斬りに斬りつける。



 さらに左から一閃。たまらずバットイマジンが後退して――その肩がポンッと叩かれた。



 振り向くと、そこにはニッコリ笑うジュンイチさんがいて――







「うりゃあっ!」







 思い切り、バットイマジンを蹴り飛ばした。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「いくぜいくぜいくぜぇっ!」







 突っ込んで、斬りつける――防御しようとしてやがるが、かまうもんかよ!



 ガードを固めきる前に入った一撃でイマジンのヤツがひるむ。そのまま一気に攻め立てる。



 何発か入れて、仕上げに思い切り一撃。イマジンのヤツがよろめいて――







「ごめんね、まだいるのよっ!」







 そこに、青坊主の仲間だっつー青娘が突っ込んできた。左手に着けた、楯と一緒になった剣で思いっきりイマジンに斬りつける。

 思いっきり加速をつけた状態から、勢いをつけてとびきりの一撃か。自分のパワーのなさを他でフォローしやがった……戦いってヤツをわかってるじゃねぇか!







「まーね!
 これでもっ!」







 立ち上がってきた亀野郎の拳をかわして、青娘は剣でもう一撃――顔面にキッチリ入れやがった。







「柾木ジュンイチの弟子やってますからっ!」







 さらに体重を乗せて思い切り突き込んだ。腹にイイのをもらって、イマジンがまた地面を転がる。



 それでも立ち上がるイマジンに、今度はオレが斬りつける。ふらついたイマジンに向けて青娘が跳ぶと、アイツのはいてるローラーブーツ、右足のカカトのところからロケットみたいに火を吹いて、








「こなちゃん旋風脚っ!」








 おぉっ! プロペラみたいに回転しての連続蹴りか! 何発かもらったイマジンがブッ飛びやがった!







「お前、おもしれぇ技持ってんじゃねぇか!
 さすが、ジュンイチの弟子なだけのことはあるな!」

「あれ、先生の事は名前で呼んでるんだ。
 恭文ですら『青坊主』なのに」

「え゛?」



 …………やっべー……



「い、いや、アイツ、特徴らしい特徴ないだろ。
 だから仕方なくだよ、仕方なく!」

「そう?
 あんな黒ずくめ、立派な特徴だと思うけど」

「ぐぁ」



 やっ、やっべーっ! コイツけっこういいカンしてやがるぞっ!?



〔モモタロスがボロ出しすぎなんだよ……〕



 うっせぇっ! 良太郎だってジュンイチに怪しまれてたじゃねぇかっ!







「とにかく、ビシッと決めるぞ! 下がってろ、青娘!」



「はーいっ!」







 こうなりゃあのイマジンをドハデにブッ飛ばす! それでなんとかごまかしてやる!







《Full Charge》







 パスをベルトにかざして、放り出す。エネルギーのたまったデンガッシャーの刃を飛ばして、あの亀イマジンに――











 ――って、何ぃっ!?






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 それは突然だった。







「イマジンが!?」



「分かれた!?」







 モモタロスさんとこなたに痛めつけられていたトータスイマジンが、いきなり二体に分裂したんだ。

 もう一体の方は甲羅の下の手足が赤くて、頭にウサギの耳がついてる。で、両足をそろえてぴょんぴょんと飛び跳ねている。

 とにかく、二体に分かれたことでモモタロスさんの“俺の必殺技”、エクストリームスラッシュは狙いを外して不発……で、何アレ!?







「……思い出した!
 アイツ、リュウタロスと侑斗がガチでバトった回に出てきた分裂イマジンじゃねぇか!」







 …………あ。



 ジュンイチさんの言葉に思い出す――あぁぁぁぁぁっ! そうだ! 何か忘れてると思ったらそれだ!



 アイツのイメージ元は『うさぎとかめ』。一見するとその亀の方からしかイメージを持ってきてないように見えるけど、実はウサギと亀、両方のイメージを宿してたんだ。



 だから、ウサギのイメージを引き継いだ分身体を持ってる。話の中でもそれでウラタロスさんを振り回してくれたんだった。







「お〜ま〜え〜ら〜っ!」



「ジャマなんだよっ!」







 ローテンションな元々の方と、新たに分裂したウサミミ付き。二体のトータスイマジンが口から放った弾丸の嵐がモモタロスさんとこなたを狙う。



 モモタロスさんはすぐに対応してデンガッシャーで防ぐけど、







「ふぎゃっ!?」







 こなたが反応できなかった。バリアジャケットが直撃は防いでくれたけど、踏んばりきれずに吹っ飛ばされる。







「こなた!?」







 その光景にスバルが声を上げて――って、バカっ!







「どこ見てやがる!」



「きゃあっ!」







 言わんこっちゃない。ウルフイマジンにブッ飛ばされて――





















 モモタロスさんにぶつかった。





















 ……って、マズイでしょ、あの二人はっ!







「どわぁぁぁぁぁっ!?」







 案の定、今度はモモタロスさんがパニック。スバルを放り出して逃げ出してしまう。



 おかげでスバルがトータスイマジン二体の前に取り残されてしまう――ダメだ。吹っ飛ばされた上にモモタロスさんにまで放り出されて、完全に体勢崩れてる!







「スバル!」



「どこ行くつもりだ、オラぁっ!」







 フォローに向かおうとしたマスターコンボイはウルフイマジンにジャマされて近づけない。僕もジュンイチさんもここからじゃ間に合わない。







「ま〜ず〜は〜っ!」



「お前からだぁっ!」







 まだ立て直しきっていないスバルに向けて、二体のトータスイマジンが身をそらして――





















「危ねぇっ!」





















 間に割って入ったモモタロスさんが、スバルの楯になってトータスイマジンの弾丸を浴びていた。







(第4話に続く)





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



次回、とコ電っ!



「……ごめんなさい」

「スバルさんが謝ることないですよ。
 悪いのは全部バカモモなんですから……」



「いや、だから、モモタロスのスバル恐怖症を治すんだろう?」



「小さい頃のあたしは、本当に弱くて、泣き虫で……
 悲しいこととか、辛いことにいつもうずくまって、ただ、泣くことしかできなくて……」



「そのケンカ、オレが……いや!」

「あたし達が買うよ!」







第4話「スバル、参上!」







「……俺、参上っ!
 …………って、なんじゃこりゃあぁぁぁぁぁっ!?」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あとがき



Mコンボイ「いよいよ最初のイマジン事件に立ち向かった第3話だ。
 とはいえ……」

オメガ《いきなり前途多難な展開ですね。
 まさか、原作のTVシリーズではギャグで済まされていたミスタ・モモタロスの犬嫌いが危機を招くことになるとは……》

Mコンボイ「これ……誰が悪いんだ?」

オメガ《まぁ、誰も悪くない、不幸な事故と言いますか……》

Mコンボイ「次回の後編でこの一見にどんな決着をつけるのか……」

オメガ《そう苦労はないと思いますけどね。
 ミス・スバルもミスタ・モモタロスも根は単純ですから。きっかけさえあればあっさり治ってしまいそうな気がしますよ、私は。
 ……さて、そんなこんなで、そろそろお開きの時間ですね。
 みなさん、今回も読んでくださって、本当にありがとうございました。
 次回応援よろしくお願いします》

Mコンボイ「次回も必ず読むがいい」





(おしまい)


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あきゅろす。
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