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頂き物の小説
最終章V「とある魔導師と暴走する暴君の最終決戦」



「――――――っ!?
 ヤスフミ!?」



 ヤスフミ達がジュンイチさんと戦っている辺りで、今までとは規模がケタ違いの爆発が起きる――アイツら、まさか!?



「ガネット、みんなは大丈夫なの!?」

《現場周辺の残留エネルギー濃度が濃く、判別できません》



 メイルのヤツが自分のデバイス、ガネットに尋ねるけど、返ってくる答えは芳しくない――くそっ!



「ライラ! クレアさん! なのはさんは見つかったか!?」

「いえ、まだ……」

「こっちもいないよ!」



 くそっ、なのはさんも見つからないか……



 かと言って、今のジュンイチさんにオレが向かっていったって……







 せめて、バルゴラが手元にいてくれれば……











「………………いた!
 ダーリン! こっち!」

「高町なのははここにいる!」







 ――――――っ!



 レヴィアタンやハルピュイアに呼ばれて、そちらに急ぐ――確かに、そこになのはさんは倒れていた。







 ただ……かなりの重傷で。







「スタンピー! 来てくれ!
 なのはさんの容態がヤバイ!」

「う、うん!」





 オレに呼ばれてスタンピーがすぐにやってきた。なのはさんのケガのひどさを見て一瞬ひるんだけど、すぐに手当てに取りかかる。



 頼むぞ……これでなのはさんまで……なんてことになったら、それこそ最悪じゃないか……!





 半ば神にも祈る思いで、オレは思わず空を見上げて――







「………………ん?」



 その視界に偶然それは入ってきた。



 トランスフォーマーがひとり、スタジアムの観客席に叩き込まれて気絶してる。







 アイツは……確か六課の資料で見た。ロックダウンとかいう賞金稼ぎだ。



 前に、ディセプティコンに雇われてヤスフミ達と戦ったって……







 けど、どうしてアイツがここに……?





















 ………………ん?





















 ディセプティコンに“雇われていた”……ってことは、アイツ……











とある魔導師と機動六課の日常×魔法少女リリカルなのは〜Master strikerS〜



とある魔導師と守護者と機動六課の日常



最終章V「とある魔導師と暴走する暴君の最終決戦」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「…………っ……」







 ………………ん……あれ?







 意識が飛んでた……どうなったんだっけ?



 確か、暴走したジュンイチさんに突っ込んでいったら、カウンターの熱線くらって……











「キャロ!?」











 聞こえてきたのはフェイトの悲鳴――って、キャロ!?







「キャロ、ジャックプライム、大丈夫!?
 あずささん、シャープエッジも!」







 フェイトが介抱しているのはキャロとあずささん……近くにはシャープエッジや、合体の解けたジャックプライムも倒れている。







「エリオ! アイゼンアンカー!
 こなた、しっかりしろ!」







 イクトさんのところにはエリオにアイゼンアンカー、でもってこなた……って、まさか!?







《マスター、となりと……後ろです》







 アルトに言われて、ようやく気づく。







 細かい粉塵に埋もれるようにして倒れてるのは――







「スバル!? ティアナ!?」







 アルトの示した僕の後ろにはジェットガンナーやロボットモードのマスターコンボイも倒れてる……フェイトやイクトさんと同じパターンだ。



 何が起きたのか……この状況を見れば一目瞭然。







「ムチャ、しやがって……!」







 かばったんだ……ジュンイチさんの砲撃に吹っ飛ばされそうになった、僕達を。







「アハハ……やっぱり、ムチャだったかな……?」

「当たり前でしょうが……まぁ、付き合ったあたしが言える立場じゃないけどさ……」



 いつもの元気はどこへやら、な感じだけど……なんとか笑顔を浮かべてスバルとティアナが返してくる……ホッ、とりあえず、命に別状はなさそう。



「ったく……また思い切ったことするよ」



「このくらいしか……できないから」



 とにかく、まだ相手が健在な以上、すぐに立ち上がる――そんな僕に答えたのはスバルだった。



「あたしには……お兄ちゃんと、戦うなんて……できないから……
 だけど……守るくらいなら、なんとか……ね」

「それでみんながケガしてたら世話ないでしょうが」



 あー、もう。変なトコばっかりなのはに似おってからに、コイツらは。







「まったく、だ……!
 しかもそれに、オレまで巻き込んでくれたワケだしな……!」







 …………って、マスターコンボイ!?







「貴様と違って、オレは戦う気マンマンなんだ……巻き込んでくれるなというんだ……」



 言って、マスターコンボイはオメガを支えに立ち上がる。まだまだやる気みたいだけど……やれる?



「当たり前だ。
 オレを誰だと思ってる」

「はいはい。天元突破なこと言ってないで。
 さっさと立ってよ――あそこで今にも飛びかかってこようとしてるジュンイチさんが動き出す前に」



 そう。ジュンイチさんは今のところ動きを止めている……というか、こっちをじっくり観察中。



 ったく、自分の与えたダメージの確認ってワケ? ブチキレててもそういうところを忘れてない辺りはジュンイチさんらしいけど……ちょっとくらい油断してくれてもバチは当たらないと思わない?



「まったくだな。
 “地上最強の戦闘生物バトルクリーチャー”の自称は、自画自賛でもハッタリでもないと思い知らされる」



 エリオとこなたを広めのガレキの上に寝かせてイクトさんも立ち上がる。そして――



「だからって……ジュンイチさんをこのままにしておけないよね」



 フェイトもだ。エリオやキャロがこんなになって、キレるなりショック受けるなりすると思ってたけど……大丈夫そうだね。



「自分が冷淡な人間みたいで、イヤな感覚だけどね……」



 苦笑してみせるフェイトだけど……うーん、なんか、むしろショック受けなさ過ぎなくらいかも。



「かも……ね。
 不謹慎かもしれないけど……うれしくなっちゃって」

「うれしく……?」

《ホントに不謹慎ですね。あなたそういうキャラじゃないでしょうに。
 で……どうしてまた?》

「うん……
 確かに、エリオやキャロ……あ、もちろんスバル達もだよ? みんながやられたのはすごくショックだよ。
 でも……みんな、“JS事件”で隊舎を攻め落とされた時、ディードの乗るマグマトロンにやられた時のダメージの方がもっとひどかった。
 あの時のマグマトロンよりも、今のジュンイチさんの方がよほど強いし、よほど容赦がない……そのジュンイチさんを相手に、あの時よりも耐えられる、そのくらい、みんな強くなってくれたんだって思ったら……ね」

「フンッ、当然だ。
 コイツらはこのオレと組んでるんだぞ……そのくらいできてもらわなければむしろ困る」



 本当にうれしそうなフェイトの言葉に、マスターコンボイが自慢げに鼻を鳴らす……はいはい、ツンデレ自重してねー。



「誰がツンデレだっ!?」

『ん』



 僕、フェイト、イクトさん、3人そろってマスターコンボイを指さす……うん。心が通い合ってるってスバラシイね。



「その通い合った心でいぢられるオレはたまったもんじゃないんだが――なっ!」



 言いながら――マスターコンボイが地を蹴った。同じく気づいていた僕らもそれに応じて散開。僕らの間を駆け抜けたマスターコンボイが、オメガの一振りで飛び込んできたジュンイチさんの右手の爪を受け止める。



 受け止められたジュンイチさんの爪から甲高い音が――って、ヤバイ!



「マスターコンボイ!」

「わかっている!」



 僕に答えて、マスターコンボイはとっさにジュンイチさんを蹴り飛ばす――あのまま押し合っていたら、マスターコンボイはともかくオメガがヤバかった。



 理由はジュンイチさんのあの爪――甲高い音の正体は、あの爪が高速で振動していたことによるもの。



 ジュンイチさんの身体のあちこちにある、爪や骨が変化した刃、そして翼のエッジ――これらすべてが、超高速で振動することで斬れ味を増すことができる高周波ソード。高速振動状態でヘタに攻撃を受け止めれば、防御もろともぶった斬られる。



 救いがあるとすれば、アレが常時高速振動状態にあるワケじゃない、ってことくらい。たぶん……強度には定評のあるアルトの刀身だって、アレを高速振動状態で受ければひとたまりもないと思う。







 となると――







「フェイト!」

「うん!」







 僕に答えて、フェイトがザンバーをかまえて突っ込む――そう。ザンバーの刃は魔力でできてる。いくらぶった斬られようと、魔力の消費こそあれ、武器が使用不能という事態にはならない。



 それに、フェイトの魔力が循環しているザンバーの魔力刃は、原理自体は高周波ソードと変わらない。非殺傷設定のせいで斬れ味を披露する機会には恵まれないけど、たぶん本気の斬れ味はジュンイチさんの高周波ソードにも負けてない。







 つまり、ジュンイチさんに高周波ソードがある以上、近距離で相手ができるのはフェイトしかいない。そして――







「ライオット!」







 フェイトのフルドライブ、ライオット――バルディッシュのザンバーが二つに分かれて、鎧として装着していたパワードデバイスのジンジャーが分離。さらにバリアジャケットもマントや上着がパージされて……僕としては慎みをもーちょっと気にしてもらいたい感じの軽装になる。







 対して、ジュンイチさんはそんなフェイトの変化にもかまわず、右腕での一撃でカウンターを狙う――けどっ!







「そんなのっ!」







 今のフェイトを捉えるには、さすがのジュンイチさんもスピード不足。フェイトは余裕でジュンイチさん一撃をかわして背後に回り込んで――ブッ飛ばす!



 さらに、飛び込んでたて続けの斬撃で、再生も、反撃も許さない――と、いうワケでっ!







「フェイト!」

「下がれ!」







 僕とイクトさんの合図でフェイトが下がる――そこに、イクトさんが炎をぶち込んで――







「鉄輝――」







 のけぞるジュンイチさんの懐に飛び込んで――アルトの斬撃を叩き込む!







「一閃っ!」







 まともに入った。もちろん思いっきり殺傷設定。思い切り斬りつけたアルトの刃はジュンイチさんの身体を深々と斬り裂く。



 向こうの反撃の余力を少しでも削るなら手足を斬り落とすのが定石なんだろうけど……シグナムさんやスターセイバーが実際それやったら、斬り落とされた手や尻尾が爆発したし。







 アレがジュンイチさんからのものなのか切り落とされたら自動で爆発するようなものなのかはわからないけど……爆発の可能性がある以上うかつにはぶった斬れない。







 まぁ、そんなワケでジュンイチさんの身体をぶった斬った。血しぶきを上げてジュンイチさんが後ずさりして――











「エナジー、ヴォルテクス!」











 その場から飛びのいた僕の背後から、マスターコンボイが砲撃を叩き込む!







 さすがにこれにはジュンイチさんもぶっ飛ばされる――けど、あの回復力を考えるとまったく安心できない。







 と、いうワケで!







「たたみかけるよ、みんな!」



「うん!」







 フェイトがうなずき、僕と二人で再度攻撃――身体を深々と斬り裂かれて、砲撃までくらって――それでもジュンイチさんは僕らの斬撃をかわして上空に飛び立つ。



 くそっ、あれだけの傷だっていうのに、ライオットやリーゼフォームのスピードにも反応してくるなんて、ホントにシャレになってないっ!







「逃がすか!」



「くらえ!」







 上空に逃げたジュンイチさんをイクトさんの炎が飲み込み、マスターコンボイがハウンドシューターを雨アラレと叩き込む――けど、











「ガァァァァァァァァァァッ!」











 ジュンイチさんはそれでも反撃に出てきた。ばらまいた生体ミサイルでこちらを牽制。さらに爆煙の中からも正確にこちらを捕捉して生体熱線砲をぶっ放してくる。







《Stinger Snipe》







 たて続けに放たれる熱線をかわしつつ、スティンガースナイプで反撃を狙う――効いてないけど。



 そして、再びばらまかれた生体ミサイルを全員がかわしていく――って!?







「フェイト! 足!」

「え!?――――――きゃあっ!?」







 僕の呼びかけに一瞬反応の遅れたフェイトの動きが乱れる――ジュンイチさんがミサイルに紛れて放った生体スラッシュハーケンがフェイトの足に巻きついてる。



 フォローに回ろうとするけど、ジュンイチさんはフェイトをそのまま振り回してこっちに――ぶつけるつもり!?







「っ、のぉっ!」







 飛んできたフェイトの身体を受け止める。すぐにアルトでワイヤー代わりの筋繊維を叩き斬ってフェイトを助けて――







「ヤスフミ!」

「――――――っ!」







 ジュンイチさんがこっちに向けて大口を開けてる――熱線砲!?



 僕がフェイトを助けて動きを止めてる間に狙うつもりか――けどっ!







 ジュンイチさんが熱線砲を吐き放つタイミングで、とっさに左右に散って回避。さらに――







「こっちを……忘れるな!」







 イクトさんが正面から、マスターコンボイが背中から斬りつける。身体を斬り裂かれて、ジュンイチさんの身体から鮮血が噴き出す。



 ついでにイクトさんが両足に斬りつけ、足の筋肉を傷つけられたジュンイチさんが地面に倒れる――翼を広げて飛び立とうとするけど、マスターコンボイに斬られた背中の筋肉が再生していないのか、無様に羽ばたくばかりで動けないみたい。







「…………アレだけやっても、死なないんだろうなー」

「だが、時間は稼げた。
 このスキに“力”を溜めろ。最大火力で……」



 つぶやく僕にイクトさんが答えて――その言葉が止まった。







「グルル……」







 地面に倒れるジュンイチさんの方から、ものすごい熱が発せられている。これって……







《熱線砲……ではありませんね。
 熱が収束していません。身体全体が高熱を発し始めているようです》

「傷を治すため……とか?
 身体の代謝を高めて、その副産物として体温が上がってる……みたいな」

「いや……それにしては、熱量が高すぎる……何をするつもりだ……!?」







 アルトの言葉にフェイトやイクトさんがつぶやく……イクトさんも初めて見る状態だってことか……



 そうしている間にも、ジュンイチさんの発する熱はどんどん熱量を上げている。熱線砲でも、再生の強化でもないとしたら、これって――







 ――――――まさか!?







「みんな、防御!」

「ヤスフミ!?」

「これ――」











「全方位への、無差別攻撃!」











 僕のその叫びと同時――





















 熱を伴った破壊の嵐が吹き荒れた。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「な、何だ、コレ!?」



 それは突然だった――スタジアムの中でスタンピーがなのはさんの手当てをしていたところに、いきなり外で……ヤスフミ達が戦っている辺りでとんでもない大爆発が起きた。



「エーデル、何があったんですか!?」

《みなさんがジュンイチさんと戦っているポイントで巨大な熱量が観測されました。
 おそらく、体内でチャージした膨大な熱エネルギーを、熱線ではなく全方位への放射として瞬間的に解放したのでしょう》



 尋ねるライラにライラのデバイス、エーデルが答えるけど……おいおい、マヂか。



 熱線の全身放射……今のジュンイチさんは、そんなこともできるのか……!?



「まぁ……人間の姿じゃできないわね。
 人間の姿でそんなの使ったりしたら……自分の服まで焼いちゃってあっという間に素っ裸だもの」

「はい、レヴィアタンは少し黙ろうか」

「えー? ハルたんのいけずー」



 こんな状況でもボケてくれたレヴィアタンをハルピュイアがたしなめる……すんません。もうしばらくそのエロリストを押さえていてください。



「それで……スタンピー。
 なのはさんの具合はどうなの?」

「んー、それがね……ちょっとおかしいの」



 傷つき、意識もないままに横たわるなのはさんを見守りながら尋ねるメイルだけど、スタンピーは首をかしげてそう答える……おかしいって、何が?



「なのはさんの傷はものすごくひどい……見ればわかると思うけど。
 けどね……ここまでの傷を受けて、意識もないのに、“バイタルはすごく安定しているの”」



 ………………は?



 つまり……こんな、生きるか死ぬかの傷を負っているのに、なのはさんの命には何の問題もないってことか……?



「うん……
 生体反応、すごく充実してるんだよ……変だよね? これって」



 スタンピーがもう一度首をかしげる……ホントにどういうことだ? コレ……



 まさか、ジュンイチさんが暴走前に何か手当てしてた……?







「ところで……ジン」







 スタンピーと同じく首をかしげるオレに声をかけてきたのはヴェルヌス……で、何?







「さっき、少し席を外してたみたいですけど……どこ行ってたんですか?」



「んー、ちょっとな……
 正直、望み薄だけど……」







「救援要請、してきた」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「………………っ、く……っ!」







 あ、危なかった……とっさに展開したプロテクション、なんとか間に合ったみたいだ。



 もっとも……攻撃の衝撃までは防げずに吹っ飛ばされたけど。







 見ると、フェイトやマスターコンボイ、イクトさんもなんとか防いだみたいだ。吹っ飛ばされた先でそれぞれ体勢を立て直そうと身体を起こしている。







《マスター!》







 ――――――っ!?







 アルトの言葉に、反応するヒマすらなかった――立ち上がろうとした僕の身体が、何かに力ずくで押さえつけられる。



 ――ジュンイチさんだ。こっちが体勢を立て直す前に仕掛けてきやがった!







 まだダメージは完全に再生してないみたいだけど……この状況はまずい。踏みつけてきたジュンイチさんの右足に、完全に押さえ込まれてる。







「ヤスフミ!」







 こちらに気づいて、助けに来ようとしてくれるフェイトだけど――ジュンイチさんが熱線でフェイトの目の前の地面を爆砕する。



 飛び散った破片に全身を打ち据えられ、フェイトが吹っ飛ばされる――まさか、直接狙ってもかわされるから、攻め手を変えてきた!?







「やってくれたな!」



「恭文を放せ!」







 続けて飛び込んでくるイクトさんとマスターコンボイには生体ミサイル。真っ向からカウンターをもらう形になったイクトさんが吹っ飛ばされて――







「オォォォォォッ!」







 マスターコンボイはとっさにヒューマンフォームに、ついでにインフィナイトフォームにまで変身して回避。ミサイルを突破してジュンイチさんに斬りつける――けど、オメガの刃が届くよりも先に、ジュンイチさんの振るった尻尾がマスターコンボイを殴り飛ばす。



 そして、ジュンイチさんは僕を踏みつけている右足に体重をかけてくる――ヤバ、踏みつぶすつもりか!?







 スピードを上げるために装甲を削ってるリーゼフォームじゃ耐えきれない。ほぼダイレクトに、2mを超える体躯のジュンイチさんの重量がのしかかってくる。



 肺から空気が押し出されて、肋骨がミシミシと音を立てているのがわかる……さすがに、これは詰まれたか……!?











 ヤバ、意識……が……





















「一体何をしている――柾木ジュンイチ!」





















 なぜかハッキリと聞こえたその言葉と同時――僕にのしかかってきていた圧力が消え失せた。







 僕の視界に落ちてきていた影も消えた――何が起きたのかは知らないけど、ジュンイチさんが僕の上からいなくなった……らしい。







 けど……一体、何が……?







 まだ遠のいていた意識がハッキリと回復しない……あれ? 今……持ち上げられてる?







「いつまで呆けているつもりだ。
 それでもオレを一度は退けた男か」







 ……あれ…………この声って……?







 だんだん、視界がハッキリしてきて、僕を持ち上げてる誰かさんの姿も――って!?







 ソイツの姿を、ソイツが何者かを理解したとたん、一気に意識が回復する……たぶん、驚きのせいで。







 だって……すごく意外な顔だったから。











 ………………うん。すっごく意外。なんでおのれがここに出てくる!?





















 マスターギガトロンっ!





















「ちょっと小耳に挟んでな。
 高町なのはが死にかけた上、柾木ジュンイチが血迷ったあげくに貴様らを皆殺しにしようとしている、とな」



 ………………どういう流れで小耳に挟んだか、聞いてもいい?



「こっちが聞きたいわ。
 いきなり、いつぞや雇った賞金稼ぎからそういう話が、な……」



 こいつらが雇った賞金稼ぎ……誰だっけ?



《ほら、アイツですよ。
 夜露死苦でヤン車なあんちくしょうの》



 …………あ、もしかして、ロックダウン!?







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「うまくいったみたいだな……」



 メイルのデバイス、ガネットのサーチャーがマスターギガトロンの反応を確認……よかった。動いてくれたみたいだな。



 とりあえず安堵のため息をついて、オレはスタジアムの観客席――ロックダウンが目を回して“いた”その場所へと視線を向けた。







 そう。あのマスターギガトロンの乱入はオレの差し金……目を回していたロックダウンを叩き起こして、アイツが前にディセプティコンからの仕事を受けた時に連絡用に使っていた回線からジュンイチさんの暴走のことをマスターギガトロンに知らせてもらったのだ。



 最初は「なんでオレがそんなことを……」っていう感じで渋ってたロックダウンだけど、暴走したジュンイチさんの暴れっぷりを見たとたんに顔色を変えて連絡してくれた。巻き込まれたらたまらないと思ったんだろうなー、マスターギガトロンに連絡入れたらそそくさと逃げていった。







「けど、ダーリン。
 マスターギガトロンが動かなかったらどうするつもりだったの?」

「んー、それはないと思ってたからな」







 レヴィアタンの言葉にそう答える――そう。オレはマスターギガトロンならこの話を聞いてすぐに飛んでくると踏んでいた。







「だって、瘴魔のデブリ降らせ作戦の阻止とか、“ゆりかご”決戦でユニクロンとの戦いとか……マスターギガトロンってこっちと反目してるし、物騒な野望を持っちゃいるけど、本当に肝心な時には、たいていオレ達と方向性が同じなんだよな。
 なんていうか……ベジータタイプ? “ライバル”だけど“敵”ではないっていう」

「あぁ、かませ犬ポジションってヤツ?」

「言いたいことはわかるけど黙ってようか、メイル」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「じゃあ……ロックダウンから話を聞いて、わざわざ乱入しに飛んできたっての?」

「まぁ、そんなところだ」



 尋ねる僕に、マスターギガトロンはあっさりとうなずいた。



「ありきたりなセリフだが……『貴様らを倒すのはこのオレだ』というヤツだ。
 貴様らを打倒することはオレ達の強さの指標だ……こんなところで同士討ちなどされては、貴様らを倒すことで世界に力を知らしめようとしているオレ達の立場がないんだよ」

「ずいぶんとはた迷惑なことで」

「……そんな軽口を返す余裕が出てきたのなら、もう安心か」



 軽口……そーいや、叩くどころじゃなかったかも。



 あー、ダメだ。どんな時も自分達のノリを通す。それが僕らの強さだったはずなのに……



「………………それに、だ」



 ………………? まだ何かあるの?



 だったら早く教えてくれないかな? あっちで暴走状態のお兄さんがこっちをにらんでるからさ。



「……やはり、この場からどかすことを優先して、手加減して蹴飛ばした程度ではあんなものか」



 あー、やっぱりジュンイチさんが僕の上からいなくなったのはあんたのせいですか。



「で、話の続きだが……別に大したことじゃない。
 オレとは別口の“救援”のご到着のようだ……とな」

「救援……?」



 僕が聞き返した、その時だった。











 ジュンイチさんの目の前に、人影が現れたのは。











「ガァァ



「やかましい」











 ジュンイチさんが反応するよりも早く――その腹に拳がぶち込まれる。



 一直線にぶっ飛ぶジュンイチさんに背を向けて――







「まさか貴様らの手助けをすることになるとは思わなかったが……
 ……姫様の頼みだ。力を貸そう」







 ホーネットは、僕らに向けてそう告げた。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ほ、ホーネット……!?」



 ウソ……どうして、ホーネットがここに?



 しかもあの様子……何が起きたのか、すでに把握してるみたいだけど……











「まぁ……わらわが説明したからの」











 って、万蟲姫……?



「うむ。
 立てるかえ?」



 そう。私の目の前に現れたのは万蟲姫だ。手を貸してくれるようなので、彼女の手を取って立ち上がr







「ふぇえっ!?」







 ……ろうとしたんだけど、支えきれなかった万蟲姫の方が私に向けて倒れてきた。



「うぅっ、こんなはずでは……
 フェイト殿、ちょっと重くないかえ!?」

「そっ、そんなことないよっ!?
 ちゃんと体重には気を遣ってるんだからっ!」



 うん。気を遣ってる。



 だって、ヤスフミやイクトさんに……って、そうじゃなくてっ!



「どうして万蟲姫がここに!?」

「んー、あ奴じゃ」



 答えて、万蟲姫が指さしたのは、暴走しているジュンイチさん。



「あ奴のとんでもない“力”を感じての。
 しかもお主らがそばにいたもんじゃから、これはマズイと。
 だって、お主らとあ奴とでは、“力”の規模が太陽と豆電球……は言いすぎか。
 仮面ライダーとショッカー戦闘員、くらいの差があったからの」

「うん、ゴメン。余計わかりにくくなった」



 けど……だんだん話は見えてきた。



 つまり……私達だけじゃジュンイチさんには勝てないと考えて、ホーネットに助けを求めに……?



「そういうことじゃ。
 挙式の際の恭文のウェディングドレス姿をあきらめてまで頭を下げたのじゃ。感謝するがよい!」



 ……あー、そういえば、そういう理由でケンカしてたんだったね、キミ達って。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「グルル……」

「やれやれ……身体だけでなく心までもが獣と化したか」



 今までさんざんぶちのめしても平然と起き上がってきたんだし、今さらホーネットの一撃をくらっても、案の定ジュンイチさんは倒れやしなかった……起き上がって、こちらに向けて警戒しているその姿に、マスターギガトロンがため息をつく。



「本当に、ヤツの正気を取り戻す方法はないのか?」

「少なくとも、オレ達の知る限りはな……」



 尋ねるマスターギガトロンに答えたのはイクトさんだ……撃墜されてないメンツの中で、一番ジュンイチさんの暴走態について詳しい人だしね。



「思い切って殺してしまってかまわん。
 “生体核バイオ・コア”がひとつでも残っていれば、そこから再生、復活できる」

「……つくづく人間をやめているな」

「だからこそオレ達を壊滅させることができた」



 ため息をつくホーネットにイクトさんが答えた、その時――











「ガァァァァァァァァァァッ!」











 ジュンイチさんが動いた。咆哮して、僕らに向けて口から熱線砲を吐き放つ――当然、回避っ!







「フンッ、正気ならともかく――ネメシス!」







 そして、マスターギガトロンが突っ込む――専用デバイス、ネメシスのウェイトモード、太刀型のそれをかまえて突っ込んで、







「ただの“獣”に成り下がった貴様に、このオレが倒せると思ったか!」







 叩きつけた一撃が、ジュンイチさんをぶった斬る!



 身体を真っ向から斬りつけられ、血しぶきを上げてジュンイチさんが後退――って、







「マスターギガトロン! ジュンイチさんの手足とか尻尾とか斬り落とさない方がいい!
 斬ったそばから爆破される!」

「忠告が遅い!」







 怒られた。敵のクセに。敵のクセにっ!







「ならば――刺し貫く、私の出番か!」







 続けて突っ込んだホーネットが、手甲に装備されたニードルを、回避し損ねたジュンイチさんの腕に突き立てる――けど、







「――――――っ!
 コイツ……っ!」






 突き立てたニードルが抜けない――筋肉を締めて、固定しやがった!?



 なんとか引き抜こうとしているホーネットへと尻尾を向けて――危ない!







「く――――――っ!」







 間一髪、手甲を外して難を逃れた。一瞬前までホーネットがいた場所を、ジュンイチさんの尻尾が刺し貫く。







「やってくれるな!」







 そんなジュンイチさんに向けて、マスターギガトロンが思い切り雷撃をぶちかます。直撃を受け、吹っ飛ぶジュンイチさんにイクトさんの炎が追い討ちをかける。



 そしてホーネットが再度飛び込む――炎に包まれるジュンイチさんに“力”を叩きつけて吹っ飛ばす――ついでにちゃっかりさっき残した手甲を回収して。



 地面を転がるジュンイチさんに向けて、マスターギガトロンが再度強襲。その身体を上方に蹴り上げて、







「フォースチップ、イグニッション!
 デス! ランス!」








 フォースチップをイグニッション。背中の、ビークルモード時の機首が分離して、槍となってマスターギガトロンの腕に装備される。



 展開されたデスランスを手に、空中で体勢を立て直すジュンイチさんに向けて突撃。回避も防御も許さず、先端から伸びたエネルギーの槍がその身体を貫いて、







「フォースチップ、イグニッション!
 ギガ、スマッシャー!」








 さらにフォースチップをイグニッション。胸の装甲が開いて、姿を現すのは埋め込み式の粒子砲。そこから放たれた閃光が、串刺しにされたジュンイチさんを吹っ飛ばす!



 その吹っ飛ぶ先にはホーネットが回り込んでいた。飛ばされてきたジュンイチさんにカウンター気味に拳を叩き込み、動きの止まったジュンイチさんを上空から飛び込んできたイクトさんが地面に向けて叩き落とす。







 さすが、ジュンイチさんのライバル(“元”含む)トリオ。あの顔ぶれでの連携なんて初めてだっていうのに息ピッタリだね?







 そんなことを考えていると、マスターギガトロンがイクトさんに尋ねた。







「おい、炎皇寺往人」

「何だ?」

「アイツを止めるには、再生できなくなるまで撃墜するしかない……だったな」

「あぁ」

「………………あと、どれだけ“殺せば”アイツは止まる?」

「………………聞くな」







 そう……これだけやられても、ジュンイチさんはまだまだ健在。受けた傷をものすごいスピードで再生させながら、上空のイクトさん達をにらみつける。







 けど……悔しいけど、マスターギガトロン達の加勢のおかげで、流れはこっち側にかたむいてきてる。このまま押し切れば……勝てる!








「とにかく攻めよう!
 ジュンイチさんを傷つけまくって、再生させまくれば、再生のための体力だっていつかは尽きる!」

「ヤツの“生体核バイオ・コア”が永久機関化していなければ、な!」

「それ言わないで! なんかありそうでムチャクチャ怖いからっ!」







 とにかく攻撃あるのみだ。マスターコンボイと一緒に突っ込んで、気づき、迎撃しようとするジュンイチさんに二人で飛び蹴りを叩き込む。



 さらにそこから二人同時の“鉄輝一閃”。さっきまでみたくぶった斬ってもいいけど、あえて非殺傷で叩き込む。



 いくらやっても再生される物理ダメージより、精神攻撃に近い魔力ダメージなら、と思ってのアプローチだ――それに、精神側に衝撃を与えることで、ジュンイチさんの正気を取り戻せるかもしれないし。



 そんなことを考えた僕らの同時攻撃をまともにくらって、ジュンイチさんがたたらを踏んで――ヒザをついた。







「効いてる!?」

「いや……今のところは……
 たぶん、ダメージの大小より、ダメージが今までとは感じが違うことに対する動揺だろう」







 声を上げるフェイトにはイクトさんが答える――くそっ、効果の違いがハッキリ出るほどのダメージにはならなかったか。







「だったら私がやってみる!
 ヤスフミ達より魔力が大きくて、非殺傷が使えるのは私だけだから!」

「うん、フェイト、お任せする」

「うん。じゃあ……万蟲姫はここにいて。
 みんなは援護、お願い!」







 僕のGOサインにうなずいて、万蟲姫をその場に残してフェイトが突っ込む――ジュンイチさんの振るった尻尾の一撃をかわして、ライオットのバルディッシュでたて続けの斬撃。

 一発、二発、三発……休む間もなく、高速且つ連続で叩き込んだ攻撃の回数が20を超えた頃になって、フェイトは二振りのバルディッシュを重ねてひとつにして――







「ライオット、ザンバー!」







 思い切り、斬りつける!







 さすがに、マスターギガトロン達みたいにブッ飛ばすのはムリだったけど、ジュンイチさんをたじろがせるには十分だった。のけぞるようにして数歩後退して――ジュンイチさんは仰向けにひっくり返った。



 すぐに身を起こして僕らをにらみつけてくるけど……間違いない。少しはダメージになってる。







「まさか、こんなところに攻略の抜け道があったとはな……
 このことに気づいていれば、スバル達にもまだ戦いようはあったろうに」

「あくまで『戦いようがあった』ってだけだけどね。
 攻撃面の凶悪さをなんとかする方法がないんだもの。ダメージを与えられる方法があっても、撃墜されたら同じだよ」



 僕と同じくダメージを確信したマスターコンボイにそう答える……うん、たぶん撃墜されるって未来は変わらなかったと思う。正直、僕だって自分がこうしてまだ持ちこたえられてるのが奇跡みたいに思えてしょうがないし。



 とにかく、突破口は見えてきたし、このまま……











「考えてみれば、柾木は自分の力場の特性のおかげで魔力ダメージの類を受けたことがほとんどない。耐性がついてなくても当然だな」











 ………………え?



 そのイクトさんの言葉に、思考が止まる。







 ……いや、まさか、さすがにそれは……



 けど……ジュンイチさんのこのデタラメぶりを考えたら、十分にあり得る話なワケで……







「――――フェイト! 今すぐトドメ! ジュンイチさんが止まるまで攻め続けて!」

「ヤスフミ!?」

「忘れたの!? ジュンイチさんの自己進化能力!
 今まで魔力ダメージに対する耐性がなかったって言っても……“これからもそうだとは限らない”!」







 僕の言いたい事がわかったのか、フェイトの顔から血の気が引いた――そう。ジュンイチさんの身体は今この瞬間にも“兵器”としての進化を続けてる。

 それがもし、今までの攻撃で魔力ダメージを学習して、耐性をつけようとしているとしたら……







「たぶん、魔力ダメージが通じるのは今しかない! 急いで!」

「う、うん!」







 フェイトがうなずいて、ジュンイチさんに突っ込む。その勢いもプラスして、ザンバーの魔力刃を思い切り叩きつける――けど、







「――――そんなっ!?」







 攻撃は確かに入った――けど、ジュンイチさんはさっきまでみたいにあからさまにダメージを受けた様子はない。多少のけぞっただけで、すぐにフェイトを見下ろしてくる。



 まさか――この短時間で耐性つけられた!?











「ガァァァァァァァァァァッ!」











 咆哮して、ジュンイチさんがフェイト目がけて右手を振り下ろしてくる。フェイトもとっさにかわすけど、死角から振り下ろされた尻尾に打ち据えられて、さらに全身から放たれた熱線に全身を焼かれる――アレ、さっきの全身放射の縮小版!?







「フェイトに……何してくれてんだ!」







 トドメとばかりに生体ミサイルをくらって、フェイトが吹っ飛ばされる――その瞬間、頭に血が上ったのがハッキリとわかった。

 うかつな攻撃だって冷静な部分の僕が警告してくるけど、そんなの知ったことじゃない。思い切り、全速力で突っ込んで――











 そんな僕の顔面に、何かが叩きつけられた。











 そのまま、それは僕の頭をしっかりと捕まえる――視界の隅にわずかに残った視界から、ようやく状況を把握した。







 ジュンイチさん……左腕伸びてる!?







 それで僕の頭をつかんで捕獲……って、まるっきりピッコロさんじゃないのさ! どんだけナメック星人大好きだったのこの人っ!?







「恭文を放せ――ぐわぁっ!?」







 そんな僕を助けようとしたらしい。突っ込んでくるマスターコンボイだけど……僕と同じようにジュンイチさんが伸ばした右腕に顔面をつかまれたのが視界のすみに見える。



 そして――ジュンイチさんは僕とマスターコンボイを振り回して――衝撃。







 地面……じゃない。僕とマスターコンボイをぶつけ合わせた!?



 さらに同じような衝撃が二度、三度……くそっ、僕らはクラッカーじゃないってのにっ!







 遊ばれてる――クラッカー云々を抜きにしても、そこはハッキリとわかった。



 今のジュンイチさんなら、僕らの頭を握りつぶすなんて簡単なはずだから……握力的な意味でも、高周波クロー的な意味でも。







「このッ、いい加減に……」







 こうなったら、腕を斬り落としてでも脱出してやる――斬り落とされた腕を爆破されるかもしれないけど、このままいたぶられるよりマシだ。



 そう思って、実行しようとした、その時――





















 “それ”が見えた。





















 まず目に映ったのは……闇。



 視界が……目の前のすべてが暗黒に閉ざされた。顔面をつかまれて、視界がふさがれているのとは別に。







 何が起きたのか、考えるヒマもなく……膨大な“ナニカ”が流れ込んでくるのがわかる。







【ここはどこだ!?】

【許せない!】

【なんでこんなことに!?】

【殺してやる!】

【オレのせいで!】

【守れなかった!】

【敵はどこだ!?】

【ぶち壊す!】

【守りたかったのに!】

【苦しい!】

【何もかも!】







 これ……何!?



 荒れ狂う感情が、情報となって僕の頭に流れ込んでくる。







 ……いや、感情だけじゃない。



 大量の映像……いや、イメージも、すごい勢いで流れ込んできて――これ、記憶……!?







【オレが殺した!】

【アイツらだけは!】

【……ありがと】

【オレのミスだ!】

【こいつらなら、オレを……】

【力が欲しい!】

【何人死のうが!】

【オレが死ぬべきだった!】

【こんな時がずっと続けば……】

【守るんだ!】

【オレが弱かったから!】

【………………ごめん】

【強くなりたい!】

【復讐してやる!】



 怒り、悲しみ、楽しさ、喜び……感情と、記憶が、ごっちゃになって、無秩序に僕の中で荒れ狂う。



 あまりの情報量に、頭の中がパンクしそうになる――けど、不思議とこれだけは理解できた。







 これは……











【オレを……殺してくれ!】



【レム、だぁーい好き!】







 ジュンイチさんの、頭の中身だ。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「レムーっ!」

「あぁ、また来たの?」

「うん!」



 ボクに気づいて、笑顔を見せてくれるレム――久しぶり!



「うん、そうね……4ヶ月ぶりかな?」



 最後に会ったのが春休みが終わる2日前だったから……うん、そのくらい。



「けど、『紛争地域を渡り歩いて修行してる』って言う割には、いつも私のいるキャンプに来るよね。
 ひょっとして……私を追いかけてきてる?」

「えへへー♪」



 そうだって言うのは、なんか照れくさくて……ボクはただ笑うだけ。



 そんなボクに、レムは不思議そうに首をかしげる――その拍子に、ほこりにまみれていてもそれでもキレイな赤い髪がフワリと揺れる。



 きょとんとしたその顔は、ボクよりも一回りは年上なのに、すごくかわいくて……けど、真剣な時のキリッとした顔もカッコよくて、何気にボクはお気に入り。







 とにかく……今はただごまかすだけ。



 だって……恥ずかしくて言えないし。











 レムのことが……好きだなんて。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「…………667はもうだめだな」

「あぁ……使えて、あと2回が限度だろう」



 液体に沈められた状態だっていうのに、外の人達が話しているのがわかる……もう、何度も繰り返された光景。



 外にいるのは、ボクの身体にいろいろなことをしてくる人達……痛くて、苦しくて、もうイヤなのに……ボクには何もできない。何かするだけの力も、残ってない。



 667っていうのは、あの人達がボクにつけた番号……他にも、何か別の名前で呼んでたような気もするけど……覚えてない。



「まぁいい。667はもう使いつぶそう。
 せっかくの生存例を失うのは痛いが……サンプルはもうひとつある」

「666……“ルシファー”か……
 しかし、ガキのクセに、大の大人がひとり残らずくたばった遺伝子強化に双子そろって耐えるなんてな……この兄弟、特別なのか?」

「さぁな。
 事前の検査じゃ、何の変哲もないただのガキだったって話だぞ? 遺伝子的にも特に変わりのない」



 何を話しているのかはわからないけど……666っていうのが……“ルシファー”っていうのが、お兄ちゃんのことだっていうのは、わかる。



 もう……どのくらいお兄ちゃんに会ってないんだろう……



 また会いたいよ……お兄ちゃんに。お父さんに、お母さんに、あずさに……







 …………レム……











 そして……外の人達に何度か身体をいじくられた後……





















 ボクは、“死んだ”。





















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ひっ、ひぃっ――がっ!?」

「た、助け……げぶっ!?」







 ボクの身体にいろいろした人達が、あっけなく“ボク”に引き裂かれ、踏みつぶされ、串刺しにされていく。







 それはすごく苦しそうで、痛そうで……ボクがされたことを思い出して、すごくイヤだった。







 こんなの、見たくない……けど、まるでボクの目に直接映り込んでいるみたいに、ボクは目の前に起きていることを見ることをやめられなかった。







 “ここ”に連れてこられてから何度か見た、ここを守ってるロボットがいっぱい出てきて、“ボク”を止めようとするけど……ダメ。あっさりと壊されて動かなくなる。







 どうしてなのかはわからないけど、どこに人がいるのかハッキリとわかる……その感覚に従って、“ボク”は逃げている人達を見つけて、ひとりずつ“壊し”ていく。











 そして、“ボク”が“ここ”にいる人達をみんな“壊し”て、ボクがそのことに対して何も感じなくなった頃……誰か来たのがわかった。











 その人達は、どこかに寄り道してたみたいで……その時に“ボク”のことを知ったみたい。まっすぐこっちに向かってくるのがわかる。







 だから……“ボク”も、その人達を迎えに行く……“壊す”ために。











 その人達は、“ここ”にいた人達よりも強かったみたい。“ボク”が何度も“壊そう”とするんだけど、なかなかうまく“壊せない”。







 けど……何回か叩いたらみんな動けなくなった。もうそろそろ……“壊れ”ちゃうかな?











「ダメ!」











 そんな“ボク”の前に、誰か飛び出してきた……あれ? この人、どこかで……







「もう大丈夫なの……だから、もうやめて!」







 何か言っているその人に向けて、“ボク”が右手を振り上げて――











 貫いた。











 他の人達と同じだ。あっさりと“ボク”の腕はその人のお腹を貫いて――











「……大丈夫」











 そこからが違った。その人は……自分を貫いた“ボク”を、自分の両腕で抱きしめてくれた。











「……大丈夫……だよ……
 だから……そんなに、怯えないで……」







 抱きしめてくれているその腕から、“ボク”に……ううん、ボクに、暖かいものが伝わってくる。



 まるで……“その人から消えていく温もりが、代わりにボクに流れ込んでくるみたいに”。







 けど……その暖かさに、ボクは覚えがあった。







 これ……この暖かさ……すごく、好きだったような……











 この暖かさ……











「…………大丈夫……大丈夫、だから……
 だから……帰ろう?」





















「………………ジュンイチ」





















 ………………レム?





















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 これが……ジュンイチさんの、過去……



 映像なのか、言葉なのかもわからない。



 ただ……確かに“理解”できるその情報は、僕の頭の中に確かに刻まれていた。







 イクトさんが言っていた「レム」という名前……その名前の主が何者なのかも、理解できた。



 たぶん……いや、間違いなく、イクトさん以上に。







 ジュンイチさんが身体をいじられる前に出会い、好きになった人……







 子供心から、かもしれないけど……本気で好きだった人……僕も、8年間ずっとフェイトのことが好きだったから……なんとなく、わかる。







 そして……











 そのレムさんを、暴走態となったジュンイチさんが、殺した。











 そして……この出来事が、ジュンイチさんが戦いの道に入ることになった、一番最初のきっかけ……











 ――――――だとすると、この後は……まさかっ!?





















ぅあぁぁぁぁぁあああああああああああああああっ!

 殺してやる……全部、全部だ!

 アイツらがいなきゃ、お兄ちゃんも、レムもっ!」






















 来たっ!







 気が狂いそうな……気が狂っていないのがおかしいほどの憎悪と殺意の奔流――気づくのが、身がまえるのがあと一秒、いや、一瞬でも遅れていたら、僕の意識は押しつぶされていたかもしれない。







 ちょっとでも気を抜いたら、その瞬間に、一瞬で飲み込まれてしまいそうな、こんな……こんなどす黒い感情を、ジュンイチさんは抱えていたのか……











 感情だけじゃない。ジュンイチさんのそれからの体験も、情報として僕の中に流れ込んでくる。











 自分に力を押しつけた者達。







 自分をバケモノに変えた世界。







 アイツらに負けない。







 ジャマをするヤツらに負けない。







 あんなヤツらがのさばる世界に負けない。











 齢8歳にして復讐鬼と化した、ジュンイチさんの戦いが始まった。



 父親の人脈を頼りに傭兵組合ギルドに所属……表ではただの小学生を装いながら、夏休みのような大型の休みや連休の度に訓練と戦いと、復讐に向けての準備に明け暮れた。



 あらゆる武器の扱いを学び、目につく限りに多様なミッションをこなし、考えつく限りの作戦を人道的、非人道的を問わず試し、身に着けた。政治や経済についても勉強して、戦場以外の舞台でも戦えるように自分を高めた。



 自分の“能力”も、当時伸ばせる極限まで伸ばした――“生体核バイオ・コア”によって自分の命を“バックアップ”することも、“情報体侵入能力データ・インベイション”もこの時覚えた。







 何度も戦った……その中で何度も負けた。何度も殺された。



 その度に……“死ねない”身体がジュンイチさんを生かした。



 復讐を遂げるその日まで……戦い続けるために。







 こなしたミッションの数が100を超え、奪った命が1000を超え……ジュンイチさんの世界で認定されている傭兵としてのランク、その最高位であるSSSを最年少で取得しても、ジュンイチさんの心が晴れることはなかった。



 自分が欲しいのはそんな経歴じゃない。自分達の運命を狂わせたあの人体実験……その首謀者達の命だけだったから。







 そう……それはゴールではなく、スタートラインだった。











 “柾木ジュンイチ”という存在が、僕の中に際限なく流れ込んでくる。







 復讐に狂い、悪意に満ちた記憶、その中に楽しい記憶もあったけど、すぐにそれ以上の悪夢に塗りつぶされていく。











 正直……恐ろしかった。







 怪物と化したジュンイチさんと戦うより……とどまるところを知らない憎悪と悲しみ、悪意に満ちたこの嵐にさらされることの方がよほど恐ろしい。そのくらいにすさまじい、負の感情の奔流。







 そして……ジュンイチさんは、この感情を自覚してしまった。







 自分の中にあるこの“悪意”のことを……











 だから……なんだ。











 場違いな話かもしれないけど……理解できてしまった。ジュンイチさんの色恋に対する異常なまでの鈍感さは、ここに起因していると。



 暴走態の問題だけじゃない。自分の中にこんな“バケモノ”がいる……そんな自分が、人に愛されるワケがない。愛されていいはずがない。愛してくれる人間なんかいるはずがない。



 そんな意識が、ジュンイチさんの中のそういった感覚を抑え込み、働かなくしてしまっている。











 だから……独りになることに抵抗がない。



 自分なんか誰にも愛されていない。だから心配なんかされるはずがない……だから、独りで消えても問題はない……







 推測なんてレベルじゃない。ジュンイチさんがそう考えているのが、ハッキリと伝わってくる。







 本気なんだ……本気で、自分をそんな“愛されるべきじゃない人間”として考えてる。それが……わかる。





















「………………ふざけんな」





















 気づけば、そう口に出していた。







「何、勝手に決めつけてんだ……!
 本当に心配して、本当にジュンイチさんのことが大好きな連中の気持ちも知らないで!」







 頭にきた。







 許せるはずがなかった。







 そんなふうに思い込んでいるジュンイチさんも……思い込ませている、ジュンイチさんの中の“バケモノ”も。











 決めた。



 何が何でも、ジュンイチさんは止めてみせる。



 止めて、正気に戻して……正気のジュンイチさんをぶん殴る。







 そして、ジュンイチさんの中の“バケモノ”について、言ってやるんだ。











 「だからどうした!」って。











「こんな“モノ”抱えてるから何だってんだ!
 人間、誰だって大なり小なり悪意を抱えて生きてるもんだろうがっ!
 教えてやる! そんなジュンイチさんでも、いなくなってほしくないって思ってる人がたくさんいるって!
 ジュンイチさんだって、心から笑ってもいいんだって!
 いつか約束した通り……守ってやる! ジュンイチさんの笑顔を、僕が!」





















 ダ     レ     ダ     オ     マ     エ     ハ     !?





















 初めて、この世界が僕に反応して――











 僕は、叩き出された。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「……ヤスフミ!」



「………………ふぇいと?」







 気がつくと、最初に視界に入ってきたのはフェイトの顔だった。







「よかった……気がついたんだ。
 マスターギガトロンがジュンイチさんの手から弾き飛ばしてくれたんだけど、そのまま目を覚まさないから……」



「ジュンイチさんの……手から?」







 フェイトの言葉に思い出す。



 そうだ……暴走したジュンイチさんの手に顔面をつかまれて、それで……







 “アレ”を見たんだ。







「一体何があったの? ヤスフミ。
 危険な状況だったのは間違いないけど、気絶するような攻撃でもなかったと思ったんだけど……」

「“情報体侵入能力データ・インベイション”」

「え……?」

「ジュンイチさんの能力。知ってるでしょ?
 暴走状態の副産物だと思うけど……それが僕を相手に暴発した」


 たぶん、つかまれたのが脳に一番近い頭だったってこともあったんだろうけど……







「……『達』をつけろ、『達』を」







 って、マスターコンボイ……?



 まさか……マスターコンボイも?







「ヤツの意識や記憶が問答無用で流れ込んできた……おかげで気分が悪くてしょうがない」







 あー、わかるわかる。あれは気分悪い。情報酔いするわ内容もグロいわで。







「だったら……僕が何言いたいかわかるよね?」

「無論だ。
 正直、アレはオレもムカついた」

「え? え?」







 フェイトが話について来れないでいるけど……説明してる時間はない。







 マスターギガトロンやホーネット、イクトさんを相手に、一歩も退かずに大暴れしているジュンイチさんに向けて、それぞれの相棒をかまえて――








「いくよ、マスターコンボイ!」

「皆まで言うなっ!」







 同時に地を蹴って――ジュンイチさんへと突っ込む!











「ガァアァァァァァァァァァァッ!」











 で、当然ジュンイチさんも気づいた。生体ミサイルでイクトさん達を追い散らすと、こっちに向けて熱線。



 しかも、口と両肩の熱線砲を総動員しての連射――だけどっ!







「そんなの!」



「くらってられるかっ!」







 そんなのでやられてやるワケにはいかない。かわしきれずに防御。動きを止められてしまったマスターコンボイを尻目に突撃。そのまま距離を詰めて、アルトで一撃っ!







「グゥッ!?
 ガァアァッ!」







 たたらを踏みながらも、ジュンイチさんはすぐに反撃。打ち出したスラッシュハーケンと伸ばした両腕が、あたりのガレキを薙ぎ払いながら僕らの方に迫ってきて――







「マスターコンボイ!」

「任せろ!
 エナジー、ヴォルテクス!」







 今度はマスターコンボイの番。エナジーヴォルテクスでジュンイチさんの攻撃を吹き飛ばす!







 押し戻されたスラッシュハーケンと伸びた両腕はジュンイチさんの上に落ちてきた。おかげで何やらからまってるようなので――吶喊とっかんっ!







「いくよ、マスターコンボイ!」

「タイミングは任せる!」



『ダブル! 鉄輝一閃!』







 全力で同時攻撃。二人で叩き込んだ鉄輝一閃が、ジュンイチさんをブッ飛ばす。







「な、何だ……!?」

「この二人……急に、動きが……!?」







 傍で見ているマスターギガトロンやホーネットが驚いてるけど……悪いけど相手をするつもりはない。今はそれよりもジュンイチさんをブッ飛ばす!



 体勢を立て直そうとするジュンイチさんの懐に飛び込んでアルトで一閃。さらに後ろに回り込んで、もう一撃!







「大盤振る舞いだ……全弾持っていけ!」







 僕の離脱に合わせてマスターコンボイがハウンドシューター。集中砲火で僕がアルトでつけた傷をさらに広げて――







「こいつは」

「オマケだ!」







 僕がアイシクルキャノンで追撃――そのスキに術式を組み直したマスターコンボイが、エナジーヴォルテクスを叩き込む!











 たて続けのクリーンヒットで、ジュンイチさんがブッ飛ぶ――致命傷にはまだ程遠いけど、このまま押し切って……











「ガァァァァァァァァァァッ!」











 って、しぶといっ!







 ジュンイチさんが反撃に放った熱線が僕らの間を貫く――まだまだやる気マンマンじゃないのさ!







 そっちがそうならこっちもその気! てってー的にブッ飛ばしてやろうじゃないのさ!







《マスターもマスターで、いつもとやる気が段違いですね。
 あなた、そういうノリの人でしたっけ?》

「ま、いろいろあったのよ。目ェ回してる間にね」







 そう。おかげでジュンイチさんのいろんなモノも知っちゃったワケで……











 ………………あのね、そのおかげでやる気になったのにこういうコト言うのもアレだけどさ、あぁいうのって、どっちかって言うと、ヒロインの役どころじゃないかな?



 たとえばなのはだよ。今回ガチに“囚われのヒロイン”の役どころだったんだし、そーゆーのがあってもよかったと思うんだけど。





















「あー……それについては条件クリア……なのかな?」





















 ………………って、この声!?







「なのは!?」







 いきなりの声にフェイトの驚きの声が上がる――振り向いた先には、ジンに支えられた、バリアジャケット姿のなのはがいた。







 ……つか、立ってるのもやっとって状態じゃないのさ!? 何しに出てきてるの!?







 それに、さっきの第一声。それって、まさか……







「うん……
 私も……“見ちゃった”。
 ジュンイチさんが暴走する、直前に……」







 言って、なのははジンから離れて、レイジングハートを支えにジュンイチさんへと踏み出す。







「とにかく……ここは任せて。
 私なら……ジュンイチさんを、止められる」

「何言い出してんのさ、このおバカっ!
 そんなフラフラの状態で何ができるっていうのさ!? ジンも何こんな重傷者連れて来てんの!?」

「オレだって止めたさ!
 けど、『連れてけ』って聞かないんだよ。『自分にしか止められない』『自分なら止められる』って……」



 僕の問いにジンが言い返してくる……何その自信。何か秘策があるってワケ?



「うん。まぁね……
 恭文くんも“アレ”、見たんでしょ? あの中に……ヒントがあった」



 “アレ”っていうのは、たぶんジュンイチさんの頭の中のことだろう。あの中に、ヒントが……?



 でも、ジュンイチさんの暴走を止める手段があったようには……







 過去、ジュンイチさんが暴走した回数は片手で数えられる程度しかなくて……そのほとんどが、攻撃目標の全滅という結末を迎えている。

 チンクさん達相手に暴走した時だって、チンクさん達が自力で生き残った、と言うより、単に暴走したジュンイチさんがチンクさん達が死んだと誤認したおかげで生き延びることができた、っていう感じだ。



 例外……つまり、生存者の存在が明らかな状態で暴走が止まったのはたったの2回。“瘴魔大戦”中、暴走してライカさん達を皆殺しに仕掛けた時と……











 ………………まさか!?











「ジン! なのはを止めて!」

「ソイツを行かせるな!」

「え――あ、なのはさん!」



 マスターコンボイと二人でジンに向けて叫ぶけど――遅かった。ジンの手が届くよりも早く、なのはがジュンイチさんに向けて飛ぶ。



「高町なのは!?」

「何をするつもりだ!?」



 マスターギガトロンやホーネットにも答えない。なのはは一直線にジュンイチさんに向かい、







「ガァァァァァァァァァァッ!」







 ジュンイチさんも、自分に向かってくるなのはを迎撃すべく翼を広げて飛翔する。











 もし、あのジュンイチさんの記憶の中からなのはがジュンイチさんを止める手段を見出したとするなら、それは――





















 なのはとジュンイチさん、二人の距離が零になり





















 ジュンイチさんの右腕が





















 なのはの胸を、貫いた。





















(最終話へ続く)







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



次回予告っ!

古鉄《マスターもマスターで、いつもとやる気が段違いですね。
 あなた、そういうノリの人でしたっけ?》

恭文「ま、いろいろあったのよ。目ェ回してる間にね。
 そう。おかげでジュンイチさんのいろんなモノも知っちゃったワケで……
 ………………
 …………
 ……」

古鉄《マスター?》

恭文「………………“いろいろ”と、口止め料巻き上げられそうなネタがいっぱいだな、うん」

フェイト「最後の予告で黒いこと考えないでっ!」





最終話「ひとまず終わり けれど日常はまだまだ続く」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あとがき



オメガ《はい。いよいよ『とまコン』もクライマックス。何やらやたらと行間の広い最終章Vをお送りしました》

Mコンボイ「重要な描写、多かったからなー、今回」

オメガ《心理描写もそうとうですよ。ニュータイプ的な意識のリンク現象までありましたからね。
 まぁ……単なるミスタ・ジュンイチの能力の暴発、なんていう夢もキボウもありゃしない理由なワケですが》

Mコンボイ「まぁ、そのおかげでヤツの過去が少しは明らかになったワケだが」

オメガ《すさまじくヘビィな過去背負ってましたねー。
 普段の鈍感親バカ兄バカKY暴君な姿からは想像もできませんね》

Mコンボイ「…………お前の評価もずいぶんと容赦ないが……いや、それはいつものことか」

オメガ《むぅ、そうですけど、リアクションが薄いのはちょっといただけませんね。
 ……と、それはともかく、前回同様続きが非常に気になる形で物語は最終話へ。
 果たして、ミス・なのはは無事なのか……まぁ、無事でしょうけど》

Mコンボイ「いや、確かにそうだろうとは思うが、そこは言わないでおいてやろうか、うん!」

オメガ《そうそう。そのリアクションですよ、みなさんが期待しているのは。
 ですが……みなさん彼女の無事は確信していると思いますよ?
 むしろ興味はどうこの事態に収拾をつけるか、なワケですし》

Mコンボイ「むぅ……まぁ、それはそうだが……」

オメガ《と、いうワケで次回はいよいよ『とまコン』最終話。
 どんな決着が待っているのか、そして次回シリーズへのつながりは描かれるのか。いろいろと期待しながらお待ちください。
 ……さて、そんなこんなで、そろそろお開きの時間ですね。
 みなさん、今回も読んでくださって、本当にありがとうございました》

Mコンボイ「最終話、必ず読むがいい」





(おしまい)







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