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頂き物の小説
最終章U「とある暴君の誰も手がつけられない大暴走」



「……うー……うー……」

「落ち着きなさい。
 ここでソワソワしていても何も始まらないでしょう?」



 とりあえずは家に戻ったものの、どうにも落ち着かぬ……そんなわらわに苦言を呈するのはリンディ殿じゃが……



「……その雑誌、さかさまじゃの?」

「あ…………えっと、これは、その……」



 そう言うリンディ殿も、またベタな感じに落ち着いておらぬではないか。







 さて、わらわ達がどうしてこんなアホなやり取りをしておるのかというと……それはズバリ、今機動六課で起きている事件が原因じゃ。







 あの天下の(?)エース・オブ・エース、高町なのはが敵に襲われ、さらわれてしまったという……まったく、朝起きた時みんなそろって深刻な顔をしていたのは驚いたぞ。



 六課の者達を助ける義理はないが、恭文のためなら協力してもよいかとも思ったが……残念ながらわらわはそういう人探しを手伝える能力は持っておらぬからのぉ。



 その上、「お前がいたらヴィヴィオに対して口をすべらせそう」的なことをみんなそろって言い出して、結果こちらに帰された。まったく、みんなして失礼な話じゃ。







「でも、六課にいても何もできないのは事実でしょう?」

「むー、そう言うなら、リンディ殿が動けばよいではないか。
 管理局の提督なのであろう?」

「動いてもいいけど……“間に合わない”でしょうね」



 『間に合わない』……? どういうことかの?



「私は本局の提督だもの。
 そして事件が起きているのはミッドの地上……管轄が違うわ」

「しかし、高町なのはは本局の人間なのであろう?
 本局の仲間を助けるということなら、大義名分は成り立つのではないかえ?」

「そういう問題じゃないの。
 同じ所属の仲間を助けるとしても、事件の現場の管轄が違う以上、部隊を投入しようとするとしかるべき手続きが必要になる……そんなことをしている間に、事件は動くでしょうね。『間に合わない』というのはそういう意味。
 レジアス中将に掛け合うという手も、あるにはあるわ……バリバリの現場至上主義、且つ本局嫌いだったあの人も、“JS事件”以来本局との連携体制を構築しようとする動きを見せてくれているから。
 ただ、レジアス中将はそうでも現場にはまだ本局嫌いの風潮が色濃く残っているわ……どうしても指揮は上がらず効率は悪い。結果出遅れる結末は変わらない……そうなりかねないのが、今の管理局なのよ」



 わらわに答えて、リンディ殿はため息……とりあえず長ゼリフお疲れさまなのじゃ。 







 それにしても……







「………………? 何かしら?」

「いや、ずいぶんと辛口のコメントじゃのぉ、と……
 管理局至上主義な言動が今まで目立っておったから、なんか意外で……」

「あら、今でも管理局が次元世界の平和の担い手であるべきだっていう気持ちは変わらないわよ?」

「そうなのかえ?」

「えぇ。
 ただ……今の管理局ではその“担い手”になるにはいろいろなものが足りていない……そう思っているだけ。
 “JS事件”で、そうした思想が暴走した“なれの果て”を見ちゃったもの。局は変わっていかなければならない……そこは間違いないわ」



 なるほど。管理局至上主義であるからこそ、今の管理局はその理想を体現するには足りぬということか……なかなか複雑じゃの。



「えぇ。
 だから、恭文くんやジュンイチくんにもその手伝いをしてもらいたいのだけど、まったく、あの子達ときたら、『局で働く人は信用できるけど、局そのものは信用できない』なんて……」



 ………………外様のわらわが言うべきことではないかもしれんがの?



「何かしら?」

「あの二人にそんな組織改革手伝わせたら、むしろ管理局自体ぶち壊されると思うのじゃが」



 むしろ組織的な行動よりも個人だからこそできるフットワークの軽さを重んじているように感じられるからのぉ。あの二人にしてみれば、そうした動きをよく思っておらぬ管理局はむしろジャマな存在じゃろうな。



「そうなのよね……
 確かに言いたいことはわかるけど、個人でできることには限りがある。だからこそ管理局のような組織が必要で、より良くなっていかなければならないのに……」











「………………あのさぁ」











 むー、何じゃ、ブイリュウ。今いいところなのじゃが。



「いや……オイラは一体どっちにツッコめばいいのさ?
 “10歳児を相手に組織運営について熱弁を振るうリンディさん”“まだ10歳なのに組織運営についてリンディさんと対等にやり合う万蟲姫”か」



『………………』



 その言葉に、わらわとリンディ殿は無言で顔を見合わせた。ブイリュウへと視線を戻して――



『あっち』



 わらわがリンディ殿を指さすと同時に、リンディ殿もわらわを指さしてきた。失礼な。





















 ――――――





















「――――――っ!?」



 なっ、何事じゃっ!?



 いきなり、とんでもなくでっかい“力”の気配が現れたのじゃが!?



「万蟲姫も感じたの!?」



 ブイリュウもかえ!?



 となると、気のせいではないということか……一体何が起きておるのじゃ?



「……少なくとも、今“何が起きているか”はわかるよ……どうしてそうなっちゃったか、そっちはわからないけど」

「本当かえ?」

「うん。
 この“力”……よく覚えてるから」

「ちょっと、二人ともどうしちゃったの?
 一体何を感じ取ったの?」



 むー、リンディ殿、少しうるさいのじゃ。

 これだから、“力”を感じ取れない者の相手は困るのじゃ。それでも凄腕の魔導師だったのかえ?



「ま、魔導師はあなた達みたいに相手の“力”を感じ取るような鳥山明的なスキルは持ってないのが普通なのよ!」

「ドラゴンボールネタが出てくる辺り、ここで暮らす内にしっかりジュンイチに教育されておるのぉ……
 …………っと、そういう話ではないの。ブイリュウや。今何が起きてるのじゃ?」

「少なくとも……」







「考えられる限り最悪の事態が」







 ………………マヂかえ。



「うん、ゲキマヂ」



 それは大変じゃ。早く何が起きてるのか教えt





















 ――――――





















「――――――っ!?」



 ちょっ、この“力”……!?



「万蟲姫……?」

「例の“力”のそばに、いくつもの別の“力”……
 しかもこれ、恭文達の“力”じゃ!」



 リンディ殿に答えて――「そうしよう」と考える前に身体が動いていた。いてもたってもいられずに、すぐ外の路上に飛び出す。



 大きな“力”に、今のところ動きはない……じゃが、もしアレが動き出せば……







「………………ダメじゃ……」







 そんなのダメじゃ……っ!







 ダメじゃ、恭文……







「ダメじゃ、恭文!
 そやつと戦ったらダメなのじゃ!」







 このままじゃ……





















 恭文達が、皆殺しにされる!











とある魔導師と機動六課の日常×魔法少女リリカルなのは〜Master strikerS〜



とある魔導師と守護者と機動六課の日常



最終章U「とある暴君の誰も手がつけられない大暴走」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「……ウソ……でしょ……!?」







 正直……その一言しか出てこなかった。







 僕らの視線の先には、廃棄されたスタジアムの中に佇む、悪魔的な威容の竜を思わせる異形の生き物――問題は、その異形の素性だ。







「本当に……アレが、ジュンイチさんだっていうんですか……!?」







 となりのフェイトの声も震えてる――そう。あの異形こそがジュンイチさん。



 あの人が本気でブチキレて、“暴走”したことであんな姿になったんだとか……マヂですか。



 元々人間やめてるとは聞いてたけど……いくら何でもやめすぎでしょ、これは。







「またやってくれたものね……!
 よりにもよって、ジュンイチの“コレ”を引きずり出してくれるなんて……!」



 うめいて、ライカさんがにらみつけるのは、たぶんジュンイチさんをこんなにした張本人――なのはをさらった犯人、クロスフォーマーの二人だ。



「柾木を暴走させ、ヤツ自身を我々にぶつける算段か……」

「なるほど。それなら、あたしらをここまで通したのも納得だ。
 タランス達をあたしらにぶつけたのは、ジュンイチのヤツが暴走する前にあたしらがここまで来ちまうのを避けるためか」

「あぁ、正解だ。
 さすがにここまで事態が進めば、そのくらいは理解できるか」



 シグナムさんや師匠も渋い顔……答えるのは、スタジアムの中でしたり顔のブラックシャドーだ。



「高町なのはは実に役に立ってくれた。
 ヤツをおびき出すだけでなく、ヤツが暴走するのにも一役買ってくれたからな」

「――――――っ!
 お前達……なのはをどうした!?」



 そして、ブルーバッカスの言葉にフェイトの顔が険しくなる……そういえば、なのははどこに……?



「さぁな。アイツの足元にでも転がってるんじゃないか?
 もっとも……まともに地雷の爆発をくらってたからな。まだ生きてるかどうかは知らないな」



 地雷って……そうか。だからジュンイチさんも予測できずに、むざむざなのはをやられちゃったのか。

 トラップなら殺気がないから先読みはできない。ジュンイチさんならそれでも何かしら仕掛けられているのはわかるだろうけど、それだって自分の行く手にあれば、の話だ。仮に、なのはを助けて、そのなのはを後退させた先に仕掛けられていたとしたら……ジュンイチさんでも読み切れない。







 でも……それでもそのせいで誰かが傷つけば何だかんだで自分を責めてしまうのがジュンイチさんだ。なのはが地雷で傷ついて、それが原因でアイツらや自分に対してブチキレて……











 “あぁ”なった、か。











「それで、暴走したジュンイチさんに僕らを襲わせて、ジュンイチさんをさらに追い込もうって腹か。
 ジュンイチさんが、そんなことになって自分を責めないはずがないからね」

「そういうことさ。
 せいぜい抵抗して、むごたらしくぶち殺されるがいいさ」



 ブルーバッカスが自信タップリに僕に答えるけど、それでも疑問は残る。



 その疑問を口にしたのは、僕じゃなくて――イクトさん。



「貴様ら……どうやって柾木の暴走のことを知った?」







 そう。僕らは誰も……ジュンイチさんに唯一“友達”と認められていた僕ですら、ジュンイチさんの暴走のことは知らなかった。



 たぶん……こっちでの“家族”であるスバル達でさえも。



 知っていたのは、イクトさんやライカさんのような、地元の世界のみんな……けど、それだって口ぶりからして実際に暴走に立ち会ったから知った、って感じだ。







 そんな、ジュンイチさんがひた隠しにしてきた暴走のことを、どうしてコイツらは知った……?







「ヤツはミッドチルダこちらの身内には暴走のことも、レム・ストナーのことも話していないはずだ」



 …………って、レム……? 誰それ?



 ここで名前が挙がるってことは、その人も暴走に関係してるってことだろうけど……



「そうだな。
 知っていたのは、貴様らのような元の世界の仲間のみ……だがな」











「第108管理外世界からこの世界に来ていたのは、貴様ら“Bネット”の人間だけじゃない」











「――――――っ!
 ザインか!」



 ブラックシャドーの言葉に、イクトさんが声を上げる――その名前ならわかる。



 10年前にジュンイチさん達が倒した、イクトさんの元同僚の瘴魔神将だ。“JS事件”の時、最高評議会の手先として蘇生させられて、機動六課に敵対した……実を言うと、事件の裏でコソコソしてた僕らにもちょっかいを出してきたことがある。しかもその時に直接出てきたものだから、直接の面識もあった。







 そのザインの名前がここで出てきた。ということは……







「なるほどな。
 貴様ら……ザインがどこかに遺していたアジトからデータを得ていたワケか。
 確かに、ザインも柾木の暴走のことは知っていたしな」

「そういうことさ。
 ザインもバカなヤツだ。こんな都合のいい“爆弾”のことを知ってたクセに、使わずにむざむざまた殺されてしまったんだからな。
 “JS事件”の時、ヤツを暴走させていれば、すんなり柾木を追い込めていただろうに」



 イクトさんに答えて、バカにするように笑うブルーバッカスだけど、







「わかっていないのはアンタ達の方よ」







 そう答えたのはライカさんだった。



「ザインのデータを見たなら、知ってるでしょ?
 アイツは“JS事件”中、ジュンイチを社会的に孤立させるためにミッド中にデブリの雨を降らせようとしたのよ?
 そんなザインですら、ジュンイチを暴走させようとしなかった……ううん、“させられなかった”



 言って、ライカさんは怪物と化した、唸り声を上げながら僕らとクロスフォーマーを交互に見ているジュンイチさんを見下ろした。



「あのザインですら躊躇ちゅうちょしたことをやらかしたのよ、アンタ達は……
 暴走したジュンイチは完全に制御不能……利用しようなんて浅はかにもほどがあるわ。
 アンタ達……殺されるわよ、ジュンイチに」

「フン、やれるものならやってみろってんだ」



 ブルーバッカスがそう答えた、その時――











「グァアァァァァァァァァァァッ!」











 ジュンイチさんが天高く咆哮――それだけで、僕らのいるところまで空気の震えが伝わってくる。



 そして、ジュンイチさんがにらみつけたのは僕ら――じゃなくて、クロスフォーマーの二人。







 なのはをやられた怒りが残ってた……んじゃないと思う。単純に、僕らとアイツら、どちらが近くにいるか、それだけで獲物を選んだ。そんな感じだ。











「グァアァァァァァァァァァァッ!」











 もう一度咆哮。その口の中に光があふれて――って、アレって!?



《魔力でも精霊力でもありません。
 完全な物理現象による熱エネルギーです!》



 アルトが僕に告げると同時、ジュンイチさんが熱線を吐き放った。一直線に飛翔した熱と破壊の渦がクロスフォーマーに襲いかかって――直撃っ!



《いえ……直前で反応が消えました。
 センサーへのカモフラージュも含めた立体映像だったようです》



 ウソ……アイツら、僕らと話してる間にちゃっかり逃げやがった!?



「くそっ、本気でアイツの相手オレ達に押しつけるつもりかよ!?」

「とはいえ、アレを放っておくワケにはいくまい。
 この場は、ヤツらを見逃し、柾木に対処するしかないだろう」



 うめくビクトリーレオにシグナムさんが答えて――そこに響くのはちょーしこいたブルーバッカスの笑い声。



『残念だったな!
 そこでせいぜい殺し合いな! オレ達はその間に離脱させてもらうぜ!』



 …………決めた。絶対、あいつは僕がブッ飛ばす。



 けど、今はジュンイチさんをなんとかしないと……



「……って、アレ?」

《私達……眼中に入ってませんね?》



 そう。ジュンイチさんは僕らなんか見てなかった。時折首をかしげるような仕草を交えながら、周りを見回している。



 まさか……クロスフォーマーを探してる? けど、アイツらはもうとっくに……











「グァアァァァァァァァァァァッ!」











 と、いきなりジュンイチさんが吼えた。両手をついて、四つんばいになるような感じに背中を丸めると、その背中に生える無数のトゲが一斉に震え出して――“撃ち出される”!



「ウソ!?」

《生体ミサイルですか!?》



 驚く僕らをよそに、ミサイルは一斉に空中のある一点を目指して――爆発する。



 そして――



「ぐわぁっ!?」

「がはぁっ!?」



 悲鳴と共にクロスフォーマーの二人が煙の中から弾き出されてくる――光学迷彩か何かで隠れてたのか!?



 でも、アルトのサーチには引っかからなかった……こっちのサーチをかいくぐるようなステルスシステムも、今のジュンイチさんには通用しないってことか……!?



「ガァァァァァァァァァァッ!」



「ちぃっ!」

「くそっ!」



 そして、ジュンイチさんがクロスフォーマーに襲いかかる――翼を広げて飛翔。距離を詰めて振るった右腕の爪を、二人はなんとかかわして、続く左手の一撃をブラックシャドーが手にしたライフルで受け止める。



 けど――止められない。ジュンイチさんの爪はまるでバターでも斬るみたいにブラックシャドーのライフルを真っ二つ。さらにブラックシャドー自身の脇腹も同様に斬り裂き、ブッ飛ばす!



「ブラックシャドー!
 くそっ、トランスフォーム!」



 相棒がやられて、ブルーバッカスが動く。ビークルモードの戦闘ヘリにトランスフォームしてジュンイチさんを追うけど、逆にジュンイチさんもそんなブルーバッカスへと突っ込んでいく。



 そして両者が交差して――ブルーバッカスのローターがバラバラに切り刻まれた。浮力を失い、落下しかけたその身体を、反転して戻ってきたジュンイチさんが体当たりで地面に向けて叩き落とす!







 つか……速い。







 体格はゆうに2mを超えてる。いろいろ加速システムを詰め込めるトランスフォーマーや加速魔法を使える僕ら魔導師ならともかく、生身の、翼だけの飛翔のはずなのに、僕やフェイトと同等くらいのスピードで飛び回ってる。



 そして、ジュンイチさんは僕らには目もくれず、再びスタジアムの中に叩き落とされたブラックシャドーやブルーバッカスを追って降下していく。どうやら、徹底的にあの二人をぶっつぶすつもりらしい。







「この、ケダモノが……!」

「機動六課にぶつけるために生かしておいてやろうと思って手を抜いてやれば、付け上がりやがって……!」







 うめいて、立ち上がるクロスフォーマーの二人……そんな二人の前に、ジュンイチさんが舞い降りる。もちろん、いつでも襲いかかれるように力をためながら。







「こうなれば、多少なりともダメージを与えて、ひるんでいるスキに離脱するしかないな」

「だな」







 けど、対するクロスフォーマー側にも秘策アリ、って感じだ。口々に言うとロボットモードのまま上空に飛び立ち、











「ブラックシャドー!」

「ブルーバッカス!」



「リンク、アァップ!」











 ウソ……リンクアップした!?



 あんなの、ヴェートルでやり合った時には見せなかった……脱獄してから、あんな隠し玉を手に入れてたってこと!?







『航空超兵、ダークウィングス!』







 ブラックシャドーが上半身に、ブルーバッカスが下半身に変形、合体してひとりの戦士に――合体リンクアップを遂げたクロスフォーマー改めダークウィングスがジュンイチさんの前に降り立つ。



『本当なら、仲間を皆殺しにした後、正気に戻ってショックを受けてるお前を仕留めるためのとっておきだったんだがな。
 大サービスだ――その前にこのパワーを味わうがいい!』



 思い切り振り下ろされたダークウィングスの拳がジュンイチさんの脳天に叩きつけられる――って、ジュンイチさん!?



 合体戦士の全力の拳をまともに頭部にもらった。いくら今のジュンイチさんが暴走状態だからって……











「……グルル……」











『――――――なっ!?』



 平然と唸り声を上げたジュンイチさんに、ダークウィングスが驚く――拳を叩きつけたままのダークウィングスの前で広げた翼から、何か甲高い音がして――







 ぶった斬った。







 両の翼が、自分に叩きつけられたダークウィングスの右腕に叩きつけられ、いともたやすく斬り落としてみせたんだ。



 やっぱり、あの翼のエッジは刃としても使えたか……それでもちょっとありえない斬れ味だけど。



《ヤツの腕を斬り落とした時、あの翼は極めて高速で振動していました。
 おそらく、高速振動によって対象の分子結合を破壊、切断する高周波ソードの類でしょうね》

「さっき聞こえた甲高い音は、翼が高速振動していた音だったワケか……」

《先ほどの腕の爪による一撃も、斬れ味からして同種の高周波クローじゃないでしょうか》



 アルトに解説してもらっている間にも、ジュンイチさんはさらにダークウィングスに襲いかかる。右腕を失い、痛みに苦しみながら後ずさりするダークウィングスに向けて身をひるがえしながら跳躍。その顔面に回し蹴り、さらにその回転の勢いで振るった尻尾でさらにダークウィングスをブッ飛ばす。



 たたらを踏むダークウィングスに向けて体当たり。そのままスタジアムの観客席に突っ込むと建物を突き破って外に――って!?



「いけない!
 あっちにはスバル達が!」

「そういえば!」



 ヤバっ! ジュンイチさんに気を取られててすっかり忘れてた!



 フェイトやキングコンボイの言葉に、あわててジュンイチさん達の飛び出していった方へと向かうと、確かにそこにスバル達はいた。







「スバル! みんな、大丈夫!?」



「フェイトさん!?」



「私達は大丈夫だけど……」







 声をかけるフェイトに、スバルやこなたが応じる……そう。みんなは大丈夫。問題は“向こう”だ。







 スバル達が視線を向けた先で、ジュンイチさんとダークウィングスが取っ組み合いの大乱闘を演じてる。



 ………………いや、一方的にジュンイチさんがダークウィングスを打ちのめしている。



 ダークウィングスが殴りかかるのをかいくぐって、両手の爪が、蹴りが、尻尾が――次から次にダークウィングスに叩き込まれていく。







「何よ、アレ……
 アレがジュンイチさんだっていうの……!? 完全に猛獣じゃないの……」

「お姉ちゃん、怖いよ……!」



 うめくかがみの後ろに、つかさが怯えた様子で隠れてる……ゴッドオンしたままだからちっとも絵にならないけど。







 で……かがみの指摘は正解と言っていい。暴走態となったジュンイチさんは見た目だけじゃなくて、動きまで完全に獣じみたものになってる。







 そしてまた有効打が。顔面を尻尾で痛打されて、もんどりうってダークウィングスが地面に倒れ込む……その背中の上にジュンイチさんが飛び乗って――











「グァアァァァァァッ!」



『がぁぁぁぁぁっ!?』











 響くのは猛獣の咆哮と犠牲者の絶叫――ジュンイチさん、ダークウィングスの肩の一部を食いちぎりやがった!?







 それどころか、食いちぎった部分をムシャムシャと……アレって……アレ、だよね……!?







「………………ウソ、だろ……!?」

「ダークウィングスの身体を……喰ってやがる……!?」







 ライオコンボイや、いつもはお笑い要員のガスケットの声もかすれてる……それぐらい、目の前の光景はグロい。



 何さあのエヴァ状態。暴走してるところといいそっくりじゃないのさ。







『じ、冗談じゃない!
 貴様なんかに、喰われてたまるか!』







 もちろん、たまったものじゃないのが自分の身体を喰われているダークウィングス。なんとかジュンイチさんをねのけて上空に逃れると、



『死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!』



 ばらまいたスパークエネルギーの弾幕が、一斉にジュンイチさんに向けて降り注ぐ。



 完全に殺すつもりでの攻撃だ――さすがに、今まさに喰い殺されかけたとあっては僕らとの同士討ちを狙ってる余裕はないか。



 けど――ダメだ。巻き起こった爆煙の中から放たれた熱線がダークウィングスを直撃。左足が吹き飛ばされる。



 続けてジュンイチさんは熱線を連射。さらに背中の生体ミサイルも一斉発射、火力にモノを言わせてダークウィングスを圧倒する。



 息つくヒマもない攻撃の嵐は、容赦なくダークウィングスの装甲を傷つけ、撃ち砕いていく――と、ジュンイチさんが攻め口を変えた。翼を広げて飛翔。ダークウィングスとの距離を詰めて――











 繰り出した右腕の一撃が、ダークウィングスを貫いた。











 さらに、身体を一回転させて尻尾で一閃。胸を境に上下に断ち切られ――ダークウィングスの上半身、ブラックシャドーが形成してる部分が爆発、四散した。



 つまり……





















 ブラックシャドーが、ジュンイチさんに殺された。





















「ブラックシャドー!?」



 一方、なんとか生き残ったブルーバッカスがロボットモードに戻る――合体中に受けた攻撃で左足を失っているブルーバッカスへと、ジュンイチさんはゆっくりと向き直る。



「ひっ――――――!」



 仲間を殺されて、ここにきてようやく恐怖を感じたらしい。ひきつった悲鳴を上げて、ブルーバッカスはなりふりかまわず背を向けて逃げ出す――そんなブルーバッカスに対して、ジュンイチさんは口を開いた。熱線を放つつもりだ。



「撃てるものなら撃ってみろ!
 一発くらいなら今のオレでも耐えられる! 次が撃たれる前におさら……ば…………だ……」



 挑発でもするみたいに言い放つブルーバッカスだけど、その言葉は尻切れトンボな感じで消えていく――



 なぜか? 理由は簡単。







 熱線一発では仕留められない――そんなこと、ジュンイチさんだってわかっていたみたいだから。







 だって……











 両肩のコブの口も開けて、その奥にあった生体熱線砲まで一緒にチャージを始めてるから。











「………………ウソ、だろ……?」







 かすれるようなブルーバッカスのそのつぶやきが、なぜかハッキリ聞こえた気がした――次の瞬間、ジュンイチさんの背中から放たれた生体ミサイルの雨がブルーバッカスに降り注いで、





















 動きの止まったブルーバッカスを、ジュンイチさんの熱線砲、三門同時砲撃が消し飛ばした。





















 悲鳴ひとつ上げる間もなく、ブルーバッカスの身体が消し飛んでいく――しぶとく僕らを追い回したクロスフォーマー達の、あまりにもあっけない最期だった。











「…………やっちまいやがった……」

「アレが……暴走したジュンイチさんの力……」



 師匠やキングコンボイが呆然とした様子でつぶやく……二人だけじゃない。みんな、目の前で繰り広げられた一方的な蹂躙劇に圧倒されて、言葉を失ってる。







「…………終わった、の……?」







 恐る恐る尋ねるのは、暴走したジュンイチさんの姿にずっと怯えっぱなしのつかさだ。



 まぁ、これで終わりであってほしいのは僕も同感だけど……













「まだだ」











 そんな僕らの希望を、イクトさんは容赦なく打ち砕いた。緊張した面持ちで、続ける。







「全員……死にたくなかったら今すぐかまえろ」



「え……?
 な、なんでさ? あの人を怒らせちゃったクロスフォーマーはもうやっつけちゃったんだし……」







 イクトさんの言葉に、地上のラットルが聞き返した、その時――





















「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」





















 ジュンイチさんが咆哮した。



 クロスフォーマーと対峙していた時と同じように……ううん、もっとすさまじい迫力で。







「ちょっ!?
 なんか、ダークウィングスを倒したのにますます怒り狂ってない!?」

「当たり前だ!
 あの程度……今のアイツにとっては序の口にすぎん!」







 ジュンイチさんの咆哮が大気を震わせる。キングコンボイの叫びにイクトさんが答えて――







「――――――来るわよ!」







 ライカさんが叫んだ、次の瞬間だった。

 僕らの視界から、ジュンイチさんの姿が消える――いや、目で追うのも困難なほどのスピードで、こっちに向かって突っ込んでくる!



「え………………?」



 なんとか動きだけは追うことができた僕の脇を駆け抜けて、呆然とする師匠の目の前へ。そして――











 師匠を、何のためらいもなく殴り飛ばした。











 さらに生体ミサイルの雨が、口から放った熱線砲がたて続けに撃ち込まれる――巻き起こる爆発に吹き飛ばされる師匠に追いつき、地面に向けて叩き落とす!







 仕上げとばかりに、もう一度生体ミサイルと熱線砲――爆発が収まった時、師匠はクレーターの中央に倒れていて……――――――っ!







「師匠にn



「何してくれやがる!」







 一瞬にして頭に血が上った僕よりも先に、ビクトリーレオが動いた。ジュンイチさんに向けて突撃。その拳をジュンイチさんへと振り下ろして――











 拳が届くよりも先に、ジュンイチさんの尻尾がビクトリーレオの腹を貫いた。











 その尻尾でビクトリーレオの身体を絡め取って引き寄せると、ジュンイチさんはビクトリーレオを尻尾で締め上げ、抵抗できなくした上で殴る、蹴る、かみつく――あっという間にボロボロにされたビクトリーレオを、師匠のすぐとなりに投げ落とした。







 いきなりの事態の急変にみんなの思考が追いつかない間に――あっという間に、師匠とビクトリーレオのペアが撃墜された。







 というか……







「…………シグナム」



「あぁ」



 気づいたのは僕だけじゃなかった。声をかけてくるスターセイバーにシグナムさんが答える。



「今の攻撃……殺気を隠そうともしていなかった。
 柾木は、ヴィータとビクトリーレオを……」











「“本気で、殺すつもりで叩き墜とした”……」











 ………………やっぱりか。







 ジュンイチさんとヴォルケンズ(人間組)との関係はなんか微妙だ。普段はジュンイチさんが一方的に迷惑かけ倒しているように見えるのに、その実、両者のつながりはかなり強い。



 …………いや、ジュンイチさんの場合、基本的に誰に対してもそうなんだけどね。ただ、ヴォルケンズ(人間組)に対してはそれが特に強い……もっと言うと、“つながり”の方が。



 その中でも師匠やシグナムさんとのつながりが特に強い……なのに、その片一方、師匠を何の迷いもなく殺そうとするなんて……







 まさか、ジュンイチさん……完全に理性ブッ飛んでる?







「その通りだ。
 あの状態の柾木は、理性でものを考えていない」



 できれば外れていてほしかった予想――だけど、イクトさんはその予想をハッキリと肯定してくれた。



「そもそも、今のヤツがものを考えているのかどうかさえ疑わしい。
 ただ、戦闘コンバットプログラムに従って、攻撃を行なうのみ……
 すなわち、今のヤツにとって……」











「この場のすべての命が、殲滅せんめつ対象だ」











「じ、冗談じゃないわよ!
 つまり、ここにいる全員があのバケモノの獲物ってこと!?」



 イクトさんの言葉に声を上げるのはジンの連れのレヴィアタン……ジュンイチさんをバケモノ呼ばわりなんて、いつもの僕らなら全員で鉄拳制裁ものの暴言なんだけど……今はとてもじゃないけどそんな気になれない。



 というか……そんなことしてたら、そんなスキを見せたら、その瞬間に僕らがジュンイチさんに殺される。







 今のジュンイチさんは……そのくらいに、見境がなくなってる。







 そして……そのくらい見境がなくなってるということは、ジュンイチさん自身に止まってもらうことは、まず期待できそうにない。







「……やるしかない、ってことか……」



「逃げたければ逃げてもかまわんぞ。
 もっとも……それが可能かどうかは、さっきのクロスフォーマーの例を見れば一目瞭然だがな」







 そう……イクトさんの言う通り、たぶん今のジュンイチさんからは逃げられない。逃げようとしたその動き自体がスキとなり……ジュンイチさんに、殺される。







 僕らが生き残るには……ジュンイチさんを、倒すしかないんだ。







「そんな!?
 お兄ちゃんを倒すなんて……っ!」

「ジュンイチなら殺しても生き返ることができる!――ヤな理屈だけど、そのくらい考えて割り切りなさい!
 でなきゃスバル、アンタが殺されるわよ!」







 声を上げるのはもちろんスバル――ライカさんが答えた、その時だった。







「――――――来るぞ!」







 ジンが叫んで――ジュンイチさんが動いた。一瞬身体を丸めたかと思うと、全身の生体ミサイルを景気よくぶちまける!



 くそっ、こっちの数が多いと思って、広域爆撃で先手を取るつもりか!







「フェイト! かいくぐって一撃入れられる!? 僕もいくけど!」

「やってみる!」







 何の抵抗もなくこんなの撃たせたら、いきなり主導権を持っていかれる――フェイトと言葉をかわして、一気に突撃。ミサイルをかわしてその懐に飛び込む。



 迷うことなくフェイトがバルディッシュで、僕がアルトで一閃っ!







 ガギィッ!







 ダメだ。金属音と共に、僕らの攻撃はジュンイチさんの両手の爪に受け止められた。



 ジュンイチさんの目が、僕とフェイトを交互に見る――ヤバっ!







 本能が危険を知らせて、僕はとっさに後退――フェイトもだ。







 そして、一瞬前まで僕らがいた場所の空間を何かが斬り裂く――アレは!?







「冗談キツイね。
 爪だけじゃなくて、そんなトコにまで武器を隠してたの?」







 斬撃を放ったのは、ジュンイチさんの腕から伸びた多数の刃――甲高い音を立ててる。きっと翼のエッジや爪と同じ高周波ソードだ。



 トランスフォーマーの装甲だって易々と斬り裂くシロモノだ。バリアジャケットや騎士甲冑なんて紙切れ同然だろう。アレだけでも、十分にこっちの撃墜どころか致命傷すら狙える。







 けど、距離をとっていればあの攻撃は届かない――そんなことを考えてると、ジュンイチさんがこっちに向けて、腰の両側から何かを撃ち出してくる。



 筋繊維でジュンイチさん自身とつながった、矢じりのような刃――これって!?







「スラッシュハーケン!?
 アニメの、しかもロボットの武装じゃないのさ!? こんなのもアリなワケ!?」



「ジュンイチの自己進化能力に、制約なんかないに等しいのよ!」







 驚きながらもさらに回避。毒づく僕にはライカさんが答えた。







「知識だろうが体験だろうが、実在のものだろうが空想のものだろうが関係ない。
 基準はたったひとつ。その能力が“戦いにおいて有効か否か”……ただそれだけ。
 学習した能力が戦いの中で有効に使えるものなら、それがどんなものでもその身体は再現してしまう……その時点で再現できない能力だろうが関係ない。“再現できるように進化してしまえばいい”だけだもの。
 暴走状態じゃなくても、ジュンイチの身体は常に“兵器”としての進化を続けてる……あらゆる体験が、ジュンイチの進化の血肉になってるのよ!」



 さらにジュンイチさんはスラッシュハーケンを放ってくる――手にしたライフルで撃ち落としながら、ライカさんが説明してくれる。



 つか……それってかなりヤバくない!?



 ぶっちぎりのヲタクなジュンイチさんは日頃からいろんなアニメやら特撮やらを見てる。

 その中で有効な能力を知れば、その身体はその能力を学習してしまう。



 そして……それが今、全力全開で僕らに向けて使われてるってことでしょうがっ!







「まさか、両肩の熱線砲の元ネタってガウェインのハドロン砲じゃないだろうねっ!?」

「大丈夫! アレは10年前に戦った敵から学習したものだからっ!」







 なるほど。それなら安心……できるかボケっ!







 あぁ、くそっ、マジメにヤバイよ、この状況。







 要するに、ジュンイチさんはまだまだいろんな能力を隠してる可能性がある……そしてこっちは、ジュンイチさんが何を学習し、自分の能力として再現しているのか、予想する手段がまったくない。つか、“可能性”の範囲が広すぎる。



 何が出てくるかわからない……まるでビックリ箱だ。しかも、そのビックリ箱はとびきり殺傷力が高いときた。







 このまま先手を許し続けるのはマズイ……となると!







「危険だろうけど、これしかないじゃんっ!?」

「攻撃される前に……ブッ飛ばしてやる!」

「悪く思うなよ――旦那!」



 動いたのはガイア・サイバトロンのみんな。チータスやブレイク、コラーダが一斉射撃を叩き込む――けど、







「やったか!?」

「あーっ! ブレイク、それs







 生存フラグ――なんてツッコむヒマもなかった。爆煙の中から飛び出してきたジュンイチさんが、腕の一振りで3人をブッ飛ばす。

 ついでに腕の高周波ソードもくらったらしい。全身をズタズタに引き裂かれて3人が蹴散らされる――あの一撃だけでも、僕らがくらってたら即致命傷だ。ホントにシャレになってない。



 さらに、跳躍からの急上昇で上空のエアラザーに襲いかかった。身をひるがえしての尻尾の一撃でライオコンボイに向けて叩き落とす――受け止めるライオコンボイに向けて生体ミサイルと熱線砲の一斉砲撃。あっという間に二人も撃墜。



「このこのこのこのっ!」

「止まるんだなっ!」



 ラットルやハインラッドも一斉射撃――チータス達3人分の火力でも止められなかったものが二人でどうにかなるワケがない。ジュンイチさんの熱線が二人を吹っ飛ばして、



「やめろ、旦那ぁっ!」

「だなぁっ!」



 振り回した尻尾が、ガスケットやアームバレットを地面に叩き落とす。



 さらに、生体ミサイルや熱線を、他のみんなよりも念入りに撃ち込んでトドメ……まさか、二人のしぶとさを知ってて、考慮した!? 能力だけじゃなくて、知識までジュンイチさんのがフィードバックされてるの!?







 抵抗らしい抵抗もできないまま、ガイア・サイバトロンのトランスフォーマー組+αが壊滅――けどっ!







「一方向にばっかり――集中しすぎだよ!」







 その言葉と同時――そのセリフを体言するようにジュンイチさんの周り、全方位の地面が盛り上がった。それはまるで僕のブレイクハウトでも使ったみたいにアスファルトの拳を作り出し、ジュンイチさんに向けて叩きつけられる!



「まだまだ暴れ足りないみたいだけど……そこまでだよ!」



 言って、動きを止めたアスファルトの塊の上に降り立つのは、“装重甲メタル・ブレスト”のような部分鎧に身を包んだクレアさん――パートナーの“霊子生命体ソウル・ファクター”、イリアスと一体化、変身したのがあの姿だ。



「フィーと“霊子融合ソウル・ユニゾン”した僕――“大地の守り手”グラン・ブレイダーが守りだけだと思ったら、大間違いなんだから!」



 勝ち誇ったみたいに宣言するクレアさん――だけど、危ない!



「バカ! 離れろ!
 その程度でジュンイチが止められるものか!」

「え――――?」



 声を上げたイクトさんにクレアさんが首をかしげる――あぁ、もうっ!



「危ないっ!」



 動こうとした僕よりも先にジンが動いた。両足に装備したレオーのアンカージャッキを使って跳躍。クレアさんの身体を抱きかかえて離脱して――次の瞬間、アスファルトの塊が細切れに切り刻まれた。

 辺りに破片が飛び散る中、ジュンイチさんがゆっくりと立ち上がる――暴走態のままの姿で。

 腕から伸びた高周波ソードを縮めて、腕の中にしまい込む。アレを使って、自分を押さえ込んだアスファルトの塊を斬り裂いたってワケだ。



「あんな程度の攻撃じゃ、ジュンイチさんが暴走してなくたって止められないよ。
 いいから、ライラやメイルと一緒に下がってて」

「でも……」



 ジンの言葉に、クレアさんは不満そうだけど……



「ジンも下がってなよ。
 ジン自身がレベルアップしてるって言っても、さすがにレオーだけじゃあのジュンイチさんの相手は厳しいでしょ」

「……悔しいけど、そうみたいだな」

「それより、横馬探してよ。
 たぶん……ジュンイチさんが“あぁ”なった原因は、なのはだと思うからさ」

「あぁ。
 気をつけろよ、ヤスフミ」



 言って、ジンはクレアさんを連れて、メイルやライラ、スタンピーと一緒に後退していく。カバーにはレヴィアタンとハルピュイアがついてる……さて。



「問題はこれから、だね……
 アレを相手に、状況がちっとも改善されてないワケだし……」

「うん……
 今のクレアさんの攻撃も、少しくらい効いていそうなものなのに、まったくのノーダメージみたいだし……」

「元々がとんでもなく強いのに、その上さらに暴走状態、だもんね……」



 僕が、フェイトが、キングコンボイが口々につぶやく――確かに、ダメージらしいダメージ、まったく与えられてないもんなぁ……



 となると、ここは……



「ダメージ、期待するよ……」











「カオスプライム! ベクターメガトロン!」











「おぅっ!」

「くたばれぇっ!」











 僕の合図で、上空からカオスプライムとベクターメガトロンが降下――いや、落下してきた。それぞれが手にした光の刃を、ジュンイチさんに叩きつける!



 攻撃は直撃、僕らの位置からも真っ赤な液体が飛び散るのが見える――攻撃、通った!



 これなら、今度こそダメージが――











「――――――っ!
 いかん! 二人とも離れろ!」











 ………………え?







 その言葉の意味をイクトさんに聞き返す、そんなヒマはなかった――至近距離から放たれた生体ミサイルの群れが、カオスプライムとベクターメガトロンをまともに直撃したからだ。

 一発一発は大したことなくても、大量に、しかも集中して叩き込まれたらあの二人でもたまったものじゃない。勢いに負けて、たまらず後退するその身体にスラッシュハーケンが巻きつけられ、







「ガァァァァァァァァァァァッ!」







 捕まえた二人を、ジュンイチさんがその翼でバッサリと叩き斬る!







 さらに、両肩の生体熱線砲で二人をそれぞれ吹っ飛ばす――あっという間にスクラップ寸前までボディを破壊された二人が、放物線を描いて地面に叩きつけられる。



 自分を傷つけた二人を排除して、ジュンイチさんがゆっくりと立ち上がる。カオスプライム達の攻撃でその身体は深々と斬り裂かれてるけど――って!?







「フェイト、アレ!?」

「傷口が……再生してる……!?」



 そう。

 キングコンボイの言葉にフェイトが驚くその間にも、カオスプライム達につけられたジュンイチさんの傷はみるみるうちにふさがっていく。



 そうだった――ジュンイチさん、暴走してない状態ですら、片足なくしても一晩で再生するくらいの再生能力を持ってたんだ。



 その再生能力も、暴走したことで強化されている可能性を考慮すべきだった……











「ガァァァァァァァァァァッ!」











 しかも、二人の攻撃はジュンイチさんをさらに怒らせてしまったみたいだ。その咆哮が再び大気を震わせる。







 くそっ、あんなの、どうやって止めろっていうのさ!?



 イクトさん、ライカさん、何かアイデアないの!?







「再生できなくなるまでダメージを与える……ぐらいしか思いつかないわよ」

「それやろうとして、みんな次々返り討ちにあってるんですけど!?」

「本気でそれくらいしか思いつかないんだからしょうがないじゃない!
 もし有効な方法があるなら、10年前に殺されかけたりしてないわよ!」



 ………………ごもっとも。







 つか、再生できなくなるまでぶちのめす……それって、つまり……







「結局、殺すつもりで叩くしかないということか……」

「そんな……
 だって、相手はお兄ちゃんなんだよ!?」

「そのジュンイチが、こっちのメンバーを次々に八つ裂きにしているのがわからんのか!」



 あくまでジュンイチさんとは戦えない――ためらうスバルを、マスターコンボイが一喝する。



「“ゆりかご”で、オレ達はヴィヴィオを止めるために戦った……あの時と同じだ!
 今のジュンイチを止めるには、戦うしかない!」

「ぜんぜん違うよ!
 だって、今回はお兄ちゃんを“殺す”……そんな話になってるじゃない!」







 そう。それが……こっち側の最大のネック。



 ジュンイチさんが常々言ってることが確かなら、ジュンイチさんは自分の核である生体核バイオ・コアがひとつでも無事なら何度でも蘇生できる……らしい。







 けど……だからって殺すことの抵抗がなくなるワケじゃない。それが、こっちの戦闘力を大きく削ぎ落としてる。







「悩むのはいいが、抵抗しろ!
 ――来るぞ!」







 シグナムさんが叫ぶと同時――ジュンイチさんが動いた。傷の再生が終わると、僕らに向けてゆっくりと踏み出す。



 その瞳はさっきまでよりもさらに血走ってるようにも見える……完璧に僕らを狙ってるね、アレ。







 背中の翼を羽ばたかせて、宙に浮かんで――来るっ!







 とっさに散開して突撃を回避。ジュンイチさんは旋回して再び襲いかかってくる。狙いは――







「スバル! 逃げなさい!」



「――――――っ!?」







 そう。一番この戦いにためらいがあって、そのせいで一番動きの鈍ってるスバルだ。ティアナの言葉にも反応できず、その間にジュンイチさんが距離を詰めて――











「――――――っ、のぉっ!」









 直前で飛び込んできたこなたが前フリなしで必殺蹴りのクリムゾンブレイク。ジュンイチさんを真っ向からブッ飛ばす!



「こなた!?」

「やるしかないよ、スバル!
 このままじゃ、ジュンイチさんにみんなやられちゃうよ!」

「問題は……“勝てるかどうか”だけどね!」



 スバルやこなたに答え、すぐ近くに降り立つのはかがみだ。それに、つかさや高良さん、ひよりやみなみも後に続いて合流してくる。



「うぅっ、やっぱり怖いよ、お姉ちゃん……」

「それでも、やらなきゃ私達がやられてしまいます。
 相手が相手ですし、ヤな戦いですけど……」

「だからこそ、早く終わらせないと……!」

「先輩方、ここは!」



 つかさ達が口々に呼びかけるのを受けて、かがみがうなずく……何かするつもり?



「まぁね。
 最強形態まではムリだけど……合体して、一気に押しつぶす!」



 合体!?







「ライトフット!」

「レインジャー!」

「ロードキング!」



 かがみが、つかさが、高良さんが――3人が名乗りを上げ、頭上に大きく跳躍し、



『ゴッド、リンク!』



 咆哮と同時、3人がゴッドオンしたまま分離、変形を開始する。

 かがみのゴッドオンしたライトフットは両足が分離、両腕を後方にたたんだライトフットの両側に合体し
、より巨大な上半身へと変形する。

 一方、つかさのレインジャー、高良さんのロードキングはそれぞれ上半身と下半身、さらにバックユニットの三つに分離、下半身は両足がビークルモード時のように合わさってより巨大な片足に。同様の変形を遂げた二つの下半身が背中合わせに合体、1体のロボットの下半身が完成する。

 完成した下半身にライトフットの変形した上半身が合体、さらにそのボディの両横、右側にレインジャーの、左側にロードキングの上半身が合体、内部から二の腕がせり出し、両肩が形成される。

 そして、現れた二の腕にレインジャーとロードキングのバックユニットが合体。拳がせり出し、両腕が完成する。

 最後にライトフットの頭部により大型のヘルメットが被せられた。フェイスガードが閉じると、その瞳に輝きが生まれる。

 すべての合体シークエンスを完了して、かがみ達は高らかに名乗りを上げる。







『連結、合体! トリプルライナー!』







「ニトロスクリュー!」

「ブレイクアーム!」

 みなみが、そしてそれに続いてひよりが――二人が名乗りを上げ、頭上に大きく跳躍し、



『ゴッド、リンク!』



 咆哮と同時、二人がゴッドオンしたまま分離、変形を開始する。

 まず最初にビークルモードへとトランスフォーム。ロボットモード時にボディを形成する先頭部分を車体上方に90度起こすと、前方を向いている底部を180度回転することで車体後方に向ける。

 さらに車体後方が数ヶ所に渡ってスライド式に延長。内部に隠されていた関節部が露出し、それぞれ左半身、右半身への変形が完了する。

 互いに変形を完了し――二人は向かい合うように合体、ひよりのブレイクアームを右半身、みなみのニトロスクリューを左半身としたひとつのボディとなる。

 両肩となった先頭部分の下部からジョイント部分が露出、ブレイクアームの武装が連結するように合体し、両腕が完成する。

 最後にブレイクアームの変形した右肩が開くと中からロボットモード時の頭部が射出され、二人が合体して形成されたボディに改めて合体する。

 すべてのシステムが問題なく起動し――ひとつとなったひよりとみなみは高らかに名乗りを上げる。







『連結、合体! グラップライナー!』







 かがみとつかさと高良さん、ひよりとみなみがそれぞれ合体して、ジュンイチさんの前に立ちはだかる……なるほど、列車型で機体が統一されていたのはこういう仕組みがあったからか。



《ま、お約束ですけどね》

「まぁね」



 それより、問題は合体したかがみ達がジュンイチさんに通用するかどうか……警戒しているのか、首をかしげるようにしているジュンイチさんに向けて、かがみ達が突っ込んでいく。



「ゴメンね、ジュンイチさん!」

「ブッ飛ばさせてもらうっス!」



 かがみ達の蹴りがジュンイチさんの身体を空中に蹴り上げて、続けてひより達がそれを殴り飛ばす――まぁ、合体して機体サイズも大きくなってるから、2mサイズのジュンイチさん相手に同時攻撃なんてムリなんだけど。



 とにかく、さすがにこれにはブッ飛ばされたジュンイチさんに、かがみが右腕に装備されたレインジャーの火器で砲撃、追撃をかけて、



「柊先輩! 一旦砲撃止めて!」



 ひよりが飛び込んで、地面に向けて殴り落とす!



「こいつは……オマケっス!」



 一気に決めるつもりだ。ひよりがジュンイチさんに向けて勢いよく蹴りを繰り出して――











 ジュンイチさんが消えた。











「ウソっ!?」

「どこに!?」







 一方的にやられていたように見えていたジュンイチさんが、一瞬にして離脱した。距離をおいて見ていた僕らですら見失ったその動き、かがみ達が追い切れるはずもなくて――







「ガァァァァァッ!」



『――――――っ!?』







 かがみ達の後ろ!



 反応するよりも早くジュンイチさんの砲撃――両肩の生体熱線砲を至近距離からお見舞いされて、かがみ達は合体も解除されて吹っ飛ばされる!







「かがみ! つかさ! みゆき!」

「ひよりさん! みなみさん!」



 ティアナやキャロが呼びかけるけど返事はない。生命反応はあるから、死んではいないみたいだけど……



《本当にシャレになってませんね。
 こっちのメンバーはほぼオールスターだというのに、あっという間に半分まで減らされましたよ》

「それも、仕掛けてないから……ジュンイチさんが襲ってくるメンツの迎撃を優先していたから墜とされてない。ただそれだけ。
 かかっていくヤツがいなくなれば……今度はジュンイチさんの方から襲いかかってくるよ、アレ」



 実際、戦闘再開の際はほぼ毎回ジュンイチさんが仕掛けてきてるしね。アルトの言葉にそんなことを考えていると、ジュンイチさんが再び舞い上がってこっちに――そら来た!



「く…………っ!
 これ以上はやらせんっ!」



 そんなジュンイチさんの前に飛び出し、高周波クローの一撃を受け止めたのはシグナムさん。そして――



「貴様は――私達が墜とす!」



 続けて、スターセイバーの振るった剣がジュンイチさんを背中から斬りつける。

 さらに追撃。シグナムさんが真正面からジュンイチさんに斬りつけ、その身体を斬り裂く――カオスプライム達はここで反撃を受けたけど、それすら許さない。ジュンイチさんが反撃に転じようとするよりも速く、シグナムさんの剣がジュンイチさんの右腕を、スターセイバーの剣が尻尾を斬り落とす!

 斬り離された腕や尻尾が宙を舞う中、シグナムさんとスターセイバーはさらに斬りつけようとそれぞれの刃をかまえて――











 爆発に襲われた。











 二人が斬り落とした腕や尻尾が、突然爆発した――それもかなりの規模で。



 攻撃に意識を向けていたところに不意を突かれた二人が体勢を崩して――ジュンイチさんが動いた。口からの熱線でシグナムさんを吹っ飛ばして、左腕の高周波ソードでスターセイバーの全身を斬りつけ、斬り裂かれた装甲のすき間に生体ミサイルをこれでもかと叩き込む!







 黒コゲにされたシグナムさんとスターセイバーが地面に向けて墜落していく――あぁ、もうっ!







「そのくらいにしときなよ――ジュンイチさん!」







 もう限界だ――マックススピードで飛び込んで、ジュンイチさんに斬りつける。



 左腕の爪に受け止められたけど、かまわない。飛び込む過程で詠唱していた魔法を――ぶちかます!



「クレイモア!」



 そう。クレイモア――それも、魔力弾じゃなくてベアリング弾を生成して放つ、殺傷力バリバリの対物破壊用。

 さらに――



「ブレイクインパルス!」



 対物破壊用その2。ひるんだジュンイチさんに蹴りを入れたその瞬間に、人に向けて使っちゃいけない魔法の代表格をぶちかます。



 まともにくらって、ジュンイチさんの身体のあちこちが裂けて真っ赤な血が噴き出す――よし、効いてる!







 ………………本来なら即死クラスの魔法をたて続けにくらって「効いてる」程度のダメージしかないっていうのも、十分にありえないんだけどね。







 とにかく――防御は抜ける。攻撃が効かないワケじゃない。これなら……







「ヤスフミ、下がって!」







 フェイトから声がかかる――とりあえず、言われた通りに一旦下がる。







 だって――フェイトにキングコンボイ、そんでもってティアナが大技の体勢に入ってるから。











「プラズマ……スマッシャー!」



「ストーム、カリバー……ブレイカー!」



「ファントム、ブレイザー!」











 フェイトやキングコンボイの大技に、チーム戦では出番に恵まれないものの、魔王直々の指導で凶悪化の一途をたどるティアナの砲撃が加わる――三人の同時攻撃をまともにくらって、ジュンイチさんが爆発
の中に消える。







 万全の状態ならともかく、力場もなくて傷ついた状態でまともにくらった……しかも、







「カイザー、スパルタン!」



「くらえぇぇぇぇぇっ!」







 ライカさんやイクトさんも追い討ち。さすがのジュンイチさんも、ここまでやればダメージもバカにならないでしょ!







「だと、いいんだけどね……」







 ライカさんがつぶやき、様子をうかがうこと数秒――って!?







「――――ライカさん!
 “上です”!」

「え――――――?」







 その言葉の意味をライカさんが知ることはなかった――“真上から”放たれた砲撃が、ライカさんを飲み込んだからだ。







 巨大な熱量と共にライカさんが地面に突っ込んで、爆発の中に消える――そして、僕らの前にはジュンイチさんが舞い降りてきた。







 けど……いつの間に上に……?



 少なくとも、フェイト達の攻撃は確実に直撃していた……その後の、ライカさん達の攻撃に紛れて離脱していた……?







 いや……問題はそこじゃない。







 治ってる。







 シグナムさん達の剣や、僕のさっきのクレイモアにブレイクインパルス、そしてフェイト達の一斉砲撃――みんなで必死に積み重ねたダメージが、再生してる。斬り落とされた腕や尻尾にいたっては、もうほとんど元通りに生えてきてる。







 ったく、こっちは直撃=撃墜だっていうのに、向こうは致死レベルの攻撃くらっても短時間で回復……チートにもほどがあるでしょ、これ!













「ガァァァァァァァァァァッ!」











 咆哮と同時、ジュンイチさんがこちらに向けて口を開く……熱線砲が来る!?



「ヤスフミ!」

「紙一重でかわして突っ込むよ!
 大技の直後の無防備の状態を狙えば、そこからたたみかけられる!」



 同じ考えで声をかけてきたらしい。フェイトは無言でうなずいてみせる――イクトさんもそれでいい?



「ここまでみんなが墜とされては、もうそれしかあるまい!」



 そして、身がまえる僕らに向けてジュンイチさんが熱線を吐き放つ――今っ!



「っ、けぇぇぇぇぇっ!」



 気合の入った声と共に、突っ込む――僕だけじゃない。イクトさんにフェイトも。



 一瞬で距離を詰めて、アルトの一撃を振りかぶって――





















 ジュンイチさんの両肩の熱線砲が、“チャージを済ませた状態で”口を開けた。





















 ………………え?



 まさか……そうとわからないように、口を閉じた状態でチャージしてた!?







 そう理解したけど、全速力の攻撃中。方向転換なんかできなくて――





















 ジュンイチさんの両肩から放たれた熱線が、僕らを飲み込んだ。





















(最終章Vへ続く)







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



次回予告っ!

ジュンイチ「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」

こなた「ちょっ!?
 なんか、ダークウィングスを倒したのにますます怒り狂ってない!?」

イクト「当たり前だ!
 あの程度……今のアイツにとっては序の口にすぎん!」

ジュンイチ「ショォォォォォユゥゥゥゥゥッ!」

こなた「………………しょう油?」

イクト「……さすがのヤツも、生のまま喰うのはムリがあったか」

こなた「いやいやいやいやっ! しょう油で解決する問題なの、コレ!?」





最終章V「とある魔導師と暴走する暴君の最終決戦」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あとがき



オメガ《さて……戦いの場が一ヶ所だけ、相手も1体だけということで、書けども書けども視点変更の機会が訪れず……気づけばアバンタイトルを除く全編がミスタ・恭文視点。あまりの視点の動かなさに作者が頭を抱えた最終章2話目です》

Mコンボイ「まさに柾木ジュンイチの無双状態だったな」

オメガ《なんだかんだでダメージ受けてますから一方的とは言えませんけど、それでも圧倒的な流れだったのは否定できませんね。
 ダメージだって、受けるそばから治ってますし……『攻撃は効くけど殺せない』といったところですか。
 作者が最近ハマり気味のスパロボ風に言うなら、毎ターン精神コマンド“ド根性”がかかってるようなものですよ》

Mコンボイ「1分おきにHP全回復……本当にシャレにならないな」



(スパロボにおいて1ターンは作中時間で1分という設定がデフォになってます)



オメガ《おかげでこちら側は抵抗するそばから返り討ち。みるみる数を減らしていったワケですが……我らはミス・スバルがためらってばっかりだったおかげで、この大一番にもかかわらずほとんど戦闘に参加できませんでした》

Mコンボイ「まぁ、相手が相手だ。スバルの性格を考えればまずためらうだろうさ。
 とにかく、オレ達がまごついていたおかげで恭文達まで……といったところで次回への引きか。
 一応、サブタイトル的には次回で戦闘は終わり……と思っていいのか?」

オメガ《そんな展開を予感させるサブタイトルではありますが……そもそもあと1話で片づくんですか? コレ》

Mコンボイ「オレに聞くな。
 とにかく、『とまコン』も残り数話なのは確か。どういう決着を迎えるのやら……」

オメガ《そしてボスは最後に主人公のひとりらしい活躍ができるのか!?》

Mコンボイ「言うな! 割と本気で不安なんだ!」

オメガ《今回、そのくらい活躍できませんでしたからねぇ……
 ……さて、そんなこんなで、そろそろお開きの時間ですね。
 みなさん、今回も読んでくださって、本当にありがとうございました》

Mコンボイ「次回も必ず読むがいい」





(おしまい)






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