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頂き物の小説
第48話「天国と地獄は実は思った以上に紙一重」;おまけとあとがき




おまけその1:……ちょこっとお話







「……ヤスフミ」

「フェイト? イクトさんも……」



 どっと疲れた身体を引きずって、イクトさんと二人でやってきたのは中庭。というか、ヤスフミのいるところ。

 うん、ちょっと……ね。



「……ヤスフミ、どうだった?」

「危なかった。リンディさん達、レティ提督とかにも連絡しかけてた。
 ……フェイトは?」

「……高町家には伝わってたよ」

「……なのは?」

「違う。ほら、ヒロさんからお姉ちゃんを経由して」

「あぁ、美由希さんルートか」



 そう。前にアドレス交換してたんだ。二刀流同士だからか、すごく意気投合して。



「ただ、なんとかそこで止まってた。すずかとアリサには、連絡する直前だったけど」

「そっか、ならよかった。
 イクトさんはどうだったのさ?」

「………………同期全員の誤解を、さっき解き終わったところだ」

「………………オツカレサマ」



 本当にギリギリだったね。うん、広まらなくてよかった。

 でも……みんなおかしいよっ! あれほど何もなかったって説明したのにっ!



「あー、フェイト。気持ちはわかるけど、静かに」

「あ、ごめん。
 ……リイン、寝てるもんね」



 ヤスフミの肩の上に座って、頬に寄りかかるようにして、寝息を立てている。

 その微笑ましい光景に、自然と笑みがこぼれる。



「うん、ちょっとお話してたんだけど、すぐに」

「……ヤスフミ、何かあった?」

「わかる?」

「わからないワケがないだろう。
 知り合ってまだ数ヶ月だが、そのくらいには密度のある付き合いをしてきたつもりだ」



 そう。何ていうか、こう、うれしそうというか、とまどっているというか……



「……リインがね、六課が解散したら、僕のとこに来たい……って」

「……ヤスフミ」

「わかってるよ。うん、考えるとは言ったけど、難しいよ」



 リインがいなかったら、はやての仕事にも支障が出る。それはリインだってわかってるよね。なら……どうして?



「“JS事件”の時みたいなのはイヤ……そう言われた。ま、また詳しく話は聞いてみるよ」

「そうだね、そうした方がいい」











 ……少しずつだけど、いろんなことが変化していく。ヤスフミが来て、3ヶ月程度なのに。







 でもきっと、良いことなんだ。うん、私もちゃんとしていこう。







 ヤスフミも、イクトさんも……少しずつでも、自分のやり方で変わっていこうとしている。







 だから、それを見つめて、知った上でちゃんと答えを出そう。







 はやてのこと、何も言えないね。私も、よくわからないから。今の自分の気持ちが。





 ……答えはきっと、ヤスフミの言うようにシンプルなはずなのに。











 ……季節は、新暦76年の1月……冬。







 もうすぐ終わる場所で、いろんなものが始まろうとしてる。







 それが良いことかどうかは……まだ、わからないけれど。





















(おまけその1:おしまい)







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



おまけその2:こっちも転機……いろいろな意味で







「………………ジュンイチさんも、知ってたんですか?」

「何が?」

「いや……はやてちゃんのこと」



 結局、恭文くん達のことは誤解だったということでお祝いの席はお流れ。用意されたお祝いの料理はみんなで持ち帰って処理することに。



 そんな持ち帰りの料理……私達と一緒に食べてなお残った分を平らげているジュンイチさんに、ヴィヴィオと、今日はこっちに泊まっていくことになった万蟲姫を寝かしつけ、戻ってきて早々話しかけた。



「ラトゥーアで“そう”なったってことだけは……クリスマスの時に。
 まさか、それが妊娠騒動にまで発展してた、ってのは知らなかったけどな」

「それで、クリスマスの時戻って来れなかったんですね……そして理由も話せなかった」

「そーだよ。
 まぁ、すっぽかしたのは事実だからおとなしくブッ飛ばされたけど」

「うぅ……ゴメンナサイ」



 私もあの時は参加しちゃったからなぁ……具体的には零距離バスターで。







「まぁ、あのまま引きずるようなことがなくてよかったよ。
 あと二ヶ月ちょいで六課解散だってのに、心残りを残されてたまるか」







 その言葉に……少し、心が曇った。







 そうだ……あと、二ヶ月なんだ……







「………………?
 どうした? なのは」

「あの……ジュンイチさん。
 ジュンイチさんは……六課が解散になったら、どうするんですか?」

「どうもしねぇよ」



 答えはあっさり返ってきた。



「“JS事件”も片づいて、ようやく背負ってたモノを下ろせたからな。しばらくはおとなしくしてるさ。
 適当にあちこちぶらついて、行く先々でいろんなことに首突っ込んで」

「それ……おとなしくしてるって言えるんですか?」

「今までと比べてみろ。じゅーぶんおとなしいだろうが」



 ………………確かに。







 けど……ジュンイチさん、いなくなっちゃうのか……



「なんだか……ちょっと寂しいです」



「ま、ヴィヴィオはお前んトコだろ? だったらオレもちょくちょく顔を出すさ。
 アイツの帰るところは、お前の帰るところでもあるんだからさ」







 また……胸が痛んだ。







 確かに、“私の帰るところ”は“あの子の帰るところ”だ。



 だけど……







「それじゃ……イヤです」



「え………………?」



「帰ってくるのは私とヴィヴィオだけ……それじゃ、足りないです」







 そうだ。



 私とヴィヴィオだけじゃない。それだけじゃなくて、私は……











 ジュンイチさんにも……帰ってきて、ほしいから。











「………………なのは?」



「あ、えっと……なんでもないですよ。何でも……
 ……あ、わ、忘れ物したんで、ちょっとオフィスまで取りに行ってきますね」







 首をかしげるジュンイチさんに言って、私はパタパタと部屋を飛び出していく……











 ………………何やってるんだろ、私。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「なのはのヤツ……何が言いたかったんだ?」



 あいつがヴィヴィオの母親であるように、オレもヴィヴィオの父親だ。会うことなんていつでもできる……そのはずなのに、あいつはそれだけじゃ満足じゃないみたいだ。



 まぁ……何を言いたいかは、なんとなく予想はつくけど。



「………………『“帰って”きてほしい』か……」



 たぶん、そこにあいつの考えてるすべてが集約されてる。



 “なのはの帰る場所”は“ヴィヴィオの帰る場所”でもある。そして……







「………………“オレの帰る場所”でもあってほしい、ってことなんだろうな……」







 まったく、何を思ってそんなことを言い出したのやら。



 オレに惚れた……? いや、ないない。



 オレみたいなヤツに、いったい誰が惚れるってんだよ?







 それに……











「オレに……そんな資格、ないしな……
 オレのような……」





















 ………………バケモノには。





















 ――――――





















「――――――っ!?」







 この“力”は…………!?







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「………………はぁ……」



 とりあえず、中庭に出てきたけど……気が重い。



 忘れ物なんか単なる口実――とりあえず、資料のひとつも持って帰ればごまかしはきくと思う。



 けど……なんだか帰りづらくてため息がもれる。



「ホント……何やってるんだろ、私……」



 これじゃ……はやてちゃんのこと笑えないな……







 ただ……思ったんだ。







 “顔を出す”んじゃない……ジュンイチさんにも、私達の帰る場所に“帰って”きてほしい、って……











 ……そうだ。私は――











「……そばにいて、ほしいんだ……」





















「それは助かる」





















 ――――――っ!?







 突然の声に反応――できなかった。それよりも早く衝撃を受けて、飛ばされる。



 何度か地面を跳ねて転がって――生身で受けるには、ちょっと厳しすぎる衝撃だった。ゆっくりと思考が闇に沈んでいくのを、私はどこか他人事のように感じて――











「では、柾木ジュンイチにはお前を追ってきてもらうとしよう」











 そんな声が聞こえた。





















(おまけその2:おしまい)







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



次回予告っ!

はやて「あー、いろいろあったけど、とりあえず復活やーっ!」

リイン「よくわかんないけど、よかったですー♪」

はやて「今まで心配かけたな、リイン!
 けどもう大丈夫や! 笑いと萌えの伝道師八神はやて! ここに復活やーっ!」

恭文「あー、張り切ってるトコ悪いけど、次からシリアス展開だからはやてはまた出番減少だってさー」

はやて「………………え?」





最終章T「ラスト数話は急展開がお約束」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あとがき



オメガ《あー、とりあえず本家『とまと』ファーストシーズン編のエピソードはほぼフォロー完了。クライマックスに向けて動き出した第48話です》

Mコンボイ「次回からはタイトルのナンバリングも変わるんだな」

オメガ《はい。次回からは『最終章』となります。T、U……と続いていく形ですね。
 まぁ……これが終わった後もまだシリーズ自体は続くんで、厳密にこれが終わりというワケではないんですけど》

Mコンボイ「あくまで“ファーストシーズン編の最終章”ということか」

オメガ《まぁ、こちらに投稿させていただいているシリーズとしては初のラストですけど、『GMシリーズ』としてはすでに2回“最終話”を迎えていますしね》



(『〜Galaxy Moon〜』と『〜Master StrikerS〜』でね)



オメガ《そんなワケですから、これから先のクライマックスを乗り切ったらみなさんとお別れ、ということはありませんので、どうぞご安心を》

Mコンボイ「作者も本格的に次シリーズの準備に取りかかっているようだしな。
 ……それよりも、まだプロット段階でしかない最終章を形にする方が急務だと思うのはオレだけか?」

オメガ《だったら作者をそう叱ってきてくださいよ。
 ただ……作者の怒りに触れて以後主役の座から転落しても私を巻き込まないでくださいね?》

Mコンボイ「サラリと見捨てられた!?」

オメガ《いえいえ、ボスならそんなことにはならないと信じていますから(棒読み)。
 ……さて、そんなこんなで、そろそろお開きの時間ですね。
 みなさん、今回も読んでくださって、本当にありがとうございました》

Mコンボイ「次回も必ず読むがいい」





(おしまい)






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